説明

真空断熱材

【課題】容易に施工可能で断熱性能が良好な断熱改修壁を提供する。
【解決手段】窓または扉の枠24を除く既存壁11の室内側の面に設けられた真空断熱材10は、熱溶着層同士が対向するガスバリア性の外被材の間に、複数の芯材が、厚み方向に略垂直な方向に互いに所定間隔離して配置されて減圧密封されており、複数の芯材のそれぞれが独立した減圧空間内に位置するように、隣接する芯材と芯材との間の外被材(熱溶着層)同士を熱溶着したものであり、真空断熱材10の保護のために真空断熱材10の室内側に設けた突き刺し防止板13の室内側の面が、枠24の室内側の面よりも室内側に突出していない。上記構成の断熱改修壁は、真空断熱材10が断熱劣化し難く、室内側への壁面の出っ張り寸法を小さくできるので、問題なく適用可能な範囲が広く、簡易的・高性能な断熱改修を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱改修壁に適用される真空断熱材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化抑制(地球環境保護)の観点より、家電製品や産業機器の省エネルギー化と並び住宅等の建物の省エネルギー化も取り組むべき重要な課題となっている。そのため、様々な断熱改修壁が提案されている(例えば、非特許文献1及び特許文献1参照)。
【0003】
非特許文献1に示されているように、昭和55年省エネルギー基準レベルの在来木造住宅(築24年の木造在来軸組工法2階建て住宅)の2階天井及び1階床下の断熱改修を行った場合、天井では小屋裏の既存断熱を残し、その上に新規断熱材を吹き込み、また床では床下から根太間に断熱材を充填し根太下にも同様の断熱材の充填を行う。施工はそれぞれ作業員3名(約5時間)・監督1名、作業員5名(約10時間)・監督2名で行い、約16万円と約37万円の費用がかかっている。
【0004】
図4は、特許文献1により開示されている従来の断熱改修壁の概略断面図である。図14に示すように、特許文献1における従来の断熱改修壁は、躯体α上にボード102を形成した既存壁よりなる下地101上に略台形状の胴縁103を複数本固定し、胴縁103上に片面粘着テープを貼着し、壁下地全面に現場発泡型の合成樹脂発泡体104を吹き付けると共に胴縁103間に空間105ができるように形成し、次に、片面粘着テープを剥すことにより胴縁103の表面を露出させ、胴縁103上に乾式壁材107を施工している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−11717号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】齋藤宏昭ら、”昭和55年省エネルギー基準レベルの在来木造住宅を対象とする実用的断熱改修方法の検証”、独立行政法人 建築研究所、2006年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、実際の断熱改修(非特許文献1)では、2階天井の施工においては作業員3名(約5時間)・監督1名で約16万円の費用を要し、1階床下の施工においては作業員5名(約10時間)・監督2名で約37万円の費用を要する。
【0008】
また特許文献1による従来の断熱改修壁では、住宅駆体の断熱性能を向上させるため、下地101上に略台形状の胴縁103を複数本固定し、胴縁103上に片面粘着テープを貼着し、壁下地101全面に現場発泡型の合成樹脂発泡体104を吹き付けると共に胴縁103間に空間105ができるように形成する。次に、片面粘着テープを剥すことにより胴縁103の表面を露出させ、胴縁103の表面に貼付した粘着テープによって、胴縁103上に防水シート106と乾式壁材107を施工する。
【0009】
このように、断熱改修については本格的な工事が伴い、簡易に高性能な断熱改修を行うことが困難である。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑み、容易に施工可能で断熱性能が良好な断熱改修壁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は窓または扉の枠を有し室内空間を構成する既存壁と、前記枠を除く前記既存壁の室内側の面に設けられた真空断熱材と、前記真空断熱材を室内側から覆い隠すと共に前記真空断熱材を室内側から保護するように設けられた突き刺し防止板とを有する断熱改修壁に適用される真空断熱材であって、
前記真空断熱材は、熱溶着層同士が対向するガスバリア性の外被材の間に、複数の芯材が、互いに隔離して配置されて減圧密封されており、前記複数の芯材のそれぞれが独立した減圧空間内に位置するように、隣接する前記芯材と前記芯材との間の前記外被材同士を熱溶着したものであるとともに前記突き刺し防止板の室内側の面が前記枠の室内側の面よりも室内側に突出しないように配置されていることを特徴とする真空断熱材である。
【0012】
これにより、真空断熱材のピンホール発生時における真空断熱材全体の断熱性能の大幅な低下の防止と突き刺し防止板による室内側からの突き刺し等による真空断熱材の断熱劣化の防止の2つの断熱劣化防止効果により真空断熱材が保護され、また、真空断熱材はスチレンフォーム等の汎用の断熱材に比べて断熱性能が非常に優れているため、断熱材部分の厚みを薄くでき、その結果、室内側への壁面の出っ張り寸法を小さくできるので、問題なく適用可能な範囲が広く実用的で、従来の住宅の壁・床・天井等をそのまま利用することによる簡易的・高性能な断熱改修を行うことができる効果が得られる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、真空断熱材のピンホール発生時における真空断熱材全体の断熱性能の大幅な低下の防止と突き刺し防止板による室内側からの突き刺し等による真空断熱材の断熱劣化の防止の2つの断熱劣化防止効果により真空断熱材を保護し、また、真空断熱材はスチレンフォーム等の汎用の断熱材に比べて断熱性能が非常に優れているため、断熱材部分の厚みを薄くでき、その結果、室内側への壁面の出っ張り寸法を小さくできるので、問題なく適用可能な範囲が広く実用的で、従来の住宅の壁・床・天井等をそのまま利用することによる簡易的・高性能な断熱改修を行うことができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態1における断熱改修壁の構成図
【図2】図1のA−A線断面図
【図3】同実施の形態の断熱改修壁に用いた真空断熱材の断面図
【図4】従来の断熱改修壁の概略断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
第1の発明は、窓または扉の枠を有し室内空間を構成する既存壁と、前記枠を除く前記既存壁の室内側の面に設けられた真空断熱材と、前記真空断熱材を室内側から覆い隠すと共に前記真空断熱材を室内側から保護するように設けられた突き刺し防止板とを有する断熱改修壁に適用される真空断熱材であって、
前記真空断熱材は、熱溶着層同士が対向するガスバリア性の外被材の間に、複数の芯材が、互いに隔離して配置されて減圧密封されており、前記複数の芯材のそれぞれが独立した減圧空間内に位置するように、隣接する前記芯材と前記芯材との間の前記外被材同士を熱溶着したものであるとともに前記突き刺し防止板の室内側の面が前記枠の室内側の面よりも室内側に突出しないように配置されていることを特徴とする真空断熱材である。
【0016】
本発明の断熱改修壁には線シール多芯真空断熱材の室内側に突き刺し防止板が配置され
ているため、この突き刺し防止板の効果により室内側から突き刺し等の影響に対し、線シール多芯真空断熱材の断熱劣化を防止できる効果が得られる。更に、断熱改修用の断熱材として線シール多芯真空断熱材が使用されており、線シール多芯真空断熱材は複数の各芯材がその真空レベルに対し独立しており熱伝導率も小さく良好であるため、断熱改修を行う壁への設置等において断熱劣化が生じてもその部分だけの断熱性が悪化するだけで線シール多芯真空断熱材としての断熱性の悪化は小さくできる効果が得られる。つまり、突き刺し防止板の適用と真空断熱材としての線シール多芯真空断熱材の適用の二重の効果により、断熱改修時点における真空断熱材の断熱劣化を防止できる効果が得られる。
【0017】
また、突き刺し防止板の室内側の面が窓または扉の枠の室内側の面よりも室内側に突出しないように真空断熱材が配置されるため、断熱改修後には、突き刺し防止板等よりなる壁の内側に窓・扉等の枠等は埋まることがないため見た目が非常に良好なると共に非常な圧迫感を感じることがない効果が得られる。また、突き刺し防止板等よりなる壁と窓・扉等の枠等との厚みの差の部分も見えないこととなり、この部分の見栄えに関わる処理も行う必要がない効果も得られる。
【0018】
第2の発明は、前記真空断熱材は、前記外被材の間に前記芯材がない部分の前記外被材同士を密着させて、前記密着した前記外被材同士を熱溶着してなり、前記外被材同士が密着する全ての部分の前記外被材同士が熱溶着されていることを特徴とする。
【0019】
本発明の断熱改修壁に用いる真空断熱材は、外被材の間に芯材がない部分の外被材同士を密着させて、密着した外被材同士を熱溶着してなり、外被材同士が密着する全ての部分の外被材同士が熱溶着されているという特徴を有する真空断熱材(以下、面シール多芯真空断熱材と称する)であるため、請求項1に記載の発明の効果に加え、面シール多芯真空断熱材は、対向する二枚の外被材の外周部同士のみを熱溶着した真空断熱材や三方を熱溶着した袋状の外被材に芯材を入れて袋状の外被材の開口部を熱溶着した真空断熱材と比べて、熱溶着部を広く形成することが可能であるため、断熱改修を行う壁への設置等においてピンホールが発生した場合でも、ピンホール発生箇所と芯材との間に熱溶着部がある可能性が高く、真空断熱材が断熱劣化し難いという効果が得られる。
【0020】
第3の発明は、前記突き刺し防止板の室内側の面に真空断熱材の芯材位置を記載したことにより、突き刺し防止板を固定する際に、芯材の場所を避けて釘・ネジ等により固定することができるため、突き刺し防止板の固定における真空断熱材の断熱劣化を防止することができる効果が得られる。
【0021】
次に、真空断熱材の構成材料について詳細に説明する。
【0022】
芯材に使用する材料は、気相比率90%前後の多孔体をシート状または板状に加工したものであり、工業的に利用できるものとして、発泡体、粉体、および繊維体等がある。これらは、その使用用途や必要特性に応じて公知の材料を使用することができる。
【0023】
このうち、発泡体としては、ウレタンフォーム、スチレンフォーム、フェノールフォーム等の連続気泡体が利用できる。また、粉体としては、無機系、有機系、およびこれらの混合物を利用できるが、工業的には、乾式シリカ、湿式シリカ、パーライト等を主成分とするものが使用できる。
【0024】
また、繊維体としては、無機系、有機系、およびこれらの混合物が利用できるが、コストと断熱性能の観点から無機繊維が有利である。無機繊維の一例としては、グラスウール、グラスファイバー、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維、シリカ繊維、ロックウール等、公知の材料を使用することができる。
【0025】
また、これら、発泡体、粉体、および繊維体等の混合物も適用することができる。
【0026】
外被材に使用するラミネートフィルムは、最内層を熱溶着層とし、中問層にはガスバリア層として、金属箔、或いは金属蒸着層を有し、最外層には表面保護層を設けたラミネートフィルムが適用できる。また、ラミネートフィルムは、金属箔を有するラミネートフィルムと金属蒸着層を有するラミネートフィルムの2種類のラミネートフィルムを組み合わせて適用しても良い。
【0027】
なお、熱溶着層としては、低密度ポリエチレンフィルム、鎖状低密度ポリエチレンフィルム、高密度ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、無延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、エチレンービニルアルコール共重合体フィルム、或いはそれらの混合体等を用いることができる。
【0028】
表面保護層としては、ナイロンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルムの延伸加工品など、公知の材料が利用できる。
【0029】
以下、本発明による実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
【0030】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における断熱改修壁の構成図、図2は図1のA−A線での断面図、図3は同実施の形態の断熱改修壁に用いた真空断熱材の断面図である。
【0031】
本実施の形態の断熱改修壁は、窓または扉の枠24を有し室内空間を構成する既存壁11と、枠24を除く既存壁11の室内側の面に設けられた真空断熱材10と、真空断熱材10を室内側から覆い隠すと共に真空断熱材10を室内側から保護するように設けられた画鋲の針部の長さ以上の厚みを有する石膏ボードからなる突き刺し防止板13と、突き刺し防止板13の室内側に設けられた壁紙26と、真空断熱材10を設ける既存壁11の室内側の面と真空断熱材10との間に設けられた保護層12Aと、真空断熱材10と突き刺し防止板13との間に設けられた保護層12Bと、真空断熱材10を設ける既存壁11の室内側の面と真空断熱材10との間(真空断熱材10を設ける既存壁11の室内側の面と保護層12Aとの間)に真空断熱材10を固定するために設けた接着部27とからなり、突き刺し防止板13の室内側の面が枠24の室内側の面よりも室内側に突出しておらず、保護層12A,12Bが断熱性と不燃性を有するものである。また、突き刺し防止板13の室内側の面に真空断熱材10の芯材位置を記載している。
【0032】
真空断熱材10は、熱溶着層18同士が対向するガスバリア性のラミネートフィルムからなる外被材15の間に、繊維体からなる例えば厚さ3〜10mmの複数の芯材14が、厚み方向に略垂直な方向に互いに所定間隔離して配置されて減圧密封されており、複数の芯材14のそれぞれが独立した減圧空間内に位置するように、隣接する芯材14と芯材14との間と各芯材14の周囲に外被材15(熱溶着層18)同士を熱溶着したものである。
【0033】
また、外被材15は、芯材14側より、ポリエチレン等による熱溶着層18、10μm以下のアルミ箔19、ナイロンまたはポエチレンテレフタレート等よりなる第2の保護層20、ナイロンまたはポエチレンテレフタレート等よりなる第1の保護層21より構成されている。
【0034】
次に具体的に断熱改修方法について説明する。断熱改修を行う住宅の従来の既存壁11
に真空断熱材10を複数枚利用し、既存壁11の全面を覆うように配置する。この時、前記部位に真空断熱材10が整数枚配置の場合に、既存壁11に余りが生じた場合には、真空断熱材10を芯材14のない部分で切断して、既存壁11に配置し、既存壁11の多くの部分を真空断熱材10で覆う。
【0035】
この時、真空断熱材10の既存壁11側及び突き刺し防止板13側には平板板状の保護層12A,12Bが設けられている。また、突き刺し防止板13の室内側表面には真空断熱材10の芯材14の配置位置が記載されている。
【0036】
次に、板状の合板22を真空断熱材10の外周の芯材14を有しないヒレ部23の対向する外被材15同士が熱溶着されている部分に合わせて釘・ネジ等で固定する。次に、突き刺し防止板13を真空断熱材10の上に設置し、突き刺し防止板と合板22が合致する位置に釘・ネジ等で突き刺し防止板13を固定する。また、この既存壁11に窓、扉が存在したり、真空断熱材10の寸法が既存壁11に合わない場合は、以下の様に実施する。
【0037】
断熱改修を行う住宅の従来の既存壁11に真空断熱材10を複数枚利用し、既存壁11の窓・扉等の枠24及びその開口部は避けて全面を覆うように配置する。窓・扉等の枠24や既存壁11の端にかかる場合、真空断熱材10はできるだけ目地部25でカットし、既存壁11になるべく多くの真空断熱材10が配置できるように真空断熱材10を配置する。目地部25でカットしなかった場合は、真空断熱材10の芯材14が切断面よりこぼれるためテープ等により切断面の手当を行う。この時、真空断熱材10の既存壁11側及び突き刺し防止板13側には平板板状の保護層12A,12Bが設けられている。
【0038】
次に、板状の合板22を既存壁11の外周部及び窓・扉等の枠24等の外周部に配置された真空断熱材10の外周の芯材14を有しないヒレ部23または目地部25に合わせて釘・ネジ等で固定する。この時に、芯材14部を釘等で打たないように注意する。
【0039】
次に、既存壁11及び窓・扉等の枠24等の形状に合わせてカットされたものを含む突き刺し防止板13を真空断熱材10の室内側に設置し、突き刺し防止板13と合板22が合致する位置に釘・ネジ等で突き刺し防止板13を固定する。
【0040】
この時、真空断熱材10を設置する既存壁11の表面から突き刺し防止板13の室内側表面までの距離は、既存壁11の表面から断熱改修を行う既存壁11の表面と略平行の窓・扉等の枠24の表面までの距離より小さくなるようにする。または、突き刺し防止板13の室内側の面が枠24の室内側の面よりも室内側に突出しないようにする。
【0041】
既存壁11の表面から断熱改修を行う既存壁11の表面と略平行の窓・扉等の枠24の表面までの距離(以下距離Lと称する)は、当社が調査を行ったところ約5〜20mmであり、これに対しては以下の例の様に構成する。下記(1)では、突き刺し防止板13の厚みが7mm未満となるため、画鋲(はり部の長さ7mm未満)を断熱改修後の壁に使用した場合、真空断熱材10に突き刺しによりピンホールが発生し断熱劣化が生じる。
【0042】
(1)距離L<10mmの場合の断熱改修部材の構成とその厚み(保護層仕様の有無及びその厚みは自由とする)
既存壁/保護層/線シール多芯真空断熱材(3mm以上)/保護層/突き刺し防止板(7mm未満)/壁紙
(2)距離L≧10mmの場合の断熱改修部材の構成とその厚み(保護層仕様の有無及びその厚みは自由とする)
既存壁/保護層/線シール多芯真空断熱材(3mm以上)/保護層/突き刺し防止板(7mm以上)/壁紙
突き刺し防止板13の設置後、突き刺し防止板13の室内側に壁紙26を設置することにより断熱改修は完了する。
【0043】
真空断熱材10の熱伝導率を0.0040W/m/K、厚みが3mmの場合その熱抵抗は0.75m2・K/Wとなり、これはグラスウール10Kの厚み約38mmに相当する。この値は、1980年から1991年の住宅の旧省エネ基準の断熱性能を1992年の新省エネ基準の断熱性能に引き上げるレベルである。
【0044】
ちなみに、日本国内に上記旧省エネ基準の住宅は1500万戸、新省エネ基準の住宅は600万戸存在するが、上記旧省エネ基準よりも低い基準の住宅は3300万戸存在する。これより、真空断熱材10の厚みが3mmでも断熱性能の大きな改善を行うことができる。更に、真空断熱材10の厚み10mmのものを断熱改修に使用した場合には、その熱抵抗は2.48m2・K/Wとなり、上記1980年から1991年の住宅の旧省エネ基準の断熱性能を1998年の次世代省エネ基準の断熱性能に一気に引き上げるレベルとなる高断熱化が図れる。
【0045】
以上より、複数の芯材14のそれぞれが独立した減圧空間内に位置するように、隣接する芯材14と芯材14との間と各芯材14の周囲に外被材15(熱溶着層18)同士を熱溶着した真空断熱材10を断熱改修壁に適用したことと、真空断熱材10の室内側に突き刺し防止板13を用いていることにより、本断熱改修においては真空断熱材10の断熱劣化を防止できることより真空断熱材10の高断熱性は保持され、従来の断熱改修の様に住宅の外壁を壊すことなく簡単に高性能な断熱改修が行うことができる効果が得られる。
【0046】
なお、本実施の形態では、真空断熱材10に線シール多芯真空断熱材を用いた場合を説明したが、線シール多芯真空断熱材の代わりに、線シール多芯真空断熱材の特徴に加えて、外被材15の間に芯材14がない部分の外被材15(熱溶着層18)同士を密着させて、密着した外被材15(熱溶着層18)同士を熱溶着してなり、外被材15(熱溶着層18)同士が密着する全ての部分の外被材15(熱溶着層18)同士が熱溶着されている特徴を有する面シール多芯真空断熱材を適用した場合には、上記特徴により断熱改修を行う既存壁11への面シール多芯真空断熱材の設置等において面シール多芯真空断熱材の芯材14近傍にピンホールが発生しても、この部分は線シール多芯真空断熱材では外被材15(熱溶着層18)同士が熱溶着層されていないが、面シール多芯真空断熱材はこのピンホール部分は熱溶着されているため、ピンホールによる断熱劣化を防止できる効果が得られる。
【0047】
また、真空断熱材10を設置する既存壁11の表面から突き刺し防止板13の室内側表面までの距離は、距離Lと同等かそれより小さくなっているため、断熱改修後には、突き刺し防止板13等よりなる壁の内側に窓・扉等の枠24等は埋まることがないため見た目が非常に良好なると共に非常な圧迫感を感じることがない効果が得られる。また、突き刺し防止板13等よりなる壁と窓・扉等の枠24等との厚みの差の部分も見えないこととなり、この部分の見栄えに関わる処理も行う必要がない効果も得られる。
【0048】
また、突き刺し防止板13の室内側には壁紙26が設けられているため、室内としての見栄えを確保できると共に、壁紙26の追加により更に室内側からの衝撃等に対する真空断熱材10の断熱劣化を防止できる効果が得られる。また、突き刺し防止板13の固定においては、釘・ネジ等を使用するが、固定後のこれらの上に壁紙26を貼ることにより、これらの跡を隠すことができる効果も得られる。
【0049】
また、突き刺し防止板13の室内側の表面には芯材14位置が記載されているため、突き刺し防止板13の固定において、芯材14の場所を避けて釘・ネジ等により固定するこ
とができるため、突き刺し防止板13の固定における断熱劣化を防止することができる効果が得られる。
【0050】
また、突き刺し防止板13の材料として石膏ボードを適用した場合、石膏ボードは木材に比較し安価であり、湿度により変形が小さくまた難燃性を有しているため、断熱改修用として適している効果が得られる。
【0051】
また、室内側からの突き刺しによる断熱劣化は、ポスター等を壁に貼るための画鋲がメインである。これに対し、距離L≧10mmの場合には真空断熱材17の厚みは3mm以上確保できるため、突き刺し防止板13の厚みは7mm以上とすることが可能となる。この場合、画鋲の針部の長さは7mmより若干短いため、突き刺し防止板13の厚みが7mm以上であれば画鋲が突き刺し防止板13を突き破り断熱劣化を防止できる効果が得られるため、断熱改修後に断熱劣化による断熱性能の劣化を避けることができる効果が得られる。
【0052】
また、真空断熱材10と既存壁11の間及び真空断熱材10と突き刺し防止板13の間の少なくとも一方に保護層12A,12Bが設けられているため、真空断熱材10設置時において、真空断熱材10と既存壁11または突き刺し防止板13との擦れ等による断熱劣化を防止する事ができる効果が得られる。
【0053】
また、保護層12A,12Bが断熱性を有している場合は、保護効果による断熱劣化防止に加え、真空断熱材10には目地部25が存在し、その部分は断熱ができていない状態にあるが、保護材12は断熱性を有しているため、断熱性のない目地部25の断熱を行えると共に、目地部25以外の部分の断熱性を強化できる効果が得られる。
【0054】
また、保護層12A,12Bが難燃性を有している場合は、保護効果による断熱劣化防止に加え、難燃性の効果により保護層12A,12Bに着火しても保護層12A,12Bの難燃性により燃焼を防止できる効果が得られる。
【0055】
また、保護層12A,12Bの既存壁11側の少なくとも一部に接着部27が設けられているため、真空断熱材10を既存の壁、床、天井に配置する場合、接着部27をこれらに接着することにより、真空断熱材10の設置位置に対する仮止め効果が得られ、真空断熱材10の固定に対する位置決めがキッチリ行えると共に、真空断熱材10固定時おける位置ずれを防止でき、断熱改修作業の効率化または作業人数の低減を図ることができる効果が得られる。
【0056】
また、断熱改修壁として、保護層12A,12Bは断熱改修に適用する真空断熱材10にあらかじめ貼ってあってもよいし、別途張り付けでもよいし、既存壁11に貼ってもよく、貼り付けの有無を規定するものではない。また、突き刺し防止板13への保護層12A,12Bの貼り付けに関しても同様である。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明にかかる断熱改修壁は、真空断熱材のピンホール発生時における真空断熱材全体の断熱性能の大幅な低下の防止と突き刺し防止板による室内側からの突き刺し等による真空断熱材の断熱劣化の防止の2つの断熱劣化防止効果により真空断熱材を保護し、また、真空断熱材はスチレンフォーム等の汎用の断熱材に比べて断熱性能が非常に優れているため、断熱材部分の厚みを薄くでき、その結果、室内側への壁面の出っ張り寸法を小さくできるので、問題なく適用可能な範囲が広く実用的で、従来の住宅の壁・床・天井等をそのまま利用することによる簡易的・高性能な断熱改修を行うことができる効果があるので、住宅用の建物や商業用の建物、その他、断熱が必要な建物に有用である。
【符号の説明】
【0058】
10 真空断熱材
11 既存壁
12A,12B 保護層
13 突き刺し防止板
14 芯材
15 外被材
18 熱溶着層
24 枠
26 壁紙
27 接着部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窓または扉の枠を有し室内空間を構成する既存壁と、前記枠を除く前記既存壁の室内側の面に設けられた真空断熱材と、前記真空断熱材を室内側から覆い隠すと共に前記真空断熱材を室内側から保護するように設けられた突き刺し防止板とを有する断熱改修壁に適用される真空断熱材であって、
前記真空断熱材は、熱溶着層同士が対向するガスバリア性の外被材の間に、複数の芯材が、互いに隔離して配置されて減圧密封されており、前記複数の芯材のそれぞれが独立した減圧空間内に位置するように、隣接する前記芯材と前記芯材との間の前記外被材同士を熱溶着したものであるとともに前記突き刺し防止板の室内側の面が前記枠の室内側の面よりも室内側に突出しないように配置されていることを特徴とする真空断熱材。
【請求項2】
前記真空断熱材は、前記外被材の間に前記芯材がない部分の前記外被材同士を密着させて、前記密着した前記外被材同士を熱溶着してなり、前記外被材同士が密着する全ての部分の前記外被材同士が熱溶着されていることを特徴とする請求項1に記載の真空断熱材。
【請求項3】
前記突き刺し防止板の室内側の面に真空断熱材の芯材位置を記載したことを特徴とする請求項1または2に記載の真空断熱材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−229617(P2012−229617A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−189857(P2012−189857)
【出願日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【分割の表示】特願2008−124321(P2008−124321)の分割
【原出願日】平成20年5月12日(2008.5.12)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度新エネルギー・産業技術総合開発機構「高性能、高機能真空断熱材」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】