説明

眼科検査装置

【課題】加圧手段によって加圧された眼の眼底に関連する情報が得られる。
【解決手段】被検者眼Eを加圧する加圧手段10と、加圧手段によって加圧された眼の眼底Efに関連する第1信号を検出するための眼底信号検出手段100と、を備える。制御部は、眼底信号検出手段100によって検出された第1信号を用いて,眼内圧、眼全体の硬さ、眼底の硬さ、眼軸長の少なくともいずれかを計測する。眼底信号検出手段には、例えば、光干渉計が用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検者眼を検査する眼科検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
眼科検査装置の一つである眼圧計は、眼圧を検査する。そして、測定された眼圧は、緑内障の診断などに用いられる。
【0003】
非接触式眼圧計は、ノズルから角膜に向けて流体を噴射したときの角膜の変形状態を検出することにより眼圧を非接触にて測定する。特許文献1の眼圧計は、角膜の変形状態を観察及び記録する観察システムを有し、変形していない及び/又は変形している角膜の画像を記録する。ただし、このような装置であっても、眼内の状態を観察するという点では改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−231052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記点を改善する新規の眼科検査装置を提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下のような構成を備えることを特徴とする。
【0007】
被検者眼を加圧する加圧手段と、
加圧手段によって加圧された眼の眼底に関連する第1信号を検出するための眼底信号検出手段と、を備える。さらに、前記眼底信号検出手段によって検出された前記第1信号を用いて,眼内圧、眼全体の硬さ、眼底の硬さ、眼軸長の少なくともいずれかを計測する計測手段を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、加圧手段によって加圧された眼の眼底に関連する情報が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。図1は本実施形態に係る眼科検査装置の具体例を示す概略図である。図2は角膜の変形状態を検出する光学系の具体例を示す図であって、ノズル付近の光学系を上方より見た図である。図3は制御系の具体例を示すブロック図である。なお、図1中におけるX方向は左右方向、Y方向は上下方向、Z方向は前後方向を表す。以下の測定系及び光学系は、図示無き筐体に内蔵されている。また、その筐体は、周知のアライメント用移動機構により、被検者眼Eに対して三次元的に移動されてもよい。また、手持ちタイプ(ハンディタイプ)であってもよい。
【0010】
本実施形態に係る眼科検査装置の概略について説明する。本装置は、例えば、加圧ユニット10、眼底検出系100、角膜検出系200(図2参照)、を含む。
【0011】
加圧ユニット10は、眼Eを加圧する。加圧ユニット10として、例えば、図1に図示された空気圧縮機構の他、超音波を角膜Ecに向けて発するトランスデューサ、など加圧ユニットが用いられる。加圧する方向は、例えば、眼軸方向、眼軸に対して傾斜する方向である。なお、加圧ユニット10は、角膜Ecを変形させる程度の圧力を眼Eに対して加える構成が好ましい。その他、角膜Ecがわずかに振動する程度に微弱な圧力を眼Eに対して加える構成であってもよい。
【0012】
眼底検出系100は、加圧ユニット10によって加圧された眼の眼底に関連する第1信号を検出するために設けられている。眼底検出系100は、例えば、第1信号を経時的に検出する。眼底検出系100として、好ましくは、図1に図示されるように、眼底から反射された光と他の光との干渉状態を検出する干渉光学系100aが用いられる。
【0013】
干渉光学系(光干渉計)100aは、光源102、光分割器(例えば、図示されたカップラー104)、検出器120を含む。干渉光学系100aは、光源102から出射された光を光分割器によって分割し、分割された光の少なくとも一方を眼Eに照射する。そして、眼底から反射された光と、他の光との干渉状態を検出器120にて検出する。検出器120から出力信号に基づいて眼底Efの状態が検出される。
【0014】
例えば、深さ方向における眼底の位置が検出される。これにより、角膜に力が加えられるとき、眼底の位置が検出される。また、高い精度にて眼底の状態が検出される。なお、ドップラー干渉計として眼底の位置変化に関する速度(例えば、眼底の変形の応答速度)を検出しても良い。
【0015】
干渉光学系100aは、例えば、眼によって反射された光と,装置内で形成された参照光と、の間の干渉状態を検出する。干渉光学系100aは、眼によって反射された2つの光(例えば、角膜反射と眼底反射)の間の干渉状態を検出する構成であってもよい。
【0016】
干渉光学系100aは、眼底Efのある一点上に関する干渉信号を検出する干渉計であってもよいし、眼底の横断方向に関する複数の干渉信号を検出する干渉計であってもよい。また、干渉光学系100aは、眼底の検出に加えて、角膜の状態を検出するようにしてもよい。さらに、干渉光学系100aは、眼Eの眼軸長を計測する干渉光学系であってもよい。
【0017】
なお、眼底検出系100には、光検出器に限定されず、X線、磁気などの検出波を送受信することにより眼底Efの情報を得る構成が用いられる。角膜が加圧されるとき、眼の深さ方向に関して力が働くので、眼底検出系100は、深さ方向に関する眼底の変化(例えば、位置の変化、変化の速度)を検出できるデバイスであることが好ましい。
【0018】
角膜検出系200は、加圧ユニット10によって加圧された眼Eの角膜Ecに関連する第2信号を検出するために設けられている。角膜検出系200として、例えば、図2に図示された光学系の他、角膜断面像を撮像する撮像ユニット(例えば、シャインプルーフカメラ、OCT、スリットランプ)などの光検出器が用いられる。そして、光検出器からの検出信号に基づいて、加圧される角膜Ecの状態が検出される。なお、角膜検出系200には、光検出器に限定されず、X線、磁気エネルギーなどの放射体を送受信することにより角膜Ecの情報を得る構成が用いられる。
【0019】
なお、第1信号の検出と第2信号の検出は、同じ検出系によって実行されてもよい。例えば、干渉光学系100aは、第1信号の検出と第2信号の検出を兼用してもよい。干渉光学系100aは、角膜から反射された光と、他の光との干渉状態を検出器にて検出する。
【0020】
制御部80(図3参照)は、加圧ユニット10、眼底検出系100、角膜検出系200を制御する。制御部80は、眼底検出系100によって検出された第1信号を用いて,眼内圧、眼全体の硬さ、眼底の硬さ、眼軸長の少なくともいずれかを計測する。制御部80は、眼底検出系100によって検出された第1信号と角膜検出系200によって検出された第2信号とを用いて、眼内圧、眼全体の硬さの少なくともいずれかを計測しても良い。制御部80は、加圧された眼の応答結果を用いて眼の特性を検査する。本装置は、例えば、眼圧計、眼の硬さ計、眼底の硬さ計、眼軸長測定器の少なくともいずれかの装置として利用される。
【0021】
例えば、眼底検出系100は、角膜が加圧されている間の眼底Efの状態を観察できる。また、眼底検出系100は、角膜が加圧される前、又は角膜が加圧された後の眼底の状態を観察できる。眼底検出系100は、角膜への加圧に関連した眼底の評価に利用される。
【0022】
角膜が加圧されたときに生じる波は、前房、水晶体、硝子体などの眼内媒質を伝搬した後、眼底に到達する。したがって、眼底検出系100は、このような波を受けた眼底の状態を観察できる。
【0023】
これによれば、角膜が加圧されたときに生じる波を受けた眼底の状態と,眼内圧との関係が評価される。また、眼内圧に起因する眼内物質の硬さをより考慮した評価が可能となる。例えば、眼内圧が高い場合、圧縮によって眼内物質が硬くなり、波は眼底に伝達やすい。このため、眼底の変形量が大きい。一方、眼内圧が低い場合、眼内物質は柔らかく、波は眼底に伝達されにくい。このため、眼底の変形量が小さくなる。ここで、角膜に圧力が加えられたときの眼底の変化は、眼内圧が影響するから、眼底の状態を観察することによって、眼全体の圧力を考慮した眼圧測定が可能となる。
【0024】
また、加圧された眼の眼底の状態を観察することによって、眼底の硬さ(例えば、眼底側強膜の硬さ)に関する評価が可能となる。例えば、眼底側強膜が硬い場合、眼底の変形量が小さい。一方、眼底側強膜が柔らかい場合、眼底の変形量が大きい。なお、眼内圧と眼底の硬さに関する評価を総合的に行うことも可能である。
【0025】
上記のような眼内圧、眼底の硬さに関する評価は、強度近視や緑内障などの症例に関する診断に利用できる可能性がある。例えば、眼底が柔らかければ、長眼軸長化しやすく、緑内障になりやすい可能性がある。
【0026】
また、眼底検出系100は、力が加えられた眼Eの眼球の位置を観察できる。眼底検出系100は、角膜への加圧に関連した眼球の移動を評価するために利用される。例えば、角膜Ecへ力が加えられたとき、深さ方向における眼球の移動は、前述のように角膜Ecの状態を検出する際に影響を及ぼす可能性がある。また、角膜が振動していなくても、眼球の振動を角膜の振動と誤る可能性がある。したがって、眼底検出系100は、これらの問題の克服に利用される。
【0027】
以下に、例えば、加圧ユニット10として空気圧縮機構、角膜検出系200として斜入射検出光学系及び干渉光学系100a、眼底検出系として干渉光学系100aを適用させた場合の実施形態の一例について説明する。
【0028】
<非接触式角膜加圧ユニット> 1は空気圧縮用のシリンダ部、2はピストンであり、これらは被検眼に噴出する空気を圧縮する空気圧縮機構として用いられる。3はロータリソレノイドであり、ロータリソレノイド3(以下、ソレノイド3として説明する)は駆動電流が付与されると、アーム4、コネクティングロッド(ピストンロッド)5を介してピストン2を圧縮方向(矢印A方向)に移動させる。ピストン2の移動によりシリンダ部1内の空気圧縮室34で圧縮された空気は、シリンダ1の先端に連結されるチューブ(パイプでもよい)70、圧縮された空気を収容する気密室71を介して、ノズル6から被検者眼Eの角膜に向けて噴出される。なお、シリンダ部1は水平面(XZ面)に対して平行に配置されており、ソレノイド3の駆動によってピストン2がシリンダ部1内で水平に移動されることにより空気の圧縮が行われる。
【0029】
例えば、シリンダ部1はその長手方向が水平方向と平行に配置され、シリンダ部1の内面はピストン2をガイドする。このため、ピストン2の移動方向(圧縮方向)は、水平方向となる。なお、上記各構成部材は、装置本体の筐体内に設けられたステージ上にそれぞれ配置されている(図示省略)。
【0030】
また、ソレノイド3には図示なきコイルバネが備えられており、付与される電流がカット又は減じられると、コイルバネの戻り方向への付勢力により、圧縮方向に移動されたピストン2が戻り方向(矢印Aの反対方向)に移動されて初期位置に戻される。また、本実施形態では、ノズル6の軸線の上方に空気圧縮機構が配置された構成(ノズル6の軸線を外した構成)となっているため、シリンダ部1まで涙等が吸込まれる可能性は少ない。
【0031】
8は透明なガラス板であり、ノズル6を保持するとともに、観察光やアライメント光を透過させる。また、ガラス板8は気密室71を構成する壁の一部として用いられる。9はノズル6の背面に設けられた透明なガラス板であり、気密室71の後壁を構成するとともに、観察光やアライメント光を透過させる。ガラス板9の背後には、観察・アライメント光学系11がその観察光軸及びアライメント光軸と、ノズル6の軸線が同軸になるように配置されているが、本発明とは関連が少ないため、説明は省略する。
【0032】
12は気密室71の圧力を検出する圧力センサ、13はエア抜き穴である。エア抜き穴13により、ピストン2に初速が付くまでの間の抵抗が減少され、時間に比例的な立ち上がりの圧力変化を得ることができる。
【0033】
<角膜検出系> 14は角膜変形検出用の赤外LED(図2参照)であり、LED14を出射した光はコリメ−タレンズ15により平行光束とされて被検眼の角膜に投光される。角膜で反射した光は受光レンズ16、ピンホ−ル板17を通過して受光素子である光検出器18に受光される。なお、角膜変形検出用の光学系は、被検眼が所定の変形状態(例えば、圧平状態)のときに光検出器18の受光量が最大となるように配置されている。すなわち、本角膜検出系は、角膜に指標を投光し、その反射光を受光することによって角膜の変形状態を検出する。
【0034】
<干渉光学系> 図1に戻る。干渉光学系100aは、眼底に測定光を照射する。干渉光学系100aは、眼底によって反射された測定光と,参照光との干渉状態を受光素子(検出器120)によって検出する。干渉光学系100aは、光源102から出射された光束をカップラー(ビームスプリッタ)104によって測定光と参照光に分割する。そして、干渉光学系100aは、測定光学系(例えば、ダイクロイックミラー30)によって測定光を眼底Efに導き,また、参照光を参照光学系110aに導く。その後、眼底Efによって反射された測定光と,参照光とが合成された光(干渉光)を検出器(受光素子)120に受光させる。
【0035】
また、干渉光学系100aは、角膜に測定光を照射する。干渉光学系100aは、角膜によって反射された測定光と,参照光との干渉状態を検出器120によって検出する。そして、干渉光学系100aは、測定光学系(例えば、ダイクロイックミラー30)によって測定光を角膜Ecに導き,また、参照光を参照光学系110bに導く。その後、角膜Ecによって反射された測定光束と,参照光とが合成された光(干渉光)を検出器120に受光させる。
【0036】
フーリエドメインタイプの場合では、光のスペクトル強度が検出器120によって検出され、スペクトル強度に関するデータをフーリエ変換することによって深さプロファイル(Aスキャン信号)が取得される。干渉光学系100aとしては、例えば、Spectral-domain (SD方式)、Swept-source(SS方式)が挙げられる。また、Time-domain(TD方式)であってもよい。この場合、光コヒーレンストモグラフィーの技術が利用されうる。
【0037】
SD方式の場合、光源102として低コヒーレント光源(広帯域光源)が用いられ、検出器120には、ある波長幅を持つ光を各波長(周波数)成分に分光する分光光学系(スペクトルメータ)が設けられる。スペクトルメータは、例えば、回折格子とラインセンサからなる。
【0038】
SS方式の場合、光源102として出射波長を時間的に高速で変化させる波長走査型光源(波長可変光源)が用いられ、検出器120として、例えば、単一の受光素子が設けられる。光源102は、例えば、光源、ファイバーリング共振器、及び波長選択フィルタによって構成される。そして、波長選択フィルタとして、例えば、回折格子とポリゴンミラーの組み合わせ、ファブリー・ペローエタロンを用いたものが挙げられる。
【0039】
参照光学系110は、第1参照光学系110aと、第2参照光学系110bと、を備える。第1参照光学系110aは、眼底Efでの測定光の反射によって取得される光と合成される第1参照光を生成する。第2参照光学系110bは、角膜での測定光の反射によって取得される光と合成される第2参照光を生成する。光分割手段としてのビームスプリッタ111は、カップラー104から送られた参照光を分割し、第1参照光と第2参照光を生成する。
【0040】
参照光学系110は、マイケルソンタイプであってもよいし、マッハツェンダタイプであっても良い。参照光学系110は、例えば、図1に図示された反射光学系(例えば、参照ミラー)によって構成される。そして、参照光学系110は、カップラー104から送られた光を反射光学系により反射することにより再度カップラー104に戻し、検出器120へ導く。他の例としては、参照光学系110は、透過光学系(例えば、光ファイバー)によって構成され、カップラー104からの光を戻さず透過させることにより検出器120へ導く。
【0041】
参照光学系110aは、参照光路中に配置された光学部材を移動させることにより、測定光と第1参照光との光路長差を変更する構成を有する。例えば、駆動機構55の駆動によって第1参照ミラー112が光軸方向に移動される。光路長差を変更するための構成は、測定光学系106の測定光路中に配置されてもよい。
【0042】
眼底の状態を検出する場合、眼底に照射された光の光路長と、第1参照光の光路長とがほぼ一致されるように光路差が調整される。そして、検出器120によって検出されたスペクトルデータが制御部80(図3参照)へ入力され、フーリエ変換を用いてスペクトルデータの周波数が解析される。これにより、眼Eの深さ方向における情報が取得される(図4のピークAR、PR参照)。
【0043】
第2参照光学系110bは、アライメント完了時において、干渉信号の検出可能範囲(深さプロファイルを取得できる範囲)に角膜Ecが含まれるように光路長を固定している。フーリエドメイン干渉計の場合、測定光と第2参照光との光路長が一致する位置から所定の距離までの範囲内における干渉信号が得られる。
【0044】
そこで、Z方向のアライメントが適正に調整されると、角膜によって反射された測定光と第2参照光との干渉が生じ、その干渉光による干渉信号がAスキャン信号として検出されるようになる(図4のピークAC,PC参照)。
【0045】
<制御系> 図3にて制御系を説明する。制御部80は、装置全体の制御、眼圧の測定などを行う。制御部80には、検出回路21、処理回路22、駆動回路23、赤外光源14、光検出器18、光源102、検出器120、メモリ81、が接続されている。
【0046】
検出回路21は、圧力センサ12から出力される検出信号を処理する。処理回路22は、光検出器18から出力される受光信号を処理する。駆動回路23は、ソレノイド3を駆動させる。
【0047】
以上のような構成を備える装置において、その動作について説明する。制御部80は、測定を開始するトリガ信号が入力されると、駆動回路23を介してソレノイド3に電流を付与する。ソレノイド3が動作され、その駆動力がアーム4及びロッド5を介してピストン2に伝達されると、ピストン2が移動される。シリンダ部1内で圧縮された空気は、チューブ70を介して気密室71内の空気を圧縮する。そして、ノズル6を介して,圧縮された空気が角膜Ecに対して吹き付けられる。これにより、角膜Ecが徐々に変形される。
【0048】
LED14から投光された光は角膜に照射され、角膜で反射された光は、光検出器18へ入射する。そして、光検出器18から出力される検出信号を用いて、角膜の状態が検出される。処理回路22は、光検出器18からの信号を処理し、受光光量が所定のピ−クを示したことを検知することにより、角膜Ecが圧平状態に達したことを検知する。
【0049】
制御部80は、検出回路21を用いて、圧力センサ12から出力される検出信号を処理し、圧力値をモニタリングする。そして、制御部80は、圧平状態が検知されたときの圧力値を得て、これに基づいて眼圧値を算出する。
【0050】
<眼底観察>
制御部80は、干渉光学系100aを制御し、空気圧縮機構によって角膜が変形されているときの眼底の状態を検出する。さらに、制御部80は、角膜の変形前後における眼底の状態を検出してもよい。
【0051】
制御部80は、光源102から光を出射させる。そして、光源102からの光(測定光)は、眼Eの眼底、角膜に向けて出射され、その反射光が検出器120に導光される。また、参照光は、第1参照光学系110a及び第2参照光学系110bの光路を介して検出器102に導光される。
【0052】
アライメントが完了されると、角膜反射光と第2参照光との間の干渉信号は、Aスキャン信号として検出される(図4参照)。干渉信号ACは角膜前面に対応し、干渉信号PCは角膜後面に対応する。
【0053】
眼底反射光と第1参照光との間の干渉信号が検出される位置は、眼Eの眼軸長によって異なる。制御部80は、駆動機構55の駆動を制御し、第1参照ミラー112を連続的又は段階的に移動させる。そして、制御部80は、検出器120によってスペクトルデータを逐次取得し、各位置でのAスキャン信号を得る。制御部80は、眼底反射光と第1参照光に関連する干渉信号がAスキャン信号として検出されるように駆動機構55の駆動を制御する。
【0054】
そして、測定光と第1参照光との光路差が少なくなり、検出範囲内に眼底Efが含まれるようになると、眼底に対応する干渉信号が検出される(図4(b)参照)。ARは網膜表面に対応する干渉信号であり、PRは網膜後面に対応する干渉信号である。
【0055】
制御部80は、各Aスキャン信号の中で、眼底に対応する干渉信号が取得されたAスキャン信号を特定する。この場合、制御部80は、干渉信号の輝度値などを利用して眼底反射を含む干渉信号の有無を判定する。そして、制御部80は、駆動機構55を制御し、眼底信号を含むAスキャン信号が取得される位置に、第1参照ミラー112を配置する。
【0056】
<角膜変形に関する眼底の状態の観察>
眼底に対応する信号が取得されるようになると、制御部80は、Aスキャン信号を随時メモリ81に記憶していく。制御部80は、メモリ81に記憶された各Aスキャン信号を解析し、角膜変形に関連する眼底の経時的な変化を求める。Aスキャン信号は、連続的、又は段階的に記録され、角膜変形に関連した眼底の評価に利用される。
【0057】
例えば、制御部80は、Aスキャン信号に基づいて深さ方向における眼底の変化を検出する。角膜変形中、変形前、変形後での眼底の位置が比較されると、圧縮空気に影響された眼底の変形度(例えば、変形量(変位量)、変形速度、等)が求められる。眼底の位置は、眼底に対応する干渉信号(例えば、干渉信号AR、干渉信号PR)から求められる。なお、制御部80は、眼底の位置に関する時間的変化を求めても良い。制御部80は、ドップラーOCTの解析を適用して、眼底の位置変化に関する速度を定量化してもよい。
【0058】
制御部80は、眼底の変形度を用いて眼圧を測定する。その一例を挙げると、制御部80は、眼底の変形度と眼圧との関係を利用して、眼圧を測定する。その他、眼底の変形度は、公知の測定方式(図2参照)によって算出される眼圧値を変動させるためのパラメータの一つとして用いられてもよい。なお、制御部80は、眼底の変形量がある量に達したときにおける圧力センサ12の検出結果を,眼圧値の算出に利用しても良い。
【0059】
<角膜変形に関する角膜の状態の観察>
制御部80は、Aスキャン信号に基づいて深さ方向における角膜の変化を検出する。角膜変形中、変形前、変形後での角膜の位置が比較されると、圧縮空気に影響された角膜の変形度(例えば、変形量(変位量)、変形速度、等)が求められる。角膜の位置は、角膜に対応する干渉信号(例えば、干渉信号AC、干渉信号PC)から求められる。なお、制御部80は、角膜の位置に関する時間的変化を求めても良い。制御部80は、ドップラーOCTの解析を適用して、角膜の位置変化に関する速度を定量化してもよい。
【0060】
制御部80は、変形された角膜の状態に基づいて眼圧を測定する。その一例を挙げると、制御部80は、角膜の変形度と眼圧との関係を利用して、眼圧を測定する。その他、角膜の変形度は、公知の測定方式(図2参照)によって算出される眼圧値を変動させるためのパラメータの一つとして用いられてもよい。なお、図2のような構成を設けず、干渉光学系100aを用いて角膜の状態を検出するようにしてもよい。
【0061】
上記構成によれば、干渉信号によって角膜と眼底の状態が観察されるので、眼底と角膜の両方の変形状態が求められる。したがって、角膜変形に関連した眼底の評価と、角膜自体の評価と、が適正に関連付けられる。
【0062】
なお、制御部80は、角膜と眼底の両方の位置を検出することによって、放射エネルギーが角膜に加えられたときに眼球の位置を取得できる。角膜変形に関連した眼球の移動情報は、眼圧測定の評価に利用される。
【0063】
なお、上記実施形態において、制御部80は、角膜変形に関連した眼軸長の変化を取得するようにしてもよい。例えば、制御部80は、角膜と眼底に対応する干渉信号を含むAスキャン信号を取得できるときの第1参照ミラー112の位置情報と、そのAスキャン信号における干渉信号ACと干渉信号PRとの位置情報に基づいて眼軸長を演算する(眼軸長の測定手法については、例えば、特開2007−313208号公報参照)。眼軸長の経時的な変化は、角膜と眼底の両方の変化に起因する情報であるから、角膜変形に関する眼球の評価に有用と考えられる。
【0064】
なお、上記実施形態において、制御部80は、Aスキャン信号に対する信号処理によって眼底の各層の情報を取得し、層の変化を検出するようにしてもよい。例えば、角膜変形に関連した層厚の変化が眼圧測定に利用される。
【0065】
なお、上記干渉光学系100aにおいて、光スキャナが測定光路中に設けられた構成であってもよい。例えば、制御部80は、光スキャナを駆動して横断方向に関して眼底上で測定光を走査させる。制御部80は、各走査位置にて取得されるAスキャン信号に基づいて角膜変形に関連する眼底断層像を得る。得られた断層像は、画像処理によって解析され、測定に利用される。例えば、角膜変形時における眼底形状の変化が測定に利用される。また、眼底の表面の一部がある形状(例えば、凹形状)になったときの圧力センサ12の検出結果が測定に利用されてもよい。
【0066】
なお、図1に図示された干渉光学系は、装置内で生成された参照光と、被検眼の各部位における反射によって取得される測定光と、を干渉させて干渉信号を得る構成としたが、これに限定されない。例えば、干渉光学系は、角膜での反射によって取得される光と、眼底での反射によって取得される光とを干渉させ、干渉された光を受光素子に受光させることにより干渉信号を得る構成(いわゆるデュアルビームタイプ)であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本実施形態に係る眼科検査装置の具体例を示す概略図である。
【図2】角膜の変形状態を検出する光学系の具体例を示す図であって、ノズル付近の光学系を上方より見た図である。
【図3】制御系の具体例を示すブロック図である。
【図4】深さ方向に関する干渉信号の分布を示す一例である。
【符号の説明】
【0068】
10 加圧ユニット
100 眼底検出系
102 光源
104 光分割器(カップラー)
120 検出器
200 角膜検出系
100a 干渉光学系

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者眼を加圧する加圧手段と、
加圧手段によって加圧された眼の眼底に関連する第1信号を検出するための眼底信号検出手段と、
を備える眼科検査装置。
【請求項2】
前記眼底信号検出手段は、光源から出射された光を分割し、分割された光の少なくとも一方を被検者眼に照射した後、眼底から反射された光と、他の光との干渉状態を検出器にて検出する干渉光学系を備え、検出器から出力信号に基づいて前記第1信号を検出することを特徴とする請求項1記載の眼科検査装置。
【請求項3】
前記眼底信号検出手段は、前記第1信号を経時的に検出することを特徴とする請求項2記載の眼科検査装置。
【請求項4】
前記眼底信号検出手段によって検出された前記第1信号を用いて,眼内圧、眼全体の硬さ、眼底の硬さ、眼軸長の少なくともいずれかを計測する計測手段を備えることを特徴とする請求項3記載の眼科検査装置。
【請求項5】
前記加圧手段は、眼の角膜を変形させる角膜変形手段であることを特徴とする請求項4記載の眼科検査装置。
【請求項6】
前記眼底信号検出手段は、前記第1信号として、検出器から出力信号に基づいて深さ方向における眼底の位置又は位置変化の速度を検出することを特徴とする請求項5記載の眼科検査装置。
【請求項7】
さらに、加圧手段によって加圧された眼の角膜に関連する第2信号を検出する角膜信号検出手段と、
前記計測手段であって、前記眼底信号検出手段によって検出された前記第1信号と前記角膜信号検出手段によって検出された前記第2信号とを用いて眼の計測を行う計測手段と、
を備えることを特徴とする請求項6記載の眼科検査装置。
【請求項8】
前記干渉光学系は、角膜信号検出手段を兼用し、角膜から反射された光と、他の光との干渉状態を検出器にて検出する干渉光学系であることを特徴とする請求項7記載の眼科検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−125265(P2012−125265A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−276427(P2010−276427)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(000135184)株式会社ニデック (745)
【Fターム(参考)】