眉目化粧料
【課題】 本発明は、極めて化粧持続性に優れ、耐水性に優れた肌に負担の少ない自然な化粧被膜を形成する、安定性にも優れた眉目化粧料を提供することにある。
【解決手段】 トリオルガノシリル基を有する非イオン性多糖類及びその誘導体の１種又は２種以上、疎水性無水ケイ酸，有機変性ベントナイト，合成ケイ酸ナトリウム・マグネシウムから選ばれる１種又は２種以上、化粧用粉体、及び揮発性油剤を含有することを特徴とする眉目化粧料を提供することにより、上記課題を解決することを見いだしたもの。
【解決手段】 トリオルガノシリル基を有する非イオン性多糖類及びその誘導体の１種又は２種以上、疎水性無水ケイ酸，有機変性ベントナイト，合成ケイ酸ナトリウム・マグネシウムから選ばれる１種又は２種以上、化粧用粉体、及び揮発性油剤を含有することを特徴とする眉目化粧料を提供することにより、上記課題を解決することを見いだしたもの。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、眉目化粧料に関し、さらに詳しくはトリオルガノシリル基を有する非イオン性多糖類及びその誘導体の１種又は２種以上、疎水性無水ケイ酸，有機変性ベントナイト，合成ケイ酸ナトリウム・マグネシウムから選ばれる１種又は２種以上、化粧用粉体、及び揮発性油剤を含有し、極めて化粧持続性に優れ、耐水性に優れた肌に負担の少ない自然な化粧被膜を形成する、安定性にも優れた眉目化粧料に関する。
【背景技術】
【０００２】
本発明でいう眉目化粧料は、アイライナー、マスカラ、アイブロウなどの目の際、睫毛、眉毛に主に用いられるもので、高度な化粧持続性が求められるアイテムを対象とするものである。
【０００３】
メイクアップ化粧料においては、人の活動時間中に、他との接触や塗布部位の動きの影響で、化粧被膜が部分的に剥離する「化粧崩れ」といわれる現象が見られるものである。さらにその化粧崩れを補正するために、「化粧直し」といわれる化粧をやり直す行為が行われる。実際、化粧直しが行われるのは、メイクアップ化粧料の中でもファンデーションや口紅のような、塗布部位が比較的広く、化粧崩れしやすいアイテムで、手早く化粧直しできるものに限られる。メイクアップ化粧料のうちアイライナー、マスカラ、アイブロウなどの限られた狭い部位に使用される眉目化粧料においては、摩擦や接触などの機会が少ないことから、極端な化粧崩れは少なく、化粧直しは行われないことが多い。これは、手早さを要求される化粧直しが行いづらいのもその原因にある。しかしながら、これらのアイテムにおいても、現実には化粧崩れは起こっており、化粧直しが行いづらいことから、逆にこれらのアイテムの方がより優れた化粧持続性を要求される。
【０００４】
眉目化粧料において、化粧持続性に着目した例については、幾つか関連文献が存在する。
【０００５】
トリオルガノシリル基を側鎖に置換基として４０重量％以上有する非イオン性天然多糖類およびその誘導体から選ばれる少なくとも１種のポリマーを成分として含有することで化粧持ちを向上させたメイクアップ化粧料（特許文献１参照）、アクリル−シリコーン系グラフト共重合体を低沸点油に溶解した混合組成物と化粧料用粉体をアルカリ増粘型ポリメタクリル酸系エマルジョンにて水相に均一分散させたアイメイクアップ化粧料（特許文献２参照）、アクリル−シリコーン系グラフト共重合体とロジン酸系樹脂とを含有するアイメイクアップ化粧料（特許文献３参照）、イソパラフィン，ショ糖又はデキストリンを骨格とする親油性ゲル化剤，ポリエチレンワックス及び合成高分子ワックスにて構成される非水系化粧料（特許文献４参照）などが出願されている。
【０００６】
【特許文献１】特開昭６３−７２６１４公報
【特許文献２】特開平２−２５０８１２公報
【特許文献３】特開２０００−１１９１３９公報
【特許文献４】特開２００３−６３９２７公報
【０００７】
これら文献においては、メイクアップ化粧料に関するものであり、ファンデーションから口紅、アイシャドウ、アイライナー、マスカラまで、幅広いアイテムを対象としている。これらにおいては、化粧直しの必要がないレベルの化粧持続性を目指したものはない。また、市場における化粧持ちを訴求した商品において、化粧直しが不必要な極めて高い化粧持続性が確認され、使用性や安定性までも満足できるものは少ない。最近は、殆どのスポーツにおいて、化粧は必須アイテムであり、美しさの表現や紫外線防御目的で使用されることが多い。その中でも特に激しいスポーツであるシンクロナイズドスイミングにおいては、極端な化粧持続性が要求されるが、この要求を十分に満たすものは極めて少ない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００８】
本発明においては、アイライナー、マスカラ、アイブロウなどの目の際、睫毛、眉毛に用いられる眉目化粧料に関し、極めて化粧持続性に優れ、耐水性に優れた肌に負担の少ない自然な化粧被膜を形成し、安定性にも優れた眉目化粧料を提供する方法について鋭意検討した。
【課題を解決するための手段】
【０００９】
本発明者は、前記課題を解決するために研究を行った結果、（Ａ）トリオルガノシリル基を有する非イオン性多糖類及びその誘導体の１種又は２種以上が、１０〜３０質量％、（Ｂ）疎水性無水ケイ酸、有機変性ベントナイト、合成ケイ酸ナトリウム・マグネシウムから選ばれる１種又は２種以上が、０．５〜１０質量％、（Ｃ）化粧用粉体が、５〜２５質量％、（Ｄ）揮発性油剤とを含有することで、これらの課題を解消した眉目化粧料が得られることを見いだし、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、上記の構成による眉目化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【００１０】
本発明によれば、安定性、化粧持続性に優れ、耐水性に優れた肌に負担の少ない自然な化粧被膜の眉目化粧料が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１１】
本発明の実施の形態を説明する。
【００１２】
本発明に用いる（Ａ）のトリオルガノシリル基を有する非イオン性多糖類及びその誘導体は、一般式（１）で示されるトリオルガノシリル基を側鎖に置換基として４０重量％以上含有する非イオン性の多糖類及びその誘導体である。トリオルガノシリル基の含有量が４０重量％未満のものでは、他の油剤との相溶性が低く、また耐水性などの低下も認められ、好ましくない。
【００１３】
【化１】
［式中、Ｒ１，Ｒ２及びＲ３は炭素数１〜６の炭化水素基であり、同一でも異なっていてもよい］
【００１４】
トリオルガノシリル基を有する非イオン性多糖類としては、プルラン，デンプン，ローカストビーンガム及びグァーガムなどを挙げることができる。これらの中では、被膜強度、揮発油剤への溶解性、適度な粘性という点でプルランが特に好ましい。トリオルガノシリル基を有したプルランを油性基剤に溶解させた場合、高濃度でも流動性に優れたゾル状の粘性挙動を示すことから、高濃度の配合が可能である。グアーガムやローカストビーンガムにおいても、本発明の目的を達成できるが、高濃度では流動性が低下することから、使用性の面で扱いにくい。
【００１５】
トリオルガノシリル基を有する非イオン性多糖類の眉目化粧料中の配合量としては、６〜３０質量％が好ましいが、被膜強度及び被膜の自然さの点で１０〜３０質量％が特に好ましい。６質量％未満では、充分な被膜強度が得られず、化粧持続性もスポーツなどに用いられる場合には、充分でない。また３０質量％を越えると、被膜が厚くなり過ぎて、肌に違和感が感じられ、被膜強度においても、それ以上の向上は見られない。
【００１６】
トリオルガノシリル基を導入する非イオン性多糖類の誘導体としては、メチル，エチル，プロピルなどのアルキル基、ヒドロキシエチル，ヒドロキシプロピル，ヒドロキシブチルなどのヒドロキシアルキル基、カルボキシメチル，カルボキシエチルなどのカルボキシアルキル基によって置換された部分エーテル化物や、アセチル，プロピオニル，ブチリルなどの脂肪族アシル基によって置換された部分エステル化物などが挙げられる。
【００１７】
トリオルガノシリル基としては、炭化水素基として炭素原子数１〜６のアルキル基及び／又はアルケニル基を有するものが好ましい。かかる炭化水素基としては、メチル，エチル，プロピル，イソプロピル，ブチル，tert-ブチル，ペンチル，ヘキシルなどの直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、シクロペンチル，シクロヘキシルなどの環状アルキル基、ビニル，アリル，イソプロペニル，1-ブテニル，1-ペンテニル，1-ヘキセニルなどの直鎖もしくは分岐鎖のアルケニル基が挙げられる。但し、これら炭化水素基の炭素原子数が多くなるに従い、炭化水素基が嵩高いものとなって非イオン性多糖類中に有効に導入することが困難になるため、上記例示のアルキル基、中でも特にメチル，エチル，プロピル，tert-ブチルが好ましい。
【００１８】
上記のような炭化水素基を有する一般式（１）のトリオルガノシリル基としては、トリメチルシリル基，トリエチルシリル基，トリプロピルシリル基，tert-ブチルジメチルシリル基，シクロヘキシルジメチルシリル基などを挙げることができる。
【００１９】
さらに（Ｂ）の疎水性無水ケイ酸、有機変性ベントナイト、合成ケイ酸ナトリウム・マグネシウムから選ばれる１種又は２種以上を配合することによって、被膜の乾燥時間を短縮し、塗布時のにじみを防止する働きがある。さらに（Ｃ）の化粧用粉体の沈降を防止する働きもある。これらの成分は油性基剤に粘性を付与する性質があり、特に疎水性無水ケイ酸、有機変性ベントナイトが好ましい。疎水性無水ケイ酸としては、シリル化処理した無水ケイ酸が好ましく、市販ではアエロジルＲ−９７２、Ｒ−９７４（日本アエロジル社製）やキャボジルＴＳ−５３０（グンゼ産業社製）などを挙げることができる。有機変性ベントナイトとしては、ジメチルジステアリルアンモニウムベントナイトが一般に用いられ、エスベン（日本有機粘土社製）、ベントン３４（ＮＬインダストリーズ社製）などを挙げることができる。
【００２０】
（Ｂ）の疎水性無水ケイ酸、有機変性ベントナイト、合成ケイ酸ナトリウム・マグネシウムから選ばれる１種又は２種以上の配合量としては、０．５〜１０質量％が特に好ましい。これを越えると、アイライナーなどの場合、筆を用いてラインを描くことが困難になり、乾燥時間も極度に早くなる。０．５質量％未満では、（Ｃ）の化粧用粉体の沈降が抑えられないことから、二層分離しやすく、塗布時のにじみが気になる。また、乾燥時間も遅くなることから使用しづらい。
【００２１】
（Ｃ）の化粧用粉体としては、アイライナー、マスカラ、アイブロウなどの眉目化粧料においては、一般的には黒酸化鉄、カーボンブラックなどの黒色着色顔料が主に用いられるが、他の着色顔料、体質顔料なども用いることができる。（Ｃ）の化粧用粉体の配合量としては、５〜３０質量％が好ましい。５質量％未満では、充分な着色力が発揮されず、３０質量％を越えると、乾燥時間が極度に早くなり、顔料の沈降も顕著に見られる。
【００２２】
ところで、被膜強度に関しては、（Ａ）成分の割合が関わっていることを先で述べたが、被膜強度が上がっても柔軟性が低下すると、肌への付着性が低下する傾向が見られる。特に（Ｃ）の化粧用粉体と（Ｂ）成分を含む顔料の割合が（Ａ）成分を含む不揮発性の被膜形成成分の割合に対して高くなりすぎると、被膜の性質に対して粉体の性質が強くなり、肌への付着性が低下して、強い摩擦や動きによって剥離してしまう現象が生じる。（Ａ）成分に対する（Ｂ）および（Ｃ）成分を含む顔料の割合が３以下であることが好ましい。
【００２３】
（Ｄ）の揮発性油剤としては、常圧下で沸点が２６０℃以下である低沸点イソパラフィン系炭化水素や、デカメチルテトラシロキサン，オクタメチルシクロテトラシロキサン，デカメチルシクロペンタシロキサン，ドデカメチルシクロヘキサシロキサンなどの揮発性シリコーン油などが挙げられる。低沸点イソパラフィン系炭化水素としては、ＩＰソルベント１６２０、２０２８，２８３５（出光石油化学社製）、シェルソル（シェル化学社製）などを挙げることができる。
【００２４】
本発明の眉目化粧料には、前述の必須となる成分以外に、必要に応じて、一般的な化粧料や医薬部外品に配合される他の成分、例えば油脂，界面活性剤，保湿剤，無機粉体，有機粉体，紫外線吸収剤，ｐＨ調整剤，キレート剤，薬剤，香料，樹脂，その他アルコール類などを、本発明品の効果を損なわない範囲で、適宜必要に応じて配合することができる。
【実施例】
【００２５】
次に本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明の眉目化粧料は、これらに限定されるものではない。
【００２６】
表１に示す実施例１〜２、実施例１に対する比較例１〜４、実施例２に対する比較例１〜４の油性アイライナーを調製し、それらの「化粧し易さ（描き易さ）」「べたつき感」「耐水性」「色移り（二次付着し易さ）」「化粧持続性」について、１０名の専門パネルを用いて評価した。試料を目の際に塗布し、塗布時に
「化粧し易さ（描き易さ）」を、塗布乾燥後（３０秒後）に「べたつき感」「色移り（二次付着し易さ）」を、塗布して６時間経過後に「化粧持続性」を評価した。「耐水性」については、手の甲などに塗布してもらい、水道水で洗い流すことで評価してもらった。判定基準は下記のとおりである。１０名の平均値を総合評価点とした。結果を表１に示す。
［判定基準］
「化粧し易さ（描き易さ）」
１：スムースに細いラインが描きやすい
２：特に描き易いとは感じない
３：描きにくい
［判定基準］
「べたつき感」
１：べたつかずさらっとしている
２：特に気にならない
３：べたつく
［判定基準］
「耐水性」
１：非常に耐水性に優れる
２：特に感じられない
３：耐水性に劣る
［判定基準］
「色移り（二次付着し易さ）」
１：色移りが全くみられない
２：特に感じられない
３：色移りがはげしい
［判定基準］
「化粧持続性」
１：ほとんど化粧の落ちがみられない
２：普通
３：化粧持ちが悪い
【００２７】
また、同様に実施例１〜２、実施例１に対する比較例１〜４、実施例２に対する比較例１〜４の油性アイライナーについて、安定性を観察した。調製した油性アイライナーをガラス瓶に充填し、５０℃の高温下で、製造後２４時間保存後と製造７日後の離液の状態を、充填物の高さに対する分離層（上層）の高さの割合（％）で評価した。結果を表１に示す。
【００２８】
【表１】
製造方法：
成分１〜２と成分８〜１０を混合加熱溶解した後、冷却し、成分３〜７を加え、混合攪拌した後、三本ローラーを用いてさらに混合均一化し、成分１１を加え、混合均一化する。
【００２９】
表１より明らかなように、本発明の眉目化粧料は、化粧し易さ、べたつき感、耐水性、色移り性、化粧持続性、５０℃下の安定性、以上全ての項目において、比較例と比較して優れていることが確認された。
【００３０】
以下、その他本発明の実施例を記載する。
【００３１】
［実施例３］油性アイライナー
１．トリメチルシリル化プルラン ２０．０（質量％）
２．軽質イソパラフィン ４６．４
３．デカメチルシクロペンタシロキサン １０．０
４．シリル化処理無水ケイ酸 １．０
５．ジメチルジステアリルアンモニウム ０．６
ベントナイト
６．黒酸化鉄 ２０．０
７．エタノール ２．０
製造方法：
成分１〜３を混合加熱溶解した後、冷却し、成分４〜６を加え、混合攪拌した後、三本ローラーを用いてさらに混合均一化し、成分７を加え、混合均一化する。
【００３２】
［実施例４］リキッドアイブロウ
１．トリエチルシリル化プルラン ２０．０（質量％）
２．軽質イソパラフィン ５１．０
３．シリル化処理無水ケイ酸 １．５
４．合成ケイ酸ナトリウム・マグネシウム ０．５
５．黒酸化鉄 １０．０
６．黄酸化鉄 ５．５
７．ベンガラ ５．５
８．二酸化チタン ４．０
９．エタノール ２．０
製造方法：
成分１〜２を混合加熱溶解した後、冷却し、成分３〜８を加え、混合攪拌した後、三本ローラーを用いてさらに混合均一化し、成分９加え、混合均一化する。
【００３３】
［実施例５］油性マスカラ
１．トリメチルシリル化プルラン ２０．０（質量％）
２．ミツロウ ５．０
３．ポリエチレンワックス ８．０
４．軽質流動イソパラフィン ３９．４
５．デカメチルテトラシロキサン ２０．０
６．シリル化処理無水ケイ酸 １．５
７．黒酸化鉄 ５．０
８．エタノール １．０
９．パラオキシ安息香酸メチル ０．１
製造方法：
成分１〜５を混合加熱溶解した後、冷却し、成分６〜７を加え、混合攪拌した後、三本ローラーを用いてさらに混合均一化し、成分８〜９加え、混合均一化する。
【００３４】
本発明の眉目化粧料は、以上の実施例３〜５においても、実使用の結果、化粧し易さ、べたつき感、耐水性、色移り性、化粧持続性、安定性において優れていることが確認された。
【技術分野】
【０００１】
本発明は、眉目化粧料に関し、さらに詳しくはトリオルガノシリル基を有する非イオン性多糖類及びその誘導体の１種又は２種以上、疎水性無水ケイ酸，有機変性ベントナイト，合成ケイ酸ナトリウム・マグネシウムから選ばれる１種又は２種以上、化粧用粉体、及び揮発性油剤を含有し、極めて化粧持続性に優れ、耐水性に優れた肌に負担の少ない自然な化粧被膜を形成する、安定性にも優れた眉目化粧料に関する。
【背景技術】
【０００２】
本発明でいう眉目化粧料は、アイライナー、マスカラ、アイブロウなどの目の際、睫毛、眉毛に主に用いられるもので、高度な化粧持続性が求められるアイテムを対象とするものである。
【０００３】
メイクアップ化粧料においては、人の活動時間中に、他との接触や塗布部位の動きの影響で、化粧被膜が部分的に剥離する「化粧崩れ」といわれる現象が見られるものである。さらにその化粧崩れを補正するために、「化粧直し」といわれる化粧をやり直す行為が行われる。実際、化粧直しが行われるのは、メイクアップ化粧料の中でもファンデーションや口紅のような、塗布部位が比較的広く、化粧崩れしやすいアイテムで、手早く化粧直しできるものに限られる。メイクアップ化粧料のうちアイライナー、マスカラ、アイブロウなどの限られた狭い部位に使用される眉目化粧料においては、摩擦や接触などの機会が少ないことから、極端な化粧崩れは少なく、化粧直しは行われないことが多い。これは、手早さを要求される化粧直しが行いづらいのもその原因にある。しかしながら、これらのアイテムにおいても、現実には化粧崩れは起こっており、化粧直しが行いづらいことから、逆にこれらのアイテムの方がより優れた化粧持続性を要求される。
【０００４】
眉目化粧料において、化粧持続性に着目した例については、幾つか関連文献が存在する。
【０００５】
トリオルガノシリル基を側鎖に置換基として４０重量％以上有する非イオン性天然多糖類およびその誘導体から選ばれる少なくとも１種のポリマーを成分として含有することで化粧持ちを向上させたメイクアップ化粧料（特許文献１参照）、アクリル−シリコーン系グラフト共重合体を低沸点油に溶解した混合組成物と化粧料用粉体をアルカリ増粘型ポリメタクリル酸系エマルジョンにて水相に均一分散させたアイメイクアップ化粧料（特許文献２参照）、アクリル−シリコーン系グラフト共重合体とロジン酸系樹脂とを含有するアイメイクアップ化粧料（特許文献３参照）、イソパラフィン，ショ糖又はデキストリンを骨格とする親油性ゲル化剤，ポリエチレンワックス及び合成高分子ワックスにて構成される非水系化粧料（特許文献４参照）などが出願されている。
【０００６】
【特許文献１】特開昭６３−７２６１４公報
【特許文献２】特開平２−２５０８１２公報
【特許文献３】特開２０００−１１９１３９公報
【特許文献４】特開２００３−６３９２７公報
【０００７】
これら文献においては、メイクアップ化粧料に関するものであり、ファンデーションから口紅、アイシャドウ、アイライナー、マスカラまで、幅広いアイテムを対象としている。これらにおいては、化粧直しの必要がないレベルの化粧持続性を目指したものはない。また、市場における化粧持ちを訴求した商品において、化粧直しが不必要な極めて高い化粧持続性が確認され、使用性や安定性までも満足できるものは少ない。最近は、殆どのスポーツにおいて、化粧は必須アイテムであり、美しさの表現や紫外線防御目的で使用されることが多い。その中でも特に激しいスポーツであるシンクロナイズドスイミングにおいては、極端な化粧持続性が要求されるが、この要求を十分に満たすものは極めて少ない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００８】
本発明においては、アイライナー、マスカラ、アイブロウなどの目の際、睫毛、眉毛に用いられる眉目化粧料に関し、極めて化粧持続性に優れ、耐水性に優れた肌に負担の少ない自然な化粧被膜を形成し、安定性にも優れた眉目化粧料を提供する方法について鋭意検討した。
【課題を解決するための手段】
【０００９】
本発明者は、前記課題を解決するために研究を行った結果、（Ａ）トリオルガノシリル基を有する非イオン性多糖類及びその誘導体の１種又は２種以上が、１０〜３０質量％、（Ｂ）疎水性無水ケイ酸、有機変性ベントナイト、合成ケイ酸ナトリウム・マグネシウムから選ばれる１種又は２種以上が、０．５〜１０質量％、（Ｃ）化粧用粉体が、５〜２５質量％、（Ｄ）揮発性油剤とを含有することで、これらの課題を解消した眉目化粧料が得られることを見いだし、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、上記の構成による眉目化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【００１０】
本発明によれば、安定性、化粧持続性に優れ、耐水性に優れた肌に負担の少ない自然な化粧被膜の眉目化粧料が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１１】
本発明の実施の形態を説明する。
【００１２】
本発明に用いる（Ａ）のトリオルガノシリル基を有する非イオン性多糖類及びその誘導体は、一般式（１）で示されるトリオルガノシリル基を側鎖に置換基として４０重量％以上含有する非イオン性の多糖類及びその誘導体である。トリオルガノシリル基の含有量が４０重量％未満のものでは、他の油剤との相溶性が低く、また耐水性などの低下も認められ、好ましくない。
【００１３】
【化１】
［式中、Ｒ１，Ｒ２及びＲ３は炭素数１〜６の炭化水素基であり、同一でも異なっていてもよい］
【００１４】
トリオルガノシリル基を有する非イオン性多糖類としては、プルラン，デンプン，ローカストビーンガム及びグァーガムなどを挙げることができる。これらの中では、被膜強度、揮発油剤への溶解性、適度な粘性という点でプルランが特に好ましい。トリオルガノシリル基を有したプルランを油性基剤に溶解させた場合、高濃度でも流動性に優れたゾル状の粘性挙動を示すことから、高濃度の配合が可能である。グアーガムやローカストビーンガムにおいても、本発明の目的を達成できるが、高濃度では流動性が低下することから、使用性の面で扱いにくい。
【００１５】
トリオルガノシリル基を有する非イオン性多糖類の眉目化粧料中の配合量としては、６〜３０質量％が好ましいが、被膜強度及び被膜の自然さの点で１０〜３０質量％が特に好ましい。６質量％未満では、充分な被膜強度が得られず、化粧持続性もスポーツなどに用いられる場合には、充分でない。また３０質量％を越えると、被膜が厚くなり過ぎて、肌に違和感が感じられ、被膜強度においても、それ以上の向上は見られない。
【００１６】
トリオルガノシリル基を導入する非イオン性多糖類の誘導体としては、メチル，エチル，プロピルなどのアルキル基、ヒドロキシエチル，ヒドロキシプロピル，ヒドロキシブチルなどのヒドロキシアルキル基、カルボキシメチル，カルボキシエチルなどのカルボキシアルキル基によって置換された部分エーテル化物や、アセチル，プロピオニル，ブチリルなどの脂肪族アシル基によって置換された部分エステル化物などが挙げられる。
【００１７】
トリオルガノシリル基としては、炭化水素基として炭素原子数１〜６のアルキル基及び／又はアルケニル基を有するものが好ましい。かかる炭化水素基としては、メチル，エチル，プロピル，イソプロピル，ブチル，tert-ブチル，ペンチル，ヘキシルなどの直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、シクロペンチル，シクロヘキシルなどの環状アルキル基、ビニル，アリル，イソプロペニル，1-ブテニル，1-ペンテニル，1-ヘキセニルなどの直鎖もしくは分岐鎖のアルケニル基が挙げられる。但し、これら炭化水素基の炭素原子数が多くなるに従い、炭化水素基が嵩高いものとなって非イオン性多糖類中に有効に導入することが困難になるため、上記例示のアルキル基、中でも特にメチル，エチル，プロピル，tert-ブチルが好ましい。
【００１８】
上記のような炭化水素基を有する一般式（１）のトリオルガノシリル基としては、トリメチルシリル基，トリエチルシリル基，トリプロピルシリル基，tert-ブチルジメチルシリル基，シクロヘキシルジメチルシリル基などを挙げることができる。
【００１９】
さらに（Ｂ）の疎水性無水ケイ酸、有機変性ベントナイト、合成ケイ酸ナトリウム・マグネシウムから選ばれる１種又は２種以上を配合することによって、被膜の乾燥時間を短縮し、塗布時のにじみを防止する働きがある。さらに（Ｃ）の化粧用粉体の沈降を防止する働きもある。これらの成分は油性基剤に粘性を付与する性質があり、特に疎水性無水ケイ酸、有機変性ベントナイトが好ましい。疎水性無水ケイ酸としては、シリル化処理した無水ケイ酸が好ましく、市販ではアエロジルＲ−９７２、Ｒ−９７４（日本アエロジル社製）やキャボジルＴＳ−５３０（グンゼ産業社製）などを挙げることができる。有機変性ベントナイトとしては、ジメチルジステアリルアンモニウムベントナイトが一般に用いられ、エスベン（日本有機粘土社製）、ベントン３４（ＮＬインダストリーズ社製）などを挙げることができる。
【００２０】
（Ｂ）の疎水性無水ケイ酸、有機変性ベントナイト、合成ケイ酸ナトリウム・マグネシウムから選ばれる１種又は２種以上の配合量としては、０．５〜１０質量％が特に好ましい。これを越えると、アイライナーなどの場合、筆を用いてラインを描くことが困難になり、乾燥時間も極度に早くなる。０．５質量％未満では、（Ｃ）の化粧用粉体の沈降が抑えられないことから、二層分離しやすく、塗布時のにじみが気になる。また、乾燥時間も遅くなることから使用しづらい。
【００２１】
（Ｃ）の化粧用粉体としては、アイライナー、マスカラ、アイブロウなどの眉目化粧料においては、一般的には黒酸化鉄、カーボンブラックなどの黒色着色顔料が主に用いられるが、他の着色顔料、体質顔料なども用いることができる。（Ｃ）の化粧用粉体の配合量としては、５〜３０質量％が好ましい。５質量％未満では、充分な着色力が発揮されず、３０質量％を越えると、乾燥時間が極度に早くなり、顔料の沈降も顕著に見られる。
【００２２】
ところで、被膜強度に関しては、（Ａ）成分の割合が関わっていることを先で述べたが、被膜強度が上がっても柔軟性が低下すると、肌への付着性が低下する傾向が見られる。特に（Ｃ）の化粧用粉体と（Ｂ）成分を含む顔料の割合が（Ａ）成分を含む不揮発性の被膜形成成分の割合に対して高くなりすぎると、被膜の性質に対して粉体の性質が強くなり、肌への付着性が低下して、強い摩擦や動きによって剥離してしまう現象が生じる。（Ａ）成分に対する（Ｂ）および（Ｃ）成分を含む顔料の割合が３以下であることが好ましい。
【００２３】
（Ｄ）の揮発性油剤としては、常圧下で沸点が２６０℃以下である低沸点イソパラフィン系炭化水素や、デカメチルテトラシロキサン，オクタメチルシクロテトラシロキサン，デカメチルシクロペンタシロキサン，ドデカメチルシクロヘキサシロキサンなどの揮発性シリコーン油などが挙げられる。低沸点イソパラフィン系炭化水素としては、ＩＰソルベント１６２０、２０２８，２８３５（出光石油化学社製）、シェルソル（シェル化学社製）などを挙げることができる。
【００２４】
本発明の眉目化粧料には、前述の必須となる成分以外に、必要に応じて、一般的な化粧料や医薬部外品に配合される他の成分、例えば油脂，界面活性剤，保湿剤，無機粉体，有機粉体，紫外線吸収剤，ｐＨ調整剤，キレート剤，薬剤，香料，樹脂，その他アルコール類などを、本発明品の効果を損なわない範囲で、適宜必要に応じて配合することができる。
【実施例】
【００２５】
次に本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明の眉目化粧料は、これらに限定されるものではない。
【００２６】
表１に示す実施例１〜２、実施例１に対する比較例１〜４、実施例２に対する比較例１〜４の油性アイライナーを調製し、それらの「化粧し易さ（描き易さ）」「べたつき感」「耐水性」「色移り（二次付着し易さ）」「化粧持続性」について、１０名の専門パネルを用いて評価した。試料を目の際に塗布し、塗布時に
「化粧し易さ（描き易さ）」を、塗布乾燥後（３０秒後）に「べたつき感」「色移り（二次付着し易さ）」を、塗布して６時間経過後に「化粧持続性」を評価した。「耐水性」については、手の甲などに塗布してもらい、水道水で洗い流すことで評価してもらった。判定基準は下記のとおりである。１０名の平均値を総合評価点とした。結果を表１に示す。
［判定基準］
「化粧し易さ（描き易さ）」
１：スムースに細いラインが描きやすい
２：特に描き易いとは感じない
３：描きにくい
［判定基準］
「べたつき感」
１：べたつかずさらっとしている
２：特に気にならない
３：べたつく
［判定基準］
「耐水性」
１：非常に耐水性に優れる
２：特に感じられない
３：耐水性に劣る
［判定基準］
「色移り（二次付着し易さ）」
１：色移りが全くみられない
２：特に感じられない
３：色移りがはげしい
［判定基準］
「化粧持続性」
１：ほとんど化粧の落ちがみられない
２：普通
３：化粧持ちが悪い
【００２７】
また、同様に実施例１〜２、実施例１に対する比較例１〜４、実施例２に対する比較例１〜４の油性アイライナーについて、安定性を観察した。調製した油性アイライナーをガラス瓶に充填し、５０℃の高温下で、製造後２４時間保存後と製造７日後の離液の状態を、充填物の高さに対する分離層（上層）の高さの割合（％）で評価した。結果を表１に示す。
【００２８】
【表１】
製造方法：
成分１〜２と成分８〜１０を混合加熱溶解した後、冷却し、成分３〜７を加え、混合攪拌した後、三本ローラーを用いてさらに混合均一化し、成分１１を加え、混合均一化する。
【００２９】
表１より明らかなように、本発明の眉目化粧料は、化粧し易さ、べたつき感、耐水性、色移り性、化粧持続性、５０℃下の安定性、以上全ての項目において、比較例と比較して優れていることが確認された。
【００３０】
以下、その他本発明の実施例を記載する。
【００３１】
［実施例３］油性アイライナー
１．トリメチルシリル化プルラン ２０．０（質量％）
２．軽質イソパラフィン ４６．４
３．デカメチルシクロペンタシロキサン １０．０
４．シリル化処理無水ケイ酸 １．０
５．ジメチルジステアリルアンモニウム ０．６
ベントナイト
６．黒酸化鉄 ２０．０
７．エタノール ２．０
製造方法：
成分１〜３を混合加熱溶解した後、冷却し、成分４〜６を加え、混合攪拌した後、三本ローラーを用いてさらに混合均一化し、成分７を加え、混合均一化する。
【００３２】
［実施例４］リキッドアイブロウ
１．トリエチルシリル化プルラン ２０．０（質量％）
２．軽質イソパラフィン ５１．０
３．シリル化処理無水ケイ酸 １．５
４．合成ケイ酸ナトリウム・マグネシウム ０．５
５．黒酸化鉄 １０．０
６．黄酸化鉄 ５．５
７．ベンガラ ５．５
８．二酸化チタン ４．０
９．エタノール ２．０
製造方法：
成分１〜２を混合加熱溶解した後、冷却し、成分３〜８を加え、混合攪拌した後、三本ローラーを用いてさらに混合均一化し、成分９加え、混合均一化する。
【００３３】
［実施例５］油性マスカラ
１．トリメチルシリル化プルラン ２０．０（質量％）
２．ミツロウ ５．０
３．ポリエチレンワックス ８．０
４．軽質流動イソパラフィン ３９．４
５．デカメチルテトラシロキサン ２０．０
６．シリル化処理無水ケイ酸 １．５
７．黒酸化鉄 ５．０
８．エタノール １．０
９．パラオキシ安息香酸メチル ０．１
製造方法：
成分１〜５を混合加熱溶解した後、冷却し、成分６〜７を加え、混合攪拌した後、三本ローラーを用いてさらに混合均一化し、成分８〜９加え、混合均一化する。
【００３４】
本発明の眉目化粧料は、以上の実施例３〜５においても、実使用の結果、化粧し易さ、べたつき感、耐水性、色移り性、化粧持続性、安定性において優れていることが確認された。
【特許請求の範囲】
【請求項１】
次の成分（Ａ）〜（Ｄ）を含有することを特徴とする眉目化粧料：
（Ａ）トリオルガノシリル基を有する非イオン性多糖類及びその誘導体の１種又は２種以上が、１０〜３０質量％
（Ｂ）疎水性無水ケイ酸、有機変性ベントナイト、合成ケイ酸ナトリウム・マグネシウムから選ばれる１種又は２種以上が、０．５〜１０質量％
（Ｃ）化粧用粉体が、５〜３０質量％
（Ｄ）揮発性油剤
【請求項２】
トリオルガノシリル基を有する非イオン性多糖類及びその誘導体が、トリオルガノシリル基を含有するプルラン及びそれらの誘導体から選ばれる１種又は２種以上であることを特徴とする請求項１記載の眉目化粧料。
【請求項１】
次の成分（Ａ）〜（Ｄ）を含有することを特徴とする眉目化粧料：
（Ａ）トリオルガノシリル基を有する非イオン性多糖類及びその誘導体の１種又は２種以上が、１０〜３０質量％
（Ｂ）疎水性無水ケイ酸、有機変性ベントナイト、合成ケイ酸ナトリウム・マグネシウムから選ばれる１種又は２種以上が、０．５〜１０質量％
（Ｃ）化粧用粉体が、５〜３０質量％
（Ｄ）揮発性油剤
【請求項２】
トリオルガノシリル基を有する非イオン性多糖類及びその誘導体が、トリオルガノシリル基を含有するプルラン及びそれらの誘導体から選ばれる１種又は２種以上であることを特徴とする請求項１記載の眉目化粧料。
【公開番号】特開２００７−３２０９０７（Ｐ２００７−３２０９０７Ａ）
【公開日】平成１９年１２月１３日（２００７．１２．１３）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００６−１５３２１５（Ｐ２００６−１５３２１５）
【出願日】平成１８年６月１日（２００６．６．１）
【出願人】（０００１３５３２４）株式会社ノエビア (258)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成１９年１２月１３日（２００７．１２．１３）
【国際特許分類】
【出願日】平成１８年６月１日（２００６．６．１）
【出願人】（０００１３５３２４）株式会社ノエビア (258)
【Ｆターム（参考）】
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