説明

着色シート及び化粧シート

【課題】 本発明は、バイオマス系素材を利用して、耐熱性、耐溶剤性などの耐候性と隠蔽性とを有する着色シートおよび化粧シートを提供することを課題とする。
【解決手段】 少なくとも(a)ポリ乳酸系または脂肪族ポリエステル系樹脂と(b)核剤とを含み、かつ、厚みが35〜200μmである脂肪族ポリエステル系着色シート層を含んでなることを特徴とする着色シートである。前記ポリ乳酸着色シートの少なくともどちらか一方の面に、直接または接着性樹脂層を挟んで、少なくとも(c)熱可塑性樹脂と(d)顔料とを含み、かつ、厚みが10〜50μmの着色層を積層してなることを特徴とする着色シートである。また、前記核剤が、CuKα線によるX線回折スペクトルにおいて、2θ=15〜16.5°または2θ=18〜19°に回折ピークを有することを特徴とする着色シートである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマス系素材を利用し成形性に加え、耐熱性、耐溶剤性、高強度を付与させた着色シートおよびそれを用いた化粧シートに関するものである。特に、加工適性にも優れ、内装・外装用のドア、ドア枠、床や幅木など建材分野へ用いる事ができる。さらに詳しくは、寸法安定性にも優れ、長時間保管した後でもラッピングラミネートなどの立体成形用途にも好適であり、また、建装材として利用する際の耐久性にも優れる化粧シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の石油や石炭など化石資源の一方的な消費の下に発展してきた文明は、資源の枯渇、大気の二酸化炭素濃度の増加による温暖化や様々な環境汚染、廃棄物問題など、地球に過大な負荷を与えつづけている。これらの環境問題に対する解決策として、バイオマス系素材を原料とし、熱可塑性樹脂や、様々な成形品を製造する技術が開発されている。
【0003】
従来、バイオマス原料を利用していることと、その生物分解性に着目され開発が行われてきたポリ乳酸や脂肪族ポリエステルなどのいわゆる生分解性プラスチックは、熱溶融成形が可能であるものの、十分な強度や機能が得られているとは言えず、その利用に制限があるのが現状である。
これまでも、それらの課題を解決する為に、各種添加剤の開発や、プラスチック自体の改質が行われ、様々な用途に利用が検討されてきた。
【0004】
一方、化粧シートに使用される熱可塑性樹脂としては、塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル共重合体樹脂などが該化粧シートの基材シート又はその基材シート表面の透明樹脂層などとして使用される。例えば化粧シートの基材シートには、紙または熱可塑性樹脂シートを使用し、これに印刷を施してなる印刷シートがそのまま用いられたり、表面保護層および/または意匠表現層として前述の透明樹脂層が設けられたりして、木材合板、木質繊維板、パーティクルボードなど木質系基材の表面に貼合され使用される。また特に表面強度を必要とする床材および縁材には塩化ビニル樹脂やポリエチレンテレフタレート樹脂などの表面強度に優れる高強度な樹脂材料が使用されてきた。
【0005】
上記した各種の樹脂系の化粧シートの基材シートや透明樹脂層の構成材料としては従来、安価で加工適性や物性にも優れたポリ塩化ビニル樹脂が最も多用されて来たが、近年では環境問題に対する社会的な関心の高まりを受けて、環境への悪影響の少ないポリ塩化ビニル樹脂以外の樹脂、例えばポリオレフィン系熱可塑性樹脂を使用した化粧シート等も開発され、提案されている。(特許文献1参照)。
また、従来の化粧シートが木質基材に貼合された化粧部材は、廃棄時にはその化粧シートと木質基材の分別が困難であり、また表面化粧シートの材質が判別できない、などの問題により、原料リサイクルは困難であり、また有害ガス発生の問題から焼却処理も困難であり、埋め立て処理といった廃棄処理方法をとらざるを得ないという現状の問題がある。
【特許文献1】特開平6−166159号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記バイオマス系素材を原料とした化粧シートとして、主にポリ乳酸を用いた化粧シートなど様々なものが研究されてきているが、表面強度に優れるものもあるが、耐熱性に劣る、耐久性に劣る(生分解性)、耐薬品性に劣る、ポリ乳酸自体のもつ高剛性により加工性に劣るなどの理由により製造・加工・あるいは利用の各段階で問題があり、これまで化粧シートとして実用化されるに至らなかった。
【0007】
また、通常、化粧シートを貼り合わせる基材には、木材、合板、MDF、ハードボード、パーティクルボードなどが利用されているが、これらは、天然の木材を利用しているために、様々な色や模様の異なる材料があり、化粧シートを張り合わせた後でも同色系統で揃えるには、高い隠蔽性が必要とされている。
【0008】
本発明は以上のような従来技術の課題を解決しようとするものであり、バイオマス系素材を利用して、耐熱性、耐溶剤性などの耐候性と隠蔽性とを有する着色シートおよび化粧シートを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、少なくとも(a)ポリ乳酸系または脂肪族ポリエステル系樹脂と(b)核剤とを含み、かつ、厚みが35〜200μmである脂肪族ポリエステル系着色シート層を含んでなることを特徴とする着色シートである。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記ポリ乳酸着色シートの少なくともどちらか一方の面に、直接または接着性樹脂層を挟んで、少なくとも(c)熱可塑性樹脂と(d)顔料とを含み、かつ、厚みが10〜50μmの着色層を積層してなることを特徴とする請求項1に記載の着色シートである。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記核剤が、CuKα線によるX線回折スペクトルにおいて、2θ=15〜16.5°または2θ=18〜19°に回折ピークを有することを特徴とする請求項1に記載の着色シートである。
【0012】
請求項4に記載の発明は、前記顔料が銅フタロシアニンまたはサチンホワイトであることを特徴とする請求項2に記載の着色シートである。
【0013】
請求項5に記載の発明は、60℃90%RHに500時間保管した後の引張伸び率が10%以上あることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の着色シートである。
【0014】
請求項6に記載の発明は、前記請求項1から6のいずれかに記載の着色シートを用いてなる化粧シートである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明は、少なくとも(a)ポリ乳酸系または脂肪族ポリエステル系樹脂と(b)核剤とを含み、かつ、厚みが35〜200μmである脂肪族ポリエステル系着色シート層を含んでなることを特徴とする着色シートである。本発明の着色シートは、再生可能なバイオマス系素材を有効に利用しており、石油由来のプラスチックより燃焼熱が低い。且つ、本発明によれば、耐熱性、耐溶剤性、耐湿性の高い着色シートを得ることができる。また、厚みが35〜200μmであることにより、十分な隠蔽性と強度を得ることができる。
【0016】
請求項2に記載の発明は、前記ポリ乳酸着色シートの少なくともどちらか一方の面に、直接または接着性樹脂層を挟んで、少なくとも(c)熱可塑性樹脂と(d)顔料とを含み、かつ、厚みが10〜50μmの着色層を積層してなることを特徴とする請求項1に記載の着色シートである。更に少なくとも熱可塑性樹脂と顔料を含む着色層を積層することにより、例えば得られた着色シートを化粧シートとして用いる場合に基材の色や柄を隠蔽する効果が更に高まるだけでなく、ポリ乳酸系または脂肪族ポリエステル系樹脂からなる着色シートの色も隠蔽することができる。
【0017】
請求項3に記載の発明は、前記核剤が、CuKα線によるX線回折スペクトルにおいて、2θ=15〜16.5°または2θ=18〜19°に回折ピークを有することを特徴とする請求項1に記載の着色シートである。この特徴を有する核剤はポリ乳酸系または脂肪族ポリエステル系樹脂の結晶化を非常に効率よく早めることができ、シート化の際あるいはシート化した後の結晶化処理により、結晶化が促進され、結晶化が進むことで水や熱からの影響を抑えることができ、着色シートの耐熱性、耐溶剤性、耐湿性を向上させることができる。
【0018】
請求項4に記載の発明は、前記顔料が銅フタロシアニンまたはサチンホワイトであることを特徴とする請求項2に記載の着色シートである。銅フタロシアニンまたはサチンホワイトは、脂肪族ポリエステル系樹脂の中でも特にポリ乳酸の結晶化を早める効果が特に大きく、各種物性を著しく向上させることができる。
【0019】
請求項5に記載の発明は、60℃90%RHに500時間保管した後の引張伸び率が10%以上あることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の着色シートである。本発明の着色シートを高温高湿環境下で保存した後、貼り合わせや曲げ加工など加工する際に、折り曲げによる割れなどを防止できる。また、加工品を長時間高温高湿環境下で保存しても、ひび割れなどを防ぎ、十分な強度を有することが可能である。
【0020】
請求項6に記載の発明は、前記請求項1から6のいずれかに記載の着色シートを用いてなる化粧シートである。本発明の着色シートを用いることにより、再生可能なバイオマス系素材を有効に利用し、環境に優しい化粧シートを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の着色シートは、(a)ポリ乳酸系または脂肪族ポリエステル系樹脂と(b)核剤を含んでなる厚みが35〜200μmの脂肪族ポリエステル系着色シート層を含んでなるシートである。ポリ乳酸系または脂肪族ポリエステル系樹脂としては、ポリ−L−乳酸、L−乳酸とD−乳酸とのランダム共重合体などのポリ乳酸、あるいはステレオコンプレックスとよばれるポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の混合物、またはそれらの誘導体が好ましい。また、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリヒドロキシ吉草酸、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリグリコール酸、ポリコハク酸エステル、あるいは3−ヒドロキシブチレート、3−ヒドロキシバリレートなどを1種類以上含む共重合体やその誘導体なども含まれる。
【0022】
また、ここで核剤とするものは、結晶性樹脂が結晶化するのを助長する物質のことを言う。核剤としては、一般的な有機核剤、無機核剤ともに用いることができ、1種類でも2種類以上を併用して用いてもよい。核剤としては、タルク、スメクタイト、カオリン、マイカ、モンモリロナイト等のケイ酸塩、シリカ、酸化マグネシウム等の無機化合物、脂肪族エステル、脂肪族アミド、脂肪酸金属塩等が挙げられ、脂肪族エステルとしては、ステアリン酸モノグリセライド、ベヘニン酸モノグリセライド等の脂肪酸エステル、12−ヒドロキシステアリン酸トリグリセライド等のヒドロキシ脂肪酸エステル;脂肪族アミドとしては12−ヒドロキシステアリン酸モノエタノールアミド等のヒドロキシ脂肪酸モノアミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスカプリル酸アミド等の脂肪族ビスアミド、エチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド等のヒドロキシ脂肪酸ビスアミド;脂肪酸金属塩としては、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム等のヒドロキシ脂肪酸金属塩等が挙げられる。また、キチンやキトサン、木粉、でんぷんなどの多糖類やその誘導体、ソルビトールなどの糖アルコールなども核剤として利用することができる。更に、フタロシアニン系顔料、サチンホワイトなどの顔料も核剤として用いることができる。本発明の着色シートの場合、核剤が顔料であると、着色シート中に含まれる着色顔料と核剤を複数入れる必要がなく、好ましい。特に銅フタロシアニンは、ポリ乳酸の結晶化速度を促進する効果が大きい。
【0023】
本発明の着色シートに用いられる核剤は、CuKα線によるX線回折スペクトルに2θ=15〜16.5°または18〜19°に回折ピークが見られるものが好ましい。また、粒子径1μm以下の核剤であるとさらに好ましい。この特徴を有する核剤はポリ乳酸系または脂肪族ポリエステル系樹脂の結晶化を非常に効率よく早めることができ、シート化の際あるいはシート化した後の結晶化処理により、結晶化が促進され、結晶化が進むことで水や熱からの影響を抑えることができ、着色シートの耐熱性、耐溶剤性、耐湿性を向上させることができる。
【0024】
また、核剤の大きさは、1μm以下であることを特徴としており、これ以上の大きさを有すると、目的の耐熱性、耐溶剤性、耐湿性を維持できるような結晶化促進の効果が得られないだけでなく、フィルム化の際のブツが目立ち、平滑なフィルムが得られず、印刷時の不良などの原因となる。
【0025】
更に、この脂肪族ポリエステル系着色シート層中には更に着色顔料を含んでいても良く、前述の核剤は顔料であると、着色シート中に含まれる着色顔料と核剤を複数入れる必要がなく、好ましい。顔料の種類としては、通常の無機顔料、有機顔料を用いることができ、用途や必要とされる色や要求品質により選ぶことができ、特に限定されないが、ルチル型、アナターゼ型、含水金属酸化物による表面処理、有機化合物による表面処理などの酸化チタン(二酸化チタン)、カルサイト・アラゴナイト・バテライトなどの結晶構造を持つ炭酸カルシウム、カーボンブラック、アルミフレーク、雲母(マイカ)、カドミウムレッド、カドミウムイエロ−等の硫化物系顔料;群青等の珪酸塩系顔料;亜鉛華、弁柄、酸化クロム、鉄黒、チタンイエロ−、亜鉛−鉄系ブラウン、チタンコバルト系グリ−ン、コバルトグリ−ン、コバルトブル−、銅−クロム系ブラック、銅−鉄系ブラック等の酸化物系顔料;黄鉛、モリブデ−トオレンジ等のクロム酸系顔料;紺青等のフェロシアン系等が挙げられ、また、有機顔料及び有機染料としては、銅フタロシアニンブル−、銅フタロシアニングリ−ン等のフタロシアニン系染顔料;ニッケルアゾイエロ−等のアゾ系、チオインジゴ系、ペリノン系、ペリレン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系等の縮合多環染顔料;アンスラキノン系、複素環系、メチル系の染顔料等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。中でも、ポリ乳酸に対しての結晶化促進効果が大きく、ポリ乳酸が結晶化することで水や熱からの影響を抑えることができ、耐熱性、耐溶剤性、耐湿性などを向上させる効果が大きいため、フタロシアニン系顔料、サチンホワイトが好ましい。
【0026】
また、本発明の着色シートの構成は、厚みが35から200μmの脂肪族ポリエステル系着色シート層を少なくとも1層含んでなるシートであり、この厚み以下であると、十分な隠蔽性と強度が得られず、また、200μm以上であると材料費がかかり、コスト面で好ましくないうえ、シートの固さも上がるため、加工時に割れが生じるなど、加工適性上好ましくない。
【0027】
また、本発明の着色シートは少なくとも(a)ポリ乳酸系または脂肪族ポリエステル系樹脂と(b)核剤を含んでなる厚みが35〜200μmの脂肪族ポリエステル系着色シート層の片側あるいは両側に、少なくとも(c)熱可塑性樹脂と(d)顔料を含んでなる厚みが10〜50μmの着色層が直接あるいは接着性樹脂層を挟んで積層された着色シートであってもよい。特に、脂肪族ポリエステル系着色シート層中に核剤として銅フタロシアニンなどの顔料を含む場合、更に少なくとも熱可塑性樹脂と顔料を含む着色層を積層した構造を有することにより、例えば積層シートを化粧シートとして用いる場合に基材の色や柄を隠蔽する効果が更に高まるだけでなく、脂肪族ポリエステル系着色シート層の色も隠蔽することができる。
【0028】
熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、具体的には、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体又はその鹸化物、エチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体等のポリオレフィン系共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリカーボネート等のポリエステル系樹脂、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系樹脂、6−ナイロン、6,6−ナイロン、6,10−ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリスチレン樹脂、AS樹脂、ABS樹脂等のスチレン系樹脂、セルロースアセテート、ニトロセルロース等の繊維素誘導体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の塩素系樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフロロエチレン、エチレン−テトラフロロエチレン共重合体等のフッ素系樹脂あるいは前述のバイオマス系プラスチック等、又はこれらから選ばれる2種又は3種以上の共重合体や混合物、複合体、積層体等を使用することができる。
【0029】
また、顔料としては特に制限されるものではなく、公知の顔料を用いることができる。
【0030】
熱可塑性樹脂を含む着色層を積層する手法としては、熱ラミネート、ドライラミネート、押出ラミネートなど各種ラミネート方法を適用することができ、特に共押しラミネート手法により同時にシート化する方法を取ることで、シート化および積層の工程が簡略化できる。また、十分な積層強度を有するのであれば、直接積層することも可能ではあるが、様々な接着剤や接着性樹脂層を挟んで積層されていてもよい。接着剤や接着層としては、通常のフィルム積層の際に用いるものを、工程や用途、要求物性などに応じて選ぶことができる。
【0031】
本発明の着色シートには必要に応じてさらに、可塑剤、柔軟剤、発泡剤、充填材、耐加水分解剤、熱安定剤,酸中和剤,紫外線吸収剤,光安定剤,充填剤,帯電防止剤,滑剤,難燃剤,ブロッキング防止剤,脱水剤,半透明化のための光散乱剤,艶調整剤等を添加することもできる。
【0032】
ポリ乳酸やポリエステル樹脂の分解を抑えるために用いる耐加水分解剤としては、カルボキシル基に作用しうるものであれば特に限定されるものではなく、N,N´−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド、2,6,2´,6´−テトライソプロピルジフェニルカルボジイミド、ポリカルボジイミドなどのカルボジイミド化合物、グリシジルエーテル化合物、グリシジルエステル化合物グリシジルアミン化合物、グリシジルイミド化合物、脂環式エポキシ化合物などのエポキシ化合物、その他オキサゾリン化合物、オキサジン化合物を用いることができ、さらに、これらの反応を促進する触媒も併せて添加してもよい。
【0033】
熱安定剤としてはヒンダードフェノール系、硫黄系、リン系等、酸中和剤としてはステアリン酸金属塩、ハイドロタルサイト等、紫外線吸収剤としてはベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系、ベンゾフェノン系、トリアジン系等があり、光安定剤としてはヒンダードアミン系等がある。
【0034】
難燃剤としてはハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、塩素系難燃剤等があり、充填剤としては炭酸カルシウム、シリカ、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、アルミナ、タルク、マイカ、珪酸マグネシウム、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化鉄、カーボンブラック、金属粉等がある。
【0035】
滑剤としては炭化水素系滑剤、脂肪酸、高級アルコール系、脂肪酸アマイド系、金属石鹸系、エステル系、フッ素系等、造核剤としてはカルボン酸金属塩系、ソルビトール系、リン酸エステル金属塩系等があり、これらの添加剤を任意の組み合わせで用いるのが一般的である。
【0036】
また、本発明の着色シートは60℃90%RHに500時間保管した後の1cm幅シートの50mm/min.での引張伸び率が10%以上あることを特徴としている。特にポリ乳酸系または脂肪族ポリエステル系樹脂は、高温高湿の雰囲気で水分と反応し、加水分解を起こすことが知られており、60℃90%RHの環境下で保管すると、ポリ乳酸では200時間もすると分解が進み、しなやかさがなくなり、1cm幅シートの50mm/min.での引張伸び率は小さくなり、およそ2%以下である。一方、本発明の着色シートはポリ乳酸系樹脂あるいは脂肪族ポリエステル系樹脂の結晶化を促進する核剤を含んでおり、結晶化により水分との反応性が低くなるため、60℃90%RHの環境下で500時間保管した後でも加水分解による分子の切断が抑えられ、十分な強度としなやかさを保っており、1cm幅のシートの50mm/min.での引張伸び率が10%以上を維持する。これにより、着色シートを高温高湿環境下で保存した後、貼り合わせや曲げ加工など加工する際に、折り曲げによる割れなどを防止できる。また、加工品を長時間高温高湿環境下で保存しても十分な強度を有していることにもなる。
【0037】
また、結晶化を進行させやすくするためや、引張伸び率の大きさを維持するために、更に柔軟剤あるいは可塑剤などの添加剤を添加してもよい。これらの柔軟剤、可塑剤は結晶化とは相反する特性を与える場合があるが、結晶化が進みフィルムが硬くなりすぎるのを抑える効果がある。柔軟剤、可塑剤には熱可塑性エラストマーのようなものやガラス点移温度の低い樹脂など従来のプラスチック添加剤として知られているものを用いることができるが、ポリ乳酸系または脂肪族ポリエステル系樹脂との相溶性などを考慮して選定を行う。
【0038】
本発明の着色シートの製造手段としては従来公知の任意の製造方法を用いて製造することができる。少なくとも(a)ポリ乳酸系または脂肪族ポリエステル系樹脂を加熱溶融状態で(b)核剤やその他の添加剤と二軸あるいは単軸の押出機にて混練し、Tダイなど各種形状のダイから押出し、冷却ロールにより冷やされ固化する際にシート形状に成形される。更に、延伸、熱処理、巻取りなどの工程を経てシート化することもできる。
【0039】
特に、本発明の着色シートの製造時には添加した核剤の効果を十分に発揮させるために熱処理を行うこともできる。例えば、冷却ロールの温度をコントロールしたり、固化した後に熱ロールを通し、室温から120℃程度の温度で加熱することで、結晶化を更に進行させ、フィルムの耐性を向上させることができる。
【0040】
更に、本発明の化粧シートは前述の着色シートを用いていることを特徴としている。前述の着色シートへ印刷による絵柄層、各種ラミネートやコーティングによる保護層などを設け、更には意匠性を向上させるためのエンボス処理などを施し、化粧シートとして用いることができる。こうして製造した化粧シートは、プライマー層、接着剤などを介し基材と貼り合わせて化粧材を構成することができ、貼り合せる接着剤としては、特に限定されないが、反応性ホットメルト接着剤、エチレン酢酸ビニル系接着剤、ビニル系接着剤などの水性エマルジョン接着剤、ウレタン系接着剤、ゴム系接着剤などの建築部材に使用される一般的な接着剤を用いることができる。基材としては、建装材分野で一般的に用いられている各種基材、例えば木材合板、木質繊維板、パーティクルボードなど木質系基材を用いることができる。
【0041】
以下に実施例を示し、本発明を具体的に説明する。
【実施例1】
【0042】
ポリ乳酸系または脂肪族ポリエステル系樹脂(a)として、ポリ乳酸(ユニチカテラマックTP−4000)100重量部およびビオノーレ(昭和高分子)10重量部を使用した。樹脂を80℃で5時間真空乾燥した。核剤として、粒径1μmのケイ酸塩(CuKα線によるX線回折スペクトルにおいて2θ=9、20、28などに回折ピークが見られる)の粉末1重量部と着色剤として酸化チタン1.8重量部、キナクリドン1.8重量部、アンスラキノン1.8重量部および相溶化剤としてポリエステル−ポリ乳酸共重合体(大日本インキ化学工業製 プラメート)5重量部、さらに添加剤としてポリカルボジイミド(日清紡製 カルボジライトLA1)1重量部を混合して、常法に従い二軸押出機中で溶融混合した後にペレット化した。80℃で4時間真空乾燥した後、溶融押出機に供給した。ポリエステルは、スリット状のダイからシート状に押出され、冷却ドラムに密着させ、冷却固化してシートとした。得られたフィルムの厚みは80μmであった。
【実施例2】
【0043】
ポリ乳酸系または脂肪族ポリエステル系樹脂(a)として、ポリ乳酸(ユニチカテラマックTP−4000)100重量部およびビオノーレ(昭和高分子)10重量部を使用した。樹脂を80℃で5時間真空乾燥した。核剤として、粒径1μmのサチンホワイト(CuKα線によるX線回折スペクトルにおいて2θ=15.1、18.6に回折ピークが見られる)の粉末1重量部と着色剤としてキナクリドン1.8重量部、アンスラキノン1.8重量部および相溶化剤としてポリエステル−ポリ乳酸共重合体(大日本インキ化学工業製 プラメート)5重量部、さらに添加剤としてポリカルボジイミド(日清紡製 カルボジライトLA1)1重量部を混合して、常法に従い二軸押出機中で溶融混合した後にペレット化した。80℃で4時間真空乾燥した後、溶融押出機に供給した。ポリエステルは、スリット状のダイからシート状に押出され、冷却ドラムに密着させ、冷却固化してシートとした。更に、固化した後のシートを熱ロールを用いて110℃に1分間加熱を行い、十分に結晶化を進めた。得られたフィルムの厚みは80μmであった。
【実施例3】
【0044】
ポリ乳酸系または脂肪族ポリエステル系樹脂(a)として、ポリ乳酸(ユニチカテラマックTP−4000)を使用した。核剤としては粒子径0.5μm以下の銅フタロシアニン(CuKα線によるX線回折スペクトルにおいて2θ=18.4に回折ピークが見られる。)1.0重量部を混合して、常法に従い二軸押出機中で溶融混合した後にペレット化した。また、熱可塑性樹脂(c)として、樹脂温度230℃でのメルトインデックスが18のホモポリプロピレン(株式会社プライムポリマー製 プライムポリプロ)を用い、顔料(d)として、酸化チタン18重量部、イソインドリン1.8重量部、酸化鉄2.4重量部、カーボンブラック0.2重量部を混合して、常法に従い二軸押出機中で溶融混合した後にペレット化した。得られたペレットをそれぞれ80℃で5時間真空乾燥した。乾燥後、得られたペレットを異なる2つの溶融押出機に供給した。Tダイを用いた共押し出し法によって、着色ポリプロピレン系樹脂層(1)が最外層、また、前記2種類のペレットの間に樹脂温度190℃でのメルトインデックスが4の酸変性ポリプロピレン系樹脂(2)(三井化学株式会社製 アドマー)、中心にポリ乳酸層(3)がくるよう、(1)/(2)/(3)/(2)/(1)の順になるよう、3種5層の共押しフィルムを作製した。フィルムの厚みは150μm、ポリ乳酸系樹脂層が80μm、酸変性ポリプロピレン系樹脂層が5μm、着色ポリプロピレン系樹脂層が30μmであった。
【0045】
実施例1から3の着色シートを10mm幅、長さ115mmのダンベル型に切り出し、60℃90%RHに500時間保管し、下記の方法で引張伸び率を測定した。結果を表1に示す。
【0046】
引張伸び率(%):引張試験機テンシロンII型(東洋精機(株)製)を用いて、23℃、50%RH下で測定した。チック間40mm、引張速度50mm/minで引張試験を行い、次式により算出した。
引張伸び率(%)=試験片の引張伸び(mm)/試験前のチャック間距離(40mm)
【0047】
【表1】

【0048】
表1より、実施例1から3の着色フィルムは60℃90%RHに500時間保管した後のシートの引張伸び率が10%以上でしなやかな状態を維持しており、高温多湿の環境化においても高い耐性を有しているといえる。
【実施例4】
【0049】
基材シートとして、実施例1のシートを用い、その表面にコロナ処理を施した後、グラビア印刷法により絵柄用インキ(東洋インキ製造株式会社製 ラミスター)を使用して木目模様を施し、模様層を形成した。さらに木目模様の模様層上に2液硬化型のウレタン系アンカーコート剤(三井化学ポリウレタン株式会社製 タケラック(主剤)とタケネート(硬化剤))からなるアンカーコート剤をグラビア印刷法により固形分厚み約1μmとなるように塗工して、アンカーコート層を形成した。
更に、Tダイを用いた共押し出し法によって樹脂温度190℃でのメルトインデックスが4の酸変性ポリプロピレン系樹脂(三井化学株式会社製 アドマー)と樹脂温度230℃でのメルトインデックスが18のホモポリプロピレン(株式会社プライムポリマー製 プライムポリプロ)を、厚み比をこの順に5μmと75μmでアンカーコート層状に積層した。また、この際、冷却ロールの表面に道管模様の凹凸を反転させた柄を付与したものを用い、ポリプロピレン表面に深度約20μmの道管模様を形成させた。
さらに、最表層の凹凸表面に表面保護層(大日本インキ化学工業株式会社製 UCクリヤー)を設けて、実施例4の化粧シートを得た。
【0050】
以上説明した様に、本発明の着色シートは、高い耐湿性と耐溶剤性を有し、印刷などの後工程にも良好に適用可能で、本発明の着色シートを用いることで高い意匠性を有する化粧シートを得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも(a)ポリ乳酸系または脂肪族ポリエステル系樹脂と(b)核剤とを含み、かつ、厚みが35〜200μmである脂肪族ポリエステル系着色シート層を含んでなることを特徴とする着色シート。
【請求項2】
前記ポリ乳酸着色シートの少なくともどちらか一方の面に、直接または接着性樹脂層を挟んで、少なくとも(c)熱可塑性樹脂と(d)顔料とを含み、かつ、厚みが10〜50μmの着色層を積層してなることを特徴とする請求項1に記載の着色シート。
【請求項3】
前記核剤が、CuKα線によるX線回折スペクトルにおいて、2θ=15〜16.5°または2θ=18〜19°に回折ピークを有することを特徴とする請求項1に記載の着色シート。
【請求項4】
前記顔料が銅フタロシアニンまたはサチンホワイトであることを特徴とする請求項2に記載の着色シート。
【請求項5】
60℃90%RHに500時間保管した後の引張伸び率が10%以上あることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の着色シート。
【請求項6】
前記請求項1から6のいずれかに記載の着色シートを用いてなる化粧シート。

【公開番号】特開2009−235152(P2009−235152A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−79923(P2008−79923)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】