説明

直流給電システム

【課題】負荷装置に短絡等による事故が生じた場合でも継続してシステムを安定に動作させシステムの信頼性を向上させること。
【解決手段】電源側半導体遮断器10の制御回路23及び負荷側半導体遮断器11−1,・・・の制御回路33は、過電流検知後のオフ動作が行われると所定の再オン間隔経過後にスイッチ部16,19をオンさせるという再オン動作を少なくとも1回行う。再オン動作を行って直ちにオフ動作を行う再オン即時遮断が所定の事故判定条件を満たさずに起こると再度の再オン動作を行い、再オン即時遮断が事故判定条件を満たして起こると再度の再オン動作を行わない。電源側半導体遮断器10の再オン間隔は、負荷側半導体遮断器11−1,・・・におけるいずれの再オン間隔よりも短い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置から負荷装置へ過電流が流れた場合にこれを遮断することが可能な半導体遮断器を備えた直流給電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、データセンタや通信局舎などにおいては、ルータやサーバ等の各種負荷装置へ直流電力を供給する直流給電システムの構築が進められている。直流給電システムは、電源装置からの直流電力(直流電流)を電力供給線を介して負荷装置へ供給するものであり、1つの電源装置から複数の負荷装置へ給電する場合には、電源装置からの直流電力を電流分配装置で分配して複数の負荷装置へ供給するように構成される。
【0003】
このような直流給電システムでは、負荷装置への給電を高信頼・高品質で行えるようにすることが要求されている。そのため、電源装置と負荷装置の間には、負荷装置側で短絡等の事故が発生した場合に生じる過大な短絡電流からシステムを保護するために、保護装置が設けられる。上述した電流分配装置を備えたシステムにおいては、その電流分配装置内において分配先毎に保護装置が設けられるのが一般的である。
【0004】
保護装置としては、従来よりヒューズの使用が一般的であるが、ヒューズの場合、過電流によって溶断する度に交換する必要があったり、高電圧の直流給電システムになるとそれに応じた定格のものを用いる必要があるなど、手間やコストの点で難点がある。そのため、ヒューズに代わる保護装置として、電力供給線上に半導体スイッチング素子を挿入し、この半導体スイッチング素子によって電力供給線を導通・遮断可能に構成された半導体遮断器が種々提案されている。
【0005】
半導体遮断器は、通常動作時は半導体スイッチング素子を常時オンして電源装置から負荷装置へ電力を供給させるが、例えば、短絡事故が生じて半導体スイッチング素子を流れる電流が所定の閾値以上となった場合、即ち過電流状態になった場合には、これを検出して半導体スイッチング素子をオフすることで、過電流を遮断する。
【0006】
ところで、過電流の発生は短絡事故が生じた場合には限られない。例えば瞬間的に流れる突入電流やノイズによって発生するなど、直流給電システムが正常であっても過電流が発生する場合がある。
【0007】
このような、突入電流やノイズなどによる過電流は、短絡等による事故電流とは違って、システムの異常によって発生するものではないため、そのような過電流が検出された場合には必ずしも継続的に遮断させる必要はない。
【0008】
従来、過電流が発生した場合に、それが短絡等による事故電流なのかそれとも突入電流やノイズなどによる一時的なものなのかを判定し、事故電流であった場合には半導体スイッチング素子を完全にオフさせるという技術が知られている(例えば、特許文献1,2参照。)。
【0009】
特許文献1,2に記載された技術は、半導体スイッチング素子を流れる電流が閾値以上か否か判断し、閾値以上となった場合に一旦遮断し、所定期間経過後に半導体スイッチング素子のオン・オフ(以下「リトライ動作」という)を繰り返すことで、短絡電流を限流するものである。リトライ動作を行う毎に、そのオン時に半導体スイッチング素子を通過する電流をみて、閾値を下回っているか否か判断する。そして、閾値を下回るまでリトラ
イ動作を繰り返し、閾値を下回ったならばリトライ動作を停止して半導体スイッチング素子を常時オン状態に復帰させる。
【0010】
一方、所定時間リトライ動作を繰り返しても閾値を下回らなかった場合は、短絡等による事故電流であると判定して、半導体スイッチング素子を完全にオフする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−236061号公報
【特許文献2】特開平11−41787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、システムの設計の仕方によっては、直流給電システムの構成として、図5に示すように、1つの電源装置103と、該電源装置103に接続された1つの半導体遮断器(上位の半導体遮断器)110と、該上位の半導体遮断器110に接続された各半導体遮断器(下位の半導体遮断器)111−1〜111−N(Nは1以上の整数)と、該下位の半導体遮断器111−1〜111−Nのそれぞれに接続された各負荷装置151−1〜151−Nを備えた形態が考えられる。なお、一般に上位の半導体遮断器110の電流閾値(第1閾値)は下位の半導体遮断器111−1〜111−Nの電流閾値(第2閾値)よりも大きい値に設定されている。
【0013】
上位の半導体遮断器110は、主に上位の半導体遮断器110の出力側から下位の半導体遮断器111−1〜111−Nの入力までの間の短絡等の事故が発生した場合に生じる短絡電流(過電流)からシステムを保護する機能を有している。
【0014】
下位の半導体遮断器111−1〜111−Nは、主に下位の半導体遮断器111−1〜111−Nのそれぞれに接続された各負荷装置151−1〜151−N側で短絡等の事故が発生した場合に生じる短絡電流(過電流)からシステムを保護する機能を有している。
【0015】
上位の半導体遮断器110と下位の半導体遮断器111−1〜111−Nのリトライ動作については、リトライ動作開始のトリガとなる電流閾値が異なる点以外は両者共に同様の動作を行うように設定されていることが通常である。
【0016】
上記した形態の直流給電システムでは、例えば、負荷装置151−1で短絡事故が発生した場合、短絡電流が下位の半導体遮断器111−1だけでなく、さらにその上位に位置する半導体遮断器110にも流れる。この短絡電流の電流値は極めて大きく下位の半導体遮断器111−1の第2閾値を超えるとともに上位の半導体遮断器110の第1閾値を超える場合が多い。
【0017】
このため、下位の半導体遮断器111−1と上位の半導体遮断器110が同時に遮断し、所定期間経過後に、同時にリトライ動作を開始し、所定時間リトライ動作を行っても短絡事故が継続している場合は、両半導体遮断器111−1,110の半導体スイッチング素子が同時に継続的なオフ状態となる。
【0018】
したがって、下位の半導体遮断器111−1のみならず上位の半導体遮断器110にも保護動作(電源装置から負荷装置への電力供給が継続的に遮断する動作をいい、以下、「遮断動作」と呼ぶ。)が働くことになる。
【0019】
このため、直流給電システム全体がダウンしてしまう。
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、負荷装置に短絡等による事故が生じた場合でも継続してシステムを安定に動作させシステムの信頼性を向上させることが可能な半導体遮断器を備えた直流給電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の直流給電システムは、直流電源装置からの電力供給線を導通・遮断するための上位遮断器と、前記電力供給線が分配された複数の電力供給線のそれぞれを導通・遮断するための複数の下位遮断器とを備えた直流給電システムであって、前記上位遮断器及び複数の前記下位遮断器は、それぞれ、半導体スイッチのオン・オフにより電力供給線を導通・遮断するスイッチ手段と、前記スイッチ手段に流れる電流が過電流であることを検知する過電流検知手段と、前記過電流検知手段により前記過電流が検知されると前記スイッチ手段を直ちにオフさせるオフ動作を行わせる遮断手段と、前記遮断手段により前記オフ動作が行われると所定の再オン間隔経過後に前記スイッチ手段をオンさせるという再オン動作を少なくとも1回行うが、前記再オン動作を行うと直ちに前記遮断手段により前記オフ動作が行われるという再オン即時遮断が所定の事故判定条件を満たさずに起こった場合、再度の前記再オン動作を行い、一方、前記再オン即時遮断が前記事故判定条件を満たして起こった場合、再度の前記再オン動作を行わないリトライ制御手段とを有して構成されている。上位遮断器の前記再オン間隔は、前記複数の負荷側半導体遮断器のいずれの前記再オン間隔よりも短くなるようにしている。
【0021】
ここで、「再オン動作を行うと直ちに前記遮断手段により前記オフ動作が行われる」における「直ちに」とは「間髪入れずに」という意味である。すなわち、図3(c)に示すような動作(リトライ動作が開始後所定時間(区間(e))をおいてスイッチ手段をオフさせる動作)を、再オン即時遮断から排除している。
【0022】
請求項1に係る直流給電システムによれば、例えば、下位遮断器が導通・遮断する電力供給線の負荷側が短絡した場合、上位遮断器及び下位遮断器が同時に遮断する。そして、上位遮断器の再オン間隔がいずれの下位遮断器の再オン間隔よりも短いので、上位遮断器の方が先に再オン動作を行い、その後に下位遮断器が再オン動作を行う。このため、下位遮断器が再オン動作を行う前の期間は上位遮断器に過電流が流れず上位遮断器は継続した導通状態(定常電流が流れている状態)に一旦なる。
【0023】
そして、下位遮断器が上記再オン動作を行ったときには下位遮断器は即時に遮断(再オン即時遮断)を直ちに行うが、上位遮断器は再オン即時遮断には該当しない遮断を直ちに行う。
【0024】
そして、下位遮断器では、上記再オン即時遮断が繰り返し行われ、いずれ事故判定条件を満たして再度の再オン動作は行われなくなるが、上位遮断器では、再オン即時遮断が行われないため事故判定条件を満たすことはなく、再度の再オン動作が行われる。
【0025】
すなわち、下位遮断器はいずれ継続的な遮断状態になり、そのとき上位遮断器は継続的な導通状態になる。したがって、下位遮断器が導通・遮断する電力供給線の負荷側が短絡した場合でも、直流給電システム全体がダウンすることはない。
【0026】
このため、負荷装置に短絡等の事故が生じた場合でも継続してシステムを安定に動作させシステムの信頼性を向上させることができる。
また、請求項2に記載の直流給電システムは、直流電源装置からの電力供給線を導通・遮断するための1つの上位遮断器と、該上位遮断器からの電力供給線を導通・遮断するための1つの下位遮断器とを備えた直流給電システムであって、前記上位遮断器及び前記下位遮断器は、それぞれ、半導体スイッチのオン・オフにより電力供給線を導通・遮断する
スイッチ手段と、前記スイッチ手段に流れる電流が過電流であることを検知する過電流検知手段と、前記過電流検知手段により前記過電流が検知されると前記スイッチ手段を直ちにオフさせるオフ動作を行わせる遮断手段と、前記遮断手段により前記オフ動作が行われると所定の再オン間隔経過後に前記スイッチ手段をオンさせるという再オン動作を少なくとも1回行うが、前記再オン動作を行うと直ちに前記遮断手段により前記オフ動作が行われるという再オン即時遮断が所定の事故判定条件を満たさずに起こった場合、再度の前記再オン動作を行い、一方、前記再オン即時遮断が前記事故判定条件を満たして起こった場合、再度の前記再オン動作を行わないリトライ制御手段とを有して構成されている。上位遮断器の前記再オン間隔は、前記複数の負荷側半導体遮断器のいずれの前記再オン間隔よりも短くなるようにしている。
【0027】
ここで、「再オン動作を行うと直ちに前記遮断手段により前記オフ動作が行われる」における「直ちに」とは「間髪入れずに」という意味である。すなわち、図3(c)に示すような動作(リトライ動作が開始後所定時間(区間(e))をおいてスイッチ手段をオフさせる動作)を、再オン即時遮断から排除している。
【0028】
本発明に係る直流給電システムは、電源装置と、該電源装置に接続された1つの上位遮断器と、該上位遮断器に接続された1つの下位遮断器と、該下位遮断器に接続された1つの負荷装置で構成されたものであり、給電系統は1つである。
【0029】
したがって、給電系統が1つであることと、下位遮断器に遮断動作が働き上位遮断器に遮断動作が働かず通常状態に戻るという状況に照らせば、短絡事故が負荷装置に生じたことを特定し易くなる。
【0030】
また、前記事故判定条件は、前記再オンが前記再オン間隔で所定回数連続しているという条件であることが好ましい(請求項3)。このようにすることにより、事故判定条件を簡易かつ適切に設定することができる。
【0031】
また、前記事故判定条件は、前記再オンが前記再オン間隔で所定時間連続しているという条件であることが好ましい(請求項4)。このようにすることにより、事故判定条件を簡易かつ適切に設定することができる。
【0032】
また、請求項5に示すように、設定装置をさらに備え、前記設定装置が前記事故判定条件を設定する設定部を備えるようにしてもよい。
したがって、下位遮断器の事故判定条件の設定変更や設定更新が容易に行えるので、システムの設定変更・更新を容易に行うことができ、システムの設定の自由度が広がる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】第1実施形態の直流給電システムの概略構成を表す構成図である。
【図2】(a)は負荷側半導体遮断器の動作を説明するための図であり、(b)は電源側半導体遮断器の動作を説明するための図である。
【図3】(a)は負荷側半導体遮断器の半導体スイッチ部に流れる出力電流波形を示した図であり、(b)は負荷側半導体遮断器の半導体スイッチ部のゲート駆動電圧の波形を示した図であり、(c)は電源側半導体遮断器の半導体スイッチ部に流れる出力電流波形を示した図であり、(d)は電源側半導体遮断器の半導体スイッチ部のゲート駆動電圧の波形を示した図である。
【図4】本発明の直流給電システムの変形例を示した図である。
【図5】従来の直流給電システムを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
(1)直流給電システムの構成
図1に、本発明が適用された実施形態の直流給電システム1の概略構成を表す。図1に示すように、本実施形態の直流給電システム1は、電源装置3からの直流電力を複数の給電系統に分配して該給電系統毎にそれぞれ複数の負荷装置51−1,51−2,51−3,・・・へ直流電力を供給するように構成されたものである。図1では、一例として、分配された1つの系統に対して1つの負荷装置が接続された構成が示されている。
【0035】
直流給電システム1は、電力供給線7,8を導通・遮断するための電源側半導体遮断器(上位の半導体遮断器)10と、電源側半導体遮断器10の後段に配置され、負荷装置51−1,51−2,51−3,・・・にそれぞれ接続され電力供給線12,13を導通・遮断するための複数の負荷側半導体遮断器(下位の半導体遮断器)51−1,51−2,51−3,・・・とを備えて構成されている。
【0036】
電源装置3は、各負荷装置51−1,51−2,51−3,・・・へその動作用の直流電力を供給するものである。この電源装置3の具体的構成としては、例えば、商用交流電力を直流電力に変換する整流装置を備えてなるものが考えられるが、負荷装置側へ所定電圧の直流電力を供給できるものである限り、その具体的構成は特に限定されるものではない。
【0037】
各負荷装置51−1,51−2,51−3,・・・は、いずれも電源装置3からの直流電力によって動作するものである。
電源側半導体遮断器10は、2本の電力供給線7,8のうちの一方の電力供給線7に設けられた半導体スイッチ部16と、この半導体スイッチ部16が設けられた電力供給線7を流れる電流を検出するための電流センサ15と、電流センサ15による検出結果に基づいて半導体スイッチ部16の動作(オン・オフ)を制御する制御回路23とを備えている。
【0038】
なお、2本の電力供給線7,8のうち、半導体スイッチ部16が設けられた一方の電力供給線7は電源装置3内の直流電源(直流電圧)の正極側に接続され、他方の電力供給線8は電源装置3内の直流電源の負極側に接続されている。但し、各電力供給線7,8のうちどちらに半導体スイッチ部16や電流センサ15を設けるかについては特に限定されるものではなく、半導体スイッチ部16については、負荷装置51−1側へ直流電力を供給又は遮断できるものである限り、また電流センサ15については、負荷装置側51−1へ流れる電流を検出できるものである限り、具体的にどの電力供給線へどのように設けるかは適宜決めることができる。
【0039】
半導体スイッチ部16は、電力供給線7上に挿入された半導体スイッチング素子(図示略。例えばMOSFET。)を備えてなるものであり、制御回路23からの駆動信号(詳しくは後述する駆動部24からの駆動信号)に従ってその半導体スイッチング素子がオン・オフされる。即ち、半導体スイッチング素子が例えばMOSFETで、正極側に半導体スイッチ部を設ける場合は、ドレインが電源装置3側に接続され、ソースが負荷装置51−1側に接続され、ゲートが駆動部24に接続され、該ゲートに駆動部24からの駆動信号が入力されることとなる。
【0040】
なお、以下の説明で半導体スイッチ部16について「オン」「オフ」という場合は、詳しくは半導体スイッチ部16を構成する半導体スイッチング素子の「オン(ターンオン)」「オフ(ターンオフ)」を意味しているものとする。
【0041】
そのため、半導体スイッチ部16がオンしている間は、この半導体スイッチ部16が設けられている電力供給線7が導通される。即ち、電源装置3から負荷装置51−1への電力供給が可能な状態となる。逆に、半導体スイッチ部16がオフされている間は、この半導体スイッチ部16が設けられている電力供給線7が遮断される。即ち、電源装置3から負荷装置51−1への電力供給が遮断される。
【0042】
制御回路23は、電流計測部21と、計測値記憶部22と、制御部26と、駆動部24と、設定情報記憶部25とを備えて構成されている。電流計測部21は、電流センサ15により検出された電流値を計測してその電流値を示すデータ(電流Ia)を出力する。計測値記憶部22は、電流計測部21から出力されたデータ(電流Ia)を記憶する。制御部26は、計測値記憶部22に記憶された電流Iaに基づいて後述する各種判断を行い、その判断結果に応じて半導体スイッチ部16をオン又はオフさせるための制御信号を出力する。駆動部24は、制御部26からの制御信号に従って半導体スイッチ部16へ駆動信号を出力することにより半導体スイッチ部16をオン・オフさせる。設定情報記憶部25は、制御部26にて行われる各種判断に用いられる各種設定情報を記憶する。
【0043】
設定情報記憶部25には、設定情報として「電源側過電流閾値」、「電源側リトライ回数」、及び「電源側再オン間隔」が記憶されている。
「電源側過電流閾値」は、半導体スイッチ部16を流れる過電流が短絡等による事故電流であるか否かを判断するための判断基準として用いられる。
【0044】
「電源側リトライ回数」は、後述する電源側半導体遮断器10のリトライ動作の最大回
数である。「電源側リトライ回数」は、半導体スイッチ部16を流れる過電流が短絡等による事故電流であると判断され、半導体スイッチ部16を継続的にオフさせるか否かの判定(事故判定)を下すための判定基準として用いられる。
【0045】
この「事故判定」の条件としては、後述する「再オン動作」を行って直ちにオフ動作を行う「再オン即時遮断」が「電源側再オン間隔」で「電源側リトライ回数」連続しているという条件である。
【0046】
そして、これらの設定情報は、例えば、外部の設定装置70からネットワーク(例えば、LAN)60及び入力インタフェース14を介して設定情報記憶部25に入力・記憶される。また、これらの設定情報は、システムの設定変更に伴い適宜更新される。
【0047】
なお、電流計測部21は、半導体スイッチ部16がオンした時の電流Iaを計測し、計測結果を出力している。そして、計測される毎に、その計測結果である電流Iaが計測値記憶部22へ記憶される。
【0048】
電流分配装置9は、電源側半導体遮断器10の後段に接続され、電源装置3からの直流電力を各負荷装置51−1,51−2,51−3,・・・毎に分配して供給するために設けられたものである。
【0049】
この電流分配装置9には、分配された各系統にそれぞれ、負荷装置51−1,51−2,51−3,・・・側へ流れる過電流を検出して必要に応じてこれを遮断するための、負荷側半導体遮断器11−1,11−2,11−3,・・・が設けられている。
【0050】
本実施形態の直流給電システム1においては、上記した各系統において定格電流よりも大きい過電流が発生することがある。ここで、過電流としては、例えば、突入電流や、負荷装置51−1,51−2,51−3,・・・側の短絡等の事故により継続的に発生する短絡電流などが考えられる。
【0051】
本実施の形態では、複数の負荷装置51−1,51−2,51−3,・・・のうち1つの負荷装置51−1への系統には1つの負荷側半導体遮断器11−1が設けられ、別の1つの負荷装置51−2への系統にも1つの負荷側半導体遮断器11−2が設けられ、また別の1つの負荷装置51−3への系統にも1つの負荷側半導体遮断器11−3が設けられている。
【0052】
本実施形態では、電流分配装置9内に設けられた複数の負荷側半導体遮断器11−1,11−2,11−3,・・・は、いずれも基本的に同じ構成であるため、代表として1つの負荷側半導体遮断器11−1についてその構成を説明することとする。
【0053】
負荷側半導体遮断器11−1は、2本の電力供給線12,13のうち一方の電力供給線12に設けられた半導体スイッチ部19と、この半導体スイッチ部19が設けられた電力供給線12を流れる電流を検出するための電流センサ18と、この電流センサ18により検出された電流に基づいて半導体スイッチ部19の動作(オン・オフ)を制御する制御回路33とを備えて構成されている。
【0054】
なお、2本の電力供給線12,13のうち、半導体スイッチ部19が設けられた一方の電力供給線12は電源装置3内の直流電源(直流電圧)の正極側に接続され、他方の電力供給線13は電源装置3内の直流電源の負極側に接続されている。
【0055】
半導体スイッチ部19は、電力供給線12上に挿入された半導体スイッチング素子(図示略。例えばMOSFET。)を備えてなるものであり、制御回路33からの駆動信号に従ってその半導体スイッチング素子がオン・オフされる。
【0056】
そのため、半導体スイッチ部19がオンされている間は、この半導体スイッチ部19が設けられている電力供給線12が導通される。逆に、半導体スイッチ部19がオフされている間は、この半導体スイッチ部19が設けられている電力供給線12が遮断される。ここで、例えば、負荷装置51−1で短絡事故が発生すると、半導体スイッチ部16,19がオンしているときは短絡電流が電力供給線7,12に流れる。
【0057】
制御回路33は、電流計測部41と、計測値記憶部42と、制御部43と、駆動部44と、設定情報記憶部45とを備えて構成されている。電流計測部41は、電流センサ18により検出された電流値を計測してその電流値を示すデータ(電流Ib)を出力する。計測値記憶部42は、電流計測部41から出力されたデータ(電流Ib)を記憶する。制御部43は、計測値記憶部42に記憶された電流Ibに基づいて後述する各種判断を行い、その判断結果に応じて半導体スイッチ部19をオン又はオフさせるための制御信号を出力する。駆動部44は、制御部43からの制御信号に従って半導体スイッチ部19へ駆動信号を出力することにより半導体スイッチ部19をオン・オフさせる。設定情報記憶部45は、制御部43にて行われる各種判断に用いられる各種設定情報を記憶する。
【0058】
設定情報記憶部45には、設定情報として「負荷側過電流閾値」、「負荷側リトライ回数」、及び「負荷側再オン間隔」が記憶されている。
「負荷側過電流閾値」は、半導体スイッチ部19を流れる過電流が短絡等による事故電流であるか否かを判断するための判断基準として用いられる。
【0059】
「負荷側リトライ回数」は、後述する負荷側半導体遮断器11−1のリトライ動作の最
大回数である。「負荷側リトライ回数」は、半導体スイッチ部19を流れる過電流が短絡等による事故電流であると判断され、半導体スイッチ部19を継続的にオフさせるか否かの判定(事故判定)を下すための判定基準として用いられる。
【0060】
この「事故判定」の条件としては、後述する「再オン動作」を行って直ちにオフ動作を行う「再オン即時遮断」が「負荷側再オン間隔」で「負荷側リトライ回数」連続しているという条件である。
【0061】
そして、これらの設定情報は、例えば、外部の設定装置70からネットワーク(LAN)60及び入力インタフェース34−1を介して設定情報記憶部45に入力・記憶される。また、これらの設定情報は、システムの設計変更に伴い適宜更新される。
【0062】
なお、電流計測部41は、半導体スイッチ部19がオンした時の電流Ibを計測し、計測結果を出力している。そして、計測される毎に、その計測結果である電流Ibが計測値記憶部42へ記憶される。
【0063】
(2)電源側半導体遮断器及び負荷側半導体遮断器の動作説明
まず、上記のように構成された電源側半導体遮断器10及び負荷側半導体遮断器11−1,11−2,11−3,・・・のリトライ動作について図2を参照して説明する。なお、本実施形態では、電流分配装置9内に設けられた複数の負荷側半導体遮断器11−1,11−2,11−3,・・・は、いずれも基本的に同じ動作を行うため、代表として1つの負荷側半導体遮断器11−1についてその動作を説明することとする。
【0064】
図2(a)は負荷側半導体遮断器11−1の動作を説明するための図であって半導体スイッチ部19のゲート駆動電圧波形である。図2(b)は電源側半導体遮断器10の動作を説明するための図であって半導体スイッチ部16のゲート駆動電圧波形である。
【0065】
まず、負荷側半導体遮断器11−1の動作について説明する。
通常状態(定常状態:期間A1)において、半導体スイッチ部19に負荷側過電流閾値よりも大きい短絡電流が流れると(図2(a)の時刻t=0)、一旦遮断する。そして、期間Tsa経過後に半導体スイッチ部19のリトライ動作(以下、「負荷側リトライ動作」と呼ぶ。)を行うための制御信号を駆動部44へ出力して負荷側リトライ動作を行うことにより、半導体スイッチ部19を介して負荷装置51−1側へ流れる電流を限流する。
【0066】
ここで、負荷側リトライ動作とは、図2(a)に示すように、第1の半導体スイッチ部19に流れる直流電流が過電流(短絡電流)と判断されて遮断され、所定時間経過後に、オン周期T1で第1の半導体スイッチ部のオン・オフを繰り返し行う動作をいう。
【0067】
半導体スイッチ部19がオンされる毎に、そのオン時に半導体スイッチ部19を流れる電流を電流センサ18が検出する。制御部43は、前記検出された電流が負荷側過電流閾値以上であるか否かを判断する。そして、検出された電流が負荷側過電流閾値未満である場合には負荷側リトライ動作が停止して通常状態に戻る。前記検出された電流が負荷側過電流閾値以上になった場合には一旦遮断し、所定時間経過後に負荷側リトライ動作が行われる。この負荷側リトライ動作を設定情報記憶部45に記憶された負荷側リトライ回数(本例では4回)だけ繰り返す。
【0068】
負荷側リトライ動作のリトライ回数が負荷側リトライ回数以上になり、半導体スイッチ部19を流れる電流が負荷側過電流閾値以上である場合には、制御部43は半導体スイッチ部19を継続的にオフさせる。
【0069】
次に、電源側半導体遮断器10の動作について説明する。
図2(b)に示すように、通常状態(期間A2)において、半導体スイッチ部16に電源側過電流閾値よりも大きい短絡電流が流れると(時刻t=0)、制御部23は、一旦遮
断する。そして、期間Tsb経過後に半導体スイッチ部16のリトライ動作(以下、「電源側リトライ動作」と呼ぶ。)を行うための制御信号を駆動部24へ出力して電源側リトライ動作を行うことにより、半導体スイッチ部16を介して負荷側半導体遮断器11−1側へ流れる電流を限流する。
【0070】
ここで、電源側リトライ動作とは、図2(b)に示すように、半導体スイッチ部16に流れる直流電流が過電流(短絡電流)と判断されて遮断され、所定時間経過後に、オン周期T2で半導体スイッチ部16のオン・オフを繰り返し行う動作をいう。
【0071】
半導体スイッチ部16がオンされる毎に、そのオン時に半導体スイッチ部16を流れる電流を電流センサ15が検出する。制御部26は、前記検出された電流が電源側過電流閾値以上であるか否かを判断する。そして、前記検出された電流が電源側過電流閾値未満である場合には電源側リトライ動作を停止して通常状態に戻る。前記検出された電流が負荷側過電流閾値以上になった場合には一旦遮断し、所定時間経過後に負荷側リトライ動作を行う。この負荷側リトライ動作を設定情報記憶部45に記憶された負荷側リトライ回数(本例では4回)だけ繰り返す。
【0072】
前記検出された電流が電源側過電流閾値以上である間は、継続して電源側リトライ動作を設定情報記憶部25に記憶された電源側リトライ回数(本例では4回)繰り返す。
電源側リトライ動作のリトライ回数が電源側リトライ回数以上になり、半導体スイッチ部16を流れる電流が電源側過電流閾値以上である場合には、制御部26は半導体スイッチ部16を継続的にオフさせる。
【0073】
次に、負荷側半導体遮断器11−1の制御部43の基本的な動作について説明する。
まず、負荷側半導体遮断器11−1の制御部43は、電源装置3からの定常的な直流電力の供給が開始されると、半導体スイッチ部19をオンする。次に、制御部43内のカウンタ(図示せず)を初期化する。
【0074】
次に、計測した電流Ibが負荷側過電流閾値以上であるか否かを判断し(負荷側過電流閾値判断処理)、負荷側過電流閾値以上ならば半導体スイッチ部19をオフする(図2(a)の時刻t=0)。
【0075】
次に、カウンタの値が予め設定された負荷側リトライ回数(本例では4回)以上であるか否かを判断する(電源側リトライ回数判断処理)。
次に、カウンタの値が予め設定された負荷側リトライ回数(本例では4回)未満である場合には、所定期間Tsa経過後(例えば、100μs後)に、半導体スイッチ部19を再
オンさせる。その後、カウンタ値を+1だけアップさせて、前記負荷側過電流閾値判断処理に戻る。
【0076】
負荷側過電流閾値判断処理に戻った後は、カウンタの値が予め設定された負荷側リトライ回数になるまで、上記した負荷側過電流閾値判断処理から上記したカウンタ値のアップまでの処理が繰り返される。
【0077】
カウンタの値が予め設定された負荷側リトライ回数(本例では4回)以上になった場合(図2(a)の時刻t=t1)には、半導体スイッチ部19を継続的にオフする。
なお、上記判断処理は、制御部43内の記憶手段(例えば、ROM)に格納された所定のプログラムに基づいて実行される。
【0078】
なお、電源装置3からの定常的な直流電力の供給が開始された後における電源側半導体遮断器10の制御部26の基本的な動作については、上述した負荷側半導体遮断器11−
1の制御部43の動作と同様であるので、その説明を省略する。
【0079】
以下に、負荷装置51−1,51−2,51−3,・・・側のいずれか(本例では負荷装置51−1とする。)に短絡事故が発生した場合に、短絡事故が発生した負荷装置51−1に接続される負荷側半導体遮断器11−1及び電源側半導体遮断器10の動作について図3を参照して説明する。
【0080】
負荷装置51−1に短絡事故が発生して短絡電流が負荷側半導体遮断器11−1の半導体スイッチ部19に流れる(電流Ibが負荷側過電流閾値以上である(図3(a)の時刻t=0))と、一旦遮断し、所定期間Tsa経過後(図3(b)の時刻t=t6)に負荷側
半導体遮断器11−1の負荷側リトライ動作が開始する。
【0081】
一方、電源側半導体遮断器10の半導体スイッチ部16に流れる電流Iaも電源側過電流閾値以上となるので、一旦遮断し、所定期間Tsb経過後(図3(d)の時刻t=t4
に電源側半導体遮断器10の電源側リトライ動作が開始する。なお、図3では、Tsbは半導体スイッチ16のオフ期間Tbと同じ長さにしており、Tsaは半導体スイッチ19のオフ期間Taと同じ長さにしているが、TsbがTsaよりも短くなるように設定されていればよい。なお、図3に示すように、Tsa=Ta>Tsb=Tbである。
【0082】
ここで、負荷側半導体遮断器11−1の半導体スイッチ部19のオフ期間Tsaの間に電源側半導体遮断器10の半導体スイッチ部16がオンすることとなる。すなわち、負荷側半導体遮断器11−1の半導体スイッチ部19がオンする前に電源側半導体遮断器10の半導体スイッチ部16がオンすることとなる(図3(d)の時刻t=t4)。
【0083】
このため、電源側半導体遮断器10の半導体スイッチ部16がオンしたときには電源側半導体遮断器10の半導体スイッチ部16には短絡電流が流れていない(図3(c)の区間(e))ので、電源側半導体遮断器10で設定された電源側リトライ回数がリセット(初期化)され、電源側半導体遮断器10は通常状態となる。
【0084】
その後、負荷側半導体遮断器11−1の半導体スイッチ部19がオン(例えば、図3(b)の時刻t=t6)すると、電源側半導体遮断器10の半導体スイッチ部16に短絡電
流が流れるので、電源側半導体遮断器10は、オフ期間Tbだけオフした後に再度のリトライ動作を開始する(図3(d)の時刻t=t5)。
【0085】
電源側半導体遮断器10の半導体スイッチ部16は、負荷側半導体遮断器11−1の半導体スイッチ19のオフ期間Taの間にオンするが、オフ期間Tbの間、半導体スイッチ部16には短絡電流が流れていないので、電源側半導体遮断器10で設定された電源側リトライ回数が再びリセット(初期化)され、電源側半導体遮断器10は通常状態となる。以降、この動作が、負荷側半導体遮断器11−1の負荷側リトライ動作の回数が設定された負荷側リトライ回数(本例では4回)以上になるまで繰り返し行われる。
【0086】
負荷側リトライ動作の回数が設定された負荷側リトライ回数以上になった後は半導体スイッチ部19が継続的にオフされ(図3(b)の時刻t3以降)、半導体スイッチ部16
には短絡電流が流れなくなるので、電源側半導体遮断器10は通常状態(半導体スイッチ部16がオンを維持)に戻る(図3(d)の時刻t=t7)。
【0087】
また、上述した電源側過電流閾値及び負荷側過電流閾値は短絡電流の電流値よりも小さな値に設定されており、基本的に電源側過電流閾値が負荷側過電流閾値以上の値になるように設定されている。本実施の形態では、便宜上電源側過電流閾値と負荷側過電流閾値が同じであるとして説明している。
【0088】
以上説明したように、複数の負荷装置51−1,51−2,51−3,・・・の内の少なくとも1つの負荷装置、例えば負荷装置51−1が短絡した場合、負荷側半導体遮断器11−1及び電源側半導体遮断器10が同時に遮断する。そして、所定時間経過後に電源側半導体遮断器10の方が先に再オン動作を行い、その後に負荷側半導体遮断器11−1が再オン動作を行うため、負荷側半導体遮断器11−1が再オン動作を行う前の期間(図3(c)の期間(e))は電源側半導体遮断器10に過電流が流れず電源側半導体遮断器10は継続した導通状態に一旦なる。
【0089】
そして、負荷側半導体遮断器11−1が再オン動作を行ったときには負荷側半導体遮断器11−1は即時に遮断(再オン即時遮断)を行うが、電源側半導体遮断器10は再オン即時遮断には該当しない遮断を直ちに行う。ここで、「再オン即時遮断」とは、再オン動作を行って直ちにオフ動作を行うことをいう。
【0090】
そして、負荷側半導体遮断器11−1では、再オン動作が繰り返し行われ、所定の負荷側リトライ回数を超えると再度の再オン動作は行われなくなる。一方、電源側半導体遮断器10では、負荷側リトライ回数がリセットされるため負荷側リトライ回数を超えることはなく、再度の再オン動作が繰り返される。
【0091】
すなわち、負荷側半導体遮断器11−1は負荷側リトライ回数を超えると継続的な遮断状態になり、そのとき電源側半導体遮断器10は継続的な導通状態になる。
このため、負荷側半導体遮断器が導通・遮断する電力供給線の負荷側が短絡した場合でも、短絡事故が発生した負荷装置に接続された下位の半導体遮断器を除き、直流給電システム全体がダウンすることはない。
【0092】
したがって、負荷装置に短絡等の事故が生じた場合でも継続してシステムを安定に動作させシステムの信頼性を向上させることができる。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の実施の形態は、上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採り得ることはいうまでもない。
【0093】
[変形例1]
例えば、上記第1実施形態では、短絡等による事故電流が半導体スイッチ部16,19に流れる状態が継続する場合において半導体スイッチ部16,19を継続的にオフさせるか否かの判定(以下、「オフ判定」と呼ぶ。)を行うための判定基準として「リトライ回数」を用いて説明したが、前記判定基準として、リトライ動作が開始されてから所定時間経過するまでの時間(事故判定時間)を用いてもよい。
【0094】
[変形例2]
また、電源側半導体遮断器及び負荷側半導体遮断器の上記オフ判定を行うための判定基準として、これら電源側半導体遮断器及び負荷側半導体遮断器のいずれか一方については「リトライ回数」を用いて行い、他方については「事故判定時間」を用いて行ってもよい。
【0095】
[変形例3]
また、上記した第1実施形態に係る直流給電システム1は、1つの電源装置3と、該電源装置3に接続された1つの電源側半導体遮断器(上位の半導体遮断器)10と、該電源側半導体遮断器10に接続された複数の負荷側半導体遮断器(下位の半導体遮断器)11−1,11−2,・・・と、該負荷側半導体遮断器11−1,11−2,・・・のそれぞれに接続された各負荷装置51−1,51−2,・・・を備えて構成される。
【0096】
しかし、本発明は、上記した構成に限定されるものではなく、例えば、図4に示すように、直流給電システム80が、1つの電源装置3と、該電源装置3に接続された複数の電源側半導体遮断器10−1,10−2,・・・から構成された上位電流分配装置5と、該各電源側半導体遮断器10−1,10−2,・・・にそれぞれ接続された複数の下位電流分配装置9−1,9−2,・・・とを含んで構成されたものであってもよい。
【0097】
具体的には、図4に示すように、下位電流分配装置9−1は、電源側半導体遮断器10−1に接続された負荷側半導体遮断器(下位の半導体遮断器)11−1〜11−N(Nは2以上の整数)を備えて構成されている。下位電流分配装置9−2は、電源側半導体遮断器10−2に接続された負荷側半導体遮断器(下位の半導体遮断器)20−1〜20−N(Nは2以上の整数)を備えて構成されている。
【0098】
各負荷側半導体遮断器(下位の半導体遮断器)11−1〜11−Nには、それぞれ負荷装置51−1〜51−N(Nは2以上の整数)が接続され、各負荷側半導体遮断器(下位の半導体遮断器)20−1〜20−Nには、それぞれ負荷装置52−1〜52−N(Nは2以上の整数)が接続されている。
【0099】
[変形例4]
また、上記第1実施形態では、電流分配装置9によって分配される複数の系統の全てに負荷側半導体遮断器を設けたが、これは一例であって、必ずしも全ての系統に半導体遮断器を設ける必要はない。
【符号の説明】
【0100】
1,80…直流給電システム、3…電源装置、7,8…電力供給線、9…電流分配装置、10…電源側半導体遮断器(上位遮断器)、11−1,11−2,11−3…負荷側半導体遮断器(下位遮断器)、12,13…電力供給線、51−1,51−2,51−3…負荷装置、15,18…電流センサ(過電流検知手段)、16…半導体スイッチ部(スイッチ手段)、19…半導体スイッチ部(スイッチ手段)、21,41…電流計測部、22,42…計測値記憶部、23…制御回路(リトライ制御手段、遮断手段)、24,44…駆動部、25,45…設定情報記憶部、26…制御部、33…制御回路(リトライ制御手段、遮断手段)、34−1,34−2,34−3…入力インタフェース、43…制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源装置からの電力供給線を導通・遮断するための上位遮断器と、前記電力供給線が分配された複数の電力供給線のそれぞれを導通・遮断するための複数の下位遮断器とを備えた直流給電システムであって、
前記上位遮断器及び複数の前記下位遮断器は、それぞれ、
半導体スイッチのオン・オフにより電力供給線を導通・遮断するスイッチ手段と、
前記スイッチ手段に流れる電流が過電流であることを検知する過電流検知手段と、
前記過電流検知手段により前記過電流が検知されると前記スイッチ手段を直ちにオフさせるオフ動作を行わせる遮断手段と、
前記遮断手段により前記オフ動作が行われると所定の再オン間隔経過後に前記スイッチ手段をオンさせるという再オン動作を少なくとも1回行うが、前記再オン動作を行うと直ちに前記遮断手段により前記オフ動作が行われるという再オン即時遮断が所定の事故判定条件を満たさずに起こった場合、再度の前記再オン動作を行い、一方、前記再オン即時遮断が前記事故判定条件を満たして起こった場合、再度の前記再オン動作を行わないリトライ制御手段と、を有し、
前記上位遮断器の前記再オン間隔は、前記複数の負荷側半導体遮断器のいずれの前記再オン間隔よりも短いこと
を特徴とする直流給電システム。
【請求項2】
直流電源装置からの電力供給線を導通・遮断するための1つの上位遮断器と、該上位遮断器からの電力供給線を導通・遮断するための1つの下位遮断器とを備えた直流給電システムであって、
前記上位遮断器及び前記下位遮断器は、それぞれ、
半導体スイッチのオン・オフにより電力供給線を導通・遮断するスイッチ手段と、
前記スイッチ手段に流れる電流が過電流であることを検知する過電流検知手段と、
前記過電流検知手段により前記過電流が検知されると前記スイッチ手段を直ちにオフさせるオフ動作を行わせる遮断手段と、
前記遮断手段により前記オフ動作が行われると所定の再オン間隔経過後に前記スイッチ手段をオンさせるという再オン動作を少なくとも1回行うが、前記再オン動作を行うと直ちに前記遮断手段により前記オフ動作が行われるという再オン即時遮断が所定の事故判定条件を満たさずに起こった場合、再度の前記再オン動作を行い、一方、前記再オン即時遮断が前記事故判定条件を満たして起こった場合、再度の前記再オン動作を行わないリトライ制御手段と、を有し、
前記上位遮断器の前記再オン間隔は、前記負荷側半導体遮断器の前記再オン間隔よりも短いこと
を特徴とする直流給電システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の直流給電システムにおいて、
前記事故判定条件は、前記再オン即時遮断が前記再オン間隔で所定回数連続しているという条件であること、
を特徴とする直流給電システム。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の直流給電システムにおいて、
前記事故判定条件は、前記再オン即時遮断が前記再オン間隔で所定時間連続しているという条件であること、
を特徴とする直流給電システム。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の直流給電システムにおいて、
設定装置をさらに備え、
前記設定装置は、前記事故判定条件を設定する設定部を備えている
ことを特徴とする直流給電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−81338(P2013−81338A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221177(P2011−221177)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(593063161)株式会社NTTファシリティーズ (475)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】