真空圧力測定装置のための電子源
真空圧力測定装置は、衝突電離によってイオン(22)を形成するための反応ゾーン(30)を備える電子源(1)を含んでおり、電子源(1)は電子(21)の通過開口部(40)を介して反応ゾーン(30)と連通するように接続されている。電子源は、真空室(7)を備える絶縁性ハウジング(6)で取り囲まれており、真空室(7)を外部領域に対して封止するように分離するとともに少なくとも部分的に電子透過性に構成されたナノ膜(5)を少なくとも1つの部分領域で支持する隔膜支持体(4)として壁部が構成されており、この真空室(7)の中には電子(21)を放出するための陰極(2)が配置されており、ナノ膜(5)の領域および/またはナノ膜の表面には陽極構造(3)が設けられており、それにより電子(21)がナノ膜(5)に向かって案内されて少なくとも部分的に該ナノ膜を通り抜けるように案内されるようになっており、ナノ膜(5)は真空圧力測定装置の真空室に接している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提項に記載されている、電子源と、衝突電離によってイオンを形成するための反応ゾーンとを備える真空圧力測定装置に関する。
【0002】
特に本発明は、全圧測定のための(電離真空計)、および分圧測定のための(質量分析計)、気体分子の電離に基づく真空圧力測定技術ないし真空圧力測定装置に関する。
【背景技術】
【0003】
全圧測定のために(電離真空計)、および分圧測定のために(質量分析計)、真空圧力測定装置で気体分子を電離させるには、従来技術から知られているように、電離室のすぐ近傍に配置された電子源が必要である。電子源は、測定条件のもとで1Pa(10−2mbar)以下の真空圧力範囲を有しており、高圧測定管の場合にはこれよりも10倍から20倍高くなっており、電離室へ電子を放出する役割を有している。電子放出のために、従来、特に白熱陰極(白熱放出)が用いられている。さらに、真空圧力測定のための電界エミッタ(電界放出)を備える電子源も提案されているが、使用条件および/または製造コストの面でこれまで商業的に普及するには至っていない。
【0004】
電子源と電離室ないし測定室との間の相互作用は、このような種類の真空圧力測定セルでは原理上避けることができない。たとえば処理されるべき工作物を装入するためにプロセス真空室を開けるための構造の迅速な換気は、特別に大きな問題となる。酸素の侵入が、電子を放出する作動中の白熱陰極(ないし白熱ランプ)の破損につながるからである。これに対処するために、そのつど特別な防護策を講じておかなくてはならない。特に、燃料の付着した回転翼形油回転ポンプのようなバッキングポンプによって汚染が生じると、さらに別の問題が発生する。今日しばしば使用される攻撃性のプロセスガスやエッチングガス、たとえばシランや塩素・フッ素をベースとするガスも、同じく非常に問題をはらんでいる。したがって、非常に攻撃性の高いプロセスガスを使うときは、基本圧力測定のために必要な電離に基づく真空測定装置を、たとえばオールメタルバルブのような弁によってプロセスガスから防護するのが普通であり、このことは相当な付加コストを引き起すとともに、利用法を難しいものにし、限定してしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、従来技術の欠点を取り除くことにある。特に本発明の課題は、真空圧力測定装置の電子源を、このような種類の測定装置が用いられる真空プロセスの影響から防護することにある。真空プロセス室およびこれに伴う測定装置の換気に対しても、防護が具体化されるのが好ましく、それにより、電子源が許容されないほど汚染されたり破損したりすることがなくなり、あるいは、高いコストのかかる追加の電子的な防護措置が必要なくなる。また、影響を受けやすい真空プロセスが、測定セルそのものの有害なエミッションから防護されるのがよく、特に、測定セルの電子源から発せられる有害なエミッションから防護されるのがよい。さらに、測定セルを経済的に製造可能であるのが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、請求項1の構成要件に基づく電子源を備える、当分野の真空圧力測定装置で解決される。従属請求項は、本発明のその他の好ましい実施形態に関わるものである。
【0007】
真空圧力測定装置は、衝突電離によってイオンを形成するための反応ゾーンを備える電
子源を含んでおり、電子源は電子の通過開口部を介して反応ゾーンと連通するように接続されている。電子源は真空室を備える絶縁性ハウジングで取り囲まれており、真空室を外部領域に対して封止するように分離するとともに少なくとも部分的に電子透過性に構成されたナノ膜を少なくとも1つの部分領域で支持する隔膜支持体として壁部が構成されており、この真空室の中には電子を放出するための陰極が配置されており、ナノ膜の領域および/またはナノ膜の表面には陽極構造が設けられており、それにより電子がナノ膜に向かって案内されて少なくとも部分的に該ナノ膜を通り抜けるように案内されるようになっており、ナノ膜は真空圧力測定装置の真空室に接している。
【0008】
このように本発明による真空圧力測定装置では、電子源室と電離室ないし測定室がこれら両方の領域の真空工学的に有効な分離により切り離されことによって、電離の原理を維持しながら電子源が除外される。
【0009】
この分離は、電子源がハウジングの中で真空気密にカプセル封じされており、電子源と電離室ないし測定室との間にナノ膜が配置されており、それにより、静電加速された電子(電子ビーム)がナノ膜を通り抜けるようになっていることによって実現される。その一方で、このナノ膜は、電子源領域と電離室ないし測定室との間のガス交換およびイオン交換を妨げる。
【0010】
しかしながら、ナノ膜を用いて電子源室と電離室ないし測定室を分離する主要な利点は、これら両方の室領域で非常に異なる物理的・化学的な条件を、特に真空条件を、真空全圧測定中ないし真空分圧測定中であっても別々に維持または設定することができ、それにより、この種の真空圧力測定装置の新規もしくは拡張された利用可能性が生まれるという点にある。
【0011】
電子軌道学にもとづく電子運動(電子ビーム)の生成と維持のために、電子源のハウジングの中では10−1mbarから10−8mbarの範囲内の圧力で、好ましくは10−3mbarから10−6mbarの範囲内の圧力で、場合によりゲッター材料の、特にNEG(非蒸発型ゲッター)の排気作用を利用しながら、真空条件が維持される。これに加えて電極構造は、好ましくは適当な陰極材料と陽極材料および構造とジオメトリーを利用したうえで、ナノ膜を通る最大の電子透過性が実現されるように構成されている。
【0012】
ナノ膜は、相応に加速された電子に対して透過性である。このときナノ膜は気密でなくてはならず、すなわち、電子を生成するための陰極のような影響を受けやすい部品を備える排気されたハウジングを外部の要因に対して高い信頼度で分離し、それによって防護し、それにもかかわらず、加速された電子に対しては十分に透過性でなければならない。たとえば真空圧力測定装置を備えるプロセス室が非常に迅速に換気されるとき、極端なケースで膜が耐えなければならない圧力差は大気圧の最大約1.5倍に達する可能性がある。このようなナノ膜には、相応に高い要求事項が課せられる。そのために適したこのようなナノ膜の材料には、金属フィルムおよび好ましくはセラミック膜、好ましくは窒化物セラミック(たとえばSi3N4)や酸化物セラミック、特に酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化ジルコン(ZrO2)、酸化イットリウム(Y2O3)などがある。これらの材料は、特別に温度抵抗性およびエッチング抵抗性が高いからである。セラミックの混合形態も可能である。アルファ型酸化アルミニウムまたは好ましくはサファイアもしくはこれらの混合形態を使用するのが好ましい。
【0013】
ナノ膜(5)として金属フィルムを使用する場合、これはニッケルフィルム、アルミニウムフィルム、銅フィルム、または特殊鋼フィルム、もしくはこれらの合金でできているのが好ましい。1つの非常に低コストな実施形態の要諦は、ナノ膜(5)が特殊鋼フィルムで構成されることにあり、好ましくは真空測定装置のハウジング壁(42)と同じ材料
で構成されることにある。
【0014】
膜の厚みは25から500nmの範囲内であり、好ましくは100から200nmの範囲内であり、真空気密である。このとき面積は0.1から40.0mm2の範囲内であってよい。特別に好適な面積は0.1から1.0mm2の範囲内であり、好ましくは0.3から0.7mm2の範囲内である。たとえば正方形の形状の場合には0.1x0.1mm2から1.0x1.0mm2、好ましくは0.3x0.3mm2から0.5x0.5mm2の正方形であり、または直径が0.3mmから0.7mmの円形、あるいは、好ましい寸法では短辺が0.3mmから0.5mmで長さが最大数センチの長方形であり、用途の必要性に応じて、使用する電子エミッタないし陰極の幾何学形状に合わせて適合化される。前述した好ましい寸法のほか、特定のケースでは、長く引き伸ばされたベルト状の構造において、上記よりも幅広く最大で2mmまで達するとともに、最大40mm2の面積まで達することが可能である。寸法は、材料およびナノ膜の厚みにも依存して適合化され、動作条件のもとでの真空気密性の維持が1つの重要な寸法設定基準となる。これに加えて、システムを換気するときに発生する大気圧に膜が耐えることができ、破損しないように留意しなければならない。使用する材料での厚みと寸法は、相応に慎重に寸法設定されなくてはならない。換気によるこのような負荷時に、1つの方向への伸長が最大0.7mmであるように、好ましくは最大0.5mmであるように、寸法設定が行われると好都合である。
【0015】
大気圧に対するナノ膜の安定性のためには、ナノ膜が寸法に関して約0.7mm以下の最大幅を有していれば十分である(ナノ膜の厚みに依存する幅)。その場合、長さは任意に、すなわち利用目的に応じて適合化することができ、たとえば、ベイアード・アルバート測定管(BAG)では陽極グリッドの長さをもつラインエミッタ用として適合化することができる。したがってこの場合、面積全体が40mm2より広くてもよい。
【0016】
電子は、電子エミッタないし陰極から離れながら膜の窓部に向かって加速電圧で加速され、それにより、相応の効率で膜を効率的に通り抜けるために十分なエネルギーを有するようになっている。陽極としての役目をするのは膜の手前にあるグリッド構造であり、または膜そのものである。陰極と陽極の間の加速電圧は数kVから数十kVの範囲内にあり、好ましくは5kVから50kVの範囲内にあり、特に好ましくは10kVから50kVの範囲内にある。加速電圧は、たとえば膜の厚みや、好ましくはセラミックなどの材料の厚みに依存して、90%以上の電子透過性が得られるように選択される。加速電圧の最適化のために、加速電圧は、ナノ膜での損失が小さく保たれるようにするために電子透過性が十分に高くなる(90%以上)程度の大きさに選択される。吸収されたエネルギーは、損失熱として排出されなくてはならないからである。その一方で加速電圧VEは、ナノ膜を通して電子を抽出・透過させるために必要以上に大きく選択しないほうがよい。それは、電離確率が明らかに低下することがなく、陽極電圧供給VAのためのコストが限度内に保たれるようにするためである。
【0017】
ナノ膜の製造は、たとえば従来技術から知られているSi3N4材料、SiO2材料、ないしSiC材料のような材料からエッチングによって行われる。このような種類の例は次の文献に記載されている:Friedemann Voelklein,Thomas
Zetterer著“Einfuehrung in die Mikrosystemtechnik−Grundlagen und Praxisbeispiele”(マイクロシステム工学概論−基礎と実用例)Friedr.Vieweg & Sohn Verlagsgesellschaft mbH出版社(ブラウンシュヴァイク/ヴィースバーデン所在)2000年8月(ISBN3−528−03891−8)。
【0018】
本発明の1つの好ましい作用は、電子源領域と電離領域ないし測定領域との間で、気体
ベースもしくはイオンベースの相互作用が防止されることにある。このことは、次の事項のための前提条件である。
−迅速な換気をするときの負荷に対する電子源の防護。
−特にきわめて攻撃性の高いエッチングガスを使用する場合における、真空プロセスの影響に対する電子源の防護。影響を受けやすい白熱陰極や電界エミッタの使用が可能になる。
【0019】
−電子源の影響に対する真空プロセスの防護。低コストで効率の高いCNT電界エミッタ(Carbon Nanotubeカーボンナノチューブ)の使用が可能となる。このことは特に、構造の微細化がたえず進行しており、そのためにプロセスユニットに関していっそう高い要求が求められる半導体製造で重要である。電子源側のナノ粒子によるプロセスの汚染、たとえばCNTに由来する粒子や触媒金属ナノ粒子による汚染が、ナノ膜によって防止される。ナノ膜は、加速電子に対してのみ透過性である。
【0020】
このように、低コストで出力が高く、それに伴って効率の高い陰極を使用することが可能となる。特にテレビジョン管工学(CRT)のような管工学から知られている出力の高い陰極を使用することさえ可能であるが、ただし、このような陰極は、たとえば真空プロセス設備ないし真空圧力測定装置を換気するときなどの酸素に対して敏感である(陰極の有毒化または破損)。このようなCRT用の陰極は、大量の個数で低コストかつ高い一定の品質で生産されている。特にマイクロチップやカーボンナノチューブ(CNT)の型式の電界放出陰極も特別に好適である。ナノ構造化された電界放出面、たとえば陰極支持体の上に載せられた構造化された電界放出フィルムも特別に好適であり、あるいは、支持体の中実材料の表面が構造化されており、好ましくは特殊鋼でできているのも特別に好適である。このような型式の電界放出陰極は米国特許出願公開第2006/0202701A1号明細書に開示されており、その内容は本件出願の不可欠な構成要素であることを明記しておく。
【0021】
次に、図面を参照しながら、模式的かつ一例としてのみ本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】ハウジングの内部に配置された、直接的に加熱される白熱陰極を備える本発明の電子源を模式的に示す断面図である。
【図2】ハウジングの内部に配置された、間接的に加熱される白熱陰極を備える本発明の電子源を模式的に示す断面図である。
【図3】ハウジングの内部に配置された、三極管構造の電界エミッタ陰極、抽出グリッド、および陽極とつながれた電子源構造を備える本発明の電子源を模式的に示す断面図である。
【図4】ハウジングの内部に配置された、二極管構造の電界エミッタ陰極および陽極とつながれた電子源構造を備える本発明の電子源を模式的に示す断面図である。
【図5】マイクロチップ・電界エミッタ陰極を備える図4の二極管構造を示す詳細部分図である。
【図6】CNT電界エミッタとしての電界エミッタ陰極を備える図4の二極管構造を示す詳細部分図である。
【図7】ナノ構造化された表面として構成された、または構造化されて塗布された電界エミッタ薄層として構成された電界エミッタ陰極を備える図4の二極管構造を示す詳細部分図である。
【図8】測定セルのハウジング壁の横に取り付けられた電子源を備える電離式全圧測定セルである。
【図9】測定セルの内部に取り付けられた電子源を備える電離式全圧測定セルである。
【図10】電子源のハウジングが開口部を有しており、この開口部が電子源の真空室と全圧測定セルの真空室とを接続する、測定セルの内部に取り付けられた電子源を備える電離式全圧測定セルである。
【図11】測定セルのハウジング壁の横に取り付けられた長尺状の電子源と、抑制グリッドとを備える電離式全圧測定セルである。
【図12】長軸に対して半径方向かつ質量分析計の反応ゾーンの側方に配置された電子源を備える四重極質量分析計である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に基づく電子源1の好ましい構成について、図1から図7を参照しながら一例としてのみ詳しく説明する。電子源1は、真空室7を取り囲み、真空室7を周囲から気密に分離する正方形、円形、または長方形(この場合、第2の横寸法は自由に選択可能である)の膜施工形態における厚みdnと寸法d1とを有するナノ膜5をハウジング壁の一方の側に有する、たとえばセラミックからなる絶縁性のハウジング6を含んでいる。その周囲は、測定の役割を果たすための真空プロセスが中で行われる真空室と連通するように接続された、真空圧力測定装置または質量分析計の一部を形成する別の真空ゾーンである。膜5は膜支持体4に配置されているのが好ましく、膜支持体は、ハウジング6の壁の一部を直接形成することができるのが好ましい。ハウジング6の内部の真空は、好ましくは10−6mbarで良好かつ安定した真空を維持できるようにするために、ゲッター8によって維持されるのが好ましい。ゲッター8はハウジング6の内部に直接配置されていてよく、あるいはハウジング6の外部で、開口部を通じて真空室7と接続されているカプセル封じされた別個の容積部分に配置されていてよい。ハウジングは数mmから数cmの範囲内の寸法を有しており、それによってコンパクトに、かつモジュールとして利用可能なように構成されている。真空室を別個にポンプで排気することも可能であるが、そのほうがコスト高になる。その場合、真空条件を連続的または非連続的に維持するために、ハウジング6は接続部または真空弁を備える接続部と、これに配置された真空ポンプシステム、好ましくはターボ分子ポンプとを有している。その場合にはゲッター8は必要なくなる。
【0024】
ハウジング6の内部には、電力供給部と接続することができるように接続接触部を備えるブッシング10を介してハウジング壁部へ封止をするように挿通された陰極2が配置されている。陰極2はさまざまな型式で構成されていてよい。陰極2に対向して、距離a,a1をおきながら、膜5の領域に陽極3が配置されており、この陽極も同じく引き出された接続接触部11と接続されている。陽極3は膜5を取り囲んでおり、または、膜面の上方に配置されたグリッド構造として構成されており、陽極3は膜5から損失熱を運び出す役目も果たすのが好ましい。陰極2に対して、キロボルト単位の正の電極を陽極3に印加することで、電子が陰極2から陽極3の方向へと加速され、膜5を通り抜けるように運動し、それによって電子をハウジング6の外部で所望の電離プロセスのために真空圧力測定装置で利用可能となる。
【0025】
陰極2はさまざまな型式で構成することができ、したがって陰極・陽極構造であってもよい。図1では、陽極3および膜5からa1だけ間隔をおいて配置された電子エミッタとして、白熱陰極ないし熱電子陰極2を備える電子源が図示されている。このとき間隔a1は、膜5の熱負荷を限度内に抑えるためもあって若干大きめに選択されている。熱電子陰極2の場合、特に、膜5と膜支持体4の寸法設定にあたっては熱負荷に留意しなくてはならない。
【0026】
熱電子陰極2の別の実施形態が、平面型エミッタを備える間接加熱式の効率の高い陰極として図2に図示されている。ここでは陰極・陽極の間隔a1を若干狭く選択することもできる。
【0027】
図3では、陰極2は電界エミッタとして構成されており、たとえば電界エミッタアレイとして構成されている。このとき電界エミッタは陰極支持体9に配置されており、またはこれに構成されている。電界エミッタの手前には、スペーサ13により定義された短い間隔をおいて、平面的に配置された電界エミッタの手前で位置決めされる制御グリッド12が配置されるのが好ましい。制御グリッド12は、電子を抽出するための抽出グリッドとしての役目も果たすものであり、同じく制御のために外部に向かって案内される電気接続部14と接続されている。このような構成は陰極2、グリッド12、および陽極3によって三極管構造を形成する。この場合、陰極2およびグリッド12と陽極3との間隔a1はどちらかというと広く選択される。
【0028】
さらに別の構成が図4に二極管構成として図示されている。陰極支持体9の上で平面的に配置された電界放出陰極は、ここではわずかな間隔a1をおいて膜5に近づいており、それによって制御グリッド12は必要ない。電界エミッタ陰極2のさまざまな好ましい実施形態が、詳細部分図15として図5から図7に示されている。そこに示された電界エミッタ構造は、三極管構成でも二極管構成でも適用することができ、すなわち制御グリッド12があってもなくても適用することができる。図5は、マイクロチップ・電界エミッタ陰極を備える構造を示している。このような種類の陰極2では、1つの面に、好ましくは1つの平面に、十分に高い電界強度で電子を放出する多数の小さい尖端部が配置されており、このマイクロチップ・電界エミッタ陰極は膜5により防護されて長い耐用寿命を有している。図6の詳細部分図では、電界エミッタ陰極がカーボンナノチューブ(CNT)電界エミッタとして構成された図4の二極管構造が示されている。このような種類の陰極は、非常に効率的な電界エミッタである、1つの面に分散して配置された多数の炭素製ナノチューブで構成されている。図7では、図4の二極管構造の詳細部分図は、ナノ構造化された表面として構成された、または構造化されて塗布された電界エミッタ薄層として構成された、電界エミッタ陰極を示している。この場合、たとえば層または支持体材料自体の表面のエッチングによって、尖端状またはエッジ状の電子放出能力のある構造が表面に基本材料から製作される。このとき、特に支持体材料がInox材料でできている場合には、支持体材料9が直接利用されるのが非常に好ましい。
【0029】
本発明に基づく電子源1の1つの好ましい用途が、全圧真空測定セルについて模式的かつ一例として図8から図10に示されている。これは電離式測定セルであり、またはベイアード・アルバート管や抽出器マノメータのような型式の管である。測定セルは底面プレート41の上に配置されている。これは管状の測定セルハウジング壁42を支持しており、この測定セルハウジング壁は、その中で螺旋状または格子状に配置された反応室30を取り囲む陽極45、およびその内部に配置されたイオンコレクタ44を収容している。本発明に基づく電子源1は、電子を通過させるための開口部40が形成された壁42の横に配置されている。したがって電子は、電子源1の膜5から直接開口部40を介して測定セルの反応ゾーン30に入る。電子源1の全面的に気密なカプセル封じによって電子源が防護されており、測定に支障をきたす可能性のある汚染が発生することがない。電子源1の陰極2と、底面プレート41および壁部42からなる測定セルのハウジングとの間で印加される加速電圧VEにより、電子を抽出して測定セルの中へ案内することができる。測定セルは、陽極電圧VAと、陽極電流IAを検出することでこれを一定に調節するコントローラ46とによって、周知の方法で作動する。測定セルは、イオンコレクタ電流IICの測定部および真空圧力判定のための相応の評価部も含んでいる。図9には、電子源1が軸方向に配置された真空圧力測定セルが示されており、この電子源は測定セルの内部に配置されており、膜5は反応ゾーン30のほうを向いている。このような一体化された設計形態が可能なのは、電子源1を小さい寸法で具体化することができるからである。図10は特別に低コストな種類の構成を示しており、ここでは電子源ハウジング6は、開口部を介して、測定セルの真空領域と間接的に連通するように接続されている。開口部は測定セルの反応ゾーン30に対して反対を向いているので、電子源ハウジング6が遮蔽部のように
作用し、電子源1の内部領域および測定セルを望ましくない影響から防護するが、ここでも膜5を介しての反応室30への電子透過性は確保される。電子源1のこのような構成では、電子源内部で真空7を生成・維持するための追加コストが必要ない。ただしその場合、たとえば換気のときなどに電子源1の全面的な防護はもはや成立しない。
【0030】
図11には、さらに別の好ましい実施形態が示されている。ナノ膜5の後に、ないしナノ膜5と反応ゾーン30の間に、抑制グリッド43が真空測定装置内に配置されている。抑制グリッド43における抑制電圧VBにより、気体分子の高い電離確率が反応ゾーン30で生じ、それによって、たとえば下側の真空圧力測定限界を広げるために真空測定装置の高い測定感度が生じる程度に、ナノ膜5を透過する電子の運動エネルギーを引き下げることができる。
【0031】
図12には、質量分析計のような分圧測定装置向けのさらに別の好ましい用途が長軸に沿った断面図として示されており、ここでは電子源1は、質量分析計のイオン源すなわち反応ゾーン30へ半径方向で電子を供給するために、イオン源に対して側方で直交するように配置されている。電子21は膜5を通り抜け、反応ゾーン30をチャンバ状に取り囲む電子抽出レンズ25により、開口部40を通ってこのゾーンの中へと案内される。このゾーンで、測定されるべき中性粒子20が衝突電離によって電離して、イオン22が形成される。このチャンバ25の壁部には、分析されるべき中性粒子20を入れるための1つまたは複数の開口部23がある。さらにこのチャンバ3は、軸方向では、形成されたイオン22を抽出するためのイオン抽出レンズ24で終わっており、イオンはさらに別のレンズ26、焦点合せレンズ27、注入絞り28を介して、質量分析計29の分析システムへ入るように案内される。質量分析計では、構造を特別に簡素に施工したい場合、電子源1およびこれに伴って電子封入を軸方向に行うこともできる。しかしながら半径方向の配置のほうが、測定品質の向上という面から好ましい。
本発明による電子源1は、さまざまな型式の質量分析計で有利に利用することができる。図11に示す本明細書の例で説明したように、四重極質量分析計が格別に好適である。電子源1の膜分離は、測定の高い測定解像度と再現性につながる、特別に純粋な条件を保証するからである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提項に記載されている、電子源と、衝突電離によってイオンを形成するための反応ゾーンとを備える真空圧力測定装置に関する。
【0002】
特に本発明は、全圧測定のための(電離真空計)、および分圧測定のための(質量分析計)、気体分子の電離に基づく真空圧力測定技術ないし真空圧力測定装置に関する。
【背景技術】
【0003】
全圧測定のために(電離真空計)、および分圧測定のために(質量分析計)、真空圧力測定装置で気体分子を電離させるには、従来技術から知られているように、電離室のすぐ近傍に配置された電子源が必要である。電子源は、測定条件のもとで1Pa(10−2mbar)以下の真空圧力範囲を有しており、高圧測定管の場合にはこれよりも10倍から20倍高くなっており、電離室へ電子を放出する役割を有している。電子放出のために、従来、特に白熱陰極(白熱放出)が用いられている。さらに、真空圧力測定のための電界エミッタ(電界放出)を備える電子源も提案されているが、使用条件および/または製造コストの面でこれまで商業的に普及するには至っていない。
【0004】
電子源と電離室ないし測定室との間の相互作用は、このような種類の真空圧力測定セルでは原理上避けることができない。たとえば処理されるべき工作物を装入するためにプロセス真空室を開けるための構造の迅速な換気は、特別に大きな問題となる。酸素の侵入が、電子を放出する作動中の白熱陰極(ないし白熱ランプ)の破損につながるからである。これに対処するために、そのつど特別な防護策を講じておかなくてはならない。特に、燃料の付着した回転翼形油回転ポンプのようなバッキングポンプによって汚染が生じると、さらに別の問題が発生する。今日しばしば使用される攻撃性のプロセスガスやエッチングガス、たとえばシランや塩素・フッ素をベースとするガスも、同じく非常に問題をはらんでいる。したがって、非常に攻撃性の高いプロセスガスを使うときは、基本圧力測定のために必要な電離に基づく真空測定装置を、たとえばオールメタルバルブのような弁によってプロセスガスから防護するのが普通であり、このことは相当な付加コストを引き起すとともに、利用法を難しいものにし、限定してしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、従来技術の欠点を取り除くことにある。特に本発明の課題は、真空圧力測定装置の電子源を、このような種類の測定装置が用いられる真空プロセスの影響から防護することにある。真空プロセス室およびこれに伴う測定装置の換気に対しても、防護が具体化されるのが好ましく、それにより、電子源が許容されないほど汚染されたり破損したりすることがなくなり、あるいは、高いコストのかかる追加の電子的な防護措置が必要なくなる。また、影響を受けやすい真空プロセスが、測定セルそのものの有害なエミッションから防護されるのがよく、特に、測定セルの電子源から発せられる有害なエミッションから防護されるのがよい。さらに、測定セルを経済的に製造可能であるのが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、請求項1の構成要件に基づく電子源を備える、当分野の真空圧力測定装置で解決される。従属請求項は、本発明のその他の好ましい実施形態に関わるものである。
【0007】
真空圧力測定装置は、衝突電離によってイオンを形成するための反応ゾーンを備える電
子源を含んでおり、電子源は電子の通過開口部を介して反応ゾーンと連通するように接続されている。電子源は真空室を備える絶縁性ハウジングで取り囲まれており、真空室を外部領域に対して封止するように分離するとともに少なくとも部分的に電子透過性に構成されたナノ膜を少なくとも1つの部分領域で支持する隔膜支持体として壁部が構成されており、この真空室の中には電子を放出するための陰極が配置されており、ナノ膜の領域および/またはナノ膜の表面には陽極構造が設けられており、それにより電子がナノ膜に向かって案内されて少なくとも部分的に該ナノ膜を通り抜けるように案内されるようになっており、ナノ膜は真空圧力測定装置の真空室に接している。
【0008】
このように本発明による真空圧力測定装置では、電子源室と電離室ないし測定室がこれら両方の領域の真空工学的に有効な分離により切り離されことによって、電離の原理を維持しながら電子源が除外される。
【0009】
この分離は、電子源がハウジングの中で真空気密にカプセル封じされており、電子源と電離室ないし測定室との間にナノ膜が配置されており、それにより、静電加速された電子(電子ビーム)がナノ膜を通り抜けるようになっていることによって実現される。その一方で、このナノ膜は、電子源領域と電離室ないし測定室との間のガス交換およびイオン交換を妨げる。
【0010】
しかしながら、ナノ膜を用いて電子源室と電離室ないし測定室を分離する主要な利点は、これら両方の室領域で非常に異なる物理的・化学的な条件を、特に真空条件を、真空全圧測定中ないし真空分圧測定中であっても別々に維持または設定することができ、それにより、この種の真空圧力測定装置の新規もしくは拡張された利用可能性が生まれるという点にある。
【0011】
電子軌道学にもとづく電子運動(電子ビーム)の生成と維持のために、電子源のハウジングの中では10−1mbarから10−8mbarの範囲内の圧力で、好ましくは10−3mbarから10−6mbarの範囲内の圧力で、場合によりゲッター材料の、特にNEG(非蒸発型ゲッター)の排気作用を利用しながら、真空条件が維持される。これに加えて電極構造は、好ましくは適当な陰極材料と陽極材料および構造とジオメトリーを利用したうえで、ナノ膜を通る最大の電子透過性が実現されるように構成されている。
【0012】
ナノ膜は、相応に加速された電子に対して透過性である。このときナノ膜は気密でなくてはならず、すなわち、電子を生成するための陰極のような影響を受けやすい部品を備える排気されたハウジングを外部の要因に対して高い信頼度で分離し、それによって防護し、それにもかかわらず、加速された電子に対しては十分に透過性でなければならない。たとえば真空圧力測定装置を備えるプロセス室が非常に迅速に換気されるとき、極端なケースで膜が耐えなければならない圧力差は大気圧の最大約1.5倍に達する可能性がある。このようなナノ膜には、相応に高い要求事項が課せられる。そのために適したこのようなナノ膜の材料には、金属フィルムおよび好ましくはセラミック膜、好ましくは窒化物セラミック(たとえばSi3N4)や酸化物セラミック、特に酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化ジルコン(ZrO2)、酸化イットリウム(Y2O3)などがある。これらの材料は、特別に温度抵抗性およびエッチング抵抗性が高いからである。セラミックの混合形態も可能である。アルファ型酸化アルミニウムまたは好ましくはサファイアもしくはこれらの混合形態を使用するのが好ましい。
【0013】
ナノ膜(5)として金属フィルムを使用する場合、これはニッケルフィルム、アルミニウムフィルム、銅フィルム、または特殊鋼フィルム、もしくはこれらの合金でできているのが好ましい。1つの非常に低コストな実施形態の要諦は、ナノ膜(5)が特殊鋼フィルムで構成されることにあり、好ましくは真空測定装置のハウジング壁(42)と同じ材料
で構成されることにある。
【0014】
膜の厚みは25から500nmの範囲内であり、好ましくは100から200nmの範囲内であり、真空気密である。このとき面積は0.1から40.0mm2の範囲内であってよい。特別に好適な面積は0.1から1.0mm2の範囲内であり、好ましくは0.3から0.7mm2の範囲内である。たとえば正方形の形状の場合には0.1x0.1mm2から1.0x1.0mm2、好ましくは0.3x0.3mm2から0.5x0.5mm2の正方形であり、または直径が0.3mmから0.7mmの円形、あるいは、好ましい寸法では短辺が0.3mmから0.5mmで長さが最大数センチの長方形であり、用途の必要性に応じて、使用する電子エミッタないし陰極の幾何学形状に合わせて適合化される。前述した好ましい寸法のほか、特定のケースでは、長く引き伸ばされたベルト状の構造において、上記よりも幅広く最大で2mmまで達するとともに、最大40mm2の面積まで達することが可能である。寸法は、材料およびナノ膜の厚みにも依存して適合化され、動作条件のもとでの真空気密性の維持が1つの重要な寸法設定基準となる。これに加えて、システムを換気するときに発生する大気圧に膜が耐えることができ、破損しないように留意しなければならない。使用する材料での厚みと寸法は、相応に慎重に寸法設定されなくてはならない。換気によるこのような負荷時に、1つの方向への伸長が最大0.7mmであるように、好ましくは最大0.5mmであるように、寸法設定が行われると好都合である。
【0015】
大気圧に対するナノ膜の安定性のためには、ナノ膜が寸法に関して約0.7mm以下の最大幅を有していれば十分である(ナノ膜の厚みに依存する幅)。その場合、長さは任意に、すなわち利用目的に応じて適合化することができ、たとえば、ベイアード・アルバート測定管(BAG)では陽極グリッドの長さをもつラインエミッタ用として適合化することができる。したがってこの場合、面積全体が40mm2より広くてもよい。
【0016】
電子は、電子エミッタないし陰極から離れながら膜の窓部に向かって加速電圧で加速され、それにより、相応の効率で膜を効率的に通り抜けるために十分なエネルギーを有するようになっている。陽極としての役目をするのは膜の手前にあるグリッド構造であり、または膜そのものである。陰極と陽極の間の加速電圧は数kVから数十kVの範囲内にあり、好ましくは5kVから50kVの範囲内にあり、特に好ましくは10kVから50kVの範囲内にある。加速電圧は、たとえば膜の厚みや、好ましくはセラミックなどの材料の厚みに依存して、90%以上の電子透過性が得られるように選択される。加速電圧の最適化のために、加速電圧は、ナノ膜での損失が小さく保たれるようにするために電子透過性が十分に高くなる(90%以上)程度の大きさに選択される。吸収されたエネルギーは、損失熱として排出されなくてはならないからである。その一方で加速電圧VEは、ナノ膜を通して電子を抽出・透過させるために必要以上に大きく選択しないほうがよい。それは、電離確率が明らかに低下することがなく、陽極電圧供給VAのためのコストが限度内に保たれるようにするためである。
【0017】
ナノ膜の製造は、たとえば従来技術から知られているSi3N4材料、SiO2材料、ないしSiC材料のような材料からエッチングによって行われる。このような種類の例は次の文献に記載されている:Friedemann Voelklein,Thomas
Zetterer著“Einfuehrung in die Mikrosystemtechnik−Grundlagen und Praxisbeispiele”(マイクロシステム工学概論−基礎と実用例)Friedr.Vieweg & Sohn Verlagsgesellschaft mbH出版社(ブラウンシュヴァイク/ヴィースバーデン所在)2000年8月(ISBN3−528−03891−8)。
【0018】
本発明の1つの好ましい作用は、電子源領域と電離領域ないし測定領域との間で、気体
ベースもしくはイオンベースの相互作用が防止されることにある。このことは、次の事項のための前提条件である。
−迅速な換気をするときの負荷に対する電子源の防護。
−特にきわめて攻撃性の高いエッチングガスを使用する場合における、真空プロセスの影響に対する電子源の防護。影響を受けやすい白熱陰極や電界エミッタの使用が可能になる。
【0019】
−電子源の影響に対する真空プロセスの防護。低コストで効率の高いCNT電界エミッタ(Carbon Nanotubeカーボンナノチューブ)の使用が可能となる。このことは特に、構造の微細化がたえず進行しており、そのためにプロセスユニットに関していっそう高い要求が求められる半導体製造で重要である。電子源側のナノ粒子によるプロセスの汚染、たとえばCNTに由来する粒子や触媒金属ナノ粒子による汚染が、ナノ膜によって防止される。ナノ膜は、加速電子に対してのみ透過性である。
【0020】
このように、低コストで出力が高く、それに伴って効率の高い陰極を使用することが可能となる。特にテレビジョン管工学(CRT)のような管工学から知られている出力の高い陰極を使用することさえ可能であるが、ただし、このような陰極は、たとえば真空プロセス設備ないし真空圧力測定装置を換気するときなどの酸素に対して敏感である(陰極の有毒化または破損)。このようなCRT用の陰極は、大量の個数で低コストかつ高い一定の品質で生産されている。特にマイクロチップやカーボンナノチューブ(CNT)の型式の電界放出陰極も特別に好適である。ナノ構造化された電界放出面、たとえば陰極支持体の上に載せられた構造化された電界放出フィルムも特別に好適であり、あるいは、支持体の中実材料の表面が構造化されており、好ましくは特殊鋼でできているのも特別に好適である。このような型式の電界放出陰極は米国特許出願公開第2006/0202701A1号明細書に開示されており、その内容は本件出願の不可欠な構成要素であることを明記しておく。
【0021】
次に、図面を参照しながら、模式的かつ一例としてのみ本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】ハウジングの内部に配置された、直接的に加熱される白熱陰極を備える本発明の電子源を模式的に示す断面図である。
【図2】ハウジングの内部に配置された、間接的に加熱される白熱陰極を備える本発明の電子源を模式的に示す断面図である。
【図3】ハウジングの内部に配置された、三極管構造の電界エミッタ陰極、抽出グリッド、および陽極とつながれた電子源構造を備える本発明の電子源を模式的に示す断面図である。
【図4】ハウジングの内部に配置された、二極管構造の電界エミッタ陰極および陽極とつながれた電子源構造を備える本発明の電子源を模式的に示す断面図である。
【図5】マイクロチップ・電界エミッタ陰極を備える図4の二極管構造を示す詳細部分図である。
【図6】CNT電界エミッタとしての電界エミッタ陰極を備える図4の二極管構造を示す詳細部分図である。
【図7】ナノ構造化された表面として構成された、または構造化されて塗布された電界エミッタ薄層として構成された電界エミッタ陰極を備える図4の二極管構造を示す詳細部分図である。
【図8】測定セルのハウジング壁の横に取り付けられた電子源を備える電離式全圧測定セルである。
【図9】測定セルの内部に取り付けられた電子源を備える電離式全圧測定セルである。
【図10】電子源のハウジングが開口部を有しており、この開口部が電子源の真空室と全圧測定セルの真空室とを接続する、測定セルの内部に取り付けられた電子源を備える電離式全圧測定セルである。
【図11】測定セルのハウジング壁の横に取り付けられた長尺状の電子源と、抑制グリッドとを備える電離式全圧測定セルである。
【図12】長軸に対して半径方向かつ質量分析計の反応ゾーンの側方に配置された電子源を備える四重極質量分析計である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に基づく電子源1の好ましい構成について、図1から図7を参照しながら一例としてのみ詳しく説明する。電子源1は、真空室7を取り囲み、真空室7を周囲から気密に分離する正方形、円形、または長方形(この場合、第2の横寸法は自由に選択可能である)の膜施工形態における厚みdnと寸法d1とを有するナノ膜5をハウジング壁の一方の側に有する、たとえばセラミックからなる絶縁性のハウジング6を含んでいる。その周囲は、測定の役割を果たすための真空プロセスが中で行われる真空室と連通するように接続された、真空圧力測定装置または質量分析計の一部を形成する別の真空ゾーンである。膜5は膜支持体4に配置されているのが好ましく、膜支持体は、ハウジング6の壁の一部を直接形成することができるのが好ましい。ハウジング6の内部の真空は、好ましくは10−6mbarで良好かつ安定した真空を維持できるようにするために、ゲッター8によって維持されるのが好ましい。ゲッター8はハウジング6の内部に直接配置されていてよく、あるいはハウジング6の外部で、開口部を通じて真空室7と接続されているカプセル封じされた別個の容積部分に配置されていてよい。ハウジングは数mmから数cmの範囲内の寸法を有しており、それによってコンパクトに、かつモジュールとして利用可能なように構成されている。真空室を別個にポンプで排気することも可能であるが、そのほうがコスト高になる。その場合、真空条件を連続的または非連続的に維持するために、ハウジング6は接続部または真空弁を備える接続部と、これに配置された真空ポンプシステム、好ましくはターボ分子ポンプとを有している。その場合にはゲッター8は必要なくなる。
【0024】
ハウジング6の内部には、電力供給部と接続することができるように接続接触部を備えるブッシング10を介してハウジング壁部へ封止をするように挿通された陰極2が配置されている。陰極2はさまざまな型式で構成されていてよい。陰極2に対向して、距離a,a1をおきながら、膜5の領域に陽極3が配置されており、この陽極も同じく引き出された接続接触部11と接続されている。陽極3は膜5を取り囲んでおり、または、膜面の上方に配置されたグリッド構造として構成されており、陽極3は膜5から損失熱を運び出す役目も果たすのが好ましい。陰極2に対して、キロボルト単位の正の電極を陽極3に印加することで、電子が陰極2から陽極3の方向へと加速され、膜5を通り抜けるように運動し、それによって電子をハウジング6の外部で所望の電離プロセスのために真空圧力測定装置で利用可能となる。
【0025】
陰極2はさまざまな型式で構成することができ、したがって陰極・陽極構造であってもよい。図1では、陽極3および膜5からa1だけ間隔をおいて配置された電子エミッタとして、白熱陰極ないし熱電子陰極2を備える電子源が図示されている。このとき間隔a1は、膜5の熱負荷を限度内に抑えるためもあって若干大きめに選択されている。熱電子陰極2の場合、特に、膜5と膜支持体4の寸法設定にあたっては熱負荷に留意しなくてはならない。
【0026】
熱電子陰極2の別の実施形態が、平面型エミッタを備える間接加熱式の効率の高い陰極として図2に図示されている。ここでは陰極・陽極の間隔a1を若干狭く選択することもできる。
【0027】
図3では、陰極2は電界エミッタとして構成されており、たとえば電界エミッタアレイとして構成されている。このとき電界エミッタは陰極支持体9に配置されており、またはこれに構成されている。電界エミッタの手前には、スペーサ13により定義された短い間隔をおいて、平面的に配置された電界エミッタの手前で位置決めされる制御グリッド12が配置されるのが好ましい。制御グリッド12は、電子を抽出するための抽出グリッドとしての役目も果たすものであり、同じく制御のために外部に向かって案内される電気接続部14と接続されている。このような構成は陰極2、グリッド12、および陽極3によって三極管構造を形成する。この場合、陰極2およびグリッド12と陽極3との間隔a1はどちらかというと広く選択される。
【0028】
さらに別の構成が図4に二極管構成として図示されている。陰極支持体9の上で平面的に配置された電界放出陰極は、ここではわずかな間隔a1をおいて膜5に近づいており、それによって制御グリッド12は必要ない。電界エミッタ陰極2のさまざまな好ましい実施形態が、詳細部分図15として図5から図7に示されている。そこに示された電界エミッタ構造は、三極管構成でも二極管構成でも適用することができ、すなわち制御グリッド12があってもなくても適用することができる。図5は、マイクロチップ・電界エミッタ陰極を備える構造を示している。このような種類の陰極2では、1つの面に、好ましくは1つの平面に、十分に高い電界強度で電子を放出する多数の小さい尖端部が配置されており、このマイクロチップ・電界エミッタ陰極は膜5により防護されて長い耐用寿命を有している。図6の詳細部分図では、電界エミッタ陰極がカーボンナノチューブ(CNT)電界エミッタとして構成された図4の二極管構造が示されている。このような種類の陰極は、非常に効率的な電界エミッタである、1つの面に分散して配置された多数の炭素製ナノチューブで構成されている。図7では、図4の二極管構造の詳細部分図は、ナノ構造化された表面として構成された、または構造化されて塗布された電界エミッタ薄層として構成された、電界エミッタ陰極を示している。この場合、たとえば層または支持体材料自体の表面のエッチングによって、尖端状またはエッジ状の電子放出能力のある構造が表面に基本材料から製作される。このとき、特に支持体材料がInox材料でできている場合には、支持体材料9が直接利用されるのが非常に好ましい。
【0029】
本発明に基づく電子源1の1つの好ましい用途が、全圧真空測定セルについて模式的かつ一例として図8から図10に示されている。これは電離式測定セルであり、またはベイアード・アルバート管や抽出器マノメータのような型式の管である。測定セルは底面プレート41の上に配置されている。これは管状の測定セルハウジング壁42を支持しており、この測定セルハウジング壁は、その中で螺旋状または格子状に配置された反応室30を取り囲む陽極45、およびその内部に配置されたイオンコレクタ44を収容している。本発明に基づく電子源1は、電子を通過させるための開口部40が形成された壁42の横に配置されている。したがって電子は、電子源1の膜5から直接開口部40を介して測定セルの反応ゾーン30に入る。電子源1の全面的に気密なカプセル封じによって電子源が防護されており、測定に支障をきたす可能性のある汚染が発生することがない。電子源1の陰極2と、底面プレート41および壁部42からなる測定セルのハウジングとの間で印加される加速電圧VEにより、電子を抽出して測定セルの中へ案内することができる。測定セルは、陽極電圧VAと、陽極電流IAを検出することでこれを一定に調節するコントローラ46とによって、周知の方法で作動する。測定セルは、イオンコレクタ電流IICの測定部および真空圧力判定のための相応の評価部も含んでいる。図9には、電子源1が軸方向に配置された真空圧力測定セルが示されており、この電子源は測定セルの内部に配置されており、膜5は反応ゾーン30のほうを向いている。このような一体化された設計形態が可能なのは、電子源1を小さい寸法で具体化することができるからである。図10は特別に低コストな種類の構成を示しており、ここでは電子源ハウジング6は、開口部を介して、測定セルの真空領域と間接的に連通するように接続されている。開口部は測定セルの反応ゾーン30に対して反対を向いているので、電子源ハウジング6が遮蔽部のように
作用し、電子源1の内部領域および測定セルを望ましくない影響から防護するが、ここでも膜5を介しての反応室30への電子透過性は確保される。電子源1のこのような構成では、電子源内部で真空7を生成・維持するための追加コストが必要ない。ただしその場合、たとえば換気のときなどに電子源1の全面的な防護はもはや成立しない。
【0030】
図11には、さらに別の好ましい実施形態が示されている。ナノ膜5の後に、ないしナノ膜5と反応ゾーン30の間に、抑制グリッド43が真空測定装置内に配置されている。抑制グリッド43における抑制電圧VBにより、気体分子の高い電離確率が反応ゾーン30で生じ、それによって、たとえば下側の真空圧力測定限界を広げるために真空測定装置の高い測定感度が生じる程度に、ナノ膜5を透過する電子の運動エネルギーを引き下げることができる。
【0031】
図12には、質量分析計のような分圧測定装置向けのさらに別の好ましい用途が長軸に沿った断面図として示されており、ここでは電子源1は、質量分析計のイオン源すなわち反応ゾーン30へ半径方向で電子を供給するために、イオン源に対して側方で直交するように配置されている。電子21は膜5を通り抜け、反応ゾーン30をチャンバ状に取り囲む電子抽出レンズ25により、開口部40を通ってこのゾーンの中へと案内される。このゾーンで、測定されるべき中性粒子20が衝突電離によって電離して、イオン22が形成される。このチャンバ25の壁部には、分析されるべき中性粒子20を入れるための1つまたは複数の開口部23がある。さらにこのチャンバ3は、軸方向では、形成されたイオン22を抽出するためのイオン抽出レンズ24で終わっており、イオンはさらに別のレンズ26、焦点合せレンズ27、注入絞り28を介して、質量分析計29の分析システムへ入るように案内される。質量分析計では、構造を特別に簡素に施工したい場合、電子源1およびこれに伴って電子封入を軸方向に行うこともできる。しかしながら半径方向の配置のほうが、測定品質の向上という面から好ましい。
本発明による電子源1は、さまざまな型式の質量分析計で有利に利用することができる。図11に示す本明細書の例で説明したように、四重極質量分析計が格別に好適である。電子源1の膜分離は、測定の高い測定解像度と再現性につながる、特別に純粋な条件を保証するからである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子源(1)と、衝突電離によってイオン(22)を形成するための反応ゾーン(30)とを備え、前記電子源(1)は電子(21)の通過開口部(40)を介して反応ゾーン(30)と連通するように接続されている真空圧力測定装置において、前記電子源(1)は真空室(7)を備える絶縁性ハウジング(6)で取り囲まれており、前記真空室(7)を外部領域に対して封止するように分離するとともに少なくとも部分的に電子透過性に構成されたナノ膜(5)を少なくとも1つの部分領域で支持する隔膜支持体(4)として壁部が構成されており、当該真空室(7)の中には電子(21)を放出するための陰極(2)が配置されており、前記ナノ膜(5)の領域および/または前記ナノ膜の表面には陽極構造(3)が設けられており、それにより電子(21)が前記ナノ膜(5)に向かって案内されて少なくとも部分的に該ナノ膜を通り抜けるように案内されるようになっており、前記ナノ膜(5)は前記真空圧力測定装置の真空室に接していることを特徴とする真空圧力測定装置。
【請求項2】
前記真空室(7)は前記ハウジング(6)によって全面的に真空気密に取り囲まれており、その中に独立した真空を有しており、その内部またはその表面には真空条件を維持するためのゲッター(8)が配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の真空圧力測定装置。
【請求項3】
前記真空室(7)は前記ハウジング(6)によって全面的に真空気密に取り囲まれており、前記ハウジング(6)は接続部または真空弁を備える接続部を有しており、これに真空条件を連続的または非連続的に維持するための真空システムが配置されており、好ましくはターボ分子ポンプが配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の真空圧力測定装置。
【請求項4】
前記ハウジング(6)は前記真空室(7)を前記真空測定装置の真空室と接続する開口部を有していることを特徴とする、請求項1に記載の真空圧力測定装置。
【請求項5】
前記陰極(2)は熱陰極であることを特徴とする、先行請求項のうちいずれか1項に記載の真空圧力測定装置。
【請求項6】
前記陰極(2)は間接的に加熱される陰極構造であることを特徴とする、請求項5に記載の真空圧力測定装置。
【請求項7】
前記陰極は電界放出陰極(2)であることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の真空圧力測定装置。
【請求項8】
前記電界放出陰極(2)の手前に制御グリッド(12)が配置されていることを特徴とする、請求項7に記載の真空圧力測定装置。
【請求項9】
前記電界放出陰極(2)はマイクロチップまたはカーボンナノチューブ(CNT)の型式の陰極であり、または好ましくはナノ構造化された電界放出面であることを特徴とする、請求項7または8に記載の真空圧力測定装置。
【請求項10】
前記電界放出面は電解放出フィルム(2)を有するナノ構造化された面であり、該電界放出フィルムは前記陰極支持体(9)の上に載っていることを特徴とする、請求項9に記載の真空圧力測定装置。
【請求項11】
ナノ構造化された前記電界放出面は前記陰極支持体の金属中実材料の表面で構成されて
おり、好ましくはステンレス鋼でできていることを特徴とする、請求項9に記載の真空圧力測定装置。
【請求項12】
前記ナノ膜(5)はセラミックでできており、好ましくは窒化物セラミックまたは特に酸化物セラミックもしくはこれらの混合形態でできていることを特徴とする、先行請求項のうちいずれか1項に記載の真空圧力測定装置。
【請求項13】
前記ナノ膜(5)はSi3N4,SiO2,Al2O3,ZrO2,Y2O3,SiCのセラミックまたはこれらの混合形態でできていることを特徴とする、請求項12に記載の真空圧力測定装置。
【請求項14】
前記ナノ膜(5)は酸化アルミニウムでできており、好ましくはα型酸化アルミニウムおよび特にサファイアもしくはその混合形態でできていることを特徴とする、請求項12または13に記載の真空圧力測定装置。
【請求項15】
前記ナノ膜(5)は金属フィルムでできており、好ましくはニッケルフィルム、アルミニウムフィルム、銅フィルム、または特殊鋼フィルム、もしくはこれらの合金でできていることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項に記載の真空圧力測定装置。
【請求項16】
前記ナノ膜(5)は特殊鋼フィルムでできており、好ましくは前記真空測定装置のハウジング壁(42)と同じ材料でできていることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項に記載の真空圧力測定装置。
【請求項17】
前記ナノ膜(5)の厚み(dn)は25から500nmの範囲内にあり、好ましくは100から200nmの範囲内にあることを特徴とする、先行請求項のうちいずれか1項に記載の真空圧力測定装置。
【請求項18】
前記ナノ膜(5)の面積寸法は0.1から40.0mm2の範囲内にあることを特徴とする、先行請求項のうちいずれか1項に記載の真空圧力測定装置。
【請求項19】
前記ナノ膜(5)の面積寸法は0.1から1.0mm2の範囲内にあり、好ましくは0.3から0.7mm2の範囲内にあり、前記ナノ膜(5)の最大の寸法公差は前記反応ゾーン(30)の換気時に大気圧に対して耐えるために1つの方向で0.7mmを超えておらず、好ましくは0.5mmを超えていないことを特徴とする、先行請求項のうちいずれか1項に記載の真空圧力測定装置。
【請求項20】
前記ナノ膜(5)の面形状は実質的に前記陰極(2)の形状に合わせて適合化されていることを特徴とする、先行請求項のうちいずれか1項に記載の真空圧力測定装置。
【請求項21】
前記ナノ膜(5)を少なくとも部分的に通り抜けるように電子(21)を加速させるために5KVから50KV、好ましくは10KVから50KVの範囲内の値をもつ電圧が前記陰極(2)と前記陽極構造(3)の間で印加されることを特徴とする、先行請求項のうちいずれか1項に記載の真空圧力測定装置。
【請求項22】
加速電圧が10kV以上であるとき、前記ナノ膜(5)を備える前記電子源構造(1)はナノ単位の薄さの当該膜の90%以上の電子透過性を有していることを特徴とする、先行請求項のうちいずれか1項に記載の真空圧力測定装置。
【請求項23】
前記電子源(1)の前記真空室(7)の中では10−1mbarから10−8mbarの範囲内の値の真空が生じており、好ましくは10−3から10−6mbarの範囲内の
値の真空が生じていることを特徴とする、先行請求項のうちいずれか1項に記載の真空圧力測定装置。
【請求項24】
前記真空測定装置は全圧測定セルまたは全圧測定管であり、好ましくはベイアード・アルバートの型式または抽出式マノメータの型式であることを特徴とする、先行請求項のうちいずれか1項に記載の真空圧力測定装置。
【請求項25】
前記真空測定装置は分圧測定装置であり、好ましくは質量分析計であり、好ましくは四重極質量分析計の型式であることを特徴とする、請求項1から19までのいずれか1項に記載の真空圧力測定装置。
【請求項26】
前記熱陰極(2)は管工学に属する、特に受像管工学に属する低コストな高出力標準陰極であることを特徴とする、先行請求項のうちいずれか1項に記載の真空圧力測定装置。
【請求項27】
前記ナノ膜(5)の後には該ナノ膜(5)と前記真空測定装置の前記反応ゾーン(30)の間に抑制グリッド(43)が配置されていることを特徴とする、先行請求項のうちいずれか1項に記載の真空圧力測定装置。
【請求項1】
電子源(1)と、衝突電離によってイオン(22)を形成するための反応ゾーン(30)とを備え、前記電子源(1)は電子(21)の通過開口部(40)を介して反応ゾーン(30)と連通するように接続されている真空圧力測定装置において、前記電子源(1)は真空室(7)を備える絶縁性ハウジング(6)で取り囲まれており、前記真空室(7)を外部領域に対して封止するように分離するとともに少なくとも部分的に電子透過性に構成されたナノ膜(5)を少なくとも1つの部分領域で支持する隔膜支持体(4)として壁部が構成されており、当該真空室(7)の中には電子(21)を放出するための陰極(2)が配置されており、前記ナノ膜(5)の領域および/または前記ナノ膜の表面には陽極構造(3)が設けられており、それにより電子(21)が前記ナノ膜(5)に向かって案内されて少なくとも部分的に該ナノ膜を通り抜けるように案内されるようになっており、前記ナノ膜(5)は前記真空圧力測定装置の真空室に接していることを特徴とする真空圧力測定装置。
【請求項2】
前記真空室(7)は前記ハウジング(6)によって全面的に真空気密に取り囲まれており、その中に独立した真空を有しており、その内部またはその表面には真空条件を維持するためのゲッター(8)が配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の真空圧力測定装置。
【請求項3】
前記真空室(7)は前記ハウジング(6)によって全面的に真空気密に取り囲まれており、前記ハウジング(6)は接続部または真空弁を備える接続部を有しており、これに真空条件を連続的または非連続的に維持するための真空システムが配置されており、好ましくはターボ分子ポンプが配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の真空圧力測定装置。
【請求項4】
前記ハウジング(6)は前記真空室(7)を前記真空測定装置の真空室と接続する開口部を有していることを特徴とする、請求項1に記載の真空圧力測定装置。
【請求項5】
前記陰極(2)は熱陰極であることを特徴とする、先行請求項のうちいずれか1項に記載の真空圧力測定装置。
【請求項6】
前記陰極(2)は間接的に加熱される陰極構造であることを特徴とする、請求項5に記載の真空圧力測定装置。
【請求項7】
前記陰極は電界放出陰極(2)であることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の真空圧力測定装置。
【請求項8】
前記電界放出陰極(2)の手前に制御グリッド(12)が配置されていることを特徴とする、請求項7に記載の真空圧力測定装置。
【請求項9】
前記電界放出陰極(2)はマイクロチップまたはカーボンナノチューブ(CNT)の型式の陰極であり、または好ましくはナノ構造化された電界放出面であることを特徴とする、請求項7または8に記載の真空圧力測定装置。
【請求項10】
前記電界放出面は電解放出フィルム(2)を有するナノ構造化された面であり、該電界放出フィルムは前記陰極支持体(9)の上に載っていることを特徴とする、請求項9に記載の真空圧力測定装置。
【請求項11】
ナノ構造化された前記電界放出面は前記陰極支持体の金属中実材料の表面で構成されて
おり、好ましくはステンレス鋼でできていることを特徴とする、請求項9に記載の真空圧力測定装置。
【請求項12】
前記ナノ膜(5)はセラミックでできており、好ましくは窒化物セラミックまたは特に酸化物セラミックもしくはこれらの混合形態でできていることを特徴とする、先行請求項のうちいずれか1項に記載の真空圧力測定装置。
【請求項13】
前記ナノ膜(5)はSi3N4,SiO2,Al2O3,ZrO2,Y2O3,SiCのセラミックまたはこれらの混合形態でできていることを特徴とする、請求項12に記載の真空圧力測定装置。
【請求項14】
前記ナノ膜(5)は酸化アルミニウムでできており、好ましくはα型酸化アルミニウムおよび特にサファイアもしくはその混合形態でできていることを特徴とする、請求項12または13に記載の真空圧力測定装置。
【請求項15】
前記ナノ膜(5)は金属フィルムでできており、好ましくはニッケルフィルム、アルミニウムフィルム、銅フィルム、または特殊鋼フィルム、もしくはこれらの合金でできていることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項に記載の真空圧力測定装置。
【請求項16】
前記ナノ膜(5)は特殊鋼フィルムでできており、好ましくは前記真空測定装置のハウジング壁(42)と同じ材料でできていることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項に記載の真空圧力測定装置。
【請求項17】
前記ナノ膜(5)の厚み(dn)は25から500nmの範囲内にあり、好ましくは100から200nmの範囲内にあることを特徴とする、先行請求項のうちいずれか1項に記載の真空圧力測定装置。
【請求項18】
前記ナノ膜(5)の面積寸法は0.1から40.0mm2の範囲内にあることを特徴とする、先行請求項のうちいずれか1項に記載の真空圧力測定装置。
【請求項19】
前記ナノ膜(5)の面積寸法は0.1から1.0mm2の範囲内にあり、好ましくは0.3から0.7mm2の範囲内にあり、前記ナノ膜(5)の最大の寸法公差は前記反応ゾーン(30)の換気時に大気圧に対して耐えるために1つの方向で0.7mmを超えておらず、好ましくは0.5mmを超えていないことを特徴とする、先行請求項のうちいずれか1項に記載の真空圧力測定装置。
【請求項20】
前記ナノ膜(5)の面形状は実質的に前記陰極(2)の形状に合わせて適合化されていることを特徴とする、先行請求項のうちいずれか1項に記載の真空圧力測定装置。
【請求項21】
前記ナノ膜(5)を少なくとも部分的に通り抜けるように電子(21)を加速させるために5KVから50KV、好ましくは10KVから50KVの範囲内の値をもつ電圧が前記陰極(2)と前記陽極構造(3)の間で印加されることを特徴とする、先行請求項のうちいずれか1項に記載の真空圧力測定装置。
【請求項22】
加速電圧が10kV以上であるとき、前記ナノ膜(5)を備える前記電子源構造(1)はナノ単位の薄さの当該膜の90%以上の電子透過性を有していることを特徴とする、先行請求項のうちいずれか1項に記載の真空圧力測定装置。
【請求項23】
前記電子源(1)の前記真空室(7)の中では10−1mbarから10−8mbarの範囲内の値の真空が生じており、好ましくは10−3から10−6mbarの範囲内の
値の真空が生じていることを特徴とする、先行請求項のうちいずれか1項に記載の真空圧力測定装置。
【請求項24】
前記真空測定装置は全圧測定セルまたは全圧測定管であり、好ましくはベイアード・アルバートの型式または抽出式マノメータの型式であることを特徴とする、先行請求項のうちいずれか1項に記載の真空圧力測定装置。
【請求項25】
前記真空測定装置は分圧測定装置であり、好ましくは質量分析計であり、好ましくは四重極質量分析計の型式であることを特徴とする、請求項1から19までのいずれか1項に記載の真空圧力測定装置。
【請求項26】
前記熱陰極(2)は管工学に属する、特に受像管工学に属する低コストな高出力標準陰極であることを特徴とする、先行請求項のうちいずれか1項に記載の真空圧力測定装置。
【請求項27】
前記ナノ膜(5)の後には該ナノ膜(5)と前記真空測定装置の前記反応ゾーン(30)の間に抑制グリッド(43)が配置されていることを特徴とする、先行請求項のうちいずれか1項に記載の真空圧力測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2010−511875(P2010−511875A)
【公表日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−539582(P2009−539582)
【出願日】平成19年11月23日(2007.11.23)
【国際出願番号】PCT/CH2007/000588
【国際公開番号】WO2008/067681
【国際公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(502079409)インフィコン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (18)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月23日(2007.11.23)
【国際出願番号】PCT/CH2007/000588
【国際公開番号】WO2008/067681
【国際公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(502079409)インフィコン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (18)
【Fターム(参考)】
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