説明

直流電源回路

【課題】直流出力電圧に含まれるリップルやノイズを抑制して高品質とし、かつ内部の消費電力および発熱を抑えた高い変換効率を有する直流電源回路を提供する。
【解決手段】変動する直流電源電圧(バッテリ電圧VB)が入力端子P1に入力され、直流電源電圧よりも小さい一定の直流出力電圧(負荷91の定格電圧VL)を出力端子P4から負荷91に出力する直流電源回路1であって、入力端子P1に接続されたスイッチングレギュレータ2と、スイッチングレギュレータ2と出力端子P4との間に接続されたシリーズレギュレータ5と、負荷91の消費電流Iおよび外部制御信号SGの少なくとも一方に基づいてスイッチングレギュレータ2の作動および停止を切り替え制御する制御回路6と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変動する直流電源電圧を一定の直流出力電圧に変換して出力する直流電源回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車や機械、電機などの幅広い産業分野で制御の電子化が進展している。これに伴い、CPUを内蔵した電子制御装置を安定して動作させる高品質な直流電圧を出力する直流電源回路の必要性が高まっている。特に、自動車には多数の電子制御装置が直流電源回路とともに搭載され、制御対象に応じて様々な形態で使用されている。車載の直流電源回路はバッテリを電源としており、消耗によるバッテリ電圧の低下や充電時のバッテリ電圧の上昇などに対し安定して作動するようになっている。また、直流電源回路には、安定して作動するだけでなく、高効率であること、ノイズを放出しないことなど様々な性能が要求されている。直流電源回路として、従来からスイッチングレギュレータやシリーズレギュレータが用いられてきた。
【0003】
しかしながら、スイッチングレギュレータは、効率は高いが、直流出力電圧に含まれるリップルや作動時のノイズが大きいという問題点を有している。一方、シリーズレギュレータは、直流出力電圧に含まれるリップルやノイズが小さく安定性が高い反面、内部の消費電力が比較的大きく発熱も大きくなるという問題点を有している。これらの問題点に対する一対応策が特許文献1に開示されている。特許文献1の直流安定化電源装置は、スイッチングレギュレータとシリーズレギュレータとを並列に接続し、両レギュレータを切り換えて作動させる制御部を備えている。さらに、請求項4には、出力される電流値を検出する電流検出回路部を備え、電流値が大きいときにスイッチングレギュレータを作動させ、電流値が小さいときにシリーズレギュレータを作動させる態様が開示されている。これにより、効率のよい(すなわち低消費電力の)定電圧電源を実現できる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−216247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の直流安定化電源装置は、電流値が大きいときにスイッチングレギュレータを作動させることで高効率を実現しているが、リップルやノイズが大きいという問題点は解消されていない。また、電流値が増加してゆくときに、始めはシリーズレギュレータのみが作動し、次いで両レギュレータが共に作動し、最終的にスイッチングレギュレータのみが作動する。この移行プロセスで、電流値が増加するにつれシリーズレギュレータ内部の消費電力が大きくなり、切り替えのタイムラグも重なって発熱する問題点が生じる。
【0006】
本発明は、上記背景技術の問題点に鑑みてなされたもので、直流出力電圧に含まれるリップルやノイズを抑制して高品質とし、かつ内部の消費電力および発熱を抑えた高い変換効率を有する直流電源回路を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する請求項1に係る直流電源回路の発明は、変動する直流電源電圧が入力端子に入力され、前記直流電源電圧よりも小さい一定の直流出力電圧を出力端子から負荷に出力する直流電源回路であって、前記入力端子に接続されたスイッチングレギュレータと、前記スイッチングレギュレータと前記出力端子との間に接続されたシリーズレギュレータと、前記負荷の消費電流および外部制御信号の少なくとも一方に基づいて前記スイッチングレギュレータの作動および停止を切り替え制御する制御回路と、を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1において、前記スイッチングレギュレータが作動しているとき、前記スイッチングレギュレータにおける電圧降下が前記シリーズレギュレータにおける電圧降下よりも大きく、前記スイッチングレギュレータが停止すると前記直流電源電圧をスルーさせることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項1または2において、前記負荷を制御する負荷制御回路は、前記負荷を増加させる直前から前記負荷が大きい間は前記外部制御信号をオンし、前記負荷を減少させた直後から前記負荷が小さい間は前記外部制御信号をオフし、前記制御回路は、前記外部制御信号がオンすると前記スイッチングレギュレータを作動させ、前記外部制御信号がオフすると前記スイッチングレギュレータを停止させることを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれか一項において、前記制御回路は、前記負荷の前記消費電流を検出する電流検出部を有し、前記消費電流が所定の閾値以上になると前記前記スイッチングレギュレータを作動させ、前記負荷電流が所定の閾値未満になると前記前記スイッチングレギュレータを停止させることを特徴とする。
【0011】
請求項5に係る発明は、前記負荷とともに回路基板に実装される直流電源回路であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る直流電源回路の発明では、スイッチングレギュレータを電源側とし、シリーズレギュレータを負荷側として直列接続し、前者の作動および停止を切り替え制御するとともに後者を常に作動させる。したがって、スイッチングレギュレータが作動しているとき、両レギュレータ間の中間電圧波形に大きなリップルやノイズが発生していても負荷側のシリーズレギュレータで抑制できるので、直流出力電圧は高品質になる。
【0013】
また一般的に、スイッチングレギュレータは、入力電圧の大小にあまり依存せずに変換効率は概ね一定で高い特性を備え、シリーズレギュレータは、入力電圧が出力電圧に接近するほど変換効率が向上し、入力電圧が出力電圧から離れると変換効率が低下する特性を備えている。したがって、スイッチングレギュレータの高効率な降圧機能により直流電源電圧よりも小さな中間電圧値を得ることで、シリーズレギュレータの変換効率が向上して内部の消費電力および発熱が低減され、総合的に高い変換効率が得られる。
【0014】
請求項2に係る発明では、スイッチングレギュレータが作動しているときの電圧降下がシリーズレギュレータにおける電圧降下よりも大きくなる。したがって、両レギュレータ間の中間電圧値は所望される直流出力電圧に接近し、シリーズレギュレータの変換効率が大幅に向上して内部の消費電力および発熱が一層低減され、総合的に極めて高い変換効率が得られる。
【0015】
請求項3に係る発明では、負荷制御回路の外部制御信号に基づいて、制御回路は、負荷が増加する直前から負荷が大きい間はスイッチングレギュレータを作動させ、負荷が減少した直後から負荷が小さい間はスイッチングレギュレータを停止させる。したがって、負荷が大きい間はスイッチングレギュレータを作動させて総合的に高い変換効率を得ることができる。また、負荷が小さくなるとスイッチングレギュレータを停止させるので、リップルやノイズが発生しなくなり、直流出力電圧を一層高品質にできる。なお、負荷が小さい間は消費電流自体が小さいので、シリーズレギュレータの変換効率が低くとも消費電力の増加および発熱の問題は生じない。さらに、負荷の増加に先立ちスイッチングレギュレータを作動させので、消費電流が増加する移行プロセスの途中において消費電力の増加および発熱の問題は生じない。
【0016】
請求項4に係る発明では、制御回路は、負荷の消費電流を検出する電流検出部を有し、消費電流の大小に対応してスイッチングレギュレータを作動および停止させる。したがって、請求項3と同様で、負荷が大きい間はスイッチングレギュレータを作動させて総合的に高い変換効率を得ることができ、負荷が小さくなるとスイッチングレギュレータを停止させて直流出力電圧を一層高品質にできる。なお、負荷が小さい間、消費電力の増加および発熱の問題が生じない点も同様である。
【0017】
請求項5に係る発明では、直流電源回路は負荷とともに回路基板に実装されている。これにより、例えばCPUなどの負荷に対して至近箇所からノイズやリップルを抑制した高品質の直流出力電圧を供給できるので、負荷の作動信頼性が極めて高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態の直流電源回路の回路構成を説明する図である。
【図2】制御回路によるスイッチングレギュレータの作動および停止の切り替え制御方法を説明する状態遷移図である。
【図3】スイッチングレギュレータが停止しているときの直流電源回路の各部電圧波形を示す図である。
【図4】スイッチングレギュレータが作動しているときの直流電源回路の各部電圧波形を示す図であり、(1)はバッテリ電圧が定格電圧のとき、(2)はバッテリ電圧が低下した低電圧のときを示している。
【図5】スイッチングレギュレータおよびシリーズレギュレータの変換効率を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態の直流電源回路について、図1〜図5を参考にして説明する。図1は、実施形態の直流電源回路1の回路構成を説明する図である。直流電源回路1は、負荷91とともに回路基板に実装されており、回路基板外のバッテリ93からバッテリ電圧VBの供給を受け、一定の直流出力電圧に変換して定格電圧VLの負荷91に出力する回路である。直流電源回路1は、図1に一点鎖線で囲まれて示され、スイッチングレギュレータ2、シリーズレギュレータ5、制御回路6、などで構成されている。また、図中破線の矢印は制御の流れを示している。
【0020】
負荷91は、回路基板に実装されたCPUおよびその他の電子部品である。負荷91の定格電圧VLは例えば直流5Vであり、これに限定されない。負荷91の稼働状態、待機状態、および停止状態は、外部の負荷制御回路92から制御されるようになっている。負荷制御回路92の外部制御信号SGは、負荷91だけでなく、直流電源回路1の制御回路6にも送出されている。外部制御信号SGには、例えば複数の2値信号(オン/オフ信号)や複数ビットからなるディジタル信号を用いることができるが、本実施形態では簡略化して負荷91を増加させる直前から負荷が大きい間は「1」、それ以外は「0」の値になるものとする。
【0021】
バッテリ93のバッテリ電圧VBは、定格電圧Vnから上下に変動する直流電源電圧である。バッテリ93が消耗するとバッテリ電圧VBは定格電圧Vnよりも低下して下限電圧Vminまで低下し、充電装置94に充電されるときバッテリ電圧VBは上限電圧Vmaxまで上昇し得る。バッテリ電圧VBの定格電圧Vn=12V、下限電圧Vmin=8V、上限電圧Vmax=16Vを例示でき、これに限定されない。ただし、下限電圧Vminは、負荷91の定格電圧VLよりも大きいことが条件となる。バッテリ93の正側端子は直流電源回路1の入力端子P1に接続され、負側端子は共通接地GNDに接続されている。
【0022】
直流電源回路1は、入力端子P1にスイッチングレギュレータ2が接続され、その後段にシリーズレギュレータ5が直列接続されて構成されている。スイッチングレギュレータ2は、入力端子P1に接続されたスイッチング部3と、スイッチング部3の出力側の受け渡し部P2に接続された平滑部4とで構成されている。スイッチング部3は、入力端子P1に入力されたバッテリ電圧VBを、可変のデューティ比でスイッチングする回路である。スイッチング部3は、制御回路6からの制御信号SSにより作動および停止が切り替え制御されるようになっている。スイッチング部3が作動しているとき、受け渡し部P2に発生する電圧波形V2は、バッテリ電圧VBとゼロ電圧に振れる矩形波になる。また、スイッチング部3が停止すると、受け渡し部P2に発生する電圧波形V2は、バッテリ電圧VBがスルーされた直流電圧波形になる。スイッチング部3には、従来の一般的な回路構成を用いることができるので詳細な説明は省略する。
【0023】
平滑部4は、受け渡し部P2を入力点とし、シリーズレギュレータ5への受け渡し部P3を出力点とし、ダイオードD、インダクタンスL、およびコンデンサCで構成される平滑回路である。ダイオードDは、受け渡し部P2と共通接地GNDとの間に接続され、共通接地GNDから受け渡し部P2への一方向の通電のみを許容する整流機能を有している。インダクタンスLは、受け渡し部P2と受け渡し部P3との間に接続されている。コンデンサCは、受け渡し部P3と共通接地GNDとの間に接続されている。通常時、ダイオードDに電流は流れず、インダクタンスLおよびコンデンサCより平滑機能が働く。したがって、スイッチング部3作動時に受け渡し部P2に矩形波の電圧波形V2が入力されると、受け渡し部P3に発生する中間電圧波形V3はリップルを含む直流電圧波形になる。
【0024】
ここで、受け渡し部P3に発生する中間電圧波形V3の実効値すなわち中間電圧値VMが一定となるように、スイッチング部3のデューティ比が制御される。中間電圧値VMとして6Vを例示でき、これに限定されない。中間電圧値VMは、負荷91の定格電圧VLよりも少し高めで接近していることが好ましい。換言すれば、スイッチングレギュレータ2が作動しているときの電圧降下が、シリーズレギュレータ5における電圧降下よりも大きくなることが好ましい。また、スイッチング部3停止時に受け渡し部P3に発生する中間電圧波形V3は、バッテリ電圧VBがスルーされた直流電圧波形になる。
【0025】
シリーズレギュレータ5は、受け渡し部P3と出力端子P4との間に接続され、出力端子P4に発生する出力電圧V4は負荷91の定格電圧VLに一致している。出力端子P4は負荷91の正側端子に接続され、負荷91の負側端子は共通接地GNDに接続されている。これにより、シリーズレギュレータ5から負荷91に消費電流Iが供給されるようになっている。シリーズレギュレータ5には、従来の一般的な回路構成を用いることができるので詳細な説明は省略する。
【0026】
制御回路6は、負荷91の消費電流Iおよび外部制御信号SGに基づき、制御信号SSをスイッチングレギュレータ2のスイッチング部3に送ってその作動および停止を切り替え制御する回路である。制御回路6には、例えば、トランジスタ素子のスイッチング機能を応用した回路やロジックICを用いた回路を用いることができる。制御回路6は、負荷91の消費電流Iを検出する電流検出部7を、シリーズレギュレータ5と出力端子P4との間に有している。電流検出部7には、例えば、シャント抵抗の両端電圧を検出する回路を用いることができる。また前述したように、制御回路6は、負荷制御回路92から「1」または「0」の値をとり得る外部制御信号SGを取得している。
【0027】
図2は、制御回路6によるスイッチングレギュレータ2の作動および停止の切り替え制御方法を説明する状態遷移図である。以下、図2を参考にして詳述する。消費電流Iが所定の閾値K未満で、かつ外部制御信号SG=0のとき、制御回路6は制御信号SSを停止に制御し、スイッチングレギュレータ2は状態1)の停止状態となる。なお、閾値Kの値は、スイッチングレギュレータ2を停止しシリーズレギュレータ5単独で作動しても支障を生じない軽負荷範囲に設定する。
【0028】
スイッチングレギュレータ2が停止している状態で、負荷制御回路92が負荷91を増加させる直前に外部制御信号SGを0から1に変更すると、制御回路6は制御信号SSを作動に制御する。これにより、スイッチングレギュレータ2は、状態1)から状態2)の制御信号作動状態に遷移する。続いて、消費電流Iが増加して閾値K以上になると、外部制御信号SGと消費電流Iの両方から二重に作動を要求され、状態2)から状態4)の二重作動状態に遷移する。通常、負荷91を停止状態または待機状態から稼働させるときには、状態1)から状態2)を経て状態4)へと一連に速やかに遷移する。状態2)と状態4)を比較すると、スイッチングレギュレータ2が作動している点は同じであり、制御回路6が内部に保持する消費電流Iの条件が異なっている。
【0029】
負荷制御回路92が負荷91を減少させるときには、先ず消費電流Iを減少させ、次いで外部制御信号SGを1から0に変更する。これに応じて、制御回路6は、消費電流Iの減少を検出して状態4)から状態2)への遷移を行い、外部制御信号SGの1から0への変化でスイッチングレギュレータ2を停止させて状態1)に戻る。通常、稼働状態の負荷91を停止または待機させるときには、状態4)から状態2)を経て状態1)へと一連に速やかに遷移する。
【0030】
また、外部制御信号SGの変化と消費電流Iの変化とが前後することも考えられる。状態1)の停止状態で、外部制御信号SG=0のまま消費電流Iが閾値K以上に増加すると、制御回路6は制御信号SSを作動に制御し、スイッチングレギュレータ2は状態1)から状態3)の重負荷作動状態に遷移する。状態3)を状態2)および状態4)と比較すると、スイッチングレギュレータ2が作動している点は同じであり、制御回路6が内部に保持する消費電流Iおよび外部制御信号SGの条件が異なっている。状態3)で消費電流Iが閾値K未満に減少すると、状態1)に戻る。状態3)で外部制御信号SGが0から1に変化すると、状態4)に遷移する。また、状態4)で消費電流Iの減少よりも先に外部制御信号SGが1から0に変化すると、状態3)に遷移する。
【0031】
次に、上述のように構成された実施形態の直流電源回路1の作用について、図3および図4を参考にして説明する。図3は、スイッチングレギュレータ2が停止しているときの直流電源回路1の各部電圧波形を示す図である。また、図4は、スイッチングレギュレータ2が作動しているときの直流電源回路1の各部電圧波形を示す図であり、(1)はバッテリ電圧VBが定格電圧Vnのとき、(2)はバッテリ電圧VBが低下した低電圧Vlowのときを示している。図3および図4において横軸は共通の時間軸であり、縦軸はバッテリ電圧VB、受け渡し部P2の電圧波形V2、受け渡し部P3の中間電圧波形V3、およびシリーズレギュレータ5の出力電圧V4である。バッテリ電圧VBは、直流電源回路1の直流入力電圧に相当し、出力電圧V4は、直流電源回路1の直流出力電圧に相当する。
【0032】
負荷91が停止状態または待機状態にあって消費電流Iが閾値Kよりも小さく、かつ、負荷制御回路92の外部制御信号SGが0のとき、スイッチングレギュレータ2は停止する。したがって、スイッチングレギュレータ2はバッテリ電圧VBをスルーさせ、図3に示されるように、電圧波形V2および中間電圧波形V3はバッテリ電圧VBに一致する。シリーズレギュレータ5にはバッテリ電圧VBが入力され、出力電圧V4(=負荷91の定格電圧VL)が出力される。このとき、スイッチングレギュレータ2が停止しているので、中間電圧波形V3にリップルやノイズは発生せず、出力電圧V4は極めて高品質になる。
【0033】
負荷制御回路92が負荷91を稼働させて、外部制御信号SGが1に変化するか、あるいは消費電流Iが閾値K以上に増加すると、スイッチングレギュレータ2は作動する。したがって、受け渡し部P2の電圧波形V2は、図4に示されるように、バッテリ電圧VBとゼロ電圧に振れる矩形波になる。また、図4の(1)と(2)とを比較すればわかるように、バッテリ電圧VBが定格電圧Vnから低電圧Vlowに低下すると、デューティ比が増加して電圧低下分を補償する。また、図は省略するが、バッテリ電圧VBが定格電圧Vnよりも上昇すると、デューティ比は減少する。いずれの場合も、受け渡し部P3の中間電圧波形V3はリップルを含んだ直流電圧波形となり、中間電圧値VMは概ね一定になる。この中間電圧波形V3がシリーズレギュレータ5に入力され、出力電圧V4(=負荷91の定格電圧VL)が出力される。このとき、中間電圧波形V3に大きなリップルやノイズが発生していても、シリーズレギュレータ5で抑制できるので、出力電圧V4は高品質になる。
【0034】
次に、実施形態の直流電源回路1の変換効率面の効果について、図5を参考にして説明する。図5は、スイッチングレギュレータ2およびシリーズレギュレータ5の変換効率を例示した図である。図中の横軸は各レギュレータ2、5の入力電圧を示し、縦軸は変換効率を示している。スイッチングレギュレータ2は、入力電圧範囲がバッテリ93の下限電圧Vminから上限電圧vmaxの間で作動し、中間電圧値VMを出力する。スイッチングレギュレータ2の変換効率η2は、図示されるように作動範囲の全域でη2=80%程度と概ね一定で高い。
【0035】
一方、シリーズレギュレータ5は、入力電圧範囲が中間電圧値VMからバッテリ電圧VBの上限電圧Vmaxの間で作動し、負荷91の定格電圧VLを出力する。シリーズレギュレータ5の変換効率η5は、入力電圧が負荷91の定格電圧VLに接近した中間電圧値VMにおいて最も高く、変換効率η5=70%程度ある。しかしながら、シリーズレギュレータ5の変換効率η5は、入力電圧の増加とともに低下し、バッテリ電圧VBの定格電圧Vnでη5=40%程度、上限電圧Vmaxでη5=25%程度まで低下する。
【0036】
本実施形態では、負荷91が増加してスイッチングレギュレータ2が作動しているときに、スイッチングレギュレータ2の変換効率η2=80%と、シリーズレギュレータ5の中間電圧値VMにおける変換効率η5=70%とを乗算した変換効率を得ることができる。これに対して、シリーズレギュレータ5単独の直流電源装置を考えた場合、その変換効率ηXは、入力電圧がバッテリ93の定格電圧VnでηX=40%程度、上限電圧VmaxでηX=25%程度となる。したがって、本実施形態によれば、総合的に極めて高い変換効率が得られる。
【0037】
また、本実施形態では、負荷91が減少してスイッチングレギュレータ2が停止しているときには、消費電流自体が小さいので、シリーズレギュレータ5に変換効率η5が低いバッテリ電圧VBを直接入力しても、消費電力の増加および発熱の問題は生じない。
【0038】
以上説明したように、本実施形態は、リップルやノイズの抑制と、変換効率の向上の両面で絶大な効果を発揮する。
【0039】
なお、実施形態で例示した負荷91の定格電圧VL、バッテリ93のバッテリ電圧VB、および直流電源回路1内の中間電圧値VMの数値例の組み合わせは、自由に設定することができる。また、制御回路6は、負荷91の消費電流Iおよび外部制御信号SGの一方のみに基づいてスイッチングレギュレータ2の作動および停止を切り替え制御するようにしてもよい。スイッチングレギュレータ2およびシリーズレギュレータ5の回路構成についても各種の応用ができ、回路基板実装以外の用途にも実施できる。本発明は、その他様々な変形や応用が可能である。
【符号の説明】
【0040】
1:直流電源回路 2:スイッチングレギュレータ 3:スイッチング部
4:平滑部 D:ダイオード L:インダクタンス C:コンデンサ
5:シリーズレギュレータ 6:制御回路 7:電流検出部
91:負荷 92:負荷制御回路 93:バッテリ 94:充電装置
VB:バッテリ電圧 Vn:定格電圧 Vmin:下限電圧 Vmax:上限電圧
P1:入力端子
P2:受け渡し部 V2:電圧波形
P3:受け渡し部 V3:中間電圧波形 VM:中間電圧値
P4:出力端子 V4:出力電圧
VL:負荷の定格電圧
I:消費電流
GND:共通接地
SG:外部制御信号 SS:制御信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変動する直流電源電圧が入力端子に入力され、前記直流電源電圧よりも小さい一定の直流出力電圧を出力端子から負荷に出力する直流電源回路であって、
前記入力端子に接続されたスイッチングレギュレータと、
前記スイッチングレギュレータと前記出力端子との間に接続されたシリーズレギュレータと、
前記負荷の消費電流および外部制御信号の少なくとも一方に基づいて前記スイッチングレギュレータの作動および停止を切り替え制御する制御回路と、
を備えることを特徴とする直流電源回路。
【請求項2】
請求項1において、
前記スイッチングレギュレータが作動しているとき、前記スイッチングレギュレータにおける電圧降下が前記シリーズレギュレータにおける電圧降下よりも大きく、
前記スイッチングレギュレータが停止すると前記直流電源電圧をスルーさせることを特徴とする直流電源回路。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記負荷を制御する負荷制御回路は、前記負荷を増加させる直前から前記負荷が大きい間は前記外部制御信号をオンし、前記負荷を減少させた直後から前記負荷が小さい間は前記外部制御信号をオフし、
前記制御回路は、前記外部制御信号がオンすると前記スイッチングレギュレータを作動させ、前記外部制御信号がオフすると前記スイッチングレギュレータを停止させることを特徴とする直流電源回路。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項において、前記制御回路は、前記負荷の前記消費電流を検出する電流検出部を有し、前記消費電流が所定の閾値以上になると前記前記スイッチングレギュレータを作動させ、前記負荷電流が所定の閾値未満になると前記前記スイッチングレギュレータを停止させることを特徴とする直流電源回路。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項において、前記負荷とともに回路基板に実装されることを特徴とする直流電源回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−130222(P2012−130222A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−281846(P2010−281846)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】