説明

直動式アクチュエータ

【課題】 構造が簡単で小型化が可能であり、応力の大きさと発生速度を自由に制御することができる直動式アクチュエータを提供することである。
【解決手段】 積層状態となるように配列された複数枚の絶縁材料製のシート(12,16)を備え、各シートの表面及び/又は裏面に1個又は複数個の導電材料製の渦巻き状のコイル(12a,12b,12c,16a,16b,16c)がそれぞれ形成されており、各コイルに通電することにより各コイルの箇所において形成される磁力線同士の引力と斥力によりシートを移動させるように構成されていることを特徴とする直動式アクチュエータ(10)が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直動式のアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、産業界で使用されている動力源は、動作の方向から分類すると、回転式と直動式に大別される。このうち直動式動力源は、現在においても、回転式動力源を経由するように構成されているものが殆どである。
【0003】
また、軸にスプラインを設け、低摩擦の摺動装置を介して、回転運動を直動式動力源に変換する機構も知られている。また、簡単な直動式動力源として、ひも状のものを巻き上げる装置もある。さらに、近年、新たな直動式動力源として、リニアモータが提案されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特開2005−58351号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、回転式動力源を経由するような型式のものでは、若干のエネルギーロスが生ずるうえ、その構造上、発生する応力を広範囲に調整しようとすると、特殊な機構や制御方法が必要になるとともに、応力の発生速度についてもコントローラを介しての制御となり敏感な速度変更には対応し難いという課題がある。また、スプラインを設ける型式のものでは、インバータ制御を併用する場合、低速時と高速時で応力の大きさを自由に選択することが不可能であるという課題がある。また、ひも状のものを巻き上げる装置では、重力やバネ等の副次的応力も同時に必要となるため、複雑な動きを制御することが困難であるという課題がある。さらに、リニアモータでは、永久磁石やコイルが大きくなるとともに、微小な動きを制御するのが困難であるという課題がある。
【0006】
本発明は、このような状況に鑑みて開発されたものであって、構造が簡単で小型化が可能であり、応力の大きさと発生速度を自由に制御することができる直動式アクチュエータを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願請求項1に記載の直動式アクチュエータは、積層状態となるように配列された複数枚の絶縁材料製のシートを備え、各シートの表面及び/又は裏面に1個又は複数個の導電材料製の渦巻き状のコイルがそれぞれ形成されており、各コイルに通電することにより各コイルの箇所において形成される磁力線同士の引力と斥力により前記シートを移動させるように構成されていることを特徴とするものである。
【0008】
本願請求項2に記載の直動式アクチュエータは、前記請求項1のアクチュエータにおいて、同一シートにおいて隣接する前記コイルが、互いに逆回りの渦巻きを形作るように形成され、或いは、通電方向を逆にするように形成されていることを特徴とするものである。
【0009】
本願請求項3に記載の直動式アクチュエータは、前記請求項1又は2のアクチュエータにおいて、前記シートの各コイルが、前記引力と斥力の影響を受け易いように、直上及び直下に位置するシートの対応するコイルに対して少なくとも一部重複するように位置決めされていることを特徴とするものである。
【0010】
本願請求項4に記載の直動式アクチュエータは、前記請求項1から請求項3までのいずれか1項のアクチュエータにおいて、前記シートが潤滑液又は潤滑粉体が満たされた容器内に収容されていることを特徴とするものである。
【0011】
本願請求項5に記載の直動式アクチュエータは、前記請求項1から請求項3までのいずれか1項のアクチュエータにおいて、前記シートが低摩擦材料で形成され、或いは、前記シートに低摩擦材料製の膜が貼られていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、構造が簡単で且つ小型化することができる直動式アクチュエータが提供される。本発明の直動式アクチュエータでは、コイルの設置箇所や巻き数、電流の大きさや方向、ブロックの設置箇所などを変化させることにより、応力の大きさと発生速度を自由に制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態に係る直動式アクチュエータについて詳細に説明する。図1(a)は本発明の好ましい実施の形態に係る直動式アクチュエータを概略的に示した斜視図、図1(b)は図1(a)の直動式アクチュエータの断面図である。図1(a)において全体として参照符号10で示される本発明の好ましい実施の形態に係る直動式アクチュエータは、矩形の第1シート12と、第1シート12の端部に連結された第1ブロック14と、第1シート12の下方に僅かに隙間を隔てて配置された矩形の第2シート16と、第1ブロック14と対向する箇所に第2シート16の端部に連結されて配置された第2ブロック18とを備えている。
【0014】
第1シート12は、合成樹脂材料のような絶縁材料で形成されており、第1シート12の表面には、導電材料で形成された複数の(図1(a)及び図1(b)では3個の)渦巻き状のコイル12a、12b、12cが配置されている。隣接するコイル12a、12b、12cは、互いに逆回りになるように(例えば、図1(a)に示されるように、コイル12aが時計回りであれば、コイル12aに隣接するコイル12bは反時計回り、そしてコイル12bに隣接するコイル12cは時計回りになるように)形作られている。なお、各コイル12a、12b、12cは、シート12にプリントしたものでもよく、シート12に埋め込み処理したものでもよい。
【0015】
第2シート16も、第1シート12と同様に、絶縁材料で形成されており、その表面には、導電材料で形成された複数の渦巻き状のコイル16a、16b、16cが配置されている。隣接するコイル16a、16b、16cは、互いに逆回りになるように形作られている。各コイル16a、16b、16cは、第2シート16にプリントしたものでもよく、第2シート16に埋め込み処理したものでもよい。
【0016】
なお、第2シート16の各コイル16a、16b、16cは、詳細には後述するように各コイルに発生する磁力線の影響を受け易いように、図1(b)に示されるように、側面視で第1シート12の対応するコイル(それぞれ12a、12b、12c)に少なくとも一部重複するように位置決めするのが好ましい。
【0017】
第1ブロック14は、図示されている位置に固定されている(従って、第1シート12も固定されている)。これに対して、第2ブロック18は、図1(a)及び図1(b)において矢印で示されるように、第1ブロック14に対して移動するように構成されている(従って、第2シート16も第1シート12に対して移動するように構成されている)。
【0018】
各コイル12a、12b、12c、16a、16b、16cに、それぞれの接点12a1、12a2、12b1、12b2、12c1、12c2、16a1、16a2、16b1、16b2、16c1、16c2を介して通電されるようになっている。
【0019】
各コイル12aに通電することによって、電流の磁気作用のため磁界が発生し、第1シート12と直交する方向に磁力線が形成される。磁力線の正又は負の方向は、電流の方向及びコイルの渦巻きの方向によって決定される(他のコイル12b、12c、16a、16b、16cについても、コイル12aと同様である)。
【0020】
以上のように構成された直動式アクチュエータ10の作動について説明する。各コイル12a、12b、12c、16a、16b、16cに通電すると、各コイルの箇所において磁力線が形成され、形成された磁力線が異極であると引力が作用し、同極であると斥力が作用する。このようにして作用する引力/斥力を制御することにより、第2シート16が水平方向に移動する(図1(b)の矢印参照)。この移動を、例えばシリンダ等に接続することにより、往復動を得ることができる。
【0021】
上述の実施の形態では、2枚のシート12、16が用いられているが、シート枚数を3枚以上にしてもよい。図2(a)は10枚のシートを有する直動式アクチュエータを概略的に示した斜視図、図2(b)は図2(a)の直動式アクチュエータの断面図である。図2(a)及び図2(b)に示される直動式アクチュエータは、矩形の5枚の絶縁材料製の第1シート群121、122、123、124、125と、第1シート群121〜125の端部に連結された第1ブロック140と、第1シート群の各シートの間に配置された矩形の5枚の絶縁材料製の第2シート群161、162、163、164、165と、第1ブロック140と対向する箇所に第2シート群161〜165の端部に連結されて配置された第2ブロック180とを備えている。各シートの表面には、導電材料製の渦巻き状のコイル121a〜121c、122a〜122c、123a〜123c、124a〜124c、125a〜125c、161a〜161c、162a〜162c、163a〜163c、164a〜164c、165a〜165cがそれぞれ設けられている。
【0022】
また、上述の実施の形態では、シートの表面にコイルが設けられているが、シートの表面と裏面の両方の面にコイルを設けてもよい。図3は、表面と裏面の両方にコイルが設けられているシートの例を示した拡大図である。図3に示される直動式アクチュエータでは、絶縁材料製のシート212の表面には、導電材料製の渦巻き状のコイル212a、212bが設けられ、シート212の裏面にも、導電材料製の渦巻き状のコイル212′a、212′bが設けられており、コイル212aとコイル212′aはコア状のコイル212′′aによって連結され、コイル212bとコイル212′bはコア状のコイル212′′bによって連結されている。
【0023】
また、上述の実施の形態では、第1ブロック14が固定支持され、第2ブロック18が第1ブロック14に対して移動可能となるように支持されているが、両方のブロックが互いに移動可能となるように構成してもよい。
【0024】
また、上述の実施の形態では、シート12、16がほぼ同じ寸法の矩形の形状を有しているが、シートの形状を任意にしてもよく、各シートの寸法を異なるものにしてもよい。図4に示される直動式アクチュエータは、ほぼ同じ高さに位置する2枚の矩形の絶縁材料製のシート312、312′と、シート312、312′の各端部にそれぞれ連結されたブロック314、314′と、シート312、312′の下方に僅かに隙間を隔てて配置された矩形の絶縁材料製のシート316と、シート316の端部に連結されたブロック318とを備えている。そして、シート312の表面には、導電材料製の渦巻き状のコイル312a、312b、312c、312d、312eが設けられ、シート312′の表面には、導電材料製の渦巻き状のコイル312′a、312′b、312′c、312′d、312′eが設けられており、シート316の対応する箇所にも、導電材料製の渦巻き状のコイルが設けられている。
【0025】
また、上述の実施の形態では、互いに対向する箇所にブロック14、18が設けられているが、例えば図5に示されるように、ブロックが対向する箇所に設けられていなくともよい。図5に示される直動式アクチュエータは、コイル412a〜412dを有するシート412と、シート412の端部に連結されたブロック414と、シート412の下方に僅かに隙間を隔てて配置され、コイル412a〜412dに対応するコイルを有するシート416と、ブロック414に対して90°の方向に配置され、シート416の端部に連結されたブロック418とを備えている。
【0026】
また、上述の実施の形態では、同一シートにおいて隣接するコイル(例えば、コイル12aとコイル12b)が互いに逆回りの渦巻きを形作るように形成されているが、コイルへの通電方向を逆にすることによって、隣接する同一方向の渦巻きにおいても逆方向の磁力線を生成させることができる。
【0027】
また、上述の実施の形態では、第1シート12と第2シート16との間に僅かな隙間が設けられているが、シートを潤滑液又は潤滑粉体が満たされた容器内に収容することによって、或いは、シートを低摩擦材料で形成し又はシートに低摩擦材料製の膜を貼ることによって、シート間に隙間を設けずにシート同士を密着させて積層配置してもよい。
【0028】
本発明は、以上の発明の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1(a)は本発明の好ましい実施の形態に係る直動式アクチュエータを示した斜視図、図1(b)は図1(a)の直動式アクチュエータの断面図である。
【図2】図2(a)は10枚のシート枚数を有する直動式アクチュエータを示した斜視図、図2(b)は図2(a)の直動式アクチュエータの断面図である。
【図3】表面と裏面の両方にコイルが設けられているシートの例を示した拡大図である。
【図4】変形形態の直動式アクチュエータを示した斜視図である。
【図5】別の変形形態の直動式アクチュエータを示した斜視図である。
【符号の説明】
【0030】
10 直動式アクチュエータ
12 第1シート
12a、12b、12c コイル
14 第1ブロック
16 第2シート
16a、16b、16c コイル
18 第2ブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層状態となるように配列された複数枚の絶縁材料製のシートを備え、各シートの表面及び/又は裏面に1個又は複数個の導電材料製の渦巻き状のコイルがそれぞれ形成されており、各コイルに通電することにより各コイルの箇所において形成される磁力線同士の引力と斥力により前記シートを移動させるように構成されていることを特徴とする直動式アクチュエータ。
【請求項2】
同一シートにおいて隣接する前記コイルが、互いに逆回りの渦巻きを形作るように形成され、或いは、通電方向を逆にするように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の直動式アクチュエータ。
【請求項3】
前記シートの各コイルが、前記引力と斥力の影響を受け易いように、直上及び直下に位置するシートの対応するコイルに対して少なくとも一部重複するように位置決めされていることを特徴とする請求項1又は2に記載の直動式アクチュエータ。
【請求項4】
前記シートが潤滑液又は潤滑粉体が満たされた容器内に収容されていることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の直動式アクチュエータ。
【請求項5】
前記シートが低摩擦材料で形成され、或いは、前記シートに低摩擦材料製の膜が貼られていることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の直動式アクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−148508(P2008−148508A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−335194(P2006−335194)
【出願日】平成18年12月13日(2006.12.13)
【出願人】(306031010)ジグ・エンジニアリング株式会社 (14)
【Fターム(参考)】