説明

真空チャンバ

【課題】真空チャンバにおいて、高い密閉性及び高真空性を維持しつつ軽量化を図る。
【解決手段】壁部材13等で構成され、開口13aを有するチャンバ本体10と、前記開口13aを閉塞可能な蓋部材20と、を備えている。壁部材13等及び蓋部材20のうち少なくとも一方は、前記チャンバ本体10の内外方向に延設された壁30b及びこの壁30bによって仕切られた空洞部30aを有するハニカム構造材30を備えている。ハニカム構造材30の表面のうち、チャンバ本体10の内面及び外面を覆う板部材31、32を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体製造装置等に用いられる真空チャンバに関し、特に軽量化や放出ガスの低減を図るものに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程におけるエッチングや薄膜形成などに用いられる真空チャンバにおいて、筐状の壁部材、半導体装置の出し入れ及び清掃などのための開口、及びこの開口を密閉する蓋部材を備えたものが知られている。このような真空チャンバでは、通常、壁部材や蓋部材は、内部と外部の圧力差に耐えるように、ステンレスなどの金属板材で、厚く構成されるため、重量が大きくなり易い。そこで、壁部材及び蓋部材を構成する材料としてアルミニウムなどを用いて、真空チャンバの軽量化を図る方法がある。また、露光装置に用いられるチャンバにおいては、軽量化のためにチャンバの外壁として、セル構造材の表裏面を二枚の金属板で挟んで構成した部材を用いる技術が提供されている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】国際公開第WO99/39333号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した技術では、次のような問題があった。すなわち、材料によっては放出ガスが多く、密閉性が損なわれるため、高真空を維持することが困難となる場合がある。また、上記セル構造材を用いた外壁は、表裏面は金属版に覆われているが、端面が開放されているため密閉性が低く、真空チャンバに適用することができない。
そこで、本発明は、真空チャンバにおいて、高い密閉性及び超高真空下での真空度を維持しつつ軽量化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一例にかかる真空チャンバは、壁部材で構成され開口を有する容器と、前記開口を閉塞可能な蓋部材と、を備え、前記壁部材及び前記蓋部材のうち少なくとも一方は、前記容器の内外方向に延設された壁及びこの壁によって仕切られた空洞部を有するセル構造材と、前記セル構造材の表面のうち、前記容器の内面及び前記容器の外面に接着される板部材と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、真空チャンバにおいて、高い密閉性及び超高真空下での真空度を維持しつつ、軽量化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下に本発明の第1実施形態にかかる真空チャンバ1の構成について、図1乃至図4を参照して説明する。なお、各図において適宜構成を拡大・縮小・省略して示している。
【0007】
図1に示される真空チャンバ1は、直方体の筐状のチャンバ本体(容器)10を備えている。チャンバ本体10は、角部分を構成する枠部材12を有し、この枠部材12に囲まれて形成される開口のうち前側の開口には壁部材13、その他の開口には壁部材14が気密に取り付けられている。枠部材12は、SUS等から中実に構成され、断面は正方形を成している。
【0008】
前側の壁部材13には、矩形の開口部13aが形成されているとともに、この開口部13aを閉塞可能な矩形の蓋部材20が蝶番21を介して開閉可能に設けられている。下方の壁部材14にはチャンバ本体10を支持する脚部19や、真空引きをするための真空ポート(不図示)等が設けられている。前後左右上下の壁部材13,14に囲まれて密閉された内部空間A(図2参照)には、処理が施される基板等を載置するための被処理体支持部(不図示)等の各種部品が設けられている。
【0009】
図2に示すように壁部材13,14及び蓋部材20は、それぞれ、板状に構成されたハニカム構造材(セル構造材)30と、このハニカム構造材30の表裏面、すなわちここでは内側の表面及び外側の表面を覆う二枚の板部材31,32とを備え、全体で厚さ30mm〜70mm程度に構成されている。ハニカム構造材30は、セラミックや、アルミニウム等、比較的軽量な材料から形成され、内部空間の内外方向すなわちハニカム構造材30の厚さ方向(図4における上下方向)に延びる断面六角形の多数の空洞部30aおよびこの空洞部30aを囲む薄い壁30bを備えている。このハニカム構造材30は、例えば互いに重ね合わされた複数枚の薄いアルミニウムの板状部材が複数箇所において溶接された状態で互いに離間する方向に引っ張られることにより形成される。
【0010】
図4に示された蓋部材20の構造のように、ハニカム構造材30の表裏面に、二枚の板部材31,32がそれぞれ接着剤36を介して接着されることにより、厚さ方向に延びる空洞部30aの両端面が板部材31,32によって閉塞されることで多数のセルが形成される。
【0011】
図2に示すように、各壁部材13,14、及び蓋部材20における周縁部はフランジ部40(封止部材)で覆われている。フランジ部40は、セラミックやアルミニウムよりも放出ガスの少ないSUS等の材料によって、断面コ字状に形成されている。フランジ部は、内側板部材31から外側板部材32にわたってハニカム構造材30が露出している端面を覆うことにより気密に封止している。
【0012】
フランジ部40は、各壁部材13,14の周縁、壁部材13に形成された開口部13aの縁、及び蓋部材20の周縁の全周に渡って設けられている。
【0013】
図4に示す蓋部材20の内側すなわち図4中上方の板部材31は、外側すなわち図4中下方の板部材32よりも厚く形成されている。この内側の板部材31において、壁部材13の開口部13aの縁に対応する位置に、全周にわたってOリング用の溝部33が形成されている。この溝部33にゴムなどの弾性部材からなるOリング34が嵌合されている。
【0014】
以上のように構成された前後左右上下の壁部材13,14のフランジ部40が、枠部材12の前後左右上下の開口に取り付けられるとともに、隣り合う壁部材13,14同士がそれぞれの端部において溶接部35を介して接合され、真空チャンバ1が構成される。
【0015】
このように構成された真空チャンバ1では、蓋部材20を開けて基板等を搬入し、被処理体支持部に設置した後、蓋部材20を閉じる。ここで、Oリング34が開口部13aの縁に密着することにより内部空間が密閉される。この密閉状態において、図示しない真空ポートから真空ポンプによって真空引きされることにより内部空間が減圧された状態で、基板等に各処理が施される。
【0016】
本実施形態にかかる真空チャンバ1は以下に掲げる効果を奏する。壁部材13,14及び蓋部材20にハニカム構造材30を用いて空洞部30aを有する構造としたため、壁部材13,14を、内外の圧力差に耐えうる高い剛性を備えつつ、軽量なものとすることができる。さらに、ハニカム構造材30が露出される端面を覆うフランジ部40を設けたことにより気密性を高めることができる。
【0017】
また、このように、ハニカム構造材30の全表面を別の部材、すなわち板部材31,32、フランジ部40等で被覆する構成としたことで、ハニカム構造材30をアルミニウムやセラミック等の軽量な材料で構成するとともに外表面を放出ガスの少ないSUS等で覆うことができる。したがって、軽量化を図りつつ気密性及び高真空性を維持することが可能となる。さらに空洞部30aによって防音効果や温度安定等の効果も得られる。また、溶接などの従来通りの接合手段を用いることができる。
【0018】
次に、本発明の第2の実施形態に係る真空チャンバ2について図5を参照して説明する。なお、開口部13b、蓋部材50、及びフランジ部60等の構成以外については上記第1実施形態と同様であるため、同符号を付して説明を省略する。
【0019】
本実施形態にかかる真空チャンバ2においては、開口部13b及びこの開口部13bを覆う蓋部材50は円板形状又は四角形状に構成されている(図5においては円形状の場合を例示する)。壁部材13等、開口部13b及び蓋部材50の端面はそれぞれフランジ部60(封止部材)によって気密に覆われている。開口部13bのフランジ部(第1枠体)60は、開口部13bの内側方向に延出し、蓋部材50のフランジ部(第2枠体)60は外側方向に延出している。すなわち、前方の壁部材13の開口部13bの縁に設けられたフランジ部60と蓋部材50に設けられたフランジ部60とは互いに重なり合っている。これら壁部材13及び蓋部材50のフランジ部60の周縁には、複数のボルト孔61が並設されている。これらのボルト孔61に挿通されるボルト62を介して、蓋部材50が前方の壁部材13に気密に固定される。
【0020】
本実施形態にかかる真空チャンバ2おいても上述した第1実施形態にかかる真空チャンバ1と同様の効果が得られる。すなわち、ハニカム構造材30を用いることで、壁部材13等を、内外の圧力差に耐えうる高い剛性を備えつつ、軽量なものとすることができる。また、フランジ部60を備えることによって高い気密性及び高真空性を確保しつつ、内部のセル状構造体にセラミックやアルミニウムなどの軽量な材質を用いることができる。
【0021】
また、他の実施形態として、壁部材13,14及び蓋部材20、50のいずれか一方にのみハニカム構造材30を用いてもよい。ここで、例えば、特に開閉などの操作を要する蓋部材20にのみハニカム構造材30を用いて軽量化することにより、本体部の構造を単純にしつつ、蓋20の開閉操作などを容易とすることができる。
【0022】
なお、本発明は上記各実施形態に限られるものではない。例えば、上記各実施形態においてはセル構造材としては、6角形のハニカム構造材を例示したが、これに限られるものではなく、四角形や他の形状であっても適用可能である。また、ハニカム構造材30がアルミニウムから構成され、枠部材12、板部材31,32、フランジ部60などがSUSで構成されている場合について例示したが他の材質も適用することができる。また、上記第1実施形態においては溝部34を形成するために内側の板部材31のみを全体に厚く構成したが、溝部34の付近のみ厚く構成し、その他の部分は、例えば外側板部材32と同様に薄く構成してもよい。蝶番21で蓋部材20を壁部材13に取り付ける場合について例示したが、これに限られるものではなく、この他例えばバルブなどを用いてもよい。
【0023】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施形態の真空チャンバを示す斜視図。
【図2】同真空チャンバを図1におけるX−X線に沿って矢印方向に見た断面図。
【図3】同真空チャンバを図2におけるY部分を拡大して示す断面図。
【図4】同真空チャンバに組み込まれた蓋部材を示す分解斜視図。
【図5】本発明の第2実施形態の真空チャンバを示す斜視図。
【図6】同真空チャンバを図5におけるZ部分を拡大して示す断面図。
【符号の説明】
【0025】
1、2…真空チャンバ、12…枠部材、13.14…壁部材、13a、13b…開口部、20、50…蓋部材、30…ハニカム構造材、30a…空洞部、30b…壁、31.32…板部材、33…溝部、34…Oリング、35…溶接部、40、60…フランジ部(封止部材、第1枠体、第2枠体)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁部材で構成され開口を有する容器と、
前記開口を閉塞可能な蓋部材と、を備え、
前記壁部材及び前記蓋部材のうち少なくとも一方は、前記容器の内外方向に延設された壁及びこの壁によって仕切られた空洞部を有するセル構造材と、前記セル構造材の表面のうち、前記容器の内面及び前記容器の外面に接着される板部材と、を備えたことを特徴とする真空チャンバ。
【請求項2】
前記セル構造材の表面のうち、前記容器の内部側に露出する端面を気密に封止する封止部材と、
隣り合う複数の前記壁部材の間に介在し、前記壁部材同士を気密に接続する枠部材と、
を備えたことを特徴とする請求項1記載の真空チャンバ。
【請求項3】
前記内面を覆う内側板部材及び前記枠部材は、前記壁の材質よりも放出ガスが少ない材質で構成されていることを特徴とする請求項3記載の真空チャンバ。
【請求項4】
前記内側板部材における前記開口の周囲に対応する位置に、溝部が形成され、該溝部には、前記蓋部材と前記開口との間を気密に封止するためのOリングが設置されていることを特徴とする請求項1記載の真空チャンバ。
【請求項5】
前記蓋部材の周縁の端面を覆う第1枠体と、前記壁部材の開口縁の端面を覆う第2枠体とを備え、前記第1枠体と前記第2枠体とがボルト止めされることにより、前記蓋部材が前記壁部材を気密に閉塞することを特徴とする請求項1に記載の真空チャンバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−82391(P2008−82391A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−261025(P2006−261025)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】