説明

眼科用剤

【課題】フマル酸ケトチフェンを配合する点眼剤において、点眼時の眼刺激防止のためにクロロブタノールを配合したことによるpH低下による製剤不安定化を抑制する手段を提供する。
【解決手段】フマル酸ケトチフェン、クロロブタノール、ホウ酸及び糖アルコールを含有する、眼科用剤。糖アルコールは、マンニトール、ソルビトール又はキシリトールである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼科用剤の分野に関する。さらに詳しくは、眼科用剤においてクロロブタノールによる経時的なpHの低下を改善することを可能にする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
フマル酸ケトチフェンは、抗ヒスタミン剤として知られている薬剤の1つであり、ヒスタミンの遊離抑制作用及びヒスタミン受容体拮抗作用を有する。また、ロイコトリエンの産生・遊離抑制及びロイコトリエン拮抗作用を有することも知られている。そして、フマル酸ケトチフェンは、上記作用機序に基づき、アレルギー症状を改善することから、アレルギー症状の予防・改善を目的とした点眼剤や点鼻剤等として臨床的に広く用いられている。
【0003】
しかし、フマル酸ケトチフェンを含有する点眼剤は、点眼時に眼刺激を生じることが知られている。したがって、点眼時の眼刺激の発生を改善するいくつかの方法が開示されている。例えば、フマル酸ケトチフェンに血管収縮薬及びクロロブタノールを配合する方法や(特許文献1参照)、フマル酸ケトチフェンにメントール及びクロロブタノールを配合する方法がある(特許文献2参照)。しかしながら、クロロブタノールを配合した点眼剤は、クロロブタノールの分解により経時的にpHが低下することが知られており、これにより配合成分の不安定化や析出等の問題が生じる。
【0004】
従来、製剤のpH低下を抑制する方法として、リン酸塩緩衝剤(リン酸二水素ナトリウム−リン酸水素二ナトリウム)、ホウ酸緩衝剤(ホウ酸−ホウ砂)などを添加する方法が知られているが、その抑制効果は十分なものではなかった(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−143156号公報
【特許文献2】特開2004−143158号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「緩衝液の選択と応用」D.D.ペリン著 講談社サイエンティフィック
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、フマル酸ケトチフェンを配合した点眼剤において、点眼時の眼刺激防止のためにクロロブタノールを配合したことによるpH低下を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、かかる課題を解決するために種々検討した結果、フマル酸ケトチフェン及びクロロブタノールを含む点眼剤に、さらにホウ酸と糖アルコールを配合することにより、製剤のpH低下を抑制できることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち本発明は、
(1)フマル酸ケトチフェン、クロロブタノール、ホウ酸及び糖アルコールからなる眼科用剤、
(2)糖アルコールが、マンニトール、ソルビトール又はキシリトールである(1)記載の眼科用剤、
(3)糖アルコールが、眼科用剤全体の0.1w/v%〜5.0w/v%である(1)又は(2)記載の眼科用剤、
(4)ホウ酸が、眼科用剤全体の0.1w/v%〜2.0w/v%である(1)又は(2)記載の眼科用剤、
(5)クロロブタノール含有眼科用剤に、ホウ酸及び糖アルコールを添加することにより、眼科用剤のpH低下を抑制する方法、又は
(6)糖アルコールが、マンニトール、ソルビトール又はキシリトールである(5)に記載の眼科用剤のpH低下を抑制する方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、フマル酸ケトチフェンの眼刺激を防止し、且つpH低下を防止することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のフマル酸ケトチフェンは抗アレルギー薬の1つであり、抗アレルギー作用と共にヒスタミン、ロイコトリエン、血小板活性化因子に対する拮抗作用を有することを特徴とし、その構造から塩基性抗アレルギー薬に分類される。また、ヒスタミン拮抗薬とも呼ばれる。医療用としては、ザジテン(登録商標)の販売名で市販されている。
【0012】
本発明のフマル酸ケトチフェンの配合濃度は適用する疾病の症状に応じて適宜増減することができるが、治療効果の点から、眼科用剤全体の0.005〜0.5w/v%であることが好ましく、0.01〜0.1w/v%であることが更に好ましい。
【0013】
また、本発明のクロロブタノールの配合濃度は必要に応じて適宜選択することができるが、フマル酸ケトチフェンの眼刺激抑制効果の点から、眼科用剤全体の0.001〜0.4w/v%であることが好ましく、0.01〜0.4w/v%が更に好ましい。
【0014】
さらに、本発明のホウ酸の配合濃度は、pH低下抑制効果の点から、眼科用剤全体の0.01〜2.0w/v%であることが好ましく、0.1〜2.0w/v%が更に好ましい。
【0015】
本発明における好ましい糖アルコールは、マンニトール、ソルビトール又はキシリトールであり、マンニトールが更に好ましい。本発明で用いる糖アルコールは、点眼剤において本来等張化剤として用いられる成分であるが、ホウ酸と組み合わせて使用することで、フマル酸ケトチフェン及びクロロブタノールを含む点眼剤のpH低下を抑制することが可能である。他の等張化成分ではpHの安定化効果は得られず、糖アルコールに特異的な効果であった。
【0016】
さらに、本発明の糖アルコールの配合濃度は、pH低下抑制効果の点から、眼科用剤全体の0.01〜5.0w/v%であることが好ましく、0.1〜5.0w/v%が更に好ましい。
【0017】
本発明の眼科用剤には、さらにホウ酸以外の緩衝剤、糖アルコール以外の等張化剤、溶解補助剤、保存剤、粘稠剤、pH調整剤のような各種の添加剤を適宜添加してもよい。
【0018】
緩衝剤としては、例えばリン酸塩緩衝剤(リン酸二水素ナトリウム−リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素カリウム−水酸化カリウム)、酒石酸塩緩衝剤(酒石酸−酒石酸ナトリウム)、アミノ酸(グルタミン酸ナトリウム、イプシロンアミノカプロン酸)等が挙げられる。
【0019】
等張化剤としては、グルコース等の糖類、グリセリン、プロピレングリコール等の多価アルコール類、塩化ナトリウム、塩化カリウム等の塩類、が挙げられる。
【0020】
溶解補助剤としては、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート(ポリソルベート80)、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等の非イオン界面活性剤、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0021】
保存剤としては、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム等の第四級アンモニウム塩、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル等のパラオキシ安息香酸エステル類、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、ソルビン酸及びそれらの塩、チメロサール、デヒドロ酢酸ナトリウム等が挙げられる。
【0022】
粘稠剤としては、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びそれらの塩等が挙げられる。
【0023】
pH調整剤としては、塩酸、リン酸、酢酸、酒石酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム及び炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。
【0024】
本発明の眼科用剤を点眼剤とした場合、1日1回〜数回、1回1滴〜数滴を投与することができる。
【0025】
以下に、実施例及び試験例を示し、本発明を詳細に説明する。
【実施例】
【0026】
(実施例1)
処方 100mL中
フマル酸ケトチフェン 69mg
クロロブタノール 30mg
ホウ酸 1000mg
ソルビトール 860mg
水酸化ナトリウム 適量
精製水 全100mL
精製水(約80mL)に各成分を溶解後、水酸化ナトリウムを適量添加しpHを6.7に調整後、精製水で全量を正確に100mLとした。その後ろ過滅菌を行い、無菌の点眼剤とした。
【0027】
(実施例2)
処方 100mL中
フマル酸ケトチフェン 69mg
クロロブタノール 30mg
ホウ酸 1000mg
マンニトール 100mg
水酸化ナトリウム 適量
精製水 全100mL
精製水(約80mL)に各成分を溶解後、水酸化ナトリウムを適量添加しpHを6.7に調整後、精製水で全量を正確に100mLとした。その後ろ過滅菌を行い、無菌の点眼剤とした。
【0028】
(実施例3)
処方 100mL中
フマル酸ケトチフェン 69mg
クロロブタノール 30mg
ホウ酸 1000mg
マンニトール 500mg
水酸化ナトリウム 適量
精製水 全100mL
精製水(約80mL)に各成分を溶解後、水酸化ナトリウムを適量添加しpHを6.7に調整後、精製水で全量を正確に100mLとした。その後ろ過滅菌を行い、無菌の点眼剤とした。
【0029】
(実施例4)
処方 100mL中
フマル酸ケトチフェン 69mg
クロロブタノール 30mg
ホウ酸 1000mg
マンニトール 1000mg
水酸化ナトリウム 適量
精製水 全100mL
精製水(約80mL)に各成分を溶解後、水酸化ナトリウムを適量添加しpHを6.7に調整後、精製水で全量を正確に100mLとした。その後ろ過滅菌を行い、無菌の点眼剤とした。
【0030】
(実施例5)
処方 100mL中
フマル酸ケトチフェン 69mg
クロロブタノール 30mg
ホウ酸 1000mg
マンニトール 5000mg
水酸化ナトリウム 適量
精製水 全100mL
精製水(約80mL)に各成分を溶解後、水酸化ナトリウムを適量添加しpHを6.7に調整後、精製水で全量を正確に100mLとした。その後ろ過滅菌を行い、無菌の点眼剤とした。
【0031】
(実施例6)
処方 100mL中
フマル酸ケトチフェン 69mg
クロロブタノール 30mg
ホウ酸 1000mg
キシリトール 1000mg
水酸化ナトリウム 適量
精製水 全100mL
精製水(約80mL)に各成分を溶解後、水酸化ナトリウムを適量添加しpHを6.7に調整後、精製水で全量を正確に100mLとした。その後ろ過滅菌を行い、無菌の点眼剤とした。
【0032】
(実施例7)
処方 100mL中
フマル酸ケトチフェン 69mg
クロロブタノール 30mg
ホウ酸 100mg
マンニトール 1000mg
水酸化ナトリウム 適量
精製水 全100mL
精製水(約80mL)に各成分を溶解後、水酸化ナトリウムを適量添加しpHを6.7に調整後、精製水で全量を正確に100mLとした。その後ろ過滅菌を行い、無菌の点眼剤とした。
【0033】
(実施例8)
処方 100mL中
フマル酸ケトチフェン 69mg
クロロブタノール 30mg
ホウ酸 500mg
マンニトール 1000mg
水酸化ナトリウム 適量
精製水 全100mL
精製水(約80mL)に各成分を溶解後、水酸化ナトリウムを適量添加しpHを6.7に調整後、精製水で全量を正確に100mLとした。その後ろ過滅菌を行い、無菌の点眼剤とした。
【0034】
(実施例9)
処方 100mL中
フマル酸ケトチフェン 69mg
クロロブタノール 30mg
ホウ酸 2000mg
マンニトール 1000mg
水酸化ナトリウム 適量
精製水 全100mL
精製水(約80mL)に各成分を溶解後、水酸化ナトリウムを適量添加しpHを6.7に調整後、精製水で全量を正確に100mLとした。その後ろ過滅菌を行い、無菌の点眼剤とした。
【0035】
(実施例10)
処方 100mL中
フマル酸ケトチフェン 69mg
クロロブタノール 100mg
ホウ酸 1000mg
マンニトール 1000mg
水酸化ナトリウム 適量
精製水 全100mL
精製水(約80mL)に各成分を溶解後、水酸化ナトリウムを適量添加しpHを6.7に調整後、精製水で全量を正確に100mLとした。その後ろ過滅菌を行い、無菌の点眼剤とした。
【0036】
(実施例11)
処方 100mL中
フマル酸ケトチフェン 69mg
クロロブタノール 300mg
ホウ酸 1000mg
マンニトール 1000mg
水酸化ナトリウム 適量
精製水 全100mL
精製水(約80mL)に各成分を溶解後、水酸化ナトリウムを適量添加しpHを6.7に調整後、精製水で全量を正確に100mLとした。その後ろ過滅菌を行い、無菌の点眼剤とした。
【0037】
(比較例1)
処方 100mL中
フマル酸ケトチフェン 69mg
ホウ酸 1000mg
水酸化ナトリウム 適量
精製水 全100mL
精製水(約80mL)に各成分を溶解後、水酸化ナトリウムを適量添加しpHを6.7に調整後、精製水で全量を正確に100mLとした。その後ろ過滅菌を行い、無菌の点眼剤とした。
【0038】
(比較例2)
処方 100mL中
フマル酸ケトチフェン 69mg
クロロブタノール 30mg
ホウ酸 1000mg
水酸化ナトリウム 適量
精製水 全100mL
精製水(約80mL)に各成分を溶解後、水酸化ナトリウムを適量添加しpHを6.7に調整後、精製水で全量を正確に100mLとした。その後ろ過滅菌を行い、無菌の点眼剤とした。
【0039】
(比較例3)
処方 100mL中
フマル酸ケトチフェン 69mg
クロロブタノール 30mg
ソルビトール 860mg
水酸化ナトリウム 適量
精製水 全100mL
精製水(約80mL)に各成分を溶解後、水酸化ナトリウムを適量添加しpHを6.7に調整後、精製水で全量を正確に100mLとした。その後ろ過滅菌を行い、無菌の点眼剤とした。
【0040】
(比較例4)
処方 100mL中
フマル酸ケトチフェン 69mg
クロロブタノール 30mg
マンニトール 1000mg
水酸化ナトリウム 適量
精製水 全100mL
精製水(約80mL)に各成分を溶解後、水酸化ナトリウムを適量添加しpHを6.7に調整後、精製水で全量を正確に100mLとした。その後ろ過滅菌を行い、無菌の点眼剤とした。
【0041】
(比較例5)
処方 100mL中
フマル酸ケトチフェン 69mg
クロロブタノール 30mg
キシリトール 1000mg
水酸化ナトリウム 適量
精製水 全100mL
精製水(約80mL)に各成分を溶解後、水酸化ナトリウムを適量添加しpHを6.7に調整後、精製水で全量を正確に100mLとした。その後ろ過滅菌を行い、無菌の点眼剤とした。
【0042】
(比較例6)
処方 100mL中
フマル酸ケトチフェン 69mg
クロロブタノール 30mg
ホウ酸 1000mg
グリセリン 1000mg
水酸化ナトリウム 適量
精製水 全100mL
精製水(約80mL)に各成分を溶解後、水酸化ナトリウムを適量添加しpHを6.7に調整後、精製水で全量を正確に100mLとした。その後ろ過滅菌を行い、無菌の点眼剤とした。
【0043】
(比較例7)
処方 100mL中
フマル酸ケトチフェン 69mg
クロロブタノール 30mg
ホウ酸 1000mg
塩化ナトリウム 900mg
水酸化ナトリウム 適量
精製水 全100mL
精製水(約80mL)に各成分を溶解後、水酸化ナトリウムを適量添加しpHを6.7に調整後、精製水で全量を正確に100mLとした。その後ろ過滅菌を行い、無菌の点眼剤とした。
【0044】
(比較例8)
処方 100mL中
フマル酸ケトチフェン 69mg
クロロブタノール 30mg
ホウ酸 1000mg
ホウ砂 400mg
水酸化ナトリウム 適量
精製水 全100mL
精製水(約80mL)に各成分を溶解後、水酸化ナトリウムを適量添加しpHを6.7に調整後、精製水で全量を正確に100mLとした。その後ろ過滅菌を行い、無菌の点眼剤とした。
【0045】
(比較例9)
処方 100mL中
フマル酸ケトチフェン 69mg
クロロブタノール 100mg
ホウ酸 1000mg
水酸化ナトリウム 適量
精製水 全100mL
精製水(約80mL)に各成分を溶解後、水酸化ナトリウムを適量添加しpHを6.7に調整後、精製水で全量を正確に100mLとした。その後ろ過滅菌を行い、無菌の点眼剤とした。
【0046】
(比較例10)
処方 100mL中
フマル酸ケトチフェン 69mg
クロロブタノール 300mg
ホウ酸 1000mg
水酸化ナトリウム 適量
精製水 全100mL
精製水(約80mL)に各成分を溶解後、水酸化ナトリウムを適量添加しpHを6.7に調整後、精製水で全量を正確に100mLとした。その後ろ過滅菌を行い、無菌の点眼剤とした。
【0047】
(試験例)
実施例及び比較例で得た点眼剤5 mLを攪拌しながら、0.05N HClを500μL滴下し、攪拌を止めてpHの値を確認した。また,同様の製剤を65℃で7日保存した時の製剤のpHを測定した。
【0048】
結果を表1−1から1−5に示した。処方の数値は「mg/100mL」で示した。
【0049】
【表1−1】

【0050】
【表1−2】

【0051】
【表1−3】

【0052】
【表1−4】

【0053】
【表1−5】

【0054】
本発明にかかる実施例1〜11の点眼剤は、比較例の点眼剤と比較してpHの低下が抑制された。本発明で用いる糖アルコールは、等張化剤として用いられる成分であるが、他の等張化成分ではpHの安定化効果は得られず、糖アルコールに特異的な効果であった。また、本発明の点眼剤は、一般的な緩衝剤であるホウ酸緩衝剤(ホウ酸−ホウ砂)と比較してpHを安定化する効果が高かった。
【0055】
(参考例)
実施例の点眼剤を健常者4名が点眼し、下記評価基準により刺激感を評価した。眼刺激スコアは4名の平均値で表した。
評価基準:
0:刺激がない
1:刺激をやや感じる
2:刺激を感じる
3:刺激を強く感じる
4:刺激をかなり強く感じる
結果を表2に示した。処方の数値は「mg/100mL」で示した。
【0056】
【表2】

【0057】
pH低下抑制を目的にホウ酸及び糖アルコールを配合した点眼剤は、クロロブタノールによる眼刺激抑制効果に影響を与えなかった。
【0058】
以上より、本発明の点眼剤は、比較例の点眼剤に比べてpHが安定であり、また眼刺激も抑制することから、点眼剤として有用であることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明によりフマル酸ケトチフェンとクロロブタノールを配合することにより生じるpH低下を抑制することができる極めて有用な点眼剤を提供することが可能となった。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
フマル酸ケトチフェン、クロロブタノール、ホウ酸及び糖アルコールを含有する眼科用剤。
【請求項2】
糖アルコールが、マンニトール、ソルビトール又はキシリトールである請求項1に記載の眼科用剤。
【請求項3】
糖アルコールが、眼科用剤全体の0.1w/v%〜5.0w/v%である請求項1又は請求項2に記載の眼科用剤。
【請求項4】
ホウ酸が、眼科用剤全体の0.1w/v%〜2.0w/v%である請求項1又は請求項2に記載の眼科用剤。
【請求項5】
クロロブタノール含有眼科用剤に、ホウ酸及び糖アルコールを添加することにより、眼科用剤のpH低下を抑制する方法。
【請求項6】
糖アルコールが、マンニトール、ソルビトール又はキシリトールである請求項5に記載の眼科用剤のpH低下を抑制する方法。



【公開番号】特開2009−292813(P2009−292813A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−112512(P2009−112512)
【出願日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(000002819)大正製薬株式会社 (437)
【Fターム(参考)】