説明

直交フラックスゲートセンサと、外部磁界の検出方法

【課題】帰還回路を用いることなく、良好な線形性が得られる直交フラックスゲートセンサを提供する。
【解決手段】外部磁界により磁気特性が変化する感磁体1にパルス電流を供給する波形発生回路を備えたパルス電源8は、矩形パルス電流を2つ以上連続して感磁体1に供給する。パルス電源(波形発生回路)8より供給されたパルス電流は、第一電極パッド3及び第一接続配線2を介して感磁体1に流れる。そして、感磁体1の周囲または近傍にあって感磁体1の磁気特性の変化を電圧の変化として誘起する検出コイル4から、第二接続配線5及び第二電極パッド6を介して出力された2番目以降のパルス電流の立ち上がりによる誘起電圧を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直交フラックスゲートセンサと、これを用いた外部磁界の検出方法に係り、詳しくは、良好な線形性を有するように直交フラックスゲートセンサと外部磁界の検出方法を改善した技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
微小な磁界を高精度に検出するセンサとして直交フラックスゲートセンサが知られている。近年は、モバイル機器に搭載するため、直交フラックスゲートセンサの小型化が進んでおり、例えば感磁体である磁性薄膜と平面コイルとからなる薄型で小型の直交フラックスゲートセンサが提案されている(たとえば、特許文献1,2参照)。また、MI素子を直交フラックスゲートセンサとして用いる手段も提案されている(たとえば、特許文献3参照)。
【0003】
これらのセンサは、感磁部である磁性薄膜や磁性ワイヤにパルス電流を印加すると、パルスの立ち上がり部と立ち下がり部に伴って平面コイルに電圧が誘起される。この誘起電圧は外部磁界にほぼ比例して増減するので、誘起電圧をセンサ出力として利用し、外部磁界を検出できる。なお、これらのセンサでは、パルス形状や検出タイミングの指定はしていない。
【0004】
図4に直交フラックスゲートセンサの一例を示し、その測定原理を説明する。図4に示す直交フラックスゲートセンサ20は、感磁体1及び検出コイル4を備える。感磁体1には、第一電極パッド3a,3b及び第一接続配線2a,2bを通じて接続されたパルス電源18よりパルス電流が供給される。感磁体1にパルス電流が供給されると、検出コイル4に電圧が誘起され、この誘起電圧は第二電極パッド6a,6b及び第二接続配線5a,5bを通じて接続されたオシロスコープ19により電圧波形が測定される構成となっている。
【0005】
図4において、感磁体1は、2つの軟磁性体1A,1Bにより構成され、検出コイル4は、2つの平面型スパイラルコイル4a,4bにより構成されている。また、図5(a)は、パルス電源18より供給されるパルス電流の波形を示し、図5(b)は、検出コイル4に誘起される電圧の波形を示す。このような直交フラックスゲートセンサ20においては、供給されるパルス電流の立ち上がり波形に対応する電圧波形WPの波高値Vを測定し、感磁体1に印加された磁界を波高値Vに基づいて検出する。
【0006】
ところが、従来の小型の直交フラックスゲートセンサは、センサとしての線形性が十分ではなく、帰還回路を用いる必要があった。しかしながら、帰還回路を用いると、回路構成が複雑になるだけでなく、センサ素子も負帰還磁界を印加するためのコイルを別途巻く必要もあり、センサが大型になってしまうという問題があった。
【特許文献1】特開2006−201123号公報
【特許文献2】特開2003−004831号公報
【特許文献3】特許第3645116号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、帰還回路を用いることなく、良好な線形性が得られる小型の直交フラックスゲートセンサを提供することを目的とする。
また、本発明は、直交フラックスゲートセンサによって検出される外部磁界の線形性を改善することが可能な外部磁界の検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、直交フラックスゲートセンサをパルス電流により駆動した場合の駆動電流形状と誘起電圧の外部磁界依存性を鋭意研究し、得られた知見から次の発明に至った。
【0009】
すなわち、本発明の請求項1に係る直交フラックスゲートセンサは、外部磁界により磁気特性が変化する感磁体と、前記感磁体にパルス電流を供給する波形発生回路と、前記波形発生回路より供給されたパルス電流を前記感磁体に流すための第一電極パッドと、前記感磁体と前記第一電極パッドとの間を接続する第一接続配線と、前記感磁体の周囲または近傍にあって前記感磁体の磁気特性の変化を電圧の変化として誘起する検出コイルと、前記検出コイルから誘起電圧を取り出すための第二電極パッドと、前記検出コイルと前記第二電極パッドとの間を接続する第二接続配線と、を少なくとも備えた直交フラックスゲートセンサにおいて、前記波形発生回路は、矩形パルス電流を2つ以上連続して前記感磁体に供給し、前記第二電極パッドから出力された2番目以降のパルス電流の立ち上がりによる誘起電圧を検出することを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項2に係る直交フラックスゲートセンサは、請求項1に記載の直交フラックスゲートセンサにおいて、前記第二電極パッドが、前記2番目以降のパルス電流の立ち上がりによる前記誘起電圧を検出する測定回路と接続されていることを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項3に係る直交フラックスゲートセンサは、請求項1又は2に記載の直交フラックスゲートセンサにおいて、前記波形発生回路が、連続した前のパルスの立ち下がりから後のパルスの立ち上がりまでの時間が500nsec以下の間隔で前記パルス電流を供給することを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項4に係る直交フラックスゲートセンサは、請求項3に記載の直交フラックスゲートセンサにおいて、前記波形発生回路が、連続した前のパルスの立ち下がりから後のパルスの立ち上がりまでの時間が100nsec以下の間隔で前記パルス電流を供給することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項5に係る直交フラックスゲートセンサを用いた外部磁界の検出方法は、外部磁界により磁気特性が変化する感磁体と、前記感磁体にパルス電流を供給する波形発生回路と、前記波形発生回路より供給されたパルス電流を前記感磁体に流すための第一電極パッドと、前記感磁体と前記第一電極パッドとの間を接続する第一接続配線と、前記感磁体の周囲または近傍にあって前記感磁体の磁気特性の変化を電圧の変化として誘起する検出コイルと、前記検出コイルから誘起電圧を取り出すための第二電極パッドと、前記検出コイルと前記第二電極パッドとの間を接続する第二接続配線と、少なくとも備えた直交フラックスゲートセンサを用いた外部磁界の検出方法において、前記直交フラックスゲートセンサとして、矩形パルス電流を2つ以上連続して前記波形発生回路より前記感磁体に供給するものを用い、前記検出コイルが出力した2番目以降のパルス電流の立ち上がりによる誘起電圧を前記第二電極パッドより出力し、この誘起電圧に基づいて外部磁界を検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る直交フラックスゲートセンサは、矩形パルス電流を2つ以上連続して感磁体に供給し、第二電極パッドより出力された2番目以降のパルス電流の立ち上がりによる誘起電圧を検出する。この第二電極パッドは、この感磁体の磁気特性の変化を電圧の変化として誘起する検出コイルから誘起電圧を取り出すためのものである。ゆえに、2番目以降のパルス電流の立ち上がりによる誘起電圧を用いることにより、出力にバラつきがなく安定した誘起電圧に対応する電圧波形の波高値を測定できると共に、この波高値に基づいて感磁体に印加された磁界を検出することができる。
したがって、帰還回路を用いることなく、良好な線形性が得られる小型の直交フラックスゲートセンサを提供することができる。
【0015】
本発明に係る外部磁界の検出方法は、上述した本発明の直交フラックスゲートセンサを用い、矩形パルス電流を2つ以上連続して波形発生回路より感磁体に供給すると共に、検出コイルが出力した2番目以降のパルス電流の立ち上がりによる誘起電圧を第二電極パッドより出力し、この誘起電圧に基づいて外部磁界を検出する。ゆえに、本発明に係る直交フラックスゲートセンサを用いることにより、出力が安定した2番目以降のパルス電流の立ち上がりによる誘起電圧に対応する電圧波形の波高値を測定し、この波高値に基づいて外部磁界を検出することが出来る。
したがって、直交フラックスゲートセンサによって検出される外部磁界の線形性を改善することが可能な外部磁界の検出方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について、図面に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明に係る直交フラックスゲートセンサの一例を説明する概略図である。図1(a)は直交フラックスゲートセンサの平面図であり、図1(b)は図1(a)におけるA−A部分の断面図である。
図1に示すように、本実施の形態に係る直交フラックスゲートセンサ10は、感磁体1及び検出コイル4を備える。
【0017】
感磁体1は、外部磁界により磁気特性が変化する材質からなる。このような感磁体1としては、たとえば、導電性を有する線状、帯状あるいは棒状の軟磁性体素子を用いることができる。本実施の形態において、感磁体1は、2つの軟磁性体1A,1Bにより構成されている。また、感磁体1は、2つの軟磁性体1A,1Bの一端1Aa,1Ba同士が、連結導体7によって電気的に接続されたメアンダ形状の薄膜磁性体としている。
この感磁体1には、第一電極パッド3及び第一接続配線2を通じて接続されたパルス電源8よりパルス電流が供給される。
【0018】
パルス電源8は、波形発生回路を備える。この波形発生回路は、感磁体1にパルス電流を供給するパルス発生回路であり、矩形パルス電流を2つ以上連続して感磁体1に供給する。
【0019】
第一電極パッド3は、パルス電源(波形発生回路)8より供給されたパルス電流を感磁体1に流すための部位であり、GND端子3aとシグナル端子3bとにより構成されている。この第一電極パッド3は、銅(Cu)やアルミニウム(Al)等の非磁性金属からなることが好ましい。
【0020】
第一接続配線2は、感磁体1と第一電極パッド3との間を電気的に接続する非磁性の導電体であり、軟磁性体1Aの他端1AbとGND端子3aとを接続する接続配線2aと、軟磁性体1Bの他端1Bbとシグナル端子3bとを接続する接続配線2bとからなる。この第一接続配線2(2a,2b)は、銅(Cu)やアルミニウム(Al)等の非磁性金属からなることが好ましい。
【0021】
また、検出コイル4は、感磁体1の周囲または近傍にあって感磁体1の磁気特性の変化を電圧の変化として誘起する。この検出コイル4は、二つの平面型スパイラルコイル4a,4bにより構成されている。検出コイル4(4a,4b)は、特に限定されるものではなく、従来のフラックスゲートセンサに用いられるものと同様のものを用いることができる。図1に示す検出コイル4は、矩形状に巻かれた2個の平面型スパイラルコイル4a,4bを直列に接続したものであり、感磁体1の上側または下側の層に(近傍に)配するほか、感磁体1の周囲に巻回されたコイルも使用可能である。センサの薄型化の観点からは、平面型スパイラルコイルが望ましい。なお、矩形状に巻かれた2個の平面型スパイラルコイル4a,4bを直列に接続した際の巻き方向は、「電流の方向が逆向きとなる巻き方向」または「コイルの一方から見てその内周端から外周端に向けての方向が逆向きとなる巻き方向」とすればよい。
【0022】
なお、図1(a)に示すように、本実施の形態において2つの軟磁性体1A,1Bは、一端1Aa,1Baがそれぞれ一方のスパイラルコイル4aの中心部に位置し、他端1Ab,1Bbがそれぞれ他方のスパイラルコイル4bの中心部に位置している。
【0023】
第二電極パッド6は、検出コイル4から誘起電圧を取り出すための部位であり、GND端子6aとシグナル端子6bとにより構成されている。第二電極パッド6(6a,6b)は、電流パルスの全ての立ち上がり、立ち下がり時に、検出コイル4によって誘起された電圧(誘起電圧)を出力する。この第二電極パッド6は、銅(Cu)やアルミニウム(Al)等の非磁性金属からなることが好ましい。
【0024】
第二接続配線5は、検出コイル4(4a,4b)と第二電極パッド6(6a,6b)との間を接続する非磁性の導電体であり、平面型スパイラルコイル4aとGND端子6aとを接続する接続配線5aと、平面型スパイラルコイル4bとシグナル端子6bとを接続する接続配線5bとからなるこの第二接続配線5は、銅(Cu)やアルミニウム(Al)等の非磁性金属からなることが好ましい。
【0025】
また、本発明に係る直交フラックスゲートセンサ10は、第二電極パッド6(6a,6b)が、測定回路を備えるオシロスコープ9と接続されている。この測定回路は、第二電極パッド6(6a,6b)より出力された誘起電圧の内の2番目以降の立ち上がりのみを検出する。なお、2番目以降の立ち上がりのみを検出するとは、2番目の立ち上がりを検出するものであっても良いし、3番目の立ち上がりを検出するものであっても良く、それ以降の立ち上がりを検出するものであっても良い。
【0026】
したがって、パルス電源8より感磁体1(1A,1B)にパルス電流が供給されると、検出コイル4(4a,4b)に電圧が誘起され、この誘起電圧は第二電極パッド6(6a,6b)及び第二接続配線5(5a,5b)を通じて接続されたオシロスコープ9により電圧波形が測定される構成となっている。
【0027】
本実施の形態の直交フラックスゲートセンサ10は、図1(b)に示すように、基板11上に形成された薄型のセンサとして構成されている。
基板11としては、たとえば、下地絶縁層12として酸化膜付きのシリコン(Si)基板のほか、ガラス基板、セラミック基板等の非磁性基板を用いることができる。
【0028】
また、本実施の形態の直交フラックスゲートセンサ10は、感磁体1(1A,1B)と検出コイル4(4a,4b)との間、あるいは他の導体(2a,2b,3a,3b,5a,5b,6a,6b)との間を絶縁する層間絶縁層13を備える。この層間絶縁層13としては、1種または2種以上の材質を適宜選択して用いることが可能であるが、たとえば、プラズマCVD法によるシリコン酸化膜等の酸化膜や樹脂等の有機絶縁膜などにより構成することができる。
【0029】
また、検出コイル4(4a,4b)の上に、封止絶縁層14を設けても良い。封止絶縁層14は、層間絶縁層13と同様の、あるいは異なる絶縁膜から構成することができる。
本実施の形態において、層間絶縁層13は、第一電極パッド3(3a,3b)および第二電極パッド6(6a,6b)を露出する開口部15を有し、封止絶縁層14は、第一電極パッド3(3a,3b)および第二電極パッド6(6a,6b)を露出する開口部16を有する。
【0030】
上記のように構成された直交フラックスゲートセンサ10を用いて外部磁界を検出する場合、矩形パルス電流を2つ以上連続して感磁体1(1A,1B)に供給する。そして、検出コイル4(4a,4b)が出力した2番目以降のパルス電流の立ち上がりによる誘起電圧に基づいて、感磁体1(1A,1B)に印加された磁界を検出する。すなわち、パルス電源8より感磁体1(1A,1B)にパルス電流が2つ以上連続して供給されると、検出コイル4(4a,4b)に電圧が誘起され、オシロスコープ9によりこの誘起電圧の電圧波形が測定される。
【0031】
本実施の形態の直交フラックスゲートセンサ10での外部磁界の検出は、図2に示すように、矩形パルス電流を2つ以上連続して感磁体1に供給し、2番目以降のパルス電流の立ち上がりによる誘起電圧に対応する電圧波形の波高値を測定し、この波高値に基づいて感磁体に印加された磁界を検出する。図2(a)は、パルス電源8より供給されるパルス電流の波形を示し、図2(b)は、検出コイル4(4a,4b)に誘起される電圧の波形を示す。図2(b)において、2番目の立ち上がり波形に対応する電圧波形WPの波高値Vを測定し、感磁体1(1A,1B)に印加された磁界を波高値Vに基づいて検出するものとなっている。
【0032】
本実施の形態の直交フラックスゲートセンサ10においては、矩形パルス電流を2つ以上連続して感磁体1に供給する際、連続した前のパルスの立ち下がりから後のパルスの立ち上がりまでの時間が所定の時間t以下の間隔となるようにパルス電流を供給する。この所定の時間tとしては、500nsec以下の間隔が好ましく、100nsec以下の間隔が望ましい。
【0033】
なお、本発明の機能を直交フラックスゲートセンサ10は、感磁体1へパルス電流を供給したとき、パルス電流の立ち上がり波形に同期して、検出コイル4に誘起された誘起電圧の波高値を検出すると共に、それぞれの波高値を保持する機能を有する。パルス電流の立ち上がり波形及び立ち下がり波形に同期した制御を行う方法としては、パルス電流の電流値を時間微分してその微分値を所定の閾値と比較し、微分値が正の所定値以上になったときをパルスの立ち上がりとして検出する。一方、微分値が負の所定値以上になったときをパルスの立ち下がりとして検出する方法が挙げられる。パルス電流は、立ち上がり及び立ち下がりが急峻であるため、この集積回路(IC)における検出が容易になるという利点がある。
【実施例】
【0034】
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
まず、図1に示す構造の直交フラックスゲートセンサ10を製造した。感磁体1は、スパッタ法とエッチングを組み合わせて、ライン/スペース(L/S)が30μm/20μm、磁性体膜の厚さが1μm、長さが300μmの感磁体素子2個1A,1BをCoNbZr(アモルファス)で作製した。また、検出コイル4は、銅(Cu)のメッキ法によってスパイラル型に形成された導体層4a,4bからなり、ライン/スペース(L/S)は8μm/8μmで、コイルを構成する導体層の厚さは5μmである。第一電極パッド3は、一方の電極パッド3aをパルス用GND端子とし、他方の電極パッド3bをパルス用シグナル端子として、パルス発生回路である波形発生回路を備えるパルス電源8に接続した。また、第二電極パッド6は、一方の電極パッド6aを出力用GND端子とし、他方の電極パッド6bを出力用シグナル端子として、測定回路を備えるオシロスコープ9に接続した。基板11はガラス基板、下地絶縁層12はSiO膜であり、層間絶縁層13及び封止絶縁層14は、ポリイミド(PI)からなる樹脂膜とした。
【0035】
<実施例1>
上述のように構成した直交フラックスゲートセンサの感磁体に対し、電流値0−100mA、立ち上がり時間3nsec、パルス幅50nsec、立ち下がり時間3nsecのパルス電流を、連続した前のパルスの立ち下がりから後のパルスの立ち上がりまでの時間が200nsecの間隔で連続して2個供給し、出力電圧をオシロスコープで測定した。また、パルス周期は5μsecである。オシロスコープでは、2番目以降のパルス電流の立ち上がりによる誘起電圧に基づいて外部磁界を検出し、その線形性を求めたところ、1.2%fsであった。ここで、fsは「フルスケール」を意味する。
【0036】
<比較例>
また、対照として、上述のように構成した直交フラックスゲートセンサの感磁体に対し、電流値0−100mA、立ち上がり時間3nsec、パルス幅50nsec、立ち下がり時間3nsecのパルス電流を1個供給し、出力電圧をオシロスコープで測定した。また、パルス周期は5μsecである。オシロスコープでは、パルス電流の立ち上がりによる誘起電圧に基づいて外部磁界を検出し、その線形性を求めたところ、6.5%fsであった。
【0037】
以上の測定結果より、1個のパルス電流による誘起電圧に基づいて検出した外部磁界の線形性は6.5%fsであったが、本発明に係る直交フラックスゲートセンサでは、線形性は1.2%fsとなり、検出される外部磁界の線形性が向上することが分かる。したがって、直線性の良い、ヒステリシスが低下したセンサ特性を得ることができた。
【0038】
<実施例2>
また、同様に構成した直交フラックスゲートセンサの感磁体に対し、電流値0−100mA、パルス幅50nsecのパルス電流を、連続した前のパルスの立ち下がりから後のパルスの立ち上がりまでの時間が、50nsec、250nsec、400nsec、1000nsec、5000nsecの間隔で2個連続して供給し、出力電圧をオシロスコープで測定した。オシロスコープでは、2番目以降のパルス電流の立ち上がりによる誘起電圧に基づいて外部磁界を検出し、その線形性をそれぞれ求めた。その結果を、図3のグラフに示す。
【0039】
以上の測定結果より、本発明に係る直交フラックスゲートセンサでは、連続した前のパルスの立ち下がりから後のパルスの立ち上がりまでの時間が、500nsec以下の間隔でパルス電流を供給すると、線形性が向上し好ましく、同100nsec以下の間隔でパルス電流を供給すると、線形性が著しく向上し望ましくなることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、直交フラックスゲート方式の磁気センサとして、高感度で小型の各種磁気センサに好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係る直交フラックスゲートセンサの一例を示す概略図である。
【図2】本発明に係る直交フラックスゲートセンサによって感磁体へ印加される矩形パルス電流と出力される誘起電圧波形との関係を示す図である。
【図3】本発明に係る直交フラックスゲートセンサで供給する矩形パルス電流の間隔と線形性の関係を示す図である。
【図4】従来の直交フラックスゲートセンサの一例を示す概略図である。
【図5】従来の直交フラックスゲートセンサによって感磁体へ印加される矩形パルス電流と出力される誘起電圧波形との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0042】
1 感磁体、2 第一接続配線、3 第一電極パッド、4 検出コイル、5 第二接続配線、6 第二電極パッド、7 連結導体、8 パルス電源(波形発生回路)、9 オシロスコープ(測定回路)、10 直交フラックスゲートセンサ、11 基板、12 下地絶縁層、13 層間絶縁層、14 封止絶縁層、15,16 開口部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部磁界により磁気特性が変化する感磁体と、
前記感磁体にパルス電流を供給する波形発生回路と、
前記波形発生回路より供給されたパルス電流を前記感磁体に流すための第一電極パッドと、
前記感磁体と前記第一電極パッドとの間を接続する第一接続配線と、
前記感磁体の周囲または近傍にあって前記感磁体の磁気特性の変化を電圧の変化として誘起する検出コイルと、
前記検出コイルから誘起電圧を取り出すための第二電極パッドと、
前記検出コイルと前記第二電極パッドとの間を接続する第二接続配線と、
を少なくとも備えた直交フラックスゲートセンサにおいて、
前記波形発生回路は、矩形パルス電流を2つ以上連続して前記感磁体に供給し、
前記第二電極パッドから出力された2番目以降のパルス電流の立ち上がりによる誘起電圧を検出する、
ことを特徴とする直交フラックスゲートセンサ。
【請求項2】
前記第二電極パッドは、前記2番目以降のパルス電流の立ち上がりによる前記誘起電圧を検出する測定回路と接続されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の直交フラックスゲートセンサ。
【請求項3】
前記波形発生回路は、連続した前のパルスの立ち下がりから後のパルスの立ち上がりまでの時間が500nsec以下の間隔で前記パルス電流を供給する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の直交フラックスゲートセンサ。
【請求項4】
前記波形発生回路は、連続した前のパルスの立ち下がりから後のパルスの立ち上がりまでの時間が100nsec以下の間隔で前記パルス電流を供給する、
ことを特徴とする請求項3に記載の直交フラックスゲートセンサ。
【請求項5】
外部磁界により磁気特性が変化する感磁体と、前記感磁体にパルス電流を供給する波形発生回路と、前記波形発生回路より供給されたパルス電流を前記感磁体に流すための第一電極パッドと、前記感磁体と前記第一電極パッドとの間を接続する第一接続配線と、前記感磁体の周囲または近傍にあって前記感磁体の磁気特性の変化を電圧の変化として誘起する検出コイルと、前記検出コイルから誘起電圧を取り出すための第二電極パッドと、前記検出コイルと前記第二電極パッドとの間を接続する第二接続配線と、少なくとも備えた直交フラックスゲートセンサを用いた外部磁界の検出方法において、
前記直交フラックスゲートセンサとして、矩形パルス電流を2つ以上連続して前記波形発生回路より前記感磁体に供給するものを用い、
前記検出コイルが出力した2番目以降のパルス電流の立ち上がりによる誘起電圧を前記第二電極パッドより出力し、この誘起電圧に基づいて外部磁界を検出する、
ことを特徴とする直交フラックスゲートセンサを用いた外部磁界の検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−139257(P2010−139257A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−313299(P2008−313299)
【出願日】平成20年12月9日(2008.12.9)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】