説明

真空断熱パネル及びこれを用いた輸送用コンテナ

【課題】軽量で、変形し難く、厚みが小さく且つ断熱性能に優れた真空断熱パネルと、この真空断熱パネルを用いた輸送用コンテナとを提供する。
【解決手段】金属製の側板101,102を対向配置し、これら側板101,102間に、金属製のO型補強部材111〜118を、各開口端がそれぞれ側板101,102の内側面と接するように配置する。これら補強部材111〜118のうち、一部の補強部材111〜114は同心円状に配置される。そして、これら側板101,102の各辺を4枚の枠板103〜106で密閉することによって密閉空間120を形成し、さらに、この密閉空間120を排気口119を用いて高真空(すなわち10−5Pa以上10−1Pa以下)まで排気する。そして、このようにして構成した真空断熱パネルを壁材に用いて、輸送用コンテナを作製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製中空パネルの内部空間を真空引きしてなる真空断熱パネルと、この真空断熱パネルを用いた輸送用コンテナとに関する。
【背景技術】
【0002】
断熱パネルは、冷蔵庫、保冷容器等の筐体や、航空輸送用コンテナの壁材等に使用されている。従来より、断熱パネルとして、一対の側板の間に発泡ウレタンや発泡ポリスチレン等の断熱材を埋設したものが知られている。しかし、これらの断熱材を用いて断熱パネルを作製する場合、十分な断熱性を得るためには、非常に厚い断熱材が必要になる。
【0003】
また、中空パネルの内部空間を真空引きすることによって、かかるパネルの断熱性を向上させる技術が、従来より知られている。このような断熱パネルは、真空断熱パネルと呼ばれている。かかる真空断熱パネルによれば、断熱材を使用しただけの場合と比較して、断熱性を向上させることができる。しかし、真空断熱パネルでは、かかる内部空間の気圧と大気圧との差によって側板が変形してしまうおそれがある。このため、真空断熱パネルには、かかる変形を防止するための補強手段を設けることが望ましい。
【0004】
例えば、下記特許文献1の技術では、凹凸を有する鋼板を積層することによって、真空断熱パネルの変形を防止している(特許文献1の段落[0015]、図1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−114028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術は、複数枚の鋼板を使用するため、真空断熱パネルの重量が大きくなるという欠点がある。
【0007】
また、かかる鋼板を介して2枚の側板の間で熱が伝導するようになるので、真空断熱パネルの断熱性能を悪化させるという欠点がある。
【0008】
さらには、このような鋼板を積層したのでは、真空断熱パネルの厚みを十分に低減することができないという欠点もある。例えば、このような真空断熱パネルを用いて輸送用コンテナを作製する場合が考えられるが、輸送用コンテナでは外形寸法が予め規定されている場合が多い。このため、真空断熱パネルの厚みが大きいほど内部容積が小さくなってしまい、積載容量が減ってしまう。
【0009】
本発明の課題は、軽量で、変形し難く、厚みが小さく且つ断熱性能に優れた真空断熱パネルと、この真空断熱パネルを用いた輸送用コンテナとを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る真空断熱パネルは、対向配置された一対の側板とこれら側板の各辺に沿って配置された4枚の枠板とを用いて形成された密閉空間と、該密閉空間を真空引きするための排気口とを備える真空断熱パネルであって、筒状の補強部材を、各開口端がそれぞれ前記側板の内側面と接するように前記密閉空間内に配置したことを特徴とする。
【0011】
請求項2に係る真空断熱パネルは、請求項1に記載の構成に加えて、前記側板の内側面に、シボ加工による凹凸が設けられたことを特徴とする。
【0012】
請求項3に係る真空断熱パネルは、請求項1又は2に記載の構成に加えて、前記補強部材の側面に1個又は複数個の貫通孔が設けられたことを特徴とする。
【0013】
請求項4に係る真空断熱パネルは、請求項1〜3の何れかに記載の構成に加えて、前記補強部材の前記開口端に凹凸が設けられたことを特徴とする。
【0014】
請求項5に係る真空断熱パネルは、請求項1〜4のいずれかに記載の構成に加えて、前記密閉空間の真空度が10−5Pa以上10−1Pa以下であることを特徴とする。
【0015】
請求項6に係る真空断熱パネルは、請求項1〜5のいずれかに記載の構成に加えて、径の異なる複数の前記補強部材が同心円状に配置されたことを特徴とする。
【0016】
請求項7に係る輸送用コンテナは、請求項1〜6の何れかに記載の真空断熱パネルを用いて箱型格納室を構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明によれば、筒状の補強部材を、一対の側板の間に、各開口端がそれぞれ前記側板の内側面と接するように配置したので、軽量で変形し難い真空断熱パネルを得ることができる。
【0018】
請求項2の発明に係る真空断熱パネルによれば、シボ加工によって側板の内側面に凹凸を設けたので、かかる側板と補強部材との接触を点接触にすることができる。これにより、補強部材を介して側板間で熱が伝搬し難くなるので、真空断熱パネルの断熱性をさらに高めることができる。
【0019】
請求項3の発明に係る真空断熱パネルによれば、補強部材に貫通孔を設けたので、密閉空間内の真空引きが容易になる。
【0020】
請求項4の発明に係る真空断熱パネルによれば、補強部材の開口端に凹凸を設けたので、側板と補強部材との接触を点接触にすることができる。これにより、補強部材を介して側板間で熱が伝搬し難くなるので、真空断熱パネルの断熱性をさらに高めることができる。さらに、補強部材の内側と外側との空気の流通が容易になるので、密閉空間内の真空引きが容易になる。
【0021】
請求項5の発明に係る真空断熱パネルによれば、密閉空間の真空度を10−5Pa以上としたので、本発明の真空断熱パネルが変形するおそれが特に少ない。また、密閉空間の真空度を10−1Pa以下としたので、非常に高い断熱性を得ることができる。
【0022】
請求項6の発明に係る真空断熱パネルによれば、径の異なる複数の補強部材を同心円状に配置したので、簡単な構成によって、側板の変形に対する強度を十分に高くすることができる。
【0023】
請求項7の発明に係る輸送用コンテナによれば、本発明の真空断熱パネルを用いて箱型格納室を構成したので、軽量で、断熱性が高く、内部容量が大きい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施の形態に係る真空断熱パネルの全体構成を示す概念図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A断面図である。
【図2】図1(b)に符号Aで示した部分を拡大して示す概略的断面図である。
【図3】図1(a)に符号Bで示した部分を拡大して示す概略的断面図である。
【図4】(a)は図1(a)の補強部材を拡大して示す概略的斜視図であり、(b)は図1(a)の補強部材の他の例を示す概略的斜視図である。
【図5】実施の形態に係る真空断熱パネルを用いて作製された収容箱を示す概念図であり、(a)は外観斜視図、(b)は(a)のB−B断面図である。
【図6】実施の形態に係る輸送用コンテナ600の外観を概略的に示す斜視図である。
【図7】図6のC−C断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態に係る真空断熱パネルについて、図面を用いて説明する。
[発明の実施の形態1]
【0026】
図1は、本実施形態に係る真空断熱パネル100の全体構成を示す概念図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A断面図である。
【0027】
図1に示したように、本実施形態の真空断熱パネル100では、一対の側板101,102が、互いに向き合うように配置されている。また、側板101,102の間には、O型補強部材111〜118が配置されている。さらに、側板101,102の各辺に沿って、枠板103〜106が配置されており、側板101,102と枠板103〜106とはそれぞれ密着固定されている。これにより、側板101,102と枠板103〜106とによる密閉空間120が形成されている。この密閉空間120は、排気管119を用いて、高真空に真空引きされている。なお、本願で「高真空」とはJIS規格に規定された高真空、すなわち気圧が10−5Pa以上10−1Pa以下の状態をいう。
【0028】
以下、真空断熱パネル100の構成について、詳細に説明する。図2は、図1(b)に符号Aで示した部分の拡大図である。図3は、図1(b)に符号Bで示した部分の拡大図である。図4(a)は図1(a)の補強部材111〜118を拡大して示す斜視図であり、図4(b)は補強部材111〜118の他の例を示す斜視図である。
【0029】
側板101,102としては、例えば金属板を使用することができる。本実施形態では、SUS304−H(バネ材)を使用している。また、本実施形態では、側板101,102の寸法を、550mm×550mmとした。側板101,102の厚さは、例えば0.2〜0.8mmが好ましいが、ここでは約0.3mmとした。また、本実施形態では、側板101,102として、外側面101a,102aが鏡面処理され、且つ、シボ加工等によって内側面101b,102bに凹凸が設けられたものを使用した(図3参照)。シボ加工とは、加工対象物の表面に模様等を施す微細加工技術であり、例えば加工対象物が金属の場合にはエッチングを使用することができる。本実施形態では、縦寸法、横寸法、高さ及び間隔がそれぞれ0.1〜0.2mm程度の凸部を、シボ加工によって形成した。
【0030】
枠板103〜106としては、例えば金属板を使用することができる。枠板103〜106は、かかる金属板等の長尺方向の両側部分104a,104bを、略直角に折り曲げることで形成される。図2から解るように、本実施形態では、枠板103〜106(図2では枠板104の例のみを示した)として短尺方向の幅が約30mmの金属板を用い、該金属板の両側部分104a,104bをそれぞれ端から10mmの位置で折り曲げて使用した。枠板103〜106の金属材料としてはSUS304−Hを使用し、また、枠板103〜106の厚みはそれぞれ約0.3mmとした。そして、これら枠板103〜106により図1(a)に点線で示したような、真空断熱パネル100の枠109を組み立てた。そして、側板101,102の各辺に沿ってシーム溶接を施すことにより、枠板103〜106と側板101,102とを溶接部201,202で密着固定した。シーム溶接とは、抵抗溶接の一種であり、ローラ電極を用いて加圧且つ通電しながら電極を回転させることにより、溶接対象物を連続的に溶接する方法である。
【0031】
補強部材111〜118としては、例えば金属で作製された筒状体を使用することができる(図4(a)参照)。本実施形態では、補強部材111〜118の形成材料として、SUS304−Hを使用した。図1(a)に示したように、これら補強部材111〜118のうち、補強部材111〜114は平面視において側板101,102の中央部分に同心円状に配置され、補強部材115〜118は平面視において側板101,102の四隅近傍に配置されている。また、これら補強部材111〜118は、各開口端がそれぞれ側板101,102の内側面と接するような方向に、配置されている。補強部材111〜118の高さ(すなわち、開口端どうしの距離)は、約30mmとした。また、補強部材111〜118の厚みは、0.1〜0.2mm程度が望ましいが、本実施形態では約0.11mmとした。これら補強部材111〜118の直径は、補強部材111では130mm、補強部材112では200mm、補強部材113では300mm、補強部材114では400mm、補強部材115〜118では75mmとした。但し、補強部材の個数、配置場所及び寸法は任意であり、真空断熱パネル100に要求される強度等に応じて適宜決定すればよい。
【0032】
補強部材111〜118は、円筒形であることが、最も望ましい。円筒形にした場合、他の筒状体(三角筒、四角筒、楕円筒等)よりも、高さ方向(すなわち、開口面と垂直な方向)に対する強度が高くなるからである。
【0033】
上述したように、側板101,102の内側面は、シボ加工による凹凸が形成されている。このため、図3に示したように、側板101,102と補強部材111〜118との接触は点接触となる。したがって、本実施形態では、側板101,102と補強部材111〜118との熱伝導を抑えることができる。なお、本実施形態では、凹凸の縦寸法、横寸法、高さ及び間隔をそれぞれ0.1〜0.2mm程度としたが(上述)、これらの寸法には限定されない。すなわち、側板101,102と補強部材111〜118との接触を点接触にできさえすれば、熱伝導性を低く抑えることができる。
【0034】
また、図4(a)に示したように、本実施形態では、補強部材111〜118の側面に貫通孔401,401,・・・を設けた。貫通孔401,401,・・・の直径や形状等は、任意である。貫通孔401,401,・・・を設けることにより、密閉空間120内の真空引きを行う際に各筒状補強部材111〜118の内側から外側への空気の流れが容易になり、したがって、かかる真空引きが容易になる。
【0035】
図4(b)に、補強部材111〜118の他の例を示す。図4(b)に示したように、本実施形態では、補強部材111〜118の開口端に、凹凸を設けてもよい。これにより、側板101,102と補強部材111〜118との接触面積を、図4(a)の場合よりもさらに減らすことができる。補強部材111〜118の凹凸の大きさは、例えば、凸部の高さ1mm程度、凸部のピッチを10〜100mm程度、側板101,102と接触する部分の幅を0.5〜1mm程度とすればよい。また、補強部材111〜118の厚さや直径は、図4(a)の場合と同様とした。
【0036】
図4(b)の例では、補強部材111〜118の開口端に凹凸を設けることによって、側板101,102と補強部材111〜118との間に大きい隙間が生じる。このため、貫通孔401,401,・・・を設けなくても、各筒状補強部材111〜118の内側から外側への空気の流れを容易にすることができ、したがって、真空引きを容易にすることができる。但し、図4(b)の場合において、貫通孔401,401,・・・をさらに設けることとしてもよい。
【0037】
なお、図4(b)の構造においては、側板101,102の内側面にシボ加工による凹凸を設けなくても、非常に高い断熱性を得ることができる。但し、補強部材111〜118及び側板101,102の両方に凹凸を設けることとすれば、断熱性をさらに高めることができる。
【0038】
排気管119は、密閉空間120を真空引きするために使用される。排気管119の種類等は限定されないが、密閉空間120内を長期間にわたって高真空に維持できるような処理が施される。本実施形態では、排気管119を二重パイプ構造とし、外側パイプとして直径約10mm且つ長さ約1mmのステンレス・パイプを使用し、内側パイプとして銅パイプを使用した。そして、真空引き後にプレスにて排気管119の排気管を高圧着し、さらに、排気管119の外側先端を溶接した。これにより、密閉空間120の内部への大気ガスの侵入を防止することができて、密閉空間120が高真空に維持される。
【0039】
図5は、本実施形態の真空断熱パネル100を用いて収容箱500を作製した例であり、(a)は外観斜視図、(b)は(a)のB−B断面図である。
【0040】
図5(a)に示したように、本実施形態の収容箱500は、略正六面体の形状を有しており、6枚の真空断熱パネル100を用いて作製される。なお、図5(a)では、3枚の真空断熱パネル100−1〜100−3のみを示した。
【0041】
枠材501としては、例えば、硬質発泡樹脂が使用される。図5(b)に示したように、枠材501は、隣接する2枚の真空断熱パネル100(図5(b)では真空断熱パネル100−1,100−2)の端部及びその近傍をそれぞれ覆うようにして、これら二枚の真空断熱パネル100を平面が直角になるように固定する。これにより、6枚の真空断熱パネル100の各辺を、隣接する他の真空断熱パネル100に固定して、略生六面体の収容箱500を作製することができる。
【0042】
なお、収容箱500に貨物を収容する場合や該収容箱500から貨物を取り出す場合には、枠材501を図5(b)の上方向に引き抜いて真空断熱パネル100−1を取り外せばよい。
【0043】
以下、本実施形態に係る真空断熱パネル100の原理について説明する。
【0044】
本実施形態に係る真空断熱パネル100を使用する場合、密閉空間120内を高真空(すなわち10−5Pa以上10−1Pa以下)に設定する。このため、密閉空間120内の空気対流による熱伝導(側板101,102間の熱伝導)を非常に少なくすることができるので、十分に高い断熱性を得ることができる。本願発明者の検討によれば、密閉空間120内の気圧を中真空や低真空(気圧が10−1Pa以上)にした場合、高真空の場合と比較して断熱性能が低下した。一方、密閉空間120の気圧を超高真空(気圧が10−5以下の場合)にしても、高真空の場合と比較して断熱性能の向上は殆ど無かった。
【0045】
その一方で、密閉空間120内を高真空にすると、該密閉空間120の負圧によって、側板101,102が内側に変形しようとする。かかる変形を防止する方法としては、強度の高い側板を使用する方法や補強部材を使用する方法も考えられる。しかしながら、この変形を防止するために強度の高い側板を使用する場合、かかる側板の板厚を厚くする必要が生じるので、真空断熱パネル100の総重量が大きくなってしまう。また、上記特許文献1のような補強部材を使用する場合も、補強部材自体の重量が大きいために真空断熱パネル100の総重量が大きくなってしまう。
【0046】
これに対して、本実施形態では、補強部材111〜118を円筒状に形成したので、かかる円筒を薄厚に形成しても、側板101,102に対して十分な補強を行うことができる。したがって、本実施形態によれば、真空断熱パネル100を軽量化しつつ十分な強度を得ることができる。
【0047】
側板101,102を変形させようとする力は、該側板101,102の中央付近で最も強く、中央から離れるほど弱くなる。このため、補強部材111〜114を同心円状に配置することで、側板101,102の補強をさらに効果的に行うことができる。
【0048】
本発明者の検討によれば、密閉空間120の気圧が10−5Pa以上の場合、このような補強部材111〜118を使用するだけで十分な強度を得ることができた。
【0049】
ここで、金属内では、当該金属分子の振動が伝搬することによって、熱が伝導する。これに対して、本実施形態では、密閉空間120内が高真空状態であるため、補強部材111〜118は側板101,102によって両方の開口側から非常に強い力で加圧されており、このため、金属分子が振動し難い状態になっている。すなわち、補強部材111〜118は、熱抵抗が非常に高い状態になっている。さらに、本実施形態では、側板101,102と補強部材111〜118との接触が点接触になっており、このため、側板101,102と補強部材111〜118との間で熱が非常に伝搬し難い。したがって、本実施形態の真空断熱パネル100は、金属の補強部材111〜118を設けたにも拘わらず、断熱性能が非常に優れている。
【0050】
また、本実施形態の真空断熱パネル100は、密閉空間120内を高真空状態にすること及び補強部材111〜118が熱を伝搬しにくいことから、パネル厚さ(側板101,102間の距離)を非常に薄くしても、十分に高い断熱性能を得ることができる。すなわち、本実施形態によれば、断熱性能の高い真空断熱パネル100を、非常に薄く形成することができる。
【0051】
以上説明したように、本実施形態によれば、軽量で、変形し難く、厚みが小さく且つ断熱性能に優れた真空断熱パネルを提供することができる。
[発明の実施の形態2]
【0052】
次に、本発明に係る輸送用コンテナの実施形態について、図6及び図7を用いて説明する。
【0053】
図6は、本実施形態に係る輸送用コンテナ600の外観を概略的に示す斜視図である。図7は、図6のC−C断面図である。
【0054】
図6に示したように、本実施形態の輸送用コンテナ600は、正面に二枚の真空断熱パネル100−11,100−12を備え、且つ、左側面に二枚の真空断熱パネル100−13,100−14を備える。なお、図6で示されていない各面、すなわち上面、底面、右側面及び背面は、それぞれ、1枚ずつの真空断熱パネルを備えている。これら真空断熱パネルの構造は、それらの寸法を除いて、上述した実施形態1の真空断熱パネル100と同様である。
【0055】
さらに、輸送用コンテナ600は、これら真空断熱パネルを互いに固定するための外枠部601を備える。正面及び左側面以外の真空断熱パネルは、例えば樹脂フレーム等を用いて、外枠部601に強固に固定される。外枠部601としては、例えば厚さ2mmのステンレス材を使用することができる。外枠部601は、台座620に固定される。
【0056】
正面の真空断熱パネル100−11,100−12は、両開き型の扉を構成している。真空断熱パネル100−11の右端部分及び真空断熱パネル100−12の左端部分は、蝶つがい602,602,・・・によって、外枠601に開閉自在に保持されている。また、正面の中央部分には、扉(すなわち真空断熱パネル100−11,100−12)を開閉するための取っ手603,603と、扉を閉じた状態に維持するためのフック機構604,604と、扉を施錠するための施錠機構605とが設けられている。
【0057】
同様に、左側面の真空断熱パネル100−13,100−14は、両開き型の扉を構成している。真空断熱パネル100−13の右端部分及び真空断熱パネル100−14の左端部分は、蝶つがい612,612,・・・によって、外枠601に開閉自在に保持される。また、左側面の中央部分には、扉(すなわち真空断熱パネル100−13,100−14)を開閉するための取っ手613,613と、扉を閉じた状態に維持するためのフック機構614,614と、扉を施錠するための施錠機構615とが設けられている。
【0058】
図7に示したように、外枠部601は、上面の真空断熱パネル100−15の正面側端部付近を覆うとともに、かかる端部付近から下方に突出する折曲部601aを有する。真空断熱パネル100−15と外枠部601とで囲まれた部分には、樹脂701が埋設されている。折曲部601aは、樹脂モール702で覆われている。また、真空断熱パネル100−11(すなわち、扉)の上端部付近は、樹脂フレーム703で覆われている。折曲部601aは、真空断熱パネル100−11が閉じられるときのストッパーである。樹脂モール702と樹脂フレーム703とを設けたことにより、真空断熱パネル100−11が閉じられて折曲部601aに当接したときの衝撃が和らげられるとともに、輸送用コンテナ600の密閉性が向上する。
【0059】
樹脂フレーム703の外側端部には、樹脂製の防水モール704が装着されている。図7に示したように、防水モール704は、真空断熱パネル100−11が閉じられたときに、樹脂フレーム703と外枠601との間の隙間を塞ぐ。これにより、輸送用コンテナ600内への雨水の浸入等を防止することができる。一方、真空断熱パネル100−11が開かれるとき、防水モール704は、この真空断熱パネル100−11に装着された状態のまま移動する。
【0060】
上述したように、本実施形態では、輸送用コンテナ600の箱型収容室を、実施形態1と同様の真空断熱パネルによって構成した。このため、上述したように、従来の輸送用コンテナと比較して、コンテナの各壁面(正面、背面、右側面、左側面、正面及び底面の壁)を薄厚にすることができる。上述のように、従来の断熱パネルとしては、発泡ウレタンや発泡ポリスチレン等の断熱材を内部に敷き詰めた断熱パネルが主流であったが、このような断熱パネルを用いて輸送用コンテナを作製する場合、例えば板厚が115mmの断熱パネルが使用されていた。これに対して、本実施形態に係る真空断熱パネルの板厚は例えば30mmである(図2参照)。
【0061】
したがって、本実施形態によれば、外形寸法に対する積載容量を増大させることができる。本発明者の試算によれば、例えば外形寸法が2500mm×2490mm×3715mmの場合、従来の輸送用コンテナの荷室体積は16.5立方メートルであるのに対して、本実施形態の輸送用コンテナ600の荷室体積は19.5立方メートルであった。すなわち、本実施形態によれば、従来と比較して、荷室体積を約18%向上させることができた。
【0062】
また、本実施形態の輸送用コンテナ600は、従来の輸送用コンテナよりも軽いという長所も有する。本発明者の測定によれば、上述のような従来の輸送用コンテナの自重が2.1トンであるのに対して、本実施形態に係る輸送用コンテナの自重は11.4トンであり、約33%の軽量化が達成された。
【0063】
さらには、上述したように、本実施形態の輸送用コンテナに使用する真空断熱パネルは、断熱材を使用した断熱パネルと比較して、断熱性が非常に高いという長所も有している。
【0064】
以上説明したように、本実施形態によれば、軽量で、断熱性が高く且つ内部容量が大きい輸送用コンテナ600を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の真空断熱パネルは、輸送用コンテナだけでなく、保存容器や、冷蔵・冷凍室の壁材等にも使用できる。
【符号の説明】
【0066】
100,100−1,100−2,100−11〜100−13 真空断熱パネル
101,102 側板
103〜106 枠板
109 枠
111〜118 O型補強部材
119 排気管
120 密閉空間
201,202 シーム溶接による溶接部分
401 貫通孔
500 収容箱
501 枠材
601 外枠部
602,612 蝶つがい
603,613 取っ手
604,614 フック機構
605,615 施錠機構
701 樹脂
702 樹脂モール
703 樹脂フレーム703
704 防水モール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向配置された一対の側板とこれら側板の各辺に沿って配置された4枚の枠板とを用いて形成された密閉空間と、該密閉空間を真空引きするための排気口とを備える真空断熱パネルであって、
筒状の補強部材を、各開口端がそれぞれ前記側板の内側面と接するように前記密閉空間内に配置したことを特徴とする真空断熱パネル。
【請求項2】
前記側板の内側面に、シボ加工による凹凸が設けられたことを特徴とする請求項1に記載の真空断熱パネル。
【請求項3】
前記補強部材の側面に1個又は複数個の貫通孔が設けられたことを特徴とする請求項1又は2に記載の真空断熱パネル。
【請求項4】
前記補強部材の前記開口端に凹凸が設けられたことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の真空断熱パネル。
【請求項5】
前記密閉空間の真空度が10−5Pa以上10−1Pa以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の真空断熱パネル。
【請求項6】
径の異なる複数の前記補強部材が同心円状に配置されたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の真空断熱パネル。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかに記載の真空断熱パネルを用いて箱型格納室を構成したことを特徴とする輸送用コンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−21615(P2012−21615A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−161200(P2010−161200)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(591017065)株式会社松田技術研究所 (11)
【Fターム(参考)】