説明

相分離を示すヒドロゲル組成物

組成物であって、水膨潤性水不溶性ポリマーまたは水溶性ポリマー、親水性ポリマーとその親水性ポリマーに水素結合する能力を有する相補的オリゴマーとの混合物を含む組成物が提供される。この組成物は、相分離膜形成組成物を与える第二の水膨潤性水不溶性ポリマーをさらに含む。漂白剤などの活性剤を含んでもよい。この組成物が歯科用包帯剤として、たとえば漂白を必要とする歯に適用され、漂白の程度が達成された時に除去される歯科用漂白組成物として有用であることが見出される。ある特定の態様においては、この組成物は半透明である。この組成物の調製方法および使用方法も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的なヒドロゲル組成物に関する。より詳細には、本発明は、包帯剤または保護剤として有用な、および歯科用漂白剤を含む種々の活性剤を皮膚および口などの粘膜組織に投与することに有用なヒドロゲル組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
歯の変色は社会において広く存在し、三人の成人のうちの二人に見られると推定される。歯の変色は美的な傷または欠点であると考えられており、自意識によって影響される人生において否定的な結果を与える可能性があり、笑顔を妨げる可能性さえある。歯の変色は、清潔さと白い歯が不可欠であることが示される立場および職業においては、特に悲惨になるか、または面倒になり得る。
【0003】
歯は、内部の象牙質層と、わずかに穴が開いた外側の硬いエナメル質層とから構成される。外層は歯の保護層である。歯の天然の色合いは不透明から乳白色またはわずかなオフホワイト色である。歯の着色は、タンニンおよびその他のポリフェノール化合物などの化合物の歯への接触の結果として生じる。これらの化合物は、歯の表面のタンパク質性の層に捕らえられるかまたは結合するようになり、エナメル質および象牙質でさえにも浸透することができる。時には歯の内部の源から着色が生じることがあり、幼い時期の個人にテトラサイクリンなどを投与した場合、歯に沈着することがある。
【0004】
通常、機械的な歯のクリーニングによって、表面への着色を除去することができる。しかしながら、変色したエナメル質または象牙質は、歯をクリーニングする機械的な方法に影響を受けず、ステインを除去するためには、歯の構造内に浸透することができる化学的な方法を必要とする。歯の変色に対する最も効果的な処理は、変色の原因であるクロモゲン分子と反応し、それらを無色化もしくは可溶化のいずれかまたはその両方にすることができる、過酸化水素などの酸化剤を含む組成物である。
【0005】
したがって、歯科用漂白組成物は一般的に二つのカテゴリーに分類される:(1)表面のステインの研磨による侵食によって歯のステインの除去に影響を与えるための、着色した歯の表面で機械的に撹拌される歯磨き粉を含むゲル、ペーストまたは液体;および(2)着色した歯の表面と、指定の期間接触している間に化学的プロセスによって歯の脱色効果を達成し、その後その製剤が除去されるゲル、ペーストまたは液体。いくつかのケースにおいては、補助的な化学的プロセス、酸化的でも酵素的でもよい、を機械的プロセスに補う。
【0006】
デントリフィース、歯磨き粉、ゲルおよび粉末などのいくつかの歯科用組成物は、活性酸素または過酸化水素を遊離させる脱色剤を含む。このような脱色剤としては、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の過酸化物、過炭酸塩および過ホウ酸塩または過酸化水素を含む複合化合物が挙げられる。さらに、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の過酸化物塩が、歯の漂白に有用であることが知られている。
【0007】
歯科用漂白組成物の処方に利用することができる多数の過酸化物のなかで、過酸化水素(および過酸化カルバミドおよび過炭酸ナトリウムなどのその付加物または関連複合体)がほぼ独占的に用いられてきた。過酸化水素の化学的性質は十分に知られているが、歯のクロモゲンとのその相互作用の特定の性質はあまり理解されていない。ステイン分子に見られる不飽和の炭素−炭素結合、炭素−酸素結合および炭素−窒素結合を酸化し、それによって無色化または可溶化することによって、過酸化水素が歯のクロモゲンを破壊すると考えられている。
【0008】
主として溶液におけるそれらの溶解性およびステイン分子の特定のタイプに特異的に結合するそれらの能力が原因で、関連するクラスの化合物であるペルオキシ酸は、洗濯用洗剤において衣類を効果的に漂白することに用いられてきた。ジペルオキシドデカン酸およびモノペルオキシフタル酸のマグネシウム塩を含む、多数の安定した固体のペルオキシ酸が用いられてきた。ペルオキシ酢酸などのその他のペルオキシ酸が、酢酸、過酸化水素、ペルオキシ酢酸および水の平衡分布を含む溶液として利用することができる。あるいは、過ホウ酸ナトリウムまたは過炭酸ナトリウムなどのペルオキシドドナーが、ペルオキシ酸前駆体と共に製剤化される。水と接触すると、ペルオキシドドナーが、次いでペルオキシ酸前駆体と反応する過酸化水素を遊離し、実際のペルオキシ酸が形成される。そのままでペルオキシ酸を生じさせる例としては、(過酸化水素とテトラアセチルエチレンジアミンとから生じる)ペルオキシ酢酸および(過酸化水素とノナノイルオキシベンゼンスルホン酸とから生じる)ペルオキシノナン酸が挙げられる。
【0009】
着色した歯を漂白するための歯の手入れ用組成物において、ペルオキシ酸も用いられてきた。Churchらによる米国特許第5,279,816号では、酸性pHを有するペルオキシ酢酸含有組成物を適用することを含む、歯を漂白する方法が記載されている。ChurchらによるEP545,594 A1号では、歯を漂白するための組成物の調製におけるペルオキシ酢酸の使用が記載されている。ペルオキシ酢酸は組成物中に存在していてもよく、あるいは、ペルオキシ源とペルオキシ酢酸前駆体とを使用中に混合することによって、ペルオキシ酢酸をその位置で生じさせてもよい。たとえば、Viscioによる米国特許第5,302,375号では、水、アセチルサリチル酸および水溶性の過炭酸のアルカリ金属塩を混合することによって、媒体のその位置内でペルオキシ酢酸を生じさせる組成物が記載されている。
【0010】
最も広く用いられている歯科用漂白剤は過酸化カルバミド(CO(NH)であり、尿素過酸化水素塩、過酸化水素カルバミドおよびペルヒドロル尿素とも呼ばれている。過酸化カルバミドは、口腔用防腐剤として数十年に亘って歯科医に用いられてきた。そして歯の脱色は、接触時間を延長したことによる副作用として見られた。市販の組成物である10%の過酸化カルバミドは、Marion Laboratories社のGLY−OXIDE(登録商標)およびReed and Carnrick社のPROXIGEL(登録商標)として入手することができ、これらは、歯との接触を実施するためにトレイまたは類似の容器内で保持させなければならない低粘度の組成物である。歯科用トレイを所定の位置に、長時間であっても快適に固定できるように保持することができる脱色ゲルは、ユタ州サウスジョーダンのUltradent Products社からOPALESCENCE(登録商標)の商標の下で市販されている。
【0011】
このような組成物を所定の位置で保持するためには、この組成物は粘性の液体かまたはゲルでなければならない。歯科用トレイを用いるためには、トレイがヒトの歯または歯ぐきに圧迫を加えるかまたは刺激を与えることのないように、快適に固定できるようにトレイを適合させることも必要である。唾液による希釈に抵抗するために十分に粘着性かつ粘性を示すように、このような漂白組成物を必ず製剤化すべきである。
【0012】
個体の歯を漂白する一つの方法においては、歯の専門家であれば、患者の歯列から作られた印象から、患者に適した歯の脱色用トレイの特注品を構築し、酸化用ゲルの使用を指示して、歯の着色の重症度に応じて、約2週間〜約6ヶ月の間、断続的に脱色用トレイ内に入れて付着させる。これらの酸化用組成物、通常は小型のプラスチック製のプラスチック製のシリンジまたはチューブにパッケージされている、は歯の脱色用トレイの特注品内に、患者によって直接入れられ、約60分間よりも長時間、時には8〜12時間もの間の接触時間にて口の中の所定の位置で保持される。脱色速度の遅さは、酸化用組成物の溶解性が維持されるように開発された製剤のまさしくその性質の結果が大部分を占める。
【0013】
たとえば、Jensenによる米国特許第6,368,576号では、処理されるヒトの歯の表面に隣接する所定の位置にその組成物が保持されるような、トレイと共に用いるのが好ましい歯科用漂白組成物が記載されている。十分な量のカルボキシポリメチレンなどの増粘剤をグリセリン、ポリエチレングリコールまたは水などの溶媒と混合することによって形成される粘着性マトリクス材料として、これらの組成物が記載されている。
【0014】
その他の例においては、Pellicoによる米国特許第5,718,886号では、無水のゲル状担体中に分散した過酸化カルバミドを含む、ゲル組成物の形態の歯科用漂白組成物が記載されており、このものは、ポリオール、増粘剤およびキサンタンガムを含んでいる。
【0015】
さらにその他の例がHernandezによる米国特許第6,419,905号に記載されており、ここでは、過酸化カルバミド(0.3〜60%)、キシリトール(0.5〜50%)、カリウム塩(0.001〜10%)およびフッ素塩(0.15〜3%)を含み、0.5〜6重量%の適切なゲル化剤を含むゲルに製剤化された組成物の使用が記載されている。
【0016】
歯に付着する歯科用漂白組成物が、Dirksingによる米国特許第5,989,569号および第6,045,811号に記載されている。これらの特許にしたがえば、このゲルは30〜85%のグリセリンまたはポリエチレングリコール、10〜22%の尿素/過酸化水素複合体、0〜12%のカルボキシポリメチレン、0〜1%の水酸化ナトリウム、0〜100%のトリエタノールアミン(TEA)、0〜40%の水、0〜1%の香料、0〜15%のクエン酸ナトリウムおよび0〜5%のエチレンジアミン四酢酸を含む。Dirksingによるところの好ましいゲルは、低ずり速度(1sec−1未満)においては200〜1,000,000cpsの粘度を有し、トレイの必要性を除去するのに十分な粘着性である。
【0017】
現在利用可能な歯科用脱色組成物は、50%を超える患者に歯の知覚過敏を引き起こすという重大な欠点を有する。歯の知覚過敏は、象牙質細管を通過する体液の移動に起因するのかもしれず、このことは、これらの組成物中にグリセリン、プロピレングリコールおよびポリエチレングリコールが存在することにより、歯内の神経終末によって感じられる。このことは結果的に、歯が熱、低温、非常に甘い物質およびその他の原因物質に接触した後での、その歯の知覚過敏の程度を変化させる可能性がある。
【0018】
現在行われているような、歯の脱色組成物への接触を延長することは、歯の知覚過敏に加えて多くの副作用を有する。これらの副作用には、pH5.5未満でエナメル質層からカルシウムが溶出すること;無傷のエナメル質および象牙質に脱色剤が浸透し、歯髄組織にダメージを与えるリスクとなること;ならびに唾液により脱色組成物が希釈される結果、歯科用トレイから溶出し、続いて使用者によって摂取されることが含まれる。
【0019】
歯科医または歯科衛生士の管理下で設定された歯科医院内で、いくつかの(通常は比較的高濃度の酸化剤を有する)酸化用組成物を、患者の歯の表面に直接適用する。理論的には、このような歯の漂白方法はより速い結果を生じさせ、患者の全体的な満足感をより良いものとする。しかしながら、これらのいわゆる「院内」組成物には高濃度の酸化剤が含まれているために、注意深く扱わない場合、これらは患者に対しておよび同様に歯科医に対して有害となり得る。(ラバーダムとして知られている)穴の開いたゴムシートを用いて歯だけが突き出すようにして、患者の軟組織(歯肉、唇およびその他の粘膜表面)を、接触する可能性のある反応性酸化剤からまず最初に分離しなければならない。あるいは、歯肉輪郭に一致するように成形され、次いで強力な光源に曝露して硬化する重合可能な組成物で軟組織を保護することによって、漂白プロセスで用いられる酸化剤から軟組織を分離してもよい。一旦軟組織が分離されて保護されれば、開業歯科医が、指定の期間すなわち歯の色が満足できる程度に変化するまで、着色した歯の表面上に酸化剤を直接添加することができる。院内歯科用漂白剤を用いることによって得られる結果は通常、(VITA Zahnfarbik社のVITA Shade Guideに従って測定される)約2〜3シェードの範囲である。
【0020】
VITA Shade Guideにおける歯のシェードの範囲は、極めて明るい(B1)〜極めて暗い(C4)の範囲で変化する。合計で16の歯のシェードは、明るさの段階の評価でのこれらの二つの終点の間の色の範囲の全体を構成する。歯の漂白法による患者の満足感は、約4〜5のVITAシェードという一般的に望ましいと受け入れられる最低の変化を伴った、シェードの変化が達成される歯の数によって向上する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
歯を漂白するための歯の手入れ用品に関して言えば、個人の歯からステインを除去するための漂白剤を含む粘着性ヒドロゲルを利用した歯の手入れ用品を提供することが好ましい。さらに、皮膚表面および粘膜表面用の保護用包帯剤もしくは保護剤を提供するための製品、または活性剤の送達、たとえば、皮膚、粘膜組織、歯の表面、歯ぐき、粘膜およびその他の口腔組織への経皮的におよび経粘膜的な薬物の送達を提供するための製品を開発する一定の必要性が存在する。活性剤と歯またはその他の口腔内の表面とを接触させるための歯科用トレイを用いる必要がない組成物が望まれている。このような製品は、理想的には、歯の知覚過敏を最低限に抑えるかまたは全く引き起こさず、使用者による摂取を生じさせるかもしくは歯ぐきもしくは口の粘膜にダメージもしくは刺激を与える活性剤の漏出を最低限に抑えるかまたは全く生じさせず、より長時間の付着期間を提供し、活性剤の溶解性を持続させ、有効性を向上させ、そして患者が十分我慢できるものである。自己粘着性であるが使用者の指に付着しない固体組成物であるか、または乾燥すると膜を形成する非固体(たとえば液体またはゲル)組成物である歯の手入れ用品を提供することも望ましいだろう。本発明はこれらの必要性に対応したものである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
(発明の開示)
本発明の一つの側面は、水膨潤性水不溶性ポリマーまたは水溶性ポリマー;および親水性ポリマーとその親水性ポリマーに水素結合もしくは静電結合する能力を有する相補的オリゴマーとの混合物を含む組成物に関する。歯科用漂白剤などの活性剤が含まれてもよい。一つの態様においては、この組成物は、第一の水膨潤性水不溶性ポリマーまたは水溶性ポリマーとは異なるpH溶解性を有する第二の水膨潤性水不溶性ポリマーをさらに含む。
【0023】
本発明の別の側面は、約5.5未満のpHでは水不溶性の第一の水膨潤性ポリマーまたは水溶性ポリマー;親水性ポリマーとその親水性ポリマーに水素結合する能力を有する相補的オリゴマーとの混合物;すべてのpH値において水不溶性の第二の水膨潤性ポリマー;および任意の活性剤を含む、相分離性膜形成組成物に関する。この組成物は、使用時に相分離を一度経験し、複数の膜層を形成する。
【0024】
好ましい態様においては、第一の水膨潤性水不溶性ポリマーは、アクリレートベースのポリマーまたはコポリマーであり;親水性ポリマーはポリ(N−ビニルラクタム)、ポリ(N−ビニルアミド)、ポリ(N−アルキルアクリルアミド)またはコポリマーおよびその混合物であり;親水性ポリマーに水素結合する能力を有する相補的オリゴマーはポリアルキレングリコールまたはカルボキシル基終端(carboxyl−terminated)ポリアルキレングリコールであり;そして第二の水膨潤性水不溶性ポリマーはセルロースエステルまたはアクリレートベースのポリマーまたはコポリマーである。好ましい活性剤は過酸化物などの漂白剤である。
【0025】
この組成物は、必要に応じて低分子量の可塑剤が含まれてもよく、さらに、香料(flavorant)、甘味料、充填剤、防腐剤、pH調整剤、柔軟剤、増粘剤、着色料(たとえば顔料、染料、屈折性粒子など)、香料(たとえば甘味料、香味料)、安定剤、界面活性剤、強化剤および粘性低下剤(detackifier)からなる群より選択される少なくとも一つの添加物が含まれてもよい。
【0026】
組成物を用いる好ましい方法においては、その組成物は歯科用漂白組成物であり、漂白を必要とする歯に適用され、漂白の程度が達成された時に除去される。ある特定の態様においては、歯科用漂白組成物は半透明であり、使用者が満足する漂白の程度に達した時にこの組成物を除去する。
【0027】
本発明のさらに別の側面は、第一の水膨潤性水不溶性ポリマーまたは水溶性ポリマー;第二の水膨潤性水不溶性ポリマー;親水性ポリマーとその親水性ポリマーに水素結合する能力を有する相補的オリゴマーとの混合物;ならびに過酸化物、金属亜塩素酸塩、過ホウ酸塩、過炭酸塩、ペルオキシ酸およびそれらの組み合わせからなる群より選択される薬剤を含む組成物に関する。
【0028】
歯の手入れ、経粘膜組成物もしくは経皮組成物またはシステムに組み込むのに適したヒドロゲル膜を調製するための方法に関する本発明の別の側面が提供される。この方法は、第一の水膨潤性水不溶性ポリマーもしくは水溶性ポリマーの溶液またはゲル;第二の水膨潤性水不溶性ポリマー;親水性ポリマー;および親水性ポリマーに溶媒中で水素結合または静電結合する能力を有する相補的オリゴマーを調製する工程;基板上に溶液の層を付着させてその上を覆う工程;ならびに覆われた基板を約80℃〜約100℃の範囲の温度に約1〜約4時間の範囲の時間加熱し、それによって基板上にヒドロゲル膜を提供する工程を含む。
【0029】
本発明の組成物を形成するその他の方法においては、その方法は、第一の水膨潤性水不溶性ポリマーまたは水溶性ポリマー;第二の水膨潤性水不溶性ポリマー;親水性ポリマー;および親水性ポリマーに水素結合または静電結合する能力を有する相補的オリゴマーの混合物を、押出成形機に通して押し出された組成物を形成する、融解プロセス工程を含み;この組成物は適切な基板上の所望の厚さの膜として押し出される。
【0030】
この方法は、漂白剤などの活性剤をヒドロゲル膜に載せる工程をさらに含み、それによって歯科用漂白組成物を提供する。
【0031】
本発明の粘着性組成物は、従来技術よりも多数の顕著な利益を提供する。特に、本発明の組成物は:
(1)取り扱いの容易さを提供し;
(2)粘着性、吸着性、半透明性および膨潤性などの特性をコントロールでき、そして最適化できるように、製造中に容易に変更され;
(3)その組成物が湿るまで粘着性を示さないように水分の存在下で粘性を増加または減少できるように、製剤化されることが可能で;
(4)活性剤を含む場合、組成物から皮膚表面または粘膜表面上への(たとえば使用者の口内への)その漏出が最低限に抑えられ;
(5)歯または皮膚表面/粘膜表面からヒドロゲル組成物を除去することなく漂白の程度を使用者が目視できるように、半透明に加工されることが可能で;
(6)口の中の歯ぐきまたは粘膜に与えるダメージを最低限に抑え;
(7)快適にかつ控えめに付着することができ;
(8)残留物が残ることなく歯または皮膚表面/粘膜表面から容易に除去され;
(9)付着または作用の期間を延長することができ;そして
(10)種々の活性剤の放出を持続およびコントロールすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
(I.定義および術語)
本発明を詳細に説明する前に、他に指示がない限り、本発明は特定のヒドロゲル材料または製造プロセスに制限されないこと、従って変わり得ることを理解すべきである。本明細書で用いられる専門用語は特定の態様のみを説明する目的のものであり、制限を目的とするものではないことも理解すべきである。本明細書および添付の請求の範囲で用いられるように、単数形の「a」、「an」および「the」は、文脈が明らかにその他のことを指示する限り、複数の対象を含むということを注意すべきである。したがって、たとえば、「親水性ポリマー」への言及は、単一の親水性ポリマーだけではなく、二以上の異なる親水性ポリマーの組み合わせまたは混合物をも含み、「可塑剤」への言及は、単一の可塑剤だけではなく、二以上の異なる可塑剤の組み合わせまたは混合物などを含む。
【0033】
本発明の説明および請求の範囲において、下記に並べられた定義に従った次の専門用語を用いたい。
【0034】
「疎水性」ポリマーおよび「親水性」ポリマーの定義は、100%の相対湿度にてポリマーに吸収される水蒸気の量に基づく。この分類にしたがえば、疎水性ポリマーは100%の相対湿度(「rh」)にてわずかに1重量%以下の水を吸収するのに対して、中程度の親水性ポリマーは1〜10重量%の水を吸収し、親水性ポリマーは10重量%を超える水を吸収する能力を有し、そして吸湿性ポリマーは20重量%を超える水を吸収する。「水膨潤性」ポリマーは、水溶媒に浸した際にそれ自身の重量の少なくとも25重量%を超える水の量を吸収するものの一つであり、それ自身の重量の少なくとも50重量%を吸収するものが好ましい。
【0035】
「架橋された」という用語は、本明細書では、共有結合または非共有結合のいずれかを介してなされる分子内架橋および/または分子間架橋を含む組成物を意味する。「非共有」結合は、水素結合および静電(イオン)結合の両方を含む。
【0036】
「ポリマー」という用語は、直鎖および分岐鎖のポリマー構造を含み、架橋されたポリマーならびに(架橋されていてもいなくてもよい)コポリマーをも包含する。したがって、ブロックコポリマー、交互コポリマー、ランダムコポリマーなども含まれる。本明細書で「オリゴマー」として言及されるこれらの化合物は、約1000Da以下の、好ましくは約800Da以下の分子量を有するポリマーである。
【0037】
「ヒドロゲル」という用語は、相当な量の水を吸収して弾性ゲルを形成することができる水膨潤性ポリマーのマトリクスを標準的な意味で言及するために用いられ、ここで「マトリクス」は、共有性の架橋または非共有性の架橋によって互いに保持される高分子の三次元網目構造である。水性の環境に配置すると、乾燥したヒドロゲルが、架橋結合が可能な程度の範囲に膨潤する。
【0038】
「相」は伝統的に、不均一系の均質な部分と定義されている。それぞれ、「相分離」は均質な系の不均一系への転移である。従来では、相分離のプロセスは異なる組成物の相間の中間相の境界の形成が伴う。相分離の典型例は、ゾル−ゲル転移、溶液中での沈殿または自発的な多層(積層)構造の形成を含む。
【0039】
「活性剤」、「薬理学的な活性剤」および「薬物」という用語は、所望の薬理効果、生理効果を誘導する化学材料または化合物を参照するために、本明細書では交換して用いられ、そしてこの用語は治療効果、予防効果または美容効果がある薬剤を含む。この用語は、本明細書に具体的に記載されたこれらの活性剤の、薬学的に許容され得る薬学的に活性な誘導体およびアナログをも包含し、塩、エステル、アミド、プロドラッグ、活性を有する代謝産物、包接錯体およびアナログなどが挙げられるがこれらに制限されるわけではない。「活性剤」、「薬理学的な活性剤」および「薬物」という用語が用いられる時、活性剤そのものならびに薬学的に許容され得る薬学的に活性な塩、エステル、アミド、プロドラッグ、活性を有する代謝産物、包接錯体、アナログなどの両方が含まれることを理解すべきである。
【0040】
「歯科用漂白組成物」という用語は、本明細書で定義されるようなヒドロゲルおよび漂白剤を含む組成物を意味する。
【0041】
「漂白剤」という用語は通常、遺伝子かにより詳細に説明する予定の過酸化物または亜塩素酸塩などの酸化剤を意味する。いくつかの例においては、漂白剤は歯からステインを除去するための酵素またはその他の触媒的手段であってもよい。漂白剤は、一以上のさらなる漂白剤、界面活性剤、プラーク除去剤、歯石除去剤および研磨剤を含んでもよい。この漂白剤はさらなる治療上の利点を有してもよい。
【0042】
美容上有効な成分の「有効量」または「美容上有効な量」という用語は、無毒であるが所望の美容効果を提供するのに十分な美容上有効な成分の量を意味する。薬物または薬理学的な活性剤の「有効量」または「治療上有効量」という用語は、無毒であるが所望の治療効果を提供するのに十分な薬物または薬剤の量を意味することを目的とする。「有効」である量は、個人の年齢および一般的な条件、特に活性剤または薬剤などに依存して、対象ごとに変化し得る。したがって、常に正確な「有効量」を特定することが可能なわけではない。しかしながら、当業者による日常的な実験を利用して、あらゆる個別のケースにおける適切な「有効」な量を決定してもよい。さらに、本発明の組成物または剤形に組み込まれる活性剤の正確な「有効」な量または投与量は、治療上有効な範囲の活性剤の量を十分に送達できるような製剤に、その濃度が即座に適用可能な範囲内である限り重要ではない。
【0043】
「口腔」表面または「体表面」にあるような「表面」という用語は、口腔内及び口腔の周囲(たとえば、歯、唇、歯ぐき、粘膜)の表面や種々の皮膚の傷の表面だけでなく、皮膚、爪および粘膜組織(たとえば舌下、頬、膣、直腸、尿道)などの体表面を含むことを目的とする。
【0044】
「経皮的」なおよび「経粘膜的」な薬物の送達は、薬物が皮膚または粘膜組織を経由して通過し、個人の血流内に至り、それによって全身的な効果を提供するという、個人の皮膚表面または粘膜組織表面への薬物の投与という意味である。「経粘膜的」という用語は、薬物が粘膜組織を経由して通過し、個人の血流内に至るような、個人の粘膜(たとえば、舌下、頬、膣、直腸、尿道)表面への薬物の投与を含むことを目的とする。「経皮的」および「経粘膜的」という用語は、局所効果および全身的な効果の両方に及ぶことを目的とし、したがって、この用語は、たとえば、種々の皮膚および粘膜の疾患の治療にあるような局所的な投与、すなわち局所薬を皮膚または粘膜に送達し、それによって局所効果を提供することを含む。
【0045】
「粘性」および「粘着性」という用語は定性的である。しかしながら、本明細書で用いられるような「実質的に非粘着性」、「わずかな粘着性」および「粘着性」という用語を、次のようなPKI粘性測定法またはTRBT粘性測定法において得られる値を用いて定量化してもよい。「実質的に非粘着性」とは、約25g−cm/sec未満の粘性値を有するヒドロゲル組成物を意味し、「わずかな粘着性」とは、約25g−cm/sec〜約100g−cm/secの範囲の粘性値を有するヒドロゲル組成物という意味であり、そして「粘性」とは、少なくとも100g−cm/secの粘性値を有するヒドロゲル組成物という意味である。
【0046】
「水不溶性」という用語は、水における(20℃の水で測定した)その溶解性が5重量%未満、好ましくは3重量%未満、より好ましくは1重量%未満である化合物または組成物を意味する。同様に、「水溶性」という用語は、水における(20℃の水で測定した)その溶解性が5重量%を超える、好ましくは3重量%を超える、より好ましくは1重量%を超える化合物または組成物を意味する。
【0047】
「半透明」という用語は、本明細書では、材料を通して目的または像を見ることができるような、光を透過する能力を有する材料を示すために用いられる。本明細書の半透明性材料は、材料が光学的に澄んでいることを意味する「透明」であってもなくてもよい。「半透明」という用語は、材料は「不透明」ではなく、その材料を通して目的または像を見ることができないようなケースを示す。
【0048】
(II.組成物)
本発明の組成物は、水膨潤性水不溶性ポリマーまたは水溶性ポリマー、親水性ポリマーとその親水性ポリマーに水素結合する能力を有する相補的オリゴマーとの混合物、および漂白剤などの任意の活性剤から構成される。この組成物は、第二の水膨潤性水不溶性ポリマーをさらに含む。ある特定の態様においては、水膨潤性水不溶性ポリマーの一方または両方が親水性ポリマーとH結合する能力をも有する。同様に、ある特定の態様においては、水溶性ポリマーおよび水膨潤性水不溶性ポリマーの一方または両方が、親水性ポリマーとH結合する能力をも有する。
【0049】
本発明の非固体組成物の一つの態様においては、第一の水膨潤性水不溶性ポリマー(または水溶性ポリマー)および第二の水膨潤性水不溶性ポリマーは組成物の約0.1〜20重量%、好ましくは約4〜15重量%を占め;そして親水性ポリマーは組成物の約1〜30重量%、好ましくは約5〜25重量%を占める。本発明の非固体組成物の別の態様においては、第一の水膨潤性水不溶性ポリマー(または水溶性ポリマー)および第二の水膨潤性水不溶性ポリマーは組成物の約1〜30重量%、好ましくは約5〜25重量%を占め;そして親水性ポリマーは組成物の約0.1〜20重量%、好ましくは約4〜15重量%を占める。活性剤が存在する場合、活性剤は非固体組成物の約0.1〜60重量%を占めることができ、好ましくは約1〜40重量%を占めることができる。相補的オリゴマーは非固体組成物の約0.1〜20重量%を占めることができ、好ましくは約0.5〜10重量%を占めることができる。好ましくは、相補的オリゴマーは、非固体組成物における親水性ポリマー/相補的オリゴマーの混合物の約1〜85重量%を占め、好ましくは約5〜50重量%を占める。
【0050】
本発明の固体組成物の一つの態様においては、第一の水膨潤性ポリマー(または水溶性ポリマー)および第二の水膨潤性水不溶性ポリマーは組成物の約1〜20重量%を占め、好ましくは約6〜12重量%を占め;そして親水性ポリマーは組成物の約20〜80重量%を占め、好ましくは約40〜60重量%を占める。本発明の固体組成物の別の態様においては、第一の水膨潤性ポリマー(または水溶性ポリマー)および第二の水膨潤性水不溶性ポリマーは組成物の約20〜80重量%を占め、好ましくは約40〜60重量%を占め;そして親水性ポリマーは組成物の約1〜20重量%を占め、好ましくは約6〜12重量%を占める。活性剤が存在する場合、活性剤は固体組成物の約0.1〜60重量%を占めることができ、好ましくは約1〜30重量%を占めることができる。相補的オリゴマーは固体組成物の約10〜50重量%を占めることができ、好ましくは約15〜35重量%を占めることができる。好ましくは、相補的オリゴマーは、固体組成物における親水性ポリマー/相補的オリゴマーの混合物の約10〜80重量%を占め、好ましくは約20〜50重量%を占める。
【0051】
一つの態様においては、この組成物は歯科用漂白組成物であり、ここでの漂白剤は組成物が適用された歯の表面を漂白する機能を有する。しかしながら、この漂白剤は他の有用性、たとえば皮膚を漂白するための治療剤またはその他のタイプの化粧品としての有用性を有していてもよい。したがって、本明細書に記載された組成物は、病気の状態を治療するために、体表面(たとえば歯、爪、皮膚、粘膜など)に適用するための医薬組成物としての有用性を見出してもよい。たとえば、過酸化水素は漂白剤だけではなく、防腐剤およびにきびを治療する性質をも有する。したがって、本発明は、本発明の過酸化水素含有組成物を体表面に適用することによって、感染症またはにきびを治療することをも検討する。その他の病気の状態は、実例として真菌の感染、にきび、傷、皮膚の脱色などを含むがこれらに制限されるわけではない。さらに、多数の活性剤を本発明の組成物に取り込んで、口腔に影響する種々の病気を治療する。
【0052】
(A.水膨潤性水不溶性ポリマーおよび水溶性ポリマー)
第一の水膨潤性水不溶性ポリマーは体表面接触組成物の一部であり、そしてたとえば粘着性またを付与することに、膨潤性および溶解性を制御することに役立つ。第二の水膨潤性水不溶性ポリマーは、体表面接触層の上部に保護膜の層を提供することに役立つ。
【0053】
第一のおよび第二の水膨潤性水不溶性ポリマーは、同一の一般的なクラスのポリマーから由来してもよいが、それぞれが水溶媒での異なる溶解特性を有するように選択されるだろう。第一のポリマーは、水溶媒、たとえば水中で、選択されたpHの範囲内、通常は約pH5.5未満で不溶性となるように選択される。すなわち、第一のポリマーはpH依存性の溶解性を有する。第一のポリマーは、通常は5.5を超えるpHで水溶媒中に解けるだろう。第二のポリマーは、すべてのpH値で水溶媒中で不溶性となるように選択される。すなわち、第二のポリマーはpH非依存性の不溶性を示す。このように、組成物をたとえば通常の口腔内で見られるような6〜8のpHなどの水性の環境に添加する場合、(高pHでは可溶性である)第一のポリマーと第二のポリマーとの間に相分離が生じる。このことの結果、第二の水膨潤性水不溶性ポリマーが、第一のポリマー/親水性ポリマー/相補的オリゴマー膜上に膜を形成することとなる。
【0054】
第二のポリマーで形成される外側の膜は水溶媒には不溶であるが、水が浸透する性質は残っている。やがて、唾液などによって徐々に洗い流される微小な粒子に分けられるのに十分な期間放置することによって、下側の膜層が溶解して外側の膜のいずれかを除去することができる。使用者の指または歯ブラシでやさしくこすることによって、下側の膜および外側の膜の両者を除去することを促進することもできる。
【0055】
第二の水膨潤性水不溶性ポリマーに対する第一のものの重量比は、約1:3〜3:1の範囲内であってよい。好ましい態様においては、この比率は約1.5:1〜2:1の範囲内である。
【0056】
第一のおよび第二の水膨潤性水不溶性ポリマーは、水溶液に浸した時に膨潤する能力を有するポリマーである。水または水溶液に浸した時、このポリマーは少なくとも25重量%まで、好ましくはそれ自身の重量の少なくとも50重量%まで、徐々に膨潤する。いくつかの態様においては、特定の親水性ポリマーを利用して、組成物がその乾燥重量の1400重量%もの重量まで膨潤してもよい。
【0057】
(1.第一の水膨潤性水不溶性ポリマー)
第一のポリマーとして選択されるポリマーのタイプ、組成比および混合物中の水の含有量に基づいて、粘着性の特徴も調整することができる。水和に関して所望の粘着性の特徴が提供できるように、第一の水膨潤性水不溶性ポリマーが選択される。すなわち、水と接触する前に湿った表面と接触すると粘着性となるが、一般的な実質的な非粘着性を組成物に提供する。
【0058】
第一の水膨潤性水不溶性ポリマーは、水溶液に浸した場合、少なくともある程度の膨潤する能力を有するが、約5.5未満のpH値の水には不溶である一方、口の中などで遭遇するより高いpH値では可溶性である。
【0059】
第一の水膨潤性水不溶性ポリマーは、アクリレートベースのポリマーまたはコポリマー、すなわちアクリル酸またはアクリル酸エステルのポリマーまたはコポリマー(「アクリレート」ポリマー)であり得る。
【0060】
アクリレートポリマーは、第一の水膨潤性ポリマーとしての使用に特に適しており、一般的に、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルおよび/またはその他のビニルモノマーから作られる。適切なアクリレートポリマーは、Rohm Pharma社(ドイツ)から商標「Eudragit」の下で販売されているこれらのコポリマーである。Eudragit(登録商標)シリーズのE、L、S、RL、RSおよびNEコポリマーは、有機溶媒に溶解した状態で、水に分散した状態でまたは乾燥した粉末として利用可能である。好ましいアクリレートポリマーは、メタクリル酸とメタクリル酸メチルとのコポリマーであり、たとえば、Eudragit LおよびEudragit Sシリーズのポリマーである。特に好ましいこのようなコポリマーは、Eudragit L 30D−55およびEudragit L 100−55(後者のコポリマーは水で再構築することが可能な、Eudragit L 30D−55の噴霧乾燥物である)である。Eudragit L 30D−55およびEudragit L 100−55のコポリマーの分子量は約135,000Daであり、エステル基に対する遊離カルボキシル基の比率は約1:1である。Eudragit L 100−55コポリマーは、pH5.5以下の水溶液には一般的に不溶であり、それゆえに、第一の水膨潤性ポリマーとしての利用に特に適している。別の特に適切なメタクリル酸−メタクリル酸メチルコポリマーは、Eudragit S−100であり、このものは、エステル基に対する遊離カルボキシル基の比率が約1:2である点で、Eudragit L 30D−55とは異なる。Eudragit S−100はpH5.5以下では不溶性であるが、同様にEudragit L 30D−55も5.5〜7.0の範囲のpHを有する水溶液にはほとんど溶けない。このコポリマーは、pH7.0を超えれば可溶性である。Eudragit L 100を用いてもよく、このものは、pH6.0以下での不溶性の範囲では、Eudragit L 30D−55とEudragit S−100との間のpH依存性の溶解性の特徴を有する。Eudragit L 30D−55、L 100−55、L 100およびS 100を、同様のpH依存的溶解性を有するその他の許容され得るポリマーと置換できることは、当業者によって高く評価されるだろう。
【0061】
その他の適切なアクリレートポリマーは、BASF社(ドイツ)から商標「Kollicoat」の下で市販されているこれらのメタクリル酸/アクリル酸エチルコポリマーである。たとえば、Kollicoat MAEはEudragit L 100−55と同じ分子構造を有する。
【0062】
第一の水膨潤性ポリマーがアクリル酸ポリマーまたはアクリレートポリマーである場合、繰り返し乾燥させることができるヒドロゲルが提供される。すなわち、水およびあらゆるその他の溶媒を除去した後、乾燥させたヒドロゲルを水を添加してその本来の状態に再構成させてもよい。さらに、水膨潤性アクリル酸/アクリレートポリマーを用いて調製される親水性ヒドロゲルは、一般的に、水と接触する前は実質的に非粘着性であるが、湿った表面、たとえば、歯の表面などの口の内側で見られる表面との接触時に粘着性となる。水との接触前では非粘着性であるというこの性質によって、ヒドロゲルが粘着性になる前またはなった時に、選択された表面上での位置決定または位置変更が可能となる。一旦水和すると、ヒドロゲルは粘着性となり、歯の表面または皮膚表面/粘膜表面に付着する。
【0063】
さらに、アクリレート含有組成物は一般的に、pHが5.5未満の水またはその他の水溶液中にヒドロゲル組成物が浸された時に約400%〜1500%の範囲に膨潤することができるが、水性の環境における膨潤性の速度および程度が所定のpH依存性を示すように、親水性ポリマー/相補的オリゴマー混合物に対するアクリレートポリマーの比率を選択することができる。この特徴によって、たとえば、組成物に過酸化物、ペルオキシ酸、亜塩素酸塩、安定剤、香料などを載せるといった、漂白剤またはその他の活性剤の遡及的な組み込みをも提供される。
【0064】
対照的に、水膨潤性ポリマーの一つとしてセルロースエステルを組み込むことによって、湿った表面に適用する前にヒドロゲルが粘着性になるが、水を吸着した時点で非粘着性となる。口から製品を最終的に除去するために粘性を下げることが望まれる場合、このような組成物が望ましいだろうことが評価されるだろう。
【0065】
(2.水溶性ポリマー)
適切な水溶性ポリマーは、実例として水溶性セルロースに由来するポリマー;ポリビニルアルコール;コラーゲン;および天然の多糖類を含むが、これらに制限されるわけではない。
【0066】
水溶性セルロースに由来するポリマーの具体例は、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、セルロース水和物(セロファン)およびヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む。
【0067】
天然の多糖の具体例は、ガムアガーなどの種々の起源の寒天;アルギン酸、アルギン酸の塩(たとえばアルギン酸カルシウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸ナトリウム)およびアルギン酸の誘導体(たとえばプロピレングリコールアルギナート、Kelcoloid(登録商標)、Monsanto社)などのアルギン酸塩;カッパ−、イオタ−およびラムダカラゲナンを含むカラゲナン;キチン;キトサン;グルコマンナン;ジェランガム(Kelcogel(登録商標)、Monsanto社);ゼラチン;グアールガム(TIC Gums社);アラビアガム;インドガム;カラヤガム;トラガカントガム;イナゴマメガム;ペクチンおよびアミロペクチンなどのペクチン類;プルラン;デンプンおよびバレイショの酢酸デンプンなどのデンプン誘導体、Clearam(登録商標) CH10、Roquette社;タマリンドガム;キサンタンガムなどのキサン類;ならびにこれらの組み合わせを含む。
【0068】
(3.第二の水膨潤性水不溶性ポリマー)
第二の水膨潤性水不溶性ポリマーは、水溶液に浸した場合、少なくともある程度の膨潤する能力を有するが、すべてのpH値の水には不溶である。
【0069】
第二の水膨潤性水不溶性ポリマーは、セルロース系ポリマー、セルロースエステルまたはアクリレートベースのポリマーまたはコポリマー、すなわちアクリル酸またはアクリル酸エステルポリマーまたはコポリマー(「アクリレート」ポリマー)であり得る。第二のポリマーは、相分離の前にある程度の所望の粘着性を提供してもよい。たとえば、第二のポリマーがセルロースエステルである場合、組成物は一般的に、水と(たとえば湿った表面と)接触する前に粘着性であるが、水分を吸収する組成物のように、徐々に粘性を失う。第二のポリマーがアクリレートポリマーまたはコポリマーである場合、水と接触する前に、一般的に実質的に非粘着性の組成物が提供されるが、湿った表面に接触した途端に粘着性となる。
【0070】
セルロースエステルの具体例は、たとえば、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオナート(CAP)、セルロースアセテートブチラート(CAB)、セルロースアセテートフタラート、セルロースプロピオナート(CP)、セルロースブチラート(CB)、セルロースプロピオナートブチラート(CPB)、セルロースジアセテート(CDA)、セルローストリアセテート(CTA)などを含む。これらのセルロースエステルは、米国特許第1,698,049号、第1,683,347号、第1,880,808号、第1,880,560号、第1,984,147号、第2,129,052号および第3,617,201号に記載されており、本技術分野において公知の技術を用いて調製してもよく、市販品を購入してもよい。本明細書に適した、市販されているセルロースエステルは、CA 320、CA 398、CAB 381、CAB 551、CAB 553、CAP 482、CAP 504を含み、これらのすべてはテネシー州キングズポートのEastman Chemical社から販売されている。このようなセルロースエステルは典型的には約10,000〜約75,000の間の数平均分子量を有する。
【0071】
一般的に、セルロースエステルはセルロースおよびセルロースエステルモノマー単位の混合物を含み;たとえば、市販されているセルロースアセテートブチラートは、セルロースブチラートモノマー単位および非エステル化セルロースモノマー単位だけでなく、セルロースアセテートモノマー単位を含み、その一方、セルロースアセテートプロピオナートは、セルロースプロピオナートなどのモノマー単位を含む。本明細書で好ましいセルロースエステルは、下記に示される量のブチリル、プロピオニル、アセチルおよび非エステル化(OH)セルロースを有する、セルロースアセテートプロピオナート組成物およびセルロースアセテートブチラート組成物である:
【0072】
【化1】

好ましい分子量、ガラス転移温度(T)および融点(T)も示されている。さらに、適切なセルロース系ポリマーは通常、0.5グラムのサンプルを、フェノール/テトラクロロエタンの60/40の重量比の100mL溶液中で、25℃の温度で測定されるところの約0.2〜約3.0デシリットル/グラムの、好ましくは約1〜約1.6デシリットル/グラムのインヘレント粘度(I.V.)を有する。溶媒のキャスティング技術を用いて調製する場合、水膨潤性水不溶性ポリマーはより大きな凝集力が提供されるように選択されるべきであり、その結果、膜の形成を促進する(一般的に、たとえばセルロースアセテートプロピオナートは、セルロースアセテートブチラートよりも大きな程度に凝集力を高める傾向にある)。
【0073】
セルロース系のものの具体例は、たとえば、メチルセルロースおよびエチルセルロースが挙げられる。
【0074】
アクリレートポリマーも第二の水膨潤性ポリマーとしての使用に特に適しており、Eudragit(登録商標)ポリマーおよびKollicoatポリマーとして上記に記載されている。しかしながら、第二の水膨潤性ポリマーとして用いるためには、pH非依存性の溶解性を持つようなアクリレートポリマーを選択する。Eudragit(登録商標) RLおよびEudragit RSシリーズ中には数多くのpH非依存性ポリマーが存在し、RL 30D、RL PO、RL 100、RS 30D、RS POおよびRS 100が挙げられる。Eudragit RL 100とRS 100とのコポリマーが、第二の水膨潤性ポリマーとして特に適している。
【0075】
(B.親水性ポリマー)
ヒドロゲル組成物の第二の成分は、親水性ポリマーとその親水性ポリマーに水素結合する能力を有する相補的オリゴマーとの混合物であり、必要に応じて、このオリゴマーは同様にその親水性ポリマーとイオン結合または共有結合する能力を有してもよい。この親水性ポリマーは一般的に、比較的高分子量のポリマーであり、その相補的オリゴマーは一般的に、より低分子量のポリマーである。
【0076】
適切な親水性ポリマーには、N−ビニルラクタムモノマー、カルボキシビニルモノマー、ビニルエステルモノマー、カルボキシビニルモノマーのエステル、ビニルアミドモノマーおよび/またはヒドロキシビニルモノマーに由来する反復単位が含まれる。このようなポリマーには、具体的には、ポリ(N−ビニルラクタム)、ポリ(N−ビニルアクリルアミド)、ポリ(N−アルキルアクリルアミド)、置換および非置換のアクリル酸ポリマーおよびメタクリル酸ポリマー(たとえばポリアクリル酸およびポリメタクリル酸)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルアミン、そのコポリマーおよび親水性モノマーのその他のタイプとのコポリマー(たとえば酢酸ビニル)が含まれる。
【0077】
本明細書で有用なポリ(N−ビニルラクタム)は、非架橋のホモポリマー、またはポリ(N−ビニルラクタム)コポリマーの全モノマー単位の大部分に相当するN−ビニルラクタムモノマー単位とN−ビニルラクタムモノマー単位とのコポリマーが好ましい。本発明と同時に用いることが好ましいポリ(N−ビニルラクタム)は、次の一以上のN−ビニルラクタムモノマー:N−ビニル−2−ピロリドン;N−ビニル−2−バレロラクタム;およびN−ビニル−2−カプロラクタムを重合することによって調製される。有用な、N−ビニルラクタムモノマー単位を伴う非N−ビニルラクタムコモノマーの制限を意図しない例としては、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、ヒドロキシエチルメタクリラート、アクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸またはその塩、および酢酸ビニルが挙げられる。
【0078】
ポリ(N−アルキルアクリルアミド)には、具体的には、ポリ(メタクリルアミド)およびポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAM)が含まれる。
【0079】
カルボキシビニルモノマーのポリマーは通常、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、イタコン酸、およびマレイン酸またはフマル酸、マレイン酸無水物またはその混合物などの1,2−ジカルボン酸の無水物から形成され、好ましい親水性ポリマーは、ポリアクリル酸およびポリメタクリル酸を含むこのクラスの範囲内のものであり、ポリアクリル酸が最も好ましい。
【0080】
本明細書での好ましい親水性ポリマーは次のものである:ポリ(N−ビニルラクタム)、特にポリビニルピロリドン(PVP)およびポリビニルカプロラクタム(PVCap);ポリ(N−ビニルアセトアミド)、特にポリアセトアミドそのもの;カルボキシビニルモノマーのポリマー、特にポリアクリル酸およびポリメタクリル酸;ならびにコポリマーおよびその混合物。PVPおよびPVCapが特に好ましい。
【0081】
親水性ポリマーの分子量は重要ではない;しかしながら、親水性ポリマーの数平均分子量は一般的に、約100,000〜2,000,000の範囲内であり、より典型的には約500,000〜1,500,000の範囲内である。オリゴマーは、それに水素結合で結合する能力を有する親水性ポリマーに「相補的」である。好ましくは、相補的オリゴマーは、ヒドロキシル基、アミノ基またはカルボキシル基で末端処理されたものである。オリゴマーは通常、約−100℃〜約−30℃の範囲のガラス転移温度Tと、約20℃より低温の融点Tを有する。オリゴマーはアモルファスでもよい。親水性ポリマーのT値とオリゴマーのそれとの間の差は、好ましくは約50℃を超え、より好ましくは約100℃を超え、そして最も好ましくは約150℃〜約300℃の範囲内のものである。親水性ポリマーおよび相補的オリゴマーは、これらの非混合成分間の中間体と適合性を有するべきである、すなわち単一のTを示す均質な混合物を形成する能力を有するべきである。
【0082】
(C.相補的オリゴマー)
一般的に、相補的オリゴマーは、約45〜800の範囲の分子量を持つことになり、好ましくは約45〜600の範囲である。好ましい相補的オリゴマーは、ポリエチレングリコール400などの低分子量のポリアルキレングリコール(300〜600の分子量)であり、このものは低分子量の可塑剤として機能することもできる。あるいは、追加の低分子量の可塑剤として異なる化合物を組み込むこともでき、以下に記載される低分子量の可塑剤のあらゆるケースにおいて用いることができる。本発明の一つの態様においては、相補的オリゴマーは、相補的な低分子量またはオリゴマーの可塑剤であり、この可塑剤は親水性ポリマーに水素結合する能力を有する分子の一つあたり少なくとも二つの官能基を含む。
【0083】
いくつかの例においては、相補的オリゴマーは低分子量の可塑剤として機能してもよい。あるいは、もし含めるのならば、追加の低分子量の可塑剤として異なる化合物を組み込むこともでき、組成物の約30〜35重量%として存在することになる。
【0084】
適切な相補的オリゴマーの例としては、低分子量のポリアルコール(たとえばグリセロール)、エチレングリコールおよびプロピレングリコールなどのモノマーおよびオリゴアルキレングリコール、エーテルアルコール(たとえばグリコールエーテル)、二炭酸(carbonic diacid)、ブタンジオール〜オクタンジオールまでのアルカンジオールが挙げられ、ポリアルキレングリコールのカルボキシル基終端誘導体およびアミノ基終端(amino−terminated)誘導体を含むが、これらに制限されることはない。ポリアルキレングリコール、必要に応じてカルボキシル基終端化されたものでもよい、は、本明細書においては好ましく、約300〜600の範囲の分子量を有するポリエチレングリコールは、一つの最適な相補的オリゴマーである。
【0085】
前記の事項から、単一の化合物が、たとえば約300〜600の範囲の分子量を有するポリエチレングリコールなどの低分子量のポリアルキレングリコールが、相補的オリゴマーおよび低分子量の可塑剤の両方として機能し得ることが理解されるだろう。
【0086】
Feldsteinらによる米国公開特許公報第2002/0037977号で議論されているように、前述の混合物における相補的オリゴマーに対する親水性ポリマーの比率は、接着強度および凝集力の両方に影響を与える。前述の特許出願において説明されているように、相補的オリゴマーによって、親水性ポリマー/相補的オリゴマー混合物のガラス転移が、次の式によって与えられるFoxの式によって予測された程度よりも大きく低下する:
【0087】
【化2】

ここで、Tg predictedは、親水性ポリマー/相補的オリゴマー混合物の予測されたガラス転移温度であり、wpolは混合物における親水性ポリマーの重量比であり、wplは混合物における相補的オリゴマーの重量比であり、Tg polは親水性ポリマーのガラス転移温度であり、そしてTg plは相補的オリゴマーのガラス転移温度である。この特許出願でも説明されたように、Tg predictedからの所定の偏差が与えられるように成分およびそれらの相対量を選択することによって、親水性ポリマーおよび相補的オリゴマーから、最適化された接着強度および凝集力を有する粘着性組成物を調製することができる。一般的に、粘着性を最大限に高めるためには、Tg predictedからの所定の偏差を最大限に負の偏差とする一方、粘着性を最小限に抑えるためには、Tg predictedからのあらゆる負の偏差を最小限にする。
【0088】
相補的オリゴマーそれ自身が可塑剤として機能してもよいので、追加された可塑剤を組み込むことは一般的に必須ではない。しかしながら、追加の低分子量の可塑剤を組成物に封入することは任意であり、そしていくつかのケースにおいては有利となろう。適切な低分子量の可塑剤には:ジメチルフタラート、ジエチルフタラート、ジプロピルフタラート、ジ(2−エチルヘキシル)フタラート、ジイソプロピルフタラート、ジアミルフタラートおよびジカプリルフタラートによって代表されるジアルキルフタラート、ジシクロアルキルフタラート、ジアリールフタラートおよび混合されたアルキルアリールフタラート;トリブチルリン酸、トリオクチルリン酸、トリクレシルリン酸およびトリフェニルリン酸などのアルキルリン酸およびアリールリン酸;トリメチルシトラート、トリエチルシトラート、トリブチルシトラート、アセチルトリエチルシトラートおよびトリヘキシルシトラートなどのアルキルシトラートおよびクエン酸エステル;ジオクチルアジパート(DOA)などのジアルキルアジパートが含まれ、さらに、ビス(2−エチルヘキシル)アジパート)と称されるもの、ジエチルアジパート、ジ(2−メチルエチル)アジパートおよびジヘキシルアジパート;ジエチルタルトラートおよびジブチルタルトラートなどのジアルキルタルトラート;ジエチルセバサート、ジプロピルセバサートおよびジノニルセバサートなどのジアルキルセバサート;ジエチルスクシナートおよびジブチルスクシナートなどのジアルキルスクシナート;アルキルグリコラート、アルキルグリセロラート、グリコールエステル、およびグリセロールジアセテート、グリセロールトリアセテート(トリアセチン)、グリセロールモノラクタートジアセテートなどのグリセロールエステル、メチルフタリルエチルグリコラート、ブチルフタリルブチルグリコラート、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールジブチラート、トリエチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジブチラートおよびトリエチレングリコールジプロピオナート;ならびにその混合物が含まれる。連続した親水相にとって好ましい低分子量の可塑剤は、トリエチルシトラート、ジエチルフタラートおよびジオクチルアジパートであり、ジオクチルアジパートが最も好ましい。
【0089】
本発明の組成物の性質は、加工の間に一以上のパラメータを調整することによって容易にコントロールできることである。たとえば、粘着性を高めるか、低下させるかまたは消去するために、製造の間に組成物の接着強度をコントロールすることができる。種々の成分のタイプおよび/または量を変えることによって、または製造様式を変えることによって、このことを達成することができる。さらに、加工プロセスに関して言えば、従来の溶融押し出しプロセスを用いて調製された組成物は一般的に、溶液流延技術を利用して調製された組成物よりも、必ずしも粘着性が弱いわけではない。さらに、異なる水膨潤性ポリマーを選択することによって、そして連続した親水相を含むこれらの組成物における親水性ポリマー/相補的な可塑剤の混合物に対する水膨潤性水不溶性ポリマーの比率を調整することによって、水と接触した際にヒドロゲル組成物が膨潤するだろう程度を変化させることができる。これらの組成物の外見が、清澄な透明から半透明へ、不透明へ変化してもよい。さらに、親水相における成分の相対量を変化させることによって(たとえばセルロースエステルの量を減らすことによって)、または加工方法を変化させることによって、特定の組成物を半透明にしてもよい(溶融押し出し法よりも溶液流延法を利用することによって、半透明性のヒドロゲルをより容易に得ることができる)。このような方法で、半透明組成物によって、使用者が、治療プロセスまたは美容(たとえば漂白)プロセスをそれが生じている間に観察することが可能になり、所望の効果が得られた時、たとえば歯が十分に漂白された時を決定することが可能になる。
【0090】
(III.活性剤)
この組成物は、皮膚および粘膜組織だけではなく、歯および周囲の組織に関する生理状態を治療することに有用な薬学的に有効なあらゆる成分を含んでもよい。この活性剤は、組成物から放出されて望ましくない生理状態を治療することができる任意の物質であってよい。歯または周囲の組織に関する望ましくない生理状態であって、現行の手段による治療に従う状態としては:口臭;歯周および口内感染;歯周の病変;虫歯または虫歯になること;歯肉炎;ならびにその他の歯周病がある。
【0091】
このような薬剤は、美容上または治療上有効な量だけ存在することになる。これらには、具体的には、アドレナリン作用薬、副腎皮質ステロイド、副腎皮質抑制剤、嫌酒薬、アルドステロン拮抗薬、アミノ酸、アンモニア解毒薬、タンパク質同化剤、興奮剤、鎮痛剤、アンドロゲン剤、麻酔剤、食欲抑制化合物、食欲抑制剤、拮抗薬、脳下垂体前葉活性化剤および脳下垂体前葉抑制剤、駆虫剤、にきび治療薬、抗アドレナリン作用薬、抗アレルギー薬、抗アメーバ剤、抗アンドロゲン剤、抗貧血剤、抗狭心症薬、抗不安薬、抗関節炎薬、抗喘息薬、抗アテローム性動脈硬化剤、抗菌剤、抗胆石剤、胆石形成防止剤、抗コリン薬、抗凝血剤、抗コクシジウム剤、抗痙攣薬、抗鬱薬、抗糖尿病剤、下痢止め薬、抗利尿薬、解毒剤、運動異常治療剤、制吐剤、抗癲癇薬、抗エストロゲン剤、抗線維素溶解薬、抗真菌剤、緑内障治療剤、抗血友病薬、抗血友病因子、抗出血剤、抗ヒスタミン薬、抗高脂血症薬、抗高リポ蛋白血症薬、血圧降下薬、抗低血圧薬、抗感染薬、抗炎症薬、ケラチン形成防止剤、抗マラリア薬、抗菌薬、抗片頭痛薬、細胞分裂抑制薬、抗かび剤、制嘔吐剤、抗腫瘍薬、抗ガン性の補助的な相乗作用剤、抗好中球減少症薬、抗強迫観念薬、駆虫剤、抗パーキンソン薬、抗ニューモシスティス薬、増殖抑制剤、前立腺肥大抑制剤、抗原虫薬、止痒剤、抗乾癬薬、抗精神病薬、抗リウマチ剤、抗住血吸虫薬、抗脂漏剤、鎮痙薬、抗血栓剤、鎮咳薬、抗潰瘍剤、抗尿結石剤、抗ウイルス薬、食欲抑制剤、良性前立腺増殖症治療剤、血糖調整剤、骨吸収阻害剤、気管支拡張薬、カルボニックアンヒドラーゼ阻害剤、心抑制薬、心保護剤、強心剤、循環器官用薬、胆汁分泌促進薬、コリン作用薬、コリン作動薬、コリンエステラーゼ不活性化剤、コクシジオスタット剤、認識補助剤および認識賦活剤、抑制剤、診断補助剤、利尿薬、ドーパミン作動薬、外部寄生生物撲滅薬、催吐薬、酵素阻害剤、エストロゲン、線維素溶解薬、遊離酸素ラジカルスカベンジャー、胃腸運動性促進剤、糖質コルチコイド、性腺刺激成分、育毛促進剤、止血剤、ヒスタミンH2受容体拮抗薬、ホルモン、抗鬱剤、抗低血糖剤、脂質低下薬、血圧降下剤、HMGCoAレダクターゼ阻害剤、免疫剤、免疫調整剤、免疫調節剤、免疫賦活剤、免疫抑制剤、インポテンス治療添加剤、阻害剤、角質溶解薬、LHRH作用薬、肝障害治療剤、ルテオリジン剤、記憶補助剤、メンタルパフォーマンス向上剤、気分調整剤、粘液溶解薬、粘膜保護剤、散瞳薬、鼻詰まりの薬、神経弛緩薬、神経筋遮断薬、神経保護薬、NMDA拮抗薬、非ホルモン性ステロール誘導体、子宮収縮薬、プラスミノゲン活性化因子、血小板活性化因子拮抗薬、血小板凝集能阻害剤、脳卒中後および頭部外傷後の治療剤、増強剤、プロゲスチン、プロスタグランジン、前立腺肥大阻害剤、甲状腺刺激プロホルモン剤、向精神薬、放射性薬剤、調整剤、緩下薬、再配分剤、抗疥癬薬、硬化剤、鎮痛剤、鎮痛催眠剤、選択的アデノシンA1拮抗薬、セロトニン拮抗薬、セロトニン阻害剤、セロトニン受容体拮抗薬、ステロイド、興奮剤、抑制剤、共力剤、甲状腺ホルモン、甲状腺阻害剤、甲状腺ホルモン様薬剤、精神安定剤、不安定狭心症治療剤、尿酸排出剤、血管収縮剤、血管拡張剤、外傷治療薬、創傷治療薬、キサンチンオキシダーゼ阻害剤などがあるが、これらに制限されるわけではない。
【0092】
一つの態様においては、上記のヒドロゲル組成物は漂白剤を含み、それによって、口に投与された時に送達システムとして機能する。本発明のヒドロゲル組成物に「載せられた」漂白剤の放出は通常、膨潤性がコントロールされた拡散メカニズムを介する水の吸着性および薬剤の脱離の両方を必要とする。漂白剤含有ヒドロゲル組成物は、たとえば局所用の医薬製剤のそれと類似のやり方で用いてもよい。
【0093】
適切な歯科用漂白組成物は、過酸化物、金属亜塩素酸塩、過ホウ酸塩、過炭酸塩、ペルオキシ酸およびその組み合わせを含む。適切な過酸化物化合物は、過酸化水素、過酸化カルシウム、過酸化カルバミドおよびその混合物を含む。好ましい過酸化物は、過酸化水素および過酸化カルバミドである。その他の適切な過酸化物は、t−ブチルペルオキシドおよび2,2−ビス−(t−ブチルペルオキシ)プロパンなどの過酸化ジアルキル、過酸化ベンゾイルおよび過酸化アセチルなどの過酸化ジアシル、t−ブチルペルベンゾアートおよびt−ブチル−ペル−2−エチルヘキサノアートなどの過エステル、ジセチルペルオキシジカルボナートおよびジシクロヘキシルペルオキシジカルボナートなどのペルジカルボナート、シクロヘキサノンペルオキシドおよびメチルエチルケトンペルオキシドなどのケトンペルオキシド、ならびにクメンヒドロペルオキシドおよびtert−ブチルヒドロペルオキシドなどのヒドロペルオキシドなどの有機過酸化物が挙げられるが、これらに制限されるわけではない。漂白剤は過酸化水素または過酸化カルバミドなどの過酸化物が好ましく、過酸化水素が最も好ましい。
【0094】
適切な金属亜塩素酸塩は、亜塩素酸カルシウム、亜塩素酸バリウム、亜塩素酸マグネシウム亜塩素酸リチウム、亜塩素酸ナトリウムおよび亜塩素酸カリウム;次亜塩素酸塩および二酸化塩素を含む。好ましい亜塩素酸塩は亜塩素酸ナトリウムである。
【0095】
別の態様においては、薬理学的な活性剤は、たとえば、非ステロイド性抗炎症/鎮痛剤;ステロイド性抗炎症剤;局所麻酔剤;殺菌剤/消毒剤;抗生物質;抗真菌剤;歯の知覚過敏防止剤;フッ素系虫歯予防剤/抗う食剤;歯石除去剤/抗歯石形成剤;プラーク、歯石または虫歯の形成を阻害する酵素;ピロリン酸塩などの研磨剤;エチレンジアミン四酢酸の四ナトリウム塩などの金属キレート剤;ブチル化ヒドロキシアニソールなどの酸化防止剤;ブチル化ヒドロキシトルエン;歯およびその周囲の組織に局所的に送達するための栄養補給剤などであり得る。
【0096】
適切な非ステロイド性抗炎症/鎮痛剤は、アセトアミノフェン;サリチル酸メチル;サリチル酸モノグリコール;アスピリン;メフェナム酸;フルフェナム酸;インドメタシン;ジクロフェナク;アルクロフェナック;ジクロフェナクナトリウム;イブプロフェン;フルルビプロフェン;フェンチザック;ブフェキサマック;ピロキシカム;フェニルブタゾン;オキシフェンブタゾン;クロフェゾン;ペンタゾシン;メピリゾール;およびチアラミド塩酸塩を含む。
【0097】
適切なステロイド性抗炎症剤は、ヒドロコルチゾン;プレドニゾロン;デキサメタゾン;トリアムシノロンアセトニド;フルオシノロンアセトニド;酢酸ヒドロコルチゾン;酢酸プレドニゾロン;メチルプレドニゾロン;酢酸デキサメタゾン;ベータメタゾン;吉草酸ベータメタゾン;フルメタゾン;フルオロメトロン;ブデソニド;およびジプロピオン酸ベクロメタゾンを含む。
【0098】
適切な局所麻酔剤は、塩酸ジブカイン;ジブカイン;塩酸リドカイン;リドカイン;ベンゾカイン;p−ブチルアミノ安息香酸−2−(ジエチルアミノ)エチルエステル塩酸塩;塩酸プロカイン;テトラカイン塩酸塩;塩酸クロロプロカイン;塩酸オキシプロカイン;メピバカイン;コカイン塩酸塩;および塩酸ピペロカインを含む。
【0099】
適切な殺菌剤/消毒剤は、チメロサール;フェノール;チモール;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;クロルヘキシジン;ポビドンヨード;塩化セチルピリジニウム;ユージノールおよびトリメチル臭化アンモニウムを含む。
【0100】
適切な抗生物質は、ペニシリン;メチシリン;オキサシリン;セファロチン;セファロリジン;エリスロマイシン;リンコマイシン;テトラサイクリン;クロロテトラサイクリン;オキシテトラサイクリン;メタサイクリン;クロラムフェニコール;カナマイシン;ストレプトマイシン;ゲンタマイシン;バシトラシン;およびシクロセリンを含む。適切な抗真菌剤は、アンフォテリシン;クロトリマゾール;硝酸エコナゾール;フルコナゾール;グリセオフルビン;イトラコナゾール;ケトコナゾール;ミコナゾール;ナイスタチン;塩酸テルビナフィン;ウンデセン酸;およびウンデシレン酸亜鉛を含む。
【0101】
適切な歯の知覚過敏防止剤は、硝酸カリウムおよび塩化ストロンチウムを含む。適切なフッ素系虫歯予防剤/抗う食剤は、フッ化ナトリウム、フッ化カリウムおよびフッ化アンモニウムを含む。
【0102】
さらなる漂白剤としては、ピロリン酸塩、ポリリン酸塩、ポリホスホン酸塩(たとえば、エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸、1−アザシクロヘプタン−1,1−ジホスホン酸および直鎖アルキルジホスホン酸塩)などのリン酸およびその塩;直鎖カルボン酸;およびクエン酸ナトリウム亜鉛;およびその混合物を含む歯石除去剤/抗歯石形成剤が挙げられる。好ましいピロリン酸塩は、ジアルカリ金属のピロリン酸塩、テトラアルカリ金属のピロリン酸塩;および水和したまたは非水和の形態のピロリン酸二水素二ナトリウム(Na)、ピロリン酸四ナトリウム(Na)およびピロリン酸四カリウム(K)である。ピロリン酸塩は、Kirk&Othmer, Encyclopedia of Clinical Technology Third Edition, Volume 17, Wiley−Interscience Publishers(1982)に、より詳細に記載されており、引用することによって、その開示の全体がそっくりそのまま本明細書に取り込まれる。必要に応じて、漂白剤は、Zofchakによる米国特許第6,315,991号に記載されたベタイン、アミンオキシドおよび四級のものなどの歯石溶解剤を含むことができる。
【0103】
プラーク、歯石または虫歯の形成を阻害する機能を果たすであろう酵素製剤も、組成物において有用となろう。酵素製剤を漂白剤と一緒に貯蔵することができ、または本明細書で記載されるような多層膜系内の異なる膜内にこれらを配置することもできる。適切な酵素としては:歯の表面上で吸収されて薄膜、すなわちプラークの第一の層を形成する唾液のタンパク質を分解するプロテアーゼ;細菌の細胞壁および細胞膜の構造成分を形成するタンパク質および脂質を溶解することによって細菌を破壊するリパーゼ;細菌が歯に粘着するためのマトリクスを形成する細菌の骨格構造を分解するデキストラナーゼ、グルカノヒドロラーゼ、エンドグリコシダーゼおよびムチナーゼ;およびカルシウムと結合する炭水化物−タンパク質複合体を分解することによって、歯石の発達を阻害するアミラーゼが挙げられる。好ましい酵素としては、市販されている任意のプロテアーゼ;デキストラナーゼ;グルカノヒドロラーゼ;エンドグリコシダーゼ;アミラーゼ;ムチナーゼ;リパーゼ;ムチナーゼ;および相性が良いその混合物が挙げられる。いくつかの態様においては、酵素による漂白剤を利用してもよい。
【0104】
必要に応じて用いてもよい酵素による漂白剤は、過酸化物がその位置で生成するようなペルオキシダーゼである。酵素による漂白またはプラーク除去剤が組成物内に組み込まれる場合、その酵素がその活性形を維持できるような、たとえばpHがほぼ中性であるような組成物となるべきであり、過酸化物は別個の層内に除外されるかまたは収容される。
【0105】
歯および周囲の組織に局所的に送達するための適切な栄養補給剤としては、ビタミン(たとえば、ビタミンCおよびD、チアミン、リボフラビン、パントテン酸カルシウム、ナイアシン、葉酸、ニコチンアミド、ピリドキシン、シアノコバラミン、パラアミノ安息香酸およびバイオフラボノイド);およびミネラル(たとえばカルシウム、リン、フッ化物、亜鉛、マンガンおよびカリウム);ならびにその混合物が挙げられる。本発明において有用なビタミンおよびミネラルが、Drug Facts and Comparisons(ルーズリーフ式の薬物情報サービス)、Wolters Kluer社、セントルイス、ミズーリ州、1997年、3〜17頁に開示されている。
【0106】
組成物は、口または周囲の組織の外観に所望の変化を与えるための、または清涼感のある吐息などの使用者にとって社交上望ましい特徴感じさせるための、任意の美容上有効な成分を含んでもよい。たとえば、市販の活性物質が吐息に清涼感を与えるものとなるか、または歯の漂白または脱色をもたらすものとなり得る。欧米社会のいくつかの文化において、またはいくつかの区分において、歯についての色合いが重要であるかまたは望ましいとされることを認識すれば、美容上の活性物質とは、色または濃淡を歯に与える任意の薬剤であり得る。
【0107】
さらなる漂白剤を組成物に含めてもよい。たとえば、洗剤などの界面活性剤が存在していてもよく、上記の漂白剤と共に機能して、歯により輝いた外観を提供する。
【0108】
これらの態様のいずれか一つにおいては、本発明の歯科用漂白組成物は、歯を漂白するための過酸化物を含むことが好ましく、充填剤、防腐剤、pH調整剤、柔軟剤、増粘剤、着色料、顔料、染料、屈折性粒子、安定剤、強化剤、医薬品、香料または吐息に清涼感を与える薬剤ならびに浸透促進剤などの従来の添加物が含まれてもよい。これらの態様においては、粘着性が弱められるかまたは消去され、従来の粘性低下剤が用いられてもよい。これらの添加物およびその量は、歯科用漂白組成物の所望の化学的特性および物理的性質に顕著に干渉することがないような方法で、または組成物に含めることができる歯科用漂白組成物の送達に干渉しない方法で選択される。このような追加成分としては、着色剤、食品添加物、香料、甘味料および防腐剤が挙げられる。
【0109】
Chemicals Used in Food Processing, Pub. No.1274、米国科学アカデミー、63〜258頁(引用することによって、その開示の全体が本明細書に取り込まれる)に記載されているような、あらゆる天然のもしくは合成の香料または食品添加物を用いることができる。適切な香料としては、本技術分野において知られているウインターグリーン、ペパーミント、ハッカ、メントール、果実香味料、バニラ、シナモン、スパイス、香油およびオレオレジン、ならびにその組み合わせが挙げられる。使用される香料の量は、香味料のタイプ、個々の香味料および所望の強さなどのそのような因子に従った、標準的に好まれる程度である。この組成物は約0.1〜5重量%の香料を含むことが好ましい。
【0110】
本発明で有用な甘味料としては、ショ糖、フルクトース、アスパルテーム、キシリトールおよびサッカリンが挙げられる。この組成物は約0.001〜5.0重量%の量の甘味料を含むことが好ましい。
【0111】
適切な基板は、付着した時の組成物が目立たないような、半透明のものであり得る。しかしながら、付着した時の組成物を容易に見ることができるように、組成物の基板は必要に応じて着色されていてもよい。好ましくは、着色することが望ましい場合、その色は基板において存在する色となるだろう。たとえば、消費者が喜びを見出せるような明るい色または刺激的な色で基板を着色してもよい。したがって、基板は、たとえば染料、顔料または基板を形成する材料に添加した時に発色するような物質などの着色用化合物を含んでもよい。
【0112】
たとえば、人体と関連して食品、薬物または化粧品に広く用いられている着色用化合物のタイプ、特に食品に用いることが許可されている、「認定可能な」または「認定が免除されている」と分類されている色素添加物を、基板の着色に用いることができる。基板の着色に用いられる着色用化合物は、野菜、ミネラルまたは動物などの天然資源から得ることができ、または天然の誘導体の同等品であって合成されたものでもよい。
【0113】
食品および摂取される薬物で用いるための、食品医薬品化粧品法の下で認定されている現行の着色用化合物としては、FD&C Red No.3(テトラヨードフルオレセインのナトリウム塩);Food Red 17(6−ヒドロキシ−5−{(2−メトキシ−5−メチル−4−スルホフェニル)アゾ}−2−ナフタレンスルホン酸の二ナトリウム塩);Food Yellow 13(キノフタロンのモノおよびジスルホン酸の混合物のナトリウム塩または2−(2−キノリル)インダンジオン);FD&C Yellow No.5(4−p−スルホフェニルアゾ−1−p−スルホフェニル−5−ヒドロキシピラゾール−3−カルボン酸のナトリウム塩);FD&C Yellow No.6(p−スルホフェニルアゾ−B−ナフトール−6−モノスルホナートのナトリウム塩); FD&C Green No.3(4−{[4−(N−エチル−p−スルホベンジルアミノ)−フェニル]−(4−ヒドロキシ−2−スルホニウム−フェニル)−メチレン}−[1−(N−エチル−N−p−スルホベンジル)−3,5−シクロヘキサジエンイミン]の二ナトリウム塩); FD&C Blue No.1(ジベンジルジエチル−ジアミノトリフェニルカルビノールトリスルホン酸無水物の二ナトリウム塩);FD&C Blue No.2(インジゴチンのジスルホン酸のナトリウム塩);FD&C Red No.40;Orange B;およびCitrus Red No.2;ならびに種々の比率でのその組み合わせなどの染料が挙げられる。
【0114】
FDAの認定が免除された着色用化合物としては、アンナット抽出物;β−アポ−8’−カロテナール;β−カロチン;ビートの粉末;カンタキサンチン;カラメル色素;ニンジン油;コチニール色素(カルミン);焼いて、部分的に脱脂して、調理された綿花;グルコン酸第一鉄;果汁;ブドウ色素抽出物;ブドウの皮の抽出物(エノシアニナ);パプリカ;パプリカのオレオレジン;リボフラビン;サフラン;ウコン;ウコンのオレオレジン;野菜ジュース;および種々の比率でのその組み合わせが挙げられる。
【0115】
組成物中に用いられる着色用化合物の形態としては、好ましくは染料の形態の添加物が挙げられるが、基板を構成する材料と適合するレーキの形態も含まれ得る。本発明の方法にしたがって、粉末、顆粒、液体またはその他の特殊用途の形態で提供される水溶性染料を用いることができる。基板を着色するためには、好ましくは、「レーキ」すなわち水に不溶性の染料の形態を用いる。たとえば、着色用化合物の懸濁液を用いる場合、レーキの形態の添加物を採用することができる。アルミナ上でFD&Cの染料のカルシウム塩またはアルミニウム塩を広げることによって調製される、適切な水に不溶性の染料のレーキには、FD&C Green #1レーキ、FD&C Blue #2レーキ、FD&C R&D #30レーキおよびFD&C # Yellow 15レーキが含まれる。
【0116】
その他の適切な着色用化合物としては、二酸化チタン;酸化クロム緑;群青色または桃色;および酸化鉄などの、無毒で水に不溶性の無機顔料が挙げられる。このような顔料は、約5〜1000ミクロンの範囲の粒子径を有するものが好ましく、約250〜500ミクロンのものがより好ましい。
【0117】
基板における着色用化合物の濃度は約0.05〜10重量%が好ましく、約0.1〜5重量%がより好ましい。
【0118】
一種以上の着色用化合物が基板に存在してもよく、したがって、多数の色がその中に与えられる。これらの多数の色で、縞模様、点、渦巻き模様または消費者が喜ぶだろうその他の任意の模様を付けることができる。輝く粒子などのその他の外観を向上させる物質と一緒に、着色用化合物も用いることができる。
【0119】
粘着剤が歯の表面上にある場合、水和の程度をコントロールするために、吸収性を有する充填剤を組み込むことが都合が良いだろう。このような充填剤としては、微晶性セルロース、タルク、ラクトース、カオリン、マンニトール、コロイド状シリカ、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、疎水性デンプン、硫酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸カルシウム二水和物、ラポナイトなどのクレイ、網目のある紙および不織紙および綿の材料が挙げられる。その他の適切な充填剤は、不活性のもの、すなわち実質的に吸着性がないものであり、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリエーテルアミドコポリマー、ポリエステルおよびポリエステルコポリマー、ナイロンおよびレーヨンが挙げられる。好ましい充填剤は、コロイド状シリカ、たとえばCab−O−Sil(登録商標)(Cabot社、ボストン、マサチューセッツ州)である。
【0120】
防腐剤としては、具体的には、p−クロロ−m−クレゾール、フェニルエチルアルコール、フェノキシエチルアルコール、クロロブタノール、4−ヒドロキシ安息香酸メチルエステル、4−ヒドロキシ安息香酸プロピルエステル、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウム、クロロヘキシジンジアセテートまたはグルコナート、エタノールおよびプロピレングリコールが挙げられる。
【0121】
pH調整剤として有用な化合物としては、グリセロール緩衝液、クエン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、リン酸緩衝液またはクエン酸−リン酸緩衝液が挙げられるが、これらに制限されるわけではなく、ヒドロゲル組成物のpHが口の環境のそれと適合すること、そして歯の表面からミネラルの溶出がないことを保証するために、この化合物も含められることになる。歯の脱塩が生じることなく漂白を最適化するためには、カルシウム塩および/またはフッ化物の塩を組成物に含めればよい。
【0122】
適切な柔軟剤としては、トリエチルシトラートまたはアセチルトリエチルシトラートなどのクエン酸エステル、ジブチルタルトラートなどの酒石酸エステル、グリセロールジアセテートおよびグリセロールトリアセテートなどのグリセロールエステル;ジブチルフタラートおよびジエチルフタラートなどのフタル酸エステル;および/または親水性界面活性剤が挙げられ、好ましくは、たとえば、糖類の部分的脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪アルコールエーテルおよびポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステルなどの親水性の非イオン界面活性剤である。
【0123】
本明細書で好ましい増粘剤は天然の化合物またはその誘導体であり、具体的には:コラーゲン;ガラクトマンナン;デンプン;デンプン誘導体および加水分解物;メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース誘導体;コロイド状ケイ酸;ならびにラクトース、ショ糖、フルクトースおよびグルコースなどの糖類が含まれる。ポリビニルアルコール、ビニルピロリドン−酢酸ビニルコポリマー、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールなどの合成増粘剤を用いてもよい。
【0124】
上記のように、歯の上で組成物が適当に変形に必要な基板の粘弾性に、これらの商品が干渉しない限り、ビーズ、ラインストーンなどなどの装飾用の商品を基板を組み込むかまたは装飾することもできる。この基板が、消費者が喜ぶか魅力を感じる文字、単語または画像を表示することもできる。
【0125】
(IV.加工プロセス)
本発明の組成物は一般的な溶融押し出し品であり、したがって、単純な混合プロセスおよび押し出し成型プロセスを用いて調製される。組成物の成分の重量を測り、次いで、たとえばBrabenderまたはBaker Perkins Blenderを用いて混合するが、一般的には、たとえば約90〜140℃に温度を上昇させる必要はない。必要であれば、溶媒または水を添加してもよい。単独またはツインの押出成形機を用いて、得られる組成物を押し出し成型するか、または造粒することができる。あるいは、組成物の成分を同時に溶解し、次いで押し出し成型の前に混合することもできる。好ましくは、組成物を直接、支持層または取り外しできる裏地などの適切な基板上に押し出すことであり、次いでプレスする。得られるヒドロゲル含有膜の厚さは、たいていの目的にとっては約0.050〜0.80mmの範囲となり、より普通の場合は約0.37〜0.47mmの範囲である。
【0126】
あるいは、適切な溶媒中で組成物の成分を混合することによる溶液流延法によって、組成物を調製してもよい。たとえば、酢酸エチルまたは低級アルカノール(たとえば、エタノール、イソプロピルアルコールなど)などの揮発性の溶媒が特に好ましく、その濃度は通常、約35〜60%w/vの範囲である。溶液を、上記の支持層または取り外しできる裏地などの適切な基板上に流し込む。混合と流し込みの両方を室温で行うことが好ましい。次いで、膜で覆われた基板を、約80〜100℃の範囲の温度で、好ましくは約90℃で約一〜四時間、好ましくは約二時間の間、焼成する。その結果、本発明の一つの態様は、本発明の組成物に組み込むのに適したヒドロゲル膜を調製するための方法であり、これには次の工程が含まれる:水膨潤性水不溶性ポリマーまたは水溶性ポリマー、親水性ポリマー、親水性ポリマーに溶媒中で水素結合する能力を有する相補的オリゴマーおよび第二の水膨潤性水不溶性ポリマーの溶液を調製する工程;基板上に溶液の層を付着させてその上を覆う工程;および覆われた基板を約80〜100℃の範囲の温度に、約1〜4時間の範囲の間加熱して、それによって基板上にヒドロゲル膜を提供する工程。
【0127】
粘着性のヒドロゲル組成物が望まれる場合、溶融押し出しが好ましいプロセスであるが、溶液流延法もなお用いてもよい。実質的に非粘着性な組成物を調製するためには、溶液流延法が好ましい。さらに、本発明の任意の組成物については、溶融押し出しを用いることができる。さらに、溶融押し出しまたは溶液流延技術のいずれかを用いて半透明組成物を調製することができるが、これらの態様については溶液流延法が一般的に好ましい。その結果、本発明の別の態様は組成物を形成する方法であって、次の工程を含む:水膨潤性水不溶性ポリマーまたは水溶性ポリマー、親水性ポリマー、親水性ポリマーに水素結合する能力を有する相補的オリゴマーおよび第二の水膨潤性水不溶性ポリマーの混合物を、押出成形機を介して、押し出された組成物を形成する融解プロセス工程;この組成物を所望の厚さの膜として適切な基板上に押し出す工程;ならびに冷却し、過酸化物などの活性剤の水溶液を含むその膜を載せて約1〜20重量%の濃度の漂白剤を得る工程。
【0128】
本発明はさらに、一以上の追加のヒドロゲルまたは非ヒドロゲル層を含む多層膜系を有することも検討している。たとえば、貯蔵の間に、最初の活性剤と交じり合わないような追加の活性剤を含むことが望ましいだろう。このように、一つの層が最初の活性剤を含有するヒドロゲル層であり得、その他の(単数または複数の)層が追加の成分を含むことがあり得る。これらのその他の層は、本明細書に記載されたヒドロゲル組成物から形成されてもよく、または本技術分野において知られている、その他の任意の生物学的に適合する製剤(たとえば、ポリイソブチレン、ジメチルシロキサン、エチレンビニルアセテート、ポリビニルアセテート、セルロースアセテート、ブチラート、プロピオナート、エチルセルロースおよび水に不溶性のアクリレート)から形成されてもよい。さらに、層の枚数に応じて、粘着性層、たとえば歯に直接付着する層と、非粘着層、たとえば、唇に最も近い側に位置する外層を持つことが望ましいだろう。多層膜系を有することの別の利点は、製品中に個別の支持層が含まれるものを持つことを避けるための最外層で用いたポリマーの比率を、非粘着層を完成させるために変えてもよいという点である。
【0129】
一つの態様においては、組成物は:口、口腔組織、皮膚表面または粘膜表面への適用の後で、組成物の外面として機能する外側の基板;それに付着した、表面と接触する粘着層であって、このものは通常、必要に応じて追加の活性剤を含み得る本発明の粘着性組成物となるもの;そして取り外しできる裏地、を含む。取り外しできる裏地と取り外すと、たとえば、組成物が治療される表面、たとえば歯に適用され、口の表面接触層と接触した状態となるように、その表面に留まる。別の態様においては、この組成物は、支持層または取り外しできる裏地を伴わずにパッケージされている。その結果、パッケージから一旦取り出されれば、組成物は体表面に適用される状態になっている。
【0130】
基板は主要な構造要素であり、製造時または使用時のいずれかにおいて組成物に支持を与えている。基板に用いられる材料は不活性であるべきであり、ヒドロゲル組成物を吸収する能力がないものであるべきである。さらに、基板に用いられる材料は、装置が歯またはその他の体表面の輪郭に従うことを許容できるものであるべきであり、そして唇または舌に傷を付けるかまたは刺激を与えることがないように、口内で快適に付着できるものであるべきである。基板に用いることができる材料の具体例は、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタンおよびポリエーテルアミドである。基板は、約15〜250ミクロンの範囲の厚さであることが好ましく、必要であれば、着色されていてもよく、金属化されていてもよく、または書き込みに都合がよいようにマット仕上げが施されてもよい。
【0131】
一つの態様においては、基板は必ずではないが密封性が高いことが好ましく(すなわち非「通気性」)、組成物中のあらゆる活性剤が層を経て漏出することができないものであり、そして口の粘膜および歯ぐきと接触するものである。使用できる状態になった時、粘着性が増加し、組成物が歯に付着するように、この組成物を予め湿らせる。この態様の一つの利点は、活性剤が基板を経て実質的に漏出できないことであり、活性剤またはあらゆる不快な香味もしくは感覚に対して敏感な個人に刺激を引き起こすことができないことである。
【0132】
その他の適切な基板材料は、ワックス(たとえば微晶性またはパラフィンワックス)またはワックス/発泡体の積層体などの非ポリマー性材料であり得る。パラフィンワックスは低分子量の直鎖炭化水素であり、約48〜75℃の融点と約300〜1400g/molの分子量を有し、通常はFischer−Tropschの合成法によって生産される。微晶性ワックスは外見上、柔軟性のあるアモルファス様であり、パラフィンワックスよりも引っ張り強さが強く、結晶サイズが小さい傾向がある。通常の微晶性ワックスは約60〜95℃の融点と約580〜700g/molの分子量を有し、大部分が分岐鎖の炭化水素を占め、少しの環状化合物を含んでいるが、直鎖の炭化水素が存在していてもよい。基板材料は、ポリウレタン、ポリスチレンまたはポリエチレン発泡体などの開放セル発泡体でもよい。
【0133】
あるいは、別の態様においては、基板は密封性が低いものであり、したがって、歯またはその他の体表面上の所定の位置でにて、その位置で完全に水和することができる。
【0134】
取り外しできる裏地は、適用前に、系を保護する機能を果たすための使い捨ての要素である。この取り外しできる裏地は、活性剤およびヒドロゲル組成物が浸透しない材料から形成されるべきであり、コンタクト型接着剤から容易に剥がせるものであるべきである。取り外しできる裏地は通常、シリコーンまたはフルオロカーボンで処理され、そしてポリエステルおよびポリエチレンテレフタラートから広く製造されている。
【0135】
好ましい組成物は通常、第一のおよび第二の水不溶性水膨潤性ポリマーとしてのアクリレートポリマー;および親水性ポリマーとその親水性ポリマーに水素結合する能力を有する相補的オリゴマーとの混合物としてのポリビニルピロリドンとポリエチレングリコールとの混合物を用いて調製される。
【0136】
約100〜170℃の範囲の温度で加熱融解して上記の成分を互いに混合することによって、組成物の粘着性膜を製造することができる。この膜を適切な基板上で所望の厚さに押し出す。あるいは、成分を単独のまたは混合溶媒に溶解することができ、そして溶液を放出膜または支持膜上に流し込めばよい。次いで、溶媒を留去してヒドロゲル膜を得る。
【0137】
組成物に活性剤を載せる一つの方法は、所望の活性剤、たとえば歯科用漂白組成物を水溶液中で、適切な基板上に置かれたヒドロゲルの表面上に積み重ねる工程か、または活性剤を基板上に直接置く工程を含む方法である。次いで、この取り外しできる裏地を組成物の上部に取り付け、サンドウィッチ構造を形成させて、漂白剤を含む溶液を、その水膨潤性を利用して組成物内に吸収させる。あるいは、基板上に重ねられた組成物を所望の濃度の漂白剤を含む溶液に浸して、組成物内に溶液を吸収させることもできる。液体の吸収に基づく重量の増加の割合を計算することによって、活性剤を含む組成物が載っているパーセントを測定し、コントロールすることができる。
【0138】
組成物内に活性剤を載せる別の方法は、固体または溶液としての活性剤を、溶媒で溶解した組成物に添加するという方法である。次いで、この混合物を例のとおり適切な基板上に流し込み、乾燥させるが、この積載方法を用いる場合は乾燥温度は低温とすることが望ましい。このように調製される組成物を室温で約1時間〜数日間の期間、乾燥させればよい。
【0139】
典型的な膜の厚さは約0.050〜0.80mmであり、0.25〜0.50mmが好ましい。膜の厚さは重要ではなく、膜内に組み込まれる漂白剤の濃度、膜が歯に接触する時間の長さ、使用者が望ましいと感じる快適さのレベル、および修正を望む着色の程度によって変化させてもよい。
【0140】
(V.使用方法)
実務上、そのパッケージから製品を取り出して、(含まれている場合は)取り外しできる裏地を取り外し、そして漂白を望んでいる歯に(または、漂白剤の別の有用性を利用する場合、もしくは別の活性剤が用いられる場合は、任意の皮膚表面もしくは粘膜性の体表面に)粘着層を適用するという単純な操作によって、この組成物を用いることができる。この組成物を、歯の全体またはいくらかの部分に、一度で行う歯の数に、または口腔の任意の位置に適用することができるように、本明細書に記載されたシステムを種々のサイズで供給することができる。密閉性が高い場合、基板は組成物からの活性剤の漏出を減少させるかまたは防止する一方、使用者は所望の時間、組成物を付着している。数分間という短時間から、数時間、一日中または一晩の期間、この組成物を所望の位置で維持することができ、次いで、所望の漂白の程度または所望の治療効果もしくは美容効果に達した時に、除去する。必要であれば、半透明組成物を供給することができ、そして目障りでもまたは他人から目立つこともなく付着できる。活性剤を含まずにこのシステムを設計することもでき、そして口内炎、ヘルペスなどの口腔内表面を保護するための包帯剤として、または創傷被覆材としての利用が見出される。
【0141】
期間が延長されても、組成物を付着することができるが、通常は、約10分間〜約24時間という所定の期間付着することになる。歯の漂白に使用するためには、好ましい期間は約10分間〜約8時間(たとえば一晩)であり、30分間〜約1時間も好ましい態様である。その他の活性剤については、治療される状態だけではなく、用いられる活性剤も同様に基礎とすることで、治療上有効な時間または美容上有効な時間を容易に決定することができる。
【0142】
歯の上側または下側の周囲で、またはその他の口腔組織の周囲で、指および親指の先端で、通常の手動の動作により基板に圧力を加えることによって、そして必要に応じて適用前に組成物を湿らすことによって、使用者が組成物の形を作ることができる。成人の指または親指の先端の平均の表面積を約一平方センチメートルと仮定すれば、指または親指の先端によって生じる通常の圧力は、一平方センチメートルあたり約100,000〜150,000パスカル(すなわち、約3lbs.すなわち1.36kg)である。この圧力は、指の先端および親指の先端のそれぞれによって、約一秒または二秒間にて組成物に普通に加わる。一旦指の先端および親指の先端によって基板に加えられた圧力を取り除けば、この組成物は歯の表面の形状を維持しつづけ、歯の表面およびその上で形成された、隣接する軟組織の表面に付着する。
【0143】
使用者が組成物を除去する状態にある場合、歯もしくはその他の口の表面または体表面から単に剥がすことによって、組成物を除去することができる。必要であれば、追加の治療時間のために、組成物を再付着させることができる。後に残るあらゆる残留物は最低限であり、従来の歯または口腔内を洗浄する方法を用いて除去することができる。
【0144】
本発明の一つの態様においては、この組成物は固体であり、感圧粘着剤であり、そして水を吸収する。このことは、体表面に適用する前に相分離膜形成組成物を製造することによって達成される。次いで、このように作製された固体製剤をパッケージに詰め、使用前にパッケージから取り出す。
【0145】
この組成物は非固体組成物として適用されることが好ましく、たとえば液体またはゲルとして適用される。たとえば、歯またはその他の体表面に適用するために、使用者が指の上の筒から組成物を押し出すことができたり、筒から歯に直接、組成物を押し出すことができたり、ブラシまたはその他のアプリケータなどを利用して組成物を添加する。溶媒を留去した後、液体またはゲルの組成物を乾燥させてマトリクス型ポリマーの膜またはゲルを、体表面上に形成させる。この液体またはゲルの膜形成組成物の一つの態様においては、ヒドロゲルは十分な量の水またはその他の溶媒を含むことで流動性を提供する。この組成物の別の態様においては、液体またはゲルの組成物中のポリマー成分は、室温および約4℃という低温の両方にて、水−エタノール混合物に可溶であり、このポリマー成分は溶媒留去時に混和する。この液体またはゲルの膜形成組成物のさらに別の態様においては、エタノール−水混合物におけるポリマー組成物の下限臨界溶液温度は約36℃である。(溶媒留去後に)得られる膜は、過酸化水素と歯のエナメル質との間の接触がより長時間続くように、体温の唾液中で不溶であるかわずかに可溶であることが好ましい。最後に、乾燥時のポリマー膜内だけではなく、液体またはゲルの組成物の両者においても、過酸化水素は安定であるべきである。
【0146】
他に指示がない限り、本発明を実施することには、ポリマー化学、接着剤の製造およびヒドロゲルの調製についての従来の技術が採用され、このようなことは当業者の範囲内である。このような技術は文献中に十分に説明されている。
【0147】
本発明が、特定の好ましい本発明の態様と併せて記載されていることと同時に、次の実施例と同じく前記の説明も説明を目的とするものであって、本発明の範囲を制限する目的のものではないことを理解すべきである。その他の側面、利点および改変は、本発明に関する分野の当業者であれば、明白であろう。
【0148】
次の実施例は、本発明の化合物をどのようにして製造して用いるかについての完全な開示および説明を当業者に提供するために提出されたものであり、発明者らが発明とみなしていることの範囲を制限する目的のものではない。(たとえば量、温度などの)数に関する正確さを高める努力はなされてきたものの、いくつかの誤差および偏差について説明しなければならない。他に指示がない限り、部とは重量部であり、温度は摂氏温度(℃)であり、圧力は気圧と同じかその近傍である。
【0149】
次の略号および商標が実施例で用いられている:
Eudragit L 100−55 メタクリル酸コポリマー、Rohm America社)
PEG ポリエチレングリコール400
PVP30 Plasdone(登録商標)K30ポリビニルピロリドン(ISP社)
PVP90 Kollidon(登録商標)90Fポリビニルピロリドン(BASF社)
【実施例】
【0150】
(実施例1)
(固体組成物の調製)
歯の漂白を行うための組成物の一つの態様は、溶融押し出しプロセスを用いて次の成分から調製された:
Eudragit L 100−55 9重量%
PVP90 44重量%
PEG 22重量%
過酸化水素 6重量%
水、安定剤、pHモジュレータ 19重量%。
【0151】
これらの成分をBrabender 単軸押出成形機で、次のようにして溶融処理した:Eudragit L 100−55を最初に押出成形機に添加し、次いでPVP90とPEGを入れて100〜150℃とした。組成物を、二つのポリエチレンテレフタラートハクリライナーの間の0.35mmの厚さに押し出した。過酸化水素溶液をこの押出成形基の膜に添加した。
【0152】
(実施例2)
(固体組成物からの過酸化水素のインビトロでの放出)
pH7.0の緩衝液中での、本発明の歯科用漂白組成物からの過酸化水素のインビトロでの放出を調査し、市販品、Crest Whitestrips(商標)(Proctor & Gamble社、シンシナティー、オハイオ州の製品であり、「Crest product」と称される)からの過酸化物の放出と比較した。Crest productは、薄いポリエチレン膜上のCarbopol 956のゲル内に5.3%の過酸化水素を含んでいる。
【0153】
(実施例1に記載のようにして作製された)3%、6%または9%の過酸化物を含む組成物からの、過酸化水素のインビトロでの放出を、Crest productからの過酸化水素の放出と比較した。試験組成物またはCrest productから、ろ紙を介して過酸化物を溶液内に放出させ、そして、標準的な分析技術を用いて過酸化物を測定した。Crest productについては、過酸化物が約30分以内にベースラインのレベルにまで低下することが観察された。このデータは、公表されたデータ(Pagel, P. A.ら、(2000)Vital Tooth Whitening with a Novel Hydrogen Peroxide Strip System: Design, Kinetics, and Clinical Response. Compendium,補遺29、Vol. 21: S10〜S15)と類似である。
【0154】
本発明の歯科用漂白組成物は、開始時の濃度に比例する速度で過酸化物を放出した。過酸化物の含有量を試験したすべての時点:5分、30分および60分の時点において、本発明の組成物は、Crest productよりも高い速度で過酸化物を放出することも分かった。6%の過酸化物を含む本組成物、このものはCrest productに近い、についての過酸化物の放出は、それぞれの時点におけるCrest productについての放出速度に比べて、それぞれ約7.5倍、24倍および10倍大きかった。3%の過酸化物を含む本組成物についての過酸化物の放出は、それぞれの時点におけるCrest productについての放出速度と比べてそれぞれ約3倍、7倍および5倍大きかった。
【0155】
(実施例3)
(固体組成物の有効性)
歯科用漂白組成物の有効性を、次の方法を用いて試験した。組成物を、下側の歯のセットに、一日に一回1時間の間、断続的に6日間添加することによって、実施例1に記載の方法にしたがって調製された歯科用漂白組成物の有効性を、対象について試験した。歯科用漂白組成物で歯を処理する前後にて、Professional Tooth Shade Guideを用いて、対象の歯のシェードを測定した。1日目では、対象の歯はシェード12の階級であった。そして歯科用漂白組成物による処理の一時間後、歯はシェード10の階級となった。2日目における、歯科用漂白組成物による処理の一時間後、対象の歯はシェード8の階級となった。3日目における処理の一時間後、対象の歯はシェード5の階級となった。同様に、4日目における処理の一時間後、対象の歯はシェード4/5の階級となった。5日目における処理の一時間後、対象の歯はシェード2/3の段階となった。6日目におけるさらに半時間の処理の後、最も明るいシェードが達成され、シェード2に到達した。したがって、一時間の処理の範囲内で測定できる結果を伴った歯科用漂白組成物の有効性は明白である。
【0156】
(実施例4)
(非固体組成物の調製)
歯の漂白用組成物を、次の成分(処方A)から調製した:
脱イオン水 35.0重量%
エタノール 35.0重量%
Eudragit L 100−55 4.00重量%
PEG 1.00重量%
PVP90 7.00重量%
過酸化カルバミド 18.0重量%
クエン酸ナトリウム 0.13重量%。
【0157】
この組成物を、テフロン(登録商標)で覆われた(直径が2インチの)羽根を備えるCole−Parmerの高トルク低速実験用ミキサーで、次のように混合した。脱イオン水をエタノールと混合し、次いでPEGを添加した。次いで、激しい撹拌条件下で、クエン酸ナトリウムを添加した。Eudragit L 100−55の粉末を、激しい撹拌条件(500〜600rpm)下で、徐々に(2〜5分以内で)添加した。約5〜10分後に(すべてのEudragitが溶解するまで待つ必要はない)、PVP90の粉末を徐々に(5分以内に)添加した。最高撹拌速度を5〜10分以上維持した。過酸化カルバミドの粉末を(1〜2分以内に)添加し、この混合物を(800〜900rpmで約30分間)撹拌して均質な溶液を得た。次いでこの溶液を、気泡を分散させながら2〜5時間を超える時間貯蔵した。
【0158】
(実施例5)
(非固体組成物の調製)
歯の漂白用組成物を、次の成分(処方B)から調製した:
脱イオン水 35.0重量%
エタノール 35.0重量%
Eudragit L 100−55 2.50重量%
PEG 1.92重量%
PVP90 6.00重量%
過酸化カルバミド 18.0重量%
クエン酸ナトリウム 0.08重量%
Methocel A4C 1.50重量%。
【0159】
この組成物を、テフロン(登録商標)で覆われた(直径が2インチの)羽根を備えるCole−Parmerの高トルク低速実験用ミキサーで混合した。脱イオン水をエタノールと混合し、次いでPEGを添加した。激しい撹拌条件下で、クエン酸ナトリウムを添加した。Eudragit L 100−55の粉末を、激しい撹拌条件(500〜600rpm)下で、徐々に(5分以内で)添加した。次いで、Methocel A4Cの粉末を、激しい撹拌(500〜600rpm)下で、徐々に(5分以内で)添加した。約10分後、PVP90の粉末を徐々に(5分以内で)添加した。最高撹拌速度を5〜10分以上維持した。過酸化カルバミドの粉末を(1〜2分以内に)添加し、この混合物を(500〜800rpmで約30〜60分間)撹拌して均質な溶液を得た。次いでこの溶液を、気泡を分散させながら2〜5時間を超える時間貯蔵した。
【0160】
(実施例6)
(非固体組成物についてのインビトロの溶解性の比較研究)
実施例4(処方A)および実施例5(処方B)に記載された方法にしたがって調製された非固体の歯科用漂白組成物の溶解性を、市販品のSimply White(登録商標)の透明な漂白用ゲル(Colgate−Palmolive社、ニューヨーク、ニューヨーク州の製品であり、「Colgate生成物」と称される)の溶解性と比較した。このものは、18.0重量%の過酸化カルバミドを含む。ウェッジマイクロインタフェロメトリ技術を利用して、溶解プロセスを研究した。
【0161】
処方Aは、ポリマー溶液から膨潤したポリマー組成物を区別する明瞭な界面を形成することが分かった。界面上で、ポリマーの濃度(したがってポリマーの粘度)の明瞭な低下が見られた。Colgate生成物/水の相互拡散領域では、このような境界の存在は見られなかった。この領域の干渉縞は、組成物マトリクスから水に向かってポリマー濃度(したがってポリマーの粘度)が滑らかに低下する状態の、完全な混和系の典型的なものであった。処方Bは、不均一な(コロイド状の)性質を有することが分かった。不透明なゲルと半透明水溶液との間に明瞭な界面が形成された。処方Bが、「より速く溶解する」画分と「溶解がより遅い」画分とを有することも分かった。溶解がより遅い画分は、不透明で不均一な膨潤ゲルを含む比較的薄い層を形成した。Colgate生成物とは異なり、水溶媒に接触した処方Aおよび処方Bの両方が、明瞭な界面によって溶液から区別される膜であって、連続的に一体化した粘性の膨潤ゲルの膜を形成する能力を有する。4.6〜7.5の範囲の種々のpHの水溶媒において、処方Aおよび処方Bについての界面の形成が見られた。
【0162】
処方Aおよび処方Bを用いれば、ポリマー溶液から膨潤したポリマーを区別する明瞭な界面が形成される。Colgateと水の相互拡散領域では、このような境界は存在しない。そしてこの領域の干渉縞は、処方Aのマトリクスおよび処方Bのマトリクスから水に向かってポリマー濃度(したがってポリマーの粘度)が滑らかに低下する状態の、完全な混和系の典型的なものである。
【0163】
処方Aまたは処方Bへの水の有効物質移動定数、および水への処方Aまたは処方Bの有効物質移動定数は、Colgateならびに処方Aおよび処方Bと同等である。しかしながら、Colgate生成物とは異なり、この製品のケースでは、水溶液から膨潤して一体化したゲルを区別する明瞭な界面が形成されることが観察される。この界面の有効拡散係数は、水の処方Aまたは処方Bへのその係数、および処方Aまたは処方Bの水へのその係数よりも1〜2桁小さい。水溶媒中で処方Aおよび処方Bによって形成される膨潤ゲルの層は、溶解速度を維持しながら膜を保護する役割を演じる能力を有する。膨潤したゲルは、歯の表面上での処方Aおよび処方Bの残留時間を増加させる機械的な支持も提供する。
【0164】
組成物が水に浸透することについての速度論は、処方Aと処方Bとは事実上同一であったが、界面の移動についての速度論は、処方Bの方がより低速であった。Colgate生成物ならびに処方Aおよび処方Bについての有効物質移動定数は同等であった。しかしながら、処方Aおよび処方Bのケースにおいては、溶液から膨潤して一体化したゲルを区別する明瞭な界面が見られた。
【0165】
実際の付着条件においては、処方Aおよび処方Bの侵食(したがってそれらの付着時間)は主に二つの因子に依存した:1)組成物と水(唾液)の自由な相互拡散プロセスおよび2)付着時間の間に、膜を押し付ける無作為な機械的剪断応力(すなわち唇の動きによって生じる摩擦)。前者の因子は、理想的な(影響を受けない)プロセスを制限するものとみなすことができるのに対して、後者のものは、劇的な習慣および無作為な習慣が継続する期間における付着に影響を与える可能性がある。というのは、それぞれの膜の熱狂的な事象が初期の相互拡散条件(すなわち膜の厚さと組成物の成分)を劇的に変化させるからである。付着の予備的な研究から示唆されたことは、処方Aおよび処方Bは、10〜15分間を超えて歯に残存する能力を有するのに対して、Colgate生成物は2〜3分間を超えて歯に残存することが分かったことである。
【0166】
(実施例7)
(非固体組成物についてのインビトロでの有効性の比較)
実施例4(処方A)に記載の方法にしたがって調製された非固体の歯科用漂白組成物のインビトロでの有効性を、Colgate生成物の溶解性と比較した。
【0167】
処方Aの組成物およびColgate生成物を、茶の染みが付いたカップの壁に適用して、「最初」の処理を実証した。30秒後にカップに水を入れて、覆われた表面をカバーした。30分後、水を取り除いてこのカップを水でリンスして、壁面に残っているゲル膜を除去した。同じ染みの上にあるそれぞれの組成物に適用して「第二」の処理を実証することによって、この実験を繰り返した。
【0168】
処理された領域の画像をデジタルカメラで撮影し、得られた画像をScion Ima
geソフトウェアを用いて256pxlの濃淡画像に転換した。1のpxl値が完全な白色に対応するように、そして256の値が完全な暗色に対応するように、この画像のスケールを設定した。したがって、中間にあるpxl値(2〜255)は、暗さが1〜256に増加するような中間色に相当する。Scion Imageソフトウェアを用いて、処理した領域の色密度(pxl/pxl)を測定した。以下に示される結果は、処方Aの組成物が市販のColgate生成物よりも強く漂白することを実証している。処方Aで見られるより大きな標準偏差は、初期の茶の染みの色の均等性が弱いことによって説明される。
【0169】
【化3】

実施例5(処方B)に記載の方法にしたがって調製された非固体の歯科用漂白組成物を用いて、「最初」の処理を行うことを除いて、この実験を繰り返した。
【0170】
【化4】

上記で示されたインビトロでのデータから分かるように、処方Aの組成物の漂白化の有効性は、Colgate生成物よりも有意な程度優れており、処方Bの組成物の性質は、Colgate生成物と処方Aとの性質の中間程度である。
【0171】
(実施例8)
(非固体組成物からの過酸化水素のインビトロでの放出)
実施例4(処方A)の非固体の歯科用漂白組成物からの過酸化水素の放出を、Colgate生成物の溶解性と比較した。Colgate生成物を取り外しできる裏地上に流し込み、そして室温で一日かけて乾燥させた。得られたColgate生成物の膜は約300〜400ミクロンの厚さであり、ガラス製のビーカー内に移して200mLの脱イオン水を添加した。処方Aの組成物をビーカーの底に流し込んだ。2〜3分後、200mLの脱イオン水を添加した。適切な期間が経過した後、膨潤した残留物から溶液がきちんと区別され、そして過酸化水素の濃度をUSP滴定法にしたがって測定した。Colgate生成物および処方Aから放出された過酸化水素の量を下記に示す。
【0172】
【化5】

Colgate生成物とは対照的に、最初の五分間に活性剤の送達が加速されるという、処方Aによって形成された膜から放出された過酸化水素の特徴が維持された。水と10分間接触させると、処方AではColgate生成物よりも少量の過酸化水素を放出した。水と20分間接触させると、Colgate生成物は過酸化水素を含んでいなかったのに対して、処方Aは最初に載せられた過酸化水素の20%を含んでいた。このことは、Colgate生成物におけるポリマーよりも処方Aにおけるポリマーの方が、過酸化水素とより強く結合していることの根拠であっ
た。放出のデータと膜の溶解性のデータとを比較することによって、処方Aの膜に組み込
まれた過酸化水素の内容を、緩やかに結合した過酸化水素または強固に結合した過酸化水素のいずれかとして分類できるという結論が出された。このことは、すべての過酸化水素が緩やかに結合しているというColgate生成物とは対照的であった。
【0173】
(実施例9)
(非固体組成物の有効性のインビボでの比較)
処方Aおよび処方Bの非固体の歯科用漂白組成物のインビボでの有効性を、Colgate生成物の溶解性と比較した。処方Aおよび処方Bの漂白化の有効性を、Vita Shadeガイド値を重視したスケールを用いてColgate生成物のそれと比較した。この研究を無作為化並行群二重盲検研究とした。上顎の前歯の六本のうちの少なくとも四本に関して、Vita Shadeガイド値を重視したスケールでA3またはより暗いという11人の対象を募集して、本研究に参加させた。
【0174】
11人の対象のすべてを、上顎の中切歯のVita Shadeに基づく三つの処理群のうちの一つに無作為に割り当てた。14日間分の十分な量の製品を対象に与えて、二週間にわたって、一日に二回製品を使うように指示した。Vitaの評価および対象との面接に基づいて、処方A、処方BおよびColgate生成物のすべてが、処理から七日目以降からは満足できる程度の漂白効果を与えられたことが明らかになった。最も良好な漂白効果は、処方Aについて見られた。処方Bは、処方AとColgate生成物との間の中間程度の漂白効果を示した。処方Aは、Colgate生成物と比較してより早期での歯の漂白効果を実証した。
【0175】
(実施例10)
(相分離性非固体組成物の調製)
歯の漂白用組成物を次の成分から調製した:
Eudragit L 100−55 6.99g
PVP30 14.97g
PVP90 4.49g
水 25.95g
エタノール(95%) 28.94g
PEG 3.99g
Eudragit RL 100 4.49g
クエン酸ナトリウム 0.20g
過酸化水素 9.98g。
【0176】
この組成物を、テフロン(登録商標)で覆われた(直径が2インチの)羽根を備えるCole−Parmerの高トルク低速実験用ミキサーで、次のように混合した。PEGをエタノールと混合した。Eudragit RL 100をエタノール−PEG混合物に溶解させ、次いでEudragit L 100−55を添加した。次いで、クエン酸ナトリウムを撹拌下で添加した。次いで、水を混合物に添加し、次いで過酸化水素、その次にPVP90、次いでPVP30を添加し、2時間混合した。次いでこの溶液を、気泡を分散させながら2〜5時間を超える時間貯蔵した。
【0177】
(実施例11)
(相分離性非固体組成物の調製)
歯の漂白用組成物を次の成分から調製し、実施例9に記載されたようにして混合した:
Eudragit L 100−55 4.99g
PVP30 12.97g
PVP90 2.50g
水 23.95g
エタノール(95%) 26.95g
PEG 7.98g
Eudragit RL 100 2.50g
クエン酸ナトリウム 0.20g
過酸化カルバミド 17.96g。
【0178】
(実施例12)
(相分離性非固体組成物からの過酸化水素のインビトロでの放出)
実施例2に記載された方法と同様の方法で実験を行って、実施例10および実施例11の歯科用漂白組成物からの過酸化物のインビトロでの放出を評価した。実施例10および実施例11からの製剤が、Eudragit RL−100を含まない同様の製剤と比較してより長期間、過酸化物の放出を維持できることを見出した。さらに実施例10および実施例11からの製剤は、Colgate Simply White(登録商標)生成物に比べて、より長期間特徴を持続できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相分離性膜形成組成物であって:
(a)第一の水膨潤性ポリマーであって、該ポリマーはpHが約5.5未満の水に不溶であるか、または水溶性ポリマーである、第一の水膨潤性ポリマー;
(b)親水性ポリマーと該親水性ポリマーに水素結合し得る相補的オリゴマーとの混合物;
(c)第二の水膨潤性ポリマーであって、該ポリマーはすべてのpH値の水に不溶である、第二の水膨潤性ポリマー;および
(d)任意の活性剤、
を含む組成物。
【請求項2】
前記第一の水膨潤性水不溶性ポリマーが、アクリレートベースのポリマーまたはコポリマーである、請求項1の組成物。
【請求項3】
前記アクリレートベースのポリマーまたはコポリマーが、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチルまたはメタクリル酸エチルのポリマーおよびコポリマーから選択される、請求項2の組成物。
【請求項4】
前記アクリレートベースのコポリマーが、メタクリル酸およびメタクリル酸メチルのコポリマーである、請求項3の組成物。
【請求項5】
前記水溶性ポリマーが、水溶性セルロースに由来するポリマー;ポリビニルアルコール;コラーゲン;および天然の多糖類から選択される、請求項1の組成物。
【請求項6】
前記第二の水膨潤性水不溶性ポリマーが、セルロースエステルまたはアクリレートベースのポリマーもしくはコポリマーである、請求項1の組成物。
【請求項7】
前記セルロースエステルが、非エステル化セルロースモノマー単位、セルロースアセテートモノマー単位およびセルロースブチレートモノマー単位またはセルロースプロピオネートモノマー単位のいずれかを含む、少なくとも一つのセルロース系ポリマーから構成されている、請求項6の組成物。
【請求項8】
前記アクリレートベースのポリマーまたはコポリマーが、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチルまたはメタクリル酸エチルのポリマーおよびコポリマーから選択される、請求項6の組成物。
【請求項9】
前記アクリレートベースのコポリマーが、メタクリル酸およびメタクリル酸メチルのコポリマーである、請求項8の組成物。
【請求項10】
前記第二の水膨潤性水不溶性ポリマーに対する前記第一の水膨潤性水不溶性ポリマーの重量比が、約1:3〜3:1の範囲内である、請求項1の組成物。
【請求項11】
前記比率が約1.5:1〜2:1の範囲内である、請求項10の組成物。
【請求項12】
前記親水性ポリマーが、ポリ(N−ビニルラクタム)、ポリ(N−ビニルアミド)、ポリ(N−アルキルアクリルアミド)、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリビニルアミンならびにそのコポリマーおよび混合物からなる群より選択される、請求項1の組成物。
【請求項13】
前記親水性ポリマーが、ポリ(N−ビニルラクタム)、ポリ(N−ビニルアミド)、ポリ(N−アルキルアクリルアミド)ならびにそのコポリマーおよび混合物からなる群より選択される、請求項12の組成物。
【請求項14】
前記親水性ポリマーが、ポリ(N−ビニルラクタム)またはポリ(N−ビニルラクタム)ホモポリマーである、請求項13の組成物。
【請求項15】
前記ポリ(N−ビニルラクタム)が、ポリビニルピロリドン、ポリビニルカプロラクタムおよびその混合物からなる群より選択される、請求項12の組成物。
【請求項16】
前記ポリ(N−ビニルラクタム)が、ポリビニルピロリドンである、請求項15の組成物。
【請求項17】
前記親水性ポリマーが、約10,000〜2,000,000の範囲の数平均分子量を有する、請求項12の組成物。
【請求項18】
前記相補的オリゴマーが、約45〜800の範囲の分子量を有する、請求項1の組成物。
【請求項19】
前記相補的オリゴマーが約45〜600の範囲の分子量を有する、請求項18の組成物。
【請求項20】
前記相補的オリゴマーが、ポリアルコール、モノマーのアルキレングリコールおよびオリゴマーのアルキレングリコール、ポリアルキレングリコール、カルボキシ基終端ポリアルキレングリコール、アミノ基終端ポリアルキレングリコール、エーテルアルコール、アルカンジオールならびに二炭酸からなる群より選択される、請求項18の組成物。
【請求項21】
前記相補的オリゴマーが、ポリアルキレングリコールおよびカルボキシル基終端ポリアルキレングリコールからなる群より選択される、請求項20の組成物。
【請求項22】
前記相補的オリゴマーが、ポリエチレングリコールおよびカルボキシル基終端ポリエチレングリコールからなる群より選択される、請求項21の組成物。
【請求項23】
前記相補的オリゴマーが、ポリエチレングリコールである、請求項21の組成物。
【請求項24】
前記活性剤が存在し、そして該活性剤が、過酸化物、金属亜塩素酸塩、過ホウ酸塩、過炭酸塩、ペルオキシ酸およびその組み合わせからなる群より選択される漂白剤である、請求項1の組成物。
【請求項25】
前記過酸化物が、過酸化水素、過酸化カルシウム、過酸化カルバミドおよびその混合物からなる群より選択される、請求項24の組成物。
【請求項26】
前記過酸化物が、過酸化ジアルキル、過酸化ジアシル、過エステル、ペルジカルボネート、ケトンペルオキシドおよびヒドロペルオキシドからなる群より選択される、請求項25の組成物。
【請求項27】
前記金属亜塩素酸塩が、亜塩素酸カルシウム、亜塩素酸バリウム、亜塩素酸マグネシウム、亜塩素酸リチウム、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸塩および二酸化塩素からなる群より選択される、請求項24の組成物。
【請求項28】
香料、甘味料、充填剤、防腐剤、pH調整剤、柔軟剤、増粘剤、着色料、顔料、染料、屈折性粒子、香料、甘味料、安定剤、強化剤、粘性低下剤および浸透促進剤からなる群より選択される少なくとも一つの添加物をさらに含む、請求項1の組成物。
【請求項29】
前記第一の水膨潤性ポリマーおよび第二の水膨潤性ポリマー、前記親水性ポリマーならびに前記相補的オリゴマーの相対量が、前記組成物を半透明にするように選択される、請求項1の組成物。
【請求項30】
約0.1〜60重量%の活性剤を含む、請求項1の組成物。
【請求項31】
約0.1〜20重量%の前記第一の水膨潤性ポリマーまたは水溶性ポリマーおよび前記第二の水膨潤性水不溶性ポリマー;ならびに約1〜30重量%の前記親水性ポリマーを含む、請求項1の組成物。
【請求項32】
前記相補的オリゴマーが、親水性ポリマー/相補的オリゴマーの混合物の約1〜85重量%を占める、請求項31の組成物。
【請求項33】
約1〜30重量%の前記第一の水膨潤性ポリマーまたは水溶性ポリマーおよび前記第二の水膨潤性水不溶性ポリマー;ならびに約0.1〜20重量%の前記親水性ポリマーを含む、請求項1の組成物。
【請求項34】
前記相補的オリゴマーが、親水性ポリマー/相補的オリゴマーの混合物の約1〜85重量%を占める、請求項33の組成物。
【請求項35】
約1〜20重量%の前記第一の水膨潤性ポリマーまたは水溶性ポリマーおよび前記第二の水膨潤性水不溶性ポリマー;および約20〜80重量%の前記親水性ポリマーを含む、請求項1の組成物。
【請求項36】
前記相補的オリゴマーが、親水性ポリマー/相補的オリゴマーの混合物の約10〜80重量%を占める、請求項35の組成物。
【請求項37】
約20〜80重量%の前記第一の水膨潤性ポリマーまたは水溶性ポリマーおよび前記第二の水膨潤性水不溶性ポリマー;ならびに約1〜20重量%の前記親水性ポリマーを含む、請求項1の組成物。
【請求項38】
前記相補的オリゴマーが、親水性ポリマー/相補的オリゴマーの混合物の約10〜80重量%を占める、請求項37の組成物。
【請求項39】
歯を漂白するための方法であって、
請求項1に記載の組成物を、漂白を必要とする歯に適用する工程;および
所望の漂白の程度が達成された時に、該組成物を除去する工程、
を包含する、歯を漂白するための方法。
【請求項40】
所定の期間の後に所望の程度の漂白が達成される、請求項39の方法。
【請求項41】
前記所定の期間が約10分間〜約24時間である、請求項40の方法。
【請求項42】
前記所定の期間が約10分間〜約8時間である、請求項41の方法。
【請求項43】
前記所定の期間が約30分間〜1時間である、請求項42の方法。
【請求項44】
期間を延長している間に前記組成物を付着させることができる、請求項39の方法。

【公表番号】特表2006−528984(P2006−528984A)
【公表日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533153(P2006−533153)
【出願日】平成16年5月17日(2004.5.17)
【国際出願番号】PCT/US2004/015448
【国際公開番号】WO2004/103201
【国際公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(503360296)コリウム インターナショナル, インコーポレイテッド (10)
【出願人】(503013358)エイ.ブイ.トップチーブ インスティテュート オブ ペトロケミカル シンセシス (9)
【Fターム(参考)】