説明

眼科用組成物

【課題】コンタクトレンズ装用中の涙液層を安定化させ、目の乾きを抑制し、使用感が良く、かつ利便性に優れ、誤用の心配が無く、製造〜販売段階での効率性の高い眼科用組成物を提供する。
【解決手段】(1)(A)セルロース系高分子化合物、ビニル系高分子化合物、ポリエチレングリコール及びデキストランからなる群より選択される1種以上、及び(B)アミノ酸類を含有するコンタクトレンズ用装着点眼液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンタクトレンズが眼に及ぼす影響を軽減するための眼科用組成物に関し、さらに詳しくは、コンタクトレンズ装用時の涙液層、特に油層の安定化や乾燥感の抑制、及び視機能低下の防止等に優れたコンタクトレンズ用装着点眼液に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、視力矯正や美容を目的として、コンタクトレンズ、特にソフトコンタクトレンズ(以下、SCLと表記する事もある)が目覚しく普及している。しかし、コンタクトレンズの装用は、個人差はあるものの、眼に負担を強いることになる。
コンタクトレンズ装用者の代表的な愁訴として、目の乾きが挙げられる。健常な涙液層は厚さ7μmほどの薄い層であって、眼球側より、粘液層、水層、油層の三層構造からなり、角膜を乾燥や外界の刺激などから保護している。特に、この最も外界に近い油層が涙液蒸発を防止しているが、涙液層が薄く、不安定になるなどの要因で、油層も薄くなったり、不均一で不安定になり易く、涙液蒸発が促進され、目の乾きをはじめとしたドライアイ症状が発生する。尚、このような涙液層の破壊(不安定化)により、油層が極端に薄いか不在の箇所がスポット状に生じ、涙液層の表面にドライスポットと呼ばれる部分が観察されるが、ドライスポットの発生時間が涙液層破壊時間(tear film breakup time:BUT)の算出に用いられるなど、ドライスポットは、目の乾きやドライアイの診断基準の重要な指標の一つとされている(非特許文献1)。即ち、ドライスポットの発生時間を遅らせたり、開瞼時間が同じ場合におけるドライスポットの数や面積の広がりの抑制が可能となれば、目の乾燥や疲れ目をはじめとするドライアイ症状の抑制に繋がり、重要な意味を持つと考えられる。
【0003】
また、裸眼時には健常眼であっても、コンタクトレンズを装用すると、涙液層が不均一になり、目の乾きを感じ易く、ドライアイになり易い事が知られている。特にSCL装用中においては、SCL上の涙液層が非常に薄くなる傾向にあり、SCL上ではしばしば油層が非常に薄いか、場合によっては油層が一部又は全体的に欠如した現象が観察される。その結果、涙液の蒸発が亢進し、さらにはSCL内の水分、ひいてはSCL下の水分までも蒸発亢進が及んで、「目の乾き」や、角膜障害が引き起こる事もある(非特許文献2)。
従って、コンタクトレンズ装用者の眼の安全性を確保するには、レンズ外側表面の涙液層、特に油層、を持続的且つ効果的に安定化する必要がある。
【0004】
従来、目の乾きに対しては、人工涙液を点眼する方法などが採られてきたが、単に人工涙液を点眼する方法では、涙液層の安定化を達成することはできず、効果が十分でなかった。そこで、イオン性のコンタクトレンズの表面にポリビニルピロリドンを吸着させて、レンズ表面の保水性を高めることでコンタクトレンズ周辺の涙液層を安定化するシステムとそれに用いるコンタクトレンズ用点眼液および装着液が提案されている(特許文献1)。また、多糖類の長鎖アルキル誘導体を用いて涙液層の3層構造の形成を促進維持するための眼科用液剤組成物も提案されている(特許文献2)。しかし、これらの文献に記載されたシステムや組成物は、必ずしも、十分に持続的且つ効率的な、涙液層特に油層の安定化効果を発揮するとは言えなかった。
【0005】
さらに、コンタクトレンズ装用に伴う他の問題点として、コントラスト感度の低下が挙げられる。コントラスト感度とは、視機能評価軸の一つであり、明るさの微妙な違いを識別する能力を示す。コントラスト感度が低下すると、例えば、歩行中等においては路面と障害物のコントラストが認識し難く事故に繋がったり、スポーツ(特に球技)においてはボールと背景のコントラストが認識し難く、不都合が生じる場合もある。コントラスト感度低下の原因としては、従来、エキシマレーザーによる角膜屈折矯正手術等の眼科手術や加齢の他、コンタクトレンズの装用が知られていた。コンタクトレンズ装用によるコントラスト感度の低下は、遠近両用コンタクトレンズや、長期に亘るソフトコンタクトレンズの装用、連続装用のソフトコンタクトレンズの装用と関係するとの報告がある。しかし、このような問題に対する解決策として、コンタクトレンズそのものを変更する試みはあるが、眼科用組成物によるコントラスト感度の改善に関しては、知られていない。
【0006】
ところで、点眼液、洗眼剤、コンタクトレンズ装着液等の眼科用液剤は、基本的に使用目的も異なり、使用に際して個別に扱われるものである。従って、コンタクトレンズの使用者は、例えば、コンタクトレンズ装着液と点眼液を、別々に保持し、使い分ける必要がある。ところが、これらの液剤は、使用目的(用途)が異なるにもかかわらず、用量等の関係で外観は類似する場合が多く、誤用の危険性があった。また販売者にとっても、案内時の誤認や商品の取り違えで消費者の誤用を誘発する恐れがあった。そこで、誤用がなく、簡便かつ安全に使用できる製品の開発が、使用者のみならず販売者から、広く求められていた。
【0007】
【非特許文献1】あたらしい眼科 22(3):279-287,2005
【非特許文献2】あたらしい眼科 22(3):311-316,2005
【特許文献1】特開2001−247466
【特許文献2】特開2007−77053
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述の通り、従来は点眼液やコンタクトレンズ装着液等の眼科用液剤は個別に取り扱われていた。これら製剤の個別の性能は検討されていたが、点眼液とコンタクトレンズ装着液との組み合わせの適否については、十分に検討されていないのが実情であった。本発明者らは、驚くべきことに、従来のコンタクトレンズ装着液を用いてコンタクトレンズを装着した後、別処方の点眼液を点眼した場合、十分な涙液層の安定化効果、疲れ目改善効果及びコントラスト感度改善効果が見られないばかりか、ゴロつき感やネバつき感などの不快な使用感を生じることさえある、ということを見出した。
そこで、本発明は、コンタクトレンズ装用中の涙液層を安定化させ、目の乾きを抑制すると共に、疲れ目やコントラスト感度の低下をも解消し、しかも使用感が良い眼科用組成物を提供することを目的とするものである。
本発明はまた、利便性に優れ、誤用の心配が無く、安全性の高い眼科用組成物を提供することを目的とするものである。
さらに本発明は、製造、流通、販売に至るあらゆる段階での効率性と安全性が高い眼科用組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、課題解決のために鋭意検討した結果、A)セルロース系高分子化合物、ビニル系高分子化合物、ポリエチレングリコール及びデキストランからなる群より選択される1種以上、及びB)アミノ酸類を含有する、コンタクトレンズ用装着点眼液が、これらの課題の解決に有用であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、下記に掲げる発明である。
(1)(A)セルロース系高分子化合物、ビニル系高分子化合物、ポリエチレングリコール及びデキストランからなる群より選択される1種以上、及び(B)アミノ酸類を含有する、コンタクトレンズ用装着点眼液。
(2)(A)成分が、セルロース系高分子化合物である(1)に記載のコンタクトレンズ用装着点眼液。
(3)セルロース系高分子化合物が、ヒドロキシエチルセルロース、ヒロドキシプロピルメチルセルロース、及びそれらの塩からなる群から選択される一種以上である(2)に記載のコンタクトレンズ用装着点眼液。
(4)(A)成分を0.0001〜25(w/v)%の割合で含有する、(1)〜(3)のいずれかに記載のコンタクトレンズ用装着点眼液。
(5)(B)成分が、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸、イプシロンアミノカプロン酸、ヒアルロン酸及びそれらの塩からなる群より選択される1種以上である、(1)〜(4)のいずれかに記載のコンタクトレンズ用装着点眼液。
(6)(B)成分を0.0001〜10(w/v)%の割合で含有する、(1)〜(5)のいずれかに記載のコンタクトレンズ用装着点眼液。
(7)さらに、(C)非イオン性界面活性剤を含有する(1)〜(6)のいずれかに記載のコンタクトレンズ用装着点眼液。
(8)(C)成分が、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油類及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体からなる群より選択される1種以上である、(7)に記載のコンタクトレンズ用装着点眼液。
(9)(C)成分が、ポリソルベート80である(7)に記載のコンタクトレンズ用装着点眼液。
(10)(C)成分を0.001〜5(w/v)%の割合で含有する、(7)〜(9)のいずれかに記載のコンタクトレンズ用装着点眼液。
(11)コンタクトレンズが、ソフトコンタクトレンズである(1)〜(10)のいずれかに記載のコンタクトレンズ用装着点眼液。
(12)ソフトコンタクトレンズが、原則としてソフトコンタクトレンズ分類グループIVに属するソフトコンタクトレンズである、(11)に記載のコンタクトレンズ用装着点眼液。
(13)ソフトコンタクトレンズが、シリコーンハイドロゲルレンズ素材のソフトコンタクトレンズである(11)に記載のコンタクトレンズ用装着点眼液。
(14)目の乾き又はドライアイ抑制用である項(1)〜(13)のいずれか記載のコンタクトレンズ用装着点眼液。
(15)疲れ目又はコントラスト感度改善用である項(1)〜(13)のいずれか記載のコンタクトレンズ用装着点眼液。
【発明の効果】
【0011】
本発明のコンタクトレンズ用装着点眼液によれば、コンタクトレンズ装用中の涙液層を効率良く安定化させ、目の乾き、疲れ目、コントラスト感度の低下を効果的に抑制することができる。
また、本発明のコンタクトレンズ用装着点眼液は、コンタクトレンズ装用による眼へのストレス軽減効果をも有する。コンタクトレンズ装用時の目の乾きや疲れ目には、角膜細胞に対するストレスも関係すると考えられ、本発明のコンタクトレンズ用装着点眼液による目の乾き及び疲れ目改善作用は、コンタクトレンズ装用によるストレスの軽減を伴っていると考えられる。
しかも本発明のコンタクトレンズ用装着点眼液は、使用感が良く、従来のようにコンタクトレンズ装着液と点眼液を別々に用意する必要が無いので、利便性や携帯性に優れ、誤用の心配が無く安全性が高い。
さらには、製造段階ではコストの軽減、流通段階では輸送コストの低減等輸送や陳列の効率化、販売段階では商品取り扱いの安全性の向上等の利点を有する。従って、本発明のコンタクトレンズ用装着点眼液は、エネルギー消費の削減に貢献することから省エネルギー化に有用であり、環境への悪影響を低減するという効果も奏する。
このように、本発明によれば、コンタクトレンズ装用中の目の乾きの抑制、疲れ目の改善、コントラスト感度の改善を実現する上で優れた効果を奏し、安全性が高く利便性に優れており、しかも製造から販売までの全段階における安全性の確保や効率化をも可能にする装着点眼液が提供され、コンタクトレンズ使用者の便宜と安全性の向上と、製造、輸送、販売に至る各段階での効率化を同時に達成することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本明細書中、「装着」と言う表記は、コンタクトレンズを「目に着ける」行為(操作)を表し、「装用」と言う表記は、コンタクトレンズが「角膜上にある」状態を表す。
また、本明細書中、「%」と言う表記は、特記しない限りw/v%、即ち溶液100mLに溶けている各成分(溶質)の重量gを意味する。
【0013】
また、本明細書において、「コンタクトレンズ用装着点眼液」とは、コンタクトレンズ装着液としての機能と、コンタクトレンズ装用中に点眼可能な点眼液としての機能の両方を同時に併せ持つ眼科用組成物を意味する。さらに、本発明の装着点眼液は、同一の組成物について、コンタクトレンズ装着時に装着液として用い、その後該コンタクトレンズが装用されている目に対して点眼液として用いることができる眼科用組成物である。尚、本明細書中、「コンタクトレンズ用装着点眼液」を単に「装着点眼液」と記載する事もある。
【0014】
さらに、「コンタクトレンズ」という語句は、特記しない限り、ハード、酸素透過性ハード、ソフト等のあらゆるタイプのコンタクトレンズを包含する意味で用いる。以下、「コンタクトレンズ」を単に「レンズ」と表記する事もある。
また、本明細書において、「ソフトコンタクトレンズ」とは、平成11年3月31日付医薬審第645号厚生労働省(当時の厚生省)医薬安全局審査管理課長通知「ソフトコンタクトレンズ及びソフトコンタクトレンズ用消毒剤の製造(輸入)承認申請に際し添付すべき資料の取り扱い等について」において規定された「ソフトコンタクトレンズの分類方法について」に基づくSCLの分類である。ここでは、ソフトコンタクトレンズは、含水率や陰イオンを有するモノマーのモル%等を基準として分類される。例えば、グループIVに属するSCLは、含水率が50%以上であり、原材料ポリマーの構成モノマーのうち陰イオンを有するモノマーのモル%が1%以上であることを共通の性質として有する。尚、本分類はFDA(米国食品医薬品局)が行なっているソフトコンタクトレンズの分類方法に従っている。また、「原則として」とは、材質、機能等の点で、当業者が該分類に属するものと同等と理解しうるソフトコンタクトレンズを包含することを意味する。
【0015】
また、シリコーンハイドロゲル素材のコンタクトレンズとは、シリコーンを含有する素材(例えばシリコーンとアクリレートの重合体であるTRIS又はTRIS誘導体等)に親水性モノマー(例えばヒドロキエシエチルメタクリレート、ジメチルアクリルアミド等)を共重合させた素材を用いたコンタクトレンズであり、USAN(United State Adopted Name)に基づく素材の名称としては、例えばLotrafilconA、LotrafilconB、BalafilconA、GalyfilconA、SenofilconAなどが挙げられる。
【0016】
本発明におけるコンタクトレンズ用装着点眼液は、(A)セルロース系高分子化合物、ビニル系高分子化合物、ポリエチレングリコール及びデキストランからなる群より選択される1種以上、(B)アミノ酸類を含有することを特徴としている。これらの成分を含有することで、コンタクトレンズ装用中の涙液層を安定化させ、ひいては目の乾きを抑制する事が可能となり、疲れ目改善やコントラスト感度改善に効果的であり、同時に使用感を良好にすることができる。またコンタクトレンズ装着液として、及び点眼液として、本発明の同一処方を用いる事により、コンタクトレンズを介して異なる液性の薬液が角膜及び結膜上に混在する事が無く、メカニズムは詳しく解明されていないが、恐らく薬液とコンタクトレンズの相互作用による目や涙液への影響が最小限に抑えられ、その結果涙液層が安定した状態に保たれたり、疲れ目改善やコントラスト感度改善に効果を発揮したり、使用感が良好である等の前述の効果を有すると考えられる。
【0017】
本発明のコンタクトレンズ用装着点眼液は、セルロース系高分子化合物、ビニル系高分子化合物、ポリエチレングリコール及びデキストランからなる群より選択される1種以上(以下、単に(A)成分と表記することもある)を含有する。
セルロース系高分子化合物としては、セルロースのヒドロキシル基を他の官能基で置き換えることで得られるセルロース系高分子化合物であって、水性組成物に粘性を付与することができ、コンタクトレンズに対して適用可能な化合物を用いることができる。セルロースのヒドロキシル基を置換する官能基としてはメトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシメトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、ヒドロキシプロポキシ基、カルボキシメトキシ基、カルボキシエトキシ基等がある。セルロース系高分子化合物を例示すると、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロースまたはこれらの塩などを挙げることができる。ここで、塩としては薬理学的に許容される塩が好ましく、中でもアルカリ金属塩がさらに好ましく、ナトリウム塩、カリウム塩などが特に好ましい。本発明に用いるセルロース系高分子化合物は、置換基の置換度や分子量に制限はないが、例えば、重量平均分子量0.5万〜100万、好ましくは1万〜50万、さらに好ましくは1万〜10万程度のものを使用することができる。また、これらのセルロース系高分子化合物は、市販のものを用いることができ、これらの化合物の1種または2種以上を組み合わせて使用してもよい。なかでも、本発明の効果をより一層高める観点から、好ましくは、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、及びそれらの塩からなる群より選ばれる1種以上である。より好ましくは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、特に好ましくはヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースである。
【0018】
本発明におけるコンタクトレンズ用装着点眼液中のセルロース系高分子化合物の含有量は、化合物の種類や分子量によっても異なるので限定されるものではないが、コンタクトレンズ用装着点眼液の総量に対し、これらの化合物が総量で、通常0.0001〜25%、好ましくは0.001〜10%、より好ましくは0.001〜7%、更に好ましくは0.005〜5%、特に好ましくは0.01〜1%である。
【0019】
ビニル系高分子化合物としては、水性組成物に粘性を付与することができコンタクトレンズに対して適用可能な化合物を用いることができる。ビニル系高分子化合物を例示すると、ポリビニルアルコール(完全又は部分ケン化物)などのビニルアルコール系高分子、ポリビニルピロリドンなどのビニルピロリドン系高分子、カルボキシビニルポリマー等を挙げることができる。本発明に用いるビニル系高分子化合物は、その分子量に制限はないが、例えば重量平均分子量0.5万〜100万、好ましくは1万〜50万、さらに好ましくは1万〜40万程度のものを使用することができる。また、これらのビニル系高分子化合物は、市販のものを用いることができ、これらの化合物の1種または2種以上を組み合わせて使用してもよい。なかでも、本発明の効果をより一層高める観点から、好ましくはポリビニルピロリドンK25、ポリビニルピロリドンK30、ポリビニルピロリドンK90、ポリビニルアルコール(部分ケン化物)、カルボキシビニルポリマーであり、より好ましくは、ポリビニルアルコール(部分ケン化物)、カルボキシビニルポリマーであり、特に好ましくはポリビニルアルコール(部分ケン化物)である。
【0020】
本発明におけるコンタクトレンズ用装着点眼液中のビニル系高分子化合物の含有量は、化合物の種類や分子量によっても異なるので限定されるものではないが、コンタクトレンズ用装着点眼液の総量に対し、これらの化合物が総量で、通常0.001〜25%、好ましくは0.001〜10%、より好ましくは0.005〜5%、更に好ましくは0.01〜5%、特に好ましくは0.1〜3%である。
【0021】
デキストランはショ糖を原料としてある種の乳酸菌が生産する多糖を部分的に加水分解して得られる水溶性高分子化合物である。デキストランは重量平均分子量0.5万〜100万、好ましくは1万〜50万、さらに好ましくは1万〜10万程度のものを使用することができる。また、これらのデキストランは、市販のものを用いることができ、1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。なかでも、本発明の効果をより一層高める観点から、好ましくはデキストラン、デキストラン70、デキストラン40、特に好ましくは、デキストラン70である。
【0022】
本発明におけるコンタクトレンズ用装着点眼液中のデキストランの含有量は、コンタクトレンズ用装着点眼液の総量に対し、これらが総量で通常0.001〜25%、好ましくは0.001〜10%、より好ましくは0.01〜10%、更に好ましくは0.01〜5%、特に好ましくは0.01〜1%、更に特に好ましくは0.01〜0.1%である。
【0023】
ポリエチレングリコールは、別名をマクロゴールとも言い、置換基の置換度や分子量に制限はないが、重量平均分子量100〜5万、好ましくは400〜2万、さらに好ましくは2000〜1万程度のものを使用することができる。また、これらのポリエチレングリコールは、市販のものを用いることができ、1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。なかでも、本発明の効果をより一層高める観点から、好ましくはマクロゴール6000、マクロゴール4000、マクロゴール400、特に好ましくは、マクロゴール6000、マクロゴール4000である。
【0024】
本発明におけるコンタクトレンズ用装着点眼液中のポリエチレングリコールの含有量は、コンタクトレンズ用装着点眼液の総量に対し、これらが総量で通常0.001〜25%、好ましくは0.001〜10%、より好ましくは0.01〜10%、さらに好ましくは0.05〜5%、特に好ましくは0.05〜2%である。
【0025】
本発明における(A)成分は、1種または2種以上を組み合わせて使用することもできる。本発明の効果をより一層高める観点から、好ましい(A)成分はセルロース系高分子化合物であり、中でも特にヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースが好ましい。
本発明におけるコンタクトレンズ用装着点眼液中の(A)成分の含有量は、コンタクトレンズ用装着点眼液の総量に対し、これらが総量で通常0.0001〜25%、好ましくは0.001〜10%、より好ましくは0.005〜10%、さらに好ましくは0.01〜7%、特に好ましくは0.01〜5%である。
【0026】
本発明のコンタクトレンズ用装着点眼液は、さらにアミノ酸類(以下、単に(B)成分と表記することもある)を含有する。
本発明に用いるアミノ酸類とは、アミノ酸又はその塩、及びアミノ酸類似体を包含し、分子内にアミノ基とカルボキシル基又はスルホン基を有する化合物又はその誘導体を意味する。
【0027】
アミノ酸類は、例えば、グリシン、アラニン、アミノ酪酸、アミノ吉草酸、アミノカプロン酸等のモノアミノモノカルボン酸;アスパラギン酸、グルタミン酸等のモノアミノジカルボン酸又はそれらの塩;アルギニン、リジン等のジアミノモノカルボン酸又はそれらの塩;アミノエチルスルホン酸(タウリン)又はそれらの塩;ヒアルロン酸又はそれらの塩等である。具体例として、グリシン、アラニン、γ―アミノ酪酸、γ―アミノ吉草酸、イプシロンアミノカプロン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、アミノエチルスルホン酸、ヒアルロン酸又はそれらの塩等が挙げられる。アミノ酸の塩は、医薬上、薬理学的に又は生理学的に許容される塩を含む。そのような塩としては、有機酸との塩[例えば、モノカルボン酸塩(酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、酪酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩など)、多価カルボン酸塩(フマル酸塩、マレイン酸塩など)、オキシカルボン酸塩(乳酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、マロン酸塩など)、有機スルホン酸塩(メタンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、トシル酸塩など)など]、無機酸との塩(例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩など)、有機塩基との塩(例えば、メチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、ピペラジン、ピロリジン、トリピリジン、ピコリンなどの有機アミンとの塩など)、無機塩基との塩[例えば、アンモニウム塩;アルカリ金属(ナトリウム、カリウムなど)、アルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウムなど)、アルミニウムなどの金属との塩など]などが例示でき、化合物によって適宜選択される。例えば、モノアミノジカルボン酸の場合は、無機塩基との塩が好ましく、特にアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩が好ましい。
【0028】
好ましいアミノ酸類は、グリシン、アラニン、γ―アミノ酪酸、γ―アミノ吉草酸、イプシロンアミノカプロン酸、アスパラギン酸ナトリウム、アスパラギン酸カリウム、アスパラギン酸マグネシウム、アスパラギン酸カルシウム、L−アスパラギン酸マグネシウム・カリウム(等量混合物)、グルタミン酸、塩酸グルタミン酸、グルタミン酸マグネシウム、アミノエチルスルホン酸、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム等である。より好ましくは、イプシロンアミノカプロン酸、アスパラギン酸カリウム、アスパラギン酸マグネシウム、L−アスパラギン酸マグネシウム・カリウム(等量混合物)、アミノエチルスルホン酸、ヒアルロン酸ナトリウムである。なお、本発明のアミノ酸類は、D体、L体、DL体のいずれでもよい。また、本発明のアミノ酸類は、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
本発明におけるコンタクトレンズ装着液中のアミノ酸類の含有量は、化合物の種類や分子量によっても異なるので限定されるものではないが、コンタクトレンズ装着液の総量に対し、これらの化合物の総量で、通常0.0001〜10%、好ましくは0.001〜10%、より好ましくは0.005〜8%、さらに好ましくは0.02〜5重量%、特に好ましくは0.02〜3重量%、さらに特に好ましくは0.05〜2%である。
【0030】
さらに、本発明のコンタクトレンズ用装着点眼液には、必要に応じて適当な非イオン性界面活性剤(以下、単に(C)成分と表記することもある)を含有させることができる。
本発明に用いる非イオン性界面活性剤としては、通常当業者がコンタクトレンズ用眼科組成物に利用しうるものを用いることができ、例えばポロクサマー407 、ポロクサマー235 、ポロクサマー188 などのポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー (以下、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体とも言う。) ;ポロキサミンなどのエチレンジアミンのPOE-POPブロックコポリマー付加物;モノラウリル酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート20) ,モノオレイン酸POE(20)ソルビタン (ポリソルベート80) ,POEソルビタンモノステアレート(ポリソルベート60),POEソルビタントリステアレート(ポリソルベート65) などのPOEソルビタン脂肪酸エステル類;POE硬化ヒマシ油5 ,POE硬化ヒマシ油10 ,POE硬化ヒマシ油20 ,POE硬化ヒマシ油40 ,POE硬化ヒマシ油50、POE硬化ヒマシ油60 ,POE硬化ヒマシ油100などのPOE硬化ヒマシ油類;POE(9) ラウリルエーテルなどのPOEアルキルエーテル類;POE(20)POP(4) セチルエーテルなどのPOE・POPアルキルエーテル類;POE(10)ノニルフェニルエーテルなどのPOEアルキルフェニルエーテル類などが挙げられる。なお、POEはポリオキシエチレンを示し、POPはポリオキシプロピレンを示し、括弧内の数字は付加モル数を示す。
なかでも好ましくは、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、POEソルビタン脂肪酸エステル類又はPOE硬化ヒマシ油類であり、中でも特に好ましくは、ポロクサマー407、ポリソルベート80、POE硬化ヒマシ油60である。
【0031】
本発明におけるコンタクトレンズ用装着点眼液中の非イオン性界面活性剤の含有量は、界面活性剤の種類などによって異なるので一概に規定できないが、コンタクトレンズ用装着点眼液の総量に対し、これらが総量で、通常0.001〜5%、好ましくは0.001〜1.5%、より好ましくは0.001〜1%、さらに好ましくは0.005〜0.5%、特に好ましくは0.05〜0.3%である。
【0032】
本発明のコンタクトレンズ用装着点眼液には、必要に応じて適当な緩衝剤を含有することが好ましい。本発明に用いる緩衝剤としては、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、炭酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、HEPES緩衝剤、MOPS緩衝剤などが挙げられる。より具体的には、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、テトラホウ酸カリウム、ホウ砂、メタホウ酸カリウム、リン酸、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、炭酸、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、酢酸、酢酸ナトリウム、HEPES、MOPSなどの化合物、これらの水和物、これらの群から選ばれる2種以上の化合物の組み合わせ等が挙げられる。
【0033】
好ましい緩衝剤は、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、炭酸緩衝剤及びクエン酸緩衝剤である。特に好ましい緩衝剤は、ホウ酸緩衝剤またはリン酸緩衝剤である。特に好ましい緩衝剤は、より具体的には、ホウ酸緩衝剤としてはホウ酸、ホウ酸アルカリ金属塩,ホウ酸アルカリ土類金属塩などのホウ酸塩、ホウ酸とホウ酸塩との組み合わせが挙げられ、特にホウ酸、ホウ砂が好ましく、リン酸緩衝剤としては、リン酸、リン酸アルカリ金属塩,リン酸アルカリ土類金属塩などのリン酸塩、それらの水和物、リン酸とリン酸塩との組み合わせが挙げられ、特にリン酸水素ナトリウム、リン酸ニ水素ナトリウム、それらの水和物が好ましい。
【0034】
本発明におけるコンタクトレンズ用装着点眼液中の緩衝剤の含有量は、緩衝剤の種類などによって異なるので一概に規定できないが、コンタクトレンズ用装着点眼液の総量に対し、これらが総量で、通常0.001〜5%、好ましくは0.001〜3%、より好ましくは0.005〜2.0%、さらに好ましくは0.005〜1.5%、特に好ましくは0.05〜1.5%である。
【0035】
本発明のコンタクトレンズ用装着点眼液には、必要に応じて適当な無機塩類を配合することが好ましい。無機塩類としては、塩化カリウム、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムが挙げられ、これらの1種または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明におけるコンタクトレンズ用装着点眼液中の無機塩類の含有量は、無機塩類の種類などによって異なるので一概に規定できないが、コンタクトレンズ用装着点眼液の総量に対し、これらが総量で、通常0.001〜5%、好ましくは0.01〜1.5%、より好ましくは0.1〜0.7%で用いられる。
【0036】
本発明のコンタクトレンズ装着液には、必要に応じて適当なエチレンジアミン酢酸誘導体またはその塩を配合することが好ましい。かかるエチレンジアミン酢酸誘導体またはその塩としては、例えば、エデト酸(エチレンジアミン四酢酸,EDTA)、エチレンジアミン二酢酸(EDDA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸(HEDTA)またはそれらの塩などが例示できる。エチレンジアミン酢酸誘導体の塩は、薬理学的に又は生理学的に許容される塩を含み、例えばアルカリ金属(ナトリウム、カリウムなど)との塩、アルカリ土類金属(カルシウムなど)との塩などが挙げられる。なかでも好ましくは、エチレンジアミン四酢酸またはその塩であり、例えばエチレンジアミン四酢酸カルシウムニナトリウム、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム・二水和物(以下、エデト酸ナトリウムともいう。)であり、特に好ましくはエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム・二水和物である。これらは、1種又は2種以上を組み合わせて用いる事ができる。
【0037】
本発明におけるコンタクトレンズ用装着点眼液中のエチレンジアミン酢酸誘導体またはその塩の含有量は分子量や種類などによって異なるので一概に規定できないが、コンタクトレンズ用装着点眼液の総量に対し、これらが総量で、好ましくは0.0001〜1%、より好ましくは0.0005〜0.5%、さらに好ましくは0.001〜0.3%、特に好ましくは0.001〜0.05%である。
【0038】
また、さらに本発明の効果を発揮するために、エチレンジアミン酢酸誘導体またはその塩、非イオン性界面活性剤、無機塩類、緩衝剤を組み合わせて配合することがより好ましい。
本発明におけるコンタクトレンズ用装着点眼液中のエチレンジアミン酢酸誘導体またはその塩、非イオン性界面活性剤、無機塩類、緩衝剤の含有量は、コンタクトレンズ用装着点眼液の総量に対し、これらが総量で、0.01〜5%が好ましく、特に好ましくは0.05〜3%である。
【0039】
本発明のコンタクトレンズ用装着点眼液は、コンタクトレンズのなかでも特に、ソフトコンタクトレンズ用に用いるのが好適である。ソフトコンタクトレンズは、乾きを感じ易く、眼に負担がかかり易いとされている為である。中でも、特に乾きを感じ易い高含水ソフトコンタクトレンズ、とりわけソフトコンタクトレンズ分類グループIVのソフトコンタクトレンズに対して有用であるため好ましい。また、意外にもシリコーンハイドロゲル素材のソフトコンタクトレンズにおいて、顕著な発明の効果を発揮するため、該ソフトコンタクトレンズにおける使用も好ましい。
【0040】
本発明のコンタクトレンズ用装着点眼液は、種々の成分(薬理活性成分や生理活性成分を含む)を組み合わせて含有するのに適している。眼科組成物に通常用いられる充血除去成分、眼筋調節薬成分、抗炎症薬成分または収斂薬成分、抗ヒスタミン薬成分又は抗アレルギー薬成分、ビタミン類、酸性ムコ多糖類、局所麻酔薬成分などが例示できる。具体的には、以下に挙げる成分が例示できる。
【0041】
充血除去成分:例えば、α−アドレナリン作動薬、具体的にはエピネフリン、塩酸エピネフリン、塩酸エフェドリン、塩酸オキシメタゾリン、塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸ナファゾリン、塩酸フェニレフリン、塩酸メチルエフェドリン、酒石酸水素エピネフリン、硝酸ナファゾリンなど。これらはd体、l体又はdl体のいずれでもよい。
眼筋調節薬成分:例えば、アセチルコリンと類似した活性中心を有するコリンエステラーゼ阻害剤、具体的にはメチル硫酸ネオスチグミン、トロピカミド、ヘレニエン硫酸アトロピンなど。
【0042】
抗炎症薬成分または収斂薬成分:例えば、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛、アラントイン、イプシロン−アミノカプロン酸、インドメタシン、塩化リゾチーム、硝酸銀、プラノプロフェン、アズレンスルホン酸ナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、ジクロフェナクナトリウム、ブロムフェナクナトリウム、塩化ベルベリン、硫酸ベルベリンなど。
【0043】
抗ヒスタミン薬成分又は抗アレルギー薬成分:例えば、アシタザノラスト、アンレキサノクス、イブジラスト、トラニラスト、塩酸ジフェンヒドラミン、塩酸レボカバスチン、フマル酸ケトチフェン、クロモグリク酸ナトリウム、ペミロラストカリウム、マレイン酸クロルフェニラミンなど。
【0044】
ビタミン類:例えば、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、塩酸ピリドキシン、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、リン酸ピリドキサール、シアノコバラミン、パンテノール、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム、アスコルビン酸、酢酸トコフェロールなど。
【0045】
酸性ムコ多糖類:例えば、コンドロイチン硫酸ナトリウムなど。
【0046】
局所麻酔薬成分:例えば、クロロブタノール、塩酸オキシブプロカイン、塩酸コカイン、塩酸コルネカイン、塩酸ジブカイン、塩酸テトラカイン、塩酸パラブチルアミノ安息香酸ジエチルアミノエチル、塩酸ピペロカイン、塩酸プロカイン、塩酸プロパラカイン、塩酸ヘキソチオカイン、塩酸リドカインなど。
【0047】
また、本発明のコンタクトレンズ用装着点眼液には、発明の効果を損なわない範囲でその用途や形態に応じて、常法に従い、様々な成分や添加物を適宜選択し、一種またはそれ以上を含有させてもよい。それらの成分または添加物として、例えば、半固形剤や液剤などの調製に一般的に使用される担体(水、水性溶媒、水性または油性基剤など)、増粘剤、糖類、糖アルコール類、酸性ムコ多糖類、界面活性剤、防腐剤、殺菌剤又は抗菌剤、pH調整剤、等張化剤、香料または清涼化剤、安定剤などの各種添加剤を挙げることができる。
【0048】
以下に本発明のコンタクトレンズ用装着点眼液に使用される代表的な成分を例示するが、これらに限定されない。
糖類:例えば、グルコース、シクロデキストリンなど。
糖アルコール類:例えば、キシリトール、ソルビトール、マンニトールなど。
酸性ムコ多糖類:アルギン酸、アルギン酸ナトリウムなど。
界面活性剤:例えば、上記した非イオン性界面活性剤以外にも、アルキルジアミノエチルグリシンなどのグリシン型両性界面活性剤;アルキル4級アンモニウム塩(具体的には、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムなどの陽イオン界面活性剤など。)など。
【0049】
防腐剤、殺菌剤又は抗菌剤:例えば、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、安息香酸ナトリウム、エタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、クロロブタノール、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、硫酸オキシキノリン、フェネチルアルコール、ベンジルアルコール、ビグアニド化合物(具体的には、ポリヘキサメチレンビグアニド又はその塩酸塩など)、塩化ポリドロニウム、グローキル(ローディア社製 商品名)など。
【0050】
pH調整剤:例えば、塩酸、ホウ酸、イプシロン−アミノカプロン酸、酢酸、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、ホウ砂、トリエタノールアミン、モノエタノールアミンなど。
等張化剤:例えば、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、塩化マグネシウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、グリセリン、プロピレングリコールなど。
【0051】
安定剤:ジブチルヒドロキシトルエン、トロメタモール、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(ロンガリット)、トコフェロール、ピロ亜硫酸ナトリウム、モノエタノールアミン、モノステアリン酸アルミニウムなど。
香料又は清涼化剤:テルペン類(例えば、アネトール、オイゲノール、カンフル、ゲラニオール、シネオール、ボルネオール、メントール、リモネン、リュウノウなど。これらはd体、l体又はdl体のいずれでもよい。)、精油(ウイキョウ油、クールミント油、ケイヒ油、スペアミント油、ハッカ水、ハッカ油、ペパーミント油、ベルガモット油、ユーカリ油、ローズ油など)など。
【0052】
本発明のコンタクトレンズ用装着点眼液は、所望の効果を得るために適切な粘度に初期設定して設定粘度を長期的に安定に保持することができる。コンタクトレンズ用眼科組成物の粘度を設定する場合において、20℃における粘度が1.1mPa・s以上に保持して設計することが好ましく、通常1.1〜300mPa・s、好ましくは、1.3〜100mPa・s、特に好ましくは1.5〜80mPa・sに設計することができる。
【0053】
粘度の測定は、円すい一平板形回転粘度計を用いる方法(第十四改正日本薬局法に記載の、一般試験法、45.粘度測定法、第2法回転粘度計法、「(3)円すい−平板形回転粘度計」の項に記載の方法)に従い、具体的には、市販の円すい−平板形回転粘度計と適宜選択されたロータとを用いて測定することができる。例えば、市販のE型粘度計[トキメック(TOKIMEC)製、東機産業(日本)から販売]と適宜選択されたローターを用い、披検試料測定毎にJIS Z8809により規定されている石油系の炭化水素油(ニュートン流体)を校正用標準液として調整することにより、20℃における粘度を測定することができる。具体的には、特開2006-348055に記載の粘度測定方法に従う(測定条件については後述)。
【0054】
本発明のコンタクトレンズ用装着点眼液は、必要に応じて、生体に許容される範囲内の浸透圧に調整して用いる。浸透圧は、生理食塩液に対する浸透圧比として、通常、0.3〜4.1、好ましくは0.4〜4.1、より好ましくは0.3〜2.1、特に好ましくは0.5〜1.4である。浸透圧比の測定方法は、第15改正日本薬局方 一般試験法 浸透圧測定法を参考にする。
【0055】
本発明のコンタクトレンズ用装着点眼液は、必要に応じて、生体に適用可能な範囲内のpHに調整して用いる。pHは、通常、pH4.0〜9.0、好ましくは5.0〜8.5、特に好ましくは5.5〜8.5である。pHの調整は、前記緩衝剤、pH調整剤などを用いて行うことができる。
【0056】
本発明のコンタクトレンズ用装着点眼液は、公知の方法により製造でき、必要により、ろ過滅菌処理工程や、容器への充填工程等を加えることができる。
【0057】
本発明のコンタクトレンズ用装着点眼液の使用方法としては、「コンタクトレンズ装着時(装着する直前)に、コンタクトレンズ用装着点眼液を直接コンタクトレンズに滴下し、コンタクトレンズの両面もしくは片面を適量(例えば、好適には1回1〜2滴)で濡らしたのち、該コンタクトレンズを装着して使用」(前述のかぎ括弧内を以下、「コンタクトレンズ装着液的使用」と記載する事もある)する方法が挙げられる。さらに、「コンタクトレンズ装用中にコンタクトレンズ用装着点眼液を適量(例えば、好適には1回1〜2滴)点眼して使用」(前述のかぎ括弧内を以下、「点眼液的使用」と記載する事もある)する方法が挙げられる。1日の点眼回数は問わないが、通常1〜10回の範囲であればよく、好ましくは1〜6回、特に好ましくは5〜6回である。
【0058】
また、コンタクトレンズ用装着点眼液の使用方法として、特に推奨される方法は、前述の通りコンタクトレンズ装着液的使用から、コンタクトレンズ装着後、最初の点眼までの間隔が、5時間以内、好ましくは2時間以内、より好ましくは1時間以内、さらに好ましくは30分以内、特に好ましくは10分以内、さらに特に好ましくは2分以内である。その後の点眼は、通常の点眼液の使用と同様である。
【0059】
さらに、本発明は、以下のコンタクトレンズ処理工程を包含する。即ち、1.コンタクトレンズ装着時(装着する直前)に、コンタクトレンズ用装着点眼液を直接コンタクトレンズに滴下し、コンタクトレンズの両面もしくは片面を適量(例えば、好適には1回1〜2滴)で濡らす工程、2.コンタクトレンズを目に装着する工程、3.コンタクトレンズ装用中に該液を点眼する事によりコンタクトレンズを濡らす工程。またさらに、本発明は以下のコンタクトレンズ処理工程を包含することができる。4.コンタクトレンズを目からはずす時(外す直前)に該液を点眼する事によりコンタクトレンズを濡らす工程、5.コンタクトレンズを目からはずす工程、6.コンタクトレンズを装着する直前に、コンタクトレンズ用装着点眼液を点眼しておく工程。コンタクトレンズの処理に際しては、必要に応じて上記の工程のうち適当な工程を選択すればよい。
【0060】
尚、本発明のコンタクトレンズ用装着点眼液は、発明の効果をより好適に発揮する観点から、好ましくはコンタクトレンズ装着液的使用及びコンタクトレンズ装用中の点眼液的使用の両方に使用する事を目的としているが、どちらか一方にのみ使用する事もできる。
【実施例】
【0061】
以下に、試験例及び実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
試験例においては、測定条件、とりわけ被検者の状態をほぼ一定にするために、可能な限り連続して試験した。尚、各試験例は、それぞれ独立して行われた。
尚、各実施例及び比較例の粘度は、E型粘度計の1種であるTVE−20L形粘度計コーンプレートタイプ(トキメック(TOKIMEC)製、東機産業(日本))を用いて、以下の測定条件の下で、製造者の指示に従い、測定を行った。特記する以外は、特開2006-348055に記載の粘度測定方法に従う。ただし、測定条件は以下の通りである。
測定条件:
回転数 :100rpm (尚、粘度により回転数の許容範囲が異なる為、各処方に応じて測定可能な回転数のうち、最も高い回転数で測定する。)
試料量 :1ml
測定温度 :20℃
時間 :3分後の粘度を測定値とした。
【0062】
試験1:ドライアイ観察装置(DR-1、興和株式会社)による評価
(試験方法)
表1の処方に従い、実施例1〜7、比較例1〜3の各コンタクトレンズ用装着点眼液を、通常の点眼液等の調製方法(常法)に従って調製し、ポリエチレンテレフタレート製容器(容量10mL)に充填し、ノズル及びキャップにて施栓して作製した。ソフトコンタクトレンズは、チバビジョン社製、ソフトコンタクトレンズ分類グループI(シリコーンハイドロゲルレンズ 主素材:LotrafilconA)(以下、SCL1と表記する事もある)、及びジョンソン&ジョンソン社製、ソフトコンタクトレンズ分類グループIV 主素材:EtafilconA (以下、SCL2と表記する事もある)を使用した。各処方の装着点眼液を用いてコンタクトレンズの両面を1滴ずつ濡らした後、コンタクトレンズを装着し、装着2分後に同じ処方の装着点眼液を点眼した。
その後、(1)〜(3)の各試験条件に従い、評価を実施した。尚、被験者はコンタクトレンズを日常的に装用しており、乾燥感を感じている人(ドライアイ傾向のある人)を3名選択した。また、1種の試験液について試験を行った後は、十分に目を休ませてから次の試験液での試験を行った。
【0063】
【表1】

【0064】
(1)ドライスポットの面積の評価−1
前述の条件で、コンタクトレンズ用装着点眼液をコンタクトレンズ装着液的使用に供し、その後コンタクトレンズを装用したまま該液を点眼した後、以下の条件でドライスポットの面積を評価した。
ドライスポットの観察には、涙液油層の干渉色を観察するドライアイ観察装置(DR-1、興和株式会社)を使用した。具体的には、点眼約2分後の瞬目について瞬目開始から1秒後の眼表面のドライスポットの数と大きさを計測した。各ドライスポットについて、画像から面積値を算出し、処方毎に面積値の総和を総面積として算出した。その後、被験者3名の結果を平均し、実施例1の総面積を1とした場合の、各実施例処方及び比較例処方の総面積の相対値を算出し、「ドライスポットの総面積の相対評価」として、結果を表2に示す。
【0065】
【表2】

ドライスポットは、眼科領域ではドライアイや目の乾きを表す指標として認識されており、ドライスポットの発生時間が短い、ドライスポットの数が多い、ドライスポットの面積が大きいなどは、より目が乾いた状態にあると言える。この試験結果より、実施例処方においては、比較例処方と比較して、ドライスポットの総面積が顕著に小さかった。従って実施例処方では、コンタクトレンズ表面の涙液層が安定化され、ドライスポットが出来難かったと言える。またこの事は、目の乾燥が顕著に抑制された事を示しており、ドライアイ症状の改善を示している。
【0066】
(2)ドライスポットの面積の評価−2
前述の条件で、コンタクトレンズ用装着点眼液をコンタクトレンズ装着液的使用に供し、その後コンタクトレンズを装用したまま該液を点眼した後、以下の条件でドライスポットの面積を評価した。
ドライアイ観察装置(DR-1)を使用して、点眼約11分後の瞬目について瞬目開始からから次の瞬目の開始までの間に観察される最大のドライスポットの面積を画像解析装置で解析し、眼表面の観察領域全体に対する面積率(%)を求めた。なお、点眼11分後では比較例処方の場合特に乾きが進んでおり、ドライスポットはまとまった1つのドライエリアの形で観察された。被験者3名の合計面積率の平均、及び実施例1の面積率を1とした場合の各処方の面積率の相対値を算出し、結果を「ドライスポットの面積の評価−2」として、表3に示した。
【0067】
【表3】

前述の通り、ドライスポットが大きいと、より眼が乾燥状態にあると言える。この試験結果より、点眼して充分時間が経過した後でさえ、実施例処方においてはドライスポットの面積の割合が小さく、コンタクトレンズ表面の涙液層が安定化されており、眼の乾燥が顕著に抑制された事を示している。また、この事はドライアイ症状の改善を示している。
【0068】
(3)涙液安定性の評価
前述の条件で、コンタクトレンズ用装着点眼液をコンタクトレンズ装着液的使用に供し、その後コンタクトレンズを装用したまま該液を点眼した後、以下の条件で涙液安定性を評価した。
点眼約3分後の瞬目開始から次の瞬目の開始までの間の涙液油層の動きをドライアイ観察装置(DR-1)で観察し、表4で示す基準に従い評価点数をつけた。また、点眼前の涙液油層の動きにも同様に評価点数をつけた。尚、評価点数が大きいほど、涙液層における油層が薄く、又は不均一で、涙液層が不安定な状態になっている事を示す。点眼前と点眼後の評価点数の差を涙液安定性の改善度とし、表5で示す基準に従い評価した。被験者3名の評価点数を平均した結果を表7に示す。
【0069】
【表4】

【0070】
【表5】

【0071】
【表6】

この試験結果から、実施例処方では、涙液層における油層が乱れ難く、安定しているが、比較例処方では、涙液層における油層が乱れやすく、涙液層が不安定な状態になることが分かった。前述したように涙液層における油層が薄くなると、涙液の蒸発が促進され、眼が乾燥しやすくなる事が知られている。従って、上記の結果は、実施例処方では、比較例処方と比較して、眼の乾燥が顕著に抑制された事を示している。また、この事はドライアイ症状の改善を示している。
【0072】
試験2:使用感の評価
10名の被験者にて以下の評価を実施した。装着点眼液を用いてコンタクトレンズの両面を1滴ずつ濡らした後、コンタクトレンズを装用した。装用2分後に同じ装着点眼液を点眼した後、乾燥感、収斂感、(A)成分による不快なネバつき感(ねちゃねちゃ感。単なるベタつき感とは異なり、ベタつき感に加えてまぶたがくっつくような感覚)について該当する使用感を表7、表8、表9の評価基準により点数をつけた。被験者の平均を表10の基準で評価した結果は表11に示す。
【0073】
【表7】

【0074】
【表8】

【0075】
【表9】

【0076】
【表10】

【0077】
【表11】

試験の結果、実施例処方では、自覚症状として、乾燥感、収斂感、ネバつき感が顕著に抑制されていた。
【0078】
試験3:処方による組み合わせの有用性の確認
表12の処方に従い、処方1〜3について、それぞれ点眼液、コンタクトレンズ装着液、コンタクトレンズ用装着点眼液を、通常の点眼剤等の調製方法(常法)に従って調製し、ポリエチレンテレフタレート製容器(容量10mL)に充填し、ノズル及びキャップにて施栓して作製した。その他、特記した以外の試験方法は前述の試験1、試験2と同様にし、処方による組み合わせの有用性の確認に関する試験を実施した。なお、処方1と処方2は本発明の眼科用組成物の処方であり、具体的には処方1、処方2、処方3は、それぞれ、表1記載の実施例1、実施例5及び比較例3と同一処方である。結果を表13に示す。
【0079】
【表12】

【0080】
【表13】

本発明の処方を装着点眼液として用いた場合、(実施試験例1、2)と、本発明とは異なる処方を装着点眼液として用いた場合(比較試験例3)では、実施試験例1、2のほうが、涙液油層の安定性が高く、ドライスポットの面積の評価においても顕著に小さく、従って眼の乾燥が顕著に抑制されていた。また収斂感、ネバつき感及び乾燥感の自覚症状においても、優れた効果が確認された。さらに、処方上は本発明の範囲内の組成物であっても、装着点眼液として装着時及び点眼時に同一の組成物を同一のコンタクトレンズ又は眼球に対して用いた場合(実施試験例1、2)と、装着時と点眼時に異なる組成物を用いた場合(比較試験例4、5)を比較すると、実施試験例1、2の方が顕著に優れた効果を示した。
【0081】
試験4:疲れ目改善効果の評価
(試験方法)
表12における処方1(実施例1と同一処方)のコンタクトレンズ用装着点眼液を用いて、疲れ目改善効果を評価した。評価の指標としては、フリッカー値を用いた。
具体的には、コンタクトレンズを週5日以上装用しており、疲れ目を感じ易い4名の被験者に対して、コンタクトレンズを8時間以上終日装用させ、 その後コンタクトレンズを装用した状態のフリッカー値(投与前フリッカー値)を測定した。尚、被験者の使用しているコンタクトレンズは、(1)ジョンソン&ジョンソン社製 主素材:SenofilconA(シリコーンハイドロゲル素材) ソフトコンタクトレンズ分類グループIV が2名、(2)クーパービジョン社製 ソフトコンタクトレンズ分類グループI 主素材:2−ヒドロキシエチルメタクリレートが1名、(3)酸素透過性ハードコンタクトレンズ 主素材:シロキサニルスチレンが1名であった。
【0082】
次に十分な時間を置き、一旦両眼のコンタクトレンズを外し、処方1のコンタクトレンズ用装着点眼液を直接コンタクトレンズの凹面(内側、角膜と接触する面)に片方のレンズにつき1滴ずつ滴下し、再びコンタクトレンズを両眼に装着し、その15分後に、処方1のコンタクトレンズ用装着点眼液を両眼に1滴ずつ点眼し、フリッカー値(投与後フリッカー値)を測定した(実施試験例3)。
別の日に、同様の手順で投与前フリッカー値を測定し、コンタクトレンズを装用したまま処方1の点眼液を両眼に1滴ずつ点眼して、その15分後に、処方1の点眼液を再び両眼に1滴ずつ点眼し、フリッカー値(投与後フリッカー値)を測定した(比較試験例6)。測定されたフリッカー値より、後述の数1の式によりフリッカー値改善率を求めた。
同様に、表12における処方4(実施例7と同一処方)のコンタクトレンズ用装着点眼液を用いて、同様の試験を実施した(実施試験例4及び比較試験例7)。
【0083】
なお、フリッカー値とは、点滅光の点滅周波数を次第に高くしていった際に、肉眼により点滅を識別できなくなる臨界周波数のことである。フリッカー値を指標として、目の疲れや、知覚機能の低下について測定する事が可能である。即ちフリッカー値の改善は、目の疲れ(特に知覚機能の低下を伴う肉体的・精神的疲労から生じる目の疲れ)や、眼精疲労の改善の指標となる。
本試験おいて、フリッカー値は、下記の装置及び条件で測定した。
装置名:労研デジタルフリッカー値測定器 RDF-1(柴田科学株式会社 製)
照度 :測定者の見易い照度に設定
距離 :測定者の見易い位置(「K」の文字が最も明確に見える位置)に設定
SCANつまみ(下降させる初期フリッカー周波数) :60Hz
MANU-AUTO :AUTOに設定
測定されたフリッカー値より、下記の数1の式により疲れ目改善値(フリッカー値の改善率)を求める。
【数1】

【0084】
被験者4名の結果の平均を表14に示す。この結果、4名の被験者の全てにおいて、実施試験例3では、比較試験例6と比較して、フリッカー値改善率の顕著な増大が見られた。また、実施試験例4では、比較試験例7と比較して、フリッカー値改善率の顕著な増大が見られた。尚、当業界においては、フリッカー値の改善率として約3%を基準とし、効果(明確な変化)の有無が判定される事が一般的であると考えられる。以上の結果から、本発明のコンタクトレンズ用装着点眼液は、従来の点眼液のように点眼のみに使用した場合と比較し、疲れ目改善効果、眼精疲労改善効果、或いは肉体的・精神的疲労の改善効果に顕著に優れており、有用性が高いことが確認された。
【0085】
【表14】

【0086】
試験5:コントラスト感度改善効果の評価
(試験方法)
表1における実施例1〜7のコンタクトレンズ用装着点眼液を用いて、コントラスト感度改善効果を評価した。
具体的には、コンタクトレンズを週5日以上装用している、8名の被験者に対して、コンタクトレンズを装用した状態で、Vision Contrast Test System(VCTS(登録商標))チャート試験を用いてコントラスト感度を測定した(ブランク)。詳細な評価方法は、VCTSチャート試験に添付される説明書(VCTS Chart Examination Procedure,Vistech Consultants, Inc.)を参照した。また、コントラスト感度値は、同説明書中のContrast Sensitivity Value Keyの表より算出した。尚、評価点は、A(1.5cpd)、B(3cpd)、C(6cpd)、D(12cpd)、E(18cpd)の5点である。
まず、表12における処方1(=実施例1)のコンタクトレンズ用装着点眼液を用いてコンタクトレンズ装着液的使用に供し、その2分後にコンタクトレンズを装用したまま同じ液を点眼し、その1分後にコントラスト感度を測定した(実施試験例5)。尚、被験者の使用しているコンタクトレンズは、前述のSCL1が4名、SCL2が4名であった。
【0087】
被験者8名の結果の平均を図1に示す。この結果、8名の被験者の全てにおいて、処方1をコンタクトレンズ用装着点眼液として用いた実施試験例5では、ブランクと比較して、コントラスト感度が顕著に改善されていた。
【0088】
同様に、実施例2から7のコンタクトレンズ用装着点眼液について、最も差の大きかったB(3cpd)のポイントにおいて、コントラスト感度値を測定し、結果の平均を表15に示した。尚、被験者の使用しているコンタクトレンズは、前述のSCL1が10名、SCL2が10名であった。
【表15】

上記の結果から明らかなように、実施例2〜7のコンタクトレンズ用装着点眼液を用いた場合も、実施例1と同様に、ブランクと比較してコントラスト感度が顕著に改善されていた。
【0089】
処方例1−11
表16に記載の処方で、コンタクトレンズ用装着点眼液(処方例1−15)を調製した。なお、表16中、各配合成分の単位はg/100mLである。
【0090】
【表16−1】

【0091】
【表16−2】

【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】コンタクトレンズ装用中のコントラスト感度低下に対する本発明のコンタクトレンズ用装着点眼液の改善効果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)セルロース系高分子化合物、ビニル系高分子化合物、ポリエチレングリコール及びデキストランからなる群より選択される1種以上、及び(B)アミノ酸類を含有する、コンタクトレンズ用装着点眼液。
【請求項2】
(A)成分が、セルロース系高分子化合物である請求項1に記載のコンタクトレンズ用装着点眼液。
【請求項3】
セルロース系高分子化合物が、ヒドロキシエチルセルロース、ヒロドキシプロピルメチルセルロース、及びそれらの塩からなる群から選択される一種以上である請求項2に記載のコンタクトレンズ用装着点眼液。
【請求項4】
(A)成分を0.0001〜25(w/v)%の割合で含有する、請求項1〜3のいずれかに記載のコンタクトレンズ用装着点眼液。
【請求項5】
(B)成分が、アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸、イプシロンアミノカプロン酸、ヒアルロン酸及びそれらの塩からなる群より選択される1種以上である、請求項1〜4のいずれかに記載のコンタクトレンズ用装着点眼液。
【請求項6】
(B)成分を0.0001〜10(w/v)%の割合で含有する、請求項1〜5のいずれかに記載のコンタクトレンズ用装着点眼液。
【請求項7】
さらに、(C)非イオン性界面活性剤を含有する請求項1〜6のいずれかに記載のコンタクトレンズ用装着点眼液。
【請求項8】
(C)成分が、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油類及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体からなる群より選択される1種以上である、請求項7に記載のコンタクトレンズ用装着点眼液。
【請求項9】
(C)成分が、ポリソルベート80である請求項7に記載のコンタクトレンズ用装着点眼液。
【請求項10】
(C)成分を0.001〜5(w/v)%の割合で含有する、請求項7〜9のいずれかに記載のコンタクトレンズ用装着点眼液。
【請求項11】
コンタクトレンズが、ソフトコンタクトレンズである請求項1〜10のいずれかに記載のコンタクトレンズ用装着点眼液。
【請求項12】
ソフトコンタクトレンズが、原則としてソフトコンタクトレンズ分類グループIVに属するソフトコンタクトレンズである、請求項11に記載のコンタクトレンズ用装着点眼液。
【請求項13】
ソフトコンタクトレンズが、シリコーンハイドロゲルレンズ素材のソフトコンタクトレンズである請求項11に記載のコンタクトレンズ用装着点眼液。
【請求項14】
目の乾き又はドライアイ抑制用である請求項1〜13のいずれか記載のコンタクトレンズ用装着点眼液。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2009−132671(P2009−132671A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−50471(P2008−50471)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(000115991)ロート製薬株式会社 (366)
【Fターム(参考)】