説明

直角位相低減バネを有するMEMSジャイロ

【課題】所望の共振モードおよび一貫して低い直角位相誤差を維持する、直角位相低減バネを有するMEMSジャイロを提供する。
【解決手段】曲線および直線区画、共通半径に対するバネ要素固定点の配向、特定の軸に対するバネ要素セグメントの配向、該共通半径に対するバネ要素の長さのバランス、および該共通半径に対する質量バランスを有するバネ要素を、望ましくない面外運動を軽減するために使用することができる。該バネセットは、面運動を提供し、同時に、望ましくない面外運動を低減し、MEMSデバイスを、該バネ要素のプロセス誘発エッチング角度ばらつきに対し実質的に鈍感にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本発明は、微小電気機械システム(MEMS)デバイスのためのバネセット構成に関し、より具体的には、MEMSジャイロのためのバネセット構成に関する。
【背景技術】
【0002】
航空宇宙用途等におけるナビゲーションガイダンスを提供するための様々なジャイロスコープデバイスが知られている。微小電気機械システムジャイロスコープ(以後、MEMSジャイロ)は、小型であり、かつ製造費が比較的安価であることで知られている。MEMSジャイロの小型性および低費用は、航空宇宙用途に加えて、例えば、画像安定化および入力デバイスのための運動感知を含む、様々な他の用途に好適である。
【0003】
ジャイロは、質量を移動させることによって動作する。例えば、質量が回転基準座標系内に位置する際、これは、公式:
c = 2mv × Ω
で計算されるコリオリの力に従い、式中、Fcは、コリオリの力であり、mは、移動体の質量であり、vは、移動体の速度ベクトルであり、Ωは、移動体の角速度ベクトルである。従来の回転質量ジャイロは、高速で回転することによって、大きいコリオリの力を生み出す。MEMSジャイロは、典型的に、それらが継続して回転することができる軸受を有さない。代わりに、MEMS微細構造は、質量を振動させることによって運動を作り出す。質量が固有振動数で振動される際、最小の励起で大きい振幅を達成することができる。回転基準座標系内でこの駆動モードが励起される際、結果としてもたらされるコリオリの力は、上記の公式の速度および角速度ベクトルのクロス乗積のため、駆動モード方向に対して垂直となる。基準座標系の回転レートを判定するために、垂直方向のこの運動が感知される。質量は、その駆動共振振動数で駆動され、したがって、感知される運動もまた、同一の振動数で、しかし直交方向に振動する。微細構造が、感知される運動固有振動数が駆動振動数に近くなるように設計される場合、結果としてもたらされる運動は、動的に得られる。この動的利得(Q)の大きさは、
Q = ωdrive / Δω
で記述することができ、式中、ωdriveは、駆動振動数であり、Δωは、駆動モードと感知されるモードとの間の振動数の差である。運動は、容量的に感知および駆動することができる。
【0004】
Δωは、共振ジャイロの主要パラメータである。Δωの値がより小さいと、利得はより大きくなる。しかし、この利得の増加は、検出することができる回転帯域幅の減少という形の犠牲を伴う。Δωは、感知される振動数と駆動振動数との間の差であるため、これらの公称振動数における小さな偏差は、Δωに比較的大きい変動を生じる可能性がある。したがって、プロセス変動が、確実に、感知される振動数および駆動振動数の両方に同一または同様の量の影響を及ぼすように考慮しなければならない。
【0005】
そのようなMEMSジャイロの典型的な例には、面内で駆動され、z軸を中心に振動する、微細構造が挙げられる。基準座標系がx軸またはy軸を中心に回転される場合、それぞれy軸またはx軸を中心とするコリオリの運動を生じる。そのようなジャイロは、1つの軸のみ、例えば、x軸を中心とする基準座標系回転を感知するように最適化することができる。これは、質量の大部分を、x軸の近く、かつy軸から可能な限り遠くに定置することによって達成される。これは、x軸を中心とする慣性モーメントを最小化し、y軸を中心とする慣性モーメントを最大化する。これはまた、最低共振モードを所望のy軸回転にする。静電容量が変更される際、電荷増幅器を用いて電圧に変換することができる電流が生成されるように、反対の極性(高バイアスおよび低バイアス)を有する電極が、y軸の片側の微細構造の下に定置される。微細構造がx軸を中心に回転する場合、両方の静電容量が同等に変化するため、正味電流は生成されない。
【0006】
理想的な動作では、ジャイロが駆動される際、駆動モータの端部の点「p」は、y方向に前後に移動する。基準座標系が回転していない場合、点pは、y方向にのみ移動し、z方向には移動しない。基準座標系がx軸を中心に回転する際、上記のFcを計算するための公式に従って、z方向の速度に比例するコリオリの力が生成される。生成される運動は、コリオリの力に比例する。
【0007】
点pが、その駆動モードでz方向に移動する際、直角位相運動が生成される。これは、レート回転感知信号と位相が90度ずれた駆動運動をもたらす。ジャイロからの信号は、駆動振動数で、所望の回転レート信号および直角位相の両方からの位相成分を有する、正弦波である。信号の2つの位相は、復調回路によって分離される。復調回路は、同相レート信号の平均振幅、ならびに位相がずれた直角位相信号を含む、出力信号を提供する。同相レート信号は、ジャイロが感知するように設計される、所望の出力信号である。
【0008】
望ましくない直角位相信号が余りに大きい場合、電荷増幅器が切り取る可能性があり、所望のレート信号のいずれかの情報がそれと共に切り取られる。所望のレート信号へのこの直角位相誤差の影響を低減するために、電気的軽減回路が利用されてきた。典型的な直角位相誤差軽減回路は、高バイアス電圧および低バイアス電圧の両方を補償電極に適用することによって機能する。これは、望ましくない直角位相と同一の位相を有する面内駆動運動を伴う電流を生成する。補償電圧バイアスを適用することによって、直角位相軽減回路は、望ましくない直角位相信号を最小化することができる。望ましくない直角位相信号を最小化するために必要とされる補償電圧バイアスの量は、微細構造が面外にどれだけ遠く傾いているかの指標である。設計改善は、補償電圧がどれだけ低減されるかによって測定することができる。直角位相誤差軽減回路は、平均電圧によって制限される。直角位相誤差が、直角位相誤差軽減回路を用いて補正することができないほど大きくなることは珍しくない。いくつかのジャイロ設計は、より多くの電流を生成することができ、かつより大きい直角位相誤差信号を最小化することができるように、より大きい補償電極を有する。より大きい補償電圧は、デバイスに許容不可能な雑音レベルをもたらす場合がある。電気的手段によって望ましくない直角位相を最小化することは、微細構造を使用可能にするが、アラン分散および温度感度等の高レベルの性能特性は、それらが補償電圧レベルと相関されてきたため、恐らく微細構造が面外に移動することにより、損なわれる可能性がある。
【0009】
直角位相誤差の主な原因は、微細構造構成要素における、および特にバネにおけるエッチング角度のばらつきである。理想的な直交バネは、それが押される方向に移動するが、角度がついた中立軸を作り出すエッチング角度(例えば、平行四辺形の断面)、すなわち、ある程度の傾斜が存在する場合、バネはまた、押し方向に対する面外にも移動する。
【0010】
深堀り反応性イオンエッチング(DRIE)ツールは、MEMSデバイスを構築するのに典型的に使用される、最先端のツールである。DRIEツールは、シリコンを垂直にエッチングするために、指向性プラズマ中で化学エッチングを使用する。これらのツールは、プラズマのエッジ効果により、半径中心から縁部にエッチング角度のばらつきを有する可能性がある。エッチング角度の配向は、ウェハ上のダイが位置する場所に依存し得、最も直線的な(最も傾斜していない)縁部は、ウェハの相関部分内にのみ作り出される。
【0011】
駆動モードは、エッチング角度の配向および大きさの両方の影響を受ける。エッチング角度方向がバネ方向と直交する際、運動の面外成分が最大となる。エッチング角度方向がバネ方向と同一である際、影響は小さい。ジャイロにy方向のエッチング角度が存在する際、バネ構成要素によって、x方向の面外成分が生成され、これは、y軸を中心とする回転を生じる。y軸におけるエッチング角度については、それらがx軸を中心とした面外運動を生成するという点において、この逆が真である。上述されるように、y軸を中心とする面外運動のみが、信号、したがって直角位相を作り出す。
【0012】
直角位相変位の大きさは、直角位相モードおよび駆動モードの固有振動数の差の影響を受ける。感知されるモードが駆動モードに近いことによってジャイロ出力が動的に得られるのと同様に、また、直角位相運動も得られる。X方向エッチング角度は、x軸を中心とする面外運動を生じる。このモードは、駆動振動数から遠いため、それ程動的利得は存在しない。この運動は、面外コンデンサが同等に変化するため、電流を生成しない。しかしながら、y方向エッチング角度は、y軸を中心とする面外運動を生じる。このモードは、所望のコリオリの運動を増幅するために必要とされるため、駆動モードに意図的に近い。結果として、y軸を中心とする直角位相運動は、その動的利得(Q)によって増幅され、その運動は、電気的直角位相信号を作り出す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そのような従来の方法およびシステムは、それらが意図される目的を満たすと考えられてきた。しかしながら、依然として、当該技術分野において、プロセス変動によるエッチング角度誤差(または不正確さ)に対する感度を低減することを可能にする、MEMSデバイス上、および特にMEMSジャイロ上のバネセット構成の必要性が存在する。また、当該技術分野において、作製および使用が容易なMEMSデバイスならびにMEMSジャイロの必要性も依然として存在する。本発明は、これらの問題の解決策を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
対象の発明は、MEMSデバイス、および特に回転を感知するためのMEMSジャイロのための、新しく、かつ有用なバネセット構成を目的とする。MEMSジャイロは、直交するx軸、y軸、およびz軸を画定する、駆動モータを含む。特定の実施形態では、駆動モータは、浮遊駆動質量を、x軸およびy軸と実質的に同一面内の振動運動を伴って、z軸を中心に振動させるように構成される。複数の駆動バネは、浮遊駆動質量を浮遊駆動質量と同心の中間浮遊質量に接続する。各駆動バネは、第1の固定点で中間浮遊質量に固定され、第2の固定点で浮遊駆動質量に固定される、バネ要素を有する。第1および第2の固定点は、z軸から出ている、それぞれの軸外共通半径上に位置し、共通半径が、x軸またはy軸に沿って配向されていないことを意味する。
【0015】
特定の実施形態では、MEMSジャイロは、下に横たわる基材に接続される、台座質量をさらに含む。台座質量および中間浮遊質量は、複数の固定バネによって接続される。各固定バネは、第1の固定点で中間浮遊質量に固定され、第2の固定点で台座質量に固定される、バネ要素を有する。また、各固定バネの第1および第2の固定点のうちの少なくとも1つは、駆動バネのそれぞれの第1および第2の固定点と共に、z軸から出ている軸外共通半径上に位置してもよいことも熟考される。例えば、各固定バネの第2の固定点は、共通軸外半径上に位置してもよい。中間浮遊質量が、浮遊駆動質量の半径方向内側に位置してもよく、また、台座質量が、中間浮遊質量の半径方向内側に位置してもよいことが熟考される。しかしながら、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、質量または追加の質量の任意の他の好適な順序を使用することができる。例えば、台座質量は、浮遊駆動質量の半径方向外側にあってもよい、中間浮遊質量の半径方向外側にあってもよい。さらに、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、有利に構成されたバネのセットによって基材に接続される単一の質量を有するMEMSデバイスを使用することができることが熟考される。
【0016】
固定バネは、主としてy軸を中心とする回転に従い、すべての他の方向の運動に対して耐性を示すことができることが熟考される。同様に、駆動バネは、主としてz軸を中心とする回転に従い、すべての他の方向の運動に対して耐性を示すことができる。
【0017】
特定の実施形態では、浮遊駆動質量および中間浮遊質量は、実質的に一定の幅を有することができる、複数の溝によって分離される。各駆動バネのバネ要素は、各固定バネのバネ要素の幅より大きい幅を有することができる。固定バネの大部分を曲線にすることができ、駆動バネの大部分を直線にすることができる。軸外感度を低減するために、各バネ要素の質量を、有利に、その第1および第2の固定点のそれぞれの軸外共通半径にわたって実質的に均等に分布させることができる。また、各バネ要素の長さを、それぞれの軸外共通半径にわたって実質的に均等に分布させることができることも熟考される。
【0018】
また、本発明は、各駆動バネのバネ要素の大部分がy軸に対して平行に配向される、MEMSデバイスのためのバネセットも提供する。各駆動バネのバネ要素は、それぞれがy軸に対して実質的に平行に配向される、複数の直線区画を含むことができることが熟考される。
【0019】
また、本発明は、各バネが、z軸と一致する、またはz軸に対して斜めのエッチング角度を有する断面を伴う、バネ要素を有する、MEMSデバイスのためのバネセット構成も提供する。バネは、エッチング角度のばらつきのため、浮遊質量(単数もしくは複数)に、特性直角位相誤差または面外運動を付与する可能性がある。z軸と一致する、またはz軸に対して斜めの、バネのエッチング角度におけるプロセス変動による直角位相誤差を、エッチング角度における同様のプロセス変動を有する従来のバネセット構成と比較して、約5倍以上低減することができることが熟考される。また、特性直角位相誤差または面外運動を、バネ要素におけるプロセス誘発エッチング角度ばらつきに対して実質的に鈍感にすることができることも熟考される。
【0020】
特定の実施形態では、各バネ要素の断面は、実質的に平行四辺形の形状であることが熟考される。また、各バネ要素の断面は、z軸と直交する2つの平行縁部と、z軸に対して斜めの2つの斜め縁部とを有する、実質的に台形の形状であってもよいことも熟考される。2つの斜め縁部のそれぞれの平均角度は、z軸に対して斜めであってもよい。また、各バネ要素の断面は、z軸に対して平行である、または斜めの中立軸を有する、いかなる任意の形状であってもよいことも熟考される。
【0021】
また、本発明は、第1の質量を第2の質量に接続する複数のバネを含む、MEMSデバイスのためのバネセットも提供する。特定の実施形態では、各バネは、第1の固定点で第1の質量に固定され、第2の固定点で第2の質量に固定される、バネ要素を有する。各バネ要素の第1および第2の固定点は、第1および第2の質量によって画定される、直交するx軸およびy軸に対して斜めである、それぞれの共通ベクトル上に位置する。各バネは、それぞれの共通ベクトルに対してバランスのとれた質量および/または長さを有することができる。特定の実施形態によると、各バネは、大部分が共通y軸に対して平行に配向される、バネ要素を有する。また、特定の実施形態では、第1の質量が、運動面を画定することも熟考される。各駆動バネは、運動面と直交するz軸に対して斜めである、プロセス誘発エッチング角度を有する断面を伴う、バネ要素を含む。駆動バネは、バネ要素のプロセス誘発エッチング角度のばらつきに対して実質的に鈍感である第2の質量に、運動面外運動の特性成分を付与する。また、MEMSプロセスに適用される際、第1または第2の質量は、基材であってもよいことも熟考される。
【0022】
1つ以上の追加の質量をそれぞれ、それぞれの複数のバネによって、質量のうちの別の1つに接続することができることが熟考される。複数のバネは、第1の本体の軸または面と直交するz軸に対して4分の1対称で配設することができる。
【0023】
対象の発明のシステムおよび方法のこれらならびに他の特徴は、図面と併せて、以下の発明を実施するための最良の形態から、当業者により容易に明らかとなるであろう。
【0024】
対象の発明が属する技術分野に精通する者が、過度の実験を行うことなく、どのように対象の発明のデバイスおよび方法を作製し、使用するかを容易に理解できるように、その好ましい実施形態が、以下の特定の図を参照して、本明細書において以下により詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1A】4つの駆動バネによって中間浮遊質量に接続される駆動質量と、4つの固定バネによって中間浮遊質量に接続される中心台座質量とを示す、直角位相誤差に対する典型的な高感度をもたらすバネのセットを呈する、従来技術の典型的な例示的なMEMSジャイロの平面図である。
【図1B】4つのバネを有するバネセットによって台座に接続される駆動質量を示す、直角位相誤差に対する典型的な高感度をもたらすバネのセットを呈する、従来技術の典型的な別の例示的なMEMSジャイロの平面図である。
【図2】x軸、y軸、およびz軸に対する、本発明のバネセット、駆動質量、浮遊中間質量、ならびに台座の配向を示す、本発明に従って構築された、MEMSジャイロの例示的な実施形態の概略斜視図である。
【図3】y軸に沿う4つの駆動バネを示す、図2のMEMSジャイロの一部分の平面図である。
【図4】z軸から出ている軸外共通半径に沿ったバネ固定点の並びを示す、図3に示されるMEMSジャイロの一部分の拡大平面図である。
【図5】プロセス変動に起因する、異なるエッチング角度を示す、各断面が平行四辺形の形状である、対象の発明に従って構築された、MEMSデバイスのバネ要素の部分の断面立面図である。
【図6】プロセス変動に起因する、異なるエッチング角度を示す、各断面が平行四辺形の形状である、対象の発明に従って構築された、MEMSデバイスのバネ要素の部分の断面立面図である。
【図7】プロセス変動に起因する、異なるエッチング角度を示す、各断面が平行四辺形の形状である、対象の発明に従って構築された、MEMSデバイスのバネ要素の部分の断面立面図である。
【図8】バネ要素の対側上に2つの異なるエッチング角度が存在し、平均エッチング角度自体がz軸に対して斜めである、台形断面を示す、対象の発明に従って構築された、MEMSデバイスのバネ要素の一部分の断面立面図である。
【図9】理想的なMEMSジャイロ上での点Pのy方向における速度および変位を時間の関数として示す、プロットである。
【図10】理想的なMEMSジャイロ上での点Pのz方向における変位を時間の関数として示し、また、感知される回転を伴う理想的なz方向変位、および直角位相運動による典型的なz方向変位も示す、プロットである。
【図11】理想的な駆動運動、理想的な感知される運動、ならびに直角位相を伴う駆動運動の下での点Pのz方向およびy方向における変位を示す、プロットである。
【図12】1つのみの移動質量および1つのみのバネセットを有する構成を示す、対象の発明に従って構築された、別の例示的なMEMSジャイロの平面図である。
【図13】各バネ要素の固定点が、z軸を通過する半径ではなく、かつx軸およびy軸に対して平行ではなく、またそれらと直交もしない、共通ベクトル上に並ぶ、構成を示す、対象の発明に従って構築された、別の例示的なMEMSジャイロの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
ここで、同様の参照番号が対象の発明の同様の構造的特徴または態様を識別する図面が参照される。制限ではなく、説明および図示のために、本発明に係るMEMSジャイロで使用されるバネセット構成の例示的な実施形態の部分図が図2に示され、概して参照文字100によって指定される。本発明に係るMEMSジャイロで使用されるバネセット構成の他の実施形態、またはその態様は、記載されるように、図3〜図13に提供される。本発明のシステムおよび方法は、MEMSデバイス、より具体的にはMEMSジャイロにおける直角位相誤差を低減するために使用することができる。
【0027】
図1Aを参照すると、従来技術のMEMSジャイロ10の一部分が平面図で示されている。MEMSジャイロ10は、向き合う一対のくし形駆動部12を含む。駆動質量14は、くし形駆動部12の一部を形成する、駆動部分16を含み、くし形駆動部12の静止部分20と駆動部分16との間に相互噛合部分18が形成される。相互噛合部分18にわたって振動電荷が適用される際、駆動質量14に、二重頭矢印によって図1Aに示される方向に振動運動が付与される。この振動運動は、図1Aの観測面に向かって、およびそれから外向きに配向される、z軸を中心とする回転である(図2のz軸の斜視図を参照されたい)。
【0028】
駆動質量14の内部は、駆動質量14と中間浮遊質量22との間のエッチング溝26によって形成される4つの駆動バネ24によって駆動質量14に接続される、中間浮遊質量22である。中間浮遊質量22の内部は、下に横たわる基材に固定され、台座質量28と中間浮遊質量22との間のエッチング溝32によって形成される固定バネ30によって中間浮遊質量22に接続される、台座質量28である。駆動バネ24、固定バネ30、中間浮遊質量22、および駆動質量14は、所望の面外共振振動数を達成するように寸法決定される。駆動バネ24および駆動質量14は、所望の面内(駆動)共振振動数を達成するように寸法決定される。くし形駆動部12は、所望の面内駆動運動を維持するために、この固有振動数で動作する。
【0029】
くし形駆動部12が駆動質量14に回転運動を付与している間、基準座標系の回転は、コリオリの力を発生させ、駆動質量14および中間浮遊質量22の両方を、駆動運動および基準座標系回転の両方と直交する方向に面外回転させる。中間浮遊質量22および/または駆動質量14の近傍(上方または下方)に取り付けられるコンデンサプレート29(図1Aに破線で示される)は、中間浮遊質量22および/または駆動質量14の面外変位を感知し、それによって基準座標系の回転を感知することを可能にする。
【0030】
図1Aの参照を続けると、駆動質量14の質量は、x軸(感知軸)に可能な限り近く、かつy軸(非感知軸)から可能な限り遠くに分布される。この分布は、MEMSジャイロ10を、非感知y軸を中心とする基準座標系回転に対して鈍感にし、所望のx軸を中心とする基準座標系回転に対して敏感にする。別個のMEMSジャイロを使用して、複数の方向の運動を解明することができるように、MEMSジャイロが、1つの軸のみの運動に対して特に敏感であることが望ましい。例えば、相互に直交するように配向される3つのMEMSジャイロ10を使用して、個々のMEMSジャイロで回転のx成分、y成分、およびz成分を感知することによって、いかなる任意の方向の基準座標系回転の大きさおよび方向も解明することができる。
【0031】
理想的には、MEMSジャイロ10が基準座標系回転なく動作している際、駆動質量14は、残りのMEMSジャイロ10と同一面内で振動する。運動のこの方向は、駆動モードと呼ばれ、y変位および速度曲線によって図9に表され、ゼロz変位の平らな線によって図10および図11に表される。しかしながら、実際面では、最先端のDRIEエッチング技術等による溝26および32の形成は、不完全である。MEMSジャイロ10の面に対して完全に垂直な溝を形成するよりもむしろ、既知のエッチングプロセスは、ばらつきを有し、望ましくないエッチング角度を付与する場合がある。結果として、駆動バネ24および固定バネ30のバネ要素は、断面で見る際、図6に示されるような長方形ではなく、代わりに、図5、図7、および図8に示されるような平行四辺形または台形等の非理想的な形状となる。
【0032】
駆動バネ24および固定バネ30の断面が、理想的な垂直に配向された長方形ではないため、駆動バネ24および固定バネ30は、上述されるように、直角位相誤差を発生させる面外運動を生じる。この望ましくない直角位相運動は、直角位相運動曲線によって図10に表され、傾斜した直角位相運動直線によって図11に表される。図10は、直角位相運動曲線が、感知される回転を伴う理想的な運動曲線の位相と90度ずれていることを示す。
【0033】
理想的には、MEMSジャイロ10が回転基準座標系内で動作する際、駆動質量14上のコリオリの力は、これを面外振動させ、これは、感知モードと呼ばれる。この理想的な感知モード運動は、感知される回転を伴う理想的な運動を示す曲線によって、図10および図11に表される。しかしながら、実際面では、直角位相誤差は、この理想的な運動を乱れさせ、所望の信号に悪影響を与える余分な位相外信号を生じる。
【0034】
ここで、図1Bを参照すると、直角位相誤差に対する典型的な高感度をもたらす、別のバネセット構成を有する、従来技術の典型的な別の例示的なMEMSジャイロ60が示されている。MEMSジャイロ60は、MEMSジャイロ10に関して上述されるのと酷似するように、向き合う一対のくし形駆動部62を含み、駆動質量64は、くし形駆動部62の一部を形成する駆動部分66を含み、くし形駆動部62の静止部分70と駆動部分66との間に相互噛合部分68が形成される。上述されるMEMSジャイロ10とは異なり、MEMSジャイロ60は、中間浮遊質量を含まない。むしろ、MEMSジャイロ60は、4つのバネ74を有するバネセットによって台座78の質量に直接接続される、駆動質量64と称される、単一の駆動質量を含む。バネ74は、溝75から材料を除去することによって形成される。コンデンサプレート79は、上述されるコンデンサプレート29とほぼ同じように動作する。中間浮遊質量がなくても、MEMSジャイロ10に関して上述されるのと酷似するように、バネ74の形成におけるエッチング角度ばらつきは、単一の駆動質量64に面外運動を生じ、結果として、直角位相誤差をもたらす。
【0035】
ここで、図2を参照すると、対象の発明は、MEMSジャイロ100等の回転を感知するためのMEMSデバイス上、特にMEMSジャイロ上のバネセットの、新しく、かつ有用な構成を目的とする。直交するx軸、y軸、およびz軸に関連して描写されるMEMSジャイロ100は、向き合うくし形駆動部112の形態の駆動モータを含み、上述されるくし形駆動部12のものと類似する、駆動部分、相互噛合部分、および静止部分を有する。くし形駆動部112は、基準座標系回転がない際、浮遊駆動質量114を、x軸およびy軸と実質的に同一面内の振動運動を伴って、z軸を中心に振動させるように構成される。4つの駆動バネ124は、浮遊駆動質量114を、浮遊駆動質量114と同心かつ実質的に同一面内の中間浮遊質量122に接続する。
【0036】
ここで、図3および図4を参照すると、各駆動バネ124は、第1の固定点136で中間浮遊質量122に固定され、第2の固定点138で浮遊駆動質量114に固定される。第1の固定点136および第2の固定点138は、z軸から出ている、それぞれの共通半径140上に位置する。この並びは、駆動バネ124を、z軸を中心とする回転運動に従うようにする、すなわち、駆動モードにし、また、それらを、平行移動を含む、すべての他の方向の運動に対して耐性を示すようにする。
【0037】
MEMSジャイロ100は、下に横たわる基材に接続される台座質量128をさらに含む。台座質量128および中間浮遊質量122は、4つの固定バネ130によって接続される。各固定バネ130は、第1の固定点144で中間浮遊質量122に固定され、第2の固定点146で台座質量128に固定される。各固定バネ130の固定点146は、それぞれの駆動バネ124の第1の固定点136および第2の固定点138と共に、軸外共通半径140上に位置し、共通半径140がx軸またはy軸に沿って配向されていないことを意味する。また、固定点144が、それぞれの駆動バネ124の第1の固定点136および第2の固定点138と共に、共通半径140上に位置する、固定バネを構成することも可能である。また、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、その両方の固定点がそれぞれの軸外共通半径上に位置する、固定バネを構成することも可能である。固定バネ130は、駆動バネ124の溝126と類似する溝132の間に、駆動バネ124の溝126と同時に形成される。固定バネ130の形状および定置は、それらを、y軸を中心とする回転運動に従うようにする、すなわち、感知モードにし、また、それらを、他の方向の運動に対して耐性を示すようにする。
【0038】
浮遊駆動質量114および中間浮遊質量122は、実質的に一定の幅を有する、複数の溝126によって分離される。一定の幅の溝は、例えば、エッチング中に主要な特徴の周囲に同量の暴露シリコンを導入することによって、DRIEエッチングばらつきを最小限にする。当業者は、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、可変の溝幅を有する他の構成もまた可能であることを容易に理解するであろう。各駆動バネ124のバネ要素134は、固定バネ130のバネ要素142の幅より大きい幅を有する。しかしながら、当業者は、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、駆動バネおよび固定バネが同一の寸法である、または固定バネが駆動バネより幅が広い、他の構成もまた可能であることを容易に理解するであろう。
【0039】
固定バネ130は、大部分が曲線であり、一方、駆動バネ124は、大部分が直線である。駆動バネ124の各バネ要素134は、3つの半円曲線区画150によって直列に接続される、4つの直線区画148を有する。当業者は、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、任意の好適な数の直線区画および曲線区画を使用することができることを容易に理解するであろう。バネ要素134の長さの大部分を占める、各駆動バネ124の直線区画148は、y軸と平行に並ぶ。Y軸配向駆動バネ124は、プロセス変動による非直角バネエッチング角度から生じる、望ましくない直角位相運動を低減する。図3は、y軸に沿う、すべての4つの駆動バネ124を示す。各バネ要素134の長さおよび質量は、有利に、それぞれの共通半径140にわたって実質的に均等に分布される。このバランスは、軸外感度を低減する。
【0040】
ここで、図5〜図8を参照すると、MEMSジャイロを製造する際のプロセス変動によって生じる場合がある、バネ要素134の例示的な断面が示されている。図6は、バネ要素134を画定する両方の溝126のエッチング角度が垂直である、すなわち、図2に示されるz軸に沿い、z軸に平行である、理想的な設計を示す。図5および図7は、それぞれ、望ましくないプロセス誘発エッチング角度ばらつきにより、バネ要素134の溝126のエッチング角度が、z軸に対して右回りに傾斜している、および左回りに傾斜している、平行四辺形の形状を有する、バネ要素134の断面を示す。図8は、z軸に対して2つの異なる角度に溝126を有する台形断面を伴う、バネ要素134を示す。2つの溝126の平均角度135は、それ自体がz軸に対して斜めである。望ましくないプロセス変動は、設計される理想的なエッチング角度に関わらず、エッチング角度を理想的な設計から変化させ、望ましくない直角位相誤差をもたらす可能性がある。当業者は、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、上述されるバネ構成を用いて、z軸に対するバネ要素の設計されるエッチング角度に関わらず、プロセス誘発エッチング角度ばらつきを軽減することができることを容易に理解するであろう。
【0041】
駆動バネ124に生じる場合がある同一の基本的な溝角度ばらつきは、また、固定バネ130にも適用される。線幅のばらつきは、感知モードスティフネスおよび駆動モードスティフネスを別々に変化させ、これは、主要Δωパラメータの深刻なばらつきを生じる。2つのバネのセット、例えば、駆動バネ124および固定バネ130を利用することは、駆動モードおよび感知モードが確実に適切にトラックするようにすることを助ける。駆動バネ124は、駆動モードスティフネスを決定し、一方、駆動バネ124および固定バネ130の両方が、感知モードスティフネスを確定する。固定バネ130は、駆動バネ124の幅より小さい幅を有し、駆動モードおよび感知モードの両方が線幅ばらつきに対して同一の感度を有するように、それらを線幅ばらつきに対してより敏感にするために、曲線状にされる。したがって、固定バネ130および駆動バネ124は、Δωばらつきを低減するように、共に調整される。
【0042】
MEMSジャイロ100の例示的な設計パラメータは、約6KHzで最低共振モードを有する駆動モードおよび感知モード、約150HzのΔωの厳密なトラッキング、ならびに約7.5KHzを超える振動数でのすべての他のモードの高共振振動数を含む。当業者は、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、特定の用途のために、他の好適な構成を実践することができることを容易に理解するであろう。
【0043】
それらの幾何学的形状の組み合わせ、曲線区画および直線区画を有するバネ要素、軸外共通半径に対するバネ要素固定点の配向、特定の軸に対するバネ要素セグメントの配向、軸外共通半径に対するバネ要素の長さのバランス、ならびに軸外共通半径に対するバネ要素の質量バランスにより、駆動バネ124および固定バネ130は、所望の共振モードを維持する一方、駆動質量114に、駆動バネ124および固定バネ130のプロセス誘発エッチング角度ばらつきに対して実質的に鈍感である出力を提供する、特性直角位相誤差軽減を付与する。したがって、MEMSジャイロ100は、望ましくないエッチング角度を生じる製造におけるプロセス変動を伴うとしても、一貫して低い直角位相誤差をもたらす。MEMSジャイロ100におけるエッチング角度におけるプロセス変動による直角位相誤差を、エッチング角度における同様のプロセス変動を有する従来のバネセット構成を採用するMEMSジャイロと比較して、約5倍以上低減することができることが推測される。MEMSジャイロ100は、その駆動バネ124および/または固定バネ130の断面が平行四辺形の形状であるか、台形の形状であるか、または傾斜した中立軸を伴う、いずれかの他の形状であるかに関わらず、低減された直角位相誤差を有する。
【0044】
記載されるバネ構成が、直角位相誤差を低減すると同様に、意図される面外信号を有利に拡大することができる。これは、面外運動を意図的に誘発するために使用することができる。
【0045】
コンデンサプレート152は、図2に示されるように、駆動質量114の下に取り付けられる。当業者は、中間浮遊質量122および駆動質量114の両方が、基準座標系回転の存在下で面外に移動することができるため、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、コンデンサプレートを、中間浮遊質量122および/もしくは駆動質量114の両方の上ならびに/または下の近傍(上方または下方)に取り付けることができることを容易に理解するであろう。当業者は、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、任意の好適なコンデンサ位置を使用することができること、またはコンデンサ型センサに加えて任意の他の種類のセンサを使用することができることを容易に理解するであろう。
【0046】
上述したように、中間浮遊質量122は、浮遊駆動質量114の半径方向内側に位置し、台座質量128は、中間浮遊質量122の半径方向内側に位置する。しかしながら、当業者は、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、質量の任意の他の好適な構成または順序を使用することができることを容易に理解するであろう。例えば、台座質量は、浮遊駆動質量の半径方向外側にあってもよい、中間浮遊質量の半径方向外側にあってもよい。駆動バネおよび固定バネをそれぞれ4つ有する例示的な構成を用いて本明細書に記載されるが、当業者は、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、任意の好適な数の駆動バネまたは固定バネを使用することができることを容易に理解するであろう。2つの浮遊質量(中間浮遊質量122および浮遊駆動質量114)を有する例示的な構成を用いて本明細書に記載されるが、当業者は、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、単一の浮遊質量または複数の浮遊質量を含む、任意の好適な数の浮遊質量を使用することができることを容易に理解するであろう。同様に、当業者は、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、質量を相互または基材に接続する、任意の好適な数のバネセットを使用することができることを容易に理解するであろう。
【0047】
直角位相誤差をさらに低減するために、有利に、補償電極権限を駆動バネ124および固定バネ130の特徴と組み合わせることができる。使用される場合、補償電極権限、または直角位相誤差を電気的に低減する任意の他の好適な手段は、予測される直角位相誤差を最小化するのに十分な権限を有するべきだが、寄生静電容量雑音源を加える程であるべきではない。
【0048】
ここで、図12を参照すると、中間浮遊質量がない、MEMSジャイロ200の別の例示的な実施形態が示されている。MEMSジャイロ200は、MEMSジャイロ100に関して上述されるのと酷似するように、くし形駆動部212と、駆動質量214と、コンデンサプレート252と、台座質量228と、バネ224と、溝226と、バネ要素234とを含む。バネ224の単一のセットによって台座質量228に直接接続される、駆動質量214と称される、単一の駆動質量によって、それが台座質量228を中心に振動する際、コリオリの力は、駆動質量214に作用し、コンデンサプレート252を感知モード方向に移動させることができる。台座質量228は、下に横たわる基材の一部であってもよく、またはそれに接続されてもよい。バネ224の特性は、上述されるバネ124と同様に、例えば、直角位相誤差を低減することによって、エッチングプロセス変動に対する感度を低減することができる。面外運動の特定の成分が所望される用途では、バネ224は、上記のバネ124と酷似するように、所望の面外運動からプロセス変動誘発偏差を低減する。
【0049】
バネ224のバネ要素234は、x軸およびy軸に対する各バネ224の共通軸外半径上にある、固定点(図12には示されていないが、例えば、図4を参照されたい)を有する。しかしながら、固定点は、必ずしも半径上にある必要はない。ここで、図13を参照すると、固定点がMEMSジャイロの半径上にない、MEMSジャイロ300の別の例示的な実施形態が示されている。MEMSジャイロ300は、MEMSジャイロ200に関して上述されるのと酷似するように、くし形駆動部312と、駆動質量314と、コンデンサプレート352と、台座質量328と、バネ324と、溝326と、バネ要素334とを含む。各バネ334の固定点は、MEMSジャイロ200の半径ではないベクトル340上にある、すなわち、ベクトル340は、x軸およびy軸の原点でまったく交差しない。それでもなお、MEMSジャイロ200のバネセットは、4分の1対称を有し、4つのバネ224は、併せると、2つの直交する軸、この場合、x軸およびy軸をまたぐ対称性を呈することを意味する。また、ベクトル340も、4分の1対称性を呈し、上述される共通半径140と同様に、x軸およびy軸に対して軸外であり、したがってベクトル340は、x軸もしくはy軸またはx軸およびy軸と同一の原点を有する任意の他の2つの直交する軸に対して平行ではなく、また、それらと直交もしない。この構成では、MEMSジャイロ300は、z軸に対して軸対称ではなく、また、z軸に対する回転対称性(z軸は、図13には示されていないが、図2を参照されたい)も存在しない。
【0050】
バネ要素334の固定点をベクトル340上に配設することによって、MEMSジャイロ100および200に関して上述される利点と本質的に同一の利点が提供される。MEMSジャイロ300のバネセットは、単一の駆動質量およびバネセットを有するMEMSジャイロの例示的な文脈で示されてきたが、当業者は、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、任意の数の駆動質量または中間質量を有するMEMSジャイロで、類似するバネセットを使用することができることを容易に理解するであろう。
【0051】
本明細書に記載される技術および方法は、駆動モードで、y軸に沿った望ましくない面外直角位相回転を効果的に軽減し、x軸に沿ったより大きい面外回転を生じる。このx軸回転の増大は、動的に増幅されず、電気信号を生成せず、所望の出力信号に悪影響を与えない。
【0052】
当業者は、本発明は、DRIEツールの例示的な文脈において上述されるが、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、任意の好適なツールを使用して実践することができることを容易に理解するであろう。DRIEツール等の最先端のエッチング技術が使用されるか、またはそれ程高精度ではない技術が使用されるかに関わらず、本明細書に記載される構成は、従来のバネセット設計よりも低減された直角位相誤差をもたらすことができる。
【0053】
本発明の方法およびシステムは、上述され、かつ、図面に示されるように、低減された直角位相誤差を含む、優れた特性を有する、MEMSデバイスのためのバネセット構成を提供する。対象の発明の装置および方法が示され、好ましい実施形態を参照して記載されてきたが、当業者は、対象の発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、それらを変更ならびに/または修正することができることを容易に理解するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転を感知するためのMEMSジャイロにおいて、
a) 直交するx軸、y軸、およびz軸を画定する駆動モータであって、浮遊駆動質量を
、前記x軸およびy軸と実質的に同一面内の振動運動を伴って、前記z軸を中心に振動させるように構成される、駆動モータと、
b) 前記浮遊駆動質量を前記浮遊駆動質量と同心の中間浮遊質量に接続する複数の駆動
バネであって、各駆動バネは、第1の固定点で前記中間浮遊質量に固定され、第2の固定点で前記浮遊駆動質量に固定される、バネ要素を有し、前記第1および第2の固定点は、前記z軸から出ている、それぞれの共通半径上に位置し、前記共通半径は、前記x軸およびy軸の両方の軸外である、複数の駆動バネと、
を備える、MEMSジャイロ。
【請求項2】
下に横たわる基材に接続される台座質量をさらに備え、前記台座質量および中間浮遊質量は、複数の固定バネによって接続され、各固定バネは、第1の固定点で前記中間浮遊質量に固定され、第2の固定点で前記台座質量に固定される、バネ要素を有する、請求項1に記載のMEMSジャイロ。
【請求項3】
各固定バネの前記第2の固定点が、前記駆動バネのそれぞれの前記第1および第2の固定点と共に、前記共通半径上に位置する、請求項2に記載のMEMSジャイロ。
【請求項4】
各固定バネの前記第1の固定点が、前記駆動バネのそれぞれの前記第1および第2の固定点と共に、前記共通半径上に位置する、請求項2に記載のMEMSジャイロ。
【請求項5】
前記固定バネが、主として前記y軸を中心とする回転に従い、すべての他の方向の運動に対して耐性を示す、請求項2に記載のMEMSジャイロ。
【請求項6】
前記駆動バネが、主として前記z軸を中心とする回転に従い、すべての他の方向の運動に対して耐性を示す、請求項5に記載のMEMSジャイロ。
【請求項7】
各駆動バネの前記バネ要素が、各固定バネの前記バネ要素の幅より大きい幅を有する、請求項2に記載のMEMSジャイロ。
【請求項8】
前記固定バネは、大部分が曲線であり、前記駆動バネは、大部分が直線である、請求項2に記載のMEMSジャイロ。
【請求項9】
各駆動バネの前記バネ要素が、大部分が前記y軸に対して平行に配向される、請求項1に記載のMEMSジャイロ。
【請求項10】
各バネ要素が、その前記第1および第2の固定点の前記それぞれの共通半径にわたって均等に分布される質量を有する、請求項1に記載のMEMSジャイロ。
【請求項11】
各バネ要素が、その前記第1および第2の固定点の前記それぞれの共通半径にわたって均等に分布される長さを有する、請求項1に記載のMEMSジャイロ。
【請求項12】
回転を感知するためのMEMSジャイロにおいて、
a) 直交するx軸、y軸、およびz軸を画定する駆動モータであって、浮遊駆動質量を、前記x軸およびy軸と同一面内の振動運動を伴って、前記z軸を中心に振動させるように構成される、駆動モータと、
b) 前記浮遊駆動質量を前記浮遊駆動質量と同心の中間浮遊質量に接続する複数の駆動バネであって、各駆動バネは、大部分が前記y軸に対して平行に配向されるバネ要素を有する、複数の駆動バネと、
を備える、MEMSジャイロ。
【請求項13】
下に横たわる基材に接続される台座質量をさらに備え、前記台座質量および中間浮遊質量は、複数の固定バネによって接続され、各固定バネは、第1の固定点で前記中間浮遊質量に固定され、第2の固定点で前記台座質量に固定される、バネ要素を有し、各駆動バネの前記バネ要素は、第1の固定点で前記中間浮遊質量に固定され、第2の固定点で前記浮遊駆動質量に固定され、前記固定バネは、主として前記y軸に対して従順であり、前記駆動バネは、主として前記z軸に対して従順である、請求項12に記載のMEMSジャイロ。
【請求項14】
各固定バネの少なくとも前記第2の固定点、ならびに前記駆動バネのそれぞれの前記第1および第2の固定点がすべて、前記z軸から出ている、それぞれの共通半径上に位置し、前記共通半径が、前記x軸およびy軸の両方の軸外にある、請求項13に記載のMEMSジャイロ。
【請求項15】
各駆動バネの前記バネ要素が、その前記第1および第2の固定点の前記それぞれの共通半径にわたって均等に分布される質量を有する、請求項14に記載のMEMSジャイロ。
【請求項16】
各駆動バネの前記バネ要素が、その前記第1および第2の固定点の前記それぞれの共通半径にわたって均等に分布される長さを有する、請求項14に記載のMEMSジャイロ。
【請求項17】
各固定バネの少なくとも前記第1の固定点ならびに前記駆動バネのそれぞれの前記第1および第2の固定点が、すべて、前記z軸から出ている、それぞれの共通半径上に位置し、前記共通半径は、前記x軸およびy軸の両方の軸外である、請求項13に記載のMEMSジャイロ。
【請求項18】
各駆動バネの前記バネ要素が、それぞれが前記y軸に対して平行に配向される、複数の直線区画を含む、請求項12に記載のMEMSジャイロ。
【請求項19】
回転を感知するためのMEMSジャイロにおいて、
a) 直交するx軸、y軸、およびz軸を画定する駆動モータであって、浮遊駆動質量を
、前記x軸およびy軸と同一面内の振動運動を伴って、前記z軸を中心に振動させるように構成される、駆動モータと、
b) 前記浮遊駆動質量を前記浮遊駆動質量と同心の中間浮遊質量に接続する複数の駆動
バネであって、各駆動バネは、前記z軸に対して斜めのエッチング角度を有する断面を伴う、バネ要素を有し、前記駆動バネは、前記中間浮遊質量および浮遊駆動質量に、特性面外運動を付与する、複数の駆動バネと、
を備える、MEMSジャイロ。
【請求項20】
各バネ要素の前記エッチング角度は、前記z軸に対して斜めのエッチング角度であり、前記駆動バネが、前記バネ要素の前記プロセス誘発エッチング角度のばらつきに対して鈍感である前記中間浮遊質量に、特性面外運動を付与する、請求項19に記載のMEMSジャイロ。
【請求項21】
各バネ要素の前記断面が、平行四辺形の形状である、請求項19に記載のMEMSジャイロ。
【請求項22】
各バネ要素の前記断面が、前記z軸と直交する2つの平行縁部と、前記z軸に対して斜めの2つの斜め縁部とを伴う、台形の形状である、請求項19に記載のMEMSジャイロ。
【請求項23】
前記2つの斜め縁部のそれぞれの平均角度が、前記z軸に対して斜めである、請求項22に記載のMEMSジャイロ。
【請求項24】
下に横たわる基材に接続される台座質量をさらに備え、前記台座質量および中間浮遊質量は、複数の固定バネによって接続され、各固定バネは、第1の固定点で前記中間浮遊質量に固定され、第2の固定点で前記台座質量に固定される、バネ要素を有し、各駆動バネの前記バネ要素は、第1の固定点で前記中間浮遊質量に固定され、第2の固定点で前記浮遊駆動質量に固定され、各固定バネの前記第1および第2の固定点のうちの少なくとも1つは、前記駆動バネのそれぞれの前記第1および第2の固定点と共に、前記z軸から出ている共通半径上に位置する、請求項19に記載のMEMSジャイロ。
【請求項25】
各駆動バネの前記バネ要素が、大部分が前記y軸に対して平行に配向される、請求項24に記載のMEMSジャイロ。
【請求項26】
MEMSデバイスのためのバネセットにおいて、
a) 第1の質量を第2の質量に接続する複数のバネであって、各バネは、第1の固定点
で前記第1の質量に固定され、第2の固定点で前記第2の質量に固定される、バネ要素を有し、各バネ要素の前記第1および第2の固定点は、前記第1および第2の質量によって画定される、直交する軸に対して斜めである、それぞれの共通ベクトル上に位置する、
バネセット。
【請求項27】
それぞれがそれぞれの複数のバネによって前記質量のうちの別の1つに結合される、1つ以上の追加の質量をさらに備える、請求項26に記載のバネセット。
【請求項28】
前記複数のバネが、4分の1対称で配設される、請求項26に記載のバネセット。
【請求項29】
各バネが、前記それぞれの共通ベクトルに対してバランスのとれた質量を有する、請求項26に記載のバネセット.
【請求項30】
各バネが、前記それぞれの共通ベクトルに対してバランスのとれた長さを有する、請求項26に記載のバネセット。
【請求項31】
MEMSデバイスのためのバネセットにおいて、
第1の質量を第2の質量に接続する複数のバネであって、各バネは、大部分が共通軸に対して平行に配向される、バネ要素を有する、複数のバネ
を備える、バネセット。
【請求項32】
各バネ要素が、第1の固定点で前記第1の質量に固定され、第2の固定点で前記第2の質量に固定され、各バネ要素の前記第1および第2の固定点は、前記第1および第2の質量によって画定される、前記共通軸および直交する軸の両方に対して斜めである、それぞれの共通ベクトル上に位置する、請求項31に記載のバネセット。
【請求項33】
MEMSデバイスのためのバネセットにおいて、
第1の質量を第2の質量に接続する複数のバネであって、前記第1の質量は、面を画定し、各バネは、前記面と直交する軸に対して斜めのエッチング角度を有する断面を伴う、バネ要素を含み、前記バネは、前記バネ要素の前記プロセス誘発エッチング角度のばらつきに対して鈍感である前記第2の質量に、前記面外運動の特性成分を付与する、複数のバネ、
を備える、バネセット。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−108114(P2012−108114A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−231265(P2011−231265)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(506283927)ローズマウント・エアロスペース・インコーポレーテッド (26)
【氏名又は名称原語表記】ROSEMOUNT AEROSPACE INC.
【Fターム(参考)】