説明

真空ホットプレスとその制御方法

【課題】真空ポンプを高効率に運転することのできる真空ホットプレスを提供する。
【解決手段】真空ポンプ3により減圧されたチャンバ2内で複数の成形材料を加熱・圧締して積層品となす真空ホットプレス1は、真空ポンプ3の潤滑油から水分を分離する油水分離機4を備えるとともに、潤滑油の油水分離機4への循環を真空ポンプ3の駆動に伴って行い、真空ポンプ3の駆動は、真空ポンプ3がチャンバ2へ連通しチャンバ2内を減圧する場合と、真空ポンプ3がチャンバ2へ連通せず真空ポンプ3に直接接続された管路のみを減圧する場合とに択一的に選択して制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空ポンプを高効率に運転する真空ホットプレスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
真空ホットプレスの積層成形においては、成形材料の加熱・圧締時に生ずる水分が真空ポンプに浸入しその潤滑油に混入する。その結果、真空ポンプの内部が錆びたり、ベーンが齧ったり、真空度が低下したりする。そのため、例えば特許文献1に示すような油水分離機を真空ポンプに接続して、潤滑油から水分を分離して除去する必要がある。しかしながら、特許文献1に示す油水分離機の潤滑油は、真空ポンプの駆動とは異なる別の駆動源で駆動されるポンプで循環されている。よって、コスト高になるとともに、広い設置場所を必要とする。
【0003】
また、油水分離機を機能させるためには、真空ポンプを回転駆動させておく必要があるところ、真空ホットプレスにおいてはその積層成形の形態上真空ポンプは間欠運転とならざるをえない。そのため、油水分離機の作動時間が制限されて十分な水分除去が行えないのである。
【0004】
【特許文献1】特開平6−193564号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した問題を解決すべくなされたものであって、真空ポンプを高効率に運転することのできる真空ホットプレスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、真空ポンプにより減圧されたチャンバ内で複数の成形材料を加熱・圧締して積層品となす真空ホットプレスは、前記真空ポンプの潤滑油から水分を分離する油水分離機を備えるとともに、前記潤滑油の前記油水分離機への循環を前記真空ポンプの駆動に伴って行うようにした真空ホットプレスに関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の真空ホットプレスによれば、真空ポンプを安全かつ高効率に運転することができるので、真空ホットプレスの積層成形の生産性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図面に基づいて、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明の真空ホットプレスの概要を示す構成図である。
【0009】
真空ホットプレス1は、チャンバ2と、チャンバ2内の空気を吸引して減圧する真空ポンプ3と、真空ポンプ3内部に封入した潤滑油に混入した水分を分離して除去する油水分離機4と、真空ポンプ3を回転駆動させるモータ5と、真空ポンプ3とチャンバ2を連通させる管路を開閉する第1の電磁弁6と、第1の電磁弁6と真空ポンプ3との管路から分岐して大気へ連通する管路を開閉する第2の電磁弁7と、チャンバ2内を大気へ連通させる管路を開閉する第3の電磁弁8とからなる。そして、チャンバ2では、配線基板とフィルム状樹脂等の成形材料を積層成形する。
【0010】
チャンバ2内部には、公知の図示しないホットプレス機構が収容されている。すなわち、ホットプレス機構は、固定盤と可動盤との間に多段の熱板をそれらの間隔が可動盤の昇降に応じて開閉するように設けたものである。そして、熱板間が開いているときに、複数の成形材料を重ねた状態でチャンバ2の開口を介して挿入し、その開口を閉鎖後、第1の電磁弁6を開放し、第2の電磁弁7と第3の電磁弁8を閉鎖し、真空ポンプ3を駆動してチャンバ2内を減圧する。そして、可動盤を固定盤に向けて移動させさらに型締して、成形材料を加熱・圧締し、成形材料を積層品になす。このとき、成形材料から発生した水蒸気は、真空ポンプ3に浸入する。真空ポンプ3内に浸入した水蒸気は、凝縮液化して潤滑油に混入するので、真空ポンプ3内部の錆び、ベーンの齧り、真空度低下の原因となる。そこで、潤滑油に混入した水分を除去するため、油水分離機4が設けられている。
【0011】
油水分離機4は、フィルタ形状のセパレータエレメントからなる。油水分離の原理は、円筒状のセパレータエレメントを水分の混入した潤滑油が内側から外側へ通過する際、水分は水との強い親和力を有するセパレータエレメントの水分離膜に接触して成長し、油との比重差によって沈殿してドレンから排水されるものである。油水分離機4への潤滑油の循環は、比較的大型の真空ポンプでは、真空ポンプの駆動軸に直列又は並列に接続されたポンプにより行われる。また、比較的小型の真空ポンプでは、真空ポンプの作動により生ずる負圧に基づいて、潤滑油の一部を油水分離機4へ循環させるようにする。
【0012】
このように、油水分離機4は、真空ポンプ3が回転駆動されているときのみその機能が発揮されるように構成されている。ところで、真空ホットプレス1においては、チャンバ2に成形材料を搬入し、積層品を搬出する際にはチャンバ2は大気に開放され、真空ポンプ3は停止している。また、成形材料を加熱・圧締する全期間中チャンバ2内を真空にする必要のない成形材料もあり、真空ポンプ3の作動時間は制限されている。そのため、チャンバ2内を減圧しないときでも、第1の電磁弁6と第2の電磁弁7を閉鎖し、第3の電磁弁8を開放して、真空ポンプ3を運転・駆動し真空ポンプ3に直接接続されている管路内のみを減圧するようにした。こうすることにより、チャンバ2内を減圧しないときは停止させていた真空ポンプ3を運転・駆動させることができ、油水分離機4に潤滑油を循環させる時間が大幅に増加して、潤滑油の油水分離が極めて高効率かつ効果的に実行できる。
【0013】
真空ホットプレス1の積層成形例を説明する。第1の電磁弁6、第2の電磁弁7及び第3の電磁弁8を開放し、真空ポンプ3が停止しているとき、チャンバ2の開口に設けた扉を開放し、重ねた成形材料をその扉を介して熱板間に挿入する。扉を閉鎖してチャンバ2内を気密にし、第2の電磁弁7及び第3の電磁弁8を閉鎖し、真空ポンプ3を駆動開始する。可動盤を上昇させて熱板間を接近させ、成形材料を加熱・圧締する。この間、真空ポンプ3は第1の電磁弁6を介してチャンバ2内の空気を吸引する。この減圧工程は、成形材料の種類や加熱・圧締条件に応じて成形材料の加熱・圧締中の一部期間のみ行うこともある。減圧工程が終了すると、第1の電磁弁6及び第2の電磁弁7を閉鎖し、第3の電磁弁8を開放する。このとき、チャンバ2内は大気に連通し、真空ポンプ3は真空ポンプ3に直接接続された管路内のみを減圧する。そして、真空ポンプ3は連続して駆動され、その潤滑油は油水分離機4に循環されて水分が分離・除去される。この油水分離工程は、成形材料の加熱・圧締中から次の成形開始のためのチャンバ2の扉閉鎖時まで継続可能である。
【0014】
油水分離工程が終了したときには、真空ポンプ3の駆動を停止させるとともに、第2の電磁弁7を開放する。積層成形が終了したとき、第1の電磁弁6を開放するとともに、可動盤を下降させて熱板間を開放し、熱板間で成形材料から積層成形された積層品をチャンバ2の開放した扉を介して取り出す。
【0015】
この発明は以上説明した実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を付加して実施することができる。例えば、第1の電磁弁と第2の電磁弁は、個別のもので例示したが、同様の機能を有する単一のものであってもよい。また、油水分離工程は、真空ホットプレスの自動運転中での実施例を説明したが、任意の時期に手動で実施してもよい。さらに、油水分離工程の期間は、真空ホットプレスの工程運転の区切りに合わせたものであってもよいし、タイマで別個に設定したものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の真空ホットプレスの概要を示す構成図である。
【符号の説明】
【0017】
1 真空ホットプレス
2 チャンバ
3 真空ポンプ
4 油水分離機
5 モータ
6 第1の電磁弁
7 第2の電磁弁
8 第3の電磁弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空ポンプにより減圧されたチャンバ内で複数の成形材料を加熱・圧締して積層品となす真空ホットプレスは、前記真空ポンプの潤滑油から水分を分離する油水分離機を備えるとともに、前記潤滑油の前記油水分離機への循環を前記真空ポンプの駆動に伴って行うことを特徴とする真空ホットプレス。
【請求項2】
前記真空ポンプと前記チャンバとの間の管路を開閉する第1の電磁弁を設けるとともに、前記第1の電磁弁と前記真空ポンプとの間の管路から分岐し大気へ連通する管路を開閉する第2の電磁弁を設けた請求項1に記載の真空ホットプレス。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の真空ホットプレスにおける前記真空ポンプの駆動は、前記真空ポンプが前記チャンバへ連通し前記チャンバ内を減圧する場合と、前記真空ポンプが前記チャンバへ連通せず前記真空ポンプに直接接続された管路のみを減圧する場合とに択一的に選択して制御される真空ホットプレスの制御方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2008−155548(P2008−155548A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−348705(P2006−348705)
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【出願人】(000155159)株式会社名機製作所 (255)
【Fターム(参考)】