説明

真空断熱材、真空断熱材を適用した保温機器および事務機器

【課題】真空断熱材を高湿雰囲気下で使用した場合にも、外被材のガスバリア性を維持し、真空断熱材の断熱性能を長期に渡って維持できるようにする。
【解決手段】芯材14を覆う二枚の外被材13が、内側から順に、熱溶着層16、ポリアクリル酸系樹脂層20、第一の蒸着層21、第一の蒸着層21が形成された基材フィルム22、第二の蒸着層23、第二の蒸着層23が形成された基材フィルム24、ナイロン19で構成されたラミネートフィルムであり、ポリアクリル酸系樹脂層20は第一の蒸着層21の上に隣接して形成されたものであるので、ポリアクリル酸系樹脂20への水蒸気の影響を低減し、外被材13のガスバリア性を維持し、外被材13の端面からのガス侵入も抑制できるため、真空断熱材12の断熱性能を長期に渡って維持できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空断熱材と、その真空断熱材を適用した機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
真空断熱材の断熱性能を長期に渡って維持するためには、外被材にガスバリア性に優れたフィルムを使用することによって外部からのガス侵入を防ぎ、真空断熱材内部の真空度を維持する必要がある。このため、従来は、外被材には金属箔を含むフィルムが広く使用されて来た。
【0003】
しかし、金属箔を含むフィルムを真空断熱材に使用すると、金属箔を通しての熱の回り込み(ヒートリーク)が発生するため、本来の断熱性能が得られないという課題があった。
【0004】
そこで、金属箔を使用せずにガスバリア性を確保した真空断熱材として、基材フィルム上に有機物膜層と無機物膜層を有する積層フィルムを構成中に含む外被材を使用した真空断熱材がある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
図8は、特許文献1に記載された従来の真空断熱材の外被材の断面図である。図8に示すように、外被材1は基材フィルム2上に有機物膜3と無機物膜4を有し、無機物膜4と熱溶着層5がラミネートされている。
【0006】
従来の構成は、基材フィルム2上に設けた有機物膜3が、基材フィルム2表面の凹凸を平滑にする、無機物膜4のクラックや欠陥の伝播を遮断する、無機物膜4中の内部応力を緩和する、無機物膜4を保護するなどの役目を果たす。また、有機物膜3と無機物膜4の積層により、ガスバリア性や折り曲げ性を向上できた。
【0007】
また、基材フィルム、蒸着薄膜層、水溶性高分子を含む中間被膜層、蒸着薄膜層を順次積層した積層フィルムを構成中に含む外被材を使用した真空断熱材がある(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
図9は、特許文献2に記載された従来の真空断熱材の外被材の断面図である。図9に示すように、外被材6は基材フィルム7と蒸着薄膜層8と中間被膜層9と蒸着薄膜層10を有し、蒸着薄膜層10と熱溶着層11がラミネートされている。
【0009】
従来の構成は、前記積層構造により、高いガスバリア性を発現するものである。
【特許文献1】特開2003−172493号公報
【特許文献2】特開2004−130654号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記特許文献1の構成では、ガスバリア性の湿度依存性が大きいために、湿度が高くなるほどガスバリア性の悪化が顕著であった。すなわち、通常、真空断熱材の使用環境は絶乾状態ではないために、湿度の影響により外被材のガスバリア性が悪化し、断熱性能の悪化が生じるという課題があった。
【0011】
また、上記特許文献2のように蒸着を二層設ける構成は、蒸着層が一層の場合に比べてガスバリア性や水蒸気バリア性が向上するものの、フィルムに熱がかかる回数や、テンションがかかる回数が増えるためにフィルムが劣化するためか、ガスバリア性や水蒸気バリア性が、期待通りには改善しないという課題があった。
【0012】
本発明は、上記課題を解決するもので、真空断熱材を高湿雰囲気下で使用した場合にも外被材のガスバリア性を維持でき、これによって、真空断熱材の断熱性能を長期に渡って維持できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の真空断熱材は、芯材と、前記芯材を被覆する外被材とからなり、内部を減圧密封した真空断熱材であって、前記外被材が少なくとも第一の蒸着層と第二の蒸着層とポリアクリル酸系樹脂層と熱溶着層とを有するラミネートフィルムであり、前記ポリアクリル酸系樹脂層は前記第一の蒸着層の上に隣接して形成されたものであり、前記ポリアクリル酸系樹脂層が前記第一の蒸着層よりも内側にあり且つ前記熱溶着層と隣接しているのである。
【0014】
ポリアクリル酸系樹脂層を第一の蒸着層の上に隣接して形成すると、特にポリアクリル酸系樹脂層を第一の蒸着層の上にコーティングにより形成すると、蒸着層の表面酸化層とポリアクリル酸系樹脂との間に強い水素結合反応が発現し、蒸着層とポリアクリル酸系樹脂とが強固に結びつき、蒸着層とポリアクリル酸系樹脂層との境界面に、蒸着層よりもポリアクリル酸系樹脂層よりもガスバリア性に優れたガスバリア層ができ、また、蒸着層の欠損箇所をポリアクリル酸系樹脂で穴埋めでき、ポリアクリル酸系樹脂層が第一の蒸着層を保護する働きをするため、それぞれのガスバリア性積層による理論計算値よりもバリア性が向上する。
【0015】
ところで、ポリアクリル酸系樹脂は、使用環境の湿度が高くなるほどガスバリア性が悪化してしまうという特性がある。通常、真空断熱材の使用環境は絶乾状態ではないため、湿度の影響を受けることによって、絶乾状態に比べてガスバリア性が悪化してしまう。
【0016】
そこで、ポリアクリル酸系樹脂の外側に、第一の蒸着層と、その第一の蒸着層が形成された基材フィルムと、第二の蒸着層と、その第二の蒸着層が形成された基材フィルムとを配置することによって、ポリアクリル酸系樹脂層にまで到達する水蒸気量を抑制し、ポリアクリル酸系樹脂を水蒸気から保護することで、真空断熱材の使用環境が高湿になってもガスバリア性を維持する。
【0017】
また、第一の蒸着層の上に隣接して形成されたポリアクリル酸系樹脂層が、熱溶着層と隣接しているので、外被材の端面のガス侵入面積が減り、端面からのガス侵入も抑制できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の真空断熱材は、外被材が優れたガスバリア性を有するために、真空断熱材を高湿雰囲気で使用した場合にも長期に渡って断熱性能を維持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
請求項1に記載の真空断熱材の発明は、芯材と、前記芯材を被覆する外被材とからなり、内部を減圧密封した真空断熱材であって、前記外被材が少なくとも第一の蒸着層と第二の蒸着層とポリアクリル酸系樹脂層と熱溶着層とを有するラミネートフィルムであり、前記ポリアクリル酸系樹脂層は前記第一の蒸着層の上に隣接して形成されたものであり、前記ポリアクリル酸系樹脂層が前記第一の蒸着層よりも内側にあり且つ前記熱溶着層と隣接しているものである。
【0020】
ポリアクリル酸系樹脂層を第一の蒸着層の上に隣接して形成すると、特にポリアクリル酸系樹脂層を第一の蒸着層の上にコーティングにより形成すると、蒸着層の表面酸化層とポリアクリル酸系樹脂との間に強い水素結合反応が発現し、蒸着層とポリアクリル酸系樹脂とが強固に結びつき、蒸着層とポリアクリル酸系樹脂層との境界面に、蒸着層よりもポリアクリル酸系樹脂層よりもガスバリア性に優れたガスバリア層ができ、また、蒸着層の欠損箇所をポリアクリル酸系樹脂で穴埋めでき、ポリアクリル酸系樹脂層が第一の蒸着層を保護する働きをするため、それぞれのガスバリア性積層による理論計算値よりもバリア性が向上する。
【0021】
ところで、ポリアクリル酸系樹脂は、使用環境の湿度が高くなるほどガスバリア性が悪化してしまうという特性がある。通常、真空断熱材の使用環境は絶乾状態ではないため、湿度の影響を受けることによって、絶乾状態に比べてガスバリア性が悪化してしまう。
【0022】
そこで、ポリアクリル酸系樹脂の外側に、第一の蒸着層と、その第一の蒸着層が形成された基材フィルムと、第二の蒸着層と、その第二の蒸着層が形成された基材フィルムとを配置することによって、ポリアクリル酸系樹脂層にまで到達する水蒸気量を抑制し、ポリアクリル酸系樹脂を水蒸気から保護することで、ポリアクリル酸系樹脂への水蒸気の影響を低減し、ガスバリア性を確保しやすくし、真空断熱材の使用環境が高湿になってもガスバリア性を維持する。
【0023】
蒸着層を有するフィルムは蒸着層を有しないフィルムに比べ水蒸気バリア性が高いため、フィルムの積層数が少なくても効果が大きい。
【0024】
また、第一の蒸着層の上に隣接して形成されたポリアクリル酸系樹脂層が、熱溶着層と隣接しているので、外被材の端面のガス侵入面積が減り、端面からのガス侵入も抑制できるため、さらに真空断熱材の断熱性能を維持しやすくなる。
【0025】
請求項2に記載の真空断熱材の発明は、請求項1に記載の発明における第二の蒸着層が、前記第二の蒸着層が形成された基材フィルムよりも内側にあるものであり、第二の蒸着層が、第二の蒸着層が形成された基材フィルムにより保護されて、第二の蒸着層の劣化が起こりにくい。このため、よりポリアクリル酸系樹脂を保護しやすくなり、ガスバリア性を確保しやすくなる。
【0026】
請求項3に記載の真空断熱材の発明は、請求項1または2に記載の発明におけるポリアクリル酸系樹脂層が、少なくともポリアルコール系ポリマーとポリアクリル酸系ポリマーの混合物から形成されるものである。
【0027】
ポリアクリル酸系樹脂層は、ポリアルコール系ポリマーとポリアクリル酸系ポリマーとの混合物溶液を、蒸着層の上に流延し、乾燥して皮膜を形成し、得られた乾燥皮膜を100℃以上の温度で熱処理することにより形成する。熱処理によりポリアルコール系ポリマーとポリアクリル酸系ポリマーとの間が、エステル結合により架橋される。これによって、耐水性が付与できるだけでなく、ガスバリア性が向上する。
【0028】
ここで、エステル結合の程度は、エステル化度によって表すことができる。エステル化度とは、全ての炭素・酸素二重結合に対する架橋された炭素・酸素二重結合のモル比であり、ガスバリア性の観点から0.01〜0.5の範囲内にあることが望ましい。よって、架橋されないポリアルコール系ポリマーやポリアクリル酸系ポリマーも残存する。
【0029】
熱処理の後、金属イオンが含まれている水中に浸漬することで、金属イオンがポリアクリル酸系樹脂層に浸透し、エステル結合されなかったポリアクリル酸系ポリマーの遊離カルボン酸同士が、多価金属イオンによりイオン架橋されるため、よりガスバリア性が向上する。
【0030】
ここでイオン架橋の程度は、イオン化度によって表すことができる。イオン化度とは、全ての炭素・酸素二重結合に対するカルボン酸陰イオンを構成する炭素・酸素二重結合のモル比であり、0.01〜0.9の範囲であることが望ましい。
【0031】
ここで、多価金属イオンは、特に指定するものではないが、アルカリ土類金属、銅、コバルト、ニッケル、などの2価イオンとなる金属や、アルミニウムなどの3価イオンとなる金属が望ましい。これらの金属は、ハロゲン化物、水酸化物、酸化物、炭酸塩、次亜塩素酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、酢酸塩、アクリル酸塩などの形で用い、これらを水に溶解することで、金属イオン水溶液を得る。これらの金属塩は単独で使用しても2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0032】
ポリアクリル酸系樹脂層を、ポリアルコール系ポリマーとポリアクリル酸系ポリマーとから形成することは、上記2種類の架橋を形成するため、優れたガスバリア性を発現するのである。
【0033】
請求項4に記載の真空断熱材の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の発明において、芯材の両面が同一構成の外被材で被覆されるものであり、外被材のガスバリア性が高いために、経時断熱性能が優れるだけでなく、ガスバリア性を高めるための金属箔を必要としない構成であるためにヒートリークも抑制できる。この構成は、真空断熱材のサイズが小さくなるほど、効果的である。
【0034】
また、このとき、外被材を一枚のラミネートフィルムから製袋すると、熱溶着層断面を一辺減らすことが可能となり、熱溶着層端面からのガス侵入が抑制できる。また、真空断熱材の形状が長方形であるなら、長辺側の断面を一辺減らすような製袋方法をとれば、より経時断熱性能の維持がしやすくなる。ここで、外被材の形状は、一枚のラミネートフィルムから製袋されたものであれば、特に指定するものではなく、三方シール袋やピローシール袋、ガゼット袋などの形状が可能である。
【0035】
請求項5に記載の真空断熱材の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載の発明における芯材が、繊維体であるものである。
【0036】
繊維系芯材は、粉末系芯材に比べて、初期性能に優れているが、圧力依存性に劣るため、高い断熱性能を維持するためには、真空断熱材内部の真空度を維持し続けなければならない。しかし、本発明における外被材の構成は、ガスバリア性に優れているため、繊維系の芯材を使用した場合でも、長期に渡って断熱性能を維持できる。
【0037】
請求項6に記載の保温機器の発明は、請求項1から5のいずれか一項に記載の真空断熱材を適用したものであり、優れた省エネルギー効果を示す。また、保温機器のように使用温度が比較的高い場合でも、外被材の構成がガスバリア性に優れているために、優れた断熱性能を長期に渡って維持することができ、保温効果も長期に渡って維持できる。
【0038】
請求項7に記載の事務機器の発明は、請求項1から5のいずれか一項に記載の真空断熱材を適用したものであり、熱害対策や省エネルギー化が可能となる。また、真空断熱材の適用スペースが限られた用途用に薄くて小さい真空断熱材を作製する場合、吸着剤を使用することが困難になってしまうが、外被材の構成がガスバリア性に優れているために、吸着剤を使用したり、真空断熱材の外被材の表裏両面に金属箔を含む構成にしたりしなくても、断熱性能を維持できる。また、金属箔を使用しないことによって、ヒートリークを抑制することもできる。
【0039】
以下に、さらに本発明の詳細を説明する。
【0040】
第一の蒸着層における蒸着の材料としては特に指定するものではなく、アルミニウム、コバルト、ニッケル、亜鉛、銅、銀、シリカ、アルミナ、シリカとアルミナの混合体、ダイヤモンドライクカーボンなどが使用可能である。
【0041】
また、第一の蒸着層の厚さも特に指定するものではないが、薄すぎるとムラになる、ガスバリア性が低下するなどの問題が生じ、厚すぎるとクラックが発生する、基材フィルムから剥離しやすくなる、フィルムへのダメージが大きくなる、また、蒸着の材料が金属の場合はヒートリークが大きくなるなどの問題が生じるため、10〜150nmの範囲であることが望ましい。また、蒸着の方法は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、CVD法など特に指定するものではない。
【0042】
また、ポリアクリル酸系樹脂層は、基材フィルムの上に蒸着層を形成してから、その上に形成するものであるが、汎用の蒸着層を有するフィルムの蒸着層の上に形成することも可能である。この場合、工程数を減らすことができるので、コストダウンが可能になる。
【0043】
ポリアクリル酸系樹脂層の厚さも、特に指定するものではないが、薄すぎるとムラになる、ガスバリア性が低下するなどの問題が生じ、厚すぎるとひび割れが生じる、剥離しやすくなる、柔軟性が低下するなどの問題が生じるため、0.1〜15μmの範囲であることが望ましい。
【0044】
また、基材フィルムも特に指定するものではなく、ポリエチレンテレフタレート(以下PETと略す)、ポリエチレンナフタレート(以下PENと略す)、ポリプロピレン(以下OPPと略す)、ポリエチレン、ナイロン、ポリフェニレンサルファイド、ポリイミド、エチレン−ポリビニルアルコール共重合体樹脂などが使用可能であるが、アクリル酸系樹脂層を形成する際の熱処理工程を考慮すると、融点が200℃以上の樹脂や寸法変形の少ない樹脂を選択することが望ましい。
【0045】
次に、ポリアクリル酸系樹脂層を形成するポリアルコール系ポリマーとポリアクリル酸系ポリマーについて説明する。
【0046】
ポリアルコール系ポリマーとは、分子内に2個以上の水酸機を有するアルコール系重合体であり、具体的には、ポリビニルアルコール(以下PVAと略す)や糖類を含むものである。これらを単独で使用しても2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0047】
中でも、PVAを使用すると、高いガスバリア性を発現するため、ガスバリア性を重視する場合はPVAを使用することが望ましい。なお、PVAはけん化度が95%以上であり、平均重合度が300〜1500であることが望ましい。糖類は、単糖類、オリゴ糖類、糖アルコール類、多糖類などがあり、ガスバリア性の面からソルビトール、デキストリン、水溶性澱粉などが望ましい。
【0048】
また、ポリアクリル酸系ポリマーとは、アクリル酸重合体またはその部分中和物、メタクリル酸重合体またはその部分中和物、アクリル酸とメタクリル酸共重合体またはその部分中和物、あるいはこれらの混合物などである。
【0049】
ここで、部分中和物は、ポリアクリル酸のカルボキシル基を水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウムなどのアルカリで部分的に中和することにより得られるものであり、部分中和物の中和度は、ガスバリア性の観点から0〜20%の範囲であることが望ましい。中でも、アクリル酸またはメタクリル酸のホモポリマーや両者の共重合体が望ましく、特にアクリル酸のホモポリマーやアクリル酸が優位量となるメタクリル酸との共重合体を使用すると、ガスバリア性が向上するため望ましい。ポリアクリル酸系ポリマーの平均分子量は特に限定するものではないが、2000〜250000の範囲が望ましい。
【0050】
また、ポリアルコール系ポリマーとポリアクリル酸系ポリマーの混合比は、重量比で、高湿度条件下でも優れたガスバリア性を有するという観点から、ポリアルコール系ポリマーとしてPVAを使用する場合には、90:10〜10:90の範囲が、ポリアルコール系ポリマーとして糖類を使用する場合には、90:10〜20:80の範囲が望ましい。
【0051】
また、熱処理条件は、熱処理温度は通常100〜250℃の範囲、熱処理時間は1秒〜30分間の範囲であり、熱処理温度が低い場合には長時間、熱処理温度が低い場合には短時間で行う。
【0052】
また、第二の蒸着層における蒸着の材料としては特に指定するものではなく、アルミニウム、コバルト、ニッケル、亜鉛、銅、銀、シリカ、アルミナ、シリカとアルミナの混合体、ダイヤモンドライクカーボンなどが使用可能である。
【0053】
また、第二の蒸着層の厚さも特に指定するものではないが、薄すぎるとムラになる、ガスバリア性が低下するなどの問題が生じ、厚すぎるとクラックが発生する、基材フィルムから剥離しやすくなる、フィルムへのダメージが大きくなる、また、蒸着の材料が金属の場合はヒートリークが大きくなるなどの問題が生じるため、10〜150nmの範囲であることが望ましい。また、蒸着の方法は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、CVD法など特に指定するものではない。
【0054】
また、基材フィルムも特に指定するものではなく、PET、PEN、OPP、ポリエチレン、ナイロン、エチレン−ポリビニルアルコール共重合体樹脂などが使用可能である。
【0055】
また、熱溶着層も特に指定するものではなく、ポリエチレン、無延伸ポリプロピレン(以下CPPと略す)、ポリアクリロニトリル(以下PANと略す)、無延伸PET、無延伸ナイロン、無延伸エチレン−ポリビニルアルコール共重合体樹脂などが使用可能である。また、熱溶着層に吸着剤を含有させてもよい。
【0056】
また、耐ピンホール性や耐摩耗性の向上、難燃性の付与などを目的としてさらに外層や中間層にフィルムを設けることも可能である。
【0057】
ここで、外層や中間層に設けるフィルムの種類や積層数は、特に指定するものではなく、ナイロン、エチレン・4フッ化エチレン共重合体樹脂(以下ETFEと略す)、PET、PEN、OPP、エチレン−ポリビニルアルコール共重合体樹脂、ポリエチレンなどが使用可能であるが、複合フィルムの外側に設けるフィルムの透湿度が低いほど、ポリアクリル酸系樹脂層が水蒸気の影響を受けにくくなり、ガスバリア性が向上するために、できるだけ透湿度の低いフィルムを選択することが望ましく、中でもポリエチレン、OPP、PETやPENなどの延伸フィルムや蒸着層を有するフィルムがより望ましい。
【0058】
また、芯材は、繊維、粉末、発泡樹脂、多孔質体、薄膜積層体など、特に指定するものではない。例えば繊維系では、グラスウール、グラスファイバー、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維、シリカ繊維、ロックウール、炭化ケイ素繊維などが使用可能であり、粉末系ではシリカ、パーライト、カーボンブラック、発泡樹脂ではウレタンフォーム、フェノールフォーム、スチレンフォームなどが使用可能である。
【0059】
また、これらの混合体や成形体を使用することも可能である。初期断熱性能を要求する場合は、繊維を伝熱方向に対して垂直に積層した繊維またはその成形体を、経時断熱性能を要求する場合は粉末や粉末の成形体を使用するとよい。
【0060】
また、真空断熱材の初期断熱性能や経時断熱性能をより一層向上させるために、水分吸着剤やガス吸着剤を使用することも可能である。使用する吸着剤の種類は、特に指定するものでなく、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化バリウム、ゼオライト、シリカゲル、ハイドロタルサイトなどが使用可能であり、これらを単独で使用しても、2種類以上組み合わせて使用してもよい。
【0061】
真空断熱材の作製方法も、特に指定するものではなく、ラミネートフィルムから外被材を製袋してから、外被材中に芯材を挿入し、内部を減圧し封止して得てもよく、また、真空チャンバー内に芯材と外被材を設置し、外被材を芯材に沿わした状態で、芯材を含有する部分ごと熱溶着して得てもよい。
【0062】
ここで、後者の作製方法の場合は、外被材全面に熱がかかることによるフィルムの劣化が考えられるため、熱溶着層に使用する樹脂の融点に対して、熱溶着層以外に使用する樹脂の融点を40℃以上高いものに設定することが望ましい。
【0063】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
【0064】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における真空断熱材の断面図である。図1において、真空断熱材12は、外被材13で芯材14を被覆し、外被材13の内部を減圧密封したものである。
【0065】
まず、真空断熱材12の作製方法を説明する。
【0066】
まず、同じ大きさの長方形に切った2枚のラミネートフィルムの熱溶着同士を向かい合わせて三辺を熱溶着し、袋状の外被材13を作製する。
【0067】
次に、外被材13の開口部から140℃の乾燥炉にて1時間程度乾燥させた芯材14と吸着剤15を挿入する。これをチャンバー内に設置し、内部を10Pa以下まで減圧した後、開口部を熱溶着して真空断熱材12を得る。
【0068】
次に、真空断熱材12の構成を説明する。
【0069】
図2は、本発明の実施の形態1における真空断熱材の断面図である。図2に示すように、外被材13は、真空断熱材12の表面と裏面で同じ構成のラミネートフィルムを使用した。
【0070】
外被材13は、熱溶着層16がCPP、その外側にフィルムA17、その外側にフィルムB18、最外層にナイロン19を設けた構成である。
【0071】
フィルムA17の向きは、内側より、ポリアクリル酸系樹脂層20、第一の蒸着層21、基材フィルム22の順であり、ポリアクリル酸系樹脂層20は、PVAとポリアクリル酸の部分中和物を30:70で混合した水溶液から形成しており、第一の蒸着層21はアルミ、基材フィルム22はPETである。
【0072】
また、フィルムB18の向きは、内側より、第二の蒸着層23、基材フィルム24であり、第二の蒸着層23はアルミ、基材フィルム24はPETである。また、芯材14は、ガラス繊維から構成される成形体である。
【0073】
本実施の形態における真空断熱材12は、芯材14と、吸着剤15と、芯材14と吸着剤15とを被覆する二枚の外被材13とからなり、内部を減圧密封した真空断熱材12であって、外被材13が少なくとも第一の蒸着層21と第二の蒸着層23とポリアクリル酸系樹脂層20と熱溶着層16とを有するラミネートフィルムであり、ポリアクリル酸系樹脂層20は第一の蒸着層21の上に隣接して形成されたものであり、ポリアクリル酸系樹脂層20が第一の蒸着層21よりも内側にあり且つ熱溶着層16と隣接しているものであり、第二の蒸着層23が、第二の蒸着層23が形成された基材フィルム24よりも内側にあるものであり、芯材14の両面が同一構成の外被材13で被覆されるものである。
【0074】
すなわち、芯材14を覆う二枚の外被材13が、内側から順に、熱溶着層16、ポリアクリル酸系樹脂層20、第一の蒸着層21、第一の蒸着層21が形成された基材フィルム22、第二の蒸着層23、第二の蒸着層23が形成された基材フィルム24、ナイロン19で構成されたラミネートフィルムである。
【0075】
ポリアクリル酸系樹脂層20を、ポリアルコール系ポリマーとポリアクリル酸系ポリマーとから形成することによって、緻密な架橋構造を形成するために、ガスバリア性が向上し、また、ポリアクリル酸系樹脂層20が第一の蒸着層21と隣接していることにより、第一の蒸着層21を保護し、優れたガスバリア性となる。
【0076】
このため、芯材14が圧力依存性に優れない繊維系芯材でも断熱性能を維持することができる。さらに、フィルムA17の外層にフィルムB18を設けているため、高湿雰囲気下で使用した場合でも、ポリアクリル酸系樹脂20への水蒸気影響が低減され、真空断熱材12の断熱性能が維持できる。
【0077】
なお、本実施の形態では、真空断熱材12の表面と裏面で同じ構成のラミネートフィルムを使用したが、異なる構成のラミネートフィルムを使用してもよい。また、本実施の形態では2枚のラミネートフィルムを使用して、外被材13の形状を四方シール袋としたが、1枚のラミネートフィルムを使用して外被材13の形状を三方シール袋としてもよい。
【0078】
(実施の形態2)
図3は、本発明の実施の形態2における真空断熱材の断面図、図4は実施の形態2における真空断熱材の平面図である。
【0079】
図3において、真空断熱材25は、外被材26で芯材27を被覆し、外被材26の内部を減圧密封したものである。
【0080】
まず、真空断熱材25の作製方法について説明する。
【0081】
まず、熱溶着層側を上に向けた外被材26の上に芯材27を置き、これをもう1枚の外被材26で熱溶着層同士が向き合うように覆い、これをチャンバー内に設置する。さらに、チャンバー内を真空状態にした後、シリコンゴム製の熱板で、外被材26の全面を加熱加圧して熱溶着を行い、図4のような真空断熱材25を得る。最後に外被材26のみから構成される熱溶着部にある切り取り線28で切り取り、真空断熱材25を得る。なお、真空断熱材25のサイズは名刺サイズである。
【0082】
次に、真空断熱材25の構成を説明する。
【0083】
図5は実施の形態2における真空断熱材の断面図である。図5に示すように、外被材26は、真空断熱材25の表面と裏面で異なる構成のラミネートフィルムを使用した。
【0084】
表面は、熱溶着層29がPAN、その外側にフィルムA30、その外側にフィルムB31、最外層にETFE32を設けた構成である。フィルムA30の向きは、内側より、ポリアクリル酸系樹脂層33、第一の蒸着層34、基材フィルム35の順であり、ポリアクリル酸系樹脂層33の構成は実施の形態1と同様であり、第一の蒸着層34はアルミ、基材フィルム35はPENである。また、フィルムB31の向きは内側より、第二の蒸着層36、基材フィルム37であり、第二の蒸着層36はアルミ、基材フィルム37はPENである。
【0085】
また、裏面は熱溶着層29がPAN、その外側にアルミ箔38、その外層にPEN39、最外層にETFE32を設けた構成である。また、芯材27は不織布に入った乾式シリカとカーボンブラックの混合粉末である。
【0086】
本実施の形態における真空断熱材25は、芯材27と、芯材27を被覆する二枚の外被材26とからなり、内部を減圧密封した真空断熱材25であって、表側の外被材26が少なくとも第一の蒸着層34と第二の蒸着層36とポリアクリル酸系樹脂層33と熱溶着層29とを有するラミネートフィルムであり、ポリアクリル酸系樹脂層33は第一の蒸着層34の上に隣接して形成されたものであり、ポリアクリル酸系樹脂層33が第一の蒸着層34よりも内側にあり且つ熱溶着層29と隣接しているものであり、第二の蒸着層36が、第二の蒸着層36が形成された基材フィルム37よりも内側にあるものである。
【0087】
すなわち、芯材27を覆う二枚の外被材26のうち表側の外被材26が、内側から順に、熱溶着層29、ポリアクリル酸系樹脂層33、第一の蒸着層34、第一の蒸着層34が形成された基材フィルム35、第二の蒸着層36、第二の蒸着層36が形成された基材フィルム37、ETFE32で構成されたラミネートフィルムである。
【0088】
ポリアクリル酸系樹脂層33を、ポリアルコール系ポリマーとポリアクリル酸系ポリマーとの混合物から形成することによって、緻密な架橋構造を形成するためにガスバリア性が向上し、またポリアクリル酸系樹脂層33が第一の蒸着層34と隣接していることにより、第一の蒸着層34を保護し、優れたガスバリア性となる。
【0089】
また、フィルムA30の外層にフィルムB31を設けているため、真空断熱材25のサイズが小さく、吸着剤を使用することができない場合でも、断熱性能を維持することができる。ポリアクリル酸系樹脂層33が熱溶着層29に隣接していることによって、端面からのガス侵入量が減る。
【0090】
また、フィルムA30におけるポリアクリル酸系樹脂層33および基材フィルム35の耐熱性が高いため、外被材26全体に熱がかかるような真空断熱材25の作製方法でもフィルムが劣化することなく、ガスバリア性を維持することができる。
【0091】
(実施の形態3)
図6は、実施の形態3における真空断熱材を適用した保温機器としての電気湯沸し器の断面図である。
【0092】
図6に示すように、電気湯沸し器40は、外容器41と、貯水用容器42と、ヒーター43と、蓋44と、実施の形態1の真空断熱材12とから構成されている。
【0093】
貯水用容器42の中は、ヒーター43により加温・保温され、保温中は、真空断熱材12により貯水用容器42の側面からの放熱を抑制している。
【0094】
真空断熱材12を適用することによって、優れた省エネルギー効果を示す。消費電力量を測定したところ、真空断熱材を適用しない場合に比べ10%程度の低減が確認できた。また、真空断熱材12の外被材に金属箔を使用していないため、ヒートリークの発生も抑制できた。また、電気湯沸し器40の使用環境は時に湿度が高くなることがあるが、金属箔を使用していなくても外被材が優れたガスバリア性を有するために経時断熱性能を維持でき、保温効果も長期に渡って維持できる。
【0095】
なお、本実施の形態では、電気湯沸し器40の貯水用容器42の側面の断熱に真空断熱材12を適用したが、蓋に適用することも可能である。
【0096】
また、本発明における保温機器とは、電気湯沸し器に限るものではなく、炊飯器や保温調理器、給湯器などの保温を目的とする機器に使用可能である。
【0097】
(実施の形態4)
図7は、実施の形態4におけるノート型コンピューターの断面図であり、図7に示すように、ノート型コンピューター45は、装置内部のメインボード46上の発熱部47と装置ケース48底部との間を遮断する、実施の形態2の真空断熱材25と、放熱板49とを具備し、真空断熱材25が装置ケース48底部に密着している。
【0098】
このように構成されたノート型コンピューター45は、優れた断熱効果を有する真空断熱材25が、底面への伝熱を効果的に遮断するために、装置表面の温度上昇を抑え、利用者に不快感を軽減できる。なお、底面の温度を測定したところ、真空断熱材を適用していない場合に比べて6℃の低下が確認できた。
【0099】
本実施の形態のように、真空断熱材25のサイズが小さく薄くなっても、外被材が優れたバリア性を有するために、経時断熱性能を維持することが可能であることから、ノート型コンピューターのような小型化や薄型化が要求され、かつ断熱材を適用する空間が限られている製品に対しても適用することができる。
【0100】
なお、本発明における事務機器とは、ノート型コンピューターに限るものではなく、コピー機やプリンターなどの印刷装置内の発熱部分とトナーとの断熱や、液晶パネルを有するカーナビゲーションシステムの液晶部分とCPUによる発熱部分の断熱など、断熱を必要とするその他の事務機器にも適用可能である。
【実施例】
【0101】
以下、実施例、及び比較例を用いて、本発明の真空断熱材を構成する外被材について具体的に説明するが、本発明は本実施例のみに限定されるものではない。
【0102】
(実施例1)
実施の形態1に記載した構成の真空断熱材にて、温度加速試験と湿度加速試験を行った。なお、それぞれの試験条件は100℃、40℃95%RHである。
【0103】
(実施例2)
実施例1のフィルムBの向きを変更し、実施例1と同様の試験を行った。
【0104】
なお、外被材の構成は、内側より、CPP、フィルムA、フィルムB、ナイロンであり、フィルムAの向きは実施例1と同様、フィルムBの向きは内側より、基材フィルム、蒸着層である。
【0105】
(実施例3)
実施例1のフィルムAの向きを変更し、実施例1と同様の試験を行った。
【0106】
なお、外被材の構成は、内側より、CPP、フィルムA、フィルムB、ナイロンであり、フィルムAの向きは、内側より、基材フィルム、蒸着層、アクリル酸系樹脂層であり、フィルムBの向きは実施例1と同様である。
【0107】
(実施例4)
実施の形態2に記載した真空断熱材の構成にて、実施例1と同様の試験を行った。
【0108】
(実施例5)
実施の形態2の表面に使用したラミネートフィルムを両面に使用した真空断熱材を作製し、実施例1と同様の試験を行った。
【0109】
(比較例1)
実施例1のポリアクリル酸系樹脂層をポリアクリル酸の重合体から形成し、実施例1と同様の試験を行った。
【0110】
(比較例2)
実施例1のフィルムBをPETに変更し、実施例1と同様の試験を行った。
【0111】
(比較例3)
実施例1のラミネート順序を変更した外被材を使用して真空断熱材を作製し、実施例1と同様の試験を行った。
【0112】
外被材の構成は、内側より、CPP、フィルムB、フィルムA、ナイロンである。また、フィルムBの向きは、内側より、蒸着層、基材フィルムであり、フィルムAの向きは、内側より、アクリル酸系樹脂層、蒸着層、基材フィルムである。
【0113】
(比較例4)
実施例1のラミネート順序を変更した外被材を使用して真空断熱材を作製し、実施例1と同様の試験を行った。
【0114】
外被材の構成は、内側より、CPP、フィルムB、フィルムA、ナイロンである。フィルムBの向きは、内側より、基材フィルム、蒸着層であり、フィルムAの向きは、内側より、アクリル酸系樹脂層、蒸着層、基材フィルムである。
【0115】
(比較例5)
実施例1のラミネート順序を変更した外被材を使用して真空断熱材を作製し、実施例1と同様の試験を行った。
【0116】
外被材の構成は、内側より、CPP、フィルムB、フィルムA、ナイロンである。フィルムBの向きは、内側より、基材フィルム、蒸着層であり、フィルムAの向きは、内側より、基材フィルム、蒸着層、アクリル酸系樹脂層である。
【0117】
(比較例6)
実施例3のフィルムAのアクリル酸系樹脂層の上にアルミ蒸着層を一層を設けて基材フィルム、蒸着層、アクリル酸系樹脂層、蒸着層の構成のフィルム(フィルムC)とし、その代わりに、フィルムBをPETに変更した外被材を使用して真空断熱材を作製し、実施例1と同様の試験を行った。
【0118】
外被材の構成は、内側より、CPP、フィルムC、PET、ナイロンである。フィルムCは、内側より、基材フィルム、蒸着層、アクリル酸系樹脂層、蒸着層である。
【0119】
(比較例7)
実施の形態2の裏面に使用したラミネートフィルムを両面に使用した真空断熱材を作製し、実施例1と同様の試験を行った。
【0120】
以上、実施例1〜5と比較例1〜7における初期熱伝導率および、試験後の熱伝導率を(表1)に示す。
【0121】
【表1】

実施例1、比較例1を比較すると、ポリアクリル酸系樹脂層をポリアルコール系ポリマーとポリアクリル酸系ポリマーとから形成した方が、断熱性能を維持できることがわかる。また、実施例1の外被材の構成はガスバリア性に優れているために、繊維系芯材を使用しても断熱性能の悪化が少なかった。
【0122】
実施例1と比較例2を比較すると、フィルムAの外側にフィルムBを有する方が高湿条件で断熱性能を維持しやすいことがわかる。また、実施例1〜3と比較例3〜5は外被材を構成しているフィルムが同じであるのにも関わらず、フィルムAの外側にフィルムBがある方が高湿条件において断熱性能を維持しやすいことがわかる。
【0123】
さらに、比較例6は、実施例1〜3や比較例3〜5と同じようにラミネート構成中に蒸着層を二層有しているのにも関わらず、温度加速試験後の断熱性能の悪化が大きい。これは蒸着層を二層設けるための工程数の増加により、フィルムに熱やテンションがかかる回数が増えることでフィルムのダメージが大きくなっていることが影響していると考える。
【0124】
さらに、実施例1〜3を比較すると、温度加速による断熱性能の悪化は、フィルムBにおける蒸着層の向きや、フィルムAにおけるポリアクリル酸系樹脂層の向きに関わらず、ほぼ同等であるが、湿度加速における断熱性能の悪化については、フィルムBにおける蒸着層の向きが内側であり、フィルムAにおけるポリアクリル酸系樹脂層の向きが内側である方が断熱性能の悪化が小さく、効果が高いことがわかる。
【0125】
さらに、実施例1〜3における外被材の構成はガスバリア性に優れているために、繊維系芯材を使用しても断熱性能の悪化が少なかった。
【0126】
実施例4、5、比較例7を比較すると、真空断熱材のサイズが小さいために、ヒートリークの影響が大きくなり、金属箔を使用しないほうが初期熱伝導率を低減できることがわかる。
【0127】
また、温度加速試験および湿度加速試験の結果から寿命シミュレーションを行ったところ、10年後も実施例4、実施例5は比較例7に対して熱伝導率が低く、優位性があった。本実施の形態のように、真空断熱材のサイズが小さくなって吸着剤が使用できない場合でも、外被材が優れたガスバリア性を有するために、金属箔を両面に使用しなくても、経時断熱性能を維持することができた。
【産業上の利用可能性】
【0128】
以上のように、本発明にかかる真空断熱材は、外被材のガスバリア性が優れているため、長期に渡って断熱性能を維持できる。このため、省エネルギー化が要求される保温機器に限らず、保温機器同様に省エネルギー化が要求される冷蔵庫などの保冷機器への適用も可能である。なお保冷機器に適用する場合、高温でのガスバリア性が優れていることから、コンプレッサー周辺やマリオンパイプに隣接する部分に使用するとより効果的である。また、機器に限らずコンテナボックスやクーラーボックスなどの保冷が必要な用途への適用も可能である。また、さらに、真空断熱材が小さく薄くなっても、断熱性能を維持できるため、事務機器に限らず、電子機器への適用や、防寒具や寝具などの保温が必要な用途への適用も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】本発明の実施の形態1における真空断熱材の概略断面図
【図2】本発明の実施の形態1における真空断熱材の詳細断面図
【図3】本発明の実施の形態2における真空断熱材の概略断面図
【図4】本発明の実施の形態2における真空断熱材の平面図
【図5】本発明の実施の形態2における真空断熱材の詳細断面図
【図6】本発明の実施の形態3における電気湯沸し器の断面図
【図7】本発明の実施の形態4におけるノート型コンピューターの断面図
【図8】従来の真空断熱材の外被材の一例の断面図
【図9】従来の真空断熱材の外被材の別の例の断面図
【符号の説明】
【0130】
12 真空断熱材
13 外被材
14 芯材
16 熱溶着層
20 ポリアクリル酸系樹脂層
21 第一の蒸着層
23 第二の蒸着層
24 基材フィルム
25 真空断熱材
26 外被材
27 芯材
29 熱溶着層
33 ポリアクリル酸系樹脂層
34 第一の蒸着層
36 第二の蒸着層
37 基材フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材と、前記芯材を被覆する外被材とからなり、内部を減圧密封した真空断熱材であって、前記外被材が少なくとも第一の蒸着層と第二の蒸着層とポリアクリル酸系樹脂層と熱溶着層とを有するラミネートフィルムであり、前記ポリアクリル酸系樹脂層は前記第一の蒸着層の上に隣接して形成されたものであり、前記ポリアクリル酸系樹脂層が前記第一の蒸着層よりも内側にあり且つ前記熱溶着層と隣接している真空断熱材。
【請求項2】
第二の蒸着層が、前記第二の蒸着層が形成された基材フィルムよりも内側にある請求項1に記載の真空断熱材。
【請求項3】
ポリアクリル酸系樹脂層が、少なくともポリアルコール系ポリマーとポリアクリル酸系ポリマーの混合物から形成される請求項1または2に記載の真空断熱材。
【請求項4】
芯材の両面が同一構成の外被材で被覆される請求項1から3のいずれか一項に記載の真空断熱材。
【請求項5】
芯材が、繊維体である請求項1から4のいずれか一項に記載の真空断熱材。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の真空断熱材を適用した保温機器。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか一項に記載の真空断熱材を適用した事務機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−300198(P2006−300198A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−122043(P2005−122043)
【出願日】平成17年4月20日(2005.4.20)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成15年度新エネルギー・産業技術総合開発機構「高性能、高機能真空断熱材」に関する委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】