説明

眼障害および眼疾患の処置のためのスーパーオキシドジスムターゼ模倣物

AMD、DRおよび網膜浮腫の処置のためのSOD模倣物(特に、Mn(III)ポルフィリン錯体模倣物)の使用が、開示される。本発明は、特に、AMDの滲出性形態および非滲出性形態を罹患する人々、前増殖糖尿病性網膜症を含め糖尿病性網膜症(まとめてDRと呼ぶ)を罹患する人々、ならびに網膜浮腫を罹患する人々を処置するための、酵素スーパーオキシドジスムターゼの模倣物の使用に関する。1以上の酵素スーパーオキシドジスムターゼ模倣物および薬学的に受容可能なビヒクルを含む組成物もまた提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国特許出願第60/431,401号(2002年12月6日出願)からの優先権を主張する。
【0002】
本発明は、滲出性形態および非滲出性形態の加齢性黄斑変性、糖尿病性網膜症、および網膜浮腫の処置のための、酵素スーパーオキシドジスムターゼの模倣物に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
加齢性黄斑変性(AMD)は、西洋の国々の高齢集団における視覚障害の最も一般的な原因である。AMDの滲出性形態または「湿潤」形態は、脈絡膜の過度の新生血管形成により特徴付けられ、網膜剥離および失明をもたらす。非滲出性形態または「乾性」形態は、網膜色素性上皮(PRE)下のブルーフ膜におけるドルーゼンと呼ばれる細胞破片の蓄積によって特徴付けられる。AMDを罹患する少数の患者に起こるが、この疾患のより攻撃的な形態である、滲出性AMDは、レーザー光凝固治療または光力学的治療によって、限定的な成功で処置され得る。後者の手順は、適切な波長の光で照射されるとき周囲の血管を破壊する反応中間体を生成する化合物を用いた罹患した領域の投与を包含する。現在のところ、非滲出性AMDの処置に関して認められた治療は、ない。
【0004】
視覚サイクルは、光受容細胞において、対応する全てトランスのレチナール誘導体へ異性化する、オプシン結合シッフ塩基の11−シスレチナールによる光子の吸収で始まる。オプシンから全てトランスのレチナールが遊離され、続いてホスファチジルエタノールアミンと縮合され、新たなシッフ塩基であるNRPE(N−レチニルホスファチジルエタノールアミン)を形成する。このように形成されるNRPEは、光受容細胞外膜をまたがって輸送され、そこでNRPEは加水分解されて、全てトランスのレチナールになる。酵素的に還元されて全てトランスのレチノールになり、続いてRPE細胞の中へ輸送され、このPRE細胞で、この化合物は酵素的に異性化されて11−シスレチノールになり、そして酸化されて11−シスレチナールになる。この化合物は、光受容細胞へ戻され、ここでオプシン結合シッフ塩基を形成し、サイクルを完了する。
【0005】
【化2】

レチナールのリサイクルにより視覚サイクルの完了を補助することに加えて、RPE細胞の重要な機能は、廃棄外部セグメントを食菌し、これらをRPE細胞リソソームにおいて消化することによって、レチナール光受容体の連続的再成形を補助することである。加齢に伴って、リソソームにてリポフスチンと呼ばれる非消化性色素の蓄積が起こる(ドルーゼンの出現は、リポフスチン蓄積に対応すると考えられる)。リポフスチンは、スペクトルの青色部分の光を吸収し、そしてスペクトルの黄色部分で発光する。この蛍光は、エネルギーを近くの酸素に転移させ、この酸素は、スーパーオキシドイオンのような活性酸素種(ROS)へ変換される。これらのROSは、リソソームの膜リン脂質を酸化し、膜完全性を破壊する。膜完全性が破壊された状態では、リソソームの有毒内容物がサイトゾルへ浸出し、RPE細胞死をもたらす。支持するRPE細胞なしでは、レチナール光受容体は視覚伝達系に参加し得ず、従って、失明をもたらす(概説について、Winklerら、Mol.Vision,第5巻:32,1999,online journal;http://www.molvis.org/molvis/v5/p32;CA 132:235390を参照のこと)。
【0006】
Nakanishiおよび共同研究者らは、A2Eと呼ばれる、リポフスチンの主要な蛍光構成成分の構造を明らかにし、そして化学的に合成している(Nakanishiら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,第95巻:14609−14613,1998、およびこの中の参考文献)。この化合物は、求電子性NRPEが異性化されて求核性エナミン1となり、続いて別分子の全てトランスのレチナールとの縮合によってアザトリエン2を形成し、電子環状閉環によってジヒドロピリジン3となり、自己酸化により−(2−ヒドロキシエチル)ピリジニウム種であるA2PEとなり、そして酵素ホスホリパーゼDによるリン酸エステルの酵素的加水分解によってA2Eを生ずることによって生化学的に生じると考えられる。2つの大きな疎水性「テイル」および荷電した極性「ヘッド」を有する1つの分子である、A2Eの化学構造は、細胞膜を破壊する界面活性剤様の傾向を示唆する。光酸化能力に加えて、A2Eは、RPE細胞に対する化合物の有毒効果の重要な成分を形成し得る(概説について、Nakanishiら、Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters,第11巻:1533−1540,2001を参照のこと)。
【0007】
【化3】

AMD疾患プロセスにおける光受容細胞からの全てトランスのレチナールの不完全な輸送という重要な役割は、ホモ接合で存在するときシュタルガルト病と呼ばれる希少で迅速な黄斑変性症をもたらす遺伝子変異が、ヘテロ接合で発現されるとき、非滲出性AMDと関連し得るという発見によって強調されている(Deanら、Science,第277巻:1805−1807,1997)。この遺伝子は、ABCR(ATP結合カセットトランスポーター網膜)遺伝子と呼ばれ、これらのタンパク質産物(リムタンパク質とも呼ばれる)は、ATP加水分解で放出されるエネルギーを利用して、細胞膜をまたがって分子を輸送する。トランスポーターの基質は、上記のシッフ塩基NRPEであると考えられる。十分な機能的トランスポータータンパク質が不在であると、基質NRPEは、レチノールへの還元のために往復で外へ出される代わりに、光受容細胞中へ蓄積する。オプシンから遊離した全てトランスのレチナール分子との縮合、および上記の通りのさらなる反応によってA2Eが生成される。A2Eは、光受容細胞の外部セグメントの残りとともにRPE細胞により摂取され、A2Eはリソソームにて蓄積する。RPE細胞でのA2E蓄積は、正常なコントロールと比較して、ABCR遺伝子のホモ接合性変異体であるマウスにおいてより迅速に起こるという、Travisらによる開示によって、この仮説は支持されている(Travisら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,第97巻:7154−7159,2000)。
【0008】
網膜に存在する条件を模倣した条件下でのリポフスチンの光および酸素への曝露は、細胞膜過酸化および細胞死をもたらすと、いくつかの研究は結論付けている。リポフスチン負荷リソソームを有するRPE細胞の青色光照射が、リポフスチンなしで照射されたコントロールと比較して、細胞膜過酸化を増大させ、細胞生存率を減少させたと、Wihlmarkらは開示した(Wihlmarkら、Free Radical Biol.Med.第22巻:1229−1234,1997)。RPE培養細胞へのリポフスチンの投与およびこれらの細胞の光への曝露は、24時間後40%を超えて細胞生存率を減少させ、リソソームの酵素的活性および抗酸化活性(スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)の酵素的活性および抗酸化活性を含む)を減少させると、BoultonおよびShamsiが開示している(BoultonおよびShamsi、Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.,第42巻:3041−3046,2001)。
【0009】
この証拠および他の証拠から、酸化代謝の有毒副生成物を処理するための身体の天然防御機構における特定の欠損は、AMDの発症において重要な役割を果たし得ることが明らかである。この防御系の1つの重要な成分は、SOD酵素ファミリーである。これらの酵素は、高度活性スーパーオキシドラジカルアニオンの、毒性がより低い実体であるOおよびHへの不均化を触媒する価数の低い金属(MnIIまたはCu/Zn二核性結合のいずれか)を含む。クエンチングされない場合、スーパーオキシドアニオンは、(そのプロトン付加した形態を介して)脂肪酸のアリル部位から水素を引き抜いて、膜損傷をもたらし得る。さらにスーパーオキシドアニオンはNOと反応して、ペルオキシ亜硝酸塩を生成し得る。このペルオキシ亜硝酸塩は、強力な酸化剤であり、過度のNO生成の有害な生物学的作用において重要なプレイヤーであると考えられる。
【0010】
【化4】

RPE細胞生存率を高めることにおけるSODの潜在的な重大さは、リポフスチンの存在下での脂質膜、タンパク質、および酵素の照射によって引き起こされる損傷効果が、SODの添加によって大きく減少され得るということを報告している、Boultonらの開示によって示唆される(Boultonら、J Biol.Chem.,第274巻:23828−23832、1999)。滲出性AMDに関してさえも、日本人の被験体に対する最近の研究は、この疾患のこの形態と、この酵素の標的配列におけるバリン/アラニン置換に対応するSOD遺伝子における変異との間の有意な相関を開示した(Isashikiら、Am.J.Ophthalmol.、第130巻:769−773、2000)。従って、SOD機能を高めることは、AMDの滲出性形態および非滲出性形態の両方の発症を防ぐための実行可能な目標であり得る。
【0011】
酸化ストレスもまた、糖尿病によって誘発される血管機能障害および神経機能障害に寄与する。全ての形態の糖尿病は、網膜、腎糸球体および末梢神経の糖尿病特異的微小血管病状の発達をもたらす(M.Brownlee、「Biochemistry and Molecular Cell Biology of Diabetic Complications」、Nature、第414巻:813−820、2001)。糖尿病に関連する酸化傷害の根本的な原因は、高レベルのスーパーオキシドである。スーパーオキシドの放出は、糖尿病を罹患する患者から単離されたヒト血管において検出された(Guzikら、「Mechanisms of Increased Vascular Superoxide Production in Human Diabetes Mellitus」、Circulation、第105巻:1656−62、2002)。スーパーオキシド源としては、血管組織および多形核白血球が挙げられる(Shurtz−Swirskiら、「Involvement of Peripheral Polymorphonuclear Leukocytes in Oxidative Stress and Inflammation in Type 2 Diabetic Patients」、Diabetes Care、第24巻:104−110、2001)。スーパーオキシドジスムターゼ模倣物は、クローン化細胞において糖尿病の発症を遅らせ(AEOL10113−Piganelliら、「A Metalloporphyrin−Based Superoxide Dismutase Mimic Inhibits Adoptive Transfer of Autoimmune Diabetes by a Diabetogenic T−cell Clone」、Diabetes、第51巻:347−55、2002)、そして、糖尿病ラットにおいて血管機能障害および神経機能障害を防止すること(M40403−Coppeyら、「Effect of M40403 Treatment of Diabetic Rats on Endoneurial Blood Flow、Motor Nerve Conduction Velocity and Vascular Function of Epineural Arterioles of the Siatic Nerve」、British Journal of Pharmacology、第134巻:21−9、2001)が示されている。糖尿病性網膜症を罹患する患者においては、脂質過酸化物の血清レベルは、健康な健常者または糖尿病性網膜症を有さない糖尿病を罹患する患者においてより高い。SODのレベルは、糖尿病患者および健常者において同様のままであるが、重要な抗酸化物であるアスコルビン酸のレベルは、全ての糖尿病患者において、より低い(Gurlerら、「The Role of Oxidative Stress in Diabetic Retinopathy」、Eye、第14巻:73035、2000)。これらの研究の結果は、内因性抗酸化物機構が、糖尿病性網膜症を罹患する患者において制圧されることを示唆している。
【0012】
ヒトにおける酸化ストレス関連組織傷害(例えば、大脳虚血再灌流傷害または心筋虚血再灌流傷害による組織損傷)を処置するかまたは防ぐための、静脈内に投与されるMn SOD自体の使用は、バイオアベイラビリティおよび免疫原性の問題によって不成功に終わっている。これらの問題は、Mn SODが高分子量種であるという事実に起因すると考えられる。内因性Mn SODと匹敵し得る効率でスーパーオキシド不均化を触媒する低分子量化合物は、上述の副作用を最小化させるための良い候補である。Salveminiらは、Mn(II)−ペンタアザ大環状錯体の1つのクラスを低分子量SOD模倣物として開示している。例えば、腸管虚血再灌流のラットモデルにおいて、未処置動物についての0%の生存率と比較して、1mg/kgの化合物4が投与された90%の動物が、4時間後生存した(Salveminiら、Science、第286巻:304、1999;WO 98/58636;Salveminiら、Drugs Future、第25巻(10):1027、2000)。これらの化合物はまた、移植されたバイオポリマー性プロテーゼデバイス(眼の移植物を含む;Ornbergら、WO 00/72893 A2)の安定性を高めることに関して、および疼痛の処置(Salveminiら、米国特許第6,180,620 B1号および第6,214,817B1号)に関して開示されている。
【0013】
【化5】

治療活性を有するSOD模倣物およびカタラーゼ模倣物としての特定のMn−サレン錯体の使用もまた、開示されている。例えば、化合物5は、ラット脳卒中モデルにおいて神経保護作用があることが示されており(Bakerら、J.Pharmacol.Exp.Ther.、第284巻:215−221、1998;Doctrowら、J.Med.Chem.、第45巻:4549−4558、2002)、一方、化合物6は、酵素スーパーオキシドジスムターゼ2の内因性発現が欠損しているマウスの寿命を上昇させることが見出された(Melovら、J.Neurosci.、第21巻:8348−8353、2001)。
【0014】
【化6】

他の研究者らは、眼の疾患を処置するための抗酸化化合物の使用を報告している。Crapoらは、緑内障および黄斑変性を処置するためのポルフィリン含有SOD模倣物の使用を開示している(Crapoら、米国特許第5,994,339号および第6,127,356号)。Campbellらは、ブドウ膜炎および白内障を処置するための、特定のサレンまたはビピリジルMn(IIまたはIII)フェノレート錯体の使用を開示している(Campbellら、米国特許第6,046,188号および第6,177,419B1号)。Levinは、網膜神経節細胞死を減少させるためのROSのスカベンジャーとしてのカルベジロールならびにその誘導体および代謝産物の使用を開示している(WO 00/07584 A2)。Brownleeは、糖尿病性網膜症を処置するための、高グルコース条件下でROS蓄積を減少させるためのマンガンテトラキス(安息香酸)ポルフィリンの使用を開示している(Brownlee、WO 00/19993 A2)。金属を含まないSOD模倣物である、安定なフリーラジカル4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルは、シロネズミにおいて光誘発性網膜損傷を阻害すると報告されている(Wangら、Res.Commun.Mol.Pathol.Pharmacol.、第89巻:291−305、1995)。しかし、これらの報告の中には、AMDの処置に関して本発明の化合物は開示も示唆もされていない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0015】
(発明の要旨)
本出願は、AMDの滲出性形態および非滲出性形態を罹患する人々、前増殖糖尿病性網膜症を含め糖尿病性網膜症(まとめてDRと呼ぶ)を罹患する人々、ならびに網膜浮腫を罹患する人々を処置するための、酵素スーパーオキシドジスムターゼの模倣物の使用に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(発明の詳細な説明)
後区の新生血管形成は、先進国において後天性失明の2つの最も一般的な原因である滲出性加齢性黄斑変性(AMD)および増殖性糖尿病性網膜症(PDR)を引き起こす、視覚を脅かす病状である。現在のところ、滲出性AMDの間に起こる後区新生血管形成に対する承認された処置は、レーザー光凝固またはVisudyne(登録商標)を用いる光力学的治療のみであり;両治療は、網膜に対して局在的なレーザー誘導性の損傷をもたらす、罹患した血管構造の閉塞を包含する。硝子体切除および膜除去を用いる外科的介入のみが、増殖性糖尿病性網膜症を罹患する患者にとって現在のところ利用可能な選択肢である。厳密に薬理学的な処置は、後区新生血管形成に対する使用について認可されていないが、いくつかの種々の化合物が、臨床的に評価されている。これらの化合物としては、例えば、酢酸アネコルタブ(anecortave acetate)(Alcon,Inc)、EYE 001(Eyetech)、および、AMDのためのrhuFabV2(Genentech)、ならびに、糖尿病性黄斑浮腫のためのLY333531(Lilly)およびフルオシノロン(Bausch & Lomb)が挙げられる。
【0017】
黄斑浮腫をもたらす糖尿病患者における高血糖により誘導される網膜微小血管系における変化に加えて、新生血管膜の増殖もまた、網膜の血管漏出および浮腫に関連する。ここで、浮腫は、黄斑、視力悪化を含む。糖尿病性網膜症において、黄斑浮腫は、失明の主要な原因である。血管形成障害のように、レーザー光凝固は、浮腫の状態を安定化するか、または消散させるために使用される。浮腫のさらなる発生を減少させるが、レーザー光凝固は、不運にも、罹患した眼の視野を変化させる細胞を破壊する手順である。
【0018】
眼の新生血管形成および浮腫のための効果的な薬理学的療法は、同様に、患者に対して実質的な効力を提供し、多くの疾患において、この薬理学的療法によって、侵襲性の外科的手順または損傷レーザー手順を避ける。新生血管形成および浮腫の効果的な処置は、患者の生活の質および社会内での生産性を向上させる。また、盲目の人に対して補助および健康管理を提供することに関する社会的コストが、劇的に低減され得る。
【0019】
特定のSOD模倣物は、AMD、DR、および網膜浮腫を処置するために有用であることが、ここで発見されている。これらの化合物は、以下の式1および式2の化合物である:
【0020】
【化7】

化合物1および化合物2は、米国特許第6,127,356号に開示される方法によって合成され得る。米国特許第6,127,356号の内容は、本明細書中で参考として援用される。
【0021】
化合物1および化合物2は、いくつかのインビボ生物学的アッセイにおいて研究されている。例えば、Bowlerらは、ラット脳卒中モデルにおいて、脳虚血の誘発後の1の投与が、炎症促進(pro−inflammatory)タンパク質(例えば、IL−6およびMIP−2)の増大した発現の減衰をもたらしたと報告している(Bowlerら、Free Radical Biology & Medicine、第33巻(8):1141−1152、2002)。また、Mackensenらは、ラット脳卒中モデルにおいて、脳虚血誘発の前または後のいずれかにおいてラットへ与えられるとき、2は梗塞体積を減少させると開示している(Mackensenら、Journal of Neuroscience、第21巻(13):4582−4592、2001)。
【0022】
本発明はまた、網膜神経頭部組織および視神経乳頭組織の処置のために適合される組成物の提供にも関する。本発明の眼用組成物は、1以上のSOD模倣物および薬学的に受容可能なビヒクルを含む。種々の型のビヒクルが、使用され得る。このビヒクルは、自然状態では一般的に水溶性である。水溶液は、処方の容易さに基づいて、および、罹患した眼に1〜2滴の溶液を滴下することによってこのような組成物を容易に投与するという患者の能力に基づいて、一般的に好まれる。しかし、本発明のSOD模倣物はまた、他の型の組成物(例えば、懸濁液、粘液もしくは半粘性ゲル、または、他の型の固体組成物もしくは半固体組成物)の中へ容易に組み入れられ得る。懸濁液は、水に比較的不溶であるSOD模倣物に対して好まれ得る。本発明の眼用組成物はまた、種々の他の成分(例えば、緩衝剤、保存剤、共溶媒、および増粘剤)を含み得る。
【0023】
適切な緩衝剤系(例えば、リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、またはホウ酸ナトリウム)が、保存条件下のpH変動を防ぐために添加され得る。
【0024】
眼用製品は、代表的に、複数用量形態で包装される。従って、使用中の微生物夾雑を防ぐために保存剤が必要とされる。適切な保存剤としては、以下が挙げられる:塩化ベンザルコニウム、チメロサール、クロロブタノール、メチルパラベン、プロピルパラベン、フェニルエチルアルコール、エデト酸二ナトリウム、ソルビン酸、ポリクオタニウム−1、または当業者に公知の他の薬剤。このような保存剤は、代表的に、0.001〜1.0重量/体積%(「w/v%」)のレベルで使用される。
【0025】
投与の経路(例えば、局所的、点眼、非経口的、または経口的)および投与レジメンは、因子(例えば、処置される状態の正確な性質、状態の重症度、ならびに、患者の年齢および全体的体調)に基づいて、熟練の臨床医によって決定される。
【0026】
概して、上記の目的のために使用される用量は、変化するが、AMD、DRおよび網膜浮腫を防ぐかまたは処置するのに効果的な量のうちである。本明細書中で使用される場合、用語「薬学的に効果的な量」とは、ヒトの患者において、AMD、DRおよび/または網膜浮腫を効果的に処置する、1以上のSOD模倣物の量をいう。上記の目的のうちの任意のものに使用される用量は、一般的に、体重1kgあたり約0.01〜約100mg(mg/kg)であり、1日につき1〜4回投与される。この組成物が局所的に投与されるとき、この組成物は、一般的に、0.001〜約5w/v%の濃度範囲にあり、1〜2滴が1日につき1〜4回投与される。
【0027】
本明細書中で使用される場合、用語「薬学的に受容可能なキャリア」とは、安全であり、かつ、本発明の少なくとも1つの化合物の効果的な量の所望の投与経路に適切な送達を提供する、任意の処方物をいう。
【実施例】
【0028】
以下の実施例1および実施例2は、眼内、眼周囲、または眼球後の注入または灌流に有用な処方物である。
【0029】
(実施例1)
【0030】
【表1】

(実施例2)
【0031】
【表2】

(実施例3)
以下の錠剤処方物は、本明細書中で参考として援用される、米国特許第5,049,586号に従って作製され得る。
【0032】
【表3】

本発明は、特定の好ましい実施形態を参照して記載されている;しかし、本発明は、本発明の精神または必要不可欠な特徴から逸脱することなく、その他の特定の形態またはバリエーションで具体化され得ると理解されるべきである。従って、上記の実施形態は、全ての局面において例示的であり、限定的でないと考えられ、本発明の範囲は、上記の説明によってではなく、添付の特許請求の範囲によって示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者における加齢性黄斑変性、糖尿病性網膜症、および/または網膜浮腫を処置するための方法であって、このような処置を必要とする該患者に対して、薬学的に効果的な量の以下:
【化1】

からなる群より選択される化合物を投与する工程を包含する、方法。

【公表番号】特表2006−510669(P2006−510669A)
【公表日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−559315(P2004−559315)
【出願日】平成15年12月5日(2003.12.5)
【国際出願番号】PCT/US2003/038678
【国際公開番号】WO2004/052227
【国際公開日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(399054697)アルコン,インコーポレイテッド (102)
【Fターム(参考)】