説明

直描型水なし平版印刷版原版

【課題】 高感度で火膨れが生じにくい、すなわちラチチュードの広い直描型水なし平版印刷版原版を提供すること。
【解決手段】 基板上に少なくとも感熱層およびシリコーンゴム層をこの順に有する直描型水なし平版印刷版原版であって、該感熱層に非感光性粒子を含み、該非感光性粒子の平均粒径が、非感光性粒子が存在しない部分の感熱層平均膜厚の1/2倍以上であることを特徴とする直描型水なし平版印刷版原版。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直描型水なし平版印刷版原版に関するものであり、特にレーザー光で直接製版できる直描型水なし平版印刷版原版に関するものである。
【背景技術】
【0002】
これまでに、シリコーンゴムやフッ素樹脂をインキ反発層として使用した、湿し水を用いない平版印刷(以下、水なし平版印刷という)を行うための印刷版が種々提案されている。水なし平版印刷は、画線部と非画線部とをほぼ同一平面に存在させ、画線部をインキ受容層、非画線部をインキ反発層として、インキ付着性の差異を利用して画線部のみにインキを着肉させた後、紙などの被印刷体にインキを転写して印刷をする平版印刷方法であり、湿し水を用いることなく印刷できることが特徴である。
【0003】
水なし平版印刷版原版の露光方法としては様々な方法が提案されている。これらは、原画フィルムを介して紫外線照射を行う方式と、原画フィルムを用いることなく原稿から直接画像を書き込むコンピュータートゥプレート(以下、CTPという)方式とに大別される。CTP方式としては、レーザー光を照射する方法、サーマルヘッドで書き込む方法、ピン電極で電圧を部分的に印加する方法、インクジェットでインキ反発層またはインキ受容層を形成する方法などが挙げられる。これらの中で、レーザー光を照射する方法は、解像度および製版速度の面で、他の方式よりも優れている。
【0004】
レーザー光を照射する方法は、光反応によるフォトンモード方式と、光熱変換を行って熱反応を起こさせるヒートモード方式の2つの方式に分けられる。特にヒートモードの方式は、明室で取り扱える利点と、光源となる半導体レーザーの急激な進歩によって、その有用性は大きくなっている。
【0005】
このようなヒートモード方式に対応した直描型水なし平版印刷版原版に関して、これまでに様々な提案がなされてきた。中でも、少ないレーザー照射エネルギーで製版でき、画像再現性が良好な直描型水なし平版印刷版原版として、感熱層中に気泡を有する直描型水なし平版印刷版原版(例えば、特許文献1参照)が提案されている。また、少ないレーザー照射エネルギーで製版でき、画像再現性が良好な直描型水なし平版印刷版原版の製造方法として、溶解度パラメーターが17.0(MPa)1/2以下の有機溶剤を含有する感熱層組成物溶液を塗布する工程、感熱層組成物を乾燥する工程を有する直描型水なし平版印刷版原版の製造方法(例えば、特許文献2参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−300586号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2005−331924号公報(特許請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1〜2に記載された技術により得られる直描型水なし平版印刷版原版は高感度であり、露光後に物理的な力を加えるだけで現像できる。しかしながら、高感度の直描型水なし平版印刷版原版は、水なし平版印刷版を製造する工程において、露光部のシリコーンゴム層が浮き上がる「火膨れ」と呼ばれる現象が生じ、露光機や自動現像機内の搬送ローラーにシリコーンゴム層が転写することがあった。搬送ローラーに転写したシリコーンゴム層は、次に処理する版の版面へ再転写し、露光阻害や現像阻害を起こすことがあった。
【0008】
そこで、本発明は、かかる従来技術の課題を解決し、高感度で火膨れが生じにくい、すなわちラチチュードの広い直描型水なし平版印刷版原版を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、基板上に少なくとも感熱層およびシリコーンゴム層をこの順に有する直描型水なし平版印刷版原版であって、該感熱層に非感光性粒子を含み、該非感光性粒子の平均粒径が、非感光性粒子が存在しない部分の感熱層平均膜厚の1/2倍以上であることを特徴とする直描型水なし平版印刷版原版である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高感度で火膨れ耐性に優れた、ラチチュードの広い直描型水なし平版印刷版原版を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の直描型水なし平版印刷版原版は、基板上に少なくとも感熱層およびシリコーンゴム層をこの順に有する直描型水なし平版印刷版原版であって、該感熱層に非感光性粒子を含み、該非感光性粒子の平均粒径が、非感光性粒子が存在しない部分の感熱層平均膜厚の1/2倍以上であることを特徴とする。ここで、水なし平版印刷版原版とは、湿し水を用いずに印刷が可能な平版印刷版原版を指し、直描型水なし平版印刷版原版とは、レーザー光を用いて原稿から直接画像を書き込むことができる水なし平版印刷版原版を指す。
【0012】
本発明の直描型水なし平版印刷版原版について、以下に説明する。
【0013】
本発明の直描型水なし平版印刷版原版は、基板上に少なくとも感熱層およびシリコーンゴム層をこの順に有する。
【0014】
基板としては、従来印刷版の基板として用いられてきた寸法的に安定な公知の紙、金属、ガラス、フィルムなどを使用することができる。具体的には、紙、プラスチック(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなど)がラミネートされた紙、アルミニウム(アルミニウム合金も含む)、亜鉛、銅などの金属板、ソーダライム、石英などのガラス板、シリコンウエハー、セルロースアセテート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタールなどのプラスチックのフィルム、上記金属がラミネートまたは蒸着された紙またはプラスチックフィルムなどが挙げられる。プラスチックフィルムは透明でも不透明でもよい。検版性の観点からは、不透明のフィルムが好ましい。
【0015】
これら基板のうち、アルミニウム板は寸法的に極めて安定であり、しかも安価であるので特に好ましい。また、軽印刷用の柔軟な基板としては、ポリエチレンテレフタレートフィルムが特に好ましい。
【0016】
基板の厚みは特に限定されず、平版印刷に使用される印刷機に対応した厚みを選択すればよい。
【0017】
次に、本発明に好ましく用いることができる感熱層について説明する。感熱層としては、レーザー描画により物性が変化する層および/またはレーザー描画によりシリコーンゴム層との接着力が低下する層が好ましい。例えば、活性水素を有するポリマー、架橋剤および光熱変換物質を含む組成物や、活性水素を有するポリマー、有機錯化合物および光熱変換物質を含む組成物を塗布、(加熱)乾燥して得られる層が挙げられる。
【0018】
本発明は、感熱層に非感光性粒子を含み、該非感光性粒子の平均粒径が、非感光性粒子が存在しない部分の感熱層平均膜厚の1/2倍以上であることを特徴とする。前記特許文献1〜2に記載されるような高感度の直描型水なし平版印刷版原版は、露光後に物理的な力を加えるだけで現像できる。このため、水なし平版印刷版を製造する工程において、露光部のシリコーンゴム層が浮き上がる「火膨れ」と呼ばれる現象が生じ、露光後の直描型水なし平版印刷版原版を搬送する際、露光機や自動現像機内の搬送ローラーにシリコーンゴム層が転写する場合がある。搬送ローラーに転写したシリコーンゴム層は、次に処理する版の版面へ再転写し、露光阻害や現像阻害などの原因となる。この火膨れの現象は、直描型水なし平版印刷版原版が高感度であるほど、また、露光量が多くなるほど、より顕著となる。本発明の直描型水なし平版印刷版原版は、感熱層に、前記のような非感光性粒子を含むことにより、局所的に感熱層を低感度化してシリコーンゴム層との接着力を保ち、火膨れ現象を抑制することができる。すなわち、火膨れ耐性が向上する。非感光性粒子の平均粒径は、非感光性粒子が存在しない部分の感熱層平均膜厚の1/2倍以上であり、3/4倍以上が好ましく、1倍以上がより好ましく、5/4倍以上がさらに好ましい。非感光性粒子の平均粒径が、非感光性粒子が存在しない部分の感熱層平均膜厚の1/2倍未満であると、非感光性粒子を含まない場合と同様、火膨れ耐性の向上効果が得られない。一方、非感光性粒子に起因する印刷時の非画線部の地汚れを抑制する観点からは、非感光性粒子の平均粒径が、非感光性粒子が存在しない部分の感熱層とシリコーンゴム層の合計の平均膜厚以下であることが好ましい。
【0019】
本発明において、非感光性粒子の粒径とは、粒子が真球であると仮定した際の等体積球相当径を指す。また、非感光性粒子の平均粒径とは、複数個の前記粒径の粒子から算出した数平均値を指す。感熱層に含まれる非感光性粒子の平均粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)観察により求めることができる。より詳しくは、直描型水なし平版印刷版原版から連続(超薄)切片法によって試料を作製し、加速電圧100kV、倍率2000倍の条件で感熱層のTEM観察を行う。水平断面の三次元情報に基づき、ランダムに選んだ50個の非感光性粒子についてその粒径を計測し、その数平均値を算出することにより、平均粒径を求めることができる。感熱層およびシリコーンゴム層の平均膜厚の測定方法は後述する。
【0020】
また、本発明における非感光性粒子とは、少なくとも露光に用いられる700〜1500nmの波長領域内の光、好ましくは750〜1100nmの波長領域内の光を一切、または、ほとんど吸収しない(粒子の光吸収に起因した、粒子自身や粒子以外の感熱層構成成分の燃焼、融解、分解、気化、爆発などの化学反応や物理変化がおこらない)粒子を指し、一般公知の700〜1500nmの波長領域内の光を吸収し、熱に変換する光熱変換粒子(カーボンブラックやその他の光熱変換能を有する顔料)とは明確に異なる。感熱層に含まれる非感光性粒子の存在は、TEMなどの分析機器を用いて、感熱層の垂直断面や水平断面を観察することによって、形態的に観察可能である。
【0021】
非感光性粒子の種類としては、無機粒子であっても有機粒子であっても、また、無機・有機ハイブリッド粒子であっても本発明の火膨れ耐性の向上効果を発現する。これらを2種以上含んでもよい。
【0022】
無機粒子としては、例えば、SiO、Al、TiO、SnO、Sb、Fe、ZrO、CeO、Yなどの非感光性無機粒子が挙げられる。市販の非感光性無機粒子としては、例えば、シリカ粒子として、機能性球状シリカHPSシリーズ(東亞合成(株)製)、“シーホスター”(登録商標)KEシリーズ((株)日本触媒製)、“粒子径標準粒子”8000シリーズ(Thermo Fisher Scientific社製)、“アドマファイン”シリーズ((株)アドマテックス製)、“ハイプレシカ”(登録商標)シリーズ(宇部日東化成(株)製)など、アルミナ粒子として、“アルミナ球状微粒子”シリーズ(新日鉄マテリアルズ マイクロン社製)、“アドマファイン”シリーズ((株)アドマテックス製)、“アルミナ”シリーズ(日本軽金属(株)製)、“アルミナビーズ”CBシリーズ(昭和電工(株)製)などを挙げることができる。これらの中でもシリカ粒子が好ましい。
【0023】
有機粒子としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸誘導体、スチレン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、オレフィンの重合体や、これらの共重合体、ポリエステル、ポリアミド、ラテックス、ポリウレタン、フェノール樹脂、ベンゾグアナミン・メラミン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、シリコーン樹脂、セルロース、フッ素樹脂、ポリ(フルオロメチルメタクリレート)などの非感光性有機粒子が挙げられる。ここで、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸とメタクリル酸の総称である。これらの中でも、(メタ)アクリル酸および/または(メタ)アクリル酸誘導体、スチレンの重合体や、これらの共重合体、シリコーン樹脂が好ましい。市販の非感光性有機粒子としては、例えば、(メタ)アクリル酸および/または(メタ)アクリル酸誘導体の重合体として、“micromer”シリーズ(コアフロント(株)製)、“ケミスノー”(登録商標)MXシリーズ、“ケミスノー”MRシリーズ、“ケミスノー”MPシリーズ(綜研化学(株)製)、“タフチック”(登録商標)シリーズ(東洋紡績(株)製)、“架橋粒子”SX8703(A)シリーズ(JSR(株)製)、“ファインスフェア”(登録商標)シリーズ(日本ペイント(株)製)、“エポスター”(登録商標)MAシリーズ、“エポスター”YSシリーズ((株)日本触媒製)、“マツモトマイクロスフェアー”(登録商標)Mシリーズ、“マツモトマイクロスフェアー”Sシリーズ(松本油脂製薬(株)製)、“グロスデール”(登録商標)シリーズ(三井化学(株)製)、“リオスフィア”(登録商標)シリーズ(東洋インキ製造(株)製)など、スチレン重合体として、“ケミスノー”SXシリーズ(綜研化学(株)製)、“架橋粒子”SX8705(P)シリーズ(JSR(株)製)、“スタデックス”(登録商標)シリーズ(JSR(株)製)、“DYNOSPHERES”シリーズ(JSR(株)製)、“ファインスフェア”シリーズ(日本ペイント(株)製)、“粒子径標準粒子”2000、3000、4000、5000、7000シリーズ(Thermo Fisher Scientific社製)など、アクリロニトリル重合体として、“タフチック”シリーズ(東洋紡績(株)製)など、ポリアミドとして、“アミラン”(登録商標)シリーズ(東レ(株)製)など、ポリフェニレンスルフィドとして、“トレパール”(登録商標)PPSシリーズ(東レ(株)製)など、ラテックスとして、“CSMラテックス”シリーズ(住友精化(株)製)、“セポレックス”(登録商標)IR100Kシリーズ(住友精化(株)製)、“Nipol”(登録商標)シリーズ(日本ゼオン(株)製)など、ポリウレタンとして、“メルテックス”(登録商標)シリーズ(三洋化成工業(株)製)、“ダイミックビーズ”(登録商標)シリーズ(大日精化工業(株)製)、“アートパール”(登録商標)シリーズ(根上工業(株)製)など、フェノール樹脂として、“ベル パール”(登録商標)シリーズ(エア・ウォーター(株)製)など、エポキシ樹脂として、“トレパール”EPシリーズ(東レ(株)製)など、ポリエーテルスルホン樹脂として、“トレパール”PESシリーズ(東レ(株)製)など、シリコーン樹脂として、“トスパール”(登録商標)シリーズ(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)など、ポリエチレンとして、“フローセン”(登録商標)シリーズ、“フローセン”UFシリーズ、“フロービーズ”(登録商標)シリーズ(住友精化(株)製)、“サンファイン”(登録商標)シリーズ(旭化成工業(株)製)など、ポリプロピレンとして、“フローブレン”(登録商標)シリーズ(住友精化(株)製)など、エチレン−酢酸ビニル共重合体として、“フローバック”(登録商標)シリーズ(住友精化(株)製)など、エチレン−アクリル酸共重合体として、“フロービーズ”シリーズ(住友精化(株)製)など、セルロースとして、“アビセル”シリーズ(旭化成工業)、“セルロビーズ”シリーズ(大東化成工業(株)製)など、フッ素樹脂として、“ルブロン”(登録商標)シリーズ、“ポリフロン”(登録商標)MPAシリーズ(ダイキン工業(株)製)など、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合物として、“エポスター”(登録商標)シリーズ((株)日本触媒製)など、ベンゾグアナミン・メラミン・ホルムアルデヒド縮合物として、“エポスター”シリーズ、“エポスター”GPシリーズ((株)日本触媒製)など、メラミン・ホルムアルデヒド縮合物として、“エポスター”シリーズ((株)日本触媒製)などを挙げることができる。
【0024】
また、有機粒子として、異種有機成分がそれぞれコア部、シェル部を構成するコアシェル構造を持ったコアシェル型非感光性有機粒子を用いることもできる。コアシェル型非感光性有機粒子の具体例としては、例えば、ブタジエン・メタクリル酸アルキル・スチレン共重合物からなる“パラロイド”EXL−2655(呉羽化学工業(株)製)、アクリル酸エステル・メタクリル酸エステル共重合体からなる“スタフィロイド”AC−3355、“スタフィロイド”TR−2105、“スタフィロイド”TR−2102、“スタフィロイド”TR−2122、“スタフィロイド”IM−101、“スタフィロイド”IM−203、“スタフィロイド”IM−301、“スタフィロイド”IM−401(武田薬品工業(株)製)、“パラロイド”EXL−2314(呉羽化学工業(株)製)、“パラロイド”EXL−2611、“パラロイド”EXL−3387(Rohm&Haas社製)、“ゼオンアクリルレジン”F−351(日本ゼオン社製)、アクリル酸エステル・アクリロニトリル・スチレン共重合体からなる“スタフィロイド”IM−601(武田薬品工業(株)製)などが挙げられる。
【0025】
非感光性無機、有機ハイブリッド粒子としては、例えば、シリカ・アクリルからなる“ソリオスター”(登録商標)シリーズ((株)日本触媒製)、ナイロン粒子の表層に微粒子酸化ジルコニウムを付着させた“トレセラム”(登録商標)パウダーZP−4000、架橋ポリスチレン粒子の表層に板状窒化ホウ素を付着させた“トレセラム”パウダーBPS−2000(東レ(株)製)などが挙げられる。
【0026】
これら非感光性粒子は、通常、感熱層組成物溶液中に分散されて用いられるため、感熱層組成物溶液中における分散安定性に優れ、自然沈降しにくいことが好ましい。前述の非感光性粒子の中で、有機粒子は一般的に無機粒子に比べ密度が小さく、感熱層組成物溶液中における分散安定性の点でより好ましい。
【0027】
また、非感光性粒子は、感熱層組成物溶液に対して不溶であることが好ましい。一般的に無機粒子は有機溶剤に溶解しにくいが、未架橋の有機粒子は有機溶剤に溶解することがある。このため、有機粒子を用いる場合には架橋構造を有する有機粒子を用いることが好ましく、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸誘導体、スチレン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、オレフィンの架橋構造を有する重合体や、これらの架橋構造を有する共重合体、架橋ポリエステル、架橋ポリアミド、架橋ラテックス、架橋ポリウレタン、架橋フェノール樹脂、架橋ベンゾグアナミン・メラミン樹脂、架橋ポリエーテルスルホン樹脂、架橋シリコーン樹脂、架橋セルロース、架橋フッ素樹脂、架橋ポリ(フルオロメチルメタクリレート)などの非感光性有機粒子が挙げられる。前記非感光性有機粒子の具体例の中で、架橋構造を有する非感光性有機粒子としては、(メタ)アクリル酸および/または(メタ)アクリル酸誘導体の架橋重合体として、“ケミスノー”MXシリーズ、“ケミスノー”MRシリーズ(綜研化学(株)製)、“タフチック”シリーズ(東洋紡績(株)製)、“架橋粒子”SX8703(A)シリーズ(JSR(株)製)、“エポスター”MAシリーズ((株)日本触媒製)、“マツモトマイクロスフェアー”Mシリーズ、“マツモトマイクロスフェアー”Sシリーズ(松本油脂製薬(株)製)、“グロスデール”シリーズ(三井化学(株)製)、“リオスフィア”シリーズ(東洋インキ製造(株)製)など、架橋スチレン重合体として、“ケミスノー”SXシリーズ(綜研化学(株)製)、“架橋粒子”SX8705(P)シリーズ(JSR(株)製)など、架橋ポリウレタンとして、“ダイミックビーズ”シリーズ(大日精化工業(株)製)、“アートパール”シリーズ(根上工業(株)製)など、架橋フェノール樹脂として、“ベル パール”シリーズ(エア・ウォーター(株)製)など、架橋エポキシ樹脂として、“トレパール”EPシリーズ(東レ(株)製)など、架橋シリコーン樹脂として、“トスパール”シリーズ(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)など、架橋ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合物として、“エポスター”シリーズ((株)日本触媒製)など、架橋ベンゾグアナミン・メラミン・ホルムアルデヒド縮合物として、“エポスター”シリーズ、“エポスター”GPシリーズ((株)日本触媒製)など、架橋メラミン・ホルムアルデヒド縮合物として、“エポスター”シリーズ((株)日本触媒製)などを挙げることができる。これらの架橋構造を有する非感光性有機粒子の中でも、(メタ)アクリル酸および/または(メタ)アクリル酸誘導体の架橋重合体、架橋スチレン重合体、架橋シリコーン樹脂を用いることが好ましい。
【0028】
また、架橋構造を有するコアシェル型非感光性有機粒子としては、ブタジエン・メタクリル酸アルキル・スチレン共重合物からなる“パラロイド”EXL−2655(呉羽化学工業(株)製)、アクリル酸エステル・メタクリル酸エステル共重合体からなる“スタフィロイド”AC−3355、“スタフィロイド”TR−2105、“スタフィロイド”TR−2102、“スタフィロイド”TR−2122、“スタフィロイド”IM−101、“スタフィロイド”IM−203、“スタフィロイド”IM−301、“スタフィロイド”IM−401(武田薬品工業(株)製)、“パラロイド”EXL−2314(呉羽化学工業(株)製)、“パラロイド”EXL−2611、“パラロイド”EXL−3387(Rohm&Haas社製)、“ゼオンアクリルレジン”F−351(日本ゼオン社製)、アクリル酸エステル・アクリロニトリル・スチレン共重合体からなる“スタフィロイド”IM−601(武田薬品工業(株)製)等が挙げられる。
【0029】
非感光性粒子の形状としては、球状、半球状、異形球状、中凹球状、扁平状、レンズ状、立方体状、柱状、板状、片状、粒状、棒状、針状、繊維状、塊状、樹枝状、海綿状、角状、圭角状、丸み状などが挙げられ、何れの形状であっても火膨れ耐性の向上効果を発現する。中でも、球状粒子は他の形状と異なり方向性を持たないことから、火膨れ耐性の向上効果を安定的に発現できる点で特に好ましい。
【0030】
非感光性粒子の粒度としては、分布が狭く、単分散に近い粒子を用いることが好ましい。粒子の単分散性を表す指標として、CV(Coefficient of Variation)値(CV値[%]=(標準偏差/平均粒径)×100)が一般的に用いられるが、本発明においては、非感光性粒子のCV値が15%以下であることが好ましく、10%以下がより好ましく、5%以下がさらに好ましい。非感光性粒子のCV値が15%以下であれば、非感光性粒子の含有量が少なくても火膨れ耐性をより効果的に向上させることができる。
【0031】
非感光性粒子のCV値は、一般的なレーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(例えば“SALD(登録商標)”シリーズ((株)島津製作所製)など)や、動的光散乱式粒度分布測定装置(例えば“LB”シリーズ((株)堀場製作所製)など)を用いて測定される平均粒径と標準偏差から前記式より求められる。球状の非感光性粒子の場合には、透過式光学顕微鏡(倍率が100倍以上の対物レンズを用いることが好ましい)に接続されたデジタルカメラで画像を撮影し(モニター上の総合倍率で2000倍以上が好ましい)、画像解析計測ソフトウェア(例えば“WinROOF”(三谷商事(株)製)など)により平均粒径、標準偏差を測定し、前記式に当てはめることでCV値が求められる。また、直描型水なし平版印刷版原版中の非感光性粒子のCV値は、前述の非感光性粒子の粒径測定法により得られる50個以上の非感光性粒子の等体積球相当径の情報から、数平均粒径および標準偏差を算出し、これらの値を前記式に当てはめることで求められる。同じ非感光性粒子を用いていれば、非感光性粒子、直描型水なし平版印刷版原版のどちらで測定しても、CV値は等しい。
【0032】
また、感熱層組成物溶液中での非感光性粒子の分散性向上や、他の成分との親和性向上、架橋点の確保などの目的で、非感光性粒子表面にカルボキシル基、水酸基、エポキシ基、グリシジル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基などの官能基を導入してもよい。
【0033】
本発明の直描型水なし平版印刷版原版において、感熱層中の非感光性粒子の面内占有率は、感熱層全面積(100面積%)中40面積%以下が好ましく、30面積%以下がより好ましい。非感光性粒子の占有率が40面積%以下であれば、感熱層の深さ方向で非感光性粒子が重なりにくく、露光時の露光阻害や、印刷時の非画線部の地汚れを抑制することができる。一方、火膨れ耐性をより向上させる観点からは、非感光性粒子の面内占有率は0.5面積%以上が好ましく、1.0面積%以上がより好ましい。ここで、感熱層中の非感光性粒子の面内占有率とは、感熱層の任意の水平断面における非感光性粒子の占める割合(面積%)を指す。感熱層中の非感光性粒子の面内占有率は、TEM観察により求めることができる。より詳しくは、直描型水なし平版印刷版原版から連続(超薄)切片法によって試料を作製し、加速電圧100kV、倍率2000倍の条件で感熱層の水平断面のTEM観察を行う。単位面積中の非感光性粒子の占める面積を算出することにより、非感光性粒子の面内占有率(面積%)を求めることができる。
【0034】
本発明の直描型水なし平版印刷版原版の中でも、良好な効果を示す実施形態では、前記感熱層の水平断面のTEM観察において、非感光性粒子に起因する感熱層の膜厚縮小領域が観察される。この感熱層の膜厚縮小領域が、局所的な感熱層の低感度化部分となっていることが推察される。膜厚縮小領域を、シリコーンゴム層と向かい合う側の感熱層表面からの感熱層の膜厚が0.1μm以下に縮小された領域と定義した場合に、前記膜厚縮小領域を、基板面に平行な平面に対して投影した投影図形を膜厚縮小領域の水平投影図形とし、感熱層表面全体を基板面に平行な平面に対して投影した感熱層表面全体の水平投影図形の面積に対して、前記膜厚縮小領域の水平投影図形の面積の合計が占める割合によって算出される、膜厚縮小領域の感熱層表面に対する面積率が1面積%以上であることが好ましく、3面積%以上がより好ましい。
【0035】
また、本発明の直描型水なし平版印刷版原版の中でも、良好な効果を示す実施形態では、前記感熱層の水平断面のTEM観察において、非感光性粒子に起因する感熱層の傾斜領域が観察される。この感熱層の傾斜領域が、局所的な感熱層の低感度化部分となっていることが推察される。傾斜領域を、10度以上の勾配を有し、隆起構造を構成し、少なくとも一部で連続した面状領域と定義した場合に、傾斜領域を、基板面に平行な平面に対して投影した投影図形を傾斜領域の水平投影図形とし、感熱層表面全体を基板面に平行な平面に対して投影した感熱層表面全体の水平投影図形の面積に対して、前記傾斜領域の水平投影図形の面積の合計が占める割合によって算出される、傾斜領域の感熱層表面に対する面積率が1面積%以上であることが好ましく、3面積%以上がより好ましい。水平投影図形は、例えば傾斜領域が半球状の隆起構造の一部の面であれば、半球の頂点付近の勾配10度未満の領域を除いた部分を真上から投影した円環となる。
【0036】
本発明において、感熱層に好ましく用いられる活性水素を有するポリマーとしては、例えば、−OH、−SH、−NH、−NH−、−CO−NH、−CO−NH−、−OC(=O)−NH−、−NH−CO−NH−、−CO−OH、−CS−OH、−CO−SH、−CS−SH、−SOH、−PO、−SO−NH、−SO−NH−、−CO−CH−CO−などの活性水素を有する構造単位を有するポリマーを挙げることができる。このような構造単位を有するポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸などのカルボキシル基を含有するモノマーの単独重合体もしくは共重合体、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの水酸基を含有する(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体もしくは共重合体、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドの単独重合体もしくは共重合体、アミン類と(メタ)アクリル酸グリシジルまたはアリルグリシジルとの反応物の単独重合体もしくは共重合体、p−ヒドロキシスチレン、ビニルアルコールの単独重合体もしくは共重合体などの活性水素を有するエチレン性不飽和モノマーの単独重合体もしくは共重合体(共重合モノマー成分としては、活性水素を有する他のエチレン性不飽和モノマーでもよく、活性水素を含有しないエチレン性不飽和モノマーでもよい。)や、ポリウレタン類、ポリウレア類、ポリアミド(ナイロン樹脂)類、エポキシ樹脂類、ポリアルキレンイミン類、ノボラック樹脂類、レゾール樹脂類、セルロース誘導体類などの主鎖に活性水素を有する構造単位を有する縮合体などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
【0037】
中でも、アルコール性水酸基、フェノール性水酸基、カルボキシル基を有するポリマーが好ましく、フェノール性水酸基を有するポリマー(p−ヒドロキシスチレンの単独重合体もしくは共重合体、ノボラック樹脂、レゾール樹脂など)がより好ましく、ノボラック樹脂がさらに好ましい。ノボラック樹脂としてはフェノールノボラック樹脂やクレゾールノボラック樹脂が挙げられる。
【0038】
活性水素を有するポリマーの含有量は、感熱層の全固形分中20重量%〜95重量%が好ましく、より好ましくは50重量%〜90重量%である。
【0039】
活性水素を有するポリマーとともに、活性水素を有しない、フィルム形成能を有するポリマー(他のポリマーと称する)を含有することも好ましく行われる。他のポリマーとしては、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体もしくは共重合体、ポリスチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン系モノマーの単独重合体もしくは共重合体、イソプレン、スチレン−ブタジエンなどの各種合成ゴム類、ポリ酢酸ビニルなどのビニルエステルなどの単独重合体もしくは酢酸ビニル−塩化ビニルなどの共重合体、ポリエステル、ポリカーボネートなどの縮合系各種ポリマーなどが挙げられる。
【0040】
これら他のポリマーの含有量は、感熱層の全固形分中50重量%以下が好ましく、より好ましくは30重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下である。
【0041】
架橋剤としては、架橋性を有する公知の多官能性化合物が挙げられる。例えば、多官能イソシアネート、多官能ブロックドイソシアネート、多官能エポキシ化合物、多官能(メタ)アクリレート化合物、多官能アルデヒド、多官能メルカプト化合物、多官能アルコキシシリル化合物、多官能アミン化合物、多官能カルボン酸、多官能ビニル化合物、多官能ジアゾニウム塩、多官能アジド化合物、ヒドラジンなどが挙げられる。
【0042】
有機錯化合物は、金属と有機化合物からなり、活性水素を有するポリマーの架橋剤として、および/または、熱硬化反応の触媒として機能する。有機錯化合物が架橋剤として機能する場合であっても、感熱層にさらに前述の架橋剤を含有してもよい。
【0043】
本発明における有機錯化合物としては、金属に有機配位子が配位した有機錯塩、金属に有機配位子および無機配位子が配位子した有機無機錯塩、金属と有機分子が酸素を介して共有結合している金属アルコキシド類などが挙げられる。これらの中でも、配位子が2個以上のドナー原子を有し、金属原子を含む環を形成するような金属キレート化合物が、有機錯化合物自身の安定性や感熱層組成物溶液の安定性などの面から好ましく用いられる。
【0044】
有機錯化合物を形成する主な金属としては、Al(III)、Ti(IV)、Mn(II)、Mn(III)、Fe(II)、Fe(III)、Co(II)、Co(III)、Ni(II)、Ni(IV)、Cu(I)、Cu(II)、Zn(II)、Ge、In、Sn(II)、Sn(IV)、Zr(IV)、Hf(IV)が好ましい。Al(III)は感度向上効果が得られやすい点から特に好ましく、Ti(IV)は印刷インキやインキ洗浄剤に対する耐性が発現しやすい点から特に好ましい。
【0045】
また、配位子としては、酸素、窒素、硫黄などをドナー原子として有する配位基を有する化合物が挙げられる。配位基の具体例としては、酸素をドナー原子とするものとしては、−OH(アルコール、エノールおよびフェノール)、−COOH(カルボン酸)、>C=O(アルデヒド、ケトン、キノン)、−O−(エーテル)、−COOR(エステル、R:脂肪族または芳香族炭化水素を表す)、−N=O(ニトロソ化合物)、−NO(ニトロ化合物)、>N−O(N−オキシド)、−SOH(スルホン酸)、−PO(亜リン酸)など、窒素をドナー原子とするものとしては、−NH(1級アミン、アミド、ヒドラジン)、>NH(2級アミン、ヒドラジン)、>N−(3級アミン)、−N=N−(アゾ化合物、複素環化合物)、=N−OH(オキシム)、−NO(ニトロ化合物)、−N=O(ニトロソ化合物)、>C=N−(シッフ塩基、複素環化合物)、>C=NH(アルデヒド、ケトンイミン、エナミン類)、−NCS(イソチオシアナト)など、硫黄をドナー原子とするものとしては、−SH(チオール)、−S−(チオエーテル)、>C=S(チオケトン、チオアミド)、=S−(複素環化合物)、−C(=O)−SH、−C(=S)−OH、−C(=S)−SH(チオカルボン酸)、−SCN(チオシアナト)などが挙げられる。
【0046】
上記のような金属と配位子から形成される有機錯化合物のうち、好ましく用いられる化合物としては、Al(III)、Ti(IV)、Fe(II)、Fe(III)、Mn(III)、Co(II)、Co(III)、Ni(II)、Ni(IV)、Cu(I)、Cu(II)、Zn(II)、Ge、In、Sn(II)、Sn(IV)、Zr(IV)、Hf(IV)などの金属のβ−ジケトン類、アミン類、アルコール類、カルボン酸類との錯化合物が挙げられ、さらにはAl(III)、Fe(II)、Fe(III)、Ti(IV)、Zr(IV)のアセチルアセトン錯体、アセト酢酸エステル錯体などが特に好ましい錯化合物として挙げられる。
【0047】
このような化合物の具体例としては、例えば以下のような化合物を挙げることができる。アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(プロピルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(ブチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(ヘキシルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(ノニルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(ヘキサフルオロペンタジオネート)、アルミニウムトリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート)、アルミニウムビス(エチルアセトアセテート)モノ(アセチルアセトネート)、アルミニウムビス(アセチルアセトネート)モノ(エチルアセトアセテート)、アルミニウムビス(プロピルアセトアセテート)モノ(アセチルアセトネート)、アルミニウムビス(ブチルアセトアセテート)モノ(アセチルアセトネート)、アルミニウムビス(ヘキシルアセトアセテート)モノ(アセチルアセトネート)、アルミニウムビス(プロピルアセトアセテート)モノ(エチルアセトアセテート)、アルミニウムビス(ブチルアセトアセテート)モノ(エチルアセトアセテート)、アルミニウムビス(ヘキシルアセトアセテート)モノ(エチルアセトアセテート)、アルミニウムビス(ノニルアセトアセテート)モノ(エチルアセトアセテート)、アルミニウムジブトキシドモノ(アセチルアセトネート)、アルミニウムジイソプロポキシドモノ(アセチルアセトネート)、アルミニウムジイソプロポキシドモノ(エチルアセトアセテート)、アルミニウム−s−ブトキシドビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムジ−s−ブトキシドモノ(エチルアセトアセテート)、アルミニウムジイソプロポキシドモノ(−9−オクタデセニルアセトアセテート)など。チタニウムトリイソプロポキシドモノ(アリルアセトアセテート)、チタニウムジイソプロポキシドビス(トリエタノールアミン)、チタニウムジ−n−ブトキシドビス(トリエタノールアミン)、チタニウムジイソプロポキシドビス(アセチルアセトネート)、チタニウムジ−n−ブトキシドビス(アセチルアセトネート)、チタニウムジイソプロポキシドビス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート)、チタニウムジイソプロポキシドビス(エチルアセトアセテート)、チタニウムジ−n−ブトキシドビス(エチルアセトアセテート)、チタニウムトリ−n−ブトキシドモノ(エチルアセトアセテート)、チタニウムトリイソプロポキシドモノ(メタクリルオキシエチルアセトアセテート)、チタニウムオキサイシドビス(アセチルアセトネート)、チタニウムテトラ(2−エチル−3−ヒドロキシヘキシルオキサイド)、チタニウムジヒドロキシビス(ラクテート)、チタニウム(エチレングリコーレート)ビス(ジオクチルフォスフェート)など。ジルコニウムジ−n−ブトキシドビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムテトラキス(ヘキサフルオロペンタンジオネート)、ジルコニウムテトラキス(トリフルオロペンタンジオネート)、ジルコニウムトリ−n−プロポキシドモノ(メタクリルオキシエチルアセトアセテート)、ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムテトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート)、トリグリコラートジルコン酸、トリラクテートジルコン酸など。鉄(III)アセチルアセトネート、ジベンゾイルメタン鉄(II)、トロポロン鉄、トリストロポロノ鉄(III)、ヒノキチオール鉄、トリスヒノキチオロ鉄(III)、アセト酢酸エステル鉄(III)、鉄(III)ベンゾイルアセトネート、鉄(III)ジフェニルプロパンジオネート、鉄(III)テトラメチルヘプタンジオネート、鉄(III)トリフルオロペンタンジオネートなど。これらを2種以上含有してもよい。
【0048】
このような有機錯化合物の含有量は、感熱層の全固形分中0.5〜50重量%が好ましく、3〜30重量%がより好ましい。有機錯化合物の含有量を0.5重量%以上とすることによって、上記のような効果をより高めることができる。一方、50重量%以下とすることによって、印刷版の高い耐刷性を維持することができる。
【0049】
光熱変換物質としては、レーザー光を吸収するものであれば特に限定されるものではなく、赤外線または近赤外線を吸収する顔料、染料が好ましい。例えば、カーボンブラック、カーボングラファイト、アニリンブラック、シアニンブラックなどの黒色顔料、フタロシアニン、ナフタロシアニン系の緑色顔料、結晶水含有無機化合物、鉄、銅、クロム、ビスマス、マグネシウム、アルミニウム、チタニウム、ジルコニウム、コバルト、バナジウム、マンガン、タングステンなどの金属粉、またはこれら金属の硫化物、水酸化物、珪酸塩、硫酸塩、燐酸塩、ジアミン化合物錯体、ジチオール化合物錯体、フェノールチオール化合物錯体、メルカプトフェノール化合物錯体などを挙げることができる。
【0050】
また、赤外線または近赤外線を吸収する染料としては、エレクトロニクス用や記録用の染料で、最大吸収波長が700nm〜1500nmの範囲にあるシアニン系染料、アズレニウム系染料、スクアリリウム系染料、クロコニウム系染料、アゾ系分散染料、ビスアゾスチルベン系染料、ナフトキノン系染料、アントラキノン系染料、ペリレン系染料、フタロシアニン系染料、ナフタロシアニン金属錯体系染料、ポリメチン系染料、ジチオールニッケル錯体系染料、インドアニリン金属錯体染料、分子間型CT染料、ベンゾチオピラン系スピロピラン、ニグロシン染料などが好ましく使用される。
【0051】
これらの染料のなかでも、モル吸光度係数εの大きなものが好ましく使用される。具体的には、εは1×10以上が好ましく、より好ましくは1×10以上である。εが1×10以上であれば、初期感度をより向上させることができる。
【0052】
これらの光熱変換物質を2種以上含有してもよい。吸収波長の異なる2種以上の光熱変換物質を含有することにより、発信波長の異なる2種以上のレーザーに対応させることができる。
【0053】
これらのなかでも、光熱変換率、経済性および取り扱い性の面から、カーボンブラック、赤外線または近赤外線を吸収する染料が好ましい。
【0054】
これら光熱変換物質の含有量は、感熱層の全固形分中0.1〜70重量%が好ましく、より好ましくは0.5〜40重量%である。光熱変換物質の含有量を0.1重量%以上とすることで、レーザー光に対する感度をより向上させることができる。一方、70重量%以下とすることで、印刷版の高い耐刷性を維持することができる。
【0055】
また、本発明の直描型水なし平版印刷版原版において、感熱層は必要に応じて各種の添加剤を含有してもよい。例えば、塗布性を改良するためにシリコーン系界面活性剤やフッ素系界面活性剤などを含有してもよい。また、シリコーンゴム層との接着性を強化するためにシランカップリング剤、チタンカップリング剤などを含有してもよい。これら添加剤の含有量はその使用目的によって異なるが、一般的には感熱層の全固形分中0.1〜30重量%である。
【0056】
また、高感度化の目的で、本発明の直描型水なし平版印刷版原版は、感熱層に気泡を有していてもよい。感熱層に気泡を形成する方法としては、例えば、特開2005−300586号公報や特開2005−331924号公報に記載の方法を挙げることができる。
【0057】
さらに、原版作製直後の高感度化に加えて、経時後においても高感度を維持する目的で、本発明の直描型水なし平版印刷版原版は、感熱層に液泡を有していてもよい。感熱層に、210〜270℃の範囲に沸点を有する液体を含む液泡を有することが好ましく、これにより、高い感度を長期間維持することのできる直描型水なし平版印刷版原版を得ることができる。すなわち、210℃以上の沸点を有する液体を含むことにより、液泡としての形態を長期間維持させることが容易となり、高い感度を長期間維持することができる。一方、270℃以下の沸点を有する液体を含むことにより、初期感度をより高くすることができることに加え、感熱層表面への液体のブリードアウトや、現像時のシリコーンゴム層の剥離を抑制することができる。感熱層にこのような液泡を有する直描型水なし平版印刷版原版は、初期感度および経時後感度が高いことから、火膨れが生じやすい傾向がある。本発明は、このような高感度の原版に対して、特に高い効果を奏する。
【0058】
なお、本発明において、液体の沸点とは大気圧下における沸点を指す。また、液泡が2種以上の液体を含む場合など、沸点を複数有する場合には、210〜270℃の範囲に沸点を有する液体の割合が60重量%以上であることが好ましく、80重量%以上であることがより好ましく、90重量%以上であることがより好ましく、100重量%であることがさらに好ましい。
【0059】
液泡に含まれる液体は、加熱発生ガス分析によって発生ガスを捕集し、そのガス組成を分析することによって特定できる。
【0060】
また、液泡に含まれる液体の溶解度パラメーターは、17.0(MPa)1/2以下が好ましく、16.5(MPa)1/2以下がより好ましい。溶解度パラメーターが17.0(MPa)1/2以下の液体は、前述したポリマーとの相溶性が低いことから、かかる液体に対するポリマーの溶解度および/またはポリマーに対する液体の溶解度が低くなり、感熱層中(フィルム形成能を有するポリマー中)で液泡として容易に存在させることができる。
【0061】
本発明において、溶解度パラメーターはHildebrandの溶解度パラメーターを指し、液体のモル蒸発熱をΔH、モル体積をVとするとき、δ=(ΔH/V)1/2により定義される量δをいう。溶解度パラメーターの単位には(MPa)1/2を用いる。溶解度パラメーターの単位としては、(cal・cm−31/2もよく用いられており、両者の単位間には、δ(MPa)1/2=2.0455×δ(cal・cm−31/2の関係式がある。具体的には、溶解度パラメーター17.0(MPa)1/2は8.3(cal・cm−31/2となる。溶解度パラメーターが17.0(MPa)1/2以下の液体としては、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、アルキレンオキサイドジアルキルエーテル類などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。経済性および安全性の点から脂肪族飽和炭化水素が好ましい。
【0062】
液泡に含まれる液体の溶解度パラメーターは、加熱発生ガス分析によって発生したガス組成を分析し、構造を特定することによって文献値から確認することもできる。
【0063】
210〜270℃の範囲に沸点を有し、溶解度パラメーターが17.0(MPa)1/2以下である液体として、例えば、炭素数12〜18の直鎖状、分岐状または環状の炭化水素、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル(沸点:212℃、溶解度パラメーター:16.0(MPa)1/2)、ジエチレングリコールジブチルエーテル(沸点:256℃、溶解度パラメーター:15.8(MPa)1/2)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(沸点:216℃、溶解度パラメーター:16.2(MPa)1/2)、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル(沸点:261℃、溶解度パラメーター:16.2(MPa)1/2)、トリプロピレングリコールジメチルエーテル(沸点:215℃、溶解度パラメーター:15.1(MPa)1/2)などのアルキレングリコールジアルキルエーテル類などが挙げられる。これらを2種以上含んでもよい。
【0064】
初期感度および経時後感度をより向上させる観点から、水なし平版印刷版を製造する際の露光工程において走査されるレーザービームの照射面積内に、少なくとも1個の液泡が存在することが好ましい。一般的な露光機のレーザービームの照射面積は約100μm(一辺約10μmの正方形)である。
【0065】
非感光性粒子が存在しない部分の感熱層に含まれる液泡の数は、TEM観察により求めることができる。より詳しくは、直描型水なし平版印刷版原版から連続(超薄)切片法によって試料を作製し、加速電圧100kV、倍率8000倍の条件で感熱層のTEM観察を行う。水平断面の三次元情報に基づき、非感光性粒子が存在しない部分の感熱層の水平断面1μm((縦)1μm×(横)1μm)の深さ方向における液泡(直径:0.01μm以上)の総数を計数することで液泡の数を求めることができる。
【0066】
感熱層中の液泡の空間的な分布は、均一でも深さ方向に変調していてもよい。初期感度および経時後感度をより向上させる観点からは、シリコーンゴム層との界面から深さ0.5μmまでの非感光性粒子が存在しない部分の感熱層0.5μm((縦)1μm×(横)1μm×(シリコーンゴム層との界面から深さ)0.5μm)において、直径0.01μm以上の液泡の数は、2個以上が好ましく、20個以上がより好ましい。
【0067】
液泡の直径は、0.01μm以上が好ましく、0.05μm以上がより好ましく、0.1μm以上がより好ましい。一方、1μm以下が好ましく、0.5μm以下がより好ましく、0.3μm以下がより好ましい。前記範囲の直径を有する液泡を、液泡全体の50体積%以上含有することが好ましく、80体積%以上含有することがより好ましく、90体積%以上含有することがさらに好ましい。液泡の平均直径は、0.1〜1μmが好ましく、0.1〜0.3μmがより好ましく、0.25μm以下がさらに好ましい。液泡の大きさが上記範囲内であれば初期感度および経時後感度がより向上する。
【0068】
本発明において、液泡の直径とは、液泡が真球であると仮定した際の等体積球相当径を指す。また、液泡の平均直径とは、複数個の前記直径の液泡から算出した数平均値を指す。非感光性粒子が存在しない部分の感熱層に含まれる液泡の平均直径は、TEM観察により求めることができる。より詳しくは、直描型水なし平版印刷版原版から連続(超薄)切片法によって試料を作製し、加速電圧100kV、倍率8000倍の条件で感熱層のTEM観察を行う。水平断面の三次元情報に基づき、ランダムに選んだ50個の液泡についてその直径を計測し、その数平均値を算出することにより、平均直径を求めることができる。
【0069】
感熱層中の液泡の含有量は、非感光性粒子が存在しない部分の感熱層の0.1体積%以上が好ましく、1体積%以上がより好ましく、5体積%以上がより好ましい。一方、耐溶剤性や耐刷性の観点から、50体積%以下が好ましく、40体積%以下がより好ましく、20体積%以下がより好ましい。
【0070】
感熱層に液泡を有する場合、感熱層の熱軟化点は50℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましい。熱軟化点が50℃以上であれば、室温下における感熱層の流動を抑制できることから、経時後感度をより向上させることができる。感熱層の熱軟化点は、感熱層の主成分である活性水素を有するポリマーの熱軟化点に大きく依存する。このため、活性水素を有するポリマーとして、熱軟化点が50℃以上のポリマーを用いることが好ましい。中でも、アルコール性水酸基、フェノール性水酸基、カルボキシル基を有する熱軟化点が50℃以上のポリマーがより好ましく、フェノール性水酸基を有する熱軟化点が50℃以上のポリマー(p−ヒドロキシスチレンの単独重合体もしくは共重合体、ノボラック樹脂、レゾール樹脂など)がより好ましい。
【0071】
本発明の直描型水なし平版印刷版原版において、非感光性粒子が存在しない部分の感熱層の平均膜厚は、0.3μm以上が好ましく、0.8μm以上がより好ましい。一方、10μm以下が好ましく、7μm以下がより好ましい。非感光性粒子が存在しない部分の感熱層の平均膜厚を0.3μm以上とすることで現像性の低下が起こりにくく、10μm以下とすることで火膨れ耐性の向上効果が発現しやすく、また、経済的な見地からも不利とならない。ここで、非感光性粒子が存在しない部分の感熱層の平均膜厚は、TEM観察により求めることができる。より詳しくは、直描型水なし平版印刷版原版から超薄切片法によって試料を作製し、加速電圧100kV、倍率2000倍の条件でTEM観察を行う。垂直断面のTEM写真において、非感光性粒子が存在せずに平滑な部分の感熱層からランダムに選んだ10箇所について膜厚を計測し、その数平均値を算出することにより、平均膜厚を求めることができる。
【0072】
本発明の直描型水なし平版印刷版原版において、シリコーンゴム層としては、付加反応型シリコーンゴム層組成物または縮合反応型シリコーンゴム層組成物を塗布して得られる層、これらの組成物の溶液を塗布、(加熱)乾燥して得られる層が挙げられる。
【0073】
付加反応型のシリコーンゴム層組成物は、少なくともビニル基含有オルガノポリシロキサン、SiH基含有化合物(付加反応型架橋剤)および硬化触媒を含むことが好ましい。さらに、反応抑制剤を含有してもよい。
【0074】
ビニル基含有オルガノポリシロキサンは、下記一般式(I)で表される構造を有し、主鎖末端もしくは主鎖中にビニル基を有するものである。中でも主鎖末端にビニル基を有するものが好ましい。これらを2種以上含有してもよい。
−(SiR−O−)− (I)
式中、nは2以上の整数を示し、RおよびRは同じであっても異なっていてもよく、炭素数1〜50の飽和または不飽和の炭化水素基を表す。炭化水素基は直鎖状でも枝分かれ状でも環状でもよく、芳香環を含んでいてもよい。
【0075】
上記式中、RおよびRは全体の50%以上がメチル基であることが、印刷版のインキ反発性の面で好ましい。また、取扱い性や印刷版のインキ反発性、耐傷性の観点から、ビニル基含有オルガノポリシロキサンの重量平均分子量は1万〜60万が好ましい。
【0076】
SiH基含有化合物としては、例えば、オルガノハイドロジェンポリシロキサン、ジオルガノハイドロジェンシリル基を有する有機ポリマーが挙げられ、好ましくはオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。これらを2種以上含有してもよい。
【0077】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、直鎖状、環状、分岐状、網状の分子構造を有し、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ポリメチルハイドロジェンシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン、式:RSiO1/2で示されるシロキサン単位と式:RHSiO1/2で示されるシロキサン単位と式:SiO4/2で示されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサン共重合体、式:RHSiO1/2で示されるシロキサン単位と式:SiO4/2で示されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサン共重合体、式:RHSiO2/2で示されるシロキサン単位と式:RSiO3/2で示されるシロキサン単位または式:HSiO3/2で示されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサン共重合体などが挙げられる。これらのオルガノポリシロキサンを2種以上用いてもよい。上記式中、Rはアルケニル基以外の一価炭化水素基であり、置換されていてもよい。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基などのアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基などのアリール基;ベンジル基、フェネチル基などのアラルキル基;クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフロロプロピル基などのハロゲン化アルキル基が例示される。
【0078】
ジオルガノハイドロジェンシリル基を有する有機ポリマーとしては、例えば、ジメチルハイドロジェンシリル(メタ)アクレート、ジメチルハイドロジェンシリルプロピル(メタ)アクリレートなどのジメチルハイドロジェンシリル基含有(メタ)アクリル系モノマーと、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、スチレン、α−メチルスチレン、マレイン酸、酢酸ビニル、酢酸アリルなどのモノマーとを共重合したオリゴマーなどが挙げられる。
【0079】
SiH基含有化合物の含有量は、シリコーンゴム層の硬化性の観点から、シリコーンゴム層組成物中0.5重量%以上が好ましく、1重量%以上がより好ましい。また、20重量%以下が好ましく、15重量%以下がより好ましい。
【0080】
反応抑制剤としては、含窒素化合物、リン系化合物、不飽和アルコールなどが挙げられ、アセチレン基含有アルコールが好ましく用いられる。これらを2種以上含有してもよい。これらの反応抑制剤を含有することにより、シリコーンゴム層の硬化速度を調整することができる。反応抑制剤の含有量は、シリコーンゴム層組成物やその溶液の安定性の観点から、シリコーンゴム層組成物中0.01重量%以上が好ましく、0.1重量%以上がより好ましい。また、シリコーンゴム層の硬化性の観点から、シリコーンゴム層組成物中20重量%以下が好ましく、15重量%以下がより好ましい。
【0081】
硬化触媒は公知のものから選ばれる。好ましくは白金系化合物であり、具体的には白金単体、塩化白金、塩化白金酸、オレフィン配位白金、白金のアルコール変性錯体、白金のメチルビニルポリシロキサン錯体などを挙げることができる。これらを2種以上含有してもよい。硬化触媒の含有量は、シリコーンゴム層の硬化性の観点から、シリコーンゴム層組成物中0.001重量%以上が好ましく、0.01重量%以上がより好ましい。また、シリコーンゴム層組成物やその溶液の安定性の観点から、シリコーンゴム層組成物中20重量%以下が好ましく、15重量%以下がより好ましい。
【0082】
また、これらの成分の他に、水酸基含有オルガノポリシロキサンや加水分解性官能基含有シラン(もしくはシロキサン)、ゴム強度を向上させる目的でシリカなどの公知の充填剤、接着性を向上させる目的で公知のシランカップリング剤を含有してもよい。シランカップリング剤としては、アルコキシシラン類、アセトキシシラン類、ケトキシミノシラン類などが好ましく、特にビニル基やアリル基を有するものが好ましい。
【0083】
縮合反応型のシリコーンゴム層組成物は、少なくとも水酸基含有オルガノポリシロキサン、架橋剤および硬化触媒を含むことが好ましい。
【0084】
水酸基含有オルガノポリシロキサンは、前記一般式(I)で表される構造を有し、主鎖末端もしくは主鎖中に水酸基を有するものである。中でも主鎖末端に水酸基を有するものが好ましい。これらを2種以上含有してもよい。
【0085】
架橋剤としては、下記一般式(II)で表される、脱酢酸型、脱オキシム型、脱アルコール型、脱アセトン型、脱アミド型、脱ヒドロキシルアミン型などのケイ素化合物を挙げることができる。
(R4−mSiX(II)
式中、mは2〜4の整数を示し、Rは同一でも異なってもよく、炭素数1以上の置換もしくは非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、またはこれらの組み合わされた基を示す。Xは同一でも異なってもよく、加水分解性基を示す。加水分解性基としては、アセトキシ基などのアシロキシ基、メチルエチルケトオキシム基などのケトオキシム基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などのアルコキシ基、イソプロペノキシ基などのアルケニルオキシ基、アセチルエチルアミノ基などのアシルアルキルアミノ基、ジメチルアミノキシ基などのアミノキシ基などが挙げられる。上記式において、加水分解性基の数mは3または4であることが好ましい。
【0086】
具体的な化合物としては、メチルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、アリルトリアセトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、テトラアセトキシシランなどのアセトキシシラン類、ビニルメチルビス(メチルエチルケトキシミノ)シラン、メチルトリス(メチルエチルケトキシミノ)シラン、エチルトリス(メチルエチルケトキシミノ)シラン、ビニルトリス(メチルエチルケトキシミノ)シラン、アリルトリス(メチルエチルケトキシミノ)シラン、フェニルトリス(メチルエチルケトキシミノ)シラン、テトラキス(メチルエチルケトキシミノ)シランなどのケトキシミノシラン類、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシランなどのアルコキシシラン類、ビニルトリスイソプロペノキシシラン、ジイソプロペノキシジメチルシラン、トリイソプロペノキシメチルシランなどのアルケニルオキシシラン類、テトラアリロキシシランなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの中では、シリコーンゴム層の硬化速度、取扱い性などの観点から、アセトキシシラン類、ケトキシミノシラン類が好ましい。これらを2種以上含有してもよい。
【0087】
架橋剤の含有量は、シリコーンゴム層組成物やその溶液の安定性の観点から、シリコーンゴム層組成物中0.5重量%以上が好ましく、1重量%以上がより好ましい。また、シリコーンゴム層の強度や印刷版の耐傷性の観点から、シリコーンゴム層組成物中20重量%以下が好ましく、15重量%以下がより好ましい。
【0088】
硬化触媒としては、有機カルボン酸、酸類、アルカリ、アミン、金属アルコキシド、金属ジケテネート、錫、鉛、亜鉛、鉄、コバルト、カルシウム、マンガンなどの金属の有機酸塩などが挙げられる。具体的には、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジラウレート、オクチル酸亜鉛、オクチル酸鉄などを挙げることができる。これらを2種以上含有してもよい。
【0089】
硬化触媒の含有量は、シリコーンゴム層の硬化性、接着性の観点から、シリコーンゴム層組成物中0.001重量%以上が好ましく、0.01重量%以上がより好ましい。また、シリコーンゴム層組成物やその溶液の安定性の観点から、シリコーンゴム層組成物中15重量%以下が好ましく、10重量%以下がより好ましい。
【0090】
また、これらの成分の他に、ゴム強度を向上させる目的でシリカなどの公知の充填剤を含有してもよい。
【0091】
また、現像後の水なし平版印刷版に検版性を付与する目的で、シリコーンゴム層中に有色顔料を含有することが好ましい。ここで、本発明において有色顔料とは、可視光波長域(380〜780nm)における何れかの光を吸収する顔料をいう。
【0092】
一般に、顔料は水や脂肪族炭化水素などの溶剤に不溶であるため、顔料を含むことにより、水や溶剤に可溶な染料を含む場合に比べて、現像工程において用いられる水や有機薬液、印刷工程において用いられるインキ中の溶剤や各種洗浄剤などによる色素抽出が格段に抑えられる。
【0093】
現像後の水なし平版印刷版の検版性としては、目視による目視検版性、網点面積率測定装置による機器検版性が挙げられる。一般的に、機器検版性は目視検版性よりも画像識別能が低いため、機器検版性が良好な水なし平版印刷版は目視検版性もまた良好である場合が多い。
【0094】
一般的な網点面積率測定装置は、印刷版上に形成された網点部分に、青色光(波長400〜500nm)、緑色光(波長500〜600nm)、赤色光(波長600〜700nm)、または白色光(波長400〜700nm)の何れかの光を照射し、画線部/非画線部間の反射光量差から網点面積率を算出する。このため、画線部/非画線部間の反射光量差が小さい場合や、反射光量差がない場合は、網点面積率測定が困難となり、機器検版性が低下する。直描型水なし平版印刷版原版の断熱層や感熱層を構成する有機化合物の多くは青色光を吸収するため、青色光を吸収する黄色や橙色などの有色顔料で着色したシリコーンゴム層を用いた場合、画線部/非画線部間の反射光量差が小さくなり、機器検版性が低下する。さらに、目視検版性も低下する場合がある。このような理由から、緑色光または赤色光を吸収する有色顔料を用いることが、機器検版性や目視検版性の観点から好ましい。さらに、緑色光または赤色光を吸収する有色顔料の中でも、密度3g/cm以下の有色顔料が、シリコーンゴム層組成物やその溶液における分散性の観点から好ましい。緑色光または赤色光を吸収する有色顔料の中で、密度が3g/cm以下の有色顔料としては、コバルトブルー、紺青、含水硅酸塩、群青、カーボンブラック、体質顔料(炭酸石灰粉、沈降性炭酸カルシウム、石膏、アスベスト、クレー、シリカ粉、珪藻土、タルク、塩基性炭酸マグネシウム、アルミナホワイト)にローダミン、メチルバイオレット、ピーコックブルー、アルカリブルー、マラカイトグリーン、アリザリンなどの染料を染め付けた捺染系顔料、アルカリブルー、アニリンブラック、リソールレッド、レーキレッドC、ブリリアントカーミン6B、ウォッチヤングレッド、ボルドー10B、パラレッド、レーキレッド4R、ナフトールレッド、クロモフタルスカーレットRN、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、フタロシアニングリーン、アントラキノン系顔料、ペリレンレッド、チオインジゴレッド、インダントロンブルー、キナクリドンレッド、キナクリドンバイオレット、ジオキサジンバイオレット、ナフトールグリーンBなどが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
【0095】
本発明の直描型水なし平版印刷版原版において、有色顔料の含有量は、シリコーンゴム層中の0.1体積%以上が好ましく、0.2体積%以上がより好ましい。また、シリコーンゴム層のインキ反発性を維持する観点から、20体積%以下が好ましく、10体積%以下がより好ましい。
【0096】
シリコーンゴム層中における有色顔料の分散性を向上させるために、シリコーンゴム層組成物に顔料分散剤を含有することが好ましい。顔料分散剤を含有することにより、シリコーンゴム層組成物を溶剤により希釈する際や、シリコーンゴム層組成物またはその溶液中で経時により発生する有色顔料の凝集を抑制することができる。顔料分散剤としては、顔料表面をよく濡らし、かつオルガノポリシロキサンや、後述する有色顔料含有シリコーン液の希釈に用いられる溶剤などの低極性化合物との親和性が良好な顔料分散剤が好ましい。そのような顔料分散剤であれば公知の顔料分散剤を用いることができる。顔料分散剤は界面活性剤や表面改質剤などの名称で用いられることもある。顔料分散剤としては、金属と有機化合物からなる有機錯化合物、アミン系顔料分散剤、酸系顔料分散剤、ノニオン界面活性剤などを挙げることができる。中でも、金属と有機化合物からなる有機錯化合物、またはアミン系顔料分散剤が好ましい。
【0097】
有機錯化合物を形成する金属および有機化合物としては、感熱層の架橋剤として先に例示した金属錯化合物を形成する金属および有機化合物が挙げられる。中でも、有機化合物としては、カルボン酸やリン酸、スルホン酸などの酸化合物や、金属との間でキレート環を形成できるジケトンやケトエステル、ジエステル化合物が金属との配位力の点から好ましい。
【0098】
顔料分散剤として用いられる最も単純な有機錯化合物は、上記有機化合物と金属アルコキシドを室温下または加熱下で撹拌し、配位子を交換することにより得ることができる。1つの金属に対し上記有機化合物を1分子以上配位させることが好ましい。
【0099】
市販されている金属と有機化合物からなる有機錯化合物の一例を以下に挙げる。アルミニウム系:“オクトープ”(登録商標)Al、“オリープ”AOO、AOS(以上、ホープ製薬(株)製)、“プレンアクト”(登録商標)AL−M(味の素ファインテクノ(株)製)など。チタニウム系:“プレンアクト”KR−TTS、KR46B、KR55、KR41B、KR38S、KR138S、KR238S、KR338X、KR9SA(以上、味の素ファインテクノ(株)製)、“KEN−REACT”(登録商標)TTS−B、5、6、7、10、11、12、15、26S、37BS、43、58CS、62S、36B、46B、101、106、110S、112S、126S、137BS、158DS、201、206、212、226、237、262S(以上、KENRICH社製)など。
【0100】
上記有機錯化合物は、特に付加反応型シリコーンゴム層に好適に使用できる。中でも、分子中に1級または2級のアミン、リン、硫黄を含まない有機錯化合物は白金触媒の触媒毒として作用しないため、白金触媒を用いて硬化を促進する付加反応型のシリコーンに用いる際に極めて好適である。
【0101】
一方、アミン系顔料分散剤としては、その分子中に1個のアミノ基を有するモノアミンタイプ、分子中に複数個のアミノ基を有するポリアミンタイプがあり、何れも好適に使用できる。具体的には、“ソルスパース”(登録商標)9000、13240、13650、13940、17000、18000、19000、28000(以上、LUBRIZOL社製)などを挙げることができる。
【0102】
顔料分散剤は、顔料の表面積に対して、2〜30mg/m含有することが好ましい。言い換えると、例えば、比表面積50m/gの顔料を10g含有する場合、顔料分散剤の含有量は、1〜15gが好ましい。
【0103】
本発明の直描型水なし平版印刷版原版において、非感光性粒子が存在しない部分の感熱層上のシリコーンゴム層の平均膜厚は0.5〜20μmが好ましい。非感光性粒子が存在しない部分の感熱層上のシリコーンゴム層の平均膜厚を0.5g/m以上とすることで印刷版のインキ反発性や耐傷性、耐刷性が十分となり、20g/m以下とすることで経済的見地から不利とならず、現像性、インキマイレージの低下が起こりにくい。ここで、非感光性粒子が存在しない部分の感熱層上のシリコーンゴム層の平均膜厚は、TEM観察により求めることができる。より詳しくは、直描型水なし平版印刷版原版から超薄切片法によって試料を作製し、加速電圧100kV、倍率2000倍の条件でTEM観察を行う。垂直断面のTEM写真において、非感光性粒子が存在せずに平滑な部分の感熱層上のシリコーンゴム層からランダムに選んだ10箇所について膜厚を計測し、その数平均値を算出することにより、平均膜厚を求めることができる。
【0104】
基板と感熱層間の接着性向上、光ハレーション防止、検版性向上、断熱性向上、耐刷性向上などを目的に、前述の基板の上に断熱層を有してもよい。本発明に用いられる断熱層としては、例えば特開2004−199016号公報、特開2004−334025号公報、特開2006−276385号公報などに記載された断熱層を挙げることができる。
【0105】
本発明の直描型水なし平版印刷版原版は、シリコーンゴム層保護の目的で保護フィルムおよび/または合紙を有してもよい。
【0106】
保護フィルムとしては、露光光源波長の光を良好に透過する厚み100μm以下のフィルムが好ましい。代表例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、セロファンなどを挙げることができる。また、曝光による原版の感光を防止する目的で、特開平2−063050号公報に記載されたような種々の光吸収剤や光退色性物質、光発色性物質を保護フィルム上に有してもよい。
【0107】
合紙としては、秤量30〜120g/mのものが好ましく、より好ましくは30〜90g/mである。秤量30g/m以上であれば機械的強度が十分であり、120g/m以下であれば経済的に有利であるばかりでなく、直描型水なし平版印刷版原版と紙の積層体が薄くなり、作業性が有利になる。好ましく用いられる合紙の例として、例えば、情報記録原紙40g/m(名古屋パルプ(株)製)、金属合紙30g/m(名古屋パルプ(株)製)、未晒しクラフト紙50g/m(中越パルプ工業(株)製)、NIP用紙52g/m(中越パルプ工業(株)製)、純白ロール紙45g/m(王子製紙(株)製)、クルパック73g/m(王子製紙(株)製)などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0108】
次に、本発明の直描型水なし平版印刷版原版の製造方法について説明する。本発明の直描型水なし平版印刷版原版の製造方法としては、例えば、(a)基板上、または断熱層を積層した基板上に、非感光性粒子を分散させた感熱層組成物溶液を塗布する工程、(b)該感熱層組成物溶液を乾燥して感熱層を形成する工程、(c)該感熱層上にシリコーンゴム層組成物を塗布してシリコーンゴム層を形成する工程を少なくとも有する方法が挙げられる。また、前記工程(c)にかえて、(d)該感熱層上にシリコーンゴム層組成物溶液を塗布する工程および(e)該シリコーンゴム層組成物溶液を乾燥してシリコーンゴム層を形成する工程を有してもよい。
【0109】
まず、(a)基板上、または断熱層を積層した基板上に、非感光性粒子を分散させた感熱層組成物溶液を塗布する工程について説明する。感熱層組成物溶液中に非感光性粒子を分散させる方法としては、例えば、感熱層組成物溶液を構成する溶剤や樹脂の希釈液などに予め非感光性粒子を分散させた分散液を準備し、得られた分散液とその他の構成成分を混合する方法や、非感光性粒子とその他の感熱層組成物溶液を構成する全成分を仕込んだ液を混合し、分散する方法などが挙げられる。
【0110】
非感光性粒子の分散には、三本ロール、ペイントシェイカー、ボールミル、ビーズミル、サンドミル、ディスパーサー、ホモジナイザー、アトライター、超音波分散機などの一般的な分散機を用いることができる。
【0111】
また、感熱層組成物溶液中に、溶解度パラメーターが17.0(MPa)1/2以下であり、かつ、210〜270℃の範囲に沸点を有する溶剤と、溶解度パラメーターが17.0(MPa)1/2を超える溶剤を含ませることで、感熱層に210〜270℃の範囲に沸点を有する液体を含む液泡を形成することができる。
【0112】
溶解度パラメーターが17.0(MPa)1/2以下であり、かつ、210〜270℃の範囲に沸点を有する溶剤としては、具体的には、炭素数12〜18の直鎖状、分岐状または環状の炭化水素、ノルマルパラフィングレードM(沸点:219〜247℃、溶解度パラメーター:16.2(MPa)1/2(新日本石油(株)製))、ノルマルパラフィングレードH(沸点:244〜262℃、溶解度パラメーター:16.2(MPa)1/2(新日本石油(株)製))、“NSクリーン”230(沸点:227℃、溶解度パラメーター:16.2(MPa)1/2((株)JOMOサンエナジー製))、“アイソパー”(登録商標)M(沸点:223〜254℃、溶解度パラメーター:14.7(MPa)1/2(エッソ化学(株)製))、“IPソルベント”2028(沸点:213〜262℃、溶解度パラメーター:14.3(MPa)1/2(出光興産(株)製))、“IPクリーン”HX(沸点:222〜261℃、溶解度パラメーター:14.3(MPa)1/2(出光興産(株)製))などの脂肪族飽和炭化水素、“ナフテゾール”(登録商標)220(沸点:221〜240℃、溶解度パラメーター:16.4(MPa)1/2(新日本石油(株)製))などの脂環族炭化水素、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル(沸点:212℃、溶解度パラメーター:16.0(MPa)1/2)、ジエチレングリコールジブチルエーテル(沸点:256℃、溶解度パラメーター:15.8(MPa)1/2)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(沸点:216℃、溶解度パラメーター:16.2(MPa)1/2)、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル(沸点:261℃、溶解度パラメーター:16.2(MPa)1/2)、トリプロピレングリコールジメチルエーテル(沸点:215℃、溶解度パラメーター:15.1(MPa)1/2)などのアルキレングリコールジアルキルエーテル類などが挙げられる。これらを2種以上含んでもよい。
【0113】
また、溶解度パラメーターが17.0(MPa)1/2以下であり、かつ、210〜270℃の範囲の一部に沸点を有する溶剤としては、具体的には、“ナフテゾール”200(沸点:201〜217℃、溶解度パラメーター:16.2(MPa)1/2(新日本石油(株)製))、“ダストクリーン”300(沸点:201〜217℃、溶解度パラメーター:16.2(MPa)1/2(松村石油(株)製))、“ダストクリーン”300AF(沸点:201〜217℃、溶解度パラメーター:16.2(MPa)1/2(松村石油(株)製))、ポリエチレングリコールジメチルエーテル(沸点:264〜294℃、溶解度パラメーター:16.6(MPa)1/2)などが挙げられる。これらを2種以上含んでもよい。
【0114】
感熱層組成物溶液に含まれる溶解度パラメーターが17.0(MPa)1/2以下の溶剤中、210〜270℃の範囲に沸点を有する液体の割合は80重量%以上が好ましく、90重量%以上がより好ましく、95重量%以上がより好ましく、100重量%がさらに好ましい。
【0115】
溶解度パラメーターが17.0(MPa)1/2以下であり、かつ、210〜270℃の範囲に沸点を有する溶剤の含有量は、初期感度および経時後感度をより向上させる観点から、感熱層固形分100重量部に対して0.1重量部以上が好ましく、1重量部以上がより好ましい。一方、感熱層組成物溶液の塗布性の観点から、感熱層固形分100重量部に対して60重量部以下が好ましく、25重量部以下がより好ましい。また、初期感度および経時後感度をより向上させる観点から、感熱層組成物溶液中0.1重量%以上が好ましく、0.5重量%以上がより好ましい。一方、感熱層組成物溶液の塗布性の観点から、感熱層組成物溶液中10重量%以下が好ましく、7重量%以下がより好ましく、5重量%以下がより好ましい。
【0116】
溶解度パラメーターが17.0(MPa)1/2を超える溶剤としては、感熱層構成成分を溶解または分散できるものが好ましい。例えば、アルコール類、エーテル類、ケトン類、エステル類、アミド類などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
【0117】
アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、イソブタノール、2−ブタノール、2−メチル−2−プロパノール、1−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチルブタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、2,4−ジメチルペンタ−3−オール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチルヘキサノール、1−ノナノール、2,6−ジメチル−4−ヘプタノール、1−デカノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、グリセリン、ベンジルアルコール、α−メチルベンジルアルコール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコールなどが挙げられる。
【0118】
エーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジプロピルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルフェニルエーテル、ジメトキシメタン、ジエテルアセタール、プロピレンオキシド、ジオキサン、ジメチルジオキサン、トリオキサン、ジオキソラン、メチルジオキソラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピランなどが挙げられる。
【0119】
ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、ジエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルプロピルケトン、エチルブチルケトン、ジプロピルケトン、ジブチルケトン、ジイソブチルケロン、メチルペンチルケトン、メチルヘキシルケトン、エチルペンチルケトン、プロピルブチルケトン、エチルヘキシルケトン、プロピルペンチルケトン、プロピルヘキシルケトン、ブチルペンチルケトン、ブチルヘキシルケトン、ジペンチルケトン、ペンチルヘキシルケトン、ジヘキシルケトン、メチルイソブテニルケトン、ジアセトンアルコール、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、メチルフェニルケトン、イソホロン、アセチルアセトン、アセトニルアセトンなどが挙げられる。
【0120】
エステル類としては、例えば、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸ブチル、ギ酸ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、酢酸ヘキシル、酢酸シクロヘキシル、酢酸フェニル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸ペンチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸ブチル、酪酸ペンチル、クロトン酸エチル、クロトン酸ブチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸ベンジル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、乳酸ペンチル、乳酸ヘキシル、乳酸シクロヘキシル、サリチル酸メチル、サリチル酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メトキシブチルアセテート、シュウ酸ジメチル、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチルなどが挙げられる。
【0121】
アミド類としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどが挙げられる。
【0122】
その他に、カルバミド酸メチル、カルバミド酸エチル、テトラメチルウレア、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、アセトニトリルなどを含有してもよい。
【0123】
上記溶剤の中でも、溶解度パラメーターが17.0(MPa)1/2以下であり、かつ、210〜270℃の範囲に沸点を有する液体と相溶する溶剤が特に好ましい。
【0124】
液泡の大きさは、溶解度パラメーターが17.0(MPa)1/2を超える溶剤の沸点、および感熱層組成物溶液を塗布する際の雰囲気温度との間に密接な関係がある。溶解度パラメーターが17.0(MPa)1/2を超える溶剤として、感熱層組成物溶液を塗布する際の雰囲気温度で容易に蒸発する低沸点の溶剤を用いた場合は、低沸点の溶剤が速やかに蒸発し、隣接した液泡形成成分が集まる前に乾燥するため、小さな液泡が感熱層に形成される。一方、感熱層組成物溶液を塗布する際の雰囲気温度で容易に蒸発しない高沸点の溶剤を用いた場合は、高沸点の溶剤がゆっくりと蒸発し、隣接した液泡形成成分が集まりながら乾燥するため、大きな液泡が感熱層に形成される。
【0125】
上記溶解度パラメーターが17.0(MPa)1/2を超える溶剤中、沸点30〜200℃の溶剤を80重量%以上含むことが好ましく、95重量%以上含むことがより好ましい。また、沸点80℃以下の溶剤を80重量%以上含むことがより好ましく、95重量%以上含むことがより好ましい。また、沸点70℃以下の溶剤を80重量%以上含むことがより好ましく、95重量%以上含むことがより好ましい。沸点30℃以上の溶剤を80重量%以上含むことにより、特別な冷却装置などを用いることなく常温での安定的な塗液調製を容易に行うことができる。また、沸点200℃以下の溶剤を80重量%以上含むことにより、後述する乾燥により、感熱層から容易に除去することができる。
【0126】
また、溶解度パラメーターが17.0(MPa)1/2を超える溶剤の沸点が活性水素を有するポリマーの熱軟化点よりも低いと、液泡の形成に有利である。
【0127】
感熱層組成物溶液は、前述の感熱層構成成分、溶解度パラメーターが17.0(MPa)1/2以下であり、かつ、210〜270℃の範囲に沸点を有する溶剤、溶解度パラメーターが17.0(MPa)1/2を超える溶剤および必要に応じて他の成分を含有する。感熱層組成物溶液中の全固形分の濃度は、2〜50重量%が好ましい。
【0128】
上記感熱層組成物溶液を、基板上に直接塗布してもよいし、必要により断熱層などの樹脂層を基板上に積層した上に、感熱層組成物溶液を塗布してもよい。基板は塗布面を脱脂しておくことが好ましい。
【0129】
塗布装置の例としては、スリットダイコーター、ダイレクトグラビアコーター、オフセットグラビアコーター、リバースロールコーター、ナチュラルロールコーター、エアーナイフコーター、ロールブレードコーター、バリバーロールブレードコーター、トゥーストリームコーター、ロッドコーター、ディップコーター、カーテンコーター、スピンコーターなどが挙げられる。塗膜精度や生産性およびコストの面で、スリットダイコーター、グラビアコーター、ロールコーターが特に好ましい。
【0130】
感熱層組成物溶液の塗布重量は、印刷版の耐刷性や希釈溶剤が揮散しやすく生産性で優れる点で乾燥後の重量で0.1〜10g/mの範囲が適当であり、好ましくは0.5〜7g/mの範囲である。
【0131】
次に、(b)感熱層組成物溶液を乾燥して感熱層を形成する工程について説明する。感熱層組成物溶液の乾燥は非加熱下、または加熱下において実施される。加熱する場合には、熱風乾燥機、赤外線乾燥機などを用いて、30〜190℃、より好ましくは50〜150℃の温度で、30秒〜5分間乾燥することが好ましい。
【0132】
次に、(c)該感熱層上にシリコーンゴム層組成物を塗布してシリコーンゴム層を形成する工程、(d)該感熱層上にシリコーンゴム層組成物溶液を塗布する工程および(e)該シリコーンゴム組成物溶液を乾燥してシリコーンゴム層を形成する工程について説明する。ここで、シリコーンゴム層組成物は、シリコーンゴム層を形成する材料から構成される無溶剤の液体であり、シリコーンゴム層組成物溶液は、シリコーンゴム層組成物と溶剤を含有する希溶液である。
【0133】
有色顔料の分散や、シリコーンゴム層組成物溶液に用いられる溶剤としては、例えば、脂肪族飽和炭化水素、脂肪族不飽和炭化水素、脂環族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、エーテル類などが挙げられる。これら溶剤の溶解度パラメーターは、17.0(MPa)1/2以下が好ましく、15.5(MPa)1/2以下がより好ましい。例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、イソオクタン、“アイソパー”C、“アイソパー”E、“アイソパー”G、“アイソパー”H、“アイソパー”K、“アイソパー”L、“アイソパー”M(エクソン化学(株)製)などの脂肪族飽和炭化水素、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセンなどの脂肪族不飽和炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環族炭化水素、トリフルオロトリクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジイソブチルエーテルなどのエーテル類などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。経済性および安全性の点から、脂肪族および脂環族炭化水素が好ましい。これら脂肪族および脂環族炭化水素の炭素数は4〜20が好ましく、炭素数6〜15がより好ましい。
【0134】
以下に、(i)シリコーンゴム層組成物、(ii)シリコーンゴム層組成物溶液の具体的な作製方法を記載する。
【0135】
(i)シリコーンゴム層組成物(無溶剤)
例えば、水酸基またはビニル基含有オルガノポリシロキサンと、必要により有色顔料、顔料分散剤、微粒子を分散機で均一に分散混合することにより、シリコーンペーストを得る。分散機としては、三本ロール、ボールミル、ビーズミル、サンドミル、ディスパーサー、ホモジナイザー、アトライター、超音波分散機などが挙げられる。得られたシリコーンペースト中に、架橋剤、反応触媒、および必要に応じてその他の添加剤(反応抑制剤など)を添加し、撹拌して成分を均一とし、液中に混入した空気の泡を除去することで、シリコーンゴム層組成物を得る。脱泡は自然脱泡でも減圧脱泡でもよいが、減圧脱泡がより好ましい。
【0136】
(ii)シリコーンゴム層組成物溶液(溶剤含有)
例えば、水酸基またはビニル基含有オルガノポリシロキサンと、必要により有色顔料、顔料分散剤、微粒子を前述した分散機で均一に分散混合することにより、シリコーンペースト得て、これを撹拌しながら溶剤で希釈する。これを紙やプラスチック、またはガラスなどの一般的なフィルターを用いて濾過し、希釈液中の不純物(分散が不十分な有色顔料の巨大粒子など)を取り除くことが好ましい。濾過後の希釈液は、乾燥空気や乾燥窒素などによるバブリングにより系中の水分を除去することが好ましい。十分に水分の除去を行った希釈液に架橋剤、反応触媒、および必要に応じてその他の添加剤(反応抑制剤など)を添加し撹拌して成分を均一とし、液中に混入した空気の泡を除去する。脱泡は自然脱泡でも減圧脱泡でもよい。
【0137】
また、有色顔料を含有するシリコーンゴム層組成物溶液の他の作製方法としては、有色顔料分散液とシリコーン液、またはシリコーン希釈液を予め別々に作製しておき、後に両液を混合する方法が挙げられる。有色顔料分散液は、少なくとも顔料分散剤および溶剤を含有する溶液中に、有色顔料、必要により微粒子を添加し、上述の分散機で均一に分散混合することにより得られる。一方、シリコーン液は、水酸基またはビニル基含有オルガノポリシロキサン、架橋剤、反応触媒、および必要に応じてその他の添加剤(反応抑制剤など)を混合することにより得られる。また、得られたシリコーン液を溶剤で希釈することで、シリコーン希釈液を得ることができる。
【0138】
シリコーンゴム層組成物またはシリコーンゴム層組成物溶液を塗布する際、感熱層表面に付着した水分を可能な限り除去することが接着性の観点から好ましい。具体的には、乾燥ガスを充填、または、連続供給することで水分を除去した空間で、シリコーンゴム層組成物またはシリコーンゴム層組成物溶液を塗布する方法が挙げられる。
【0139】
シリコーンゴム層組成物溶液を塗布する場合には、ついで、シリコーンゴム層組成物溶液を乾燥してシリコーンゴム層を形成する。乾燥や硬化のために加熱処理を行ってもよい。シリコーンゴム層組成物およびシリコーンゴム層組成物溶液は、塗布後、直ちに加熱されることが硬化性や対感熱層接着性の観点から好ましい。
【0140】
得られた直描型水なし平版印刷版原版上に、保護フィルムおよび/または合紙を設けて保管することが、版面保護の観点から好ましい。
【0141】
次に、本発明の直描型水なし平版印刷版原版から水なし平版印刷版を製造する方法について説明する。ここで、水なし平版印刷版とは、表面にインキ反発層となるシリコーンゴム層のパターンを有する印刷版であって、シリコーンゴム層のパターンを非画線部、シリコーンゴム層のない部分を画線部とし、非画線部と画線部のインキ付着性の差異を利用して画線部のみにインキを着肉させた後、紙などの被印刷体にインキを転写する印刷方法に使用される印刷版である。水なし平版印刷版の製造方法は、上記本発明の直描型水なし平版印刷版原版をレーザービームにより像に従って露光する工程(露光工程)、露光した直描型水なし平版印刷版原版を水または水に界面活性剤を添加した液の存在下で摩擦し、露光部のシリコーンゴム層を除去する工程(現像工程)を含む。
【0142】
まず、露光工程について説明する。本発明の直描型水なし平版印刷版原版を、デジタルデータによって走査されるレーザービームにより、像に従って露光する。直描型水なし平版印刷版原版が保護フィルムを有する場合は、保護フィルムを剥離してから露光することが好ましい。露光工程で用いられるレーザー光源としては、発光波長領域が700〜1500nmの範囲にあるものが挙げられる。これらの中でも近赤外領域付近に発光波長領域が存在する半導体レーザーやYAGレーザーが好ましく用いられ、具体的には、明室での版材の取扱い性などの観点から、780nm、830nm、1064nmの波長のレーザー光が露光に好ましく用いられる。
【0143】
次に、現像工程について説明する。露光後の原版は、水または水に界面活性剤を添加した液(以下、現像液という)の存在下で摩擦することにより、露光部のシリコーンゴム層を除去する。摩擦処理としては、(i)例えば、現像液を含浸した不織布、脱脂綿、布、スポンジなどで版面を拭き取る方法、(ii)現像液で版面を前処理した後に水道水などをシャワーしながら回転ブラシで擦る方法、(iii)高圧の水や温水、または水蒸気を版面に噴射する方法などが挙げられる。
【0144】
現像に先立ち、前処理液中に一定時間版を浸漬する前処理を行ってもよい。前処理液としては、例えば、水や水にアルコールやケトン、エステル、カルボン酸などの極性溶媒を添加したもの、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類などの少なくとも1種からなる溶媒に極性溶媒を添加したもの、あるいは極性溶媒が用いられる。また、上記の現像液組成には、公知の界面活性剤を添加することも自由に行われる。界面活性剤としては、安全性、廃棄する際のコストなどの点から、水溶液にしたときにpHが5〜8になるものが好ましい。界面活性剤の含有量は現像液の10重量%以下であることが好ましい。このような現像液は安全性が高く、廃棄コストなどの経済性の点でも好ましい。さらに、グリコール化合物あるいはグリコールエーテル化合物を主成分として用いることが好ましく、アミン化合物を共存させることがより好ましい。
【0145】
前処理液、現像液としては、特開昭63−179361号公報、特開平4−163557号公報、特開平4−343360号公報、特開平9−34132号公報、特許第3716429号公報に記載された前処理液、現像液を用いることができる。前処理液の具体例としては、PP−1、PP−3、PP−F、PP−FII、PTS−1、PH−7N、CP−1、NP−1、DP−1(何れも東レ(株)製)などを挙げることができる。
【0146】
また、画線部の視認性や網点の計測精度を高める目的から、これらの現像液にクリスタルバイオレット、ビクトリアピュアブルー、アストラゾンレッド等の染料を添加して現像と同時に画線部のインキ受容層の染色を行うこともできる。さらには、現像の後に上記の染料を添加した液によって染色することもできる。
【0147】
上記現像工程の一部または全部は、自動現像機により自動的に行うこともできる。自動現像機としては現像部のみの装置、前処理部、現像部がこの順に設けられた装置、前処理部、現像部、後処理部がこの順に設けられた装置、前処理部、現像部、後処理部、水洗部がこの順に設けられた装置などを使用できる。このような自動現像機の具体例としては、TWL−650シリーズ、TWL−860シリーズ、TWL−1160シリーズ(何れも東レ(株)製)などや、特開平4−2265号公報、特開平5−2272号公報、特開平5−6000号公報などに開示されている自動現像機を挙げることができ、これらを単独または併用して使用することができる。
【0148】
現像処理された水なし平版印刷版を積み重ねて保管する場合には、版面保護の目的で、版と版の間に合紙を挟んでおくことが好ましい。
【実施例】
【0149】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明する。
【0150】
<非感光性粒子分散液の作製>
メチルエチルケトン(80重量%)と非感光性粒子(20重量%)を混合した液を、室温でジルコニアビーズ(φ0.3mm)が充填されたビーズミル“スターミル”ミニツェア(アシザワ・ファインテック(株)製)で分散することで非感光性粒子分散液を得た。
【0151】
<各実施例・比較例における評価方法>
(1)非感光性粒子のCV値
粉体(無溶剤)の非感光性粒子をスライドガラス上に少量付着させたサンプルを、光学顕微鏡:“ECLIPSE”L200((株)ニコン製、透過モード、対物レンズ:“CFI LU Plan Apo EPI”150×((株)ニコン製))に接続されたデジタルカメラ:“DXM”1200F((株)ニコン製)で画像を撮影し(モニター上の総合倍率:3000倍)、非感光性粒子の平均粒径、標準偏差を画像解析計測ソフトウェア:“WinROOF”(三谷商事(株)製)により測定した。CV値は以下の式から算出した。
CV値[%]=(標準偏差/平均粒径)×100
(2)直描型水なし平版印刷版原版のTEM観察
レーザー照射前の直描型水なし平版印刷版原版から超薄切片法によって試料を作製し、透過型電子顕微鏡H−1700FA型(日立製)を使用して、加速電圧100kV、倍率2000倍(液泡観察のみ8000倍)で直描型水なし平版印刷版原版の感熱層およびシリコーンゴム層を観察した。感熱層の平均膜厚、非感光性粒子の平均粒径と非感光性粒子の面内占有率、膜厚縮小領域の感熱層表面に対する面積率、傾斜領域の感熱層表面に対する面積率、液泡の数と平均直径、シリコーンゴム層の平均膜厚は、以下に記載の方法により計測した。
【0152】
(2−1)感熱層の平均膜厚
超薄切片法により得られた直描型水なし平版印刷版原版の垂直断面のTEM写真において、非感光性粒子が存在せずに平滑な部分の感熱層(ランダムに選んだ10箇所)について膜厚を計測し、その数平均値を感熱層の平均膜厚とした。
【0153】
(2−2)非感光性粒子の平均粒径と面内占有率
連続(超薄)切片法により得られた直描型水なし平版印刷版原版の水平断面の三次元情報から、非感光性粒子の平均粒径と面内占有率を算出した。ランダムに選んだ50個の非感光性粒子についてその粒径(等体積球相当径)を計測し、その数平均値を平均粒径とした。また、単位面積中の非感光性粒子の占める割合を非感光性粒子の面内占有率(面積%)とした。
(非感光性粒子の面内占有率計算例)
全水平断面:100μm
非感光性粒子の個数:20個
非感光性粒子の平均粒径:1μm(半径:0.5μm)
非感光性粒子占有率=100×π(0.5<μm>)×20<個>/100<μm> =15.7<面積%>
(2−3)膜厚縮小領域の感熱層表面に対する面積率
連続(超薄)切片法により得られた直描型水なし平版印刷版原版の垂直断面、水平断面の三次元情報を既存の三次元表示・解析ソフトウェアを用いて解析することで、シリコーンゴム層と向かい合う側の感熱層表面からの感熱層の膜厚が0.1μm以下に縮小された膜厚縮小領域の感熱層表面に対する面積率を計測した。
【0154】
(2−4)傾斜領域の感熱層表面に対する面積率
連続(超薄)切片法により得られた直描型水なし平版印刷版原版の垂直断面、水平断面の三次元情報を既存の三次元表示・解析ソフトウェアを用いて解析することで、10度以上の勾配を有し、隆起構造を構成し、少なくとも一部で連続した面状領域である傾斜領域の感熱層表面に対する面積率を計測した。
【0155】
(2−5)液泡数
連続(超薄)切片法により得られた直描型水なし平版印刷版原版の水平断面の三次元情報において、シリコーンゴム層との界面から深さ0.5μmまでの非感光性粒子が存在しない部分の感熱層0.5μm((縦)1μm×(横)1μm×(シリコーンゴム層との界面からの深さ)0.5μm)における液泡(直径:0.01μm以上)の総数を計数した。観察領域を区画する線上にある液泡については、液泡の体積の半分以上が観察領域内にある場合は計数し、半分に満たない場合は計数しなかった。
【0156】
(2−6)液泡平均直径
連続(超薄)切片法により得られた直描型水なし平版印刷版原版の水平断面の三次元情報から、液泡の平均直径を算出した。非感光性粒子が存在しない部分の感熱層からランダムに選んだ50個の液泡の直径を測定し、その数平均値を平均直径とした。
【0157】
(2−7)シリコーンゴム層の平均膜厚
超薄切片法により得られた直描型水なし平版印刷版原版の垂直断面のTEM写真において、非感光性粒子が存在せずに平滑な部分の感熱層上のシリコーンゴム層(ランダムに選んだ10箇所)について膜厚を計測し、その数平均値をシリコーンゴム層の平均膜厚とした。
【0158】
(3)液泡の分析
(3−1)前処理〜ガスクロマトグラフ/質量測定
1cm(1×1cmの正方形)に裁断した直描型水なし平版印刷版原版を加熱用ガラス容器に採取し、窒素ガス(流量:100ml/分)を通気しながら320℃で20分間加熱した際の発生ガスを吸着管(JTD505II用)に捕集した。この吸着管を320℃で15分間加熱し、熱脱離したガス成分をガスクロマトグラフ/質量測定法により分析した。ガラス容器を同条件で分析し、ブランクとした。
【0159】
(3−2)ガスクロマトグラフ/質量測定条件
熱脱着装置:JTD505II型(日本分析工業(株)製)
二次熱脱着温度:340℃、180秒
ガスクロマトグラフ装置:HP5890(Hewlett Packard社製)
カラム:DB−5(J&W社製)
30m×0.25mmID、膜厚0.5μm、US7119416H
カラム温度:40℃(4分)→340℃(昇温速度:10℃/分)
質量測定装置:JMS−SX102A質量分析計(日本電子(株)製)
イオン化方法:EI
走査範囲:m/z 10〜500(1.2秒/scan)
TIC質量範囲:m/z 29〜500
(3−3)検量線の作製
各実施例および比較例で用いた溶解度パラメーターが17.0(MPa)1/2以下の溶剤をメスフラスコに採取し、標準溶液(3375μg/ml、5095μg/ml、30265μg/ml)を調製した。これらの標準溶液から各1μlを採取し、試料と同条件で分析し、注入した溶解度パラメーターが17.0(MPa)1/2以下の溶剤の絶対量とガスクロマトグラフ/質量測定トータルイオンクロマトグラムのピーク面積の関係から検量線を作成した。
【0160】
(4)感度および火膨れ耐性の評価
(4−1)火膨れ耐性最高露光量の評価
得られた直描型水なし平版印刷版原版(1030×800mm)を、露光機“PlateRite”8800E(大日本スクリーン製造(株)製)に装着し、照射エネルギー:80mJ/cmで全面露光した。露光機から排出された全面露光版の表面を目視観察し、シリコーンゴム層の浮きの有無を評価した。シリコーンゴム層の浮きが認められなかった場合には、照射エネルギーを10mJ/cmずつ増やしてシリコーンゴム層の浮きが認められるまで同様の評価を行い、シリコーンゴム層の浮きが認められない最高の露光量を火膨れ耐性最高露光量とした。
【0161】
(4−2)ベタ再現最低露光量の評価
上述の(4−1)記載の方法により得られた全面露光版を、自動現像機“TWL−1160F”(東レ(株)製)を使用し、前処理液:なし、現像液:水道水(室温)、後処理液:水道水(室温)、通版速度:80cm/分の条件で現像を行った。得られた印刷版を目視観察し、露光部全体のシリコーンゴム層が完全に剥離できた最低の露光量をベタ再現最低露光量とした。
【0162】
(4−3)ラチチュード
上述の方法により得られた火膨れ耐性最高露光量、およびベタ再現最低露光量から以下の式でラチチュードを算出した。
ラチチュード(mJ/cm)=火膨れ耐性最高露光量(mJ/cm)−ベタ再現最低露光量(mJ/cm
(5)非画線部の地汚れの評価
直描型水なし平版印刷版原版を、印刷機:“OLIVER”466SD((株)桜井グラフィックシステムズ製)に装着し、インキ:“アクワレスエコー”(登録商標)ネオ(東洋インキ製造(株)製)を用いて、版面温度:27℃、印刷速度:10000枚/時の条件で上質紙への印刷を行った。得られた印刷物を目視観察し、地汚れが認められない場合は良好(評点:○)、部分的に地汚れが認められる場合は不良(評点:△)、全面に地汚れが認められる場合は不良(評点:×)と評価した。
【0163】
(6)感熱層組成物溶液中での非感光性粒子分散安定性の評価
非感光性粒子を分散した感熱層組成物溶液を密閉容器に入れて1時間静置し、感熱層組成物溶液中での非感光性粒子分散安定性を評価した。1時間経時後の容器をゆっくりとひっくり返した際、底部に非感光性粒子の沈殿が確認されなかった場合は分散安定性良好(評点:○)、非感光性粒子の沈殿が確認された場合は不良(評点:×)と評価した。
【0164】
(実施例1)
厚さ0.24mmの脱脂したアルミ基板(三菱アルミ(株)製)上に下記の断熱層組成物溶液を塗布し、200℃で90秒間乾燥し、厚み6.0μmの断熱層を設けた。なお、断熱層組成物溶液は、下記成分を室温にて撹拌混合することにより得た。
【0165】
<断熱層組成物溶液>
(a)活性水素を有するポリマー:エポキシ樹脂:“エピコート”(登録商標)1010(ジャパンエポキシレジン(株)製):35重量部
(b)活性水素を有するポリマー:ポリウレタン:“サンプレン”(登録商標)LQ−T1331D(三洋化成工業(株)製、固形分濃度:20重量%):375重量部
(c)アルミキレート:“アルミキレート”ALCH−TR(川研ファインケミカル(株)製):10重量部
(d)レベリング剤:“ディスパロン”(登録商標)LC951(楠本化成(株)製、固形分:10重量%):1重量部
(e)酸化チタン:“タイペーク”(登録商標)CR−50(石原産業(株)製)のN,N−ジメチルホルムアミド分散液(酸化チタン50重量%):60重量部
(f)N,N−ジメチルホルムアミド:730重量部
(g)メチルエチルケトン:250重量部
次いで、下記の感熱層組成物溶液−1を前記断熱層上に塗布し、120℃で30秒間加熱し、感熱層を設けた。なお、感熱層組成物溶液−1は、下記成分を室温にて撹拌混合することにより得た。
【0166】
<感熱層組成物溶液−1>
(a)赤外線吸収染料:“PROJET”825LDI(Avecia社製):6.6重量部
(b)有機錯化合物:チタニウムジ−n−ブトキシドビス(アセチルアセトネート):“ナーセム”(登録商標)チタン(日本化学産業(株)製、濃度:73重量%、溶剤としてn−ブタノール(沸点:117℃、溶解度パラメーター:23.3(MPa)1/2):27重量%を含む):7.3重量部
(c)フェノールホルムアルデヒドノボラック樹脂:“スミライトレジン”(登録商標)PR50731(住友ベークライト(株)製、熱軟化点:95℃):49.5重量部
(d)ポリウレタン:“ニッポラン”(登録商標)5196(日本ポリウレタン(株)製、濃度:30重量%、溶剤としてメチルエチルケトン(沸点:80℃、溶解度パラメーター:19.0(MPa)1/2):35重量%、シクロヘキサノン(沸点:155℃、溶解度パラメーター:20.3(MPa)1/2):35重量%を含む):13.2重量部
(e)非感光性架橋アクリル樹脂粒子分散液:“リオスフィア”(登録商標)RSP3021(東洋インキ製造(株)製、平均粒径:0.6μm、CV値:18.9%、比重:1.20、濃度:20重量%、分散媒としてメチルエチルケトン:80重量%を含む):15.0重量部
(f)テトラヒドロフラン(沸点:66℃、溶解度パラメーター:18.6(MPa)1/2):1401.8重量部
(g)溶解度パラメーターが17.0(MPa)1/2以下であり、かつ、210〜270℃の範囲に沸点を有する液体:脂肪族飽和炭化水素:“アイソパー”(登録商標)M(エッソ化学(株)製、沸点:223〜254℃、溶解度パラメーター:14.7(MPa)1/2):6.6重量部
この感熱層組成物溶液の固形分濃度は4.6重量%、溶解度パラメーターが17.0(MPa)1/2以下であり、かつ、210〜270℃の範囲に沸点を有する液体の含有量は0.44重量%である。
【0167】
次いで、塗布直前に調製した下記のシリコーンゴム層組成物溶液を前記感熱層上に塗布し、130℃で90秒間加熱し、厚み1.8μmのシリコーンゴム層を設けることで直描型水なし平版印刷版原版を得た。
【0168】
<シリコーンゴム層組成物溶液>
下記(a)〜(c)をジルコニアビーズ(φ0.3mm)が充填されたビーズミル“スターミル”(登録商標)ミニツェア(アシザワ・ファインテック(株)製)で分散することで紺青分散液を得た。一方、(d)〜(h)を混合することでシリコーン希釈液を得た。紺青分散液を撹拌しながらシリコーン希釈液を加え、均一になるまでよく撹拌した。得られた液を自然脱泡した。
(a)N650紺青(大日精化(株)製):4重量部
(b)“プレンアクト”(登録商標)KR−TTS(味の素ファインテクノ(株)製):1.5重量部
(c)“アイソパー”G(エッソ化学(株)製):83重量部
(d)α,ω−ジビニルポリジメチルシロキサン:“DMS”V52(重量平均分子量155000、GELEST Inc.製):83重量部
(e)メチルハイドロジェンシロキサン“SH”1107(東レダウコーニング(株)製):4重量部
(f)ビニルトリス(メチルエチルケトオキシイミノ)シラン:3重量部
(g)白金触媒“SRX”212(東レダウコーニング(株)製):6重量部
(h)“アイソパー”E(エッソ化学(株)製):817重量部
得られた直描型水なし平版印刷版原版について、前記方法によりTEM観察を行ったところ、感熱層断面中に観察された非感光性粒子の平均粒径は0.6μmであり、非感光性粒子がない部分の感熱層の平均膜厚は0.5μmであった。また、非感光性粒子の面内占有率は5.0面積%であった。また、非感光性粒子が存在しない部分の感熱層0.5μm中に42個の液泡が観察され、液泡の平均直径は0.15μmであった。液泡の分析を行ったところ、“アイソパー”M由来の223〜254℃の範囲に沸点を有する液体の存在が確認され、ガスとして発生した“アイソパー”Mに由来する液体の量は5.34μgであった。
【0169】
前記方法により評価した火膨れ耐性最高露光量は160mJ/cm、ベタ再現最低露光量は140mJ/cmであり、20mJ/cmのラチチュードを有していた。非画線部の地汚れについて前記方法で評価したところ、印刷物に地汚れは認められなかった。感熱層組成物溶液中での非感光性粒子分散安定性を前記方法により評価したところ、非感光性粒子の沈殿は認められなかった。
【0170】
(実施例2)
感熱層組成物溶液−1を以下の感熱層組成物溶液−2に変更したこと以外は実施例1と同様にして直描型水なし平版印刷版原版を得た。
【0171】
<感熱層組成物溶液−2>
(a)“PROJET”825LDI:6.6重量部
(b)“ナーセム”チタン:7.3重量部
(c)“スミライトレジン”PR50731:49.5重量部
(d)“ニッポラン”5196:13.2重量部
(e)非感光性架橋アクリル樹脂粒子分散液:“リオスフィア”RSP3015(東洋インキ製造(株)製、平均粒径:1.4μm、CV値:3.5%、比重:1.20、濃度:20重量%、分散媒としてメチルエチルケトン:80重量%を含む):35.0重量部
(f)テトラヒドロフラン:1381.8重量部
(g)“アイソパー”M:6.6重量部
この感熱層組成物溶液の固形分濃度は4.8重量%、溶解度パラメーターが17.0(MPa)1/2以下であり、かつ、210〜270℃の範囲に沸点を有する液体の含有量は0.44重量%である。
【0172】
実施例1と同様に評価を行ったところ、感熱層断面中に観察された非感光性粒子の平均粒径は1.4μmであり、非感光性粒子がない部分の感熱層の平均膜厚は0.5μmであった。また、非感光性粒子の面内占有率は5.0面積%であった。また、膜厚縮小領域の感熱層表面に対する面積率は5.0面積%、傾斜領域の感熱層表面に対する面積率は4.6面積%であった。また、非感光性粒子が存在しない部分の感熱層0.5μm中に44個の液泡が観察され、液泡の平均直径は0.15μmであった。液泡の分析を行ったところ、“アイソパー”M由来の223〜254℃の範囲に沸点を有する液体の存在が確認され、ガスとして発生した“アイソパー”Mに由来する液体の量は5.39μgであった。
【0173】
前記方法により評価した火膨れ耐性最高露光量は180mJ/cm、ベタ再現最低露光量は140mJ/cmであり、40mJ/cmのラチチュードを有していた。非画線部の地汚れについて前記方法で評価したところ、印刷物に地汚れは認められなかった。感熱層組成物溶液中での非感光性粒子分散安定性を前記方法により評価したところ、非感光性粒子の沈殿は認められなかった。
【0174】
(実施例3)
感熱層組成物溶液−1を以下の感熱層組成物溶液−3に変更したこと以外は実施例1と同様にして直描型水なし平版印刷版原版を得た。
【0175】
<感熱層組成物溶液−3>
(a)“PROJET”825LDI:6.6重量部
(b)“ナーセム”チタン:7.3重量部
(c)“スミライトレジン”PR50731:49.5重量部
(d)“ニッポラン”5196:13.2重量部
(e)非感光性架橋アクリル樹脂粒子分散液:“リオスフィア”RSP3031(東洋インキ製造(株)製、平均粒径:1.7μm、CV値:2.9%、比重:1.20、濃度:20重量%、分散媒としてメチルエチルケトン:80重量%を含む):42.5重量部
(f)テトラヒドロフラン:1374.3重量部
(g)“アイソパー”M:6.6重量部
この感熱層組成物溶液の固形分濃度は4.9重量%、溶解度パラメーターが17.0(MPa)1/2以下であり、かつ、210〜270℃の範囲に沸点を有する液体の含有量は0.44重量%である。
【0176】
実施例1と同様に評価を行ったところ、感熱層断面中に観察された非感光性粒子の平均粒径は1.7μmであり、非感光性粒子がない部分の感熱層の平均膜厚は0.5μmであった。また、非感光性粒子の面内占有率は5.0面積%であった。また、膜厚縮小領域の感熱層表面に対する面積率は5.0面積%、傾斜領域の感熱層表面に対する面積率は4.2面積%であった。また、非感光性粒子が存在しない部分の感熱層0.5μm中に41個の液泡が観察され、液泡の平均直径は0.15μmであった。液泡の分析を行ったところ、“アイソパー”M由来の223〜254℃の範囲に沸点を有する液体の存在が確認され、ガスとして発生した“アイソパー”Mに由来する液体の量は5.30μgであった。
【0177】
前記方法により評価した火膨れ耐性最高露光量は180mJ/cm、ベタ再現最低露光量は140mJ/cmであり、40mJ/cmのラチチュードを有していた。非画線部の地汚れについて前記方法で評価したところ、印刷物に地汚れは認められなかった。感熱層組成物溶液中での非感光性粒子分散安定性を前記方法により評価したところ、非感光性粒子の沈殿は認められなかった。
【0178】
(実施例4)
感熱層組成物溶液−1を以下の感熱層組成物溶液−4に変更したこと以外は実施例1と同様にして直描型水なし平版印刷版原版を得た。
【0179】
<感熱層組成物溶液−4>
(a)“PROJET”825LDI:6.6重量部
(b)“ナーセム”チタン:7.3重量部
(c)“スミライトレジン”PR50731:49.5重量部
(d)“ニッポラン”5196:13.2重量部
(e)非感光性架橋アクリル樹脂粒子分散液:“リオスフィア”RSP3019(東洋インキ製造(株)製、平均粒径:2.1μm、CV値:2.3%、比重:1.20、濃度:20重量%、分散媒としてメチルエチルケトン:80重量%を含む):52.5重量部
(f)テトラヒドロフラン:1364.3重量部
(g)“アイソパー”M:6.6重量部
この感熱層組成物溶液の固形分濃度は5.1重量%、溶解度パラメーターが17.0(MPa)1/2以下であり、かつ、210〜270℃の範囲に沸点を有する液体の含有量は0.44重量%である。
【0180】
実施例1と同様に評価を行ったところ、感熱層断面中に観察された非感光性粒子の平均粒径は2.1μmであり、非感光性粒子がない部分の感熱層の平均膜厚は0.5μmであった。また、非感光性粒子の面内占有率は5.0面積%であった。また、膜厚縮小領域の感熱層表面に対する面積率は5.0面積%、傾斜領域の感熱層表面に対する面積率は3.6面積%であった。また、非感光性粒子が存在しない部分の感熱層0.5μm中に40個の液泡が観察され、液泡の平均直径は0.16μmであった。液泡の分析を行ったところ、“アイソパー”M由来の223〜254℃の範囲に沸点を有する液体の存在が確認され、ガスとして発生した“アイソパー”Mに由来する液体の量は5.48μgであった。
【0181】
前記方法により評価した火膨れ耐性最高露光量は180mJ/cm、ベタ再現最低露光量は140mJ/cmであり、40mJ/cmのラチチュードを有していた。非画線部の地汚れについて前記方法で評価したところ、印刷物に地汚れは認められなかった。感熱層組成物溶液中での非感光性粒子分散安定性を前記方法により評価したところ、非感光性粒子の沈殿は認められなかった。
【0182】
(実施例5)
感熱層組成物溶液−1を以下の感熱層組成物溶液−5に変更したこと以外は実施例1と同様にして直描型水なし平版印刷版原版を得た。
【0183】
<感熱層組成物溶液−5>
(a)“PROJET”825LDI:6.6重量部
(b)“ナーセム”チタン:7.3重量部
(c)“スミライトレジン”PR50731:49.5重量部
(d)“ニッポラン”5196:13.2重量部
(e)非感光性架橋アクリル樹脂粒子分散液:“リオスフィア”RSP3009(東洋インキ製造(株)製、平均粒径:2.6μm、CV値:1.9%、比重:1.20、濃度:20重量%、分散媒としてメチルエチルケトン:80重量%を含む):65.0重量部
(f)テトラヒドロフラン:1351.8重量部
(g)“アイソパー”M:6.6重量部
この感熱層組成物溶液の固形分濃度は5.2重量%、溶解度パラメーターが17.0(MPa)1/2以下であり、かつ、210〜270℃の範囲に沸点を有する液体の含有量は0.44重量%である。
【0184】
実施例1と同様に評価を行ったところ、感熱層断面中に観察された非感光性粒子の平均粒径は2.6μmであり、非感光性粒子がない部分の感熱層の平均膜厚は0.5μmであった。また、非感光性粒子の面内占有率は5.0面積%であった。また、膜厚縮小領域の感熱層表面に対する面積率は5.0面積%、傾斜領域の感熱層表面に対する面積率は3.1面積%であった。また、非感光性粒子が存在しない部分の感熱層0.5μm中に46個の液泡が観察され、液泡の平均直径は0.15μmであった。液泡の分析を行ったところ、“アイソパー”M由来の223〜254℃の範囲に沸点を有する液体の存在が確認され、ガスとして発生した“アイソパー”Mに由来する液体の量は5.56μgであった。
【0185】
前記方法により評価した火膨れ耐性最高露光量は180mJ/cm、ベタ再現最低露光量は140mJ/cmであり、40mJ/cmのラチチュードを有していた。非画線部の地汚れについて前記方法で評価したところ、印刷物の全面に地汚れが認められた。感熱層組成物溶液中での非感光性粒子分散安定性を前記方法により評価したところ、非感光性粒子の沈殿は認められなかった。
【0186】
(実施例6)
感熱層組成物溶液−1を以下の感熱層組成物溶液−6に変更したこと以外は実施例1と同様にして直描型水なし平版印刷版原版を得た。
【0187】
<感熱層組成物溶液−6>
(a)“PROJET”825LDI:13.3重量部
(b)“ナーセム”チタン:14.6重量部
(c)“スミライトレジン”PR50731:99.4重量部
(d)“ニッポラン”5196:26.5重量部
(e)非感光性シリカ粒子分散液:“ハイプレシカ”(登録商標)UF−N3N(宇部日東化成(株)製、平均粒径:1.1μm、CV値:3.6%、比重:2.10、濃度:20重量%、分散媒としてメチルエチルケトン:80重量%を含む):48.2重量部
(f)テトラヒドロフラン:1284.9重量部
(g)“アイソパー”M:13.3重量部
この感熱層組成物溶液の固形分濃度は9.4重量%、溶解度パラメーターが17.0(MPa)1/2以下であり、かつ、210〜270℃の範囲に沸点を有する液体の含有量は0.88重量%である。
【0188】
実施例1と同様に評価を行ったところ、感熱層断面中に観察された非感光性粒子の平均粒径は1.1μmであり、非感光性粒子がない部分の感熱層の平均膜厚は1.0μmであった。また、非感光性粒子の面内占有率は5.0面積%であった。また、非感光性粒子が存在しない部分の感熱層0.5μm中に38個の液泡が観察され、液泡の平均直径は0.16μmであった。液泡の分析を行ったところ、“アイソパー”M由来の223〜254℃の範囲に沸点を有する液体の存在が確認され、ガスとして発生した“アイソパー”Mに由来する液体の量は10.72μgであった。
【0189】
前記方法により評価した火膨れ耐性最高露光量は160mJ/cm、ベタ再現最低露光量は130mJ/cmであり、30mJ/cmのラチチュードを有していた。非画線部の地汚れについて前記方法で評価したところ、印刷物に地汚れは認められなかった。感熱層組成物溶液中での非感光性粒子分散安定性を前記方法により評価したところ、非感光性粒子の沈殿が認められた。
【0190】
(実施例7)
感熱層組成物溶液−1を以下の感熱層組成物溶液−7に変更したこと以外は実施例1と同様にして直描型水なし平版印刷版原版を得た。
【0191】
<感熱層組成物溶液−7>
(a)“PROJET”825LDI:13.3重量部
(b)“ナーセム”チタン:14.7重量部
(c)“スミライトレジン”PR50731:100.0重量部
(d)“ニッポラン”5196:26.7重量部
(e)非感光性アクリル粒子分散液:“リオスフィア”RSP3015:35.0重量部
(f)テトラヒドロフラン:1297.0重量部
(g)“アイソパー”M:13.3重量部
この感熱層組成物溶液の固形分濃度は9.3重量%、溶解度パラメーターが17.0(MPa)1/2以下であり、かつ、210〜270℃の範囲に沸点を有する液体の含有量は0.89重量%である。
【0192】
実施例1と同様に評価を行ったところ、感熱層断面中に観察された非感光性粒子の平均粒径は1.4μmであり、非感光性粒子がない部分の感熱層の平均膜厚は1.0μmであった。また、非感光性粒子の面内占有率は5.0面積%であった。また、膜厚縮小領域の感熱層表面に対する面積率は4.6面積%、傾斜領域の感熱層表面に対する面積率は4.1面積%であった。また、非感光性粒子が存在しない部分の感熱層0.5μm中に42個の液泡が観察され、液泡の平均直径は0.15μmであった。液泡の分析を行ったところ、“アイソパー”M由来の223〜254℃の範囲に沸点を有する液体の存在が確認され、ガスとして発生した“アイソパー”Mに由来する液体の量は10.63μgであった。
【0193】
前記方法により評価した火膨れ耐性最高露光量は170mJ/cm、ベタ再現最低露光量は130mJ/cmであり、40mJ/cmのラチチュードを有していた。非画線部の地汚れについて前記方法で評価したところ、印刷物に地汚れは認められなかった。感熱層組成物溶液中での非感光性粒子分散安定性を前記方法により評価したところ、非感光性粒子の沈殿は認められなかった。
【0194】
(実施例8)
感熱層組成物溶液−1を以下の感熱層組成物溶液−8に変更したこと以外は実施例1と同様にして直描型水なし平版印刷版原版を得た。
【0195】
<感熱層組成物溶液−8>
(a)“PROJET”825LDI:13.3重量部
(b)“ナーセム”チタン:14.7重量部
(c)“スミライトレジン”PR50731:100.0重量部
(d)“ニッポラン”5196:26.7重量部
(e)非感光性アクリル粒子分散液:“リオスフィア”RSP3031:42.5重量部
(f)テトラヒドロフラン:1289.5重量部
(g)“アイソパー”M:13.3重量部
この感熱層組成物溶液の固形分濃度は9.4重量%、溶解度パラメーターが17.0(MPa)1/2以下であり、かつ、210〜270℃の範囲に沸点を有する液体の含有量は0.89重量%である。
【0196】
実施例1と同様に評価を行ったところ、感熱層断面中に観察された非感光性粒子の平均粒径は1.7μmであり、非感光性粒子がない部分の感熱層の平均膜厚は1.0μmであった。また、非感光性粒子の面内占有率は5.0面積%であった。また、膜厚縮小領域の感熱層表面に対する面積率は5.0面積%、傾斜領域の感熱層表面に対する面積率は4.8面積%であった。また、非感光性粒子が存在しない部分の感熱層0.5μm中に40個の液泡が観察され、液泡の平均直径は0.15μmであった。液泡の分析を行ったところ、“アイソパー”M由来の223〜254℃の範囲に沸点を有する液体の存在が確認され、ガスとして発生した“アイソパー”Mに由来する液体の量は10.75μgであった。
【0197】
前記方法により評価した火膨れ耐性最高露光量は170mJ/cm、ベタ再現最低露光量は130mJ/cmであり、40mJ/cmのラチチュードを有していた。非画線部の地汚れについて前記方法で評価したところ、印刷物に地汚れは認められなかった。感熱層組成物溶液中での非感光性粒子分散安定性を前記方法により評価したところ、非感光性粒子の沈殿は認められなかった。
【0198】
(実施例9)
感熱層組成物溶液−1を以下の感熱層組成物溶液−9に変更したこと以外は実施例1と同様にして直描型水なし平版印刷版原版を得た。
【0199】
<感熱層組成物溶液−9>
(a)“PROJET”825LDI:16.0重量部
(b)“ナーセム”チタン:17.6重量部
(c)“スミライトレジン”PR50731:120.0重量部
(d)“ニッポラン”5196:32.0重量部
(e)非感光性アクリル粒子分散液:“リオスフィア”RSP3015:35.0重量部
(f)テトラヒドロフラン:1263.4重量部
(g)“アイソパー”M:16.0重量部
この感熱層組成物溶液の固形分濃度は11.0重量%、溶解度パラメーターが17.0(MPa)1/2以下であり、かつ、210〜270℃の範囲に沸点を有する液体の含有量は1.07重量%である。
【0200】
実施例1と同様に評価を行ったところ、感熱層断面中に観察された非感光性粒子の平均粒径は1.4μmであり、非感光性粒子がない部分の感熱層の平均膜厚は1.2μmであった。また、非感光性粒子の面内占有率は5.0面積%であった。また、非感光性粒子が存在しない部分の感熱層0.5μm中に40個の液泡が観察され、液泡の平均直径は0.16μmであった。液泡の分析を行ったところ、“アイソパー”M由来の223〜254℃の範囲に沸点を有する液体の存在が確認され、ガスとして発生した“アイソパー”Mに由来する液体の量は12.84μgであった。
【0201】
前記方法により評価した火膨れ耐性最高露光量は150mJ/cm、ベタ再現最低露光量は120mJ/cmであり、30mJ/cmのラチチュードを有していた。非画線部の地汚れについて前記方法で評価したところ、印刷物に地汚れは認められなかった。感熱層組成物溶液中での非感光性粒子分散安定性を前記方法により評価したところ、非感光性粒子の沈殿は認められなかった。
【0202】
(実施例10)
感熱層組成物溶液−1を以下の感熱層組成物溶液−10に変更したこと以外は実施例1と同様にして直描型水なし平版印刷版原版を得た。
【0203】
<感熱層組成物溶液−10>
(a)“PROJET”825LDI:16.0重量部
(b)“ナーセム”チタン:17.6重量部
(c)“スミライトレジン”PR50731:120.0重量部
(d)“ニッポラン”5196:32.0重量部
(e)非感光性アクリル粒子分散液:“リオスフィア”RSP3031:42.5重量部
(f)テトラヒドロフラン:1255.9重量部
(g)“アイソパー”M:16.0重量部
この感熱層組成物溶液の固形分濃度は11.1重量%、溶解度パラメーターが17.0(MPa)1/2以下であり、かつ、210〜270℃の範囲に沸点を有する液体の含有量は1.07重量%である。
【0204】
実施例1と同様に評価を行ったところ、感熱層断面中に観察された非感光性粒子の平均粒径は1.7μmであり、非感光性粒子がない部分の感熱層の平均膜厚は1.2μmであった。また、非感光性粒子の面内占有率は5.0面積%であった。また、膜厚縮小領域の感熱層表面に対する面積率は4.6面積%、傾斜領域の感熱層表面に対する面積率は4.2面積%であった。また、非感光性粒子が存在しない部分の感熱層0.5μm中に39個の液泡が観察され、液泡の平均直径は0.15μmであった。液泡の分析を行ったところ、“アイソパー”M由来の223〜254℃の範囲に沸点を有する液体の存在が確認され、ガスとして発生した“アイソパー”Mに由来する液体の量は12.99μgであった。
【0205】
前記方法により評価した火膨れ耐性最高露光量は160mJ/cm、ベタ再現最低露光量は120mJ/cmであり、40mJ/cmのラチチュードを有していた。非画線部の地汚れについて前記方法で評価したところ、印刷物に地汚れは認められなかった。感熱層組成物溶液中での非感光性粒子分散安定性を前記方法により評価したところ、非感光性粒子の沈殿は認められなかった。
【0206】
(実施例11)
感熱層組成物溶液−1を以下の感熱層組成物溶液−11に変更したこと以外は実施例1と同様にして直描型水なし平版印刷版原版を得た。
【0207】
<感熱層組成物溶液−11>
(a)“PROJET”825LDI:20.0重量部
(b)“ナーセム”チタン:22.0重量部
(c)“スミライトレジン”PR50731:150.3重量部
(d)“ニッポラン”5196:40.1重量部
(e)非感光性架橋スチレン樹脂粒子分散液:“ケミスノー”SX130H(綜研化学(株)製、平均粒径:1.3μm、CV値:5.0%、比重:1.05、濃度:20重量%、分散媒としてメチルエチルケトン:80重量%を含む):28.5重量部
(f)テトラヒドロフラン:1219.0重量部
(g)“アイソパー”M:20.0重量部
この感熱層組成物溶液の固形分濃度は13.6重量%、溶解度パラメーターが17.0(MPa)1/2以下であり、かつ、210〜270℃の範囲に沸点を有する液体の含有量は1.34重量%である。
【0208】
実施例1と同様に評価を行ったところ、感熱層断面中に観察された非感光性粒子の平均粒径は1.3μmであり、非感光性粒子がない部分の感熱層の平均膜厚は1.5μmであった。また、非感光性粒子の面内占有率は5.0面積%であった。また、非感光性粒子が存在しない部分の感熱層0.5μm中に41個の液泡が観察され、液泡の平均直径は0.15μmであった。液泡の分析を行ったところ、“アイソパー”M由来の223〜254℃の範囲に沸点を有する液体の存在が確認され、ガスとして発生した“アイソパー”Mに由来する液体の量は16.21μgであった。
【0209】
前記方法により評価した火膨れ耐性最高露光量は140mJ/cm、ベタ再現最低露光量は120mJ/cmであり、20mJ/cmのラチチュードを有していた。非画線部の地汚れについて前記方法で評価したところ、印刷物に地汚れは認められなかった。感熱層組成物溶液中での非感光性粒子分散安定性を前記方法により評価したところ、非感光性粒子の沈殿は認められなかった。
【0210】
(実施例12)
感熱層組成物溶液−1を以下の感熱層組成物溶液−12に変更したこと以外は実施例1と同様にして直描型水なし平版印刷版原版を得た。
【0211】
<感熱層組成物溶液−12>
(a)“PROJET”825LDI:20.0重量部
(b)“ナーセム”チタン:22.0重量部
(c)“スミライトレジン”PR50731:150.0重量部
(d)“ニッポラン”5196:40.0重量部
(e)非感光性架橋アクリル樹脂粒子分散液:“リオスフィア”RSP3015:35.0重量部
(f)テトラヒドロフラン:1213.1重量部
(g)“アイソパー”M:20.0重量部
この感熱層組成物溶液の固形分濃度は13.7重量%、溶解度パラメーターが17.0(MPa)1/2以下であり、かつ、210〜270℃の範囲に沸点を有する液体の含有量は1.33重量%である。
【0212】
実施例1と同様に評価を行ったところ、感熱層断面中に観察された非感光性粒子の平均粒径は1.4μmであり、非感光性粒子がない部分の感熱層の平均膜厚は1.5μmであった。また、非感光性粒子の面内占有率は5.0面積%であった。また、非感光性粒子が存在しない部分の感熱層0.5μm中に41個の液泡が観察され、液泡の平均直径は0.15μmであった。液泡の分析を行ったところ、“アイソパー”M由来の223〜254℃の範囲に沸点を有する液体の存在が確認され、ガスとして発生した“アイソパー”Mに由来する液体の量は16.17μgであった。
【0213】
前記方法により評価した火膨れ耐性最高露光量は150mJ/cm、ベタ再現最低露光量は120mJ/cmであり、30mJ/cmのラチチュードを有していた。非画線部の地汚れについて前記方法で評価したところ、印刷物に地汚れは認められなかった。感熱層組成物溶液中での非感光性粒子分散安定性を前記方法により評価したところ、非感光性粒子の沈殿は認められなかった。
【0214】
(実施例13)
感熱層組成物溶液−1を以下の感熱層組成物溶液−13に変更したこと以外は実施例1と同様にして直描型水なし平版印刷版原版を得た。
【0215】
<感熱層組成物溶液−13>
(a)“PROJET”825LDI:20.5重量部
(b)“ナーセム”チタン:22.6重量部
(c)“スミライトレジン”PR50731:153.8重量部
(d)“ニッポラン”5196:41.0重量部
(e)非感光性架橋アクリル樹脂粒子分散液:“リオスフィア”RSP3015:7.0重量部
(f)テトラヒドロフラン:1234.6重量部
(g)“アイソパー”M:20.5重量部
この感熱層組成物溶液の固形分濃度は13.6重量%、溶解度パラメーターが17.0(MPa)1/2以下であり、かつ、210〜270℃の範囲に沸点を有する液体の含有量は1.37重量%である。
【0216】
実施例1と同様に評価を行ったところ、感熱層断面中に観察された非感光性粒子の平均粒径は1.4μmであり、非感光性粒子がない部分の感熱層の平均膜厚は1.5μmであった。また、非感光性粒子の面内占有率は1.0面積%であった。また、非感光性粒子が存在しない部分の感熱層0.5μm中に40個の液泡が観察され、液泡の平均直径は0.15μmであった。液泡の分析を行ったところ、“アイソパー”M由来の223〜254℃の範囲に沸点を有する液体の存在が確認され、ガスとして発生した“アイソパー”Mに由来する液体の量は16.59μgであった。
【0217】
前記方法により評価した火膨れ耐性最高露光量は130mJ/cm、ベタ再現最低露光量は120mJ/cmであり、10mJ/cmのラチチュードを有していた。非画線部の地汚れについて前記方法で評価したところ、印刷物に地汚れは認められなかった。感熱層組成物溶液中での非感光性粒子分散安定性を前記方法により評価したところ、非感光性粒子の沈殿は認められなかった。
【0218】
(実施例14)
感熱層組成物溶液−1を以下の感熱層組成物溶液−14に変更したこと以外は実施例1と同様にして直描型水なし平版印刷版原版を得た。
【0219】
<感熱層組成物溶液−14>
(a)“PROJET”825LDI:19.4重量部
(b)“ナーセム”チタン:21.3重量部
(c)“スミライトレジン”PR50731:145.1重量部
(d)“ニッポラン”5196:38.7重量部
(e)非感光性架橋アクリル樹脂粒子分散液:“リオスフィア”RSP3015:70.0重量部
(f)テトラヒドロフラン:1186.2重量部
(g)“アイソパー”M:19.4重量部
この感熱層組成物溶液の固形分濃度は13.7重量%、溶解度パラメーターが17.0(MPa)1/2以下であり、かつ、210〜270℃の範囲に沸点を有する液体の含有量は1.29重量%である。
【0220】
実施例1と同様に評価を行ったところ、感熱層断面中に観察された非感光性粒子の平均粒径は1.4μmであり、非感光性粒子がない部分の感熱層の平均膜厚は1.5μmであった。また、非感光性粒子の面内占有率は10.0面積%であった。また、非感光性粒子が存在しない部分の感熱層0.5μm中に42個の液泡が観察され、液泡の平均直径は0.15μmであった。液泡の分析を行ったところ、“アイソパー”M由来の223〜254℃の範囲に沸点を有する液体の存在が確認され、ガスとして発生した“アイソパー”Mに由来する液体の量は15.65μgであった。
【0221】
前記方法により評価した火膨れ耐性最高露光量は160mJ/cm、ベタ再現最低露光量は130mJ/cmであり、30mJ/cmのラチチュードを有していた。非画線部の地汚れについて前記方法で評価したところ、印刷物に地汚れは認められなかった。感熱層組成物溶液中での非感光性粒子分散安定性を前記方法により評価したところ、非感光性粒子の沈殿は認められなかった。
【0222】
(実施例15)
感熱層組成物溶液−1を以下の感熱層組成物溶液−15に変更したこと以外は実施例1と同様にして直描型水なし平版印刷版原版を得た。
【0223】
<感熱層組成物溶液−15>
(a)“PROJET”825LDI:18.1重量部
(b)“ナーセム”チタン:19.9重量部
(c)“スミライトレジン”PR50731:135.5重量部
(d)“ニッポラン”5196:36.1重量部
(e)非感光性架橋アクリル樹脂粒子分散液:“リオスフィア”RSP3015:140.0重量部
(f)テトラヒドロフラン:1132.3重量部
(g)“アイソパー”M:18.1重量部
この感熱層組成物溶液の固形分濃度は13.8重量%、溶解度パラメーターが17.0(MPa)1/2以下であり、かつ、210〜270℃の範囲に沸点を有する液体の含有量は1.20重量%である。
【0224】
実施例1と同様に評価を行ったところ、感熱層断面中に観察された非感光性粒子の平均粒径は1.4μmであり、非感光性粒子がない部分の感熱層の平均膜厚は1.5μmであった。また、非感光性粒子の面内占有率は20.0面積%であった。また、非感光性粒子が存在しない部分の感熱層0.5μm中に41個の液泡が観察され、液泡の平均直径は0.15μmであった。液泡の分析を行ったところ、“アイソパー”M由来の223〜254℃の範囲に沸点を有する液体の存在が確認され、ガスとして発生した“アイソパー”Mに由来する液体の量は14.61μgであった。
【0225】
前記方法により評価した火膨れ耐性最高露光量は190mJ/cm、ベタ再現最低露光量は150mJ/cmであり、40mJ/cmのラチチュードを有していた。非画線部の地汚れについて前記方法で評価したところ、印刷物に地汚れは認められなかった。感熱層組成物溶液中での非感光性粒子分散安定性を前記方法により評価したところ、非感光性粒子の沈殿は認められなかった。
【0226】
(実施例16)
感熱層組成物溶液−1を以下の感熱層組成物溶液−16に変更したこと以外は実施例1と同様にして直描型水なし平版印刷版原版を得た。
【0227】
<感熱層組成物溶液−16>
(a)“PROJET”825LDI:16.8重量部
(b)“ナーセム”チタン:18.5重量部
(c)“スミライトレジン”PR50731:125.9重量部
(d)“ニッポラン”5196:33.6重量部
(e)非感光性架橋アクリル樹脂粒子分散液:“リオスフィア”RSP3015:210.0重量部
(f)テトラヒドロフラン:1078.5重量部
(g)“アイソパー”M:16.8重量部
この感熱層組成物溶液の固形分濃度は13.9重量%、溶解度パラメーターが17.0(MPa)1/2以下であり、かつ、210〜270℃の範囲に沸点を有する液体の含有量は1.12重量%である。
【0228】
実施例1と同様に評価を行ったところ、感熱層断面中に観察された非感光性粒子の平均粒径は1.4μmであり、非感光性粒子がない部分の感熱層の平均膜厚は1.5μmであった。また、非感光性粒子の面内占有率は30.0面積%であった。また、非感光性粒子が存在しない部分の感熱層0.5μm中に39個の液泡が観察され、液泡の平均直径は0.16μmであった。液泡の分析を行ったところ、“アイソパー”M由来の223〜254℃の範囲に沸点を有する液体の存在が確認され、ガスとして発生した“アイソパー”Mに由来する液体の量は13.57μgであった。
【0229】
前記方法により評価した火膨れ耐性最高露光量は210mJ/cm、ベタ再現最低露光量は170mJ/cmであり、40mJ/cmのラチチュードを有していた。非画線部の地汚れについて前記方法で評価したところ、印刷物に地汚れは認められなかった。感熱層組成物溶液中での非感光性粒子分散安定性を前記方法により評価したところ、非感光性粒子の沈殿は認められなかった。
【0230】
(実施例17)
感熱層組成物溶液−1を以下の感熱層組成物溶液−17に変更したこと以外は実施例1と同様にして直描型水なし平版印刷版原版を得た。
【0231】
<感熱層組成物溶液−17>
(a)“PROJET”825LDI:15.5重量部
(b)“ナーセム”チタン:17.1重量部
(c)“スミライトレジン”PR50731:116.3重量部
(d)“ニッポラン”5196:31.0重量部
(e)非感光性架橋アクリル樹脂粒子分散液:“リオスフィア”RSP3015:280.0重量部
(f)テトラヒドロフラン:1024.7重量部
(g)“アイソパー”M:15.5重量部
この感熱層組成物溶液の固形分濃度は14.0重量%、溶解度パラメーターが17.0(MPa)1/2以下であり、かつ、210〜270℃の範囲に沸点を有する液体の含有量は1.03重量%である。
【0232】
実施例1と同様に評価を行ったところ、感熱層断面中に観察された非感光性粒子の平均粒径は1.4μmであり、非感光性粒子がない部分の感熱層の平均膜厚は1.5μmであった。また、非感光性粒子の面内占有率は40.0面積%であった。また、非感光性粒子が存在しない部分の感熱層0.5μm中に40個の液泡が観察され、液泡の平均直径は0.15μmであった。液泡の分析を行ったところ、“アイソパー”M由来の223〜254℃の範囲に沸点を有する液体の存在が確認され、ガスとして発生した“アイソパー”Mに由来する液体の量は12.54μgであった。
【0233】
前記方法により評価した火膨れ耐性最高露光量は230mJ/cm、ベタ再現最低露光量は190mJ/cmであり、40mJ/cmのラチチュードを有していた。非画線部の地汚れについて前記方法で評価したところ、印刷物に部分的な地汚れが認められた。感熱層組成物溶液中での非感光性粒子分散安定性を前記方法により評価したところ、非感光性粒子の沈殿は認められなかった。
【0234】
(実施例18)
感熱層組成物溶液−1を以下の感熱層組成物溶液−18に変更したこと以外は実施例1と同様にして直描型水なし平版印刷版原版を得た。
【0235】
<感熱層組成物溶液−18>
(a)“PROJET”825LDI:20.0重量部
(b)“ナーセム”チタン:22.0重量部
(c)“スミライトレジン”PR50731:150.0重量部
(d)“ニッポラン”5196:40.0重量部
(e)非感光性架橋アクリル樹脂粒子分散液:“ケミスノー”(登録商標)MX150(綜研化学(株)製、平均粒径:1.5μm、CV値:9.0%、比重:1.20、濃度:20重量%、分散媒としてメチルエチルケトン:80重量%を含む):37.5重量部
(f)テトラヒドロフラン:1210.5重量部
(g)“アイソパー”M:20.0重量部
この感熱層組成物溶液の固形分濃度は13.7重量%、溶解度パラメーターが17.0(MPa)1/2以下であり、かつ、210〜270℃の範囲に沸点を有する液体の含有量は1.33重量%である。
【0236】
実施例1と同様に評価を行ったところ、感熱層断面中に観察された非感光性粒子の平均粒径は1.5μmであり、非感光性粒子がない部分の感熱層の平均膜厚は1.5μmであった。また、非感光性粒子の面内占有率は5.0面積%であった。また、非感光性粒子が存在しない部分の感熱層0.5μm中に41個の液泡が観察され、液泡の平均直径は0.15μmであった。液泡の分析を行ったところ、“アイソパー”M由来の223〜254℃の範囲に沸点を有する液体の存在が確認され、ガスとして発生した“アイソパー”Mに由来する液体の量は16.19μgであった。
【0237】
前記方法により評価した火膨れ耐性最高露光量は150mJ/cm、ベタ再現最低露光量は120mJ/cmであり、30mJ/cmのラチチュードを有していた。非画線部の地汚れについて前記方法で評価したところ、印刷物に地汚れは認められなかった。感熱層組成物溶液中での非感光性粒子分散安定性を前記方法により評価したところ、非感光性粒子の沈殿は認められなかった。
【0238】
(実施例19)
感熱層組成物溶液−1を以下の感熱層組成物溶液−19に変更したこと以外は実施例1と同様にして直描型水なし平版印刷版原版を得た。
【0239】
<感熱層組成物溶液−19>
(a)“PROJET”825LDI:20.0重量部
(b)“ナーセム”チタン:22.0重量部
(c)“スミライトレジン”PR50731:150.0重量部
(d)“ニッポラン”5196:40.0重量部
(e)非感光性架橋アクリル樹脂粒子分散液:“リオスフィア”RSP3031:42.5重量部
(f)テトラヒドロフラン:1205.5重量部
(g)“アイソパー”M:20.0重量部
この感熱層組成物溶液の固形分濃度は13.8重量%、溶解度パラメーターが17.0(MPa)1/2以下であり、かつ、210〜270℃の範囲に沸点を有する液体の含有量は1.33重量%である。
【0240】
実施例1と同様に評価を行ったところ、感熱層断面中に観察された非感光性粒子の平均粒径は1.7μmであり、非感光性粒子がない部分の感熱層の平均膜厚は1.5μmであった。また、非感光性粒子の面内占有率は5.0面積%であった。また、非感光性粒子が存在しない部分の感熱層0.5μm中に42個の液泡が観察され、液泡の平均直径は0.15μmであった。液泡の分析を行ったところ、“アイソパー”M由来の223〜254℃の範囲に沸点を有する液体の存在が確認され、ガスとして発生した“アイソパー”Mに由来する液体の量は16.37μgであった。
【0241】
前記方法により評価した火膨れ耐性最高露光量は150mJ/cm、ベタ再現最低露光量は120mJ/cmであり、30mJ/cmのラチチュードを有していた。非画線部の地汚れについて前記方法で評価したところ、印刷物に地汚れは認められなかった。感熱層組成物溶液中での非感光性粒子分散安定性を前記方法により評価したところ、非感光性粒子の沈殿は認められなかった。
【0242】
(実施例20)
感熱層組成物溶液−1を以下の感熱層組成物溶液−20に変更したこと以外は実施例1と同様にして直描型水なし平版印刷版原版を得た。
【0243】
<感熱層組成物溶液−20>
(a)“PROJET”825LDI:26.7重量部
(b)“ナーセム”チタン:29.3重量部
(c)“スミライトレジン”PR50731:200.0重量部
(d)“ニッポラン”5196:53.3重量部
(e)非感光性架橋アクリル樹脂粒子分散液:“リオスフィア”RSP3015:35.0重量部
(f)テトラヒドロフラン:1129.0重量部
(g)“アイソパー”M:26.7重量部
この感熱層組成物溶液の固形分濃度は18.1重量%、溶解度パラメーターが17.0(MPa)1/2以下であり、かつ、210〜270℃の範囲に沸点を有する液体の含有量は1.78重量%である。
【0244】
実施例1と同様に評価を行ったところ、感熱層断面中に観察された非感光性粒子の平均粒径は1.4μmであり、非感光性粒子がない部分の感熱層の平均膜厚は2.0μmであった。また、非感光性粒子の面内占有率は5.0面積%であった。また、非感光性粒子が存在しない部分の感熱層0.5μm中に39個の液泡が観察され、液泡の平均直径は0.16μmであった。液泡の分析を行ったところ、“アイソパー”M由来の223〜254℃の範囲に沸点を有する液体の存在が確認され、ガスとして発生した“アイソパー”Mに由来する液体の量は21.76μgであった。
【0245】
前記方法により評価した火膨れ耐性最高露光量は130mJ/cm、ベタ再現最低露光量は120mJ/cmであり、10mJ/cmのラチチュードを有していた。非画線部の地汚れについて前記方法で評価したところ、印刷物に地汚れは認められなかった。感熱層組成物溶液中での非感光性粒子分散安定性を前記方法により評価したところ、非感光性粒子の沈殿は認められなかった。
【0246】
(実施例21)
感熱層組成物溶液−1を以下の感熱層組成物溶液−21に変更したこと以外は実施例1と同様にして直描型水なし平版印刷版原版を得た。
【0247】
<感熱層組成物溶液−21>
(a)“PROJET”825LDI:26.7重量部
(b)“ナーセム”チタン:29.3重量部
(c)“スミライトレジン”PR50731:200.0重量部
(d)“ニッポラン”5196:53.3重量部
(e)非感光性架橋アクリル樹脂粒子分散液:“リオスフィア”RSP3031:42.5重量部
(f)テトラヒドロフラン:1121.5重量部
(g)“アイソパー”M:26.7重量部
この感熱層組成物溶液の固形分濃度は18.2重量%、溶解度パラメーターが17.0(MPa)1/2以下であり、かつ、210〜270℃の範囲に沸点を有する液体の含有量は1.78重量%である。
【0248】
実施例1と同様に評価を行ったところ、感熱層断面中に観察された非感光性粒子の平均粒径は1.7μmであり、非感光性粒子がない部分の感熱層の平均膜厚は2.0μmであった。また、非感光性粒子の面内占有率は5.0面積%であった。また、非感光性粒子が存在しない部分の感熱層0.5μm中に43個の液泡が観察され、液泡の平均直径は0.15μmであった。液泡の分析を行ったところ、“アイソパー”M由来の223〜254℃の範囲に沸点を有する液体の存在が確認され、ガスとして発生した“アイソパー”Mに由来する液体の量は21.88μgであった。
【0249】
前記方法により評価した火膨れ耐性最高露光量は140mJ/cm、ベタ再現最低露光量は120mJ/cmであり、20mJ/cmのラチチュードを有していた。非画線部の地汚れについて前記方法で評価したところ、印刷物に地汚れは認められなかった。感熱層組成物溶液中での非感光性粒子分散安定性を前記方法により評価したところ、非感光性粒子の沈殿は認められなかった。
【0250】
(実施例22)
感熱層組成物溶液−1を以下の感熱層組成物溶液−22に変更したこと以外は実施例1と同様にして直描型水なし平版印刷版原版を得た。
【0251】
<感熱層組成物溶液−22>
(a)“PROJET”825LDI:26.6重量部
(b)“ナーセム”チタン:29.3重量部
(c)“スミライトレジン”PR50731:199.5重量部
(d)“ニッポラン”5196:53.2重量部
(e)非感光性架橋シリコーン粒子分散液:“トスパール”(登録商標)120(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製、平均粒径:2.0μm、CV値:5.0%、比重:1.32、濃度:20重量%、分散媒としてメチルエチルケトン:80重量%を含む):55.0重量部
(f)テトラヒドロフラン:1109.9重量部
(g)“アイソパー”M:26.6重量部
この感熱層組成物溶液の固形分濃度は18.3重量%、溶解度パラメーターが17.0(MPa)1/2以下であり、かつ、210〜270℃の範囲に沸点を有する液体の含有量は1.77重量%である。
【0252】
実施例1と同様に評価を行ったところ、感熱層断面中に観察された非感光性粒子の平均粒径は2.0μmであり、非感光性粒子がない部分の感熱層の平均膜厚は2.0μmであった。また、非感光性粒子の面内占有率は5.0面積%であった。また、非感光性粒子が存在しない部分の感熱層0.5μm中に42個の液泡が観察され、液泡の平均直径は0.15μmであった。液泡の分析を行ったところ、“アイソパー”M由来の223〜254℃の範囲に沸点を有する液体の存在が確認され、ガスとして発生した“アイソパー”Mに由来する液体の量は21.51μgであった。
【0253】
前記方法により評価した火膨れ耐性最高露光量は150mJ/cm、ベタ再現最低露光量は120mJ/cmであり、30mJ/cmのラチチュードを有していた。非画線部の地汚れについて前記方法で評価したところ、印刷物に地汚れは認められなかった。感熱層組成物溶液中での非感光性粒子分散安定性を前記方法により評価したところ、非感光性粒子の沈殿は認められなかった。
【0254】
(比較例1)
感熱層組成物溶液−1を以下の感熱層組成物溶液−23に変更したこと以外は実施例1と同様にして直描型水なし平版印刷版原版を得た。
【0255】
<感熱層組成物溶液−23>
(a)“PROJET”825LDI:20.6重量部
(b)“ナーセム”チタン:22.7重量部
(c)“スミライトレジン”PR50731:154.8重量部
(d)“ニッポラン”5196:41.3重量部
(e)テトラヒドロフラン:1240.0重量部
(g)“アイソパー”M:20.6重量部
この感熱層組成物溶液の固形分濃度は13.6重量%、溶解度パラメーターが17.0(MPa)1/2以下であり、かつ、210〜270℃の範囲に沸点を有する液体の含有量は1.38重量%である。
【0256】
実施例1と同様に評価を行ったところ、感熱層断面中に非感光性粒子は観察されず、感熱層の平均膜厚は1.5μmであった。また、非感光性粒子が存在しない部分の感熱層0.5μm中に41個の液泡が観察され、液泡の平均直径は0.15μmであった。液泡の分析を行ったところ、“アイソパー”M由来の223〜254℃の範囲に沸点を有する液体の存在が確認され、ガスとして発生した“アイソパー”Mに由来する液体の量は16.69μgであった。
【0257】
前記方法により評価した火膨れ耐性最高露光量は120mJ/cm、ベタ再現最低露光量は120mJ/cmであり、ラチチュードを有していなかった。非画線部の地汚れについて前記方法で評価したところ、印刷物に地汚れは認められなかった。
【0258】
(比較例2)
感熱層組成物溶液−1を以下の感熱層組成物溶液−24に変更したこと以外は実施例1と同様にして直描型水なし平版印刷版原版を得た。
【0259】
<感熱層組成物溶液−24>
(a)“PROJET”825LDI:20.4重量部
(b)“ナーセム”チタン:22.4重量部
(c)“スミライトレジン”PR50731:152.7重量部
(d)“ニッポラン”5196:40.7重量部
(e)非感光性架橋アクリル樹脂粒子分散液:“リオスフィア”RSP3021:15.0重量部
(f)テトラヒドロフラン:1228.4重量部
(g)“アイソパー”M:20.4重量部
この感熱層組成物溶液の固形分濃度は13.6重量%、溶解度パラメーターが17.0(MPa)1/2以下であり、かつ、210〜270℃の範囲に沸点を有する液体の含有量は1.36重量%である。
【0260】
実施例1と同様に評価を行ったところ、感熱層断面中に観察された非感光性粒子の平均粒径は0.6μmであり、非感光性粒子がない部分の感熱層の平均膜厚は1.5μmであった。また、非感光性粒子の面内占有率は5.0面積%であった。また、非感光性粒子が存在しない部分の感熱層0.5μm中に38個の液泡が観察され、液泡の平均直径は0.16μmであった。液泡の分析を行ったところ、“アイソパー”M由来の223〜254℃の範囲に沸点を有する液体の存在が確認され、ガスとして発生した“アイソパー”Mに由来する液体の量は16.47μgであった。
【0261】
前記方法により評価した火膨れ耐性最高露光量は120mJ/cm、ベタ再現最低露光量は120mJ/cmであり、ラチチュードを有していなかった。非画線部の地汚れについて前記方法で評価したところ、印刷物に地汚れは認められなかった。感熱層組成物溶液中での非感光性粒子分散安定性を前記方法により評価したところ、非感光性粒子の沈殿は認められなかった。
【0262】
(比較例3)
感熱層組成物溶液−1を以下の感熱層組成物溶液−25に変更したこと以外は実施例1と同様にして直描型水なし平版印刷版原版を得た。
【0263】
<感熱層組成物溶液−25>
(a)“PROJET”825LDI:47.5重量部
(b)“ナーセム”チタン:52.3重量部
(c)“スミライトレジン”PR50731:356.3重量部
(d)“ニッポラン”5196:95.0重量部
(e)非感光性架橋アクリル樹脂粒子分散液:“リオスフィア”RSP3015:35.0重量部
(f)テトラヒドロフラン:866.4重量部
(g)“アイソパー”M:47.5重量部
この感熱層組成物溶液の固形分濃度は31.8重量%、溶解度パラメーターが17.0(MPa)1/2以下であり、かつ、210〜270℃の範囲に沸点を有する液体の含有量は3.17重量%である。
【0264】
実施例1と同様に評価を行ったところ、感熱層断面中に観察された非感光性粒子の平均粒径は1.4μmであり、非感光性粒子がない部分の感熱層の平均膜厚は3.5μmであった。また、非感光性粒子の面内占有率は5.0面積%であった。また、非感光性粒子が存在しない部分の感熱層0.5μm中に40個の液泡が観察され、液泡の平均直径は0.15μmであった。液泡の分析を行ったところ、“アイソパー”M由来の223〜254℃の範囲に沸点を有する液体の存在が確認され、ガスとして発生した“アイソパー”Mに由来する液体の量は38.42μgであった。
【0265】
前記方法により評価した火膨れ耐性最高露光量は120mJ/cm、ベタ再現最低露光量は120mJ/cmであり、ラチチュードを有していなかった。非画線部の地汚れについて前記方法で評価したところ、印刷物に地汚れは認められなかった。感熱層組成物溶液中での非感光性粒子分散安定性を前記方法により評価したところ、非感光性粒子の沈殿は認められなかった。
【0266】
実施例1〜22および比較例1〜3について、評価結果を表1に示す。
【0267】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0268】
本発明の直描型水なし平版印刷版原版は、一般的な印刷分野(商業印刷、新聞印刷、フィルムや樹脂板、または金属などの非吸収体への印刷)に利用できる。また、PDPやLCDなどのディスプレイ分野、さらには、配線パターンなどの作製を印刷法で行うプリンタブルエレクトロニクス分野にも応用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に少なくとも感熱層およびシリコーンゴム層をこの順に有する直描型水なし平版印刷版原版であって、該感熱層に非感光性粒子を含み、該非感光性粒子の平均粒径が、非感光性粒子が存在しない部分の感熱層平均膜厚の1/2倍以上であることを特徴とする直描型水なし平版印刷版原版。
【請求項2】
前記非感光性粒子の感熱層における面内占有率が0.5面積%以上であることを特徴とする請求項1に記載の直描型水なし平版印刷版原版。
【請求項3】
前記非感光性粒子の平均粒径が、非感光性粒子が存在しない部分の感熱層とシリコーンゴム層の合計の平均膜厚以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の直描型水なし平版印刷版原版。
【請求項4】
前記非感光性粒子のCV値が15%以下であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の直描型水なし平版印刷版原版。
【請求項5】
前記非感光性粒子が球状粒子であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の直描型水なし平版印刷版原版。
【請求項6】
前記非感光性粒子が非感光性有機粒子であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の直描型水なし平版印刷版原版。
【請求項7】
前記非感光性有機粒子が架橋構造を有することを特徴とする請求項6に記載の直描型水なし平版印刷版原版。

【公開番号】特開2012−93728(P2012−93728A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208559(P2011−208559)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】