説明

眼球撮像装置

【課題】装置構成に要する費用および処理負荷が嵩むことを防止しつつ精度良く角膜反射像を取得する。
【解決手段】眼球撮像装置10は、乗員カメラ11から出力された顔画像から光源12から照射された光による複数の反射点を抽出する反射点抽出部24と、複数の反射点のうち所望の反射点を角膜反射像として抽出する角膜反射像抽出部28と、顔画像から水平エッジ及び垂直エッジを抽出するエッジ抽出部25と、水平エッジ上に存在する反射点および垂直エッジ上に存在する反射点を除去した画像を生成する除去画像生成部27とを備える。角膜反射像抽出部28は、除去画像生成部27により生成された画像に基づき角膜反射像を抽出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼球撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば眼鏡を着用した運転者の瞳孔を検出する際に、明瞳孔画像と暗瞳孔画像とをAND演算してAND画像を生成することによって、眼鏡のフレームなどでの反射像を除外して角膜反射像を抽出し、複数の瞳孔候補領域の中心から角膜反射像に向かうベクトルが等しくなる組み合わせを選択する瞳孔検知装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−254525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術に係る瞳孔検知装置によれば、多数の演算が必要とされることから、処理負荷が増大してしまうという問題が生じる。しかも、明瞳孔画像および暗瞳孔画像を取得するために複数の光源が必要となり、装置構成に要する費用が嵩むという問題が生じる。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、装置構成に要する費用および処理負荷が嵩むことを防止しつつ精度良く角膜反射像を取得することが可能な眼球撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明の第1態様に係る眼球撮像装置は、ひとの顔を撮像して顔画像を出力する撮像手段(例えば、実施の形態での乗員カメラ11)と、前記ひとが存在する方向に向かって光を照射可能に配置された光源(例えば、実施の形態での光源12)と、前記撮像手段から出力された前記顔画像から前記光源から照射された前記光による複数の反射点を抽出する反射点抽出手段(例えば、実施の形態での反射点抽出部24)と、前記反射点抽出手段により抽出された前記複数の反射点のうち所望の反射点を角膜反射像として抽出する角膜反射像抽出手段(例えば、実施の形態での角膜反射像抽出部28)とを備える眼球撮像装置であって、前記撮像手段から出力された前記顔画像から当該顔画像における略水平方向及び略垂直方向のエッジを抽出するエッジ抽出手段(例えば、実施の形態でのエッジ抽出部25)と、前記顔画像から前記エッジ抽出手段により抽出された前記略水平方向のエッジ上に存在する前記反射点および前記略垂直方向のエッジ上に存在する前記反射点を除去した画像を生成する除去画像生成手段(例えば、実施の形態での除去画像生成部27)とを備え、前記角膜反射像抽出手段は、前記除去画像生成手段により生成された前記画像に基づき前記角膜反射像を抽出する。
【0007】
さらに、本発明の第2態様に係る眼球撮像装置は、前記エッジ抽出手段により抽出された前記略水平方向及び前記略垂直方向のエッジに基づき前記ひとが眼鏡を着用しているか否かを判定する眼鏡判定手段(例えば、実施の形態での眼鏡判定部26)を備え、前記角膜反射像抽出手段は、前記眼鏡判定手段により前記ひとが眼鏡を着用していると判定された場合には、前記エッジ抽出手段により抽出された前記略水平方向及び前記略垂直方向のエッジの内側の領域に存在する前記反射点のみを抽出する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の第1態様に係る眼球撮像装置によれば、顔画像から抽出される複数の反射点のうちから、略水平方向のエッジ上に存在する反射点及び略垂直方向のエッジ上に存在する反射点を除去してから、角膜反射像を抽出することにより、角膜反射像を抽出する際の処理負荷を低減することができ、角膜反射像の抽出精度を容易に向上させることができる。しかも、複数の光源を備える必要は無く、1つの光源を備えるだけで顔画像から角膜反射像を抽出することができ、装置構成に要する費用が嵩むことを防止することができる。
【0009】
さらに、本発明の第2態様に係る眼球撮像装置によれば、ひとが眼鏡を着用している場合には、略水平方向及び略垂直方向のエッジの内側の領域に存在する反射点のみを抽出することから、角膜反射像を抽出する処理を適用する領域を適切に縮小させることができ、処理負荷を、より一層、軽減して、処理を高速化することができるとともに、角膜反射像の誤抽出を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態に係る眼球撮像装置の構成図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る眼球撮像装置により抽出された各反射像Raおよび反射点Rb,Rc,Rdと、各エッジEa,Eb,Ecと、各矩形形状Sa,Sbとの例を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る眼球撮像装置により抽出された各反射像Raおよび反射点Rb,Rc,Rdの例を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る眼球撮像装置により抽出された各反射像Raおよび反射点Rb,Rc,Rdの例を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る眼球撮像装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の眼球撮像装置の一実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
本実施の形態による眼球撮像装置10は、例えば図1に示すように、乗員カメラ11と、光源12と、処理装置13とを備えて構成されている。
【0012】
乗員カメラ11は、例えば車室内のインスツルメントパネル(図示略)などに配置され、少なくとも車両の運転席に着座した運転者の顔を撮像対象として撮像領域内に含み、例えば可視光領域または赤外線領域にて撮像可能であって、運転者の顔を含む顔画像を出力する。
【0013】
光源12は、乗員カメラ11による撮像時に撮像対象(例えば、運転席に着座した運転者の顔など)に可視光線または赤外線などの光を照射可能であって、例えば車室内のインスツルメントパネルにおいて乗員カメラ11から左右にずれた位置などに配置されている。
【0014】
処理装置13は、例えば、撮像制御部21と、照射制御部22と、顔画像取得部23と、反射点抽出部24と、エッジ抽出部25と、眼鏡判定部26と、除去画像生成部27と、角膜反射像抽出部28と、視線方向検知部29とを備えて構成されている。
【0015】
撮像制御部21は、乗員カメラ11による撮像を制御する。
照射制御部22は、光源12による光の照射を制御する。
【0016】
顔画像取得部23は、乗員カメラ11から出力される顔画像を取得する。
反射点抽出部24は、顔画像取得部23により取得された顔画像に対して2値化処理などの処理を行ない、運転者の顔、特に眼球周辺において、光源12により照射された光の反射点を検出する。
例えば図2(A)および図3に示すように、眼鏡Gを着用した運転者に対して光源12から赤外線の光が照射された場合には、反射点抽出部24は、角膜表面における光の反射像Raに加えて、眼鏡Gのフレーム表面における光の反射点Rbと、眼鏡Gのレンズ表面における光の反射点Rcと、眼鏡Gの鼻かけ部分における光の反射点Rdとなどを抽出する。
【0017】
エッジ抽出部25は、顔画像取得部23により取得された顔画像に基づき、例えば顔画像のグレースケール画像に対してソーベルフィルタなどの微分フィルタによる所定のフィルタ処理を行なう。そして、このフィルタ処理によって得られる処理結果に2値化処理を行なうことによって、例えば顔画像の横方向および縦方向に対応する水平方向および垂直方向での水平エッジおよび垂直エッジを抽出し、抽出結果を出力する。
例えば図2(B)に示すように、眼鏡Gを着用した運転者に対しては、エッジ抽出部25は、運転者の顔の眼や瞳孔や鼻や唇などの各種の部位に対するエッジEaと、眼鏡Gのフレームに対するエッジEbと、反射像Raおよび反射点Rb,Rc,Rdに対するエッジEcとなどを抽出する。
【0018】
眼鏡判定部26は、エッジ抽出部25から出力される抽出結果に基づき、例えばモルフォロジー変換などの変換処理によって得られる変換結果から、例えば運転者が着用する眼鏡のフレームの候補となる所定の矩形形状(例えば、所定の大きさとして、横寸法が40〜65mmかつ縦寸法が10〜60mmの大きさを有する矩形形状など)を検出する。そして、所定の矩形形状のうち、対となる矩形形状を、運転者が着用する眼鏡のフレームであると判定し、判定結果を出力する。
例えば図2(C)に示すように、眼鏡判定部26は、所定の矩形形状として、眼鏡Gのフレームに対する矩形形状Saと、運転者の口などの部位に対する矩形形状Sbとなどを検出する。次に、例えば図2(D)に示すように、対となる矩形形状Saを眼鏡GのフレームFとして抽出する。
【0019】
除去画像生成部27は、眼鏡判定部26から出力される判定結果において運転者が眼鏡を着用していると判定された場合には、反射点抽出部24により抽出された反射点のうちから、少なくとも、眼鏡判定部26により抽出された眼鏡のフレームに対応する水平エッジ上に存在する反射点および垂直エッジ上に存在する反射点と、眼鏡判定部26により抽出された眼鏡のフレームの内部(つまり、眼鏡のレンズ上)においてフレームに対応する水平エッジおよび垂直エッジから所定距離範囲内に存在する反射点とを除去して、除去されなかった反射点が残された除去画像を生成する。
なお、除去画像生成部27は、反射点抽出部24により抽出された反射点のうちから、角膜表面における光の反射像である可能性が低い反射点、例えば運転者の眼の位置から所定距離以上離れた位置に存在する反射点や、例えば角膜表面における光の反射像として想定される大きさよりも所定程度以上大きな反射点なども除去する。
【0020】
例えば図4(A),(B)に示すように、除去画像生成部27は、眼鏡判定部26により判定された眼鏡Gのフレーム内部において、反射点抽出部24により抽出された運転者の眼の角膜表面における光の反射像Raと、眼鏡Gのレンズ表面における大きな光の反射点Rcと、眼鏡GのフレームFから所定距離範囲内に存在する反射点(例えば、眼鏡Gのフレーム表面における光の反射点Rbと、眼鏡Gの鼻かけ部分における光の反射点Rdとなど)とのうちから、眼鏡GのフレームFから所定距離範囲内またはレンズ表面の反射点(つまり、反射点Rb,Rc,Rd)を除去する。そして、例えば図4(C)に示すように、運転者の眼の角膜表面における光の反射像Raのみが残された除去画像を生成する。
なお、所定距離範囲は、例えば眼鏡判定部26により判定された眼鏡のフレームの大きさと、運転者の眼の大きさとの相対関係などに応じて、角膜表面における光の反射像Raが除去されないようにして設定される。
【0021】
角膜反射像抽出部28は、除去画像生成部27により生成された除去画像に基づき角膜反射像を抽出し、抽出結果を出力する。
例えば図4(D)に示すように、角膜反射像抽出部28は、反射点抽出部24により抽出された運転者の眼の角膜表面における光の反射像Raと、眼鏡Gのフレーム表面における光の反射点Rbと、眼鏡Gのレンズ表面における大きな光の反射点Rcと、眼鏡Gの鼻かけ部分における光の反射点Rdとのうちから、運転者の眼の角膜表面における光の反射像Raを抽出する。
【0022】
視線方向検知部29は、角膜反射像抽出部28から出力された抽出結果に基づき、視線方向(視線ベクトル)を算出し、算出結果を出力する。
【0023】
この実施の形態による眼球撮像装置10は上記構成を備えており、次に、この眼球撮像装置10の動作について説明する。
【0024】
先ず、例えば図5に示すステップS01においては、乗員カメラ11から出力された顔画像に基づき、運転者の眼の角膜表面における光の反射像の候補となる反射点(輝点候補)を検出する。
次に、ステップS02においては、乗員カメラ11から出力された顔画像に基づき、水平エッジおよび垂直エッジを検出する。
次に、ステップS03においては、水平エッジおよび垂直エッジに基づき、運転者が着用する眼鏡のフレームの候補となる所定の矩形形状を検出する。
【0025】
次に、ステップS04においては、対となる矩形形状が存在するか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、運転者が眼鏡を着用していないと判断して、後述するステップS07に進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、運転者が眼鏡を着用していると判断して、ステップS05に進む。
【0026】
そして、ステップS05においては、対となる矩形形状のエッジから所定距離範囲内に存在する輝点候補を除去する。
そして、ステップS06においては、対となる矩形形状のエッジの内部に存在する大きな輝点候補を除去する。
そして、ステップS07においては、運転者の眼の角膜表面における光の反射像に基づき視線方向(視線ベクトル)を算出し、リターンに進む。
【0027】
上述したように、本実施の形態による眼球撮像装置10によれば、顔画像から抽出される複数の反射点のうちから、水平エッジ上に存在する反射点及び垂直エッジ上に存在する反射点を除去してから、角膜反射像を抽出することにより、角膜反射像を抽出する際の処理負荷を低減することができ、角膜反射像の抽出精度を容易に向上させることができる。しかも、複数の光源を備える必要は無く、1つの光源12を備えるだけで顔画像から角膜反射像を抽出することができ、装置構成に要する費用が嵩むことを防止することができる。
【0028】
さらに、ひとが眼鏡を着用している場合には、眼鏡のフレームの内部を処理対象として、フレームから所定距離範囲内に存在する反射点を除去することから、角膜反射像を抽出する処理を適用する領域を適切に縮小させることができ、処理負荷を、より一層、軽減して、処理を高速化することができるとともに、角膜反射像の誤抽出を防止することができる。
【符号の説明】
【0029】
10 眼球撮像装置
11 乗員カメラ(撮像手段)
12 光源
24 反射点抽出部(反射点抽出手段)
25 エッジ抽出部(エッジ抽出手段)
26 眼鏡判定部(眼鏡判定手段)
27 除去画像生成部(除去画像生成手段)
28 角膜反射像抽出部(角膜反射像抽出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ひとの顔を撮像して顔画像を出力する撮像手段と、前記ひとが存在する方向に向かって光を照射可能に配置された光源と、前記撮像手段から出力された前記顔画像から前記光源から照射された前記光による複数の反射点を抽出する反射点抽出手段と、前記反射点抽出手段により抽出された前記複数の反射点のうち所望の反射点を角膜反射像として抽出する角膜反射像抽出手段とを備える眼球撮像装置であって、
前記撮像手段から出力された前記顔画像から当該顔画像における略水平方向及び略垂直方向のエッジを抽出するエッジ抽出手段と、
前記顔画像から前記エッジ抽出手段により抽出された前記略水平方向のエッジ上に存在する前記反射点および前記略垂直方向のエッジ上に存在する前記反射点を除去した画像を生成する除去画像生成手段とを備え、
前記角膜反射像抽出手段は、前記除去画像生成手段により生成された前記画像に基づき前記角膜反射像を抽出することを特徴とする眼球撮像装置。
【請求項2】
前記エッジ抽出手段により抽出された前記略水平方向及び前記略垂直方向のエッジに基づき前記ひとが眼鏡を着用しているか否かを判定する眼鏡判定手段を備え、
前記角膜反射像抽出手段は、前記眼鏡判定手段により前記ひとが眼鏡を着用していると判定された場合には、前記エッジ抽出手段により抽出された前記略水平方向及び前記略垂直方向のエッジの内側の領域に存在する前記反射点のみを抽出することを特徴とする請求項1に記載の眼球撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−19931(P2012−19931A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−159631(P2010−159631)
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】