直動案内軸受装置
【課題】転動体のスキューの抑制力を向上させて、転動体の円滑な循環を確保することができる直動案内軸受装置を提供する。
【解決手段】案内レール1と、該案内レール1に跨架されたスライダ2とを有し、案内レール1に形成された4つの転動体転動路3a〜3d、及びスライダ2に形成された4つの転動体転動路5a〜5dの少なくともいずれかの表面に、転動体6の進行方向に直交する方向の転動体6の動きを抑制する転動体案内溝100が転動体6の進行方向に沿って軸方向に対称に複数形成されている。
【解決手段】案内レール1と、該案内レール1に跨架されたスライダ2とを有し、案内レール1に形成された4つの転動体転動路3a〜3d、及びスライダ2に形成された4つの転動体転動路5a〜5dの少なくともいずれかの表面に、転動体6の進行方向に直交する方向の転動体6の動きを抑制する転動体案内溝100が転動体6の進行方向に沿って軸方向に対称に複数形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば工作機械や射出成形機等の産業機械分野等に用いられる直動案内軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の直動案内軸受装置としては、例えば、特許文献1に開示されたものが知られている。
この直動案内軸受装置は、図21に示すように、軸方向に延びる案内レール101と、該案内レール101上に軸方向に相対移動可能に跨架されたスライダ102とを備えている。
案内レール101の幅方向の両側面にはそれぞれ軸方向に延びる転動体転動路103が片側二条列ずつ、合計4条列形成されており、スライダ102のスライダ本体102Aには、その両袖部104の内側面にそれぞれ転動体転動路103に対向する転動体転動路105が形成されている。
【0003】
両転動体転動路103,105の間には転動体としての多数の円筒ころ106が転動自在に装填され、これらの円筒ころ106の転動を介してスライダ102が案内レール101上を軸方向に沿って相対移動できるようになっている。
この移動につれて、案内レール101とスライダ102との間に介在する円筒ころ106は転動してスライダ102の軸方向の端部に移動するが、スライダ102を軸方向に継続移動させていくためには、これらの円筒ころ106を無限に循環させる必要がある。
【0004】
このため、スライダ本体102Aの袖部104内に更に軸方向に貫通する孔107を形成して該孔107に内部が円筒ころ106の通路(転動体通路)108aとされた循環チューブ108を嵌め込むと共に、スライダ本体102Aの軸方向の両端にそれぞれ転動体循環部品としての一対のエンドキャップ109を、ねじ等を介して固定し、このエンドキャップ109に両転動体転動路103,105間と上記転動体通路108aとを連通する円弧状に湾曲した方向転換路(図示せず)を形成することにより、円筒ころ106の無限循環軌道を形成している。
ここで、無限循環する多数の円筒ころ106はころ軸を中心に同一方向に回転するため、互いに隣り合う円筒ころ106同士が接触した場合、その接触部分のころ速度の向きは互いに逆方向になり、それにより発生する力は円筒ころ106の円滑な転動を妨げることになる。
【0005】
また、転動体に円筒ころ106を使用することで、ボールを使用する場合に比べて剛性及び負荷能力が高くなる反面、走行中の円筒ころ106の軸振れ、いわゆるスキューが発生して作動性を悪化させる要因になる。
このような事情から、従来においては、互いに隣り合う円筒ころ106間に保持ピース120を介装することで、円筒ころ同士の直接接触を防止すると共に、前記スキューを抑制し、これにより、スライダ102の走行を滑らかにすると共に、走行中の騒音低減を図るようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−127338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された直動案内軸受装置においては、円筒ころの微少角度のスキューを抑制するという目的を達成するために、保持ピースの形状及び寸法などを特定しているが、保持ピースを樹脂製とすることによってスキューの抑制力が弱く、円筒ころの進行方向に対して直交方向のズレ抑制力も弱いことから、スキューの抑制力を向上させるために改善の余地があった。
そこで、本発明は上記の問題点に着目してなされたものであり、その目的は、転動体のスキューの抑制力を向上させて、前記転動体の円滑な循環を確保することができる直動案内軸受装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明の請求項1に係る直動案内軸受装置は、軸方向に延びる転動体転動路を有する案内レールと、
該案内レールの前記転動体転動路に対向する転動体転動路を有し、これらの両転動体転動路間に挿入された転動体の転動を介して前記軸方向に沿って相対移動可能に前記案内レールに跨架され、前記転動体を循環させる循環路が内部に形成されたスライダとを備えた直動案内軸受装置であって、
前記案内レールに形成された4つの転動体転動路、及び前記スライダの4つの転動体転動路の少なくともいずれかの表面に、前記転動体の進行方向に直交する方向の前記転動体の動きを抑制する転動体案内溝が前記転動体の進行方向に沿って全起案愛レールの軸方向に対称に複数形成されたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、前記案内レール及び前記スライダに形成された8つの転動体転動路の少なくともいずれかの表面に、転動体案内溝が前記転動体の進行方向に沿って前記案内レールの軸方向に対称に複数形成されたので、前記転動体の進行方向に直交する方向の前記転動体の動きが抑制され、前記転動体のスキューの抑制力を向上させて、前記転動体の円滑な循環を確保することができる直動案内軸受装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る直動案内軸受装置の第1の実施形態の構成を示す部分断面図である。
【図2】本発明に係る直動案内軸受装置の第1の実施形態における転動体案内溝の構成を示す図であり、(a)は平面図、(b)は断面図である。
【図3】(a),(b)は共に本発明に係る直動案内軸受装置の第1の実施形態における転動体案内溝の形成方法を説明する断面図である。
【図4】本発明に係る直動案内軸受装置の第2の実施形態の構成を示す部分断面図である。
【図5】本発明に係る直動案内軸受装置の第2の実施形態における転動体案内溝の形成方法を説明する断面図である。
【図6】本発明に係る直動案内軸受装置の第3の実施形態の構成を示す部分断面図である。
【図7】本発明に係る直動案内軸受装置の第3の実施形態における転動体案内溝の形成方法を説明する断面図である。
【図8】本発明に係る直動案内軸受装置の第4の実施形態の構成を示す部分断面図である。
【図9】(a),(b)は共に本発明に係る直動案内軸受装置の第4の実施形態における転動体案内溝の形成方法を説明する断面図である。
【図10】本発明に係る直動案内軸受装置の第5の実施形態の構成を示す部分断面図である。
【図11】(a),(b)は共に本発明に係る直動案内軸受装置の第5の実施形態における転動体案内溝の形成方法を説明する断面図である。
【図12】本発明に係る直動案内軸受装置の第6の実施形態の構成を示す部分断面図である。
【図13】本発明に係る直動案内軸受装置の第6の実施形態における転動体案内溝の形成方法を説明する断面図である。
【図14】本発明に係る直動案内軸受装置の第7の実施形態の構成を示す部分断面図である。
【図15】本発明に係る直動案内軸受装置の第7の実施形態における転動体案内溝の形成方法を説明する断面図である。
【図16】本発明に係る直動案内軸受装置の第8の実施形態の構成を示す部分断面図である。
【図17】本発明に係る直動案内軸受装置の第8の実施形態における転動体案内溝の形成方法を説明する断面図である。
【図18】本発明に係る直動案内軸受装置の第9の実施形態の構成を示す部分断面図である。
【図19】(a),(b)は共に本発明に係る直動案内軸受装置の第9の実施形態における転動体案内溝の形成方法を説明する断面図である。
【図20】本発明に係る直動案内軸受装置の第10の実施形態の構成を示す部分断面図である。
【図21】従来の直動案内軸受装置の構成を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る直動案内軸受装置の実施形態について図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明に係る直動案内軸受装置の第1の実施形態の構成を示す部分断面図である。また、図2は、本発明に係る直動案内軸受装置の第1の実施形態における転動体案内溝の構成を示す図であり、(a)は平面図、(b)は断面図である。また、図3(a),(b)は、共に本発明に係る直動案内軸受装置の第1の実施形態における転動体案内溝の形成方法を説明する断面図である。
【0012】
図1に示すように、本実施形態の直動案内軸受装置は、軸方向に延びる案内レール1と、該案内レール1上に軸方向に相対移動可能に跨架されたスライダ2とを備えている。
案内レール1の幅方向の両側面には、それぞれ軸方向に延びる転動体転動路3が片側二条列ずつ、合計4条列形成されて転動体転動路3a〜3dを構成している。
また、スライダ2は、スライダ本体2Aと、該スライダ本体2Aの軸方向の両端に固定されたエンドキャップ(図示せず)とを有する。スライダ2のスライダ本体2Aには、その両袖部4の内側面にそれぞれ転動体転動路3に対向する転動体転動路5が片側二条列ずつ、合計4条列形成されて転動体転動路5a〜5dを構成している。
【0013】
ここで、図1に示すように、案内レール1の幅方向の上側(案内レール1がスライダ2によって覆われている側)の一方の側面に形成された転動体転動路を転動体転動路3aとし、この転動体転動路3aに軸方向に対称に位置するように、案内レール1の幅方向の上側の他方の側面に形成された転動体転動路を転動体転動路3bとする。また、案内レール1の幅方向の下側(スライダ2の開口側)の一方の側面に形成された転動体転動路を転動体転動路3cとし、この転動体転動路3cに軸方向に対称に位置するように、案内レール1の幅方向の下側の他方の側面に形成された転動体転動路を転動体転動路3dとする。また、スライダ2の幅方向の上側の一方の側面に形成された転動体転動路を転動体転動路5aとし、この転動体転動路5aに軸方向に対称に位置するように、スライダ2の幅方向の上側の他方の側面に形成された転動体転動路を転動体転動路5bとする。また、スライダ2の幅方向の下側の一方の側面に形成された転動体転動路を転動体転動路5cとし、この転動体転動路5cに軸方向に対称に位置するように、スライダ2の幅方向の上側の他方の側面に形成された転動体転動路を転動体転動路5dとする。すなわち、転動体転動路5a〜5dのうち、転動体転動路3aには転動体転動路5aが対向し、転動体転動路3bには転動体転動路5bが対向し、転動体転動路3cには転動体転動路5cが対向し、転動体転動路3dには転動体転動路5dが対向している。
【0014】
両転動体転動路3,5の間には転動体6としての多数の円筒ころ6が転動自在に装填され、これらの円筒ころ6の転動を介してスライダ2が案内レール1上を軸方向に沿って相対移動できるようになっている。
この移動につれて、スライダ2を軸方向に継続移動させていくために、スライダ本体2Aの袖部4内に更に軸方向に貫通する孔7を形成して該孔7に内部が円筒ころ6の通路(転動体通路)8aとされた循環チューブ8が嵌め込まれている。また、スライダ本体2Aの軸方向の両端にそれぞれ転動体循環部品として、ねじ等を介して固定された一対のエンドキャップ9には、両転動体転動路3,5間と転動体通路8aとを連通する円弧状に湾曲した方向転換路(図示せず)が形成されている。このように、循環チューブ8の通路(転動体通路)8a及びエンドキャップ9の方向転換路(図示せず)によって円筒ころ6の無限循環軌道が形成されている。
【0015】
また、互いに隣り合う円筒ころ6同士の接触により、円筒ころ6の円滑な転動が妨げられることを防ぐために、互いに隣り合う円筒ころ6,6間には、保持器20が介装されている(図2(a)参照)。
ここで、本発明に係る直動案内軸受装置において、案内レール1及びスライダ2に形成された転動体転動路3a〜3d,5a〜5dの少なくともいずれかの表面には、転動体案内溝100が円筒ころ6の進行方向に沿って軸方向に対称に複数形成されている。本実施形態の直動案内軸受装置においては、案内レール1の全ての転動体転動路3a〜3dの表面に転動体案内溝100が形成されている。
【0016】
図2(a),(b)に示すように、転動体案内溝100は、保持器20によって連結された円筒ころ6,6の進行方向に直交する方向の円筒ころ6の動きを抑制する溝形状に形成される。これら転動体転動路3a〜3dに形成される転動体案内溝100は、図3(a),(b)に示すように、案内レール1の全ての転動体転動路3a〜3dの表面を、円筒ころ6が遊嵌する寸法の幅で砥石50を用いて研削することによって形成される。これら転動体案内溝100の幅寸法は、円筒ころ6の進行方向(図2(a)中の矢印d方向)の動きを妨げない程度に、円筒ころ6の幅より僅かに広く設定される。
このような構成を有することによって、転動体(円筒ころ)6の進行方向(図2(a)中の矢印d方向)に直交する方向(図2(a),(b)中の矢印w方向)の転動体6の動きが抑制され、転動体6のスキューの抑制力を向上させて、転動体6の円滑な循環を確保することができる。
【0017】
(第2の実施形態)
図4は、本発明に係る直動案内軸受装置の第2の実施形態の構成を示す部分断面図である。また、図5は、本発明に係る直動案内軸受装置の第2の実施形態における転動体案内溝の形成方法を説明する断面図である。なお、本実施形態の直動案内軸受装置の構成は前述した第1の実施形態と基本的に略同一であるため、第1の実施形態と重複又は相当する部材等については図に同一符号を付して説明を省略する。
【0018】
図4に示すように、本実施形態の直動案内軸受装置は、案内レール1の下側の転動体転動路3c,3dの表面に転動体案内溝100が形成されている。これら転動体転動路3c,3dに形成される転動体案内溝100は、図5に示すように、案内レール1の下側の転動体転動路3c,3dの表面に、転動体6が遊嵌する寸法の幅で砥石50を用いて研削することによって形成される。
【0019】
このような構成を有することによって、転動体6の進行方向に直交する方向の転動体6の動きが抑制され、転動体6のスキューの抑制力を向上させて、転動体6の円滑な循環を確保することができる直動案内軸受装置を提供することができる。特に、スライダ2に対して図4中に示す矢印の向きに外部荷重が作用する場合、すなわち、外部荷重が転動体転動路3c,3dのみに作用する場合には、外部荷重を受けない転動体転動路3a,3bに転動体案内溝100を形成する必要がなく、製造コストを低減することができる。
【0020】
(第3の実施形態)
図6は、本発明に係る直動案内軸受装置の第3の実施形態の構成を示す部分断面図である。また、図7は、本発明に係る直動案内軸受装置の第3の実施形態における転動体案内溝の形成方法を説明する断面図である。なお、本実施形態の直動案内軸受装置の構成は前述した第1の実施形態と基本的に略同一であるため、第1の実施形態と重複又は相当する部材等については図に同一符号を付して説明を省略する。
【0021】
図6に示すように、本実施形態の直動案内軸受装置は、スライダ2の下側の転動体転動路5c,5dの表面に転動体案内溝100が形成されている。これら転動体転動路5c,5dに形成される転動体案内溝100は、図7に示すように、スライダ2の下側の転動体転動路5c,5dの表面に、転動体6が遊嵌する寸法の幅で砥石50を用いて研削することによって形成される。
【0022】
このような構成を有することによって、転動体6の進行方向に直交する方向の転動体6の動きが抑制され、転動体6のスキューの抑制力を向上させて、転動体6の円滑な循環を確保することができる直動案内軸受装置を提供することができる。特に、前述の第2の実施形態と同様に、外部荷重が転動体転動路5c,5dのみに作用する場合には、外部荷重を受けない転動体転動路5a,5bに転動体案内溝100を形成する必要がなく、製造コストを低減することができる。
【0023】
(第4の実施形態)
図8は、本発明に係る直動案内軸受装置の第4の実施形態の構成を示す部分断面図である。また、図9(a),(b)は、共に本発明に係る直動案内軸受装置の第4の実施形態における転動体案内溝の形成方法を説明する断面図である。なお、本実施形態の直動案内軸受装置の構成は前述した第1の実施形態と基本的に略同一であるため、第1の実施形態と重複又は相当する部材等については図に同一符号を付して説明を省略する。
【0024】
図8に示すように、本実施形態の直動案内軸受装置は、案内レール1の下側の転動体転動路3c、3dの表面、及びスライダ2の下側の転動体転動路5c,5dの表面に転動体案内溝100が形成されている。これら転動体転動路3c,3d,5c,5dに形成される転動体案内溝100は、図9(a),(b)に示すように、案内レール1の下側の転動体転動路3c,3dの表面、及びスライダ2の下側の転動体転動路5c,5dの表面に、転動体6が遊嵌する寸法の幅で砥石50を用いて研削することによって形成される。
【0025】
このような構成を有することによって、転動体6の進行方向に直交する方向の転動体6の動きが抑制され、転動体6のスキューの抑制力を向上させて、転動体6の円滑な循環を確保することができる直動案内軸受装置を提供することができる。この構成は、前述の第2の実施形態及び第3の実施形態を組み合わせたものであるので、外部荷重が転動体転動路3c,3d,5c,5dに作用する場合には、転動体6のより円滑な循環を確保することができる。
【0026】
(第5の実施形態)
図10は、本発明に係る直動案内軸受装置の第5の実施形態の構成を示す部分断面図である。また、図11(a),(b)は、共に本発明に係る直動案内軸受装置の第5の実施形態における転動体案内溝の形成方法を説明する断面図である。なお、本実施形態の直動案内軸受装置の構成は、案内レール及びスライダの断面形状以外は前述した第1の実施形態と基本的に略同一であるため、第1の実施形態と重複又は相当する部材等については図に同一符号を付して説明を省略する。
【0027】
図10に示すように、本実施形態の直動案内軸受装置は、前述の第1の実施形態における案内レール1の転動体転動路の断面形状が凹形状であり、スライダ2の転動体転動路の断面形状が凸形状であったのに対し、案内レール1の転動体転動路の断面形状が凸形状をなし、スライダ2の転動体転動路の断面形状が凹形状をなしている。また、本実施形態の直動案内軸受装置は、スライダ2の全ての転動体転動路5a〜5dの表面に転動体案内溝100が形成されている。これら転動体転動路5a〜5dに形成される転動体案内溝100は、図11(a),(b)に示すように、スライダ2の全ての転動体転動路5a〜5dの表面に、転動体6が遊嵌する寸法の幅で砥石50を用いて研削することによって形成される。
このような構成を有することによって、転動体6の進行方向に直交する方向の転動体6の動きが抑制され、転動体6のスキューの抑制力を向上させて、転動体6の円滑な循環を確保することができる直動案内軸受装置を提供することができる。
【0028】
(第6の実施形態)
図12は、本発明に係る直動案内軸受装置の第6の実施形態の構成を示す部分断面図である。また、図13は、本発明に係る直動案内軸受装置の第6の実施形態における転動体案内溝の形成方法を説明する断面図である。なお、本実施形態の直動案内軸受装置の構成は前述した第5の実施形態と基本的に略同一であるため、第5の実施形態と重複又は相当する部材等については図に同一符号を付して説明を省略する。
【0029】
図12に示すように、本実施形態の直動案内軸受装置は、スライダ2の上側の転動体転動路5a,5bの表面に転動体案内溝100が形成されている。これら転動体転動路5a,5bに形成される転動体案内溝100は、図13に示すように、スライダ2の上側の転動体転動路5a,5bの表面に、転動体6が遊嵌する寸法の幅で砥石50を用いて研削することによって形成される。
【0030】
このような構成を有することによって、転動体6の進行方向に直交する方向の転動体6の動きが抑制され、転動体6のスキューの抑制力を向上させて、転動体6の円滑な循環を確保することができる直動案内軸受装置を提供することができる。特に、スライダ2に対して図12中に示す矢印の向きに外部荷重が作用する場合、すなわち、外部荷重が転動体転動路5a,5bのみに作用する場合には、外部荷重を受けない転動体転動路5c,5dに転動体案内溝100を形成する必要がなく、製造コストを低減することができる。
【0031】
(第7の実施形態)
図14は、本発明に係る直動案内軸受装置の第7の実施形態の構成を示す部分断面図である。また、図15は、本発明に係る直動案内軸受装置の第7の実施形態における転動体案内溝の形成方法を説明する断面図である。なお、本実施形態の直動案内軸受装置の構成は前述した第5の実施形態と基本的に略同一であるため、第5の実施形態と重複又は相当する部材等については図に同一符号を付して説明を省略する。
【0032】
図14に示すように、本実施形態の直動案内軸受装置は、案内レール1の全ての転動体転動路3a〜3dの表面に転動体案内溝100が形成されている。これら転動体転動路3a〜3dに形成される転動体案内溝100は、図15に示すように、案内レール1の全ての転動体転動路3a〜3dの表面に、転動体6が遊嵌する寸法の幅で砥石50を用いて研削することによって形成される。
このような構成を有することによって、転動体6の進行方向に直交する方向の転動体6の動きが抑制され、転動体6のスキューの抑制力を向上させて、転動体6の円滑な循環を確保することができる直動案内軸受装置を提供することができる。
【0033】
(第8の実施形態)
図16は、本発明に係る直動案内軸受装置の第8の実施形態の構成を示す部分断面図である。また、図17は、本発明に係る直動案内軸受装置の第8の実施形態における転動体案内溝の形成方法を説明する断面図である。なお、本実施形態の直動案内軸受装置の構成は前述した第5の実施形態と基本的に略同一であるため、第5の実施形態と重複又は相当する部材等については図に同一符号を付して説明を省略する。
【0034】
図16に示すように、本実施形態の直動案内軸受装置は、案内レール1の上側の転動体転動路3a,3bの表面に転動体案内溝100が形成されている。これら転動体転動路3a,3bに形成される転動体案内溝100は、図17に示すように、案内レール1の上側の転動体転動路3a,3bの表面に、転動体6が遊嵌する寸法の幅で砥石50を用いて研削することによって形成される。
【0035】
このような構成を有することによって、転動体6の進行方向に直交する方向の転動体6の動きが抑制され、転動体6のスキューの抑制力を向上させて、転動体6の円滑な循環を確保することができる直動案内軸受装置を提供することができる。特に、外部荷重が転動体転動路3a,3bのみに作用する場合には、外部荷重を受けない転動体転動路3c,3dに転動体案内溝100を形成する必要がなく、製造コストを低減することができる。
【0036】
(第9の実施形態)
図18は、本発明に係る直動案内軸受装置の第9の実施形態の構成を示す部分断面図である。また、図19(a),(b)は、共に本発明に係る直動案内軸受装置の第9の実施形態における転動体案内溝の形成方法を説明する断面図である。なお、本実施形態の直動案内軸受装置の構成は前述した第5の実施形態と基本的に略同一であるため、第5の実施形態と重複又は相当する部材等については図に同一符号を付して説明を省略する。
【0037】
図18に示すように、本実施形態の直動案内軸受装置は、案内レール1の上側の転動体転動路3a,3bの表面、及びスライダ2の上側の転動体転動路5a,5bの表面に転動体案内溝100が形成されている。これら転動体転動路3a,3b,5a,5bに形成される転動体案内溝100は、図19(a),(b)に示すように、案内レール1の上側の転動体転動路3a,3bの表面及びスライダ2の上側の転動体転動路5a,5bの表面に、転動体6が遊嵌する寸法の幅で砥石50を用いて研削することによって形成される。
【0038】
このような構成を有することによって、転動体6の進行方向に直交する方向の転動体6の動きが抑制され、転動体6のスキューの抑制力を向上させて、転動体6の円滑な循環を確保することができる直動案内軸受装置を提供することができる。この構成は、前述の第6の実施形態及び第8の実施形態を組み合わせたものであるので、外部荷重が転動体転動路3c,3d,5c,5dに作用する場合には、転動体6のより円滑な循環を確保することができる。
【0039】
(第10の実施形態)
図20は、本発明に係る直動案内軸受装置の第10の実施形態の構成を示す図である。なお、本実施形態の直動案内軸受装置の構成は前述した第5の実施形態と基本的に略同一であるため、第5の実施形態と重複又は相当する部材等については図に同一符号を付して説明を省略する。
【0040】
図20に示すように、本実施形態の直動案内軸受装置は、案内レール1の全ての転動体転動路3a〜3dの表面、及びスライダ2の全ての転動体転動路5a〜5dの表面に転動体案内溝100が形成されている。これら転動体転動路3a〜3d,5a〜5dに形成される転動体案内溝100は、図示はしないが、前述の第5の実施形態及び第7の実施形態と同様にして、案内レール1の全ての転動体転動路3a〜3dの表面、及びスライダ2の全ての転動体転動路5a〜5dの表面に、転動体6が遊嵌する寸法の幅で砥石50を用いて研削することによって形成される。
このような構成を有することによって、転動体6の進行方向に直交する方向の転動体6の動きが抑制され、転動体6のスキューの抑制力を向上させて、転動体6の円滑な循環を確保することができる直動案内軸受装置を提供することができる。
【0041】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されずに、種々の変更、改良を行うことができる。例えば、上記実施形態では、複数の転動体案内溝を、案内レールの軸方向に線対称となるように設置しているが、案内レールの軸方向に点対称(例えば、スライダの転動体転動路に転動体案内溝を設ける場合において、案内レールを挟んで対角の位置)となるように設置してもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 案内レール
2 スライダ
3 転動体転動路(案内レール側)
5 転動体転動路(スライダ側)
6 円筒ころ(転動体)
100 転動体案内溝
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば工作機械や射出成形機等の産業機械分野等に用いられる直動案内軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の直動案内軸受装置としては、例えば、特許文献1に開示されたものが知られている。
この直動案内軸受装置は、図21に示すように、軸方向に延びる案内レール101と、該案内レール101上に軸方向に相対移動可能に跨架されたスライダ102とを備えている。
案内レール101の幅方向の両側面にはそれぞれ軸方向に延びる転動体転動路103が片側二条列ずつ、合計4条列形成されており、スライダ102のスライダ本体102Aには、その両袖部104の内側面にそれぞれ転動体転動路103に対向する転動体転動路105が形成されている。
【0003】
両転動体転動路103,105の間には転動体としての多数の円筒ころ106が転動自在に装填され、これらの円筒ころ106の転動を介してスライダ102が案内レール101上を軸方向に沿って相対移動できるようになっている。
この移動につれて、案内レール101とスライダ102との間に介在する円筒ころ106は転動してスライダ102の軸方向の端部に移動するが、スライダ102を軸方向に継続移動させていくためには、これらの円筒ころ106を無限に循環させる必要がある。
【0004】
このため、スライダ本体102Aの袖部104内に更に軸方向に貫通する孔107を形成して該孔107に内部が円筒ころ106の通路(転動体通路)108aとされた循環チューブ108を嵌め込むと共に、スライダ本体102Aの軸方向の両端にそれぞれ転動体循環部品としての一対のエンドキャップ109を、ねじ等を介して固定し、このエンドキャップ109に両転動体転動路103,105間と上記転動体通路108aとを連通する円弧状に湾曲した方向転換路(図示せず)を形成することにより、円筒ころ106の無限循環軌道を形成している。
ここで、無限循環する多数の円筒ころ106はころ軸を中心に同一方向に回転するため、互いに隣り合う円筒ころ106同士が接触した場合、その接触部分のころ速度の向きは互いに逆方向になり、それにより発生する力は円筒ころ106の円滑な転動を妨げることになる。
【0005】
また、転動体に円筒ころ106を使用することで、ボールを使用する場合に比べて剛性及び負荷能力が高くなる反面、走行中の円筒ころ106の軸振れ、いわゆるスキューが発生して作動性を悪化させる要因になる。
このような事情から、従来においては、互いに隣り合う円筒ころ106間に保持ピース120を介装することで、円筒ころ同士の直接接触を防止すると共に、前記スキューを抑制し、これにより、スライダ102の走行を滑らかにすると共に、走行中の騒音低減を図るようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−127338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された直動案内軸受装置においては、円筒ころの微少角度のスキューを抑制するという目的を達成するために、保持ピースの形状及び寸法などを特定しているが、保持ピースを樹脂製とすることによってスキューの抑制力が弱く、円筒ころの進行方向に対して直交方向のズレ抑制力も弱いことから、スキューの抑制力を向上させるために改善の余地があった。
そこで、本発明は上記の問題点に着目してなされたものであり、その目的は、転動体のスキューの抑制力を向上させて、前記転動体の円滑な循環を確保することができる直動案内軸受装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明の請求項1に係る直動案内軸受装置は、軸方向に延びる転動体転動路を有する案内レールと、
該案内レールの前記転動体転動路に対向する転動体転動路を有し、これらの両転動体転動路間に挿入された転動体の転動を介して前記軸方向に沿って相対移動可能に前記案内レールに跨架され、前記転動体を循環させる循環路が内部に形成されたスライダとを備えた直動案内軸受装置であって、
前記案内レールに形成された4つの転動体転動路、及び前記スライダの4つの転動体転動路の少なくともいずれかの表面に、前記転動体の進行方向に直交する方向の前記転動体の動きを抑制する転動体案内溝が前記転動体の進行方向に沿って全起案愛レールの軸方向に対称に複数形成されたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、前記案内レール及び前記スライダに形成された8つの転動体転動路の少なくともいずれかの表面に、転動体案内溝が前記転動体の進行方向に沿って前記案内レールの軸方向に対称に複数形成されたので、前記転動体の進行方向に直交する方向の前記転動体の動きが抑制され、前記転動体のスキューの抑制力を向上させて、前記転動体の円滑な循環を確保することができる直動案内軸受装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る直動案内軸受装置の第1の実施形態の構成を示す部分断面図である。
【図2】本発明に係る直動案内軸受装置の第1の実施形態における転動体案内溝の構成を示す図であり、(a)は平面図、(b)は断面図である。
【図3】(a),(b)は共に本発明に係る直動案内軸受装置の第1の実施形態における転動体案内溝の形成方法を説明する断面図である。
【図4】本発明に係る直動案内軸受装置の第2の実施形態の構成を示す部分断面図である。
【図5】本発明に係る直動案内軸受装置の第2の実施形態における転動体案内溝の形成方法を説明する断面図である。
【図6】本発明に係る直動案内軸受装置の第3の実施形態の構成を示す部分断面図である。
【図7】本発明に係る直動案内軸受装置の第3の実施形態における転動体案内溝の形成方法を説明する断面図である。
【図8】本発明に係る直動案内軸受装置の第4の実施形態の構成を示す部分断面図である。
【図9】(a),(b)は共に本発明に係る直動案内軸受装置の第4の実施形態における転動体案内溝の形成方法を説明する断面図である。
【図10】本発明に係る直動案内軸受装置の第5の実施形態の構成を示す部分断面図である。
【図11】(a),(b)は共に本発明に係る直動案内軸受装置の第5の実施形態における転動体案内溝の形成方法を説明する断面図である。
【図12】本発明に係る直動案内軸受装置の第6の実施形態の構成を示す部分断面図である。
【図13】本発明に係る直動案内軸受装置の第6の実施形態における転動体案内溝の形成方法を説明する断面図である。
【図14】本発明に係る直動案内軸受装置の第7の実施形態の構成を示す部分断面図である。
【図15】本発明に係る直動案内軸受装置の第7の実施形態における転動体案内溝の形成方法を説明する断面図である。
【図16】本発明に係る直動案内軸受装置の第8の実施形態の構成を示す部分断面図である。
【図17】本発明に係る直動案内軸受装置の第8の実施形態における転動体案内溝の形成方法を説明する断面図である。
【図18】本発明に係る直動案内軸受装置の第9の実施形態の構成を示す部分断面図である。
【図19】(a),(b)は共に本発明に係る直動案内軸受装置の第9の実施形態における転動体案内溝の形成方法を説明する断面図である。
【図20】本発明に係る直動案内軸受装置の第10の実施形態の構成を示す部分断面図である。
【図21】従来の直動案内軸受装置の構成を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る直動案内軸受装置の実施形態について図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明に係る直動案内軸受装置の第1の実施形態の構成を示す部分断面図である。また、図2は、本発明に係る直動案内軸受装置の第1の実施形態における転動体案内溝の構成を示す図であり、(a)は平面図、(b)は断面図である。また、図3(a),(b)は、共に本発明に係る直動案内軸受装置の第1の実施形態における転動体案内溝の形成方法を説明する断面図である。
【0012】
図1に示すように、本実施形態の直動案内軸受装置は、軸方向に延びる案内レール1と、該案内レール1上に軸方向に相対移動可能に跨架されたスライダ2とを備えている。
案内レール1の幅方向の両側面には、それぞれ軸方向に延びる転動体転動路3が片側二条列ずつ、合計4条列形成されて転動体転動路3a〜3dを構成している。
また、スライダ2は、スライダ本体2Aと、該スライダ本体2Aの軸方向の両端に固定されたエンドキャップ(図示せず)とを有する。スライダ2のスライダ本体2Aには、その両袖部4の内側面にそれぞれ転動体転動路3に対向する転動体転動路5が片側二条列ずつ、合計4条列形成されて転動体転動路5a〜5dを構成している。
【0013】
ここで、図1に示すように、案内レール1の幅方向の上側(案内レール1がスライダ2によって覆われている側)の一方の側面に形成された転動体転動路を転動体転動路3aとし、この転動体転動路3aに軸方向に対称に位置するように、案内レール1の幅方向の上側の他方の側面に形成された転動体転動路を転動体転動路3bとする。また、案内レール1の幅方向の下側(スライダ2の開口側)の一方の側面に形成された転動体転動路を転動体転動路3cとし、この転動体転動路3cに軸方向に対称に位置するように、案内レール1の幅方向の下側の他方の側面に形成された転動体転動路を転動体転動路3dとする。また、スライダ2の幅方向の上側の一方の側面に形成された転動体転動路を転動体転動路5aとし、この転動体転動路5aに軸方向に対称に位置するように、スライダ2の幅方向の上側の他方の側面に形成された転動体転動路を転動体転動路5bとする。また、スライダ2の幅方向の下側の一方の側面に形成された転動体転動路を転動体転動路5cとし、この転動体転動路5cに軸方向に対称に位置するように、スライダ2の幅方向の上側の他方の側面に形成された転動体転動路を転動体転動路5dとする。すなわち、転動体転動路5a〜5dのうち、転動体転動路3aには転動体転動路5aが対向し、転動体転動路3bには転動体転動路5bが対向し、転動体転動路3cには転動体転動路5cが対向し、転動体転動路3dには転動体転動路5dが対向している。
【0014】
両転動体転動路3,5の間には転動体6としての多数の円筒ころ6が転動自在に装填され、これらの円筒ころ6の転動を介してスライダ2が案内レール1上を軸方向に沿って相対移動できるようになっている。
この移動につれて、スライダ2を軸方向に継続移動させていくために、スライダ本体2Aの袖部4内に更に軸方向に貫通する孔7を形成して該孔7に内部が円筒ころ6の通路(転動体通路)8aとされた循環チューブ8が嵌め込まれている。また、スライダ本体2Aの軸方向の両端にそれぞれ転動体循環部品として、ねじ等を介して固定された一対のエンドキャップ9には、両転動体転動路3,5間と転動体通路8aとを連通する円弧状に湾曲した方向転換路(図示せず)が形成されている。このように、循環チューブ8の通路(転動体通路)8a及びエンドキャップ9の方向転換路(図示せず)によって円筒ころ6の無限循環軌道が形成されている。
【0015】
また、互いに隣り合う円筒ころ6同士の接触により、円筒ころ6の円滑な転動が妨げられることを防ぐために、互いに隣り合う円筒ころ6,6間には、保持器20が介装されている(図2(a)参照)。
ここで、本発明に係る直動案内軸受装置において、案内レール1及びスライダ2に形成された転動体転動路3a〜3d,5a〜5dの少なくともいずれかの表面には、転動体案内溝100が円筒ころ6の進行方向に沿って軸方向に対称に複数形成されている。本実施形態の直動案内軸受装置においては、案内レール1の全ての転動体転動路3a〜3dの表面に転動体案内溝100が形成されている。
【0016】
図2(a),(b)に示すように、転動体案内溝100は、保持器20によって連結された円筒ころ6,6の進行方向に直交する方向の円筒ころ6の動きを抑制する溝形状に形成される。これら転動体転動路3a〜3dに形成される転動体案内溝100は、図3(a),(b)に示すように、案内レール1の全ての転動体転動路3a〜3dの表面を、円筒ころ6が遊嵌する寸法の幅で砥石50を用いて研削することによって形成される。これら転動体案内溝100の幅寸法は、円筒ころ6の進行方向(図2(a)中の矢印d方向)の動きを妨げない程度に、円筒ころ6の幅より僅かに広く設定される。
このような構成を有することによって、転動体(円筒ころ)6の進行方向(図2(a)中の矢印d方向)に直交する方向(図2(a),(b)中の矢印w方向)の転動体6の動きが抑制され、転動体6のスキューの抑制力を向上させて、転動体6の円滑な循環を確保することができる。
【0017】
(第2の実施形態)
図4は、本発明に係る直動案内軸受装置の第2の実施形態の構成を示す部分断面図である。また、図5は、本発明に係る直動案内軸受装置の第2の実施形態における転動体案内溝の形成方法を説明する断面図である。なお、本実施形態の直動案内軸受装置の構成は前述した第1の実施形態と基本的に略同一であるため、第1の実施形態と重複又は相当する部材等については図に同一符号を付して説明を省略する。
【0018】
図4に示すように、本実施形態の直動案内軸受装置は、案内レール1の下側の転動体転動路3c,3dの表面に転動体案内溝100が形成されている。これら転動体転動路3c,3dに形成される転動体案内溝100は、図5に示すように、案内レール1の下側の転動体転動路3c,3dの表面に、転動体6が遊嵌する寸法の幅で砥石50を用いて研削することによって形成される。
【0019】
このような構成を有することによって、転動体6の進行方向に直交する方向の転動体6の動きが抑制され、転動体6のスキューの抑制力を向上させて、転動体6の円滑な循環を確保することができる直動案内軸受装置を提供することができる。特に、スライダ2に対して図4中に示す矢印の向きに外部荷重が作用する場合、すなわち、外部荷重が転動体転動路3c,3dのみに作用する場合には、外部荷重を受けない転動体転動路3a,3bに転動体案内溝100を形成する必要がなく、製造コストを低減することができる。
【0020】
(第3の実施形態)
図6は、本発明に係る直動案内軸受装置の第3の実施形態の構成を示す部分断面図である。また、図7は、本発明に係る直動案内軸受装置の第3の実施形態における転動体案内溝の形成方法を説明する断面図である。なお、本実施形態の直動案内軸受装置の構成は前述した第1の実施形態と基本的に略同一であるため、第1の実施形態と重複又は相当する部材等については図に同一符号を付して説明を省略する。
【0021】
図6に示すように、本実施形態の直動案内軸受装置は、スライダ2の下側の転動体転動路5c,5dの表面に転動体案内溝100が形成されている。これら転動体転動路5c,5dに形成される転動体案内溝100は、図7に示すように、スライダ2の下側の転動体転動路5c,5dの表面に、転動体6が遊嵌する寸法の幅で砥石50を用いて研削することによって形成される。
【0022】
このような構成を有することによって、転動体6の進行方向に直交する方向の転動体6の動きが抑制され、転動体6のスキューの抑制力を向上させて、転動体6の円滑な循環を確保することができる直動案内軸受装置を提供することができる。特に、前述の第2の実施形態と同様に、外部荷重が転動体転動路5c,5dのみに作用する場合には、外部荷重を受けない転動体転動路5a,5bに転動体案内溝100を形成する必要がなく、製造コストを低減することができる。
【0023】
(第4の実施形態)
図8は、本発明に係る直動案内軸受装置の第4の実施形態の構成を示す部分断面図である。また、図9(a),(b)は、共に本発明に係る直動案内軸受装置の第4の実施形態における転動体案内溝の形成方法を説明する断面図である。なお、本実施形態の直動案内軸受装置の構成は前述した第1の実施形態と基本的に略同一であるため、第1の実施形態と重複又は相当する部材等については図に同一符号を付して説明を省略する。
【0024】
図8に示すように、本実施形態の直動案内軸受装置は、案内レール1の下側の転動体転動路3c、3dの表面、及びスライダ2の下側の転動体転動路5c,5dの表面に転動体案内溝100が形成されている。これら転動体転動路3c,3d,5c,5dに形成される転動体案内溝100は、図9(a),(b)に示すように、案内レール1の下側の転動体転動路3c,3dの表面、及びスライダ2の下側の転動体転動路5c,5dの表面に、転動体6が遊嵌する寸法の幅で砥石50を用いて研削することによって形成される。
【0025】
このような構成を有することによって、転動体6の進行方向に直交する方向の転動体6の動きが抑制され、転動体6のスキューの抑制力を向上させて、転動体6の円滑な循環を確保することができる直動案内軸受装置を提供することができる。この構成は、前述の第2の実施形態及び第3の実施形態を組み合わせたものであるので、外部荷重が転動体転動路3c,3d,5c,5dに作用する場合には、転動体6のより円滑な循環を確保することができる。
【0026】
(第5の実施形態)
図10は、本発明に係る直動案内軸受装置の第5の実施形態の構成を示す部分断面図である。また、図11(a),(b)は、共に本発明に係る直動案内軸受装置の第5の実施形態における転動体案内溝の形成方法を説明する断面図である。なお、本実施形態の直動案内軸受装置の構成は、案内レール及びスライダの断面形状以外は前述した第1の実施形態と基本的に略同一であるため、第1の実施形態と重複又は相当する部材等については図に同一符号を付して説明を省略する。
【0027】
図10に示すように、本実施形態の直動案内軸受装置は、前述の第1の実施形態における案内レール1の転動体転動路の断面形状が凹形状であり、スライダ2の転動体転動路の断面形状が凸形状であったのに対し、案内レール1の転動体転動路の断面形状が凸形状をなし、スライダ2の転動体転動路の断面形状が凹形状をなしている。また、本実施形態の直動案内軸受装置は、スライダ2の全ての転動体転動路5a〜5dの表面に転動体案内溝100が形成されている。これら転動体転動路5a〜5dに形成される転動体案内溝100は、図11(a),(b)に示すように、スライダ2の全ての転動体転動路5a〜5dの表面に、転動体6が遊嵌する寸法の幅で砥石50を用いて研削することによって形成される。
このような構成を有することによって、転動体6の進行方向に直交する方向の転動体6の動きが抑制され、転動体6のスキューの抑制力を向上させて、転動体6の円滑な循環を確保することができる直動案内軸受装置を提供することができる。
【0028】
(第6の実施形態)
図12は、本発明に係る直動案内軸受装置の第6の実施形態の構成を示す部分断面図である。また、図13は、本発明に係る直動案内軸受装置の第6の実施形態における転動体案内溝の形成方法を説明する断面図である。なお、本実施形態の直動案内軸受装置の構成は前述した第5の実施形態と基本的に略同一であるため、第5の実施形態と重複又は相当する部材等については図に同一符号を付して説明を省略する。
【0029】
図12に示すように、本実施形態の直動案内軸受装置は、スライダ2の上側の転動体転動路5a,5bの表面に転動体案内溝100が形成されている。これら転動体転動路5a,5bに形成される転動体案内溝100は、図13に示すように、スライダ2の上側の転動体転動路5a,5bの表面に、転動体6が遊嵌する寸法の幅で砥石50を用いて研削することによって形成される。
【0030】
このような構成を有することによって、転動体6の進行方向に直交する方向の転動体6の動きが抑制され、転動体6のスキューの抑制力を向上させて、転動体6の円滑な循環を確保することができる直動案内軸受装置を提供することができる。特に、スライダ2に対して図12中に示す矢印の向きに外部荷重が作用する場合、すなわち、外部荷重が転動体転動路5a,5bのみに作用する場合には、外部荷重を受けない転動体転動路5c,5dに転動体案内溝100を形成する必要がなく、製造コストを低減することができる。
【0031】
(第7の実施形態)
図14は、本発明に係る直動案内軸受装置の第7の実施形態の構成を示す部分断面図である。また、図15は、本発明に係る直動案内軸受装置の第7の実施形態における転動体案内溝の形成方法を説明する断面図である。なお、本実施形態の直動案内軸受装置の構成は前述した第5の実施形態と基本的に略同一であるため、第5の実施形態と重複又は相当する部材等については図に同一符号を付して説明を省略する。
【0032】
図14に示すように、本実施形態の直動案内軸受装置は、案内レール1の全ての転動体転動路3a〜3dの表面に転動体案内溝100が形成されている。これら転動体転動路3a〜3dに形成される転動体案内溝100は、図15に示すように、案内レール1の全ての転動体転動路3a〜3dの表面に、転動体6が遊嵌する寸法の幅で砥石50を用いて研削することによって形成される。
このような構成を有することによって、転動体6の進行方向に直交する方向の転動体6の動きが抑制され、転動体6のスキューの抑制力を向上させて、転動体6の円滑な循環を確保することができる直動案内軸受装置を提供することができる。
【0033】
(第8の実施形態)
図16は、本発明に係る直動案内軸受装置の第8の実施形態の構成を示す部分断面図である。また、図17は、本発明に係る直動案内軸受装置の第8の実施形態における転動体案内溝の形成方法を説明する断面図である。なお、本実施形態の直動案内軸受装置の構成は前述した第5の実施形態と基本的に略同一であるため、第5の実施形態と重複又は相当する部材等については図に同一符号を付して説明を省略する。
【0034】
図16に示すように、本実施形態の直動案内軸受装置は、案内レール1の上側の転動体転動路3a,3bの表面に転動体案内溝100が形成されている。これら転動体転動路3a,3bに形成される転動体案内溝100は、図17に示すように、案内レール1の上側の転動体転動路3a,3bの表面に、転動体6が遊嵌する寸法の幅で砥石50を用いて研削することによって形成される。
【0035】
このような構成を有することによって、転動体6の進行方向に直交する方向の転動体6の動きが抑制され、転動体6のスキューの抑制力を向上させて、転動体6の円滑な循環を確保することができる直動案内軸受装置を提供することができる。特に、外部荷重が転動体転動路3a,3bのみに作用する場合には、外部荷重を受けない転動体転動路3c,3dに転動体案内溝100を形成する必要がなく、製造コストを低減することができる。
【0036】
(第9の実施形態)
図18は、本発明に係る直動案内軸受装置の第9の実施形態の構成を示す部分断面図である。また、図19(a),(b)は、共に本発明に係る直動案内軸受装置の第9の実施形態における転動体案内溝の形成方法を説明する断面図である。なお、本実施形態の直動案内軸受装置の構成は前述した第5の実施形態と基本的に略同一であるため、第5の実施形態と重複又は相当する部材等については図に同一符号を付して説明を省略する。
【0037】
図18に示すように、本実施形態の直動案内軸受装置は、案内レール1の上側の転動体転動路3a,3bの表面、及びスライダ2の上側の転動体転動路5a,5bの表面に転動体案内溝100が形成されている。これら転動体転動路3a,3b,5a,5bに形成される転動体案内溝100は、図19(a),(b)に示すように、案内レール1の上側の転動体転動路3a,3bの表面及びスライダ2の上側の転動体転動路5a,5bの表面に、転動体6が遊嵌する寸法の幅で砥石50を用いて研削することによって形成される。
【0038】
このような構成を有することによって、転動体6の進行方向に直交する方向の転動体6の動きが抑制され、転動体6のスキューの抑制力を向上させて、転動体6の円滑な循環を確保することができる直動案内軸受装置を提供することができる。この構成は、前述の第6の実施形態及び第8の実施形態を組み合わせたものであるので、外部荷重が転動体転動路3c,3d,5c,5dに作用する場合には、転動体6のより円滑な循環を確保することができる。
【0039】
(第10の実施形態)
図20は、本発明に係る直動案内軸受装置の第10の実施形態の構成を示す図である。なお、本実施形態の直動案内軸受装置の構成は前述した第5の実施形態と基本的に略同一であるため、第5の実施形態と重複又は相当する部材等については図に同一符号を付して説明を省略する。
【0040】
図20に示すように、本実施形態の直動案内軸受装置は、案内レール1の全ての転動体転動路3a〜3dの表面、及びスライダ2の全ての転動体転動路5a〜5dの表面に転動体案内溝100が形成されている。これら転動体転動路3a〜3d,5a〜5dに形成される転動体案内溝100は、図示はしないが、前述の第5の実施形態及び第7の実施形態と同様にして、案内レール1の全ての転動体転動路3a〜3dの表面、及びスライダ2の全ての転動体転動路5a〜5dの表面に、転動体6が遊嵌する寸法の幅で砥石50を用いて研削することによって形成される。
このような構成を有することによって、転動体6の進行方向に直交する方向の転動体6の動きが抑制され、転動体6のスキューの抑制力を向上させて、転動体6の円滑な循環を確保することができる直動案内軸受装置を提供することができる。
【0041】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されずに、種々の変更、改良を行うことができる。例えば、上記実施形態では、複数の転動体案内溝を、案内レールの軸方向に線対称となるように設置しているが、案内レールの軸方向に点対称(例えば、スライダの転動体転動路に転動体案内溝を設ける場合において、案内レールを挟んで対角の位置)となるように設置してもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 案内レール
2 スライダ
3 転動体転動路(案内レール側)
5 転動体転動路(スライダ側)
6 円筒ころ(転動体)
100 転動体案内溝
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延びる転動体転動路を有する案内レールと、
該案内レールの前記転動体転動路に対向する転動体転動路を有し、これらの両転動体転動路間に挿入された転動体の転動を介して前記軸方向に沿って相対移動可能に前記案内レールに跨架され、前記転動体を循環させる循環路が内部に形成されたスライダとを備えた直動案内軸受装置であって、
前記案内レールに形成された4つの転動体転動路、及び前記スライダの4つの転動体転動路の少なくともいずれかの表面に、前記転動体の進行方向に直交する方向の前記転動体の動きを抑制する転動体案内溝が前記転動体の進行方向に沿って前記案内レールの軸方向に対称に複数形成されたことを特徴とする直動案内軸受装置。
【請求項1】
軸方向に延びる転動体転動路を有する案内レールと、
該案内レールの前記転動体転動路に対向する転動体転動路を有し、これらの両転動体転動路間に挿入された転動体の転動を介して前記軸方向に沿って相対移動可能に前記案内レールに跨架され、前記転動体を循環させる循環路が内部に形成されたスライダとを備えた直動案内軸受装置であって、
前記案内レールに形成された4つの転動体転動路、及び前記スライダの4つの転動体転動路の少なくともいずれかの表面に、前記転動体の進行方向に直交する方向の前記転動体の動きを抑制する転動体案内溝が前記転動体の進行方向に沿って前記案内レールの軸方向に対称に複数形成されたことを特徴とする直動案内軸受装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2012−132521(P2012−132521A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286085(P2010−286085)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]