真空断熱材及びこれを用いた冷蔵庫
【課題】真空断熱材において、吸着材による凹凸を生じさせることなく安価な構成で長期の断熱性能に優れたものとすること。
【解決手段】真空断熱材16は、プラスチックフィルムからなる内袋21内にバインダーを含まない無機繊維重合体を収納した芯材18と、芯材18を収納して内部を減圧し周縁部を溶着して封止したラミネートフィルムからなる外包材19とを備えて構成されている。真空断熱材16は、内袋21または外包材19にガス成分や水分を吸着する能力を保持させている。
【解決手段】真空断熱材16は、プラスチックフィルムからなる内袋21内にバインダーを含まない無機繊維重合体を収納した芯材18と、芯材18を収納して内部を減圧し周縁部を溶着して封止したラミネートフィルムからなる外包材19とを備えて構成されている。真空断熱材16は、内袋21または外包材19にガス成分や水分を吸着する能力を保持させている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空断熱材及びこれを用いた冷蔵庫に係り、特に有機系バインダーを用いない無機繊維集合体を芯材として用いた真空断熱材及びこれを用いた冷蔵庫に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化防止の観点から省エネルギーが強く望まれており、家庭用電化製品についても省エネルギー化は緊急の課題となっている。特に、冷蔵庫では熱を効率的に利用するという観点から、優れた断熱性能を有する断熱材が求められている。
【0003】
冷蔵庫の一般的な断熱体としては、外箱と内箱との間にウレタンフォームなどの発泡断熱材を充填した断熱体が広く用いられている。係る断熱体において断熱能力を増大するためには、発泡断熱材の厚さを増すことが必要であるが、冷蔵庫では省スペースや空間の有効利用が強く求められており、発泡断熱材を充填できる空間を増大することが困難であった。
【0004】
そこで、高性能な断熱材である真空断熱材と発泡断熱材とを併用して断熱体とすることが提案されている。ここで用いられる真空断熱材は、スペーサの役割を持つ芯材をガスバリア性を有する外包材中に挿入し、外包材の内部を減圧すると共に外包材の周縁部を封止した断熱材である。
【0005】
従来の真空断熱材としては、特開平9−138058号公報(特許文献1)に開示されたものがある。この特許文献1の真空断熱材は、グラスウール等の無機繊維重合体を有機系バインダーで固め成形してなる断熱材(芯材)と、活性炭またはゼオライトからなる吸着剤と、断熱材(芯材)及び吸着剤を覆う金属箔の層を積層してなるラミネートフィルム(外包材)とを備え、このラミネートフィルムの内部を減圧すると共にラミネートフィルムの縁部を封止して構成したものである。
【0006】
また、従来の真空断熱材としては、特開平4−337195号公報(特許文献2)に開示されたものがある。この特許文献2の真空断熱材は、前記無機質フアイバマットをプラスチックフィルム製の内袋内に収納し、この内袋の内部を減圧すると共にその内袋の周縁部を封止したものを内部材(芯材)とし、さらに、内部材(芯材)を収納部材(外包材)内に収納した後、内袋の密封を破壊すると共に収納部材内を減庄し、その収納部材の周縁部を封止して構成したものである。
【0007】
【特許文献1】特開平9−138058号公報
【特許文献2】特開平4−337195号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1の真空断熱材では、長期的な断熱性能を考慮した場合、有機系バインダーで固め成形してなる断熱材(芯材)を用いているため、この有機系バインダーに起因するガスが多量に長期間にわたって発生し、多量の吸着剤を使用する必要があると共に、吸着剤だけでこのガスを完全に吸着することが困難となり、経時的に外包材内の真空度が減じられ断熱性能が劣化するという問題があった。
【0009】
しかも、特許文献1の真空断熱材では、グラスウール等の繊維繊維重合体を有機系バインダーで固め成形してなる断熱材(芯材)を用い、断熱材(芯材)の一部を切欠いてその切欠き部に吸着剤を設置するようにしているため、断熱材(芯材)の一部を切欠く作業が面倒であると共に、その切欠き部に吸着剤を設置する作業が面倒であり、高価なものとなっていた。そこで、切欠き部のない断熱材(芯材)の上部あるいは中間部に吸着剤を設置することが考えられるが、断熱材(芯材)が固化されて柔軟性がないため、吸着剤の形状が真空断熱材の完成状態においても真空断熱材の表面に浮き出て凹凸が生じてしまうと共に、吸着剤を別途製作して真空断熱材内に設置する作業が依然として残ってしまうものであった。
【0010】
また、特許文献2の真空断熱材では、長期的な断熱性能を考慮した場合、内部材(芯材)を収納部材(外包材)内に収納する際に、内部材(芯材)を構成する内袋表面に水分が付着し、真空断熱材の完成状態で、その水分により経時的に真空度が減じられ断熱性能が劣化するという問題があった。さらには、特許文献2の真空断熱材では、内袋を通してガス成分や水分が進入して断熱性能を経時的に劣化させるという問題があった。
【0011】
本発明の目的は、吸着材による凹凸を生じさせることなく安価な構成で長期の断熱性能に優れた真空断熱材及びこれを用いた冷蔵庫を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述の目的を達成するための本発明の第1の態様は、プラスチックフィルムからなる内袋内にバインダーを含まない無機繊維重合体を収納した芯材と、前記芯材を収納して内部を減圧し周縁部を溶着して封止したラミネートフィルムからなる外包材とを備え、前記内袋または前記外包材にガス成分や水分を吸着する能力を保持させたものである。
【0013】
係る本発明の第1の態様におけるより好ましい具体的構成例は次の通りである。
(1)前記外包材は溶着用プラスチック層及び金属層を有するラミネートフィルムで構成されていること。
(2)前記内袋は吸着材を練り込んだプラスチックフィルムで構成されていること。
(3)前記外包材は吸着材を練り込んだプラスチック層を有するラミネートフィルムで構成されていること。
(4)前記無機繊維重合体はグラスウール、グラスファイバー、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維の何れかであること。
【0014】
また、本発明の第2の態様は、外箱と内箱とによって形成される断熱空間に真空断熱材を配設した冷蔵庫において、前記真空断熱材は、プラスチックフィルムからなる内袋内に有機系バインダーを含まない無機繊維重合体を収納して形成した芯材と、前記芯材を収納して内部を減圧し周縁部を溶着して封止したラミネートフィルムからなる外包材とを備え、前記内袋または前記外包材に水分やガス成分などを吸着する能力を保持させたものである。
【0015】
また、本発明の第3の態様は、プラスチックフィルムからなる内袋内にバインダーを含まない無機繊維重合体を収納した芯材と、前記芯材を収納して内部を減圧し周縁部を溶着して封止したラミネートフィルムからなる外包材とを備え、前記内袋は表面に撥水処理膜を有しているものである。
【0016】
係る本発明の第3の態様におけるより好ましい具体的構成例は次の通りである。
(1)前記内袋は、撥水処理膜を施したフィルムと、他のガスバリア性のプラスチックフィルムとのラミネートフィルムであること。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、吸着材による凹凸を生じさせることなく安価な構成で長期の断熱性能に優れた真空断熱材及びこれを用いた冷蔵庫を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の複数の実施形態について図を用いて説明する。各実施形態の図における同一符号は同一物または相当物を示す。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態の真空断熱材及びこれを用いた冷蔵庫に関して図1から図8を用いて説明する。
【0019】
まず、第1実施形態の冷蔵庫の全体に関して図1及び図2を参照しながら説明する。図1は本発明の第1実施形態の冷蔵庫の縦断面図、図2は図1のA−A断面拡大図である。
【0020】
冷蔵庫は、冷蔵庫本体1、冷凍サイクル及び制御装置などを備えて構成されている。冷蔵庫本体1は、異なる温度の複数の貯蔵室2、3、4(4a、4b)を有すると共に、各貯蔵室2、3、4(4a、4b)の前面開口部を開閉する複数の扉5〜8を備えている。複数の貯蔵室2、3、4(4a、4b)は、上から冷蔵室2、野菜室3、第1の冷凍室4a、第2の冷凍室4bの順に配列されている。符号4は図示していないが、第1の冷凍室4aと第2の冷凍室4bとを区別しない場合に、何れかまたは両方に対して用いる。複数の扉5〜8は、冷蔵室2、野菜室3、第1の冷凍室4a、第2の冷凍室4bに対応して、上から冷蔵室扉5、野菜室扉6、第1の冷凍室扉7、第2の冷凍室扉8の順に配列されている。而して、野菜室扉6、第1の冷凍室扉7、第2の冷凍室扉8は、引き出し式の扉であり、各々の部屋を構成する容器を扉引き出し時に扉と共に手前側に引き出すように構成されている。
【0021】
冷凍サイクルは、冷蔵庫本体1の背面側の底部に配置された圧縮機9と、冷凍室4の背面側に配置された冷却器10と、凝縮器(図示せず)と、キャピラリチューブ(図示せず)とを備えて構成されている。冷却器10の上方には冷気ファン11が配設されている。この冷気ファン11は、冷却器10で冷却された冷気を各貯蔵室2〜4へと送り、庫内を所定温度に冷却する。また、温度の異なる貯蔵室2〜4に対応する数だけ冷却器を設け、各冷却器により各貯蔵室2〜4を独立して冷却するようにしてもよい。
【0022】
冷蔵庫本体1の外郭を形成するのは断熱箱体12である。この断熱箱体12は、金属製の外板で構成する外箱13と、合成樹脂製の内板で構成する内箱14と、この両者13、14間に設けられた断熱壁15とを備えて構成されている。この断熱壁15は真空断熱材16と発泡断熱材17とを備えて構成されている。なお、外箱13の各面は概略平板状に形成され、内箱14の各面は凹凸を有したり付属品が装着されたりしているので、真空断熱材16は、外箱13の平板状部分に密着するように設置されるが、外箱13の角部または内箱14側に設置されてもよい。
【0023】
真空断熱材16は発泡断熱材17より高い断熱性能を有するものである。例えば、発泡断熱材17の熱伝導率は0.016W/mK程度であるのに対し、真空断熱材16の熱伝導率は発泡断熱材17の熱伝導率に比較して格段に低い0.002W/mK程度である。従って、真空断熱材16のみで断熱壁15を構成すれば、ウレタン等の発泡断熱材17のみで形成した断熱壁15と比較して、その厚さ寸法を約1/5から1/9程度の厚さ寸法とすることができる。しかし、真空断熱材16のみで断熱壁15を構成した断熱箱体12にあっては、外箱13と内箱14とが一体化されないため、断熱箱体12の強度が設計値を満足しないという問題が発生する。そこで、真空断熱材16が設置された外箱13と内箱14との間に、それ自身に接着力を有するウレタン等の発泡断熱材17を発泡充填し、発泡断熱材17を外箱13と内箱14とに接着し、外箱13と内箱14とを発泡断熱材17を介して一体化して断熱箱体12の強度を確保している。なお、発泡断熱材17の壁厚さ寸法を5mmから20mm程度、つまり、その平均厚さ寸法を15mm程度とし、局部的な薄いところでもウレタン等の発泡断熱材17が充填出来る5mm以上を確保して、断熱箱体12の強度が低下するのを防止している。
【0024】
また、真空断熱材16は、冷蔵庫の熱漏洩量の大きいところを重点的にカバーできる位置に配置して、断熱箱体12の強度と断熱壁15の断熱性能の両方に効果的な構成としている。そして、冷蔵庫の断熱空間における真空断熱材16の割合は、60%以下に設定されている。係る構成によって、強度、断熱性能及び信頼性を確保することができる。具体的には、真空断熱材16は冷蔵庫の両側壁内部と背面壁内部と上面壁内部と扉内部とにそれぞれ設けられると共に、真空断熱材の合計体積が外箱13と内箱14とによって形成される断熱空間体積の60%以下に設定されている。
【0025】
なお、真空断熱材16の合計体積を外箱13と内箱14とによって形成される空間体積の60%以上にすると、ウレタン等の発泡断熱材17が均一に充填できなくなり、発泡断熱材17中にボイドが発生して、その強度及び断熱性能を劣化させてしまうと共に、冷却器10の配管や冷気ファン11の配線が真空断熱材16に当接して真空断熱材16を傷つける恐れが出てくる等の問題が生ずる。
【0026】
冷蔵庫本体1の前面に備えられた各扉5〜8は、金属製の外板と、合成樹脂製の内板と、合成樹脂製の化粧枠と、これらの間に設けられた断熱壁とを備えている。この断熱壁は、外板に密着して設置された真空断熱材と、外板、内板及び化粧枠で形成される空間に充填された発泡断熱材とを備えて構成されている。この真空断熱材は、断熱箱体12側に設けられる真空断熱材16と同一構造であるので、重複する説明を省略する。
【0027】
次に、図3から図5を参照しながら、第1実施形態の真空断熱材16について具体的に説明する。図3は第1実施形態の真空断熱材16の製作途中である耳部19aを溶着した状態の概略図、図4は図3の真空断熱材16の一側端部の断面拡大図、図5は図3及び図4の真空断熱材16の耳部19aを折り曲げた完成品を外箱13に密着して組み込んで断熱壁15を構成した状態の要部断面拡大図である。
【0028】
第1実施形態の真空断熱材16は、有機系バインダーを含まない無機繊維重合体20をプラスチックフィルムからなる内袋21内に収納した芯材18と、芯材18を収納して内部を減圧し周縁部を溶着して封止したラミネートフィルムからなる外包材19とを備えて構成されている。この真空断熱材16は、無機繊維重合体20を内袋21内に収納しているので、無機繊維重合体20を有機系バインダーで固める必要がなく、有機系バインダーを含まない無機繊維重合体20とすることができ、これにより、有機系バインダーを含む無機繊維重合体20を用いる場合に比較して、ガスの発生を大幅に少なくすることができる。なお、真空断熱材16は平板状の矩形パネルで構成される。
【0029】
外包材19は、内側に設けられた溶着用プラスチック層と外側に設けられた金属層とを有するラミネートフィルムで構成されている。外包材19の金属層は、安価で軽量なアルミ箔層で構成されている。必要に応じて、このアルミ箔層の代わりに、アルミ蒸着層或いは他の金属箔層・金属蒸着層で構成してもよい。
【0030】
無機繊維重合体20として一般に安価で使用実績が多く信頼性の高いグラスウールが用いられる。また、この無機繊維重合体20は、中間部に吸着剤を配置する必要がないこともあって、安価に製作できるように1層のグラスウールで構成されている。なお、必要に応じて、グラスウールの代わりに、グラスファイバー、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維などを用いることが可能であると共に、無機繊維重合体20を積層体で構成するようにしてもよい。
【0031】
内袋21は水分やガス成分などを吸着する能力を保持するように構成されている。即ち、第1実施形態では、別体の吸着剤を設置する代わりに、プラスチックフィルムからなる内袋21に吸着剤を練り込み、水分やガス成分などを吸着する能力を内袋21自身が保持するように構成されている。具体的には、内袋21は、肉厚20μmの高密度ポリエチレンからなる合成樹脂フィルムが用いられ、このポリエチレンフィルムにモレキュラーシーブスを混錬して作製されている。係る構成によれば、別体の吸着剤を設置する場合と比較して、吸着剤の設置作業を省略できるので、真空断熱材16の生産性を向上することができると共に、吸着剤による凹凸の発生を防止することができる。
【0032】
ここで、第1実施形態における真空断熱材16及び冷蔵庫の断熱壁15の製造方法について説明する。
【0033】
1辺を開口した矩形状の内袋21内にバインダーを使用しない無機繊維重合体20を圧縮した状態で挿入し、内袋21内を開口辺側から減圧して内袋21の開口辺を溶着して芯材18を製作する。内袋21の開口辺の溶着は、内袋21の開口辺を両側からヒーターで加熱して溶融することにより行われる。開口辺の溶着後は耳部21aと呼ばれる。このようにして製作された芯材18は、減圧装置(真空引き装置)内から取り出すと、芯材18の表面に大気圧が加わるので、内圧と大気圧との差圧により内袋21が無機繊維重合体20の表面に密着され、差圧と無機繊維重合体20の復元力とがバランスした状態で所定の厚さの平板状パネルとなる。これによって、無機繊維重合体20にバインダーを使用する必要がなく、芯材18を容易に取り扱うことができる。
【0034】
次いで、1辺を開口した矩形状の外包材19(金属箔ラミネートフィルム)内に芯材18を収納し、外包材19内を開口辺側から芯材18内の圧力よりも低く減圧する。これにより、内袋21の一部が内外圧力差により破壊され、芯材18内も外包材19内と同じ圧力に減圧される。内袋21を圧力差を利用して開封する代わりに、道具を用いて開封するようにしてもよい。芯材18及び外包材19内を所定の圧力まで減圧した状態で、外包材19の開口辺を溶着することにより、図3及び図4に示す状態の真空断熱材16を製作する。なお、図3は図4に示す真空断熱材16を模式的に示す図である。外包材19の開口辺の溶着は、外包材19の開口辺を両側からヒーターで溶着用プラスチック層を加熱して溶融することにより行われる。この開口辺は溶着された後に耳部19aと呼ばれる。
【0035】
次いで、図5に示すように、外包材19の耳部19aを外包材19の一側平面部に接触するように折り曲げる。これによって、真空断熱材16の運搬作業や、外箱13と内箱14とで形成される空間への挿入作業などを容易にすることができると共に、発泡断熱材17の充填の障害とならないようにすることができる。
【0036】
次いで、耳部19aを折り曲げた状態の真空断熱材16を外箱13と内箱14とで形成される空間へ挿入し、図5に示すように、真空断熱材16の一側(耳部19aを折り曲げた側19cと反対側)19bを外箱13に密着させて設置する。この状態で、外箱13と内箱14とで形成される空間に発泡断熱材17を充填することにより、図5に示す断熱壁15が完成する。
【0037】
係る断熱壁15において、外包材19を通しての熱伝導(ヒートブリッジ)によって外箱13側の熱が内箱14側に伝導されるメカニズムに付いて説明する。真空断熱材16全体としては、上述したように発泡断熱材17の数倍の断熱性能をもっているが、外包材19のアルミ箔層の部分に限ればその断熱効果が小さい。通常、このアルミ箔の部分を通して熱が伝導されることをヒートブリッジと云っている。外包材19の表面側に設けられたアルミ箔層は、図5に示す如く外箱13に接触して配設されるので、外箱13の熱は、アルミ箔層により、外包材19の外箱側19bから耳部19aを経由して内箱側19cに伝導される。
【0038】
次に、係る構成の第1実施形態の真空断熱材16の断熱性能を、図6の比較例1と比較して示す図7及び図8を用いて説明する。図6は比較例1の真空断熱材の製作途中である耳部を溶着した状態の概略図、図7は比較例1及び第1〜第4実施形態の真空断熱材16の熱伝導率の経時変化を示す特性曲線図、図8は比較例1及び第1〜第4実施形態の真空断熱材16を組み込んだ断熱箱体の熱漏洩量の経時変化を示す特性曲線図である。
【0039】
まず、図6に示す比較例1の真空断熱材16の構成を説明する。以下の述べられている点以外については第1実施形態の真空断熱材16と基本的には同一であるので、重複する説明を省略する。比較例1の真空断熱材16は、バインダーを含む無機繊維重合体20と所定量の吸着剤28とを内袋21内に収納して芯材18を構成し、この芯材40をアルミ箔層を含む外包材19内に収納し、芯材18内及び外包材19内を減圧したものである。ガス成分や水分を吸着するための吸着剤28として合成ゼオライトであるモレキュラーシーブ13xが使われている。なお、比較例1の真空断熱材16は吸着剤28を無機繊維重合体20内に装着しているので、実際には、無機繊維重合体20及び外包材19がその部分で変形して真空断熱材16の表面に凸部が形成されることになるが、図6ではその変形を省略して示してある。
【0040】
かかる比較例1の真空断熱材16の熱伝導率を、英弘精機社製熱伝導率測定機オートλHC−074を用いて、作製時の初期から10年間放置相当に至るまでの加速試験による測定を行った結果、図7の比較例1に示す特性曲線が得られた。この図7の特性曲線から明らかなように、比較例1の真空断熱材16では、バインダーされた無機繊維重合体20から経年的にガス成分や水分が多量に抽出されるため、外包材19外部から侵入してくるガス成分や水分も合わせると、吸着剤28のみで完全にこれらを吸着することができず、熱伝導率が経時的に大幅に上昇してしまうものであった。
【0041】
また、比較例1の真空断熱材16を組み込んだ断熱箱体の熱漏洩量の経時変化を測定した結果、図8の比較例1に示す特性曲線が得られた。この図8の特性曲線から明らかなように、比較例1の断熱箱体では、その真空断熱材16の熱伝導率が経時的に大幅に上昇するのに伴って、熱漏洩量も経時的に大幅に上昇してしまうものであった。
【0042】
これに対して、第1実施形態の真空断熱材16の熱伝導率及び断熱箱体の熱漏洩量を同様に測定した結果、図7及び図8の第1実施形態に示す特性曲線が得られた。その特性曲線から明らかなように、第1実施形態の真空断熱材16の熱伝導率及び断熱箱体の熱漏洩量の経時的変化は、比較例1のそれと比較して、格段に良好なものであった。即ち、第1実施形態の真空断熱材16では、バインダーを含まない無機繊維重合体20を用いたことにより、製作時に無機繊維重合体20内に残存するガス成分や水分を少なくすることができると共に、バインダーからガス成分が経時的に抽出されることがなくなるので、内袋21にガス成分や水分を吸着する能力を保持させることで、真空断熱材16の熱伝導率の経時的劣化を抑制することができ、これに伴って断熱箱体12の熱漏洩量の経時的劣化も抑制することができる。
(第2〜第4実施形態)
次に、本発明の第2〜第4実施形態について、図7〜図11を用いて説明する。図9〜図11は本発明の第2〜第4実施形態の真空断熱材16を示す断面摸式図である。この第2〜第4実施形態は、以下に述べる点で比較する実施形態と相違し、その他の点については比較する実施形態と基本的には同一である。
[第2実施形態]
第2実施形態の真空断熱材16は、図9に示すように、第1実施形態の内袋21に吸着材を練り込む代わりに、外包材19を構成するプラスチック層の1つに吸着材を練り込み、具体的には、溶着用プラスチック層にモレキュラーシーブス13Xを練り込んだものである。この真空断熱材16は第1実施形態と同様に冷蔵庫に組み込まれて使用される。
【0043】
この第2実施形態の真空断熱材16によれば、その熱伝導率は、図7の第2実施形態の特性曲線に示すように、初期段階では第1実施形態の真空断熱材16の熱伝導率より経時的に劣化が若干進むものの、時間が経過するにつれて劣化が緩やかになり、途中で第1実施形態の真空断熱材16より良好となり、少なくとも10年経過相当時までこの傾向を維持する。これは、第1実施形態では内袋21に練り込んだ吸着材が無機繊維重合体20に起因するガス成分や水分に直ぐに効果を発揮するのに対し、第2実施形態では外包材19のプラスチック練り込んだ吸着剤が除々に効果を発揮することと、吸着材を混錬させたプラスチック層のバリア性をも副次的に高めて外部からのガス成分や水分の侵入量を抑える効果が働いていることと考えられる。
【0044】
また、第2実施形態の真空断熱材16を使用した断熱箱体12における熱漏洩量についても、図8の第2実施形態の特性曲線に示すように、熱伝導率と同様に経時変化する。
[第3実施形態]
第3実施形態の真空断熱材16は、図10に示すように、第1実施形態と第2実施形態とを組み合わせたものであり、内袋21に吸着材(モレキュラーシーブス13X)を練り込むと共に、外包材19を構成するプラスチック層の1つである溶着用プラスチック層に吸着材(モレキュラーシーブス13X)を練り込んだものである。この真空断熱材16は第1実施形態と同様に冷蔵庫に組み込まれて使用される。
【0045】
この第3実施形態の真空断熱材16によれば、その熱伝導率は、図7の第3実施形態の特性曲線に示すように、第1実施形態及び第2実施形態の真空断熱材16の熱伝導率の経時的な劣化に比較して、初期段階、途中段階及び10年相当時の何れの段階でも、格段にその劣化が緩やかとなる。
【0046】
また、第3実施形態の真空断熱材16を使用した断熱箱体12における熱漏洩量についても、図8の第3実施形態の特性曲線に示すように、熱伝導率と同様に良好な経時変化をする。
[第4実施形態]
第4実施形態の真空断熱材16は、図11に示すように、第3実施形態の外包材19のアルミ箔層の代わりにプラスチック層としたものであり、外包材19に金属箔層を全く含んでいないものである。この真空断熱材16は第1実施形態と同様に冷蔵庫に組み込まれて使用される。
【0047】
この第4実施形態の真空断熱材16によれば、その熱伝導率は、図7の第4実施形態の特性曲線に示すように、第3実施形態と比較してやや劣化が進むように推移するが、熱漏洩量は、図8の第4実施形態の特性曲線に示すように、初期値が検討品中では抜群の数値となった。これは、外包材19にアルミ箔層がないため、ヒートブリッジが軽減されたためだと考えられる。しかし、経年的にはやや鋭いカーブで劣化していき、最終的には比較例1と第1実施形態との中間程度の数値となった。これは、外包材19にアルミ箔層がないため、経年的に外包材19を通して外部からガスや水分が入りやすくなったためであると考えられる。
(第5〜第10実施形態)
次に、本発明の第5〜第10実施形態について、図12、図13及び表1を用いて、比較例2と比較しながら説明する。図12は比較例2の真空断熱材16を示す断面摸式図、図13は本発明の第5〜第10実施形態の真空断熱材16を示す断面摸式図である。
[比較例2]
比較例2の真空断熱材16は、図12に示すように、バインダーを有していない無機繊維重合体20を使用している点にて比較例1と相違し、その他の点では比較例1と基本的には同一であり、内袋21には撥水処理膜を有していないものである。この真空断熱材16は比較例1及び第1実施形態と同様に冷蔵庫に組み込まれて使用される。
[第5〜第10実施形態]
第5〜第10実施形態の真空断熱材16は、図13に示すように、比較例1の撥水処理膜を有していない内袋21の代わりに、撥水処理膜を有している内袋21を使用している点にて比較例2と相違し、その他の点では比較例2と基本的には同一である。なお、この真空断熱材16は、内袋21内に柔軟性を有する内袋21及び吸着剤28が収納された芯材18と、この芯材18を収納する金属箔ラミネートフィルム等で気体の透過を防止可能なフィルムからなる外包材19とを備えている。そして、内袋21は、溶着部と通気部とを有すると共に、表面に撥水処理膜を施している。外包材19はその内部を減圧し溶着密封されている。また、この真空断熱材16は比較例2及び第1実施形態と同様に冷蔵庫に組み込まれて使用される。
【0048】
撥水処理膜に用いられる材料としては、分子内にフッ素やシリコンの元素を含む撥水材料が挙げられる。特に、パーフルオロポリエーテル鎖及びアルコキシシラン残基を有するフッ素化合物が好ましい。撥水処理膜は、撥水材料を溶媒に溶かして内袋の表面に塗布し、溶媒を揮発させ撥水材料による薄膜を形成することによって可能である。
【0049】
撥水材料としては次の化学式に示すようなものが用いられる。
F[CF(CF3)−CF2O]n−CF(CF3)]−X−Si(OR)3[F(CF2CF2CF2O)n]−X−Si(OR)3
ここで、Xはパーフルオロエーテル鎖とアルコキシシラン残基との結合部位を示す。
【0050】
具体的には、以下の化学式に示す化合物1〜4が挙げられる。
(化合物1)
F[CF(CF3)−CF2O]n−CF(CF3)−CONH−(CH2)3−Si(OCH2CH3)3化合物1
(化合物2)
F[CF(CF3)−CF2O]n−CF(CF3)−CONH−(CH2)3−Si(OCH3)3
(化合物3)
F(CF2CF2CF2O)n−CF2CF2―CONH−(CH2)3−Si(OCH2CH3)3
(化合物4)
F(CF2CF2CF2O)n−CF2CF2−CONH−(CH2)3−Si(OCH3)3
上記化合物1〜4は以下に示す合成方法を実行することで得られる。
(化合物1の合成)
デュポン社製クライトックス157FS−L(平均分子量2500)(25重量部)を3M社製PF−5080(100重量部)に溶解し、これに塩化チオニル(20重量部)を加え、攪拌しながら48時間還流する。そして塩化チオニルとPF−5080をエバポレーターで揮発させクライトックス157FS−Lの酸クロライド(25重量部)を得る。
【0051】
更に、これにPF−5080(100重量部)、チッソ(株)製サイラエースS330(3重量部)、トリエチルアミン(3重量部)を加え、室温で20時間攪拌する。その後、反応液を昭和化学工業製ラジオライトファインフローAでろ過し、ろ液中のPF−5080をエバポレーターで揮発させ、化合物1(20重量部)を得る。
(化合物2の合成)
チッソ(株)製サイラエースS330(3重量部)の代わりにチッソ(株)製サイラエースS360(3重量部)を用いる以外は化合物1の合成と同様にして化合物2(20重量部)を得る。
(化合物3の合成)
デュポン社製クライトックス157FS−L(平均分子量2500)(25重量部)の代わりにダイキン工業社製デムナムSH(平均分子量3500)(35重量部)を用いる以外は化合物1の合成と同様にして化合物3(30重量部)を得る。
(化合物4の合成)
チッソ(株)製サイラエースS330(3重量部)の代わりにチッソ(株)製サイラエースS360(3重量部)を用い、デュポン社製クライトックス157FS−L(平均分子量2500)(25重量部)の代わりにダイキン工業社製デムナムSH(平均分子量3500)(35重量部)を用いる以外は化合物1の合成と同様にして化合物4(30重量部)を得る。
【0052】
以上に示した化合物1〜4をフッ素系の溶媒に溶解して基材(内袋)に塗布する。そして基材(内袋)を室温下もしくは加熱して基材表面の水酸基等と反応させて化学結合を形成し、撥水処理が完了する。
【0053】
撥水材料の濃度は平均分子量が大きい材料ほど高濃度に設定する。平均分子量が3000前後では濃度0.3重量%程度が好ましい。フッ素系の溶媒として、具体的には3M社製のFC−72、FC−77、PF−5060、PF−5080、HFE−7100、HFE−7200、デュポン社製バートレルXF等が挙げられる。撥水材料の塗布は、ディップコート法、スプレー法、ハケ塗り等で製膜する。
【0054】
具体的構成を後述する第5〜第10実施形態において、撥水材料膜によって内袋21内に水分が入ることが抑制され、これが熱伝導率の低減並びに熱伝導率の経時劣化の低減にも作用するものと考えられる。
【0055】
さらには、内袋21の成分を、バリア性の高い材料とする、又は加える(ラミネートする)ことにより、真空断熱材製造工程で、内袋21内に脱気された状態の芯材18を外包材19内に投入するまでの段取り時に内袋21表面から侵入していたガス成分を、少なくし得る可能性が高くなり、ガス成分による真空断熱材内の圧力低下が抑制され、経時的な熱伝導率劣化が少なくなる。
【0056】
ガスバリア性の高い材料としては、例えばクラレ社製エバール(エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂)やPVDC(ポリ塩化ビニリデン)等が挙げられる。エバールは例えば高密度ポリエチレンと比較すると、透湿度に関してはやや劣るが、酸素透過等のガスバリア性は優れており、撥水処理との組合せ或いは、高密度ポリエチレンとの組合せにより良好なラミネートフィルムとなる。PVDCは高密度ポリエチレンと比較すると、透湿度ならびに酸素透過度も優れており、撥水処理との組合せ或いは、高密度ポリエチレンとの組合せにより良好なラミネートフィルムとなる。
【0057】
第5〜第10実施形態によれば、冷蔵庫をはじめとする断熱箱体に用いる真空断熱材の内部材のうち、芯材18を収納する内袋の表面に撥水処理膜を施す又は内袋材をガスバリア性フィルムとすることにより、熱伝導率の低減及び熱伝導率の経時劣化低減を両立し、熱漏洩量が低減して省エネルギー化が可能な優れた冷蔵庫が得られる。
【0058】
以下に、比較例2及び第5〜第10実施形態の詳細を表1を参照しながら説明する。表1に、比較例2及び第5〜第10実施形態について、内袋に撥水処理膜が施された真空断熱材や、内袋が他のガスバリアフィルムとのラミネート成形品である真空断熱材の熱伝導率、熱伝導率の経時劣化、及び真空断熱材を挿入した冷蔵庫の熱漏洩量低減率を示す。
【0059】
【表1】
【0060】
[比較例2]
乾燥処理を施したガラス短繊維材20を、高密度ポリエチレン20μmの内袋21を用いて脱気成形した内部材25を、金属箔ラミネート外包材26内に挿入封止して作製した真空断熱材16の熱伝導率を測定した。その結果、熱伝導率は初期で2.5mW/m・K、10年経過相当時で11.0mW/m・Kの熱伝導率を示した。
[第5実施形態]
乾燥処理を施したガラス短繊維材20を、パーフルオロポリエーテル鎖とアルコキシラン残基との結合部位を有する上記の化合物1を用いて撥水処理をした高密度ポリエチレン20μmの内袋21を用いて脱気成形した内部材25を、金属箔ラミネート外包材26内に挿入封止して作製した真空断熱材16の熱伝導率を測定した。その結果、熱伝導率は初期で1.8mW/m・K、10年経過相当時で8.0mW/m・Kの熱伝導率を示した。
【0061】
その後、冷蔵庫の熱漏洩量を測定した。冷蔵庫の熱漏洩量は、冷蔵庫の動作状態と反対の温度条件を設定し庫内からの熱漏洩量として測定を行った。具体的には、−10℃の恒温室内に冷蔵庫を設置し、庫内温度を所定の測定条件(温度差)になるようヒーターにそれぞれ通電し冷蔵庫の消費電力と冷却性能を比較する温度条件下で測定した。その結果、撥水処理を行わない真空断熱材を用いた冷蔵庫(比較例2)と比べて、熱漏洩量で2.1%低減できる冷蔵庫を提供できた。
[第6実施形態]
乾燥処理を施したガラス短繊維材20を、パーフルオロポリエーテル鎖とアルコキシラン残基との結合部位を有する上記の化合物2を用いて撥水処理をした高密度ポリエチレン20μmの内袋21を用いて脱気成形した内部材25を、金属箔ラミネート外包材26内に挿入封止して作製した真空断熱材16の熱伝導率を測定した。その結果、熱伝導率は初期で2.4mW/m・K、10年経過相当時で8.6mW/m・Kの熱伝導率を示した。
【0062】
次に当該真空断熱材を実施例1と同様に冷蔵庫箱体に挿入して実機冷蔵庫の特性評価を行った。その結果、撥水処理を行わない真空断熱材を用いた冷蔵庫(比較例2)と比べて、熱漏洩量で2.0%低減できる冷蔵庫を提供できた。
[第7実施形態]
乾燥処理を施したガラス短繊維材20を、パーフルオロポリエーテル鎖とアルコキシラン残基との結合部位を有する上記の化合物3を用いて撥水処理をした高密度ポリエチレン20μmの内袋21を用いて脱気成形した内部材25を、金属箔ラミネート外包材26内に挿入封止して作製した真空断熱材16の熱伝導率を測定した。その結果、熱伝導率は初期で2.3mW/m・K、10年経過相当時で8.5mW/m・Kの熱伝導率を示した。
【0063】
次に当該真空断熱材を実施例1と同様に冷蔵庫箱体に挿入して実機冷蔵庫の特性評価を行った。その結果、撥水処理を行わない真空断熱材を用いた冷蔵庫(比較例2)と比べて、熱漏洩量で2.1%低減できる冷蔵庫を提供できた。
[第8実施形態]
乾燥処理を施したガラス短繊維材20を、パーフルオロポリエーテル鎖とアルコキシラン残基との結合部位を有する上記の化合物4を用いて撥水処理をした高密度ポリエチレン20μmの内袋21を用いて脱気成形した内部材25を、金属箔ラミネート外包材26内に挿入封止して作製した真空断熱材16の熱伝導率を測定した。その結果、熱伝導率は初期で2.1mW/m・K、10年経過相当時で8.3mW/m・Kの熱伝導率を示した。
【0064】
次に当該真空断熱材を実施例1と同様に冷蔵庫箱体に挿入して実機冷蔵庫の特性評価を行った。その結果、撥水処理を行わない真空断熱材を用いた冷蔵庫(比較例2)と比べて、熱漏洩量で2.2%低減できる冷蔵庫を提供できた。
[第8実施形態]
乾燥処理を施したガラス短繊維材20を、パーフルオロポリエーテル鎖とアルコキシラン残基との結合部位を有する上記の化合物1を用いて撥水処理をした高密度ポリエチレン20μmとクラレ社製エバール(エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂)30μmとをラミネート成形した内袋21を用いて脱気成形した内部材25を、金属箔ラミネート外包材26内に挿入封止して作製した真空断熱材16の熱伝導率を測定した。その結果、熱伝導率は初期で1.8mW/m・K、10年経過相当時で7.5mW/m・Kの熱伝導率を示した。
【0065】
次に当該真空断熱材を実施例1と同様に冷蔵庫箱体に挿入して実機冷蔵庫の特性評価を行った。その結果、撥水処理を行わない真空断熱材を用いた冷蔵庫(比較例2)と比べて、熱漏洩量で2.6%低減できる冷蔵庫を提供できた。
[第9実施形態]
乾燥処理を施したガラス短繊維材20を、パーフルオロポリエーテル鎖とアルコキシラン残基との結合部位を有する上記の化合物1を用いて撥水処理をした高密度ポリエチレン20μmとPVDC(ポリ塩化ビニリデン)30μmとをラミネート成形した内袋21を用いて脱気成形した内部材25を、金属箔ラミネート外包材26内に挿入封止して作製した真空断熱材16の熱伝導率を測定した。その結果、熱伝導率は初期で1.7mW/m・K、10年経過相当時で7.7mW/m・Kの熱伝導率を示した。
【0066】
次に当該真空断熱材を実施例1と同様に冷蔵庫箱体に挿入して実機冷蔵庫の特性評価を行った。その結果、撥水処理を行わない真空断熱材を用いた冷蔵庫(比較例2)と比べて、熱漏洩量で2.5%低減できる冷蔵庫を提供できた。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の第1実施形態の冷蔵庫の縦断面図である。
【図2】図1のA−A断面拡大図である。
【図3】第1実施形態の真空断熱材の製作途中である耳部を溶着した状態の概略図である。
【図4】図3の真空断熱材の一側端部の断面拡大図である。
【図5】図3及び図4の真空断熱材の耳部を折り曲げた完成品を外箱に密着して組み込んで断熱壁を構成した状態の要部断面拡大図である。
【図6】比較例1の真空断熱材を示す断面摸式図である。
【図7】比較例1及び第1〜第4実施形態の真空断熱材16の熱伝導率の経時変化を示す特性曲線図である。
【図8】比較例1及び第1〜第4実施形態の真空断熱材を組み込んだ断熱箱体の熱漏洩量の経時変化を示す特性曲線図である。
【図9】本発明の第2実施形態の真空断熱材を示す断面摸式図である。
【図10】本発明の第3実施形態の真空断熱材を示す断面摸式図である。
【図11】本発明の第4実施形態の真空断熱材を示す断面摸式図である。
【図12】比較例2の真空断熱材を示す断面摸式図である。
【図13】本発明の第5〜第10実施形態の真空断熱材を示す断面摸式図である。
【符号の説明】
【0068】
1…冷蔵庫本体、2…冷蔵室、3…野菜室、4a…第1の冷凍室、4b…第2の冷凍室、5…冷蔵室扉、6…野菜室扉、7…第1冷凍室の扉、8…第2冷凍室の扉、9…圧縮機、10…冷却器、11…冷気ファン、12…断熱箱体、13…外箱、14…内箱、15…断熱壁、16…真空断熱材、17…発泡断熱材、18…芯材、19…外包材、19a…耳部、20…無機繊維重合体、21…内袋、21a…耳部、28…吸着剤。
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空断熱材及びこれを用いた冷蔵庫に係り、特に有機系バインダーを用いない無機繊維集合体を芯材として用いた真空断熱材及びこれを用いた冷蔵庫に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化防止の観点から省エネルギーが強く望まれており、家庭用電化製品についても省エネルギー化は緊急の課題となっている。特に、冷蔵庫では熱を効率的に利用するという観点から、優れた断熱性能を有する断熱材が求められている。
【0003】
冷蔵庫の一般的な断熱体としては、外箱と内箱との間にウレタンフォームなどの発泡断熱材を充填した断熱体が広く用いられている。係る断熱体において断熱能力を増大するためには、発泡断熱材の厚さを増すことが必要であるが、冷蔵庫では省スペースや空間の有効利用が強く求められており、発泡断熱材を充填できる空間を増大することが困難であった。
【0004】
そこで、高性能な断熱材である真空断熱材と発泡断熱材とを併用して断熱体とすることが提案されている。ここで用いられる真空断熱材は、スペーサの役割を持つ芯材をガスバリア性を有する外包材中に挿入し、外包材の内部を減圧すると共に外包材の周縁部を封止した断熱材である。
【0005】
従来の真空断熱材としては、特開平9−138058号公報(特許文献1)に開示されたものがある。この特許文献1の真空断熱材は、グラスウール等の無機繊維重合体を有機系バインダーで固め成形してなる断熱材(芯材)と、活性炭またはゼオライトからなる吸着剤と、断熱材(芯材)及び吸着剤を覆う金属箔の層を積層してなるラミネートフィルム(外包材)とを備え、このラミネートフィルムの内部を減圧すると共にラミネートフィルムの縁部を封止して構成したものである。
【0006】
また、従来の真空断熱材としては、特開平4−337195号公報(特許文献2)に開示されたものがある。この特許文献2の真空断熱材は、前記無機質フアイバマットをプラスチックフィルム製の内袋内に収納し、この内袋の内部を減圧すると共にその内袋の周縁部を封止したものを内部材(芯材)とし、さらに、内部材(芯材)を収納部材(外包材)内に収納した後、内袋の密封を破壊すると共に収納部材内を減庄し、その収納部材の周縁部を封止して構成したものである。
【0007】
【特許文献1】特開平9−138058号公報
【特許文献2】特開平4−337195号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1の真空断熱材では、長期的な断熱性能を考慮した場合、有機系バインダーで固め成形してなる断熱材(芯材)を用いているため、この有機系バインダーに起因するガスが多量に長期間にわたって発生し、多量の吸着剤を使用する必要があると共に、吸着剤だけでこのガスを完全に吸着することが困難となり、経時的に外包材内の真空度が減じられ断熱性能が劣化するという問題があった。
【0009】
しかも、特許文献1の真空断熱材では、グラスウール等の繊維繊維重合体を有機系バインダーで固め成形してなる断熱材(芯材)を用い、断熱材(芯材)の一部を切欠いてその切欠き部に吸着剤を設置するようにしているため、断熱材(芯材)の一部を切欠く作業が面倒であると共に、その切欠き部に吸着剤を設置する作業が面倒であり、高価なものとなっていた。そこで、切欠き部のない断熱材(芯材)の上部あるいは中間部に吸着剤を設置することが考えられるが、断熱材(芯材)が固化されて柔軟性がないため、吸着剤の形状が真空断熱材の完成状態においても真空断熱材の表面に浮き出て凹凸が生じてしまうと共に、吸着剤を別途製作して真空断熱材内に設置する作業が依然として残ってしまうものであった。
【0010】
また、特許文献2の真空断熱材では、長期的な断熱性能を考慮した場合、内部材(芯材)を収納部材(外包材)内に収納する際に、内部材(芯材)を構成する内袋表面に水分が付着し、真空断熱材の完成状態で、その水分により経時的に真空度が減じられ断熱性能が劣化するという問題があった。さらには、特許文献2の真空断熱材では、内袋を通してガス成分や水分が進入して断熱性能を経時的に劣化させるという問題があった。
【0011】
本発明の目的は、吸着材による凹凸を生じさせることなく安価な構成で長期の断熱性能に優れた真空断熱材及びこれを用いた冷蔵庫を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述の目的を達成するための本発明の第1の態様は、プラスチックフィルムからなる内袋内にバインダーを含まない無機繊維重合体を収納した芯材と、前記芯材を収納して内部を減圧し周縁部を溶着して封止したラミネートフィルムからなる外包材とを備え、前記内袋または前記外包材にガス成分や水分を吸着する能力を保持させたものである。
【0013】
係る本発明の第1の態様におけるより好ましい具体的構成例は次の通りである。
(1)前記外包材は溶着用プラスチック層及び金属層を有するラミネートフィルムで構成されていること。
(2)前記内袋は吸着材を練り込んだプラスチックフィルムで構成されていること。
(3)前記外包材は吸着材を練り込んだプラスチック層を有するラミネートフィルムで構成されていること。
(4)前記無機繊維重合体はグラスウール、グラスファイバー、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維の何れかであること。
【0014】
また、本発明の第2の態様は、外箱と内箱とによって形成される断熱空間に真空断熱材を配設した冷蔵庫において、前記真空断熱材は、プラスチックフィルムからなる内袋内に有機系バインダーを含まない無機繊維重合体を収納して形成した芯材と、前記芯材を収納して内部を減圧し周縁部を溶着して封止したラミネートフィルムからなる外包材とを備え、前記内袋または前記外包材に水分やガス成分などを吸着する能力を保持させたものである。
【0015】
また、本発明の第3の態様は、プラスチックフィルムからなる内袋内にバインダーを含まない無機繊維重合体を収納した芯材と、前記芯材を収納して内部を減圧し周縁部を溶着して封止したラミネートフィルムからなる外包材とを備え、前記内袋は表面に撥水処理膜を有しているものである。
【0016】
係る本発明の第3の態様におけるより好ましい具体的構成例は次の通りである。
(1)前記内袋は、撥水処理膜を施したフィルムと、他のガスバリア性のプラスチックフィルムとのラミネートフィルムであること。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、吸着材による凹凸を生じさせることなく安価な構成で長期の断熱性能に優れた真空断熱材及びこれを用いた冷蔵庫を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の複数の実施形態について図を用いて説明する。各実施形態の図における同一符号は同一物または相当物を示す。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態の真空断熱材及びこれを用いた冷蔵庫に関して図1から図8を用いて説明する。
【0019】
まず、第1実施形態の冷蔵庫の全体に関して図1及び図2を参照しながら説明する。図1は本発明の第1実施形態の冷蔵庫の縦断面図、図2は図1のA−A断面拡大図である。
【0020】
冷蔵庫は、冷蔵庫本体1、冷凍サイクル及び制御装置などを備えて構成されている。冷蔵庫本体1は、異なる温度の複数の貯蔵室2、3、4(4a、4b)を有すると共に、各貯蔵室2、3、4(4a、4b)の前面開口部を開閉する複数の扉5〜8を備えている。複数の貯蔵室2、3、4(4a、4b)は、上から冷蔵室2、野菜室3、第1の冷凍室4a、第2の冷凍室4bの順に配列されている。符号4は図示していないが、第1の冷凍室4aと第2の冷凍室4bとを区別しない場合に、何れかまたは両方に対して用いる。複数の扉5〜8は、冷蔵室2、野菜室3、第1の冷凍室4a、第2の冷凍室4bに対応して、上から冷蔵室扉5、野菜室扉6、第1の冷凍室扉7、第2の冷凍室扉8の順に配列されている。而して、野菜室扉6、第1の冷凍室扉7、第2の冷凍室扉8は、引き出し式の扉であり、各々の部屋を構成する容器を扉引き出し時に扉と共に手前側に引き出すように構成されている。
【0021】
冷凍サイクルは、冷蔵庫本体1の背面側の底部に配置された圧縮機9と、冷凍室4の背面側に配置された冷却器10と、凝縮器(図示せず)と、キャピラリチューブ(図示せず)とを備えて構成されている。冷却器10の上方には冷気ファン11が配設されている。この冷気ファン11は、冷却器10で冷却された冷気を各貯蔵室2〜4へと送り、庫内を所定温度に冷却する。また、温度の異なる貯蔵室2〜4に対応する数だけ冷却器を設け、各冷却器により各貯蔵室2〜4を独立して冷却するようにしてもよい。
【0022】
冷蔵庫本体1の外郭を形成するのは断熱箱体12である。この断熱箱体12は、金属製の外板で構成する外箱13と、合成樹脂製の内板で構成する内箱14と、この両者13、14間に設けられた断熱壁15とを備えて構成されている。この断熱壁15は真空断熱材16と発泡断熱材17とを備えて構成されている。なお、外箱13の各面は概略平板状に形成され、内箱14の各面は凹凸を有したり付属品が装着されたりしているので、真空断熱材16は、外箱13の平板状部分に密着するように設置されるが、外箱13の角部または内箱14側に設置されてもよい。
【0023】
真空断熱材16は発泡断熱材17より高い断熱性能を有するものである。例えば、発泡断熱材17の熱伝導率は0.016W/mK程度であるのに対し、真空断熱材16の熱伝導率は発泡断熱材17の熱伝導率に比較して格段に低い0.002W/mK程度である。従って、真空断熱材16のみで断熱壁15を構成すれば、ウレタン等の発泡断熱材17のみで形成した断熱壁15と比較して、その厚さ寸法を約1/5から1/9程度の厚さ寸法とすることができる。しかし、真空断熱材16のみで断熱壁15を構成した断熱箱体12にあっては、外箱13と内箱14とが一体化されないため、断熱箱体12の強度が設計値を満足しないという問題が発生する。そこで、真空断熱材16が設置された外箱13と内箱14との間に、それ自身に接着力を有するウレタン等の発泡断熱材17を発泡充填し、発泡断熱材17を外箱13と内箱14とに接着し、外箱13と内箱14とを発泡断熱材17を介して一体化して断熱箱体12の強度を確保している。なお、発泡断熱材17の壁厚さ寸法を5mmから20mm程度、つまり、その平均厚さ寸法を15mm程度とし、局部的な薄いところでもウレタン等の発泡断熱材17が充填出来る5mm以上を確保して、断熱箱体12の強度が低下するのを防止している。
【0024】
また、真空断熱材16は、冷蔵庫の熱漏洩量の大きいところを重点的にカバーできる位置に配置して、断熱箱体12の強度と断熱壁15の断熱性能の両方に効果的な構成としている。そして、冷蔵庫の断熱空間における真空断熱材16の割合は、60%以下に設定されている。係る構成によって、強度、断熱性能及び信頼性を確保することができる。具体的には、真空断熱材16は冷蔵庫の両側壁内部と背面壁内部と上面壁内部と扉内部とにそれぞれ設けられると共に、真空断熱材の合計体積が外箱13と内箱14とによって形成される断熱空間体積の60%以下に設定されている。
【0025】
なお、真空断熱材16の合計体積を外箱13と内箱14とによって形成される空間体積の60%以上にすると、ウレタン等の発泡断熱材17が均一に充填できなくなり、発泡断熱材17中にボイドが発生して、その強度及び断熱性能を劣化させてしまうと共に、冷却器10の配管や冷気ファン11の配線が真空断熱材16に当接して真空断熱材16を傷つける恐れが出てくる等の問題が生ずる。
【0026】
冷蔵庫本体1の前面に備えられた各扉5〜8は、金属製の外板と、合成樹脂製の内板と、合成樹脂製の化粧枠と、これらの間に設けられた断熱壁とを備えている。この断熱壁は、外板に密着して設置された真空断熱材と、外板、内板及び化粧枠で形成される空間に充填された発泡断熱材とを備えて構成されている。この真空断熱材は、断熱箱体12側に設けられる真空断熱材16と同一構造であるので、重複する説明を省略する。
【0027】
次に、図3から図5を参照しながら、第1実施形態の真空断熱材16について具体的に説明する。図3は第1実施形態の真空断熱材16の製作途中である耳部19aを溶着した状態の概略図、図4は図3の真空断熱材16の一側端部の断面拡大図、図5は図3及び図4の真空断熱材16の耳部19aを折り曲げた完成品を外箱13に密着して組み込んで断熱壁15を構成した状態の要部断面拡大図である。
【0028】
第1実施形態の真空断熱材16は、有機系バインダーを含まない無機繊維重合体20をプラスチックフィルムからなる内袋21内に収納した芯材18と、芯材18を収納して内部を減圧し周縁部を溶着して封止したラミネートフィルムからなる外包材19とを備えて構成されている。この真空断熱材16は、無機繊維重合体20を内袋21内に収納しているので、無機繊維重合体20を有機系バインダーで固める必要がなく、有機系バインダーを含まない無機繊維重合体20とすることができ、これにより、有機系バインダーを含む無機繊維重合体20を用いる場合に比較して、ガスの発生を大幅に少なくすることができる。なお、真空断熱材16は平板状の矩形パネルで構成される。
【0029】
外包材19は、内側に設けられた溶着用プラスチック層と外側に設けられた金属層とを有するラミネートフィルムで構成されている。外包材19の金属層は、安価で軽量なアルミ箔層で構成されている。必要に応じて、このアルミ箔層の代わりに、アルミ蒸着層或いは他の金属箔層・金属蒸着層で構成してもよい。
【0030】
無機繊維重合体20として一般に安価で使用実績が多く信頼性の高いグラスウールが用いられる。また、この無機繊維重合体20は、中間部に吸着剤を配置する必要がないこともあって、安価に製作できるように1層のグラスウールで構成されている。なお、必要に応じて、グラスウールの代わりに、グラスファイバー、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維などを用いることが可能であると共に、無機繊維重合体20を積層体で構成するようにしてもよい。
【0031】
内袋21は水分やガス成分などを吸着する能力を保持するように構成されている。即ち、第1実施形態では、別体の吸着剤を設置する代わりに、プラスチックフィルムからなる内袋21に吸着剤を練り込み、水分やガス成分などを吸着する能力を内袋21自身が保持するように構成されている。具体的には、内袋21は、肉厚20μmの高密度ポリエチレンからなる合成樹脂フィルムが用いられ、このポリエチレンフィルムにモレキュラーシーブスを混錬して作製されている。係る構成によれば、別体の吸着剤を設置する場合と比較して、吸着剤の設置作業を省略できるので、真空断熱材16の生産性を向上することができると共に、吸着剤による凹凸の発生を防止することができる。
【0032】
ここで、第1実施形態における真空断熱材16及び冷蔵庫の断熱壁15の製造方法について説明する。
【0033】
1辺を開口した矩形状の内袋21内にバインダーを使用しない無機繊維重合体20を圧縮した状態で挿入し、内袋21内を開口辺側から減圧して内袋21の開口辺を溶着して芯材18を製作する。内袋21の開口辺の溶着は、内袋21の開口辺を両側からヒーターで加熱して溶融することにより行われる。開口辺の溶着後は耳部21aと呼ばれる。このようにして製作された芯材18は、減圧装置(真空引き装置)内から取り出すと、芯材18の表面に大気圧が加わるので、内圧と大気圧との差圧により内袋21が無機繊維重合体20の表面に密着され、差圧と無機繊維重合体20の復元力とがバランスした状態で所定の厚さの平板状パネルとなる。これによって、無機繊維重合体20にバインダーを使用する必要がなく、芯材18を容易に取り扱うことができる。
【0034】
次いで、1辺を開口した矩形状の外包材19(金属箔ラミネートフィルム)内に芯材18を収納し、外包材19内を開口辺側から芯材18内の圧力よりも低く減圧する。これにより、内袋21の一部が内外圧力差により破壊され、芯材18内も外包材19内と同じ圧力に減圧される。内袋21を圧力差を利用して開封する代わりに、道具を用いて開封するようにしてもよい。芯材18及び外包材19内を所定の圧力まで減圧した状態で、外包材19の開口辺を溶着することにより、図3及び図4に示す状態の真空断熱材16を製作する。なお、図3は図4に示す真空断熱材16を模式的に示す図である。外包材19の開口辺の溶着は、外包材19の開口辺を両側からヒーターで溶着用プラスチック層を加熱して溶融することにより行われる。この開口辺は溶着された後に耳部19aと呼ばれる。
【0035】
次いで、図5に示すように、外包材19の耳部19aを外包材19の一側平面部に接触するように折り曲げる。これによって、真空断熱材16の運搬作業や、外箱13と内箱14とで形成される空間への挿入作業などを容易にすることができると共に、発泡断熱材17の充填の障害とならないようにすることができる。
【0036】
次いで、耳部19aを折り曲げた状態の真空断熱材16を外箱13と内箱14とで形成される空間へ挿入し、図5に示すように、真空断熱材16の一側(耳部19aを折り曲げた側19cと反対側)19bを外箱13に密着させて設置する。この状態で、外箱13と内箱14とで形成される空間に発泡断熱材17を充填することにより、図5に示す断熱壁15が完成する。
【0037】
係る断熱壁15において、外包材19を通しての熱伝導(ヒートブリッジ)によって外箱13側の熱が内箱14側に伝導されるメカニズムに付いて説明する。真空断熱材16全体としては、上述したように発泡断熱材17の数倍の断熱性能をもっているが、外包材19のアルミ箔層の部分に限ればその断熱効果が小さい。通常、このアルミ箔の部分を通して熱が伝導されることをヒートブリッジと云っている。外包材19の表面側に設けられたアルミ箔層は、図5に示す如く外箱13に接触して配設されるので、外箱13の熱は、アルミ箔層により、外包材19の外箱側19bから耳部19aを経由して内箱側19cに伝導される。
【0038】
次に、係る構成の第1実施形態の真空断熱材16の断熱性能を、図6の比較例1と比較して示す図7及び図8を用いて説明する。図6は比較例1の真空断熱材の製作途中である耳部を溶着した状態の概略図、図7は比較例1及び第1〜第4実施形態の真空断熱材16の熱伝導率の経時変化を示す特性曲線図、図8は比較例1及び第1〜第4実施形態の真空断熱材16を組み込んだ断熱箱体の熱漏洩量の経時変化を示す特性曲線図である。
【0039】
まず、図6に示す比較例1の真空断熱材16の構成を説明する。以下の述べられている点以外については第1実施形態の真空断熱材16と基本的には同一であるので、重複する説明を省略する。比較例1の真空断熱材16は、バインダーを含む無機繊維重合体20と所定量の吸着剤28とを内袋21内に収納して芯材18を構成し、この芯材40をアルミ箔層を含む外包材19内に収納し、芯材18内及び外包材19内を減圧したものである。ガス成分や水分を吸着するための吸着剤28として合成ゼオライトであるモレキュラーシーブ13xが使われている。なお、比較例1の真空断熱材16は吸着剤28を無機繊維重合体20内に装着しているので、実際には、無機繊維重合体20及び外包材19がその部分で変形して真空断熱材16の表面に凸部が形成されることになるが、図6ではその変形を省略して示してある。
【0040】
かかる比較例1の真空断熱材16の熱伝導率を、英弘精機社製熱伝導率測定機オートλHC−074を用いて、作製時の初期から10年間放置相当に至るまでの加速試験による測定を行った結果、図7の比較例1に示す特性曲線が得られた。この図7の特性曲線から明らかなように、比較例1の真空断熱材16では、バインダーされた無機繊維重合体20から経年的にガス成分や水分が多量に抽出されるため、外包材19外部から侵入してくるガス成分や水分も合わせると、吸着剤28のみで完全にこれらを吸着することができず、熱伝導率が経時的に大幅に上昇してしまうものであった。
【0041】
また、比較例1の真空断熱材16を組み込んだ断熱箱体の熱漏洩量の経時変化を測定した結果、図8の比較例1に示す特性曲線が得られた。この図8の特性曲線から明らかなように、比較例1の断熱箱体では、その真空断熱材16の熱伝導率が経時的に大幅に上昇するのに伴って、熱漏洩量も経時的に大幅に上昇してしまうものであった。
【0042】
これに対して、第1実施形態の真空断熱材16の熱伝導率及び断熱箱体の熱漏洩量を同様に測定した結果、図7及び図8の第1実施形態に示す特性曲線が得られた。その特性曲線から明らかなように、第1実施形態の真空断熱材16の熱伝導率及び断熱箱体の熱漏洩量の経時的変化は、比較例1のそれと比較して、格段に良好なものであった。即ち、第1実施形態の真空断熱材16では、バインダーを含まない無機繊維重合体20を用いたことにより、製作時に無機繊維重合体20内に残存するガス成分や水分を少なくすることができると共に、バインダーからガス成分が経時的に抽出されることがなくなるので、内袋21にガス成分や水分を吸着する能力を保持させることで、真空断熱材16の熱伝導率の経時的劣化を抑制することができ、これに伴って断熱箱体12の熱漏洩量の経時的劣化も抑制することができる。
(第2〜第4実施形態)
次に、本発明の第2〜第4実施形態について、図7〜図11を用いて説明する。図9〜図11は本発明の第2〜第4実施形態の真空断熱材16を示す断面摸式図である。この第2〜第4実施形態は、以下に述べる点で比較する実施形態と相違し、その他の点については比較する実施形態と基本的には同一である。
[第2実施形態]
第2実施形態の真空断熱材16は、図9に示すように、第1実施形態の内袋21に吸着材を練り込む代わりに、外包材19を構成するプラスチック層の1つに吸着材を練り込み、具体的には、溶着用プラスチック層にモレキュラーシーブス13Xを練り込んだものである。この真空断熱材16は第1実施形態と同様に冷蔵庫に組み込まれて使用される。
【0043】
この第2実施形態の真空断熱材16によれば、その熱伝導率は、図7の第2実施形態の特性曲線に示すように、初期段階では第1実施形態の真空断熱材16の熱伝導率より経時的に劣化が若干進むものの、時間が経過するにつれて劣化が緩やかになり、途中で第1実施形態の真空断熱材16より良好となり、少なくとも10年経過相当時までこの傾向を維持する。これは、第1実施形態では内袋21に練り込んだ吸着材が無機繊維重合体20に起因するガス成分や水分に直ぐに効果を発揮するのに対し、第2実施形態では外包材19のプラスチック練り込んだ吸着剤が除々に効果を発揮することと、吸着材を混錬させたプラスチック層のバリア性をも副次的に高めて外部からのガス成分や水分の侵入量を抑える効果が働いていることと考えられる。
【0044】
また、第2実施形態の真空断熱材16を使用した断熱箱体12における熱漏洩量についても、図8の第2実施形態の特性曲線に示すように、熱伝導率と同様に経時変化する。
[第3実施形態]
第3実施形態の真空断熱材16は、図10に示すように、第1実施形態と第2実施形態とを組み合わせたものであり、内袋21に吸着材(モレキュラーシーブス13X)を練り込むと共に、外包材19を構成するプラスチック層の1つである溶着用プラスチック層に吸着材(モレキュラーシーブス13X)を練り込んだものである。この真空断熱材16は第1実施形態と同様に冷蔵庫に組み込まれて使用される。
【0045】
この第3実施形態の真空断熱材16によれば、その熱伝導率は、図7の第3実施形態の特性曲線に示すように、第1実施形態及び第2実施形態の真空断熱材16の熱伝導率の経時的な劣化に比較して、初期段階、途中段階及び10年相当時の何れの段階でも、格段にその劣化が緩やかとなる。
【0046】
また、第3実施形態の真空断熱材16を使用した断熱箱体12における熱漏洩量についても、図8の第3実施形態の特性曲線に示すように、熱伝導率と同様に良好な経時変化をする。
[第4実施形態]
第4実施形態の真空断熱材16は、図11に示すように、第3実施形態の外包材19のアルミ箔層の代わりにプラスチック層としたものであり、外包材19に金属箔層を全く含んでいないものである。この真空断熱材16は第1実施形態と同様に冷蔵庫に組み込まれて使用される。
【0047】
この第4実施形態の真空断熱材16によれば、その熱伝導率は、図7の第4実施形態の特性曲線に示すように、第3実施形態と比較してやや劣化が進むように推移するが、熱漏洩量は、図8の第4実施形態の特性曲線に示すように、初期値が検討品中では抜群の数値となった。これは、外包材19にアルミ箔層がないため、ヒートブリッジが軽減されたためだと考えられる。しかし、経年的にはやや鋭いカーブで劣化していき、最終的には比較例1と第1実施形態との中間程度の数値となった。これは、外包材19にアルミ箔層がないため、経年的に外包材19を通して外部からガスや水分が入りやすくなったためであると考えられる。
(第5〜第10実施形態)
次に、本発明の第5〜第10実施形態について、図12、図13及び表1を用いて、比較例2と比較しながら説明する。図12は比較例2の真空断熱材16を示す断面摸式図、図13は本発明の第5〜第10実施形態の真空断熱材16を示す断面摸式図である。
[比較例2]
比較例2の真空断熱材16は、図12に示すように、バインダーを有していない無機繊維重合体20を使用している点にて比較例1と相違し、その他の点では比較例1と基本的には同一であり、内袋21には撥水処理膜を有していないものである。この真空断熱材16は比較例1及び第1実施形態と同様に冷蔵庫に組み込まれて使用される。
[第5〜第10実施形態]
第5〜第10実施形態の真空断熱材16は、図13に示すように、比較例1の撥水処理膜を有していない内袋21の代わりに、撥水処理膜を有している内袋21を使用している点にて比較例2と相違し、その他の点では比較例2と基本的には同一である。なお、この真空断熱材16は、内袋21内に柔軟性を有する内袋21及び吸着剤28が収納された芯材18と、この芯材18を収納する金属箔ラミネートフィルム等で気体の透過を防止可能なフィルムからなる外包材19とを備えている。そして、内袋21は、溶着部と通気部とを有すると共に、表面に撥水処理膜を施している。外包材19はその内部を減圧し溶着密封されている。また、この真空断熱材16は比較例2及び第1実施形態と同様に冷蔵庫に組み込まれて使用される。
【0048】
撥水処理膜に用いられる材料としては、分子内にフッ素やシリコンの元素を含む撥水材料が挙げられる。特に、パーフルオロポリエーテル鎖及びアルコキシシラン残基を有するフッ素化合物が好ましい。撥水処理膜は、撥水材料を溶媒に溶かして内袋の表面に塗布し、溶媒を揮発させ撥水材料による薄膜を形成することによって可能である。
【0049】
撥水材料としては次の化学式に示すようなものが用いられる。
F[CF(CF3)−CF2O]n−CF(CF3)]−X−Si(OR)3[F(CF2CF2CF2O)n]−X−Si(OR)3
ここで、Xはパーフルオロエーテル鎖とアルコキシシラン残基との結合部位を示す。
【0050】
具体的には、以下の化学式に示す化合物1〜4が挙げられる。
(化合物1)
F[CF(CF3)−CF2O]n−CF(CF3)−CONH−(CH2)3−Si(OCH2CH3)3化合物1
(化合物2)
F[CF(CF3)−CF2O]n−CF(CF3)−CONH−(CH2)3−Si(OCH3)3
(化合物3)
F(CF2CF2CF2O)n−CF2CF2―CONH−(CH2)3−Si(OCH2CH3)3
(化合物4)
F(CF2CF2CF2O)n−CF2CF2−CONH−(CH2)3−Si(OCH3)3
上記化合物1〜4は以下に示す合成方法を実行することで得られる。
(化合物1の合成)
デュポン社製クライトックス157FS−L(平均分子量2500)(25重量部)を3M社製PF−5080(100重量部)に溶解し、これに塩化チオニル(20重量部)を加え、攪拌しながら48時間還流する。そして塩化チオニルとPF−5080をエバポレーターで揮発させクライトックス157FS−Lの酸クロライド(25重量部)を得る。
【0051】
更に、これにPF−5080(100重量部)、チッソ(株)製サイラエースS330(3重量部)、トリエチルアミン(3重量部)を加え、室温で20時間攪拌する。その後、反応液を昭和化学工業製ラジオライトファインフローAでろ過し、ろ液中のPF−5080をエバポレーターで揮発させ、化合物1(20重量部)を得る。
(化合物2の合成)
チッソ(株)製サイラエースS330(3重量部)の代わりにチッソ(株)製サイラエースS360(3重量部)を用いる以外は化合物1の合成と同様にして化合物2(20重量部)を得る。
(化合物3の合成)
デュポン社製クライトックス157FS−L(平均分子量2500)(25重量部)の代わりにダイキン工業社製デムナムSH(平均分子量3500)(35重量部)を用いる以外は化合物1の合成と同様にして化合物3(30重量部)を得る。
(化合物4の合成)
チッソ(株)製サイラエースS330(3重量部)の代わりにチッソ(株)製サイラエースS360(3重量部)を用い、デュポン社製クライトックス157FS−L(平均分子量2500)(25重量部)の代わりにダイキン工業社製デムナムSH(平均分子量3500)(35重量部)を用いる以外は化合物1の合成と同様にして化合物4(30重量部)を得る。
【0052】
以上に示した化合物1〜4をフッ素系の溶媒に溶解して基材(内袋)に塗布する。そして基材(内袋)を室温下もしくは加熱して基材表面の水酸基等と反応させて化学結合を形成し、撥水処理が完了する。
【0053】
撥水材料の濃度は平均分子量が大きい材料ほど高濃度に設定する。平均分子量が3000前後では濃度0.3重量%程度が好ましい。フッ素系の溶媒として、具体的には3M社製のFC−72、FC−77、PF−5060、PF−5080、HFE−7100、HFE−7200、デュポン社製バートレルXF等が挙げられる。撥水材料の塗布は、ディップコート法、スプレー法、ハケ塗り等で製膜する。
【0054】
具体的構成を後述する第5〜第10実施形態において、撥水材料膜によって内袋21内に水分が入ることが抑制され、これが熱伝導率の低減並びに熱伝導率の経時劣化の低減にも作用するものと考えられる。
【0055】
さらには、内袋21の成分を、バリア性の高い材料とする、又は加える(ラミネートする)ことにより、真空断熱材製造工程で、内袋21内に脱気された状態の芯材18を外包材19内に投入するまでの段取り時に内袋21表面から侵入していたガス成分を、少なくし得る可能性が高くなり、ガス成分による真空断熱材内の圧力低下が抑制され、経時的な熱伝導率劣化が少なくなる。
【0056】
ガスバリア性の高い材料としては、例えばクラレ社製エバール(エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂)やPVDC(ポリ塩化ビニリデン)等が挙げられる。エバールは例えば高密度ポリエチレンと比較すると、透湿度に関してはやや劣るが、酸素透過等のガスバリア性は優れており、撥水処理との組合せ或いは、高密度ポリエチレンとの組合せにより良好なラミネートフィルムとなる。PVDCは高密度ポリエチレンと比較すると、透湿度ならびに酸素透過度も優れており、撥水処理との組合せ或いは、高密度ポリエチレンとの組合せにより良好なラミネートフィルムとなる。
【0057】
第5〜第10実施形態によれば、冷蔵庫をはじめとする断熱箱体に用いる真空断熱材の内部材のうち、芯材18を収納する内袋の表面に撥水処理膜を施す又は内袋材をガスバリア性フィルムとすることにより、熱伝導率の低減及び熱伝導率の経時劣化低減を両立し、熱漏洩量が低減して省エネルギー化が可能な優れた冷蔵庫が得られる。
【0058】
以下に、比較例2及び第5〜第10実施形態の詳細を表1を参照しながら説明する。表1に、比較例2及び第5〜第10実施形態について、内袋に撥水処理膜が施された真空断熱材や、内袋が他のガスバリアフィルムとのラミネート成形品である真空断熱材の熱伝導率、熱伝導率の経時劣化、及び真空断熱材を挿入した冷蔵庫の熱漏洩量低減率を示す。
【0059】
【表1】
【0060】
[比較例2]
乾燥処理を施したガラス短繊維材20を、高密度ポリエチレン20μmの内袋21を用いて脱気成形した内部材25を、金属箔ラミネート外包材26内に挿入封止して作製した真空断熱材16の熱伝導率を測定した。その結果、熱伝導率は初期で2.5mW/m・K、10年経過相当時で11.0mW/m・Kの熱伝導率を示した。
[第5実施形態]
乾燥処理を施したガラス短繊維材20を、パーフルオロポリエーテル鎖とアルコキシラン残基との結合部位を有する上記の化合物1を用いて撥水処理をした高密度ポリエチレン20μmの内袋21を用いて脱気成形した内部材25を、金属箔ラミネート外包材26内に挿入封止して作製した真空断熱材16の熱伝導率を測定した。その結果、熱伝導率は初期で1.8mW/m・K、10年経過相当時で8.0mW/m・Kの熱伝導率を示した。
【0061】
その後、冷蔵庫の熱漏洩量を測定した。冷蔵庫の熱漏洩量は、冷蔵庫の動作状態と反対の温度条件を設定し庫内からの熱漏洩量として測定を行った。具体的には、−10℃の恒温室内に冷蔵庫を設置し、庫内温度を所定の測定条件(温度差)になるようヒーターにそれぞれ通電し冷蔵庫の消費電力と冷却性能を比較する温度条件下で測定した。その結果、撥水処理を行わない真空断熱材を用いた冷蔵庫(比較例2)と比べて、熱漏洩量で2.1%低減できる冷蔵庫を提供できた。
[第6実施形態]
乾燥処理を施したガラス短繊維材20を、パーフルオロポリエーテル鎖とアルコキシラン残基との結合部位を有する上記の化合物2を用いて撥水処理をした高密度ポリエチレン20μmの内袋21を用いて脱気成形した内部材25を、金属箔ラミネート外包材26内に挿入封止して作製した真空断熱材16の熱伝導率を測定した。その結果、熱伝導率は初期で2.4mW/m・K、10年経過相当時で8.6mW/m・Kの熱伝導率を示した。
【0062】
次に当該真空断熱材を実施例1と同様に冷蔵庫箱体に挿入して実機冷蔵庫の特性評価を行った。その結果、撥水処理を行わない真空断熱材を用いた冷蔵庫(比較例2)と比べて、熱漏洩量で2.0%低減できる冷蔵庫を提供できた。
[第7実施形態]
乾燥処理を施したガラス短繊維材20を、パーフルオロポリエーテル鎖とアルコキシラン残基との結合部位を有する上記の化合物3を用いて撥水処理をした高密度ポリエチレン20μmの内袋21を用いて脱気成形した内部材25を、金属箔ラミネート外包材26内に挿入封止して作製した真空断熱材16の熱伝導率を測定した。その結果、熱伝導率は初期で2.3mW/m・K、10年経過相当時で8.5mW/m・Kの熱伝導率を示した。
【0063】
次に当該真空断熱材を実施例1と同様に冷蔵庫箱体に挿入して実機冷蔵庫の特性評価を行った。その結果、撥水処理を行わない真空断熱材を用いた冷蔵庫(比較例2)と比べて、熱漏洩量で2.1%低減できる冷蔵庫を提供できた。
[第8実施形態]
乾燥処理を施したガラス短繊維材20を、パーフルオロポリエーテル鎖とアルコキシラン残基との結合部位を有する上記の化合物4を用いて撥水処理をした高密度ポリエチレン20μmの内袋21を用いて脱気成形した内部材25を、金属箔ラミネート外包材26内に挿入封止して作製した真空断熱材16の熱伝導率を測定した。その結果、熱伝導率は初期で2.1mW/m・K、10年経過相当時で8.3mW/m・Kの熱伝導率を示した。
【0064】
次に当該真空断熱材を実施例1と同様に冷蔵庫箱体に挿入して実機冷蔵庫の特性評価を行った。その結果、撥水処理を行わない真空断熱材を用いた冷蔵庫(比較例2)と比べて、熱漏洩量で2.2%低減できる冷蔵庫を提供できた。
[第8実施形態]
乾燥処理を施したガラス短繊維材20を、パーフルオロポリエーテル鎖とアルコキシラン残基との結合部位を有する上記の化合物1を用いて撥水処理をした高密度ポリエチレン20μmとクラレ社製エバール(エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂)30μmとをラミネート成形した内袋21を用いて脱気成形した内部材25を、金属箔ラミネート外包材26内に挿入封止して作製した真空断熱材16の熱伝導率を測定した。その結果、熱伝導率は初期で1.8mW/m・K、10年経過相当時で7.5mW/m・Kの熱伝導率を示した。
【0065】
次に当該真空断熱材を実施例1と同様に冷蔵庫箱体に挿入して実機冷蔵庫の特性評価を行った。その結果、撥水処理を行わない真空断熱材を用いた冷蔵庫(比較例2)と比べて、熱漏洩量で2.6%低減できる冷蔵庫を提供できた。
[第9実施形態]
乾燥処理を施したガラス短繊維材20を、パーフルオロポリエーテル鎖とアルコキシラン残基との結合部位を有する上記の化合物1を用いて撥水処理をした高密度ポリエチレン20μmとPVDC(ポリ塩化ビニリデン)30μmとをラミネート成形した内袋21を用いて脱気成形した内部材25を、金属箔ラミネート外包材26内に挿入封止して作製した真空断熱材16の熱伝導率を測定した。その結果、熱伝導率は初期で1.7mW/m・K、10年経過相当時で7.7mW/m・Kの熱伝導率を示した。
【0066】
次に当該真空断熱材を実施例1と同様に冷蔵庫箱体に挿入して実機冷蔵庫の特性評価を行った。その結果、撥水処理を行わない真空断熱材を用いた冷蔵庫(比較例2)と比べて、熱漏洩量で2.5%低減できる冷蔵庫を提供できた。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の第1実施形態の冷蔵庫の縦断面図である。
【図2】図1のA−A断面拡大図である。
【図3】第1実施形態の真空断熱材の製作途中である耳部を溶着した状態の概略図である。
【図4】図3の真空断熱材の一側端部の断面拡大図である。
【図5】図3及び図4の真空断熱材の耳部を折り曲げた完成品を外箱に密着して組み込んで断熱壁を構成した状態の要部断面拡大図である。
【図6】比較例1の真空断熱材を示す断面摸式図である。
【図7】比較例1及び第1〜第4実施形態の真空断熱材16の熱伝導率の経時変化を示す特性曲線図である。
【図8】比較例1及び第1〜第4実施形態の真空断熱材を組み込んだ断熱箱体の熱漏洩量の経時変化を示す特性曲線図である。
【図9】本発明の第2実施形態の真空断熱材を示す断面摸式図である。
【図10】本発明の第3実施形態の真空断熱材を示す断面摸式図である。
【図11】本発明の第4実施形態の真空断熱材を示す断面摸式図である。
【図12】比較例2の真空断熱材を示す断面摸式図である。
【図13】本発明の第5〜第10実施形態の真空断熱材を示す断面摸式図である。
【符号の説明】
【0068】
1…冷蔵庫本体、2…冷蔵室、3…野菜室、4a…第1の冷凍室、4b…第2の冷凍室、5…冷蔵室扉、6…野菜室扉、7…第1冷凍室の扉、8…第2冷凍室の扉、9…圧縮機、10…冷却器、11…冷気ファン、12…断熱箱体、13…外箱、14…内箱、15…断熱壁、16…真空断熱材、17…発泡断熱材、18…芯材、19…外包材、19a…耳部、20…無機繊維重合体、21…内袋、21a…耳部、28…吸着剤。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックフィルムからなる内袋内にバインダーを含まない無機繊維重合体を収納した芯材と、
前記芯材を収納して内部を減圧し周縁部を溶着して封止したラミネートフィルムからなる外包材とを備え、
前記内袋または前記外包材にガス成分や水分を吸着する能力を保持させた
ことを特徴とした真空断熱材。
【請求項2】
請求項1に記載の真空断熱材において、前記外包材は溶着用プラスチック層及び金属層を有するラミネートフィルムで構成されていることを特徴とする真空断熱材。
【請求項3】
請求項1または2に記載の真空断熱材において、前記内袋は吸着材を練り込んだプラスチックフィルムで構成されていることを特徴とする真空断熱材。
【請求項4】
請求項1から3の何れかに記載の真空断熱材において、前記外包材は吸着材を練り込んだプラスチック層を有するラミネートフィルムで構成されていることを特徴とする真空断熱材。
【請求項5】
請求項1から4の何れかに記載の真空断熱材において、前記無機繊維重合体はグラスウール、グラスファイバー、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維の何れかであることを特徴とする真空断熱材。
【請求項6】
外箱と内箱とによって形成される断熱空間に真空断熱材を配設した冷蔵庫において、
前記真空断熱材は、プラスチックフィルムからなる内袋内に有機系バインダーを含まない無機繊維重合体を収納して形成した芯材と、前記芯材を収納して内部を減圧し周縁部を溶着して封止したラミネートフィルムからなる外包材とを備え、前記内袋または前記外包材に水分やガス成分などを吸着する能力を保持させたものであることを特徴とする冷蔵庫。
【請求項7】
プラスチックフィルムからなる内袋内にバインダーを含まない無機繊維重合体を収納した芯材と、
前記芯材を収納して内部を減圧し周縁部を溶着して封止したラミネートフィルムからなる外包材とを備え、
前記内袋は表面に撥水処理膜を有している
ことを特徴とする真空断熱材。
【請求項8】
請求項7に記載の真空断熱材において、前記内袋は、撥水処理膜を施したフィルムと、他のガスバリア性のプラスチックフィルムとのラミネートフィルムであることを特徴とする真空断熱材。
【請求項1】
プラスチックフィルムからなる内袋内にバインダーを含まない無機繊維重合体を収納した芯材と、
前記芯材を収納して内部を減圧し周縁部を溶着して封止したラミネートフィルムからなる外包材とを備え、
前記内袋または前記外包材にガス成分や水分を吸着する能力を保持させた
ことを特徴とした真空断熱材。
【請求項2】
請求項1に記載の真空断熱材において、前記外包材は溶着用プラスチック層及び金属層を有するラミネートフィルムで構成されていることを特徴とする真空断熱材。
【請求項3】
請求項1または2に記載の真空断熱材において、前記内袋は吸着材を練り込んだプラスチックフィルムで構成されていることを特徴とする真空断熱材。
【請求項4】
請求項1から3の何れかに記載の真空断熱材において、前記外包材は吸着材を練り込んだプラスチック層を有するラミネートフィルムで構成されていることを特徴とする真空断熱材。
【請求項5】
請求項1から4の何れかに記載の真空断熱材において、前記無機繊維重合体はグラスウール、グラスファイバー、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維の何れかであることを特徴とする真空断熱材。
【請求項6】
外箱と内箱とによって形成される断熱空間に真空断熱材を配設した冷蔵庫において、
前記真空断熱材は、プラスチックフィルムからなる内袋内に有機系バインダーを含まない無機繊維重合体を収納して形成した芯材と、前記芯材を収納して内部を減圧し周縁部を溶着して封止したラミネートフィルムからなる外包材とを備え、前記内袋または前記外包材に水分やガス成分などを吸着する能力を保持させたものであることを特徴とする冷蔵庫。
【請求項7】
プラスチックフィルムからなる内袋内にバインダーを含まない無機繊維重合体を収納した芯材と、
前記芯材を収納して内部を減圧し周縁部を溶着して封止したラミネートフィルムからなる外包材とを備え、
前記内袋は表面に撥水処理膜を有している
ことを特徴とする真空断熱材。
【請求項8】
請求項7に記載の真空断熱材において、前記内袋は、撥水処理膜を施したフィルムと、他のガスバリア性のプラスチックフィルムとのラミネートフィルムであることを特徴とする真空断熱材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−336722(P2006−336722A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−160942(P2005−160942)
【出願日】平成17年6月1日(2005.6.1)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月1日(2005.6.1)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】
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