説明

眼の手術のための制御データ生成方法、および眼の手術治療装置および治療方法

本発明は、レーザ・デバイス(E)により眼の角膜(5)内の組織層を分離する眼の手術治療装置(1)のための制御データを生成する方法に関連し、レーザ・デバイス(E)の動作中に、接触表面を有する接触ガラス(25)が、接触表面の形状に角膜(5)を変形させるように、最初に接触表面は、角膜の頂の上に接触表面の頂を設定され、次いで、角膜に対して押し付けられ、該方法は、レーザ・デバイス(E)のための制御データを、該制御データがレーザ・デバイス(E)のための角膜(5)に位置するターゲット点(28)の座標を指定するように生成する工程と、ターゲット点座標の生成の際に、レーザ・デバイスの動作中に存在する、接触ガラス(25)によって生じる角膜の変形を考慮する工程とを含む。本発明は、いくつかの工程が、変形によって生じる、変形されていない角膜における点Pの変位を決定するために、変形を考慮して行われるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ・デバイスにより眼の角膜内の組織層を分離する眼の手術治療装置のための制御データを生成する方法に関連し、レーザ・デバイスの動作中に、接触表面を有する接触ガラス(25)が、接触表面の形状に角膜(5)を変形させるように、最初に接触表面は、角膜の頂の上に接触表面の頂を設定され、次いで、角膜に対して押し付けられ、該方法は、レーザ・デバイスのための制御データを、該制御データがレーザ・デバイスのための角膜に位置するターゲット点(28)の座標を指定するように生成する工程と、ターゲット点座標の生成の際に、レーザ・デバイスの動作中に存在する、接触ガラスによって生じる角膜の変形を考慮する工程とを含む。
【0002】
本発明はさらに、眼の手術治療装置であって、眼の角膜内の組織層を分離するレーザ・デバイスと、接触表面を有する接触ガラスであって、レーザ・デバイスの動作中、接触表面の形状に角膜を変形させるように、最初に接触表面は、角膜の頂の上に接触表面の頂を設定され、次いで、角膜に対して押し付けられる、接触ガラスと、レーザ・デバイスのための制御データを、該制御データがレーザ・デバイスのための角膜に位置するターゲット点の座標を指定するように生成し、該ターゲット点の座標の生成の際に、レーザ・デバイスの動作中に存在する、接触ガラスによって生じる角膜の変形を考慮する制御デバイスとを備える眼の手術治療装置に関する。
【0003】
本発明はさらに、レーザ・デバイスにより眼の角膜内の組織層を分離する眼の手術治療方法であって、接触表面を有する接触ガラスが、最初に、角膜の頂の上に接触表面の頂を設定され、次いで角膜を変形させる目的で、接触ガラスが接触表面の形状に角膜を変形させるように、角膜に対して押し付けられ、レーザ・デバイスのための制御データが、レーザ・デバイスのための角膜に位置するターゲット点の座標を指定するように生成され、ターゲット点の座標の生成の際に、レーザ・デバイスの動作中に存在する、接触ガラスによって生じる角膜の変形が考慮される方法に関する。
【0004】
さらに最後に、本発明は、レーザ・デバイスにより眼の角膜内の組織層を分離する眼の手術治療方法であって、変形の目的で、接触表面を有する接触ガラスが、接触ガラスが接触表面の形状に角膜を変形させるように、角膜に対して押し付けられ、レーザ・デバイスのための制御データが、レーザ・デバイスのための角膜に位置するターゲット点の座標を指定するように生成され、ターゲット点の座標の生成の際に、レーザ・デバイスの動作中に存在する、接触ガラスによって生じる角膜の変形が考慮される方法に関する。
【背景技術】
【0005】
長い間、眼鏡は、人間の眼の視力障害を矯正する伝統的な方法をなしてきた。しかし、現在、眼の角膜を修正することによって視力障害を矯正する、屈折矯正手術が多く使用されてきている。このような場合、全ての手術処置の目的は、光の屈折に影響を与えるために、角膜を意図的に修正することである。異なる手術処置がこの目的で知られている。最も広く知られているのは、LASIKとも略される、いわゆるレーザ・その場(in−situ)角膜屈折矯正手術である。この場合、角膜薄膜が最初、一方側で角膜表面から取り外され、その側で折り曲げられる。この薄膜は、機械的マイクロケラトームにより、または、例えば、イントラレース・コーポレーション(Intralase Corp.)[米国アービン(Irvine)所在]によって市販されているような、いわゆるレーザ・ケラトームにより取り外すことができる。
【0006】
後者は、レーザ放射により角膜内に切開表面を作り出す。この場合、レーザ放射によって開始される複数の工程が、組織内で連続して起こる。放射の出力密度が閾値より大きい場合、光学的絶縁破壊が起こり、それにより角膜内にプラズマ・バブルが生成される。光学的絶縁破壊が起こった後、プラズマ・バブルは気体が膨張する結果として成長する。光学的絶縁破壊が維持されない場合、プラズマ・バブル内に生成された気体は、周囲の構成要素によって吸収され、バブルは再び消える。また、プラズマ・バブルなしで作用する組織分離効果も可能である。単純にするために、このような工程は全て、ここでは、「光学的絶縁破壊」という用語で組み合わせる。すなわち、この用語は、光学的絶縁破壊だけでなく、そこから生じる角膜内の影響も含んでいることを意図している。
【0007】
光学的絶縁破壊を生じさせる目的で、レーザ放射はパルス法で行われ、パルス長は1ps未満である。その結果、それぞれのパルスでは、光学的絶縁破壊をトリガするのに必要な出力密度は、制限された空間領域内でのみ達成される。米国特許第5984916号明細書には、(この場合、作り出される相互作用の)光学的絶縁破壊の空間領域が、パルス持続時間に大きく左右されることがこの点ではっきり示されている。上記短いパルスと組み合わせた、レーザ・ビームの高い集束度は、したがって、光学的絶縁破壊を角膜内で極めて正確に行うことを可能とする。
【0008】
薄い薄膜を作り出す目的で、一連の光学的絶縁破壊がその後、レーザ・ケラトームにより所定の点で生じて、薄膜を角膜から後者の下で取り外す切開表面を実現する。
薄膜が一方側で取り外されて折り曲げられた後に、LASIK手術の場合、アブレーションにより次に露出される角膜組織を取り除く、エキシマ・レーザの使用が行われる。角膜内に置かれた量がこの方法で蒸発された後に、角膜薄膜は元の場所に再び折り曲げられる。レーザ・ケラトームが使用されている範囲で、fs−LASIKとも呼ばれる、既に使用されているLASIK方法は、したがって、キャップ形角膜薄膜を露出させ、後者を再び折り曲げ、アブレーション・レーザにより露出した組織を切除する。
【0009】
また、角膜組織内のレンズ形部分量がパルス・レーザ放射により分離される点において、視力障害の矯正が行われることが従来技術で説明されている。このような説明は、例えば国際公開第2005/011545号パンフレットで見られる。しかし、市場において、デバイスは相応に利用可能ではない。
【0010】
切開表面が作り出される精度はもちろん、光学矯正にとって非常に決定的である。これは、視力障害の矯正の先進的レーザ手術処置に特に当てはまる。当該処置においては、角膜内に位置する量が3次元切開表面を通して分離され、したがって、取り外し可能にされる。レーザ・ケラトームの場合とは異なり、切開表面の位置は光学矯正に直接的に関連している。従来のLASIK法の場合、これに対して、レーザ切除が行われる精度が、光学矯正の質にとって非常に重要であり、それは、多数の手術において、角膜薄膜の生成が、手術が比較的不正確である機械刃により行われる、または行われたという事実によりさらに明らかである。
【0011】
さらに、眼の角膜が押し付けられる接触ガラスを、レーザ手術装置の場合に使用することができることが国際公開第2005/011547号パンフレットにより知られている。この接触ガラスは、角膜に固定および所定の形状を加え、同時に、眼を定位置に固定するように働く。接触ガラスへの押付けはしたがって、角膜の変形につながり、これは、座標変換において押付けおよび変形が考慮されるという点において、ターゲット点の座標の決定に際して考慮されるものであり、また、国際公開公報においては、「接触圧力変形」と呼ばれ、ターゲット点の変位を考慮に入れるものである。公報には、球状接触ガラスおよび球状角膜前面の組合せの場合の変換式が記載されている。公報には、修正項によりさらなる補足が可能であると記載されているが、このような項についての説明はなされていない。したがって、記載されている変換式は、球状接触ガラスおよび球状角膜前面に排他的に適用されるが、いつも当てはまるわけではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明は、国際公開第2005/01157号パンフレットによって与えられた境界条件をさらに越えて、接触ガラスによって生じる角膜の変形を確実に考慮することが可能であり、それによりさらに正確なレーザ手術結果が得られる、制御データを生成する改良型の方法、改良型の治療デバイス、および改良型の治療処置を規定する目的に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本目的は、本発明の第1の発明変更形態において、レーザ・デバイスにより眼の角膜内の組織層を分離する眼の手術治療装置のための制御データを生成する方法であって、該レーザ・デバイスの動作中、接触表面を有する接触ガラスが、接触表面の形状に角膜を変形させるように、接触表面は角膜に対して押し付けられており、該方法は、レーザ・デバイスのための制御データを生成する工程であって、レーザ・デバイスのための角膜に位置するターゲット点の座標を指定するように該制御データが生成される、前記生成する工程と、該ターゲット点の座標の生成の際に、該レーザ・デバイスの動作中に存在する、接触ガラスによって生じる角膜の変形を考慮する工程とを含み、変形されていない角膜における点Pの、変形により生じる変位を決定するために、変形を考慮する際に、
1a)変形されていない角膜の基準表面V上で、点Pに対して、点Oを通る表面法線が点Pを通るように配置された点Oを決定する工程であって、基準表面Vは、前面自体か、または曲げ線変位Lによる前面の径方向収縮により得られる表面のいずれかである、前記点Oを決定する工程と、
1b)基準表面の頂Sと点Oとの間の距離
【0014】
【数1】

(以下、SOと表記する)を決定する工程であって、距離SOは、基準表面(V)上の円弧の長さである、前記距離SOを決定する工程と、
1c)接触ガラス基準表面上で、接触表面の頂から距離SOに位置する点O’を決定する工程であって、接触ガラス基準表面は、接触表面自体か、または、曲げ線変位Lおよび角膜上の流体膜の厚さF’の少なくとも一方による接触表面の径方向収縮によって得られる表面である、前記点O’を決定する工程と、
1d)点O’における表面法線上で、点Oから点Pの距離に等しい、O’からの距離を有する点P’を決定する工程と、
1e)変形により変位された点Pとして、点P’を用いる工程と
が実行されること、および
変形された角膜における点Q’の、弛緩により生じる変位を決定するために、変形を考慮する際に、
2a)接触ガラス基準表面上で、点Q’に対して、点O’を通る表面法線が点Q’を通るように配置された点O’を決定する工程と、
2b)頂Sと点O’との間の距離
【0015】
【数2】

(以下、SO’と表記する)
を決定する工程であって、距離SO’は、接触ガラス基準表面上の円弧の長さである、前記距離SO’を決定する工程と、
2c)基準表面上で、頂Sから距離SO’に位置する点Oを決定する工程と、
2d)点Oにおける表面法線上で、点O’から点Q’の距離に等しい、Oからの距離を有する点Qを決定する工程と、
2e)弛緩により変位された点Q’として点Qを使用する工程と
が実行されることのうちの少なくとも一方を特徴とする方法により達成される。
【0016】
本目的は、本発明の第2の変更形態において、レーザ・デバイスにより眼の角膜内の組織層を分離する眼の手術治療装置のための制御データを生成する方法であって、レーザ・デバイスの動作中、接触表面を有する接触ガラスが、接触表面の形状に角膜を変形させ、該方法は、レーザ・デバイスのための制御データを生成する工程であって、レーザ・デバイスのための角膜に位置するターゲット点の座標を指定するように該制御データが生成される、前記生成する工程と、該ターゲット点の座標の生成の際に、該レーザ・デバイスの動作中に存在する、接触ガラスによって生じる角膜の変形を考慮する工程とを含み、変形されていない角膜に関連する球座標系(φ,α,R)と、接触ガラスに対して置かれることにより変形された角膜に対する球座標系(φ’,α’,R’)との間の変換として、
【0017】
【数3】

が使用され、式中、RKGLは接触表面の半径であり、RCVは角膜の変形されていない前面の半径であり、c、c、fおよびfは、ほぼ1に等しい実験的に確立された補正関数であり、Kはより高い奇数次のαについての任意の補正項であり、Kはより高い奇数次のαについての任意の補正項である方法により達成される。
【0018】
本目的は、本発明の第3の変更形態において、レーザ・デバイスにより眼の角膜内の組織層を分離する眼の手術治療装置のための制御データを生成する方法であって、該レーザ・デバイスの動作中、接触表面を有する接触ガラスが、接触表面の形状に角膜を変形させ、該方法は、レーザ・デバイスのための制御データを生成する工程であって、レーザ・デバイスのための角膜に位置するターゲット点の座標を指定するように該制御データが生成される、前記生成する工程と、該ターゲット点の座標の生成の際に、該レーザ・デバイスの動作中に存在する、接触ガラスによって生じる角膜の変形を考慮する工程とを含み、変形されていない角膜に関連する球座標系(φ,α,R)と、接触ガラスに対して置かれて変形された角膜に対する球座標系(φ’,α’,R’)との間の変換として、
φ=φ’
α’(RKGL−F’−L)=α(RCV−L)
R’=R+RKGL−RCV
が使用され、式中、RKGLは接触表面の半径であり、RCVは角膜の変形されていない前面の半径であり、F’は角膜と、角膜に押し付けられた接触表面との間の流体膜の厚さであり、Lは、角膜の表面から角膜の前面内への眼の角膜の曲げ線の変位であり、該変位は実験的に決定されたものであり、F’またはLはほぼゼロにすることが可能である方法により達成される。
【0019】
本目的はまた、本発明の第1の変更形態において、レーザ・デバイスにより眼の角膜内の組織層を分離する眼の手術治療方法であって、接触表面を有する接触ガラスが、角膜に対して押し付けられることにより、接触ガラスが角膜を接触表面の形状に変形させ、レーザ・デバイスのための制御データが、レーザ・デバイスのための角膜に位置するターゲット点の座標を指定するように生成され、ターゲット点の座標の生成の際に、レーザ・デバイスの動作中に存在する、接触ガラスによって生じる角膜の変形が考慮され、変形されていない角膜における点Pの、変形により生じる変位を決定するために、変形を考慮する際に、
1a)変形されていない角膜の基準表面V上で、点Pに対して、点Oを通る表面法線が点Pを通るように配置された点Oを決定する工程であって、基準表面Vは、前面自体か、または曲げ線変位Lによる前面の径方向収縮により得られる表面のいずれかである、前記点Oを決定する工程と、
1b)基準表面の頂Sと点Oとの間の距離SOを決定する工程であって、距離SOは、基準表面(V)上の円弧の長さである、前記距離SOを決定する工程と、
1c)接触ガラス基準表面上で、接触表面の頂から距離SOに位置する点O’を決定する工程であって、接触ガラス基準表面は、接触表面自体か、または、曲げ線変位Lおよび角膜上の流体膜の厚さF’の少なくとも一方による接触表面の径方向収縮によって得られる表面である、前記点O’を決定する工程と、
1d)点O’における表面法線上で、点Oから点Pの距離に等しい、O’からの距離を有する点P’を決定する工程と、
1e)変形により変位された点Pとして、点P’を用いる工程と
が実行されること、および
変形された角膜における点Q’の、弛緩により生じる変位を決定するために、変形を考慮する際に、
2a)接触ガラス基準表面上で、点Q’に対して、点O’を通る表面法線が点Q’を通るように配置された点O’を決定する工程と、
2b)頂Sと点O’との間の距離SO’を決定する工程であって、距離SO’は、接触ガラス基準表面上の円弧の長さである、前記距離SO’を決定する工程と、
2c)基準表面上で、頂Sから距離SO’に位置する点Oを決定する工程と、
2d)点Oにおける表面法線上で、点O’から点Q’の距離に等しい、Oからの距離を有する点Qを決定する工程と、
2e)弛緩により変位された点Q’として点Qを使用する工程と
が実行されることのうちの少なくとも一方を特徴とする方法により達成される。
【0020】
本目的は同様に、本発明の第2の変更形態において、レーザ・デバイスにより眼の角膜内の組織層を分離する眼の手術治療方法であって、変形の目的で、接触表面を有する接触ガラスが角膜に対して押し付けられることにより、接触ガラスが角膜を接触表面の形状に変形させ、レーザ・デバイスのための制御データが、レーザ・デバイスのための角膜に位置するターゲット点の座標を指定するように生成され、ターゲット点の座標の生成の際に、レーザ・デバイスの動作中に存在する、接触ガラスによって生じる角膜の変形が考慮され、変形されていない角膜に関連する球座標系(φ,α,R)と、接触ガラスに対して置かれることにより変形された角膜に対する球座標系(φ’,α’,R’)との間の変換として、
【0021】
【数4】

が使用され、式中、RKGLは接触表面の半径であり、RCVは角膜の変形されていない前面の半径であり、c、c、fおよびfは、ほぼ1に等しい実験的に確立された補正関数であり、Kはより高い奇数次のαについての任意の補正項であり、Kはより高い奇数次のαについての任意の補正項である方法により達成される。
【0022】
最後に、本目的は第3の変更形態において、レーザ・デバイスにより眼の角膜内の組織層を分離する眼の手術治療方法であって、変形の目的で、接触表面を有する接触ガラスが角膜に対して押し付けられることにより、接触ガラスが角膜を接触表面の形状に変形させ、レーザ・デバイスのための制御データが、レーザ・デバイスのための角膜に位置するターゲット点の座標を指定するように生成され、ターゲット点の座標の生成の際に、レーザ・デバイスの動作中に存在する、接触ガラスによって生じる角膜の変形が考慮され、変形されていない角膜に関連する球座標系(φ,α,R)と、接触ガラスに対して置かれて変形された角膜に対する球座標系(φ’,α’,R’)との間の変換として、
φ=φ’
α’(RKGL−F’−L)=α(RCV−L)
R’=R+RKGL−RCV
が使用され、式中、RKGLは接触表面の半径であり、RCVは角膜の変形されていない前面の半径であり、F’は角膜と、角膜に押し付けられた接触表面との間の流体膜の厚さであり、Lは、角膜の表面から角膜の前面内への眼の角膜の曲げ線の変位であり、該変位は実験的に決定されたものであり、F’またはLはほぼゼロにすることが可能である方法により達成される。
【0023】
本目的はまた、眼の角膜内の組織層を分離するレーザ・デバイスと、接触表面を有する接触ガラスであって、該レーザ・デバイスの動作中、接触表面の形状に角膜(5)を変形させるように、最初に接触表面は、角膜の頂の上に接触表面の頂を設定され、次いで、角膜に対して押し付けられる、前記接触ガラスと、レーザ・デバイスのための制御データを、該制御データがレーザ・デバイスのための角膜に位置するターゲット点の座標を指定するように生成し、該ターゲット点の座標の生成の際に、該レーザ・デバイスの動作中に存在する、接触ガラスによって生じる角膜の変形を考慮する制御デバイスとを備える眼の手術治療装置によって達成され、該制御デバイスは、上記3つの発明の変更形態の1つによる方法を実行する。
【0024】
したがって、本発明はもはや、眼の角膜が球状である、または曲げ線が眼の角膜の表面上に正確にあり、涙液膜の厚さがごくわずかであることを前提としていない。本発明による方法により、特に手術領域の端部区画での意図した切開経路と得られる切開経路の間の差を避けることが可能になる。向上した精度はこの場合、比較的より顕著な湾曲を有する接触ガラスまたは接触表面で作用することが可能になるという結果になるが、従来技術においては、様々な理由、特に眼の内圧の増加による欠点があるにも関わらず、できるだけ角膜を平らにする傾向があった。
【0025】
本発明の第1の変更形態は、この場合、任意の形状、特に非球状または非回転対称の接触ガラスの場合に適用することができるという利点を有する。というのは、自由角膜内の各点Pは、その座標に関して、変形した眼、すなわち接触表面に対して置かれた眼の場合、点Pに対応するP’に変換されるからである。この場合の第1の変更形態の方法工程は、変形されていない角膜内の各所与の点に対して、角膜の変形後に対応する座標がどのように決定されるかを説明している。これは、いわゆる順変換を構成する。しかし、類似している過程はまた、変形した角膜内のその座標が知られており、変形されていない角膜内のそれに対応する座標、すなわち接触ガラスの除去による緩和後に決定されようとしている点のための逆変換を生み出す。請求項1、および対応する包含または並列の請求項は、工程1a)〜1e)において順変換を規定し、工程2a)〜2e)において逆変換を規定する。2つのうちの1つは、第1の変更形態において、本発明に従って実施される。
【0026】
第1の変更形態の方法は、普通は任意の表面に適用可能であるという利点を有する。
接触ガラスの球状接触表面と組み合わせた角膜前面の放物面の特別な場合では、第2の変更形態は、座標変換に対する単純近似を指定する。より優れた適応のために、この場合に使用される補正因子は、実験データから決定することができるが、単純にするために、これらを1とすることもできる。
【0027】
制御データにより予測される位置から逸脱する切開表面の実際の位置をもたらし得る別の因子は、角膜が変形状態にある場合であっても、角膜前面と接触ガラスの接触表面との間の流体が充填された間隙をもたらす流体膜の厚さである。この流体は必ずしも自然の涙液膜である必要はない。というのは、手術の場合、眼は通常、(液滴の形の)局部麻酔によって麻酔がされており、人工涙液が利用されるからである。涙液膜の自然の厚さはしたがって、自動的には存在しない。さらに、流体の厚さは加えて、押付けまたは変形によって変更される。本発明の第3の変更形態はしたがって、この流体膜の厚さF’を考慮している。この厚さF’の典型的な範囲は、5〜20μmである。
【0028】
さらに任意選択では、角膜の変形の際に、曲げ線、すなわち変形の中間相は、角膜前面の上に正確に延びていないが、角膜内に、すなわち内側に変形させることができるという事実を考慮することも可能である。このような変位は、実験データから確立することができる。単純な変更形態では、曲げ線は角膜の中間厚さ上に置かれる、すなわち変位は角膜の厚さの半分に対応していることが考えられる。
【0029】
さらに、流体膜厚さ、または曲げ線の変位の検討を、他の変更形態で使用することもできる。
本発明は、例として、図面を参照して以下でさらにより完全に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】視力障害の矯正のための治療装置、または治療機器の略図である。
【図1a】図1の治療機器の構造に関する略図である。
【図2】図1の治療機器による視力障害の矯正の際の、眼の中へのパルス・レーザ放射の導入に関する例示的図である。
【図3】図1の治療機器の別の略図である。
【図4】図1の治療機器内の接触ガラスの機能を説明する略図である。
【図5】眼の角膜の変形により生じる接触ガラスの影響に関する略図である。
【図6】眼の角膜の変形により生じる接触ガラスの影響に関する略図である。
【図7】眼の角膜の変形により生じる接触ガラスの影響に関する略図である。
【図8】視力障害の矯正の準備および実行の際の過程の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、欧州特許出願公開第1159986号明細書、または米国特許第5549632号明細書に記載されたものと同様の眼手術処置のための治療機器1を示している。治療レーザ放射2により、治療機器1は、患者4の眼3の視力障害の矯正を行う。視力障害としては、遠視、近視、老眼、乱視、混合乱視(1方向に遠視があり、その直角での方向に近視がある乱視)、非球面誤差および高次収差を挙げることができる。記載した実施形態では、治療レーザ放射2は、眼3に集束されたパルス・レーザ・ビームとして当てられる。パルス持続時間はこの場合、例えば、フェムト秒範囲にあり、レーザ放射2は角膜内の非直線視覚効果により作用する。レーザ・ビームは例えば、10から500kHzの間のパルス繰り返し周波数で50から800fsの短いレーザ・パルス(好ましくは、100〜400fs)を有する。記載した実施形態では、デバイス1のモジュールは、明らかに独立型ユニットとして実現することができる、一体化制御ユニットによって制御される。
【0032】
治療機器を使用する前に、眼3の視力障害は、1つまたは複数の測定デバイスにより測定される。
治療機器1は、図1aに略図的に示されている。この変更形態では、少なくとも2つのデバイスまたはモジュールを有する。レーザ・デバイスEは、眼3にレーザ・ビーム2を放射する。レーザ・デバイスEの動作はこの場合、完全に自動である。すなわち、対応する開始信号により、レーザ・デバイスEはレーザ・ビーム2を偏向させ始め、それにより、記載したような方法で、眼の角膜内の量を構成し、分離する切開表面を作り出す。動作に必要な制御データは、詳細には示していない制御ラインを介して、計画デバイスPからレーザ・デバイスEによって前に制御データ・セットとして受信される。データは、レーザ・デバイスEの動作の前に伝達される。明らかに、通信も無線で行うことができる。直接通信の代替手段として、レーザ・デバイスEから空間的に離れているように計画ユニットPを配置し、対応するデータ伝達チャネルを提供することも可能である。
【0033】
制御データ・セットは、治療機器1に伝達されることが好ましく、さらに、レーザ・デバイスEの動作は、有効制御データ・セットがレーザ・デバイスEに存在するまでブロックされることが好ましい。有効制御データ・セットは、原則的には、治療機器1のレーザ・デバイスEで使用するのに適切である制御データ・セットであってもよい。しかし、加えて、有効性はまた、別のテスト、例えば、治療機器1、例えば機器シリアル番号、または患者、例えば患者識別番号に関する制御データ・セット内に加えて記憶された情報が、例えば患者がレーザ・デバイスEの動作のための正確な位置にくるとすぐに、読み出された、または治療装置で別に入力された他の情報に対応するかどうかのテストを通過することにリンクさせることもできる。
【0034】
動作を行う目的でレーザ・デバイスEに利用可能にされる制御データ・セットは、眼を治療するために確立された測定データおよび視力障害のデータから計画ユニットPによって生成される。データは、インターフェイスSを介して計画ユニットPに供給され、示した実施形態では、このデータは、患者4の眼の測定を前に行った測定デバイスMから生成される。明らかに、測定デバイスMは、対応する測定データおよび視力障害のデータを計画デバイスPに任意の方法で転送することができる。
【0035】
レーザ・ビーム2の機能は、図2に略図的に示されている。治療レーザ・ビーム2は、より詳細には示さない光学トレーンにより眼6の角膜5内に集束される。それにより、スポット6をカバーし、レーザ放射のエネルギー密度が、パルス長と組み合わせて、眼の非直線効果を作り出すような大きさである焦点が角膜5内に作り出される。例えば、それぞれのスポット6でのパルス・レーザ放射2の各パルスは、眼の角膜5内の光学的絶縁破壊を作り出すことができ、この破壊はその後、図2に略図的に示すプラズマ・バブルが生じる。その結果、組織はこのレーザ・パルスにより角膜5内で分離される。プラズマ・バブルの成長により、組織層分離は、レーザ放射2の焦点によってカバーされるスポット6より大きい領域を含んでいるが、破壊を生じさせる状態は、焦点内でのみ達成される。光学的絶縁破壊を各レーザ・パルスによって生成させるために、レーザ放射のエネルギー密度、すなわち流束量(フルエンス)は、パルス長に左右される特定の閾値より大きくなければならない。当業者は、例えば独国特許第69500997号(T2)明細書からこの関係が分かる。
【0036】
別の方法では、組織分離効果はまた、複数のレーザ放射パルスが領域内に放射される点においてパルス・レーザ放射によって作り出すことができ、スポット6は複数のレーザ放射パルスに対して重なり合っている。複数のレーザ放射パルスはその後、組織分離効果を達成するために共に作用する。
【0037】
しかし、治療機器1によって使用される組織分離の性質は、この説明には関連がない。治療機器1は、その形状が組織内の点によって特徴付けられる切開表面を組織内で実現することのみが実質的なことである。これらの点は、例えば焦点位置に対するターゲット点を指定することができ、(1つまたは複数の)レーザ・パルスがターゲット点で放射される。組織/構成要素内の点の定義は、以下に説明する方法および装置に重要であり、さらにより詳細に記載する。この説明は、単に例として、パルス・レーザ放射に対するターゲット点である点に基づいている。
【0038】
視力障害の矯正を行うために、パルス・レーザ放射は、構成要素を分離し、その後に構成要素を除去することを可能にする組織層がその中で分離されるという点において、角膜5内の領域から構成要素を取り除くために使用されている。構成要素の除去により、角膜の量が変更され、その結果、角膜5の光学画像化動作の変更につながり、この変更は、前に解明した視力障害がそれによって、できるだけ矯正される/されるようになるような精度で算出される。除去される量を分離する目的で、レーザ放射2の焦点は、通常は上皮およびボーマン膜の下で、デスメ膜および内皮の上にある領域内で、角膜5内のターゲット点の上に案内される。この目的で、治療機器1は、角膜5内のレーザ放射2の焦点の位置を調節する機構を有する。これは、図3に略図的に示されている。
【0039】
図3では、治療機器1の要素は、焦点調節の理解のために必要な範囲でのみ示されている。既に記載したように、レーザ放射2は、角膜5内の焦点7内で束にされ、角膜内の焦点7の位置は、切開表面を作り出す目的で、レーザ放射パルスからのエネルギーが様々な位置で集束した形で角膜5の組織内に案内されるように調節される。レーザ放射2は、レーザ8によってパルス放射として与えられる。変更形態では、2つのほぼ直角偏向電流測定ミラーによって実現されるxyスキャナ9は、xyスキャナ9の後に、偏向されたレーザ・ビーム10が存在するように、レーザ8から入射するレーザ・ビームの2次元偏向を行う。xyスキャナ9はそれによって、焦点7の位置を、角膜5内のレーザ放射2の主な入射方向とほぼ垂直に調節する。xyスキャナ9に加えて、例えば調節可能な望遠鏡として実現されるzスキャナ11が、深さ位置を調節するために提供される。zスキャナ11を使用して、焦点7のz位置、すなわち光入射軸上の位置を変更する。zスキャナ11は、xyスキャナ9の前後に配置することができる。以下のx、y、zによって示された座標はしたがって、焦点7の位置の偏向に関連する。
【0040】
空間方向に対する個別の座標の割当は、角膜5内の点の定義には決定的ではないが、以下では説明を単純化するために、放射2の光入射軸に沿った座標は常にzによって示され、xおよびyは、レーザ・ビームの入射方向と垂直な平面で互いに垂直な2つの座標を示している。明らかに、当業者は、角膜5内の点の位置はまた、他の座標系によって3次元で説明することができること、特に、座標系は直角座標系である必要はないことを知っている。同様に、xyスキャナ9は、必ずしも互いに直角である軸を偏向させる必要はない。むしろ、光放射の入射軸がない平面内で焦点7を調節することが可能な任意のスキャナを使用することが可能である。したがって、斜角座標系も可能である。
【0041】
さらに、以下でもさらに説明するように、焦点7の位置を説明または制御するために、非デカルト座標系を使用することもできる。このような座標系の例は、ボール座標(球座標とも呼ぶ)およびシリンダ座標である。
【0042】
ターゲット点の上で焦点7の位置を制御する目的で、3次元焦点調節デバイスの実際の例を共に実現する、xyスキャナ9およびzスキャナ11は、より詳細に示さない線を介して、制御デバイス12によって制御される。同じことが、レーザ8にも当てはまる。制御デバイス12は、xyスキャナ9およびzスキャナ11によって例示的に実現された、レーザ8、および3次元焦点調節デバイスの適当な同期動作を行い、それによって角膜5内の焦点7の位置は、最終的に規定量の構成要素が分離されるように調節され、量のその後の除去により、視力障害の所望の矯正を行う。
【0043】
制御デバイス12は、焦点調節のためのターゲット点を指定する、指定された制御データにより動作する。制御データは通常、制御データ・セット内に組み込まれる。1実施形態では、この制御データ・セットは、パターンとしてターゲット点の座標を指定し、制御データ・セット内のターゲット点のシーケンスは、焦点位置の直列配置、したがって最終的に、経路曲線(本明細書では簡単に経路とも呼ぶ)を規定する。1実施形態では、制御データ・セットは、焦点位置調節機構、例えばxyスキャナ9およびzスキャナ11に対する実際の矯正変数値としてターゲット点を含んでいる。眼の手術処置を準備する目的で、すなわち実際の手術処置を行う前に、ターゲット点、および好ましくはパターン内のシーケンスも決定される。利用される場合、患者4に対して視力障害の最適な矯正を達成する、治療装置1のための制御データを決定するために動作の前計画がなければならない。
【0044】
ターゲット点が角膜内で適当な方法で指定される点において、制御データは最終的には、切開表面を生成させる。眼の角膜内に切開表面を生成する目的で、例えば、光軸(z軸)とほぼ垂直である主軸の周りに螺旋状に延びる特別な螺旋を使用することができることが、従来技術、例えば国際公開第2005/011546号パンフレットに記載されている。ターゲット点を列に配置するスキャン・パターンの使用も知られている(国際公開第2005/011545号パンフレット参照)。明らかに、上に定義した切開表面を作り出すためにこれらの可能性を使用することができ、以下に説明した変換で使用することができる。
【0045】
眼の角膜内の焦点の位置の調節は、z方向に焦点を調節する目的で、レンズ、または他の光学作用要素の変位を利用する、図3に略図的に示された3次元偏向デバイスにより行われる。
【0046】
ターゲット点の決定の際、もちろん、特に視力障害の矯正の場合、除去される量は、通常の状態の眼で最終的に規定されることを考慮しなければならない。最終的に関連する切開表面はしたがって、自然の眼に関連する。しかし、眼を定位置に固定する理由で、治療機器1は、図4に示すように眼の角膜5の前面15の上に置かれる接触ガラス25で動作することを考慮しなければならない。しかし、治療機器1、または手術を準備するおよび/または行うためのこれに関連する方法の現在の説明に関し、複数の特許公開(例えば、国際公開第2005/048895号パンフレットに例示的に言及する)の主題を既に構成する接触ガラス25は、規定の曲率を角膜前面15に与えるという点で重要であるにすぎない。しかし、接触ガラス25の接触表面の球面曲率に関し、本明細書に記載する方法は、例えば眼の角膜を平らに押す平面接触ガラスを使用する、国際公開第2003/002008号パンフレットに記載された方法とは明らかに異なる。
【0047】
球面接触表面を有する接触ガラス25の上に眼が押し付けられると、眼の空間的変形が起こる。押付けは、図6に例として示した接触ガラスの座標系内への図5に例示的に示したような眼の座標系の変換に対応している。当業者は、国際公開第2005/011547号パンフレットによりこの関係が分かり、その開示内容をこれに関してその全体の範囲で含めるものとする。図5および6では、アポストロフィで印が付けられた座標は、接触ガラス25、または眼に面しているその接触ガラスの裏面26に関連する量の座標を示している。自由角膜内の所与の点P(図5)はその後、接触表面25の上に押し付けられた場合の角膜内の点P’(図7、左)に対応する。
【0048】
しかし、接触ガラスはさらに別の利点を有する。接触ガラスの裏面26の上に押し付けられることによって、角膜前面15はまた自動的に球状である。角膜前面15の下の一定距離に置かれた表面はしたがって、同様に、接触ガラスが押し付けられた場合に球状であり、それによって制御はかなり単純化される。この理由により、これまで、球状接触ガラスの裏面26を有する接触ガラス25を使用し、少なくとも1つの切開表面では、角膜前面15の下の一定の距離で球状表面としてこの切開表面を規定するターゲット点を指定することが常に試みられてきた。
【0049】
図5および6の図は、接触ガラスが置かれるまたは除去された結果、眼に生じる座標変換を示している。これらは、湾曲表面(角膜前面15、または接触ガラスの裏面26)の原点に関連する球座標(R,α,φ)、および角膜前面15の頂部、または接触ガラスの裏面26に関連する円筒座標(R,z,φ)の両方を含んでおり、頂部は光軸OAの通過点によって画定される。
【0050】
しかし、自由な(または押し付けられた)眼の中の角膜内の点が与えられた、または押し付けられた(または自由な)眼に記載された場合に、選択した座標系とは完全に独立して座標変換が起こる。
【0051】
図7による接触ガラスに関連する押し付けられた眼の座標系への、図7に示したような自由な眼に関連する座標系からの座標変換の場合、円弧長さ、すなわちα・R、径方向深さ(RCV−R)、および角度φが維持される。自然の眼の基準として、すなわち図7の座標系内で行われたターゲット点の変換はしたがって、3次元焦点調節デバイスに対する制御量の算出の際の重要な工程である。その実現は、例えば球状表面が平面な状態になる、平らな接触ガラスの場合のものと基本的に異なる。
【0052】
球状に湾曲した接触ガラスの裏面26の上への眼3の角膜5の押付けが、図7に図示されている。そこで、右の図は、接触ガラスの裏面26が頂部でのみ角膜前面15と接触している場合の状態を略図的に示している。角膜はまだ変形されていない状態である。幾何的関係を解明する目的で、角膜前面15が図7に円として略図的に示されている。角膜5上への接触ガラス25の押付けは、図7の左側の状態への移行を行い、この移行は矢印27によって示されている。接触ガラス25の除去により、矢印27の方向と反対の眼3の緩和が行われる。
【0053】
記載した境界状態により、眼の角膜5内の各点では、座標は図5に示す座標系から、図6の座標系に変換される。角膜前面15の配置は通常、負圧により吸引によって行われるので、変換をこれ以下、吸引変換と称する。
【0054】
以下の方法は、(吸引に曝されていない)緩和された眼の点Pの座標を、吸引に曝された眼の対応する点P’に対する座標へ全体的に変換することを可能にする。その後、逆変換を説明する。この全体的な方法は、接触ガラスまたは角膜前面の特別な幾何形状を必要としないが、涙液膜のない角膜の前面である角膜前面を使用する。
【0055】
1.実験的決定を用いた任意の座標系内の角膜の前面15の数値または分析的記述、および必要に応じて、適当な平滑化方法の使用。吸引変換の場合に、角膜の前面15の下の距離Lで曲げ線(または中間相)の位置を考慮する場合、前面15に関連するLによって径方向に収縮された基準表面Vが、前面15の代わりに使用される。曲げ線が考慮されない場合、基準表面Vは、角膜5の前面15と同じである。
【0056】
2.実験的決定を用いた任意の座標系内の接触ガラス25の接触表面26の数値または分析的記述、および必要に応じて、適当な平滑化方法の使用。変換の際、接触表面26は、押し付けられた眼の中の角膜5の前面15によって想定される表面であると考えられる。しかし、流体膜厚さF’および/または曲げ線変位Lを考慮する場合、接触表面26に関してF’+Lによって径方向に収縮された接触ガラス基準表面Gが、接触表面26の代わりに使用される。流体膜厚さF’および曲げ線変位Lが検討されない場合、この場合同様に、接触表面26および接触ガラス基準表面Gが一致する。
【0057】
3.基準表面V内に置かれ、変換中にその座標が変わらない変換の原点Aの決定。この点は、光軸および基準表面V、または基準表面Vの幾何頂点の交差点であることが好ましい。ここで、両方の点が「頂」という用語で共通化した。
【0058】
4.吸引後に原点Aから最小に離れている接触ガラス基準表面G上の点Mの決定。十分な概算として、A=Mである。
5.その表面法線上に点P(φ)が配置されている基準表面V上の全ての点O(φ)の決定。表面法線はこの場合、基準表面Vと垂直であり、点Oを含む直線として理解されたい。
【0059】
6.線分
【0060】
【数5】

が最小である点O∈Oの決定。
これはしたがって、表面法線と基準表面Vの間の交差点である。
【0061】
7.円筒角φによって特徴付けられた、交差平面内のOからAまでの湾曲長さ
【0062】
【数6】

の算出。
【0063】
8.以下の式
【0064】
【数7】

が適用可能である、点O’∈Gの算出。
【0065】
9.以下の式
【0066】
【数8】

および
【0067】
【数9】

が適用可能である、点P’(φ)の算出。
【0068】
10.以下の式が常に適用される:φ’=φ。
逆変換は、以下の工程を使用して行われる。
1.上記1および2と類似している方法での数値または分析的記述。
【0069】
2.上記3に記された方法が、原点に対して使用される。
3.変換の原点Aから最小に離れている接触ガラス基準表面G上の点Mの決定。十分な概算として、A=Mである。
【0070】
4.その表面法線上に点P’(φ)が配置されている接触ガラス基準表面G上の全ての点O’(φ)の決定。表面法線はまた、接触ガラス基準表面Gと垂直であり、点O’を含む直線である。
【0071】
5.線分
【0072】
【数10】

が最小である点O’∈O’の決定。
【0073】
6.円筒角φによって特徴付けられた、交差平面内のO’からA’までの湾曲長さ
【0074】
【数11】

の算出。
【0075】
7.以下の式
【0076】
【数12】

が適用可能である、点O∈Vの算出。
【0077】
8.以下の式
【0078】
【数13】

および
【0079】
【数14】

が適用可能である、点P(φ)の算出。
【0080】
9.以下の式が常に適用される:φ’=φ。
上記方法は、角膜前面15および接触ガラス接触表面26の両方の、任意の表面形態への吸引変換を行うために使用することができる。
【0081】
変換される点は、基準表面の局所曲率半径より小さいそれぞれの基準表面からある距離にある場合、順変換の点5、および逆変換の点4を省くことができる。局所曲率半径は、対応する点での最もよく適合された球体半径から得られ、表面の最小の曲率半径で単純な方法で近似値を求めることができる。眼の手術の場合、点5および4の省略の条件は、普通満たされる。というのは、角膜はその曲率半径よりかなり薄いからである。
【0082】
角膜前面の放物線表面の特別な状態、およびしたがって径方向分割画像での放物線を示す球状接触ガラス形状に対する特別な解決法がある。放物線は依然として、任意の所与の球体に関する、既に従来技術で知られている解決法より、眼5の自然な形状に対して幾分良好に対応している。
【0083】
特に計算の際に省力的であるこの特別な解決法の単純化は、放物線形角膜前面への球状接触ガラス上の球状角膜前面に対する、国際公開第2005/011547号パンフレットで知られている吸引変換の以下の展開によって行われる。
【0084】
【数15】

したがって、放物線に向けた角膜(または、接触ガラス25)の前面15の理想的な球状形からの偏向を考慮するために、知られている球状方法が変更される。
【0085】
時々、分析的に推定された前因子は、実験データに基づきさらなる適応を行わなければならない。1以外の実験的に決定された値はしたがって、球体または楕円の方向に放物線から角膜前面15の偏向を考慮するために、前因子c、fに割り当てることができる。
【0086】
押し付けられた状態の流体膜厚さF’、および距離Lだけ角膜5の前面15から内側に変位された曲げ線が、考慮される場合、球状接触ガラスおよび球状角膜前面の吸引変換を以下の形で記載することができる。
【0087】
φ=φ’
α’・(RKGL−F’−L)=α・(RCV−L)
KGL−R’=RCV−R
多くの測定デバイスは、自然の涙液膜の厚さTを含めた角膜前面15の曲率半径を測定し、したがって、それに応じて矯正しなければならない、値RCV+Tを直接与える。というのは、上記等式は、RCVに基づいているからである。明らかに、この方法は記載した変換と組み合わせることができることに留意されたい。T、Fおよび/またはLは、単純化するために無視することができる。
【0088】
視力障害の眼の手術の場合の応用例でのデバイス1の準備の順序は、図8に略図的に要約されている。工程S1では、眼3の測定が行われる。この工程では、矯正パラメータが、患者4の視力障害のために得られる。工程S2で編集されるパラメータがその後、矯正に必要な角膜5の新しい曲率を決定するために、工程S3で使用される。工程S3でのこのような計算が完了すると、曲率を変更するために角膜から除去しなければならない量は、S4で決定される。この目的で、工程S5では、量の境界を示す切開表面が確立される。これらの表面の対応する機能記述が得られると、眼が吸引によって接触ガラスの上に引かれた場合に得られる吸引変換は、工程S6で考慮される。上記関係の1つが、この場合使用される。
【0089】
次は、切開表面がそこから構成される経路曲線の座標の確立である。これは、パラメータR、φ、zによって工程S7で略図的に示されている。工程S7の終わりに、レーザ放射パルスが各場合に加えられる点の座標を有する、点パターンが得られる。この段階では、既に、ターゲット点の密度を、計算量を節約するために削減することができる。
【0090】
このように確立された制御パラメータで、実際の動作は工程S8で行われ、除去される量が切開表面によって境界が付けられる。
以下の特許請求の範囲において、
【0091】
【数16】

をSOと表記し、
【0092】
【数17】

をSO’と表記する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ・デバイス(E)により眼の角膜(5)内の組織層を分離する眼の手術治療装置(1)のための制御データを生成する方法であって、該レーザ・デバイス(E)の動作中、接触表面(26)を有する接触ガラス(25)が、接触表面の形状に角膜(5)を変形させるように、接触表面は角膜に対して押し付けられており、該方法は、
レーザ・デバイス(E)のための制御データを生成する工程であって、レーザ・デバイス(E)のための角膜(5)に位置するターゲット点(28)の座標を指定するように該制御データが生成される、前記生成する工程と、
該ターゲット点の座標の生成の際に、該レーザ・デバイス(E)の動作中に存在する、接触ガラス(25)によって生じる角膜(5)の変形を考慮する工程と
を含み、
変形されていない角膜(5)における点Pの、変形により生じる変位を決定するために、変形を考慮する際に、
1a)変形されていない角膜(5)の基準表面V上で、点Pに対して、点Oを通る表面法線が点Pを通るように配置された点Oを決定する工程であって、基準表面Vは、前面(15)自体か、または曲げ線変位Lによる前面(15)の径方向収縮により得られる表面のいずれかである、前記点Oを決定する工程と、
1b)基準表面(V)の頂Sと点Oとの間の距離SOを決定する工程であって、距離SOは、基準表面(V)上の円弧の長さである、前記距離SOを決定する工程と、
1c)接触ガラス基準表面(G)上で、接触表面の頂から距離SOに位置する点O’を決定する工程であって、接触ガラス基準表面(G)は、接触表面(26)自体か、または、曲げ線変位Lおよび角膜(5)上の流体膜の厚さF’の少なくとも一方による接触表面(26)の径方向収縮によって得られる表面である、前記点O’を決定する工程と、
1d)点O’における表面法線上で、点Oから点Pの距離に等しい、O’からの距離を有する点P’を決定する工程と、
1e)変形により変位された点Pとして、点P’を用いる工程と
が実行されること、および
変形された角膜における点Q’の、弛緩により生じる変位を決定するために、変形を考慮する際に、
2a)接触ガラス基準表面(G)上で、点Q’に対して、点O’を通る表面法線が点Q’を通るように配置された点O’を決定する工程と、
2b)頂Sと点O’との間の距離SO’を決定する工程であって、距離SO’は、接触ガラス基準表面(G)上の円弧の長さである、前記距離SO’を決定する工程と、
2c)基準表面(V)上で、頂Sから距離SO’に位置する点Oを決定する工程と、
2d)点Oにおける表面法線上で、点O’から点Q’の距離に等しい、Oからの距離を有する点Qを決定する工程と、
2e)弛緩により変位された点Q’として点Qを使用する工程と
が実行されることのうちの少なくとも一方を特徴とする方法。
【請求項2】
レーザ・デバイス(E)により眼の角膜(5)内の組織層を分離する眼の手術治療装置(1)のための制御データを生成する方法であって、レーザ・デバイス(E)の動作中、接触表面を有する接触ガラス(25)が、接触表面の形状に角膜(5)を変形させ、該方法は、
レーザ・デバイス(E)のための制御データを生成する工程であって、レーザ・デバイス(E)のための角膜(5)に位置するターゲット点(28)の座標を指定するように該制御データが生成される、前記生成する工程と、
該ターゲット点の座標の生成の際に、該レーザ・デバイス(E)の動作中に存在する、接触ガラス(25)によって生じる角膜(5)の変形を考慮する工程と
を含み、
変形されていない角膜(5)に関連する球座標系(φ,α,R)と、接触ガラスに対して置かれることにより変形された角膜(5)に対する球座標系(φ’,α’,R’)との間の変換として、
【数1】

が使用され、式中、RKGLは接触表面の半径であり、RCVは角膜(5)の変形されていない前面(15)の半径であり、c、c、fおよびfは、ほぼ1に等しい実験的に確立された補正関数であり、Kはより高い奇数次のαについての任意の補正項であり、Kはより高い奇数次のαについての任意の補正項であることを特徴とする方法。
【請求項3】
レーザ・デバイス(E)により眼の角膜(5)内の組織層を分離する眼の手術治療装置(1)のための制御データを生成する方法であって、該レーザ・デバイス(E)の動作中、接触表面を有する接触ガラス(25)が、接触表面の形状に角膜(5)を変形させ、該方法は、
レーザ・デバイス(E)のための制御データを生成する工程であって、レーザ・デバイス(E)のための角膜(5)に位置するターゲット点(28)の座標を指定するように該制御データが生成される、前記生成する工程と、
該ターゲット点の座標の生成の際に、該レーザ・デバイス(E)の動作中に存在する、接触ガラス(25)によって生じる角膜(5)の変形を考慮する工程と
を含み、
変形されていない角膜(5)に関連する球座標系(φ,α,R)と、接触ガラスに対して置かれて変形された角膜(5)に対する球座標系(φ’,α’,R’)との間の変換として、
φ=φ’
α’(RKGL−F’−L)=α(RCV−L)
R’=R+RKGL−RCV
が使用され、式中、RKGLは接触表面の半径であり、RCVは角膜(5)の変形されていない前面(15)の半径であり、F’は角膜(5)と、角膜に押し付けられた接触表面との間の流体膜の厚さであり、Lは、角膜の表面から角膜(5)の前面内への眼の角膜の曲げ線の変位であり、該変位は実験的に決定されたものであり、F’またはLはほぼゼロにすることが可能であることを特徴とする方法。
【請求項4】
眼の手術治療装置であって、
眼の角膜(5)内の組織層を分離するレーザ・デバイス(E)と、
接触表面を有する接触ガラス(25)であって、該レーザ・デバイス(E)の動作中、接触表面の形状に角膜(5)を変形させるように、最初に接触表面は、角膜の頂の上に接触表面の頂を設定され、次いで、角膜に対して押し付けられる、前記接触ガラス(25)と、
レーザ・デバイス(E)のための制御データを、該制御データがレーザ・デバイス(E)のための角膜(5)に位置するターゲット点(28)の座標を指定するように生成し、該ターゲット点の座標の生成の際に、該レーザ・デバイス(E)の動作中に存在する、接触ガラス(25)によって生じる角膜(5)の変形を考慮する制御デバイスと
を備え、
該制御デバイスは、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法を実行することを特徴とする装置。

【図1】
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【図1a】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2011−516130(P2011−516130A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−502270(P2011−502270)
【出願日】平成21年3月28日(2009.3.28)
【国際出願番号】PCT/EP2009/002289
【国際公開番号】WO2009/124668
【国際公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(503078265)カール ツァイス メディテック アクチエンゲゼルシャフト (51)
【氏名又は名称原語表記】Carl Zeiss Meditec AG
【住所又は居所原語表記】Goeschwitzer Strasse 51−52, D−07745 Jena, Germany
【Fターム(参考)】