説明

眼科学および鼻科学における適用のための薬学的組成物

本発明は、少なくともパンテノールおよび/またはパントテン酸、ならびにヒアルロン酸および/またはヒアルロン酸塩、ならびに必要に応じてさらなる薬学的な助剤を含む、薬学的組成物に関する。本発明はさらに、眼科学的なおよび/または鼻科学的な機能障害の処置のための、薬学的組成物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼科学的なおよび鼻科学的な機能障害の処置のための、薬学的組成物、ならびにその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
「ドライアイ」症候群は、乾燥症候群とも、または乾燥徴候ともまた言われる。「ドライアイ」症候群、特に、熱傷、ひっかき傷、および眼におけるざらざらした感覚、ならびにかすみ目を含む徴候は、涙液層における機能的な障害に起因される。
【0003】
「ドライアイ」症候群はまた、涙の減少された流動に起因し得、これは種々の病理学的原因を含み得る。涙の減少された流動は、眼の表面において不十分な涙液層のみの形成を生じ得るか、または涙液層の形成を何ら生じ得ない。涙液層は特に、眼瞼と眼の表面との間で、スリップ剤または潤滑剤として作用する。涙液層の不在、または不十分な涙液層の結果として、上皮層はかなりの外傷を被り得る。
【0004】
これらの機能的な障害の原因はまた、例えば、汚染またはオゾンの影響のような、アレルギーを生じる、例えば環境的な影響である。特に、夏季に生じるオゾン汚染は、涙生成における障害を生じ得るのみでなく、生理学的な涙液層における障害をまた引き起こし得る。例えば、天然の涙液層中に含まれるヒアルロン酸およびタンパク質は、オゾンの影響によって破壊される。乾燥症候群は、眼上の化粧品によって引き起こされる接触アレルギーに頻繁に関連されることがさらに見出された。
【0005】
非特許文献1から、低浸透圧のヒアルロン酸ナトリウムの滴下が、「ドライアイ」症候群の治療のために使用され得ることが知られる。その場合において、5,000,000ダルトンの分子量のヒアルロン酸ナトリウムが使用された。
【0006】
非特許文献2から、細菌により合成されたヒアルロン酸塩が、「ドライアイ」症候群を処置するために使用され得ることがさらに知られる。非特許文献3から、涙液層の安定性における改善は、少なくとも0.1%のヒアルロン酸ナトリウムを含有するヒアルロン酸ナトリウム点眼薬により達成されることが知られる。
【0007】
非特許文献4から、デクスパンテノールを保有する点眼薬は、不十分な涙液層によって障害される角膜上皮バリア機能を改善することが知られる。
【0008】
パンテノールの使用はさらに、皮膚に対する焼灼影響、熱傷、および光線障害の処置について、ならびに眼の炎症の処置について、知られる。
【非特許文献1】Spektrum Augenheilkunde(1998)3/4:174〜176
【非特許文献2】Spektrum Augenheilkunde(1995)9/5:215〜217
【非特許文献3】Jpn.J.Ophthalmol.(1996)40:62〜65
【非特許文献4】Klinische Monatsblatter fur Augenheilkunde(1996)209;84〜88
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、薬学的組成物を提供することであり、これは特に、涙液層に対する機能的な障害、または涙の減少された流動を含む眼の疾患のより良好な治療を許容する。
【0010】
本発明のさらなる目的は、鼻の乾燥粘膜の処置を許容する薬学的組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
その目的は、少なくともパンテノールおよび/またはパントテン酸、ならびにヒアルロン酸および/またはヒアルロン酸塩、ならびに必要に応じてさらなる薬学的な助剤を含む、薬学的組成物の提供によって達成される。
【0012】
用語「薬学的な助剤」は、溶媒、溶解補助剤、溶解促進剤、塩形成剤、塩、緩衝物質、粘性および均一性に影響する薬剤、ゲル形成剤、乳化剤、可溶化剤、湿潤剤、展着剤、抗酸化剤、保存剤、充填およびキャリア物質などを意味するために使用される。
【0013】
パンテノール、すなわち(R、S)−2,4−ジヒドロキシ−N−(3−ヒドロキシプロピル)−3,3−ジメチルブチルアミドは、またパントテノールまたはパントテニルアルコールとも言われ、皮膚についての上皮形成剤として公知である。パンテノールは、パントテン酸のアルコール類縁体であり、中間体変換によってパントテン酸と同じ生物学的有効性を有する。
【0014】
本発明に従う薬学的組成物は、眼科学的な機能障害の治療のため、およびまた鼻科学的な機能障害の治療のための両方に使用され得ることが見出された。
【0015】
薬学的組成物は特に、乾いた、乾燥した、または慢性的に乾燥した、鼻の粘膜の処置に十分に適切である。
【0016】
鼻の粘膜は、例えば、空調管理の効いた空間または乗り物において、または例えば、冬に過熱された過度の乾燥空間および部屋において、乾きを被り得る。不自然に乾燥した環境において、鼻の粘膜は、吸入した空気を予め湿潤するその任務をもはや果たし得ない。次いで、鼻の粘膜は鼻かぜを被る場合のように腫れて閉じる。従って、分泌作用はもはや形成されないが、乾燥したかさぶたが形成され、これは容易に鼻の粘膜において、出血性の割れ目を生じる。鼻血がまたおそらく生じ得る。
【0017】
鼻の粘膜の乾きはまた、例えば、作業場でのほこりによって、またはタバコの煙、ホルムアルデヒド、イオウ酸化物、窒素酸化物などのような汚染物質によって促進される。さらに、鼻の粘膜の乾きはまた、風邪またはアレルギーの間に鼻中隔の屈曲または粘膜の炎症に起因し得る。乾燥粘膜細胞は次々と死んでいく。さらに病原体が乾いた粘膜によって身体を通過し得る。極端な症例は、死んだ粘膜細胞がその下に軟骨組織をもはや十分に供給しないので、中隔に穴が形成され得る。
【0018】
鼻の粘膜の乾きはまた、例えば、腫れを低減する冷却剤の継続した使用のような薬物治療上の影響にも起因し得る。
【0019】
鼻の粘膜の乾きはさらに、特に呼吸の場合に不都合を生じ得、従って例えば睡眠に至るまでの困難、または睡眠の間のいびきのような問題を生じ得る。
【0020】
本発明に従う薬学的組成物は、二重効果を極めて有利に有する。一方では、ヒアルロン酸またはその塩が鼻の粘膜の乾きを中和する高い水結合能を有する。他方では、パンテノールおよび/またはパントテン酸は、例えば「鼻ほり」によるような、例えば形成されたかさぶたの機械的な除去に起因して、損傷がすでに鼻粘膜に対して生じていた場合、創傷のより速い治癒を提供する。
【0021】
従って、本発明に従う組成物は、環境因子によって引き起こされる、鼻の粘膜の乾きの場合において、およびまた病理学的に誘導される鼻粘膜の乾きに関して、使用される。
【0022】
鼻の粘膜への水分の供給と粘膜の速い乾きの予防の同時作用、およびまた改善された創傷治癒効果は、粘膜の腫れの迅速な減少、減少されたそう痒、および「明瞭な鼻」を生じ、これを介して問題のヒトは再び呼吸し得る。
【0023】
本発明に従う組成物は、鼻の粘膜の乾燥および/または乾きを伴なうヒトの場合において、速い治癒および問題の緩和を生じる。
【0024】
本発明に従う薬学的組成物は、慢性鼻炎、乾燥性鼻炎、乾燥性前鼻炎、およびそれらの複合型の形態の処置において、特に有利に使用され得る。
【0025】
以下のさらなる情報は、薬学的な適用の眼科学的な使用に関して本質的に記載される。しかし、この情報は鼻科学的な使用に相応して適用される。例えば、鼻科学的な適用についての処方の場合において、同じ投与の形態および同じ組成物が使用され得る。
【0026】
本発明の発明者らはさらに驚くべきことに、眼に対してまたは眼の表面において、パンテノールおよび/またはパントテン酸、ならびにヒアルロン酸および/またはヒアルロン酸塩の同時の適用を伴うと、涙液層の機能的な障害または不十分に形成された涙液層に関連される眼科学的な疾患の処置に関して、相乗効果が生じることを見出した。
【0027】
特に、不十分な涙液層によって障害された角膜の加速された上皮形成が、本発明に従う薬学的組成物の局所的な適用を伴なって生じることが見出された。
【0028】
好ましくは、本発明に従う薬学的組成物は、眼科学的な機能障害の処置において、眼または眼の表面に対する局所的な適用のために、点眼薬、眼溶液、眼ローション、眼スプレイ、眼軟膏、または眼錠剤の形態において調製される。
【0029】
鼻科学的な使用の場合において、薬学的組成物は好ましくは、鼻スプレイ、点鼻薬、または鼻軟膏の形態において調製される。
【0030】
鼻または眼軟膏を生成するために、ヒアルロン酸および/またはヒアルロン酸塩、ならびに少なくともパンテノールおよび/またはパントテン酸は、例えば、粘性パラフィンおよび白色ワセリンの混合物中に導入され得る。さらに、例えば低粘性のパラフィンまたは羊毛脂がまた、軟膏において使用され得る。
【0031】
好ましくは、薬学的組成物は、鼻スプレイもしくは眼スプレイの形態において、または点鼻薬もしくは点眼薬の形態において、調製される。その点に関して、一般に、ヒアルロン酸および/またはヒアルロン酸塩、ならびにパンテノールおよび/またはパントテン酸は、水溶液中に溶解される。
【0032】
その点に関して、眼科学的な使用の好ましい実施態様に従って、水溶液は、涙液に関して等張液である。等張液の場合において、浸透圧は約300mOsm/lである。さらに好ましい実施態様に従って、本発明に従う薬学的組成物は低浸透圧である。その場合において、浸透圧は、例えば約160〜180mOsm/lであり得る。低浸透圧溶液は、特に、ドライアイを伴う患者において異常に高いレベルの涙液層の浸透圧が調整されなくてはならない場合に使用される。
【0033】
塩化ナトリウム、ホウ酸などは、水溶液の等張化のために使用される。水溶液のpH価は、pH6〜9、好ましくはpH6.5〜8.5の範囲にあり、さらに好ましくはpH7.4である。例えばリン酸緩衝液、酢酸緩衝液、酢酸−ホウ酸緩衝液、クエン酸緩衝液、およびホウ酸緩衝液のような緩衝溶液は、pH価を調節するために使用される。
【0034】
乾いた、または乾燥した鼻粘膜の処置のための点鼻薬または鼻スプレイの場合において、活性な物質、すなわちパントテン酸および/またはパンテノール、ならびにヒアルロン酸および/またはヒアルロン酸塩は、適切な、好ましくは等張性の媒体に加えられる。好ましくはソルビトールが、等張化の目的のために使用される。しかしまた、例えば生理食塩水のような他の媒体を使用することが可能である。
【0035】
薬学的組成物の鼻科学的な適用に関して以前に考察したように、ヒアルロン酸またはそのヒアルロン酸塩は、高い水結合能を有する。その水結合能は、眼が水分を供給されること、または眼の乾きが中和されることを有利に提供する。さらにヒアルロン酸またはそのヒアルロン酸塩はまた、粘性調節因子として作用する。
【0036】
本発明の場合において、粘性調節因子という用語は、薬理学的に適合性であり、粘性を増加する効果を有する物質を意味するために使用される。好ましくは、さらに使用され得る粘性調節因子は、粘弾性の挙動を有する。
【0037】
粘性を増加する効果は、眼の表面または鼻粘膜の表面に適用される薬学的組成物が、その場所での増加された滞留時間を享受すること、および眼の表面または鼻粘膜の表面から再びすぐに流出しないということを極めて有利に提供する。
【0038】
ヒアルロン酸またはヒアルロン酸塩に加えて、コンドロイチン硫酸、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリアクリル樹脂、ポリエチレングルコール、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、またはそれらの混合物を、粘性調節因子として使用することがまた可能である。
【0039】
好ましい実施態様に従って、ヒアルロン酸および/またはヒアルロン酸塩に加えて、さらなる粘性調節因子はなんら使用されない。
【0040】
ヒアルロン酸またはヒアルロン酸塩は、ウシの眼の硝子体液から単離され得るが、またニワトリのトサカからも単離され得る。さらに、ヒアルロン酸またはヒアルロン酸塩はまた、薬学的品質で、細菌株においても生成され得る。
【0041】
例えば、ヒアルロン酸カリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸カルシウム、および/またはヒアルロン酸マグネシウムは、ヒアルロン酸の塩として使用され得る。
【0042】
ヒアルロン酸ナトリウムは特に好ましい。
【0043】
ヒアルロン酸は特に、眼の硝子体液の構成部分であり、およびその点に関して、ヒトの有機的組織体に対して外来性の化合物ではない。その理由のために、ヒアルロン酸は、免疫学の観点から、非常に十分に適合性である。
【0044】
極めて有利なことに、ヒアルロン酸またはヒアルロン酸塩は、ムチンと構造的類似性を享受する。ムチンは、3層の涙液層の最下部の層を形成し、ならびに角膜および結膜上皮の至適な湿潤を提供する。
【0045】
従って、ヒアルロン酸および/またはヒアルロン酸塩は、涙液層の粘液相を模倣し、そして一方で眼における滞留時間を延長し、そして眼の湿潤性を改善する。粘液相の模倣はまた、他方で眼と眼瞼との間の摩擦の減少、従って眼の機械的な刺激における顕著な減少を引き起こす。
【0046】
本発明の使用に従って生成される薬学的組成物中のヒアルロン酸またはヒアルロン酸塩の使用は、特に、眼の湿潤に対する障害に関して、すなわち「ドライアイ」と言われる症例において、および眼の湿潤に対する障害から生じる上皮病変の処置のために、極めて有利である。
【0047】
ヒアルロン酸ナトリウム水溶液は、非ニュートン流動特性を伴なう流体である。その物理学的特性のために、ヒアルロン酸ナトリウム水溶液は、結膜や角膜上皮に対して良好な張り付き効果および長期間の滞留時間を伴なうスリップ剤および潤滑剤として優れて十分に適切であり、視力効率に悪影響を及ぼさない。本発明に従う組成物中のヒアルロン酸ナトリウムの0.1重量%の濃度は、患者の主観的な感覚をかなり改善し、これはドライアイを処置する場合に重要である。
【0048】
ヒアルロン酸の非ニュートン流動挙動は、眼に対する使用について優れ、すなわち、剪断速度を増加するとともに粘性が減少する特性を提供する。
【0049】
本発明に従う薬学的組成物の、眼の角膜への適用後、剪断ストレスが眼瞼のまばたきの動きによって薬学的組成物に適用され、それによって最初に増加された粘性が減少される。粘性は、眼瞼のまばたきの動きに起因して減少され、それによって均一な液層が眼の表面上に形成される。まばたきの後、粘性は増加し、それによって液層は眼の表面に堅固に接着する。
【0050】
本発明に従う薬学的組成物の非ニュートン流動特性は、調製される溶液、ゲル、ペースト、または軟膏中のヒアルロン酸またはヒアルロン酸塩、およびムチンとのその構造的類似性によってさらに生成され、優れたスリップおよび潤滑化効果に加えて、眼の角膜への優れた接着を与える。乾燥症候群で生じる眼への機械的な刺激は、非常に減少されるかまたは消失される。さらに、眼の角膜への薬学的組成物の接着は、抗ニュートン流動特性により改善されるという事実は、上皮病変のより速い治癒を提供する。
【0051】
さらに、ヒアルロン酸ナトリウムを保有する点眼薬は、動物試験において、眼の上皮における創傷の治癒を促進するような特性を示す。ヒアルロン酸またはヒアルロン酸ナトリウムが、濃度に依存して、上皮細胞の移動、従って創傷の治癒を促進することが見出された。0.1重量%のヒアルロン酸ナトリウム溶液は、ウサギの角膜上皮細胞の場合において、増加された上皮細胞移動を提供した。
【0052】
ヒアルロン酸またはヒアルロン酸ナトリウムはまた、角膜上皮に対する傷害の事象において、または角膜の焼灼の場合において、より迅速なおよびより良好な創傷の治癒を引き起こし、すなわち、ほとんど瘢痕を生じない。
【0053】
ヒアルロン酸による創傷の治癒の促進に関与される正確な作動機構は未だ説明されない。周囲の細胞を介する血液の循環に対する影響はほとんどありそうにないようであるが、炎症プロセスにおいて役割を果たす細胞に対する効果について種々の示唆がある。
【0054】
最後に、用量に依存して、ヒアルロン酸は、酸素ラジカルによる細胞への障害に関して防御作用を示す。遊離酸素ラジカルは、創傷の治癒プロセスを遅延し、従って炎症状態において重要な役割を果たす。
【0055】
ヒアルロン酸またはヒアルロン酸塩の抗炎症性効果、およびヒアルロン酸またはヒアルロン酸塩によって与えられる、酸素ラジカルの有害な影響からの防御は、本発明に従う薬学的組成物中のパンテノールまたはパントテン酸の作用と、相乗的な関係において協同する。
【0056】
さらに好ましい実施態様に従って、ヒアルロン酸および/またはヒアルロン酸塩は、約50,000〜約10,000,000ダルトン、好ましくは約250,000〜約5,000,000ダルトンの範囲にある分子量である。特に好ましくは、ヒアルロン酸またはヒアルロン酸塩の分子量は、500,000〜4,000,000ダルトンである。非常に好ましくは、ヒアルロン酸またはヒアルロン酸塩は、1,500,000〜3,500,000ダルトンの分子量である。
【0057】
ヒアルロン酸または例えばヒアルロン酸ナトリウムなどとして使用されるヒアルロン酸塩の高い分子量は、低いレベルの濃度にて、高レベルの粘弾性を提供する。分子鎖は、もつれた配座において、ランダムな配置で、溶液中で存在する。眼瞼の動きによって行使される剪断力の影響下で、高分子が実質的に平行な関係において配向される。剪断力の影響下での3次元構造における変化は、優れた粘弾性特性のために重要であると考えられる。
【0058】
眼瞼を開ける場合、物質は角膜の表面上を覆い、ヒアルロン酸塩の高い水結合能のためにまた、蒸発に対する保護を示す。このことは、眼における涙液の量の減少を含む「ドライアイ」症候群に関して、およびまた、乾いたまたは乾燥した鼻粘膜の処置においての両方で有利である。
【0059】
さらに好ましい実施態様に従って、ヒアルロン酸の量および/またはヒアルロン酸塩の量は、各場合において薬学的組成物の総重量に関して、約0.005重量%〜約5重量%、好ましくは約0.01重量%〜約1重量%である。
【0060】
特に好ましくは、薬学的処方物の総重量に関して、ヒアルロン酸の量および/またはヒアルロン酸塩の量は、約0.05重量%〜約0.5重量%である。
【0061】
極めて有利なことに、ヒアルロン酸およびヒアルロン酸塩はそれぞれ、水を結合する特性を有する。水を結合するその特性は、所望されない眼の角膜の乾きが中和されるので、乾燥症候群の処置に関して特に有利である。薬学的処方物の総重量に関して、ヒアルロン酸および/またはヒアルロン酸塩は、0.1重量%〜0.3重量%の濃度のレベルが、非常に満足いくものであることが証明された。
【0062】
「ドライアイ」症候群の診断に関するさらなる診断パラメーターは、涙液層の流涙時間であり、これは涙液の質についての情報を提供することを可能にする。その場合において、例えば、涙液層がフルオレセインで染色され、次いで患者は瞬目反射しないで可能な限り開眼し続けるように要求される。次いで、細隙灯が、最初にいつ涙液層が破れるのかを確立するために使用される。期間が10秒未満である場合、「ドライアイ」症候群の疑いがある。その点に関して、0.1重量%〜0.3重量%の濃度でのヒアルロン酸は、涙液層の流涙時間を延長することに関して非常に有効であることが証明された。
【0063】
パンテノールおよび/またはパントテン酸、および人工的な涙液層の提供の同時作用は、特に「ドライアイ」症候群において、上皮病変のより速い治療を許容する相乗効果を導く。
【0064】
パンテノールおよび/またはパントテン酸、ならびにヒアルロン酸および/またはヒアルロン酸塩の共同適用が、迅速な上皮形成を導くことが驚くべきことに見出された。同時に、眼における上皮病変が関与される場合に生じる極めて不快なそう痒が、迅速に緩和される。
【0065】
本発明に従う薬学的組成物は従って、薬物の組合わせである。
【0066】
ヒアルロン酸および/またはヒアルロン酸塩は、非ニュートン流動挙動のために、眼の表面に対する使用について非常に適切な粘弾性特性を有することが見出されている。非ニュートン流動挙動は、眼に適用された薬学的組成物の流出を遅延し、従って眼の角膜との接触を延長する。従って、パンテノールおよび/またはパントテン酸は、長期間にわたって、例えば少なくとも30分間〜少なくとも60分間、角膜上に保持され得る。
【0067】
ヒアルロン酸またはヒアルロン酸塩の粘弾性特性に起因して、ある流出効果が起こるべきである限り、パンテノールおよび/またはパントテン酸は、眼瞼のまばたきごとに眼の全表面にわたって再び実質的に均一に、容易に分配される。
【0068】
それゆえ、極めて有利なことに、パンテノールおよび/またはパントテン酸は、処置の全継続時間にわたって、眼の表面上で均一に作用する。このことは、治療を行う場合に、一方でパンテノールおよび/またはパントテン酸の投薬量が減少され得るが、他方で処置の継続時間が短縮され得ることを有利に提供し得る。
【0069】
パンテノールおよび/またはパントテン酸の量が、薬学的組成物の総重量に関して、約0.5重量%〜10重量%、好ましくは約2重量%〜5重量%である場合が好ましい。薬学的組成物の総重量に関して約3重量%の量が、非常に適切であることが証明された。
【0070】
好ましい実施態様に従って、パンテノールは、D−(+)−2,4−ジヒドロキシ−N−(3−ヒドロキシプロピル)−3,5−ジメチルブチルアミドの形態において存在する。その右旋性のD配座はまた、デクスパンテノールと言われる。
【0071】
本発明のさらに好ましい実施態様に従って、パントテン酸は水溶性の塩、好ましくはパントテン酸ナトリウムまたはパントテン酸カルシウムの形態にある。
【0072】
極めて有利なことに、デクスパンテノールは、水を結合する特性を有する。このことは、ヒアルロン酸および/またはヒアルロン酸塩の水を結合する特性を有利に補足する。さらに、ヒアルロン酸および/またはヒアルロン酸塩、ならびにパントテン酸および/またはパンテノール、特にデクスパンテノールの創傷治癒を促進する効果は、角膜上皮の上皮病変を処置するにおいて、これまでに理解されていない様式において互いに補足する。
【0073】
薬学的組成物が、溶液、懸濁液、乳濁液、ゲル、軟膏、ペースト、粉末、顆粒、または錠剤の形態にあることがさらに好ましく、これは好ましくは、眼に直接的に使用され得るか、または眼の表面に適用され得る。
【0074】
好ましい実施態様に従って、薬学的組成物は溶液の形態にあり、それによってこれは例えば点眼薬または眼スプレイの形態において、眼の角膜の表面に適用され得る。
【0075】
本発明に従う薬学的組成物は、適用の前にまず、例えば緩衝溶液のような水溶液中に溶解される固体の形態にあり得ることが理解される。例えば、水性の緩衝溶液中での固体の溶解後、その溶液は滅菌ろ過に供され、次いで眼スプレイまたは点眼薬として角膜に適用される。好ましくは、固体および溶媒は、別々に保存される場合、すでに、滅菌形態にあり、それによって溶液の生成後の滅菌ろ過は必要とされない。従って、使用者は、混合物または溶液を作製した後、直接的に薬学的組成物を適用し得る。
【0076】
例えば、粉末、粒子、顆粒、または錠剤のような固体の形態において薬学的組成物を調製する場合、本発明に従う薬学的組成物は、好ましくは、水溶液中で容易に溶解され得るパンテノール、パントテン酸、および/またはパントテン酸の塩、ならびに水中で非常に可溶性であるヒアルロン酸および/または水中で非常に可溶性であるヒアルロン酸ナトリウムを、含む。
【0077】
好ましくは、本発明に従う薬学的組成物は、単回用量または複数回用量の容器中で、滅菌形態にある。
【0078】
好ましくは、本発明に従う保存剤非含有の薬学的組成物の保存および送達について、「PTA heute」1996、第12巻、第1230〜1232頁において記載されるCOMOD(登録商標)システムの使用がなされ、これは本発明に従う薬学的組成物の滅菌保存および複数の送達を許容する。使用後に廃棄される従来の単回用量の容器を使用することがまた可能であることが理解される。
【0079】
鼻粘膜に対する薬学的組成物の適用について、例えば、従来の公知のスプレイ容器を使用することが可能である。例えば、上記のCOMOD(登録商標)システムを使用することが可能である。Deutsche Apotheker Zeitung 139、第46号、第48〜51頁、1999年11月18日において記載される3Kシステム(3−チャンバーシステム)は、非常に適切であることがまた証明された。薬学的組成物はまた、ピペットを使用して鼻に滴下され得る。
【0080】
本発明に従う薬学的組成物においてヒアルロン酸および/またはヒアルロン酸塩を使用する場合、薬学的組成物は好ましくは保存剤を含まずに調製される。
【0081】
保存剤は、角膜前涙液層を障害し得、そして表面角膜上皮細胞の微絨毛および微小ヒダの数の減少を導き得る。特に、広範に普及する塩化ベンザルコニウムは大きな障害の可能性を有する。乾燥症候群によって誘導される眼の炎症の所望される治療に関して、保存剤の添加による任意のさらなる眼に対する炎症および/または障害を回避することが有利である。
【0082】
原理上、本発明に従う薬学的組成物はまた、眼錠剤の形態において結膜嚢に導入され得る。眼錠剤は、涙液の作用下で迅速に溶解する。
【0083】
しかし、点眼薬の形態における薬学的組成物の、眼への適用が好ましい。
【0084】
眼軟膏もしくは眼ゲル、または鼻における使用のための軟膏もしくはゲルの形態において薬学的組成物を調製する場合、活性な物質は、例えばコレステロール、羊毛脂、羊毛脂アルコール、セタノールなどのような乳化剤の添加を伴なってまたは伴なわないで、例えば、ワセリンまたはパラフィン中で調製される。
【0085】
本発明の目的はさらに、眼科学的なおよび/または鼻科学的な機能障害の処置のために請求項1〜8のいずれかに記載の薬学的組成物の使用によって獲得される。
【0086】
好ましくは請求項1〜8のいずれかに記載の薬学的組成物は、眼の角膜の湿潤に対する障害に関連される眼科学的な機能障害の処置のために使用される。
【0087】
さらに好ましくは、薬学的組成物は、アレルギー性鼻結膜炎、アトピー性角結膜炎、アレルギー性角結膜炎、巨大乳頭結膜炎、春季カタル、例えば周期性上強膜炎、一過性部分上強膜炎のような上強膜炎、強膜炎、テノン嚢炎、シェーグレン症候群、またはそれらの複合型の形態の処置のために使用される。
【0088】
好ましくは、請求項1〜8のいずれかに記載の薬学的組成物は、鼻粘膜に関して乾きの現象に関連される鼻科学的な機能障害の処置のために使用される。
【0089】
さらに好ましくは、薬学的組成物は、慢性鼻炎、乾燥性鼻炎、乾燥性前鼻炎、またはそれらの複合型の形態の処置のために使用される。
【0090】
本発明に従う薬学的組成物はさらに、操作的な介入、例えば鼻の中隔に対する操作の後に、極めて有利に使用され得る。本発明に従う組成物の適用は、鼻粘膜の乾きを防止し、そして同時に鼻粘膜の上皮再形成を促進する。本発明に従う薬学的組成物はまた、眼に対する操作的な介入の後に使用され得る。
【0091】
眼およびまた鼻の両方はヒトにとって非常に重要な感覚器官であるので、本発明に従う薬学的組成物は、眼科学および鼻科学の分野において飛躍的な前進を示す。
【実施例】
【0092】
眼科学的および鼻科学的な適用のための薬学的組成物
50mg/mlのデクスパンテノール
1.55mg/mlのヒアルロン酸、分子量:1.5×106〜3.5×106ダルトン
2mg/mlのクエン酸ナトリウム
pH7.0〜pH7.4が到達されるまで1%クエン酸水溶液の添加
1mlへの注射の目的のための水の添加。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともパンテノールおよび/またはパントテン酸、ならびにヒアルロン酸および/またはヒアルロン酸塩、ならびに必要に応じてさらなる薬学的な助剤を含む、薬学的組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の薬学的組成物であって、各場合において薬学的組成物の総重量に関して、ヒアルロン酸の量および/またはヒアルロン酸塩の量が約0.005重量%〜約5重量%、好ましくは約0.01重量%〜約1重量%であることを特徴とする、薬学的組成物。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の薬学的組成物であって、ヒアルロン酸および/またはヒアルロン酸塩が、約50,000〜約10,000,000ダルトン、好ましくは約250,000〜約5,000,000ダルトンの範囲にある分子量を有することを特徴とする、薬学的組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の薬学的組成物であって、ヒアルロン酸塩がヒアルロン酸ナトリウムであることを特徴とする、薬学的組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の薬学的組成物であって、薬学的組成物の総重量に関して、パンテノールおよび/またはパントテン酸の量が約0.5重量%〜10重量%、好ましくは約2重量%〜5重量%であることを特徴とする、薬学的組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の薬学的組成物であって、パンテノールがデクスパンテノールの形態にあることを特徴とする、薬学的組成物。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の薬学的組成物であって、パントテン酸が水溶性の塩、好ましくはパントテン酸ナトリウムまたはパントテン酸カルシウムの形態にあることを特徴とする、薬学的組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の薬学的組成物であって、薬学的組成物が、溶液、懸濁液、乳濁液、ゲル、軟膏、ペースト、粉末、粒子、顆粒、または錠剤の形態にあることを特徴とする、薬学的組成物。
【請求項9】
眼科学的なおよび/または鼻科学的な機能障害の処置のための、請求項1〜8のいずれかに記載の薬学的組成物の使用。
【請求項10】
請求項9に記載の使用であって、眼科学的な機能障害が、眼の角膜および結膜の湿潤に対する障害に関連されることを特徴とする、使用。
【請求項11】
請求項9または請求項10に記載の使用であって、眼科学的な機能障害が、アレルギー性鼻結膜炎、アトピー性角結膜炎、アレルギー性角結膜炎、巨大乳頭結膜炎、春季カタル、上強膜炎、強膜炎、テノン嚢炎、シェーグレン症候群、およびそれらの複合型の形態からなる群より選択されることを特徴とする、使用。
【請求項12】
請求項9に記載の使用であって、鼻科学的な機能障害が、鼻粘膜の乾きの現象に関連されることを特徴とする、使用。
【請求項13】
請求項9または請求項12に記載の使用であって、鼻科学的な機能障害が、慢性鼻炎、乾燥性鼻炎、およびそれらの複合型の形態からなる群より選択されることを特徴とする、使用。

【公表番号】特表2006−501133(P2006−501133A)
【公表日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−550796(P2003−550796)
【出願日】平成14年12月11日(2002.12.11)
【国際出願番号】PCT/DE2002/004527
【国際公開番号】WO2003/049747
【国際公開日】平成15年6月19日(2003.6.19)
【出願人】(504228243)ウーアザファルマ アールツナイミッテル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント カンパニー カーゲー (3)
【氏名又は名称原語表記】URSAPHARM Arzneimittel GmbH & Co.KG
【Fターム(参考)】