説明

直流電源装置

【課題】負荷に流れる電流を直接検出してスイッチング素子のON/OFFを制御する制御回路の耐圧に制限されることがなく、入力電圧範囲を広く取ることができる直流電源装置を提供する。
【解決手段】発光ダイオードLED1、LED2にと直列に接続され、発光ダイオードLED1、LED2に流れる電流を検出するためのLED電流検出抵抗R2と、発光ダイオードLED1、LED2を流れる電流をLED電流検出抵抗R2に生じる電圧降下で定電流制御信号電圧として検出し、当該定電流制御信号電圧号に基づいてスイッチング素子を制御する制御回路2とを備え、制御回路2のグランド電位GND2を入力電圧の基準電位V−からフローティングとすると共に、制御回路2のグランド電位GND2とLED電流検出抵抗R2の一方の端子が接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電源装置に係り、特に昇降圧型チョッパ回路を有する直流電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
直流電源装置の一形態として、入力電圧を昇圧または降圧して負荷に供給する昇降圧チョッパ回路を有するものが知られており、昇降圧型チョッパ回路を用いた直流電源装置の従来技術として、例えば、特表2009−533015号公報(特許文献1)などを挙げることができる。特許文献1に開示された昇降圧型チョッパ回路では、LED電流感知抵抗を用いてLEDに流れる電流を直接検出してスイッチング素子のON/OFFを制御する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2009−533015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の従来技術では、出力電圧を入力電圧のGNDからみた場合、入カ電圧と同等かそれ以上の電圧となり、LED電流感知抵抗をLEDのハイサイドに配置し、LEDに流れる電流の検出をハイサイド側で行うように構成されている。これにより、LEDに流れる電流を直接検出してスイッチング素子のON/OFFを制御する制御回路には、入力電圧と同じコモンモード電圧が加わるため、入カの電圧範囲が、制御回路の耐圧に依存することになってしまい、入力電圧が低電圧の範囲に限られてしまうという問題点があった。
【0005】
本発明の目的は、上記問題点に鑑みて従来技術の上記問題を解決し、制御回路の耐圧に制限されることがなく、入力電圧範囲を広く取ることができる直流電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の直流電源装置は、スイッチング素子がオンのときリアクトルにエネルギーを蓄積し、前記スイッチング素子がオフのときリアクトルに蓄積されたエネルギーを平滑コンデンサに蓄積させ、極性が反転した直流電圧を負荷に供給する昇降圧型チョッパ回路を有する直流電源装置であって、前記負荷と直列に接続され、前記負荷を流れる電流を検出するための負荷電流検出抵抗と、前記負荷を流れる電流を前記負荷電流検出抵抗に生じる電圧降下で負荷電流検出信号として検出し、当該負荷電流検出信号に基づいて前記スイッチング素子を制御する制御回路とを備え、前記制御回路のグランド電位を入力電圧の基準電位からフローティングとすると共に、前記制御回路の前記グランド電位と前記負荷電流検出抵抗の一方の端子が接続されていることを特徴とする。
また、本発明の直流電源装置は、前記負荷電流検出信号が一定となる様に制御することで、前記負荷を流れる電流を定電流制御するようにしても良い。
また、本発明の直流電源装置は、前記スイッチング素子と直列に接続され、前記スイッチング素子を流れる電流を検出するための過電流検出抵抗と、前記制御回路は、前記負荷を流れる電流を前記過電流検出抵抗に生じる電圧降下で検出し、当該検出信号に基づいて前記スイッチング素子を制御する過電流検出手段を備え、前記制御回路の前記グランド電位と前記過電流検出抵抗の一方の端子が接続されているようにしても良い。
また、本発明の直流電源装置は、前記昇降圧型チョッパ回路には、交流電源の交流電圧を全波整流して直流電圧に変換する整流器からの正弦波脈動電圧が入力され、前記制御回路は、前記リアクトルに流れる回生電流が0になったタイミングを検出する臨界電流検出手段と、前記臨界電流検出手段が前記リアクトルに流れる回生電流が0になったことを検出したタイミングを起点として所定の傾斜で上昇する電圧信号を生成し、前記臨界電流検出手段が前記リアクトルに流れる回生電流が0になったタイミングで前記電圧信号を0にリセットする三角波発生手段と、前記臨界電流検出手段が前記リアクトルに流れる回生電流が0になったタイミングを検出したとき前記スイッチング素子をONさせるゲート信号を出力し、前記三角波発生手段で生成された電圧信号が前記負荷電流検出信号を超えたとき前記ゲート信号をOFFするゲート信号出力手段とを備えているようにしても良い。
また、本発明の直流電源装置は、前記臨界電流検出手段は、前記リアクトルに流れる回生電流が0になり自由振動が開始されたときに発生する電圧が予め定めた第1の所定電圧未満になったことを検出するようにしても良い。
また、本発明の直流電源装置は、前記負荷はLED負荷であっても良い。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、負荷に流れる電流を直接検出してスイッチング素子のON/OFFを制御する制御回路のGNDをフローティングとすることで、制御回路の耐圧に制限されることがなく、入力電圧範囲を広く取ることができるという効果を奏する。また、入力電圧範囲を広く取ることができため、AC入力電圧を降圧させずに、直接スイッチングして制御することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明による実施形態の直流電源装置1の回路構成を示した図である。
【図2】図1に示す制御回路2の回路構成を示した図である。
【図3】本発明による実施形態の直流電源装置1の、交流入力電圧がピーク値の1/2の時点における回路動作波形を示した図である。
【図4】本発明による実施形態の直流電源装置1の、交流入力電圧がピーク値の時点における回路動作波形を示した図である。
【図5】本発明による実施形態の直流電源装置1の、力率改善動作を模式的に示した図である。
【図6】本発明による実施形態の直流電源装置1の、入力電圧波形と入力電流波形をシミュレーションにより示した図である。
【図7】本発明による実施形態の直流電源装置1の、入力電圧と入力電流の実測波形図である。
【図8】本発明による実施形態の直流電源装置1の、入力電圧に対する力率を実測した特性図である。
【図9】従来技術による直流電源装置の、入力電圧と入力電流の実測波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施形態)
図1に、本発明による実施形態の直流電源装置1の回路構成を、図2に、図1に示す制御回路2の回路構成をそれぞれ示す。
図1に示すように、直流電源装置1は、入力された電圧をスイッチング素子Q1でスイッチングし、スイッチング素子Q1がOFFのときにマイナスの電圧を出力する昇降圧型(極性反転型)チョッパ回路を構成している。スイッチング素子Q1がONのときON電流(図1に示す実線矢印)によってリアクトルL1にエネルギーを蓄積され、スイッチング素子Q1がOFFのときリアクトルL1に蓄積されたエネルギーが回生電流(図1に示す点線矢印)によってダイオードD2を介して平滑コンデンサC1に蓄積され、極性が反転された直流電圧が負荷(直列に接続された発光ダイオードLED1、LED2)に供給される。
【0010】
出力の制御は、負荷(LED1、LED2)に流れる電流の信号を検出し、この検出信号に基づき定電流制御を行う。負荷に流れる電流は、負荷(LED1、LED2)に直列接続されたLED電流検出抵抗R2に生じる電圧降下として検出され、この検出信号が定電流制御信号電圧となる。LED電流検出抵抗R2は、負荷に接続された一方の端子が制御回路2のIsen(フィードバック電流検出)端子に接続され、フローティングとされた制御回路2のGND(グランド)端子にLED電流検出抵抗R2の他方の端子が接続されている。これにより、制御回路2の耐圧に制限されることがなく、入力電圧範囲を広く取ることができる。
【0011】
一方、ダイオードD3を介して入力した電圧からリアクトルL1に流れる電流IL1の臨界電流のタイミング(回生電流が0Aになるタイミング)を検出し、スイッチング素子Q1のゲート信号のON信号開始点を決めるパルスを生成する。このパルスを起点として三角波を生成し、この三角波の電圧が上記定電流制御信号電圧に達する期間までスイッチング素子Q1をONし、三角波の電圧が上記定電流制御信号電圧に達した時点でスイッチング素子Q1をOFFし、次の臨界電流のパルス発生タイミングで三角波をリセットする。
【0012】
このように、スイッチング素子Q1をON/OFFして出力電流を制御すると、スイッチング素子Q1をONするパルス幅は定電流制御信号電圧に応じた一定のパルス幅となり、しかも臨界動作でスイッチングさせることができる。これにより、入力電流波形が正弦波状に近似され、後述の図5のように力率改善を行うことが可能となる。
次に、直流電源装置1の回路構成、及びその回路動作について更に詳述する。
【0013】
図1及び図2を参照して、直流電源装置1の回路構成を説明する。
直流電源装置1の入力端子V+、V−には、ダイオードがブリッジ構成された整流回路DBの整流出力正極端子(電圧Vin)、整流出力負極端子(電圧V0)がそれぞれ接続されている。整流回路DBの交流入力端子には、ACin1とACin2には商用交流電源AC1が接続され、商用交流電源AC1から入力された交流電圧が全波整流されて整流回路DBから出力される。直流電源装置1の入力端子V+、すなわち整流回路DBの整流出力正極端子(電圧Vin)にはスイッチング素子Q1のドレイン端子が接続され、スイッチング素子Q1のソース端子にはスイッチング素子Q1を流れる電流を検出するための過電流検出抵抗R1の一方の端子が接続されている。また、過電流検出抵抗R1の他方の端子は、リアクトルL1の一方の端子に接続され、リアクトルL1の他方の端子は、入力電圧の基準電位となる直流電源装置1の入力端子V−、すなわち整流回路DBの整流出力負極端子(電圧V0)に接続されている。これにより、スイッチング素子Q1がONのとき図1に実線矢印で示すON電流が形成される。
【0014】
一方、負荷は、直列に接続された発光ダイオードLED1、LED2で構成され、発光ダイオードLED1のアノード端子と発光ダイオードLED2のカソード端子が接続されている。リアクトルL1の他方の端子と整流回路DBの整流出力負極端子(電圧V0)が接続された接続点にはダイオードD2のアノード端子が接続され、ダイオードD2のカソード端子は、発光ダイオードLED2のアノード端子に接続されている。また、発光ダイオードLED1のカソード端子は、LED電流検出抵抗R2の一方の端子に接続され、LED電流検出抵抗R2の他方の端子はアクトルL1の一方の端子と過電流検出抵抗R1の他方の端子が接続された接続点に接続されている。さらに、ダイオードD2のカソード端子と発光ダイオードLED2のアノード端子が接続された接続点と、LED電流検出抵抗R2の他方の端子とアクトルL1の一方の端子と過電流検出抵抗R1の他方の端子が接続された接続点との間には、直列に接続された発光ダイオードLED1、LED2と並列に平滑コンデンサC1が接続されている。これにより、スイッチング素子Q1がOFFのとき図1に点線矢印で示す回生電流が形成される。
【0015】
また、発光ダイオードLED1のアノード端子と発光ダイオードLED2のカソード端子が接続された接続点にはダイオードD1のアノード端子が接続され、ダイオードD1のカソード端子は制御回路2のVcc(電源入力)端子とコンデンサC2の一方の端子に接続され、コンデンサC2の他方の端子はLED電流検出抵抗R2の他方の端子と過電流検出抵抗R1の他方の端子が接続された接続点に接続されている。これにより、直流電源装置1を制御する制御回路2に電源が供給される。
【0016】
制御回路2のST(起動電流入力)端子には、整流回路DBの整流出力正極端子とスイッチング素子Q1のドレイン端子が接続された接続点が接続されている。これにより、制御回路2には、整流回路DBの整流出力正極端子の電圧Vinが入力される。制御回路2のGND(グランド)端子には、LED電流検出抵抗R2の他方の端子と過電流検出抵抗R1の他方の端子が接続された接続点が接続され、また、制御回路2のIsen(フィードバック電流検出)端子には、発光ダイオードLED1のカソード端子とLED電流検出抵抗R2の一方の端子が接続された接続点が接続され、また、制御回路2のOCP(過電流保護)端子には、スイッチング素子Q1のソース端子と過電流検出抵抗R1の一方の端子が接続された接続点が接続されている。これにより、制御回路2には、LED電流検出抵抗R2の両端電圧と、過電流検出抵抗R1の両端電圧とが入力される。制御回路2のCOMP(フィードバック位相補正)端子には、ダイオードD3のカソード端子が接続され、ダイオードD3のアノード端子はリアクトルL1の他方の端子とダイオードD2のアノード端子が接続された接続点に接続されている。これにより、制御回路2には、リアクトルL1の他方の端子とダイオードD2のアノード端子が接続された接続点の電圧がダイオードD3を介して入力され、リアクトルL1に流れる電流IL1の臨界電流のタイミング(回生電流が0Aになるタイミング)が検出される。また、制御回路2のDrv(ドライブ)端子には、スイッチング素子Q1のゲート端子が接続され、制御回路2からスイッチング素子Q1のゲート端子に、ON/OFF信号が出力される。
【0017】
制御回路2は、図2を参照すると、ワンショット(ONE SHOT)回路3、起動回路4、Reg(内部レギュレータ)5、コンパレータCP1、CP2、CP3、オペアンプOP1、トランスコンダクタンスアンプ(Operational Transconductance Amplifier)OTA1、電流源回路CC1、バッファ回路BF、コンデンサCt、Cfb、基準電圧Vref1、Vref2、Vref3、Vref4などからなっている。
【0018】
制御回路2のST(起動電流入力)端子は制御回路2の起動回路4に接続されており、制御回路2のST(起動電流入力)端子から入力された整流回路DBの整流出力正極端子の電圧Vinは制御回路2の起動回路4に入力され、起動回路4は直流電源装置1に商用交流電源AC1が投入された直後に制御回路2を起動するようになっている。
【0019】
制御回路2のCOMP(フィードバック位相補正)端子はコンパレータCP2の反転入力端子に接続されており、コンパレータCP2の非反転入力端子は基準電圧Vref3の正極端子に接続されている。また、コンパレータCP2の出力端子はワンショット回路3の入力端子に接続されている。ワンショット回路3の出力端子は、コンパレータCP1の反転入力端子、コンデンサCtの一方の端子、及び電流源回路CC1の一方の端子である電流出力端子が接続された接続点に接続されている。制御回路2のVcc(電源入力)端子は制御電源回路であるReg5の入力端子に接続されており、電流源回路CC1の他方の端子はReg5の出力端子に接続されている。
【0020】
制御回路2のGND(グランド)端子は、基準電圧Vref1、Vref2、Vref3、Vref4の負極端子と接続されて制御回路2のグランド電位GND2となっている。このグランド電位GND2の電位はLED電流検出抵抗R2の他方の端子と過電流検出抵抗R1の他方の端子が接続された接続点の電位であり、整流回路DBの整流出力負極端子が接続されたGND1ラインに対し電位がフローティングとなっている。グランド電位GND2にはコンデンサCtの他方の端子、コンデンサCfbの他方の端子も接続されている。
【0021】
制御回路2のIsen(フィードバック電流検出)端子はオペアンプOP1の反転入力端子が接続され、オペアンプOP1の非反転入力端子は基準電圧Vref2の正極端子に接続され、基準電圧Vref2の負極端子はグランド電位GND2に接続されている。オペアンプOP1の出力端子はトランスコンダクタンスアンプOTA1の反転入力端子に接続され、トランスコンダクタンスアンプOTA1の非反転入力端子は基準電圧Vref1の正極端子に接続され、基準電圧Vref1の負極端子はグランド電位GND2に接続されている。
【0022】
トランスコンダクタンスアンプOTA1の出力端子はコンデンサCfbの一方の端子に接続され、コンデンサCfbの他方の端子はグランド電位GND2に接続されている。トランスコンダクタンスアンプOTA1は非反転入力端子に入力された基準電圧Vref1と反転入力端子に入力されたオペアンプOP1の出力端子からの電圧との差電圧を電流に変換して増幅し出力する。したがって、コンデンサCfbはトランスコンダクタンスアンプOTA1からの出力電流により充放電される。
【0023】
トランスコンダクタンスアンプOTA1の出力端子とコンデンサCfbの一方の端子が接続された接続点は、コンパレータCP1の非反転入力端子に接続されている。コンパレータCP1の出力端子はバッファ回路BFの入力端子に接続され、バッファ回路BFの出力端子は制御回路2のDrv(ドライブ)端子を介してスイッチング素子Q1のゲート端子に接続されている。
【0024】
制御回路2のOCP(過電流保護)端子はコンパレータCP3の反転入力端子に接続されており、コンパレータCP3の非反転入力端子は基準電圧Vref4の正極端子に接続され、基準電圧Vref4の負極端子はグランド電位GND2に接続されている。また、コンパレータCP3の出力端子はコンパレータCP1の非反転入力端子に接続されている。
【0025】
次に、直流電源装置1の回路動作を、図3、図4を参照して説明する。図3は、整流回路DBの整流出力正極端子から出力される正弦波脈動電圧のピーク値の1/2の値の点における動作波形を示している。また、図4は、整流回路DBの整流出力正極端子から出力される正弦波脈動電圧のピーク値の点における動作波形を示している。
【0026】
図3、図4における各波形は、上から、リアクトルL1に流れる電流波形IL1、過電流検出抵抗R1に発生する電圧波形VR1、LED電流検出抵抗R2に発生する電圧波形VR2、コンデンサCtの電圧波形Vct、コンデンサCfbの電圧波形Vcfb、ワンショット回路3の出力波形、バッファ回路BFの出力波形を示している。
【0027】
リアクトルL1に流れる電流IL1は、スイッチング素子Q1がON(バッファ回路BFの出力がH)のときリアクトルL1に整流回路DBの正弦波脈動電圧の瞬時値が印加されるので、その電圧に略比例した傾斜で増加する(ON電流という)。また、スイッチング素子がOFFするとリアクトルL1に蓄積されたエネルギーは、リアクトルL1〜ダイオードD2〜平滑コンデンサC1〜リアクトルL1の閉回路で放電されるので、平滑コンデンサC1は充電され、リアクトルL1に流れる電流IL1を減少させる(回生電流という)。したがって、リアクトルL1に流れる電流IL1は、図3、図4に示されるように、三角波状の電流が流れる。時刻t1、t3、・・・、t11、t21、t23、t25で示した各タイミングは、回生電流が0Aになって、自由振動が開始するタイミングである(臨界電流という)。後述するように、時刻t1、t3、・・・t11、t21、t23、t25の各タイミングでは臨界電流で自由振動が開始し、このときの自由振動による基準電圧Vref3を超える電圧を検出して、内部で生成している三角波(コンデンサCtの電圧Vct)をリセットする。このリセット周期がスイッチング素子Q1のON/OFF周期となる。
【0028】
発光ダイオードLED1のカソード端子とLED電流検出抵抗R2の一方の端子が接続された接続点の電圧、すなわちLED電流検出抵抗R2により検出された電圧VR2(グランド電位GND2に対する電圧)は、オペアンプOP1の反転入力端子に接続され、オペアンプOP1の非反転入力端子には、基準電圧Vref2が接続されている。オペアンプOP1の反転入力端子に入力された電圧VR2と非反転入力端子に入力された基準電圧Vref2が比較され、オペアンプOP1はこれらの差分を増幅してトランスコンダクタンスアンプOTA1の反転入力端子に出力する。
【0029】
トランスコンダクタンスアンプOTA1の非反転入力端子には、基準電圧Vref1が接続され、非反転入力端子の入力電圧と基準電圧Vref1とを比較して、その電圧の差分を増幅し、かつ、電圧信号から電流信号に変換して出力する。ここで、トランスコンダクタンスアンプOTA1の出力端子にはコンデンサCfbとコンパレータCP1の非反転入力端子が接続され、トランスコンダクタンスアンプOTA1の出力電流はコンデンサCfbの電荷を充放電する。これにより、トランスコンダクタンスアンプOTA1の出力からコンパレータCP1の非反転入力端子に入力される信号は電圧信号に置き換えられる。
【0030】
コンパレータCP1の反転入力端子は、定電流回路CC1の出力端子とコンデンサCtの一方の端子とワンショット回路3の出力端子とが接続された接続点に接続されている。ここで、定電流回路CC1とコンデンサCtとワンショット回路3は、三角波発振器を構成している。すなわち、定電流回路CC1でコンデンサCtを一定電流で充電することで三角波波形の傾斜を決定し、ワンショット回路3は三角波発振のリセットタイミングを決定するパルス信号を出力する。定電流回路CC1とコンデンサCtとワンショット回路3で構成される三角波発振の出力波形は、図3、図4にコンデンサCtの電圧Vctとして示されている。
【0031】
一方、リアクトルL1の他方の端子とダイオードD2のアノード端子が接続された接続点の電圧(グランド電位GND2に対する電圧)がダイオードD3及び制御回路2のCOMP(フィードバック位相補正)端子を介してコンパレータCP2の反転入力端子に入力され、基準電位Vref3の電圧がコンパレータCP2の非反転入力端子に入力されている。スイッチング素子Q1がOFFした後のリアクトルL1の電流IL1の回生が終了した臨界電流時点で、自由振動が開始され、リアクトルL1の他方の端子とダイオードD2のアノード端子が接続された接続点に、制御回路2のグランド電位GND2に対して基準電圧Vref3未満の電圧が生じる。この自由振動の電圧が基準電位Vref3未満になると、コンパレータCP2の出力は、反転してHレベル信号をワンショット回路3へ出力する。ワンショット回路3は、コンパレータCP2からこのHレベル信号が入力されたときパルス信号を出力する(図3、図4のワンショット回路3の出力信号参照)。このパルス信号によりコンデンサCtの電荷は急速放電される。すなわち、ワンショット回路3は、リアクトルL1に流れる電流IL1の臨界電流のタイミングt1、t3、・・・、t11、t21、t23、t25の各タイミングにてパルス信号を出力する。このパルス信号はスイッチング素子Q1のON/OFF周期における周期開始タイミングを決定する。
【0032】
バッファ回路BFの出力、言い換えるとスイッチング素子Q1のONパルス信号は、コンパレータCP1により決定される。図3、図4に示すように、コンパレータCP1は、反転入力端子の三角波信号Vctと、非反転入力端子のVcfb端子電圧を比較し、Vcfb端子電圧よりも三角波信号Vctが低い期間(例えば、図3、図4に示すt1〜t2、t21〜t22などのTon期間)にONパルス信号をバッファ回路BFから出力する。また、OFF期間は、前述したようにリアクトルL1の電流IL1の回生が終了した時点までとなり、図3、図4に示すように、コンデンサCtの三角波信号のピーク電圧は固定されず、次のワンショット回路3からのパルス信号まで上昇することになる。図3、図4を比較すると、バッファ回路BFのToff期間が図3に対し図4で長くなっている。このように、三角波発振の周波数は固定されず、商用交流電源AC1から入力された交流電圧を全波整流した脈動電圧により変化する。
【0033】
但し、バッファ回路BFのTon期間は、前述の脈動電圧に左右されず略等しいパルス幅となっている。これは、負荷が定電流制御されているため、LED電流検出抵抗R2の端子間の電圧、すなわちオペアンプOP1の反転入力端子の入力電圧の変化が少ないことによる。入力電圧の瞬時値が脈動電圧ピーク値の1/2の場合を示した図3のVR2と、入力電圧の瞬時値が脈動電圧ピーク値の場合を示した図4のVR2の電圧は、等しい電圧である。これにより、図3、図4に示すように、商用交流電源AC1の周波数の半周期の期間におけるONパルス幅は位相の異なる点であっても略一定となり、入力電圧波形に近似した入力電流が流れることになる。
【0034】
また、スイッチング素子Q1に流れる電流は、負荷に直列接続された過電流検出抵抗R1に生じる電圧降下として検出し、スイッチング素子Q1のソース端子と過電流検出抵抗R1の一方の端子が接続された接続点の電圧、すなわち過電流検出抵抗R1により検出された電圧VR1(グランド電位GND2に対する電圧)が過電流検出信号電圧として制御回路2のOCP(過電流保護)端子を介してコンパレータCP3の反転入力端子に入力され、基準電位Vref4の電圧がコンパレータCP3の非反転入力端子に入力されている。基準電位Vref4は、過電流検出のためのしきい電圧であり、過電流検出信号電圧が基準電位Vref4を越えると、コンパレータCP3の出力は、反転してLレベル信号を出力する。コンパレータCP3の出力端子にはコンパレータCP1の非反転入力端子が接続され、コンパレータCP1の非反転入力端子にコンパレータCP3からこのLレベル信号が入力されると、コンデンサCfbの充電電圧を放電し、コンパレータCP1はバッファ回路BFから出力されているONパルス信号を直ちにOFFさせる。
【0035】
図5の上側の図は、商用交流電源AC1の周波数の半周期の期間における動作を、実際のスイッチング回数(例えば20kHz)より極端に少なくして(図5ではVinの半周期で9回のスイッチング回数)、模式的に分かりやすく示したものである。商用交流電源AC1ら入力された交流電圧を全波整流した脈動電圧がVinとして示されている。また、脈動電圧Vinの内側に三角波が示されているのはリアクトルL1の電流を示している。三角波のTonとして灰色に塗り潰した部分はON電流で、その後に続くToffとして示した部分は回生電流を示している。図5の下側の図は、上側の図の一部を拡大して示した図である。回生電流で示したリアクトルL1の電流IL1が0Aに達した臨界電流直後は自由振動電流が発生する。
【0036】
臨界電流を起点としてスイッチング素子Q1がONして、リアクトルL1に脈動電圧Vinが印加されると、リアクトルL1の電流はVin/Lの傾斜でVin・Ton/Lの値まで増加する(LはリアクトルL1のインダクタンス値)。このとき、リアクトルL1のインダクタンス値Lは一定値で、また期間Tonが一定なので、ON電流における電流のピーク値はその時点の脈動電圧Vinの瞬時値に比例することになる。また、回生電流では、スイッチング素子Q1がOFFする代わりにダイオードD2がONしてリアクトルL1に誘導起電力による電流が流れる。このとき、リアクトルL1には平滑コンデンサC1の電圧(出力電圧Vo)が印加される。したがってリアクトルL1の電流はVo/Lの傾斜で0A(臨界電流)まで減少する(Toffの期間)。このとき、臨界電流を検出し、この時点を起点に再びスイッチング素子Q1をONすることを繰り返せば、リアクトルL1に流れる電流のピーク値が脈動電圧Vinの瞬時値に追従して変化させることができるようになり、力率改善が行える。
【0037】
図6は、本実施形態の直流電源装置1の入力電圧と入力電流の波形をシミュレーションにより得た波形を示している。シミュレーション条件は、スイッチング素子Q1のON時間Tonを一定とし、臨界電流を起点にスイッチング素子Q1のON/OFFを繰り返すものとしている。したがって、オン・オフ電流には次の関係式が成り立つ。
Vin・Ton/L=Vo・Toff/L
このシミュレーション結果をみると、直流電源装置の入力側の電圧と電流は正弦波形となっている。つまり、平滑コンデンサC1を充放電する電流は正弦波になる。そして、直流電源装置の出力電流は一定の定電流波形となる。すなわち、LED電流検出抵抗R2で検出された電圧をもって定電流制御することは、一定の負荷抵抗における出力側の平滑コンデンサC1の電圧を検出しているのと等価になっていることを意味している。
【0038】
図7は直流電源装置1に接続された商用交流電源AC1の交流電圧と交流電流の実測波形である。また、図8は入力電圧を80Vから240Vまで変化させたときの力率の実測値を示している。実測された力率は0.98に達している。これはJISC61000−3−2の照明器具に関する規格であるクラスCを満足している。
【0039】
図9は、コンデンサインプット型の従来技術による直流電源装置の入力電圧と入力電流の波形を参考に示したもので、力率は約0.6である。従来技術では正弦波交流電圧のピーク付近のみにおいて平滑用コンデンサに電流が流れるので、高調波が多く含まれ、力率が悪化したり、高調波により周辺に悪影響を与えたりする。これに対し本発明による実施形態の直流電源装置1によれば、図7に示したように、入力電流が位相の広い範囲で流れ、力率が改善されていることが分かる。
【0040】
本発明の上記実施形態では、発光ダイオードLED1、LED2に流れる電流をLED電流検出抵抗R2によって直接検出してスイッチング素子Q1のON/OFFを制御する制御回路2のグランド電位を入力電圧の基準電位に対してフローティングとすることで、制御回路2の耐圧に制限されることがなく、入力電圧範囲を広く取ることができるという効果を奏する。さらに、入力電圧範囲を広く取ることができため、AC入力電圧を降圧させずに、直接スイッチングして制御することも可能となる。
また、本実施形態では、昇降型チョッパ回路を採用しているため、スイッチング素子Q1が破損しても発光ダイオードLED1、LED2に直接電圧が印加されることがなく安全である。
また、本実施形態では、AC入力電圧を全波整流した電圧を平滑せずに、直接スイッチングして制御することで、LED電流を安定に流すと共に、交流入力電カの力率改善を同時に行うことが可能になる。
また、本実施形態では、LED照明装置などを負荷とする直流電源装置1を、定電流制御方式の力率改善機能を有する昇降型チョッパ回路単体で提供することができる。したがって、従来技術のように力率改善回路とDC−DCコンバータとを組み合わせることなく、或いは力率改善回路の制御部に乗算器を用いることなく昇降型チョッパ回路単体で力率改善が可能になるので、部品点数を大幅に減らし、小型・安価で総合効率を向上し、信頼性の高い電源装置を提供することが可能となる。
また、本実施形態では、AC入力、全波整流(平滑コンデンサレス)と昇降圧型チョッパ回路との組み合わせで直流電源装置1を構成することにより、突入電流防止回路などが不要になり、小型・安価な直流電源装置を提供できる。
また、LED電流検出抵抗R2によって発光ダイオードLED1、LED2に流れる電流を検出し、この検出信号に基づき制御するため、直流電源装置1の出力は定電流制御となる。この定電流制御により負荷電流を一定に制御することができるので、LED負荷にも対応することができる。
【0041】
以上、本発明を具体的な実施形態で説明したが、上記実施形態は一例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更して実施できることは言うまでも無い。
【符号の説明】
【0042】
1・・・直流電源装置
2・・・制御回路
3・・・ワンショット回路
4・・・起動回路
Q1・・・スイッチング素子
R1・・・過電流検出抵抗
R2・・・LED電流検出抵抗
C1・・・平滑コンデンサ
Ct、Cfb・・・コンデンサ
D1、D2、D3・・・ダイオード
L1・・・リアクトル
DB・・・整流回路
AC1・・・商用交流電源
ACin1、ACin2・・・入力端子
Vin・・・整流回路DBの整流回路正極端子の電圧(脈動電圧)
V0・・・整流回路DBの整流回路負極端子の電圧
OP1、OP2・・・オペアンプ
CP1、CP2、CP3・・・コンパレータ
OTA1・・・トランスコンダクタンスアンプ
CC1・・・電流源回路
LED1、LED2・・・発光ダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング素子がオンのときリアクトルにエネルギーを蓄積し、前記スイッチング素子がオフのときリアクトルに蓄積されたエネルギーを平滑コンデンサに蓄積させ、極性が反転した直流電圧を負荷に供給する昇降圧型チョッパ回路を有する直流電源装置であって、
前記負荷と直列に接続され、前記負荷を流れる電流を検出するための負荷電流検出抵抗と、
前記負荷を流れる電流を前記負荷電流検出抵抗に生じる電圧降下で負荷電流検出信号として検出し、当該負荷電流検出信号に基づいて前記スイッチング素子を制御する制御回路とを備え、
前記制御回路のグランド電位を入力電圧の基準電位からフローティングとすると共に、前記制御回路の前記グランド電位と前記負荷電流検出抵抗の一方の端子が接続されていることを特徴とする直流電源装置。
【請求項2】
前記負荷電流検出信号が一定となる様に制御することで、前記負荷を流れる電流を定電流制御することを特徴とする請求項1記載の直流電源装置。
【請求項3】
前記スイッチング素子と直列に接続され、前記スイッチング素子を流れる電流を検出するための過電流検出抵抗と、
前記制御回路は、前記負荷を流れる電流を前記過電流検出抵抗に生じる電圧降下で検出し、当該検出信号に基づいて前記スイッチング素子を制御する過電流検出手段を備え、
前記制御回路の前記グランド電位と前記過電流検出抵抗の一方の端子が接続されていることを特徴とする請求項1又は2記載の直流電源装置。
【請求項4】
前記昇降圧型チョッパ回路には、交流電源の交流電圧を全波整流して直流電圧に変換する整流器からの正弦波脈動電圧が入力され、
前記制御回路は、前記リアクトルに流れる回生電流が0になったタイミングを検出する臨界電流検出手段と、
前記臨界電流検出手段が前記リアクトルに流れる回生電流が0になったことを検出したタイミングを起点として所定の傾斜で上昇する電圧信号を生成し、前記臨界電流検出手段が前記リアクトルに流れる回生電流が0になったタイミングで前記電圧信号を0にリセットする三角波発生手段と、
前記臨界電流検出手段が前記リアクトルに流れる回生電流が0になったタイミングを検出したとき前記スイッチング素子をONさせるゲート信号を出力し、前記三角波発生手段で生成された電圧信号が前記負荷電流検出信号を超えたとき前記ゲート信号をOFFするゲート信号出力手段とを備えていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の直流電源装置。
【請求項5】
前記臨界電流検出手段は、前記リアクトルに流れる回生電流が0になり自由振動が開始されたときに発生する電圧が予め定めた第1の所定電圧未満になったことを検出することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の直流電源装置。
【請求項6】
前記負荷はLED負荷であることを特徴とする請求項請求項1乃至5のいずれかに記載の直流電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−70556(P2012−70556A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213872(P2010−213872)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000106276)サンケン電気株式会社 (982)
【Fターム(参考)】