説明

真円度測定装置及び真円度測定方法

【課題】ワークと回転台の中心を合わせる作業が全く不要で、正確かつ容易に円板状ワークの真円度を測定できるようにする。
【解決手段】テーブル上に載置したワークを挟んで、ヘッド先端がそれぞれワークの反対側の周縁に接するように2個の検出器を対向して設け、ワーク周縁に接するように1対の固定ローラと移動ローラを、各対において一方のローラと他方のローラが2個の検出器のヘッド軸線Aに対して線対称の位置になるように設け、少なくとも1個のローラを駆動手段で回転させる。1対の可動ローラはワーク周縁に接する方向に付勢され、軸線Aに対して常に線対称となるように移動可能とする。ワークをその周縁に接する4個のローラで保持して回転させるため、高精度の回転装置を必要とせず、ワークを中心合わせをしてテーブルに固定する作業が全く必要ない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードディスク用ガラス原板などの円板状ワークの真円度を測定する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の円板状ワークの真円度の測定は、下記の特許文献1に開示されているように、ワークをその中心が回転台の中心と一致するように回転台に載せて回転させ、ワークの外周に接するように設けた検出器の検出値を記録することで行っていた。
【0003】
【特許文献1】特開昭56−98602号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の真円度測定は、ワークの中心と回転台の中心を合わせる作業がきわめて煩雑であり、また、完全に中心を一致させるのは困難であるから、全測定値をフーリエ展開するなどして、中心のずれを補正しなければならなかった。また、回転台の回転軸の振れ回りによって測定誤差が生じるため、回転軸の振れ回り等がない高精度の回転装置が要求されている。
【0005】
本発明は、ワークの中心と回転台の中心を合わせる作業が全く不要で、正確かつ容易に円板状ワークの真円度を測定でき、しかも回転軸の振れ回り等がない高精度の回転装置も不要で、比較的安価に製造できる真円度測定装置、及びワークの中心と回転台の中心を合わせる作業が全く不要で、正確かつ容易に円板状ワークの真円度を測定できる真円度測定方法を開発することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔請求項1〕
本発明は、ワークを載置するテーブルと
テーブル上のワークを挟んで、ヘッド先端がそれぞれワークの反対側の周縁に接するように対向して設けられた2個の検出器と
2個の検出器のヘッド軸線Aに対して線対称の位置に、ワーク周縁に接するように設けられた直径の等しい1対の固定ローラと
2個の検出器のヘッド軸線Aに対して線対称の位置に、ワーク周縁に接するように設けられた直径の等しい1対の可動ローラと
前記1対の固定ローラ又は1対の可動ローラのうち少なくとも1個のローラを回転させる駆動手段を有し、
前記1対の固定ローラの中心を結ぶ線Xと前記1対の可動ローラの中心を結ぶ線Yとはワークの中心に対して反対側にあり、
前記1対の可動ローラはワーク周縁に接する方向に付勢されていると共に、前記軸線Aに対して常に線対称となるように移動可能であることを特徴とする真円度測定装置である。
【0007】
本発明において、検出器のヘッドの軸線Aとは、ヘッド先端が平面視直線状でない(尖っている)場合は、1対の検出器のヘッドの先端を結んだ線、ヘッドの先端が平面視直線状であるときは、ヘッド先端に垂直な線であって、双方のヘッド先端を通る任意の線を意味する。
【0008】
〔請求項2〕
また本発明は、請求項1の真円度測定装置において、前記1対の可動ローラが、前記軸線Aに対して線対称の位置に設けられた枢着軸に回動自在に枢着された1対のアームの先端部に軸着され、前記各々のアームの基端部に前記枢着軸と同軸に固定された歯車が相互に噛み合うことで、前記軸線Aに対して線対称となるように移動可能であり、前記1対のアームを結ぶバネによりワーク周縁に接する方向に付勢されていることを特徴とする真円度測定装置である。
【0009】
〔請求項3〕
また本発明は、請求項1又は2の真円度測定装置において、前記ヘッド先端が平面視で直線状に形成されていることを特徴とする真円度測定装置である。
【0010】
〔請求項4〕
また本発明は、請求項1、2又は3の真円度測定装置を用いた真円度測定方法であって、前記テーブル上に載置した基準ワークを前記2個の検出器のヘッド先端で挟んだ状態で検出器のゼロ合わせを行うステップ(1)と、測定するワークを前記テーブル上に載置し前記2個の検出器のヘッド先端でワークを挟んだ状態における前記2個の検出器の検出値をS(a)、S(b)とし、基準ワークの直径をDとした場合、測定部の直径Dn=S(a)+S(b)+Dを算出するステップ(2)を有し、ワークを回転させながら前記ステップ(2)を繰り返し行ってワークの直径の変化を調べることを特徴とする真円度測定方法である。
【0011】
〔請求項5〕
また本発明は、請求項4の真円度測定方法において、前記ステップ(2)を、ワークを180°回転させるまでの間と、180°〜360°回転させる間とで、同じ長径について2回算出し、算出した各直径の値とワークの回転角度の関係を、ワークを180°回転させるまでの間と、180°〜360°回転させる間とが重なるようにグラフに表示することを特徴とする真円度測定方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の真円度測定装置及び真円度測定方法は、ワークをその周縁に接するローラで保持して回転させるため、高精度の回転装置を必要としない。また、ワークを中心合わせをしてテーブルに固定する作業が全く必要なく、ワーク1個当たりの測定時間を大幅に短縮できる。直径の等しい1対の固定ローラがヘッド軸線Aに対して線対称の位置にあり、直径の等しい可動ローラが軸線Aに対して線対称となるように移動可能な構成であるので、ワークの直径が変化しても、検出器のヘッド先端は、常に、ほぼワークの直径を測定できる位置にある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
1対の可動ローラをヘッドヘッド軸線Aに対して常に線対称となるように移動可能とする構成は、種々の公知機構を採用できるが、1対の可動ローラを、ヘッド軸線Aに対して線対称の位置に設けた枢着軸に回動自在に枢着した1対のアームの先端部に軸着し、各々のアームの基端部に枢着軸と同軸に固定した歯車が相互に噛み合うように構成すると、きわめて簡単かつ安価に製造可能となる。
【0014】
ヘッド先端が平面視で直線となるように形成すると、ワークの直径がヘッド軸線Aからわずかにずれた場合でも、正確に直径(最大径)を測定することが可能となり、好ましい。図3は、ワーク11の直径Dがヘッド軸線Aからずれた場合を、ずれを誇張して表している。同図に示されるように、ヘッド4の先端が直線状であると、ワーク11の直径Dがヘッド軸線Aからずれても、ヘッド4先端は直径部分と接し、正確にワークの直径を測定できる。ヘッド先端が尖っている場合は、直径よりも短い部分を測定することになる。ヘッド先端の平面視直線部分の長さは、ワークの直径のバラツキの具合を等を考慮して適宜定めればよいが、ワークがガラス基板などのかなり精度よく作成されたものである場合は、3mm以上あれば十分である。長さの上限はないが、必要以上に長くしてもスペース及びコスト的に不利になるたけであるので、このような不利のない範囲で長さを決めればよい。
【実施例】
【0015】
図1は、実施例の真円度測定装置の略平面図である。この真円度測定装置は、テーブル1、2個の検出器2、1対の固定ローラ5、1対の可動ローラ6、駆動手段及び制御手段などからなる。
【0016】
テーブル1は、ワーク11を仮置きするためのもので、図示しないフレームに固定されているが、もちろん回転するものであってもよい。検出器2は、いわゆるデジタルインジケータで、シャフト3が常に先端方向に付勢されている状態で本体に対して出入りし、その先端にヘッド4が形成されている。ヘッド4は円板状をなし、先端が平面視で直線状となっている。検出器1にはコントロールパネルが附属しており、コントロールパネルはシャフト3が本体に対して引っ込んだ場合の変位量(mm)をプラスで、出た変位量をマイナスでデジタル表示するほか、リセット(ゼロ合わせ)ボタンや変位量の出力端子などを有する。2個の検出器は、テーブル上のワーク11を挟んで、ヘッド先端がそれぞれワークの反対側の周縁に接するように対向して図示しないフレームに固定されている。この場合、2個の検出器のシャフト3の中心線が相互に一致するようになっており、このように配置するのが最も好ましい。
【0017】
2個の検出器2のヘッド4及びシャフト3中心線をヘッド軸線Aとして設定した。ヘッド軸線Aは、2個の検出器のヘッド先端直線部分に垂直な線であって、双方のヘッド先端直線部分を通る線であればよいが、この実施例のようにヘッドの中心線とするのが最も好ましい。
【0018】
1対の固定ローラ5は、直径が等しく、ヘッド軸線Aに対して線対称の位置に、ワーク周縁に接するように考慮して、図示しないフレームに回転可能に軸着されている。
【0019】
1対の可動ローラ6は、軸線Aに対して常に線対称となるように移動可能である。すなわち、可動ローラ6は、それぞれ軸線Aに対して線対称の位置にフレームに設けた枢着軸9に回動自在に枢着された1対のアーム7、7’の先端部上面に回転可能に軸着され、アーム7、7’の基端部に枢着軸9と同軸に固定された歯車8が相互に噛み合っているので、アーム7、7’を回動したときのアームの回動角度が常に等しくなる。アーム7、7’はコイルばね11で連結され、1対の可動ローラ6はワーク11に接する方向(アーム7、7’が閉じる方向)に付勢されている。
【0020】
ワークを確実に保持して回転できるようにするため、1対の固定ローラ5の中心を結ぶ線Xと前記1対の可動ローラ6の中心を結ぶ線Yとはワーク11の中心を挟んで反対側になるように配置する。固定ローラ及び可動ローラの素材は、滑りににくく変形の少ないものであれば特に制限はなく、例えば樹脂製やゴム製とすることができる。
【0021】
一方のアーム7’の下面には、駆動手段として図示しないステップモータが固定されており、この駆動手段によって一方のローラ6が回転し、ワーク11を回転させる。駆動手段で駆動させるローラは、固定ローラ及び可動ローラのどれでもよく、2個以上のローラを駆動するようにしてもよい。
【0022】
図2は本実施例の真円度測定装置の信号の流れを示すブロック図である。同図において、制御手段は、例えばパソコンで、ディスプレイとキーボードが附属している。制御手段は、予め設定されているプログラムにしたがって、2個の検出器の測定信号をコントロールパネルを介して読み取り、ワークの直径を算出する等の作業を行う。また、駆動手段に制御信号を送り、ワークを所定角度回転させる。例えば、ワークが1周する間に32回直径を測る場合は、ワークが11.25°ずつ回転して止まるように駆動手段を制御し、ワークが止まった瞬間に検出器の出力を読みに行き、この作業を32回繰り返して測定を終了させる。
【0023】
次に、本実施例の真円度測定装置を用いた真円度測定方法を説明する。まず、テーブル1上に、正確な直径及び真円度を有する基準ワークをセットする。この場合、基準ワークとして直径66.60mm(誤差±0.005mm)の鋼製基板を用いた。ワークのセットは、可動ローラの一方のアームを手で持ってやや広げながらワークをテーブル1上に載置し、アームを手から離すことで容易に行うことができる。基準ワークをセットした状態でコントロールパネルのリセットボタンを押し、2個の検出器のゼロ合わせを行う。
【0024】
制御手段には、計測条件(ワークを何度ずつ回転させるか)、判定上限値、判定下限値、判定真円度、基準ワーク寸法などを入力しておく。判定上限値及び判定下限値は、測定したワークの直径が判定上限値と判定下限値の間にあるときにok、そうでない場合にngと判定するためのものである。真円度判定値は、測定したワークの真円度が判定値以下の場合にok、そうでない場合にngと判定するためのものである。この場合の真円度とは、測定した直径のうち最大のものから最小のものを減じたものである。
【0025】
テーブル上のワークを基準ワークから被検査ワークに代え、制御手段のスタートボタンを押すと、制御手段は入力されたデータを基にしてプログラムにしたがって検出器の出力を読み取り、駆動手段を制御し、測定部の直径などを演算する。測定部の直径Dnは、2個の検出器の検出値をS(a)、S(b)とし、基準ワークの直径をDとした場合、Dn=S(a)+S(b)+Dとなる。演算したDnを判定値と比較してok又はngの判定を行う。
【0026】
本実施例では、ワークが1周する間に32回直径を測定した。したがって、D1〜D32までを演算し、それぞれ判定値と比較した。ワークが半周する間にD1〜D16を測定し、その後の半周で測定したD17〜D32はD1〜D16と同じ直径を繰り返して2回測定したことになる。図4は、測定終了後に制御手段に附属するディスプレイに示される画面の例を示している。同図の中央の楕円で囲った部分に、種々の角度における計測値、判定などが示されている。同図の左下の楕円で囲った部分に、D1〜D32の各直径の値とワークの回転角度の関係(すなわちDの番号)が、ワークを180°回転させるまでの間と、180°〜360°回転させる間とが重なるようにグラフで示されており、この場合D1〜D16とD17〜D32のグラフが完全に重なっているので、測定が正常に行われたことが示されている。D1〜D16とD17〜D32のグラフが一部でも重なっていない場合は、測定が正常に行われなかったことになる。このようにすれば、測定が正常に行われたかどうかを、このグラフを見るだけで容易に判断することができる。このグラフの右脇には、ワークの形状を強調して示した図が表示されている。同図左上の楕円で囲った部分は入力データが示されている。同図右上の楕円で囲った部分には真円度及び判定結果、直径の最大値及び判定結果、直径の最小値及び判定結果が示されている。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施例の真円度測定装置の略平面図である。
【図2】実施例の真円度測定装置のブロック図である。
【図3】ワークの直径とヘッド軸線がずれた場合の説明図である。
【図4】測定終了後に制御手段のディスプレイに示される画面の例である。
【符号の説明】
【0028】
1 テーブル
2 検出器
3 シャフト
4 ヘッド
5 固定ローラ
6 可動ローラ
7 アーム
8 歯車
9 枢着軸
10 コイルばね
11 ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを載置するテーブルと
テーブル上のワークを挟んで、ヘッド先端がそれぞれワークの反対側の周縁に接するように対向して設けられた2個の検出器と
2個の検出器のヘッド軸線Aに対して線対称の位置に、ワーク周縁に接するように設けられた直径の等しい1対の固定ローラと
2個の検出器のヘッド軸線Aに対して線対称の位置に、ワーク周縁に接するように設けられた直径の等しい1対の可動ローラと
前記1対の固定ローラ又は1対の可動ローラのうち少なくとも1個のローラを回転させる駆動手段を有し、
前記1対の固定ローラの中心を結ぶ線Xと前記1対の可動ローラの中心を結ぶ線Yとはワークの中心に対して反対側にあり、
前記1対の可動ローラはワーク周縁に接する方向に付勢されていると共に、前記軸線Aに対して常に線対称となるように移動可能であることを特徴とする真円度測定装置。
【請求項2】
請求項1の真円度測定装置において、前記1対の可動ローラが、前記軸線Aに対して線対称の位置に設けられた枢着軸に回動自在に枢着された1対のアームの先端部に軸着され、前記各々のアームの基端部に前記枢着軸と同軸に固定された歯車が相互に噛み合うことで、前記軸線Aに対して線対称となるように移動可能であり、前記1対のアームを結ぶバネによりワーク周縁に接する方向に付勢されていることを特徴とする真円度測定装置。
【請求項3】
請求項1又は2の真円度測定装置において、前記ヘッド先端が平面視で直線状に形成されていることを特徴とする真円度測定装置。
【請求項4】
請求項1、2又は3の真円度測定装置を用いた真円度測定方法であって、前記テーブル上に載置した基準ワークを前記2個の検出器のヘッド先端で挟んだ状態で検出器のゼロ合わせを行うステップ(1)と、測定するワークを前記テーブル上に載置し前記2個の検出器のヘッド先端でワークを挟んだ状態における前記2個の検出器の検出値をS(a)、S(b)とし、基準ワークの直径をDとした場合、測定部の直径Dn=S(a)+S(b)+Dを算出するステップ(2)を有し、ワークを回転させながら前記ステップ(2)を繰り返し行ってワークの直径の変化を調べることを特徴とする真円度測定方法。
【請求項5】
請求項4の真円度測定方法において、前記ステップ(2)を、ワークを180°回転させるまでの間と、180°〜360°回転させる間とで、同じ長径について2回算出し、算出した各直径の値とワークの回転角度の関係を、ワークを180°回転させるまでの間と、180°〜360°回転させる間とが重なるようにグラフに表示することを特徴とする真円度測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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