説明

相変化材料を利用した複合サイクルシステム

【課題】ガスタービンの運転停止期間の間、HRSGシステムの部品並びに複合サイクル部品の温度をていかさせないために相変化材料を利用した複合サイクルシステムを提供する。
【解決手段】一実施形態では、発電システムの部品66は、蒸気凝縮物又はガスタービン排出ガスを包含する内部容積68を含む。相変化材料72は、複合サイクル発電システム部品66の外面の周りに配置され、相変化材料72が蓄積された潜熱を放出するよう構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示される主題は、複合サイクル発電システムに関し、より具体的には、これらの各種部品における保温に関する。
【背景技術】
【0002】
複合サイクルシステムは、一般に、1以上のガスタービン及び蒸気タービンを含むことができ、これらを用いて発電プラントにおいて電気を生成することができる。ガスタービン内では、燃料を燃焼させて出力を発生することができる。ガスタービンから吐出された加熱排出ガスは、エネルギー源として熱回収蒸気発生器(HRSG)システムに送ることができ、これを用いて蒸気タービンを駆動するための蒸気を生成することができる。HRSGシステム内では、加熱排出ガスは、過熱器、再熱器、蒸発器、エコノマイザ、その他などの一連の熱交換素子を横断することができる。熱交換素子を用いて、加熱排出ガスからの熱を凝縮物に伝達することができ、その結果、過熱蒸気にすることができる。
【0003】
一般に、HRSGシステムは、高温で動作し、高温蒸気を生成することができる。複合サイクルシステムの始動中、補助加熱システムから補助加熱(発電プラントの内部にあるが、複合サイクル流の外部にある、)を提供し、HRSGシステム内の温度を所望の高い動作温度まで上昇させることができる。ガスタービンの作動中、排出ガスは、高い動作温度を維持するのに十分な加熱を提供することができる。しかしながら、ガスタービンは、例えば、電力需要の低い夜間に一定の間隔で運転停止する場合がある。ガスタービンの運転停止期間の間、HRSGシステムの部品並びに複合サイクル部品は、周囲に熱を逃がす可能性がある。運転停止期間の終了後、追加の熱をシステムに入力して周囲に逃がした熱を補償し、高温蒸気の生成に最適な動作温度までHRSGシステムを復帰させることができる。追加加熱の入力は、上述の補助加熱システムの使用により運用コストを増大させる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7512209号明細書
【発明の概要】
【0005】
最初に請求項に記載された本発明の範囲内にある特定の実施形態について以下で要約する。これらの実施形態は、特許請求した本発明の技術的範囲を限定することを意図するものではなく、むしろそれらの実施形態は、本発明の実施可能な形態の簡潔な概要を示すことのみを意図している。当然のことながら、本発明は、下記に説明した実施形態と同様のもの又は該実施形態と異なるものとすることができる様々な形態を含むことができる。
【0006】
一実施形態では、システムは、蒸気凝縮物又はガスタービン排出ガスを収容するよう構成された内部容積を有する発電システム部品と、発電システム部品の外面の周りに配置された相変化材料とを含む。
【0007】
別の実施形態では、システムは、蒸気凝縮物を収容するよう構成された内部容積を有する熱回収蒸気発生システム部品と、熱回収蒸気発生システム部品の周りに配置されて、該熱回収蒸気発生システム部品との間に外部容積を形成する格納構造体と、外部容積内に配置された相変化材料とを含む。
【0008】
更に別の実施形態では、熱回収蒸気発生システムは第1の部品システム及び第2の部品システムを含む。第1の部品システムは、蒸気凝縮物を収容するよう構成された第1の部品と、該第1の部品の第1の外面の周りに配置された第1の相変化材料とを含む。第2の部品システムは、蒸気凝縮物を収容するよう構成された第2の部品と、該第2の部品の第2の外面の周りに配置された第2の相変化材料とを含む。第2の相変化材料は、第1の相変化材料とは異なる。
【0009】
本発明の上記その他の特徴、態様及び利点については、図面と併せて以下の詳細な説明を参照することによって理解を深めることができるであろう。図面を通して、同様の部材には同様の符号を付した。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】相変化材料を利用できる複合サイクル発電システムの一実施形態の概略流れ図。
【図2】図1の複合サイクル発電システムの部品の一実施形態の断面図。
【図3】図1の複合サイクル発電システムの部品の温度分布の一実施形態を描いたグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の1以上の特定の実施形態について説明する。これらの実施形態を簡潔に説明するため、現実の実施に際してのあらゆる特徴について本明細書に記載しないこともある。実施化に向けての開発に際して、あらゆるエンジニアリング又は設計プロジェクトの場合と同様に、実施毎に異なる開発者の特定の目標(システム及び業務に関連した制約に従うことなど)を達成すべく、実施に特有の多くの決定を行う必要があることは明らかであろう。さらに、かかる開発努力は複雑で時間を要することもあるが、本明細書の開示内容に接した当業者にとっては日常的な設計、組立及び製造にすぎないことも明らかである。本発明の様々な実施形態の構成要素について紹介する際、単数形で記載したものは、その構成要素が1以上存在することを意味する。「含む」、「備える」及び「有する」という用語は内包的なものであり、記載した構成要素以外の追加の要素が存在していてもよいことを意味する。
【0012】
本開示は、1以上のシステム部品に関して相変化材料を利用する複合サイクル発電システムに関する。相変化材料は、複合サイクル発電システム内で熱を保留するよう設計することができる。一般に、相変化材料は、その相変化温度に達するまで比較的一定の温度で感熱を吸収することができる。本明細書で定義されるように、相変化温度とは、材料が固体から液体、及び/又は液体から固体に転移する温度である。相変化温度に達すると、相変化材料は、ほぼ一定の温度でかなりの量の潜熱を吸収することができる。例えば、複合サイクルシステムが作動中であるときには、複合サイクルシステム内の温度は、相変化温度を上回って上昇する場合がある。従って、相変化材料は、固体から液体に変化するのに十分な潜熱を吸収することができる。次いで、相変化材料は、温度が相変化温度又はその直下の温度に低下するまで潜熱を蓄えておくことができる。例えば、ガスタービンが運転を停止した場合、システムは、冷却を始めることができ、温度が低下することができる。温度が低下すると、相変化材料は、液相から固相に転移するにつれて複合サイクルシステムに潜熱を放出することができる。
【0013】
相変化材料は、ガスタービンの運転停止中に熱を保留するのに特に有用とすることができる。例えば、発電プラントで使用される複合サイクルシステムは、電力の需要が低下する夜間に運転を停止するガスタービンを含むことができる。ガスタービンが運転停止すると、複合サイクルシステムは、周囲への放熱を開始することができる。しかしながら、作動中、ガスタービンによって生成される熱は、相変化材料内に蓄えることができる。次いで、蓄えられた熱は、例えば、ガスタービンの運転停止時に相変化材料により放出することができ、これにより複合サイクルシステムを長期にわたってより高い温度に維持可能にすることができる。複合サイクルシステム内を高温に維持することで、複合サイクルシステムの再始動に必要な入熱を低減することができる。
【0014】
一般に、相変化材料が液相状態にある間に内部に蓄積される熱の程度は、相変化材料の液相の比熱によって決まることになる。ほとんどの液体と同様に、保留されるエネルギーは、配管断熱材などの固体材料と比べてかなり大きなものとすることができる。次に、蓄積されたエネルギーは、ガスタービンエンジンの運転停止時に複合サイクルシステム内の温度を高温に維持するために相変化材料により放出することができる。
【0015】
液相エネルギー蓄積に加え、相変化材料はまた、液相と固相間の融解熱を利用することによってHRSGシステム部品を長期間にわたりほぼ同じ温度に維持可能にすることができる。例えば、ガスタービンが動作していないときに、HRSGシステム部品及び組み込まれている相変化材料の内部エネルギーは、高温のHRSGシステムから周囲に流すことができる。当初、相変化材料は液相状態にあることができ、相変化材料の温度は、HRSGシステム部品の断熱特性に従って周囲にエネルギーが放出されるにつれて減少することができる。しかしながら、相変化材料が相変化温度(すなわち、臨界温度)に達すると、相変化材料の温度は、液相から固相に変化したときに融解の潜熱によりエネルギー損失中に一定に維持することができる。従って、相変化材料の融解の潜熱及び/又は相変化材料の液相内の熱の蓄積により、HRSGシステム部品を長期間にわたり高い温度に維持可能にすることができる。
【0016】
一般に、相変化材料は、複合サイクルシステムが「暖機再始動」モードではなく「高温再始動」モードで始動可能にするのに十分なエネルギーを蓄積及び放出することができる。「暖機再始動」モードでは、補助加熱システムからなどの追加の入熱を利用してシステムを再始動することができるが、「高温再始動」モードでは、追加の入熱を必要としない場合がある。従って、相変化材料の使用は、補助加熱システムの使用を低減することができ、その結果、エネルギー消費量全体を低減することができる。更に、入熱が小さくなるほど、発電プラントの運転をより迅速に再開できるようになり、より多くの電力を販売できるようにすることができる。その上、特定の実施形態では、運転停止中の温度変動が
小さくなり、これによりシステム部品への熱応力を最小限にすることができ、その結果、複合サイクル部品の寿命を延ばすことができる。
【0017】
図1は、相変化材料を利用できる複合サイクルシステム2の一実施形態の概略流れ図である。システム2は、ガスタービン4、蒸気タービン6、及び熱回収蒸気発生(HRSG)システム8を含むことができる。ガスタービン4内では、シンガス又は天然ガスなどの燃料を燃焼させ、「トッピング」又はBraytonサイクル内で電力を生成することができる。ガスタービン4からの排出ガスをHRSGシステム8に供給し、「ボトミング」又はRankineサイクル内で蒸気を生成することができる。特定の実施形態では、ガスタービン4、蒸気タービン6、及びHRSGシステム8は、統合型ガス化複合サイクル(IGCC)発電プラント内に含めることができる。理解できるように、複合サイクルシステム2の部品は、簡略化した図で示されているが、限定を意図したものではない。例えば、特定の実施形態では、バルブ、温度センサ、圧力センサ、コントローラ、貯蔵タンク、空気分離システムなどの追加の装備を含めることができ、及び/又はとりわけ、ガス化装置を含めることができる。
【0018】
ガスタービン4は、燃料(例えば、ガス又は液体燃料)を燃焼させて第1の負荷14を駆動することができる。第1の負荷14は、例えば、電力を生成する発電機とすることができる。ガスタービン4は、タービン16、燃焼器又は燃焼室18、及び圧縮機20を含むことができる。第1の負荷14の駆動に加えて、ガスタービン4は、排出ガス22を生成することができる。排出ガス22は、蒸気タービン6(HRSGシステム8を通じて)に供給され、第2の負荷24を駆動することができる。第2の負荷24はまた、電力を生成する発電機とすることができる。しかしながら、第1及び第2の負荷14、24の両方は、ガスタービン4及び蒸気タービン6により駆動することができる他のタイプの負荷であってもよい。更に、ガスタービン4及び蒸気タービン6は、例示の実施形態に示すように、別個の負荷14、24を駆動することができるが、ガスタービン4及び蒸気タービン6はまた、縦一列の形態で利用して、単一のシャフトにより単一の負荷を駆動してもよい。例示の実施形態では、蒸気タービン6は、低圧セクション26(LP ST)、中圧セクション28(IP ST)、及び高圧セクション30(HP ST)を含むことができる。しかしながら、蒸気タービン6並びにガスタービン4の特定の構成は、実装時固有とすることができ、セクションのあらゆる組み合わせを含むことができる。低圧セクション26、並びに高圧及び中圧セクション30及び28は、ケーシング32及び34内にそれぞれ内封することができる。ケーシング32及び34は、セクション26、28、及び30を通じて蒸気を配向するよう設計することができる。図示の実施形態では、中圧及び高圧セクション28及び30は共に、ケーシング34内に内封することができる。しかしながら、他の実施形態では、中圧及び高圧セクション28及び30用に別個のケーシングを利用してもよい。
【0019】
第2の負荷24の駆動に加えて、蒸気タービン6は、排出蒸気35を生成することができる。排出蒸気35は、蒸気タービン6の低圧セクション26から凝縮機36内に配向することができる。凝縮機36は蒸気を凝縮し、複合サイクルシステム2の凝縮物貯蔵器として機能する高温ウェル37を含むことができる。その後、凝縮機36からの凝縮物は、凝縮物ポンプ38を用いて、HRSGシステム8の低圧セクション内に配向することができる。
【0020】
一般に、HRSGシステム8は、ガスタービン4からの排出ガス22を利用して凝縮物を加熱し、蒸気タービン6に動力を供給するのに使用される蒸気を生成することができる。凝縮物がHRSGシステム8を通って流れると、ガスタービン4からの排出ガス22により凝縮物を加熱することができる。具体的には、排出ガス22は、HRSGシステム8内に含まれる筐体又は配管39を通じて流れることができ、エコノマイザ、蒸発器、過熱器、及び再熱器などの機器を通って流れる凝縮物、とりわけ、配管39内に含まれる凝縮物に熱を伝達することができる。配管39は、一般に、HRSGシステム8を通る排出ガス流路を定め、ここで排出ガス22は、最も高温の蒸気凝縮物及び/又は最も高温の蒸気を含む区域からHRSGシステム8を通じてより低温の凝縮物に流れることができる。
【0021】
HRSGシステム8内では、凝縮物は、低圧エコノマイザ40(LPECON)を通じて流れることができ、ここで凝縮物を加熱することができる。低圧エコノマイザ40から、凝縮物を低圧蒸発器42(LPEVAP)又は中圧エコノマイザ44(IPECON)に向けて配向することができる。低圧蒸発器42は、凝縮物が加熱されて蒸気を生成するときに、該凝縮物を収容する蒸気ドラム45を含むことができる。低圧蒸発器42からの蒸気は、蒸気タービン6の低圧セクション26に戻すことができる。同様に、中圧エコノマイザ44から、中圧蒸発器46(IPEVAP)又は高圧エコノマイザ48(HPEON)に向けて配向することができる。中圧蒸発器46は、凝縮物が加熱されて蒸気を生成するときに、該凝縮物を収容する蒸気ドラム49を含むことができる。中圧蒸発器46からの蒸気は、蒸気タービン6の中圧セクション28に送ることができる。更に、中圧エコノマイザ44からの蒸気はまた、燃料ガスヒータ(図示せず)に送ることができ、ここで蒸気は、ガスタービン4の燃焼室18で使用する燃料ガスを加熱するのに使用することができる。
【0022】
最終的に、高圧エコノマイザ48からの凝縮物は、高圧蒸発器50(HPEVAP)に配向することができる。高圧蒸発器50は、凝縮物が加熱されて蒸気を生成するときに凝縮物を収容する蒸気ドラム51を含むことができる。蒸気ドラム51から出た蒸気は、高圧過熱器52及び最後の高圧過熱器54に配向することができ、ここで蒸気が過熱され、最終的に蒸気タービン6の高圧セクション30に送ることができる。蒸気タービン6の高圧セクション30からの排出物は、蒸気タービン6の中圧セクション28に配向することができ、蒸気タービン6の中圧セクション28からの排出物は、蒸気タービン6の蒸気タービン6の低圧セクション26に入ることできる。
【0023】
段間過熱低減器56は、1次高圧過熱器52と最後の高圧過熱器54との間に位置付けることができる。段間過熱低減器56は、最後の高圧過熱器54からの蒸気の排出温度をより堅牢に制御可能にすることができる。具体的には、段間過熱低減器56は、最後の高圧過熱器54から出る蒸気の排出温度が所定値を上回る場合は常に、最後の高圧過熱器54の上流側の過熱蒸気に低温の給水噴霧を噴射することによって、最後の高圧過熱器54から出る蒸気の温度を制御するよう構成することができる。
【0024】
加えて、蒸気タービン6の高圧セクション30からの排出物は、1次再熱器58及び2次再熱器60に配向することができ、ここで排出物を蒸気タービン6の中圧セクション28内に配向する前に再加熱することができる。段間過熱低減器62は、再熱器58及び60間に位置付けられ、再熱器58及び60から排出蒸気温度を制御することができる。具体的には、段間過熱低減器62は、2次再熱器60から出る蒸気の排出温度が所定値を上回る場合は常に、2次再熱器60の上流側の過熱蒸気に低温の給水噴霧を噴射することによって、2次再熱器60から出る蒸気の温度を制御するよう構成することができる。理解できるように、HRSGシステム8及びその部品は、例証として提供され、限定を意図するものではない。例えば、他の実施形態では、再熱器58及び60、過熱器52、54、過熱低減器56、62、エコノマイザ40、44、48、蒸発器42、46、50、並びに蒸気ドラム45、49、51の数、レイアウト、タイプ、及びその組み合わせは変えることができる。
【0025】
システム2などの複合サイクルシステムでは、高温の排出物は、ガスタービン4から流れてHRSGシステム8を通過することができ、これを用いて高圧高温の蒸気を生成することができる。HRSGシステム8内では、高温の排出物は、配管39を通って流れ、エコノマイザ40、44、48、蒸発器42、46、50、過熱器52、54、並びに再熱器58、60などのHRSGシステム部品を通って流れる凝縮物に熱を伝達することができる。導管63は、設備を接続することができ、排出ガスはまた、配管39内に位置付けられた導管を通って流れる凝縮物に熱を伝達することができる。導管63の一部、並びに蒸気ドラム45、49、51及び段間過熱低減器56、62などの特定のHRSGシステム部品は、配管39の外部に位置付けることができ、従って、排出ガス22に接触することができない。特定の実施形態によれば、相変化材料は、配管39の外部に配置された部品に適用することができる。例えば、相変化材料は、蒸気ドラム45、49、51の外面の周り、段間過熱低減器56、62の外面の周り、及び/又は配管39の外部に位置付けられた導管63の外面の周りに配置することができる。相変化材料はまた、凝縮器高温ウェル37及び/又は蒸気タービンケーシング32、34などの他の複合サイクル部品の周りに配置することができる。
【0026】
相変化材料は、システム部品作動温度に相当する相変化温度を有するように選択及び/又は特別に設計を行うことができる。例えば、特定の実施形態によれば、高圧蒸気ドラム51は、少なくとも約260℃の作動温度を有することができ、中圧蒸気ドラム49は、高圧蒸気ドラムの作動温度よりも低い約100〜200℃の作動温度を有することができ、低圧蒸気ドラム45は、高圧蒸気ドラムの作動温度よりも低い約200〜300℃の作動温度を有することができる。この実施形態では、蒸気ドラム51、49、45の各々の周りに異なる相変化材料を配置することができ、各相変化材料は、それぞれの作動温度に相当する相変化温度を有する。例えば、高圧蒸気ドラム51の周りに配置された相変化材料は、少なくとも約260℃の相変化温度を有することができ、中圧蒸気ドラム49の周りに配置された相変化材料は、高圧蒸気ドラムの相変化材料の相変化温度よりも低い約100〜200℃の相変化温度を有することができ、低圧蒸気ドラム45の周りに配置された相変化材料は、高圧蒸気ドラムの相変化材料の相変化温度よりも低い約200〜300℃の相変化温度を有することができる。
【0027】
別の実施例では、中圧蒸気ドラム49は、高圧蒸気ドラム51の作動温度の約65%の作動温度を有することができ、低圧蒸気ドラム45は、高圧蒸気ドラム51の作動温度の約40%の作動温度を有することができる。この実施例において、異なる相変化材料を蒸気ドラム51、49、45の各々の周りに配置することができる。中圧蒸気ドラム49の周りに配置される相変化材料の相変化温度は、高圧蒸気ドラム51の作動温度の約65%とすることができる。低圧蒸気ドラム45の周りに配置された相変化材料の相変化温度は、高圧蒸気ドラム51の作動温度の約40%とすることができる。他の実施形態では、異なる相変化材料の相対的割合は変化することができる。例えば、特定の実施形態では、相変化温度は、約10〜90%及びこれらの間の全部分範囲で変化することができる。より具体的には、相変化温度は、約30〜70%、及びこれらの間の全部分範囲で変化することができる。
【0028】
相変化材料は、複合サイクルシステム2内の蒸気ドラム45、49、51、凝縮器高温ウェル37、蒸気タービンケーシング32、34、段間過熱低減器56、62、及び導管63などの部品の種々の組み合わせの周りに配置することができる。更に、特定の実施形態によれば、相変化材料は、複合サイクルシステム2内の最も高温の部品が最大量の熱損失を生じる傾向が高いので、少なくともこれらの周りに配置することができる。例えば、相変化材料は、高圧蒸気ドラム51の周りに配置することができる。しかしながら、他の実施形態では、部品のあらゆる組み合わせは、幾つかのタイプ又は異なるタイプの相変化材料を含むことができる。一実施形態によれば、複合サイクルシステム2は、少なくとも約180℃、200℃、230℃、又は260℃の相変化温度を有する相変化材料を含むことができる。上述のように、相変化材料は、長期間にわたって熱エネルギーを複合サイクルシステム内に保留可能にすることができる。更に、特定の実施形態では、相変化材料は、ガスタービンシステムの運転停止時には蓄積した熱エネルギーを放出するよう設計することができ、これにより複合サイクルシステム2がガスタービンシステムの運転停止中に長時間にわたってより高温に維持できるようになる。上記で検討したように、高温はエネルギー消費量及び始動時間を低減することができる。
【0029】
相変化材料は、複合サイクルシステム2の初期導入中にシステム部品の周りに導入することができる。更に、特定の実施形態によれば、既存のシステム部品は、相変化材料を含めるよう改造することができる。例えば、相変化材料は、既存の導管63の周りに導入することができる。別の実施例では、蒸気ドラム45、49、51、段間過熱低減器56、62、及び/又は凝縮器高温ウェル37などの特定の部品は、プラント運転停止中に相変化材料を含む部品と置き換えることができる。
【0030】
図2は、図1に示す複合サイクルシステム2で利用できる部品66を貫通する複合サイクル部品システム64の断面図である。部品66は、蒸気ドラム45、49、51、凝縮器高温ウェル37、蒸気タービンケーシング32、34、段間過熱低減器56、62、又は図1に示すようにHRSG配管39の外部に配置された導管63を表すことができる。部品66は、凝縮物及び/又は蒸気を収容することができる内部容積68を定めることができる。更に、他の実施形態では、部品66は、配管39(図1)を表すことができ、内部容積68は、ガスタービン4からの排出ガスを含むことができる。一般に、部品66は、1以上の高温流体(例えば、液体及び/又はガス)を含む大型の部品とすることができる。特定の実施形態によれば、内部容積は、少なくとも約20〜190000L及びこれらの間の全部分範囲とすることができる。更に、特定の実施形態では、内部容積68は、少なくとも1800L(500ガロン)、3800L(1000ガロン)、19000L(5000ガロン)、又は190000L(50000ガロン)とすることができる。その上、特定の実施形態によれば、内部容積68を定める部品66の寸法は、少なくとも約2m×2m×6mとすることができる。
【0031】
格納構造体70は、部品66の周りに配置され、該部品66の外面と格納構造体70との間に外部容積71を形成することができる。外部容積71は、相変化材料72を含むことができる。相変化材料72は、外部容積71の幅にほぼ一致することができる厚み73で部品66の周りに配置することができる。上述のように、相変化材料72は、部品66内の作動温度に相当する相変化温度を有するように特別に設計することができる。特定の実施形態によれば、相変化材料72は、部品66内の作動温度の±1、5、10、又は15%内にある相変化温度を有することができる。相変化材料は、とりわけ、熱塩、パラフィン、又は脂肪酸などの有機相変化材料とすることができ、或いは、含水塩などの無機材料とすることができる。特定の実施形態によれば、相変化材料72は脂肪族有機化合物とすることができる。相変化材料は、液体、ゲル、ペースト、粉体、又は顆粒状の形態などのあらゆる好適な形態とすることができる。更に、特定の実施形態によれば、相変化材料は、マイクロカプセル粉体又は液体スラリーを含むことができ、これらは、特に有機熱塩が相変化材料として利用される場合に水分蒸発又は取り込みを防ぐことができる。
【0032】
相変化材料72は、シートメタル又は他の好適な材料から構成することができる格納構造体70内に含むことができる。特定の実施形態によれば、格納構造体70は、排気バルブ又は開口を含むことができ、これにより外部容積71内の相変化材料72の初期導入を容易にすることができる。例えば、相変化材料72は、導入を容易にするために加熱して液相にすることができる。その結果、相変化材料72が、数ある技術の中でも特に、圧送、噴霧、又は注入により外部容積71に送られるときには、排気バルブ又は開口が空気を放出可能にすることができる。冷却されると、相変化材料72は、外部容積71において凝固することができる。更に、外部容積71は連続空間とすることができ、或いは、分割して内部チャンバを形成してもよい。更に、特定の実施形態では、補強材又は他の支持体が格納構造体70を部品60に接続し、該格納構造体70を支持することができる。
【0033】
絶縁体74は、格納構造体70の周りに配置することができる。特定の実施形態によれば、絶縁体は、湿潤状態で適用され、格納構造体70上に巻き取られ又は巻き付けることができる。次いで、絶縁体74は、乾燥されるにつれて硬質状態に固化することができる。特定の実施形態によれば、絶縁体は、針状耐火繊維ブランケット及び無機結合剤を含むことができる。例えば、絶縁体は、ジョージア州オーガスタ所在のThermal Ceramicsから市販されているCerafiber(登録)Wet Packとすることができる。しかしながら、他の実施形態では、あらゆる好適な絶縁体を使用することができる。一般に、絶縁体74は、部品システム64から周囲への熱伝達の割合を小さくするよう設計することができる。絶縁体74は、部品システム64内の熱を保留するための低い熱伝導率を有することができる。絶縁体74はまた、凍結融解安定性(例えば、凍結がその強度にあまり影響を及ぼさないこと)及び表面バインダーマイグレーション(例えば、絶縁体内のバインダー粒子は、表面に向かうマイグレーションが抑制される)などの特性を有することができる。
【0034】
絶縁体は、厚み75で格納構造体70の周りに配置することができる。特定の実施形態では、絶縁体の厚み75は、約12〜35cm及びこれらの間の全部分範囲とすることができる。しかしながら、他の実施形態では、あらゆる好適な厚み75を利用することができる。更に、相変化材料72及び絶縁体74の相対厚み73及び75は、相変化材料及び/又は絶縁体74の特性に応じて変えることができる。例えば、特定の実施形態によれば、相変化材料72は、内部容積68内の作動温度に一致する相変化温度を有するように設計することができる。特定の実施形態によれば、相変化材料72は、内部容積68内の作動温度の±1、5、10、又は15%内にある相変化温度を有することができる。更に、特定の実施形態では、相変化材料72は、内部容積68内の作動温度を約1〜100℃及びこれらの間の全部分範囲を下回る相変化温度を有することができる。より具体的には、相変化材料72は、内部容積68内の作動温度を約5〜50℃及びこれらの間の全部分範囲を下回る相変化温度を有するように設計することができる。
【0035】
熱伝導率、比熱、及び融解の潜熱などの相変化材料の他の特性は、設計相変化温度に依存することができる。これらの他の特性は、相変化材料の厚み73を決定付けることができる。例えば、相変化材料が比較的低い融解熱を有する場合、相変化材料により多くの熱エネルギーを保留できるように厚み73を増大させることができる。絶縁体74の厚み75もまた、相変化材料72の特性に依存することができる。例えば、相変化材料72が比較的高い熱伝導率を有する場合、絶縁体74は、周囲への熱伝達の割合を緩慢にするために増大した厚み75に配置することができる。
【0036】
図1に関して上記で述べたように、複合サイクルシステム2が作動しているときには、相変化材料72は、内部容積68から熱を吸収し、固相から液相に変化することができる。次に、相変化材料72は、内部容積68の温度が相変化温度又はその直下の温度に低下するまで液相を維持することができる。例えば、内部容積68の温度は、ガスタービンが運転停止しているときに低下することができる。内部容積68の温度が低下すると、相変化材料は、蓄積された潜熱を部品66に放出し、これにより内部容積68及び構成部品66を加熱することができる。相変化材料72が熱を放出すると、相変化材料72は液相から固相に転移することができる。相変化材料72からの熱の放出により、内部容積68及び部品66の温度がガスタービンの運転停止後により高い温度に維持可能にすることができる。ガスタービンが再度始動し、内部容積温度が上昇し始めると、相変化材料72は、相変化温度に近づくまで感熱を吸収することができる。相変化温度に近づくと、相変化材料72は、潜熱を吸収し、固相から液相に転移することができる。
【0037】
図3は、図1に示す複合サイクルシステム2など、複合サイクルシステムの部品についての温度分布78、80を示すグラフ76である。例えば、部品は、図1に示す高圧蒸気ドラム51とすることができる。温度分布78は、相変化材料が周りに配置された部品の温度分布を描いており、温度分布80は、相変化材料を備えない同じ部品の温度分布を描いている。グラフ76は、部品の温度を示すy軸82と、ガスタービンの運転停止以降の経過時間を表すx軸84とを含む。各温度分布78、80は、転移温度を表す転移点88、90を含む。転移温度は、一般に、これよりも低い温度では高温の再始動ではなく暖機再始動を利用できる温度を表すことができる。
【0038】
グラフ76に示すように、相変化材料を備えない部品を表す温度分布80は、運転停止後数時間で生じる転移点88を有し、相変化材料を備える部品を表す温度分布78は、運転停止後更に多くの時間なって初めて生じる転移点90を有する。転移点90までの時間の増大は、温度分布78の比較的平坦な部分92に起因して生じる。比較的平坦な部分92は、一般に、液相から固相への相変化材料の相変化に相応することができる。従って、相変化材料は、部品を長期間にわたって高い温度に維持可能にすることができ、これにより暖機始動の回数を低減でき、より高温の始動を行うことができるようになる。
【0039】
上述のように、高温始動の増大は、補助加熱システムの使用を低減することができ、及び/又は発電プラントが運転停止後直ぐに発電を開始可能にすることができる。特定の実施形態によれば、相変化材料は、周囲への熱伝達の割合を少なくとも約30〜50%及びこれらの間の全部分範囲だけ低減することができる。理解できるように、温度分布78、80は例証として示されたものに過ぎず、限定を意図するものではない。他の実施形態では、温度分布の形状、温度値、及び経過時間値は、とりわけ、作動条件、設計条件、部品材料、及び相変化材料に応じて変わる場合がある。
【0040】
本明細書では、本発明を最良の形態を含めて開示するとともに、装置又はシステムの製造・使用及び方法の実施を始め、本発明を当業者が実施できるようにするため、例を用いて説明してきた。本発明の特許性を有する範囲は、特許請求の範囲によって規定され、当業者に自明な他の例も包含する。かかる他の例は、特許請求の範囲の文言上の差のない構成要素を有しているか、或いは特許請求の範囲の文言と実質的な差のない均等な構成要素を有していれば、特許請求の範囲に記載された技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0041】
2 複合サイクル発電システム
4 ガスタービン
6 蒸気タービン
8 熱回収蒸気発生システム
14 第1の負荷
16 タービン
18 燃焼室
20 圧縮機
22 排出ガス
24 負荷
26 LPST
28 IPST
30 HPST
32 ケーシング
34 ケーシング
35 排出蒸気
36 凝縮機
37 高温ウェル
38 凝縮物ポンプ
39 筐体/配管
40 LPECON
42 LPEVAP
44 IPECON
45 蒸気ドラム
46 IPEVAP
48 HPECON
49 蒸気ドラム
50 HPEVAP
51 蒸気ドラム
52 HP過熱器
54 HP過熱器
56 段間過熱低減器
58 1次再熱器
60 2次再熱器
62 段間過熱低減器
63 導管
64 部品システム
66 部品
68 内部容積
70 格納構造体
71 容積
72 相変化材料
74 絶縁体
75 厚み
76 グラフ
78 ライン
80 ライン
82 y軸
84 x軸
88 転移点
90 転移点
92 平坦部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気凝縮物又はガスタービン排出ガス(22)を収容するよう構成された内部容積(68)を有する発電システム部品(66)と、
前記発電システム部品(66)の外面の周りに配置された相変化材料(72)と
を備えるシステム。
【請求項2】
前記発電システム部品(66)が、熱回収蒸気発生システム配管(39)、蒸気ドラム(45)、49、51)、熱回収蒸気発生システム導管(66)、蒸気タービンケーシング(32)、又は凝縮器高温ウェル(37)を含む、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記発電システム部品(66)が、蒸気タービン(6)から蒸気を凝縮するよう構成された凝縮器(36)の高温ウェル(37)を含む、請求項1記載のシステム。
【請求項4】
前記発電システム部品(66)が、熱回収蒸気発生システム(8)の蒸気ドラム(45、49、51)を含む、請求項1記載のシステム。
【請求項5】
前記発電システム部品(66)が、少なくとも約1800Lの内部容積(68)を含む、請求項1記載のシステム。
【請求項6】
複合サイクル発電システム部品(66)の周りに配置されて、該複合サイクル発電システム部品(66)との間に外部容積(71)を形成する格納構造体(70)を備え、前記外部容積(71)内には前記相変化材料(72)が配置される、請求項1記載のシステム。
【請求項7】
ガスタービン(4)、蒸気タービン(6)、及び熱回収蒸気発生システム(8)を更に含む、請求項1記載のシステム。
【請求項8】
前記相変化材料(72)が、蓄積された潜熱を放出するよう構成されている、
請求項1記載のシステム。
【請求項9】
蒸気凝縮物を収容するよう構成された内部容積(68)を有する熱回収蒸気発生システム部品(66)と、
前記熱回収蒸気発生システム部品(66)の周りに配置されて、該熱回収蒸気発生システム部品(66)との間に外部容積(71)を形成する格納構造体(70)と、
前記外部容積(71)内に配置された相変化材料(72)と
を備えるシステム。
【請求項10】
前記相変化材料(72)が、少なくとも260℃の相変化温度を有する、請求項9記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−141116(P2011−141116A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289320(P2010−289320)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】