説明

着色樹脂組成物及び配合着色剤

【課題】黄色を呈し、耐熱性、耐光性、耐湿性、耐溶剤性、耐移行性、耐昇華性等の堅牢性に優れる組成物を提供する。
【解決手段】下記のキノフタロン系化合物、またはフタルイミド誘導体、配合着色剤、それらを含有する樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性、耐溶剤性、耐湿性を有する黄色のキノフタロン系化合物、そのキノフタロン系化合物を含有する配合着色剤、前記キノフタロン系化合物又は配合着色剤を含有するレーザー光透過性着色樹脂組成物、及びそのレーザー光透過性着色樹脂組成物からなるレーザー光透過性部材とレーザー光吸収性部材がレーザー溶着によって溶着されたレーザー溶着体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱可塑性合成樹脂の着色には、染料又は顔料と分散剤とを混合した粉末状着色組成物であるドライカラー、常温で液状をなす分散剤中に顔料を分散させた着色組成物であるリキッドカラー又はペーストカラー、常温で固体の樹脂中に顔料を分散させたペレット状、フレーク状又はビーズ状の着色組成物であるマスターバッチ等が用いられている。これらの着色用組成物は、その特徴を生かして用途に応じ使い分けられている。
【0003】
これらのうちドライカラーは、染料又は顔料と添加剤(例えば、金属石けん類やワックス類等)の粉末を単に混合したものであって一般に安価であるが、合成樹脂に対する分散性にやや難点があり、微粉末状で飛散し易いことも使用上の難点である。
【0004】
取扱いの容易さ及び使用時の作業環境保全の面から好んで用いられているのはマスターバッチである。マスターバッチに対しては、染料や顔料の濃度が高いこと、着色対象である熱可塑性樹脂の耐熱性や強度等の諸物性に与える影響が小さいこと等が求められると共に、着色対象である熱可塑性樹脂の成形の精密化や高速化に伴い、以前にもまして良好な顔料分散性や分配性が要求されるようになった。
【0005】
更に従来、樹脂部品の接合には、締結用部品(ボルト、ビス、クリップ等)による締結、接着剤による接着、振動溶着、超音波溶着等が用いられてきた。レーザー溶着によれば、簡単な操作により確実に溶着を行って従来と同等以上の強度が得られ、而も振動や熱の影響が少ないので、省力化、生産性の改良、生産コストの低減等を実現することができる。そのため、例えば自動車産業や電気・電子産業等において、振動や熱の影響を回避したい機能部品や電子部品等の接合に適すると共に、複雑な形状の樹脂部品の接合にも対応可能である。
【0006】
合成樹脂製材料のレーザー溶着は、例えば次のように行うことができる。図3に示すように、一方の部材にレーザー光透過性材料を用い、他方の部材にレーザー光吸収性材料を用いて両者を当接させる。レーザー光透過材の側からレーザー光吸収材に向けてレーザー光を照射すると、レーザー光透過材を透過したレーザー光がレーザー光吸収材に吸収されて発熱する。この熱により、レーザー光を吸収した部分を中心としてレーザー光吸収材が溶融し、更にレーザー光透過材も溶融して双方の樹脂が融合し、冷却後、十分な溶着強度が得られ、レーザー光透過材とレーザー光吸収材が強固に接合される。レーザー溶着の特長としては、レーザー光発生部を溶着させたい箇所に接触させることなく溶着可能である、局所加熱であるため周辺部への熱影響がごく僅かである、機械的振動の問題がない、微細な部分及び構造物の溶着が可能である、再現性が高い、高い気密性を維持できる、溶着強度が高い、溶着部分が見た目に分かりにくい、粉塵等を発生することがない等を挙げることができる。
【0007】
レーザー溶着に関する技術として、特開平11−170371号公報(特許文献1)には、レーザー光を吸収する熱可塑性合成樹脂からなる不透明部材と、レーザー光を透過させる熱可塑性合成樹脂からなる無色透明部材が接する部分に焦点が合致するようにレーザー光を照射する工程を備えたレーザー溶着方法が記載されている。しかしこの場合、無色透明部材側から見れば、溶着された部分は、溶着されていない部分とは色や平滑性が異なるものとなり、見栄えがよくないという問題がある。
【0008】
このような成形用の樹脂の着色に用いられる染料・顔料の中で黄色を示すものは、アゾ系、アントラキノン系、キノフタロン系、含金属系等の構造を有するものが、現在使用されている。
例えば、特開2000−309694号公報(特許文献2)には、サンドプラストイエローとサンドプラストバイオレットが配合された黒色着色剤を用いた樹脂組成物が開示されている。ところが、ここで用いられているC.I.ソルベントイエロー114のキノフタロン系黄色着色剤は、大型成形機による樹脂成形等、樹脂の溶融時間が長い場合においては、高温に長い時間さらされるため、分解した染料・顔料が、樹脂のみならず成形機やその他の装置の各部等を汚染することにもなる。
樹脂着色用、中でも融点が高いプラスチックの着色用の染料・顔料は、樹脂の成型時に高温にさらされることによる退色問題が顕著になる。上記のレーザー溶着法においても着色剤の耐熱性は重要な要因となる。
また、成形品が高温高湿条件にさらされる場合、高温高湿条件下での染料の耐移行性等の堅牢性も問題となる。
よって、最近の高融点タイプのエンジニアリングポリマーの着色には、十分に安定な構造の黄色系の着色剤が待望されていた
しかしながら、従来の樹脂着色用の黄色染料・顔料では、樹脂に対する鮮明な着色性、並びに均一な相溶性又は分散性を満たしながら、耐熱性、耐湿性、耐溶剤性及び耐昇華性といった堅牢性を全て満足することは極めて困難であった。。
【特許文献1】特開平11−170371号公報
【特許文献2】特開2000−309694号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来技術に存した上記のような課題に鑑み行われたものであり、その目的とするところは、色相として黄色を呈し、耐熱性、耐光性、耐湿性、耐溶剤性、耐移行性及び耐昇華性といった堅牢性に優れる新規化合物、その化合物を含有する配合着色剤、前記化合物又は配合着色剤を含有するレーザー光透過性着色樹脂組成物、及びそのレーザー光透過性着色樹脂組成物からなるレーザー光透過性部材とレーザー光吸収性部材がレーザー溶着によって溶着されたレーザー溶着体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する本発明のキノフタロン系化合物は、下記式(1)又は(2)で表される。
【0011】
【化1】

・・・(1)
【0012】
【化2】

・・・(2)
【0013】
[式(1)及び(2)のそれぞれにおいて、
Xは、−O−Lを示し、Lは、水素原子、置換若しくは非置換アルキル基、又は、置換若しくは非置換アリール基を示し、
Yは、水素原子、水酸基、メルカプト基、置換若しくは非置換アルコキシ基、置換若しくは非置換アリールオキシ基、置換若しくは非置換ヘテロ環オキシ基、置換若しくは非置換アシルオキシ基、置換若しくは非置換アルキルスルホニルオキシ基、置換若しくは非置換アリールスルホニルオキシ基、置換若しくは非置換アルコキシカルボニルオキシ基、置換若しくは非置換アリールオキシカルボニルオキシ基、置換若しくは非置換アルキルチオ基、置換若しくは非置換アリールチオ基、又は、置換若しくは非置換ヘテロ環チオ基を示し、
式(1)中のR乃至R並びに式(2)中のR乃至R及びR乃至R14は、互いに独立的に、水素原子、ニトロ基、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、シアノ基、チオシアノ基、ハロゲン原子、置換若しくは非置換アルキル基、シクロアルキル基、置換若しくは非置換アリール基、置換若しくは非置換アミノ基、置換若しくは非置換アシル基、置換若しくは非置換アルコキシ基、置換若しくは非置換アリールオキシ基、置換若しくは非置換ヘテロ環オキシ基、置換若しくは非置換アシルオキシ基、置換若しくは非置換アルキルスルホニルオキシ基、置換若しくは非置換アリールスルホニルオキシ基、置換若しくは非置換アルコキシカルボニルオキシ基、置換若しくは非置換アリールオキシカルボニルオキシ基、置換若しくは非置換アルコキシカルボニル基、置換若しくは非置換シクロアルキルオキシカルボニル基、置換若しくは非置換アリールオキシカルボニル基、置換若しくは非置換ヘテロ環オキシカルボニル基、置換若しくは非置換カルバモイル基、置換若しくは非置換スルファモイル基、置換若しくは非置換アルキルスルホニル基、置換若しくは非置換アリールスルホニル基、置換若しくは非置換アルキルチオ基、置換若しくは非置換アリールチオ基、置換若しくは非置換ヘテロ環チオ基、置換若しくは非置換アルコキシスルホニル基、シクロアルキルオキシスルホニル基、置換若しくは非置換アリールオキシスルホニル基、又は置換若しくは非置換ヘテロ環オキシスルホニル基を示し、
式(1)中のR乃至Rの少なくとも1つはカルボキシル基であり、式(2)中のR乃至R14の少なくとも1つはカルボキシル基である。]
【0014】
上記キノフタロン系化合物としては、下記式(3)又は(4)で表されるキノフタロン系化合物が好ましい。
【0015】
【化3】

・・・(3)
【0016】
【化4】

・・・(4)
【0017】
式(3)中のR乃至R並びに式(4)中のR乃至R及びR乃至R14の定義は、それぞれ式(1)又は(2)における定義と同じであり、式(3)中のR乃至Rの少なくとも1つはカルボキシル基、式(4)中のR乃至R14の少なくとも1つはカルボキシル基である。
式(1)乃至(4)で表されるキノフタロン系化合物が有するカルボキシル基又はその他の酸性基は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム、又は有機アンモニウム塩の形態をとり得る。カルボキシル基を酸性基の例として示すと、COOH、COONa、COOK等のアルカリ金属塩、COOCa、COOBa等のアルカリ土類金属塩、COONH、COONH、COONH(CH)NH、COONHC(NHPh)等のアンモニウム塩若しくは有機アンモニウム塩の形態を取りうる。但し、Phはフェニル基を示す。
【0018】
上記キノフタロン系化合物としては、熱分析において、550℃以下の温度条件で、吸熱ピークが測定されないか又は吸熱ピークが380℃以上の温度に存在するものであることが好ましい。このことにより、高融点を示す熱可塑性樹脂の成形に好適に用いることができる。
【0019】
また、本発明の配合着色剤は、着色成分として、上記キノフタロン系化合物と、他の着色成分を含有するものである。キノフタロン系化合物は2種以上であってもよく、他の着色成分も2種以上であってもよい。このような配合着色剤としては、黒色を呈するものがもっとも工業的重要であり、本発明におけるキノフタロン系化合物の優れた耐熱性を活かすことのできる用途が多い。
【0020】
前記他の着色成分は、アゾ系染料・顔料、アゾ系含金染料・顔料、ナフトールアゾ系染料・顔料、アゾレーキ系染料・顔料、アゾメチン系染料・顔料、アントラキノン系染料・顔料、キナクリドン系染料・顔料、ジオキサジン系染料・顔料、ジケトピロロピロール系染料・顔料、アントピリドン系染料・顔料、イソインドリノン系染料・顔料、インダンスロン系染料・顔料、ペリノン系染料・顔料、ペリレン系染料・顔料、インジゴ系染料・顔料、チオインジゴ系染料・顔料、キノリン系染料・顔料、ベンズイミダゾロン系染料・顔料、及び、トリフェニルメタン系染料・顔料からなる群から選ばれた1又は2以上とすることができる。
【0021】
前記配合着色剤における他の着色成分としては、近赤外透過性を有する、アゾ系染料、トリフェニルメタン系染料、アントラキノン系染料、ペリノン系染料、及び、アントラピリドン系染料からなる群から選ばれた1又は2以上が好ましい。これらの着色成分は、酸性染料を有機アミンにより造塩した造塩染料とすることができる。
【0022】
本発明のレーザー光透過性着色樹脂組成物は、熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマー、並びに前記本発明のキノフタロン系化合物又は前記本発明の配合着色剤を含有するものである。前記熱可塑性樹脂は、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、又はポリフェニレンサルファイド樹脂であることが好ましい。
本発明のレーザー光透過性着色樹脂組成物は、半導体レーザーによる800nm付近からYAGレーザーによる1100nm付近にかけての波長の光、すなわちレーザー光の透過性が高く、耐熱性や耐光性等の堅牢性が高く、また耐移行性や耐薬品性等が良好で、而も鮮明な色相を示す。このレーザー光透過性着色樹脂組成物によるレーザー光透過性部材は、レーザー溶着を行う前段階の熱処理工程においてその樹脂部材の色調に退色が生じることがなく、また、色素の昇華が実質上生じない状態でレーザー溶着を行うことが可能である。
【0023】
本発明のレーザー溶着体は、前記本発明のレーザー光透過性着色樹脂組成物からなると、熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマーを有する樹脂組成物からなりレーザー光吸収層を有するレーザー光吸収性部材が、前記レーザー光透過性部材を透過したレーザー光によるレーザー溶着によって溶着されたものである。
【0024】
本発明のレーザー溶着体は、前記レーザー光透過性部材と前記レーザー光吸収性部材とが当接した状態で、レーザー光が前記レーザー光透過性部材を透過して前記レーザー光吸収性材に吸収されるようにそのレーザー光を照射することにより、前記レーザー光透過性部材とレーザー光吸収性部材との当接部を溶着させることよって得ることができる。このレーザー溶着体は耐熱性や耐光性等の堅牢性が高く、また耐移行性や耐薬品性等が良好で、而も鮮明な色相を示す。
【発明の効果】
【0025】
本発明におけるキノフタロン系化合物は、色相として黄色を呈し、耐熱性、耐光性、耐湿性、耐溶剤性、耐移行性及び耐昇華性、並びに着色した合成樹脂のレーザー光透過性等に優れる。そのため、本発明のキノフタロン系化合物及び配合着色剤は、特に高融点の熱可塑性樹脂の着色に最適に使用することができ、本発明のレーザー光透過性着色樹脂組成物、及び本発明のレーザー溶着体におけるレーザー光透過性着色樹脂組成物には、高融点の熱可塑性樹脂を好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
上記式(1)又は(2)で示される本発明のキノフタロン系化合物は、例えば次のようにして得ることができる。
【0027】
【化5】

・・・(5)
【0028】
この反応模式(5)に示されるように、ヒドロキシキナルジン誘導体と無水トリメリット酸誘導体をニトロベンゼンに加え、加熱して還流温度で数時間攪拌する。その後生成物を濾取してメタノールで洗浄した後、乾燥させることにより、本発明のキノフタロン系化合物を得ることができる。
また、ここには無機塩などの不純物を取り除く工程を含むことができる。本発明におけるキノフタロン系化合物及び配合着色剤は、無機塩等の不純物の含有量を少なくすることが好ましい、このことにより、熱可塑性樹脂の機械的物性を良好に維持し、耐移行性並び耐昇華性を更に良好なものとすることができる。このような不純物の量としては2%以下が望ましい。
【0029】
本発明のキノフタロン化合物は、耐熱性、耐光性、耐湿性、耐溶剤性、耐移行性及び耐昇華性等の堅牢性に優れる鮮明な黄色染料として使用することができ、樹脂に対し良好な相溶性を示すため、熱可塑性樹脂用着色剤として優れた特性を示す。
また、各種の筆記具及び記録インキ用黄色着色剤及び補色用着色剤としても最適である。
【0030】
このような効果は、本発明のキノフタロン系化合物の構造によると推測される。この点について、本発明のキノフタロン化合物の例として後記する化合物例のうち化合物例1−1と、後記する類似構造の比較化合物例のうち、黄色着色剤として汎用的に用いられている比較化合物例3及び比較化合物例2を比較検討して説明する。
【0031】
化合物例1−1
【化6】

【0032】
比較化合物例3
【化7】

【0033】
化合物例1−1には、本発明のキノフタロン系化合物に特有の構造として、キノリン骨格に存在するNの隣の置換位置に水酸基[式(1)又は(2)における−O−L]が存在する。そのため、化合物例1−1は下記の推定構造式(6)が配位子となり得るものと結合し易く、特に金属イオン等の陽イオンと結合して安定な構造を形成すると推定される。これは、分子内に結合力の強い構造を有することを示し、樹脂に対し有効性の高い結合力を発揮するものと考えられる。また、この化合物は、安定性が高いため、結晶として取り出し易く、製造工程が簡便であり、工業的にも有利である。本発明者は、このような、本発明のキノフタロン系化合物における水酸基[式(1)又は(2)における−O−L]とキノリン骨格中のNとの間に発生する強い結合力に注目して本発明を完成するに至った。なお、式(1)又は(2)における置換基Xの−O−Lは水酸基である方が結合力が強く好ましい。
また化合物例1−1は、水酸基の位置が比較化合物例3とは異なる。このことにより化合物例1−1を始めとする本発明のキノフタロン系化合物は、比較化合物例3のような化合物とは分子内の環状結合性が異なるため、耐熱性が高く、樹脂中での安定性に優れている。
【0034】
【化8】

・・・(6)
【0035】
比較化合物例3の構造においては、キノリン骨格に存在するNと水酸基の位置は離れている。そのため、水酸基は推定式(7)に示されるようなベンゾフタロン骨格のOとの結合性を持つと考えられるが、化合物例1−1の場合の水酸基とNとの結合性より遙かに弱い。
【0036】
【化9】

・・・(7)
【0037】
実施例において後記する次の[1]及び[2]の内容は、本発明のキノフタロン系化合物の構造がこのような優れた特性を示すことを実証するものである。
【0038】
[1] 化合物例1−1と比較化合物例3と比較化合物例2の熱分析の結果を比較検討する。比較化合物例2と異なり、比較化合物例3にはカルボキシ基が存在する。この相違により、熱分解の開始温度は、比較化合物例2の319℃から比較化合物例3の355℃へと36℃上昇した。
【0039】
すなわち、耐熱性を高める上でカルボキシ基を有することが重要である。化合物例1−1の熱分解の開始温度は、402℃であり、比較化合物例3の場合より更に47℃高い結果が得られた。すなわち、本発明のキノフタロン系化合物は、水酸基の置換位置の違いにより比較化合物例3に比し優れた耐熱性を得たことを示している。高融点タイプの熱可塑性樹脂の成形においては、高い耐熱温度が要求され、特に大型成形機を用いる場合は成形用樹脂の滞留時間が長く高温状態が長時間継続するため、本発明のキノフタロン系化合物を着色剤として用いることが好適であることがわかる。
【0040】
比較化合物例2
【化10】

【0041】
[2] 化合物例1−1を含有する樹脂組成物による試験片A−1と比較化合物例3を含有する樹脂組成物による試験片A−5について、化合物の耐移行性(耐ブリード性)に関する耐湿試験及び昇華試験を実施したところ、化合物例1−1は比較化合物例3に比較して良好な結果が得られた。化合物例1−1が比較化合物例3に比較して樹脂に対する結合性が高く、優れた耐移行性並び耐昇華性を示すことは、水酸基の位置の違いにより樹脂中に留まる力が強いことを示している。
【0042】
式(1)又は(2)中のX、Y、式(1)中のR乃至R、式(2)中のR乃至R及びR乃至R14、式(3)中のR乃至R、並びに式(4)中のR乃至R及びR乃至R14は、それぞれ次のような基又は原子を示す。
【0043】
Xは、−O−Lを示し、
Lは、H、
置換若しくは非置換アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、iso−プロピル基、n−プロピル基、iso−ブチル基、n−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、トリフルオロメチル基、n−デシル基等の炭素数1乃至18の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基)、又は、
置換若しくは非置換アリール基(例えば、フェニル基、アルキルフェニル基、ナフチル基等)を示す。
【0044】
Yは、水素原子、水酸基、メルカプト基、
置換若しくは非置換アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、iso−プロポキシ基、n−プロポキシ基、iso−ブトキシ基、n−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−デシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−ヒドロキシプロポキシ基、3−ヒドロキシプロポキシ基、4−ヒドロキシブトキシ基、ベンジルオキシ基、p−クロロベンジルオキシ基、2−フェニルエトキシ基、2−メトキシエトキシ基、2−エトキシエトキシ基、2−(n)プロポキシエトキシ基、2−(iso)プロポキシエトキシ基、3−メトキシプロポキシ基、4−メトキシブトキシ基、3−メトキシブトキシ基、2,3−ジメトキシプロポキシ基等)、
置換若しくは非置換アリールオキシ基(例えば、フェノキシ、ナフトキシ基等)、
置換若しくは非置換ヘテロ環オキシ基(例えば、ピリジルオキシ基、キノリルオキシ基、フリルオキシ基、ピラニルオキシ基、ピローリルオキシ基、イミダゾリルオキシ基、オキサゾリルオキシ基、ピラゾリルオキシ基、チエニルオキシ基、チアゾリルオキシ基、イソチアゾリルオキシ基、イソオキサゾリルオキシ基、ピリミジルオキシ基、トリアジニルオキシ基、ベンゾチアゾリルオキシ基、ベンゾオキサゾリルオキシ基等)、
置換若しくは非置換アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、オクタノイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p−メチルベンゾイルオキシ基、1−ナフトイルオキシ基、チエノイルオキシ基等の炭素数1乃至18のもの等)、
置換若しくは非置換アルキルスルホニルオキシ基(例えば、メチルスルホニルオキシ基、エチルスルホニルオキシ基、プロピルスルホニルオキシ基、ブチルスルホニルオキシ基、ペンチルスルホニルオキシ基、ヘキシルスルホニルオキシ基、2−エチルヘキシルスルホニルオキシ基、n−オクチルスルホニルオキシ基、n−デシルスルホニルオキシ基、n−ドデシルスルホニルオキシ基、2−メトキシエトキシスルホニルオキシ基等の炭素数1乃至18のもの等)、
置換若しくは非置換アリールスルホニルオキシ基(例えば、フェニルスルホニルオキシ基、p−メチルフェニルスルホニルオキシ基、p−メトキシフェニルスルホニルオキシ基等)、
置換若しくは非置換アルコキシカルボニルオキシ基(例えば、メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、プロポキシカルボニルオキシ基、ブトキシカルボニルオキシ基、ペンチルオキシカルボニルオキシ基、ヘキシルオキシカルボニルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシカルボニルオキシ基、n−オクチルオキシカルボニルオキシ基、n−デシルオキシカルボニルオキシ基、n−ドデシルオキシカルボニルオキシ基、2−メトキシエトキシカルボニルオキシ基等の炭素数1乃至20のもの等)、
置換若しくは非置換アリールオキシカルボニルオキシ基(例えば、フェノキシカルボニルオキシ基、p−メチルフェノキシカルボニルオキシ基、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ基、p−クロロフェノキシカルボニルオキシ基、1−ナフトキシカルボニルオキシ基等)、
置換若しくは非置換アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、iso−プロピルチオ基、n−プロピルチオ基、iso−ブチルチオ基、n−ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、n−オクチルチオ基、n−デシルチオ基、n−ドデシルチオ基等)、
置換若しくは非置換アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、
置換若しくは非置換ヘテロ環チオ基(例えば、ピリジルチオ基、キノリルチオ基、フリルチオ基、ピラニルチオ基、ピローリルチオ基、イミダゾリルチオ基、オキサゾリルチオ基、ピラゾリルチオ基、チエニルチオ基、チアゾリルチオ基、イソチアゾリルチオ基、イソオキサゾリルチオ基、ピリミジルチオ基、トリアジニルチオ基、ベンゾチアゾリルチオ基、ベンゾオキサゾリルチオ基等)を示す。
【0045】
乃至R14は、互いに独立的に、水素原子、ニトロ基、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、シアノ基、チオシアノ基、
ハロゲン原子(例えば、塩素、臭素、ヨウ素、フッ素等)、
置換若しくは非置換アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、iso−プロピル基、n−プロピル基、iso−ブチル基、n−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基等の炭素数1乃至18の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基)、
シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等)、
置換若しくは非置換アリール基(例えば、フェニル基、p−クロロフェニル基、m−メチルフェニル基、p−メトキシフェニル基、p−シアノフェニル基、p−カルボキシフェニル基、p−ヒドロキシフェニル基、p−メルカプトフェニル基、p−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル基、p−ニトロフェニル基、p−アセチルフェニル基、1−ナフチル基等)、
置換若しくは非置換アミノ基、
置換若しくは非置換アシル基(例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、オクタノイル基、ベンゾイル基、p−メチルベンゾイル基、1−ナフトイル基、チエノイル基等の炭素数1乃至18の置換若しくは非置換アシル基)、
置換若しくは非置換アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、iso−プロポキシ基、n−プロポキシ基、iso−ブトキシ基、n−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−デシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−ヒドロキシプロポキシ基、3−ヒドロキシプロポキシ基、4−ヒドロキシブトキシ基、ベンジルオキシ基、p−クロロベンジルオキシ基、2−フェニルエトキシ基、2−メトキシエトキシ基、2−エトキシエトキシ基、2−(n)プロポキシエトキシ基、2−(iso)プロポキシエトキシ基、3−メトキシプロポキシ基、4−メトキシブトキシ基、3−メトキシブトキシ基、2,3−ジメトキシプロポキシ基等)、
シクロアルキルオキシカルボニル基(例えば、シクロペンチルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、シクロヘプチルオキシカルボニル基等)、
置換若しくは非置換アリールオキシ基(例えば、フェノキシ、ナフトキシ基等)、
置換若しくは非置換ヘテロ環オキシ基(例えば、ピリジルオキシ基、キノリルオキシ基、フリルオキシ基、ピラニルオキシ基、ピローリルオキシ基、イミダゾリルオキシ基、オキサゾリルオキシ基、ピラゾリルオキシ基、チエニルオキシ基、チアゾリルオキシ基、イソチアゾリルオキシ基、イソオキサゾリルオキシ基、ピリミジルオキシ基、トリアジニルオキシ基、ベンゾチアゾリルオキシ基、ベンゾオキサゾリルオキシ基等)、
置換若しくは非置換アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、オクタノイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p−メチルベンゾイルオキシ基、1−ナフトイルオキシ基、チエノイルオキシ基等の炭素数1乃至18の置換若しくは非置換アシルオキシ基等)、
置換若しくは非置換アルキルスルホニルオキシ基(例えば、メチルスルホニルオキシ基、エチルスルホニルオキシ基、プロピルスルホニルオキシ基、ブチルスルホニルオキシ基、ペンチルスルホニルオキシ基、ヘキシルスルホニルオキシ基、2−エチルヘキシルスルホニルオキシ基、n−オクチルスルホニルオキシ基、n−デシルスルホニルオキシ基、n−ドデシルスルホニルオキシ基、2−メトキシエトキシスルホニルオキシ基等の炭素数1乃至18の置換若しくは非置換アルキルスルホニルオキシ基)、
置換若しくは非置換アリールスルホニルオキシ基(例えば、フェニルスルホニルオキシ基、p−メチルフェニルスルホニルオキシ基、p−メトキシフェニルスルホニルオキシ基等)、
置換若しくは非置換アルコキシカルボニルオキシ基(例えば、メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、プロポキシカルボニルオキシ基、ブトキシカルボニルオキシ基、ペンチルオキシカルボニルオキシ基、ヘキシルオキシカルボニルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシカルボニルオキシ基、n−オクチルオキシカルボニルオキシ基、n−デシルオキシカルボニルオキシ基、n−ドデシルオキシカルボニルオキシ基、2−メトキシエトキシカルボニルオキシ基等の炭素数1乃至20の置換若しくは非置換アルコキシカルボニルオキシ基等)、
置換若しくは非置換アリールオキシカルボニルオキシ基(例えば、フェノキシカルボニルオキシ基、p−メチルフェノキシカルボニルオキシ基、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ基、p−クロロフェノキシカルボニルオキシ基、1−ナフトキシカルボニルオキシ基等)、
置換若しくは非置換アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、iso−プロポキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、iso−ブトキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、2−エチルヘキシルオキシカルボニル基、n−オクチルオキシカルボニル基、n−デシルオキシカルボニル基、n−ドデシルオキシカルボニル基、2−ヒドロキシエトキシカルボニル基、2−ヒドロキシプロポキシカルボニル基、3−ヒドロキシプロポキシカルボニル基、4−ヒドロキシブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、2−フェニルエトキシカルボニル基、2−メトキシエトキシカルボニル基、2−エトキシエトキシカルボニル基、2−アセチルオキシエトキシカルボニル基等)、
置換若しくは非置換シクロアルキルオキシカルボニル基(例えば、シクロペンチルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、シクロヘプチルオキシカルボニル基等)、
置換若しくは非置換アリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル基、ナフトキシカルボニル基等)、
置換若しくは非置換ヘテロ環オキシカルボニル基(例えば、ピリジルオキシカルボニル基、キノリルオキシカルボニル基、フリルオキシカルボニル基、ピラニルオキシカルボニル基、ピローリルオキシカルボニル基、イミダゾリルオキシカルボニル基、オキサゾリルオキシカルボニル基、ピラゾリルオキシカルボニル基、チエニルオキシカルボニル基、チアゾリルオキシカルボニル基、イソチアゾリルオキシカルボニル基、イソオキサゾリルオキシカルボニル基、ピリミジルオキシカルボニル基、トリアジニルオキシカルボニル基、ベンゾチアゾリルオキシカルボニル基、ベンゾオキサゾリルオキシカルボニル基等)、
置換若しくは非置換カルバモイル基、
置換若しくは非置換スルファモイル基、
置換若しくは非置換アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、iso−プロピルスルホニル基、n−プロピルスルホニル基、iso−ブチルスルホニル基、n−ブチルスルホニル基、ペンチルスルホニル基、ヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、n−オクチルスルホニル基、n−デシルスルホニル基、n−ドデシルスルホニル基等)、
置換若しくは非置換アリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル基、p−メチルフェニルスルホニル基、p−メトキシフェニルスルホニル基、p−クロロフェニルスルホニル基、1−ナフチルスルホニル基等)、
置換若しくは非置換アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、iso−プロピルチオ基、n−プロピルチオ基、iso−ブチルチオ基、n−ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、n−オクチルチオ基、n−デシルチオ基、n−ドデシルチオ基等)、
置換若しくは非置換アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、
置換若しくは非置換ヘテロ環チオ基(例えば、ピリジルチオ基、キノリルチオ基、フリルチオ基、ピラニルチオ基、ピローリルチオ基、イミダゾリルチオ基、オキサゾリルチオ基、ピラゾリルチオ基、チエニルチオ基、チアゾリルチオ基、イソチアゾリルチオ基、イソオキサゾリルチオ基、ピリミジルチオ基、トリアジニルチオ基、ベンゾチアゾリルチオ基、ベンゾオキサゾリルチオ基等)、
置換若しくは非置換アルコキシスルホニル基(例えば、メトキシスルホニル基、エトキシスルホニル基、iso−プロポキシスルホニル基、n−プロポキシスルホニル基、iso−ブトキシスルホニル基、n−ブトキシスルホニル基、ペンチルオキシスルホニル基、ヘキシルオキシスルホニル基、2−エチルヘキシルオキシスルホニル基、n−オクチルオキシスルホニル基、n−デシルオキシスルホニル基、n−ドデシルオキシスルホニル基、2−ヒドロキシエトキシスルホニル基、2−ヒドロキシプロポキシスルホニル基、ベンジルオキシスルホニル基、p−クロロベンジルオキシスルホニル基、2−メトキシエトキシスルホニル基、2−エトキシエトキシスルホニル基等)、
シクロアルキルオキシスルホニル基(例えば、シクロペンチルオキシスルホニル基、シクロヘキシルオキシスルホニル基、シクロヘプチルオキシスルホニル基等)、
置換若しくは非置換アリールオキシスルホニル基(例えば、フェノキシスルホニル基、ナフトキシスルホニル基等)、
置換若しくは非置換ヘテロ環オキシスルホニル基(例えば、ピリジルオキシスルホニル基、キノリルオキシスルホニル基、フリルオキシスルホニル基、ピラニルオキシスルホニル基、ピローリルオキシスルホニル基、イミダゾリルオキシスルホニル基、オキサゾリルオキシスルホニル基、ピラゾリルオキシスルホニル基、チエニルオキシスルホニル基、チアゾリルオキシスルホニル基、イソチアゾリルオキシスルホニル基、イソオキサゾリルオキシスルホニル基、ピリミジルオキシスルホニル基、トリアジニルオキシスルホニル基、ベンゾチアゾリルオキシスルホニル基、ベンゾオキサゾリルオキシスルホニル基等)を示す。
【0046】
なお、R乃至Rの少なくとも1つはカルボキシル基であり、R乃至R14の少なくとも1つはカルボキシル基である。
【0047】
式(1)又は(2)中のX、Y、式(1)中のR乃至R、式(2)中のR乃至R及びR乃至R14、式(3)中のR乃至R、並びに式(4)中のR乃至R及びR乃至R14にそれぞれ置換できる基又は原子の例としては、
水酸基、カルボキシル基、ニトロ基、アミノ基、
ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子等)、
炭素数1乃至18の直鎖状若しくは分岐鎖状の置換(例えば、水酸基、ハロゲン原子、炭素数1乃至18のアルコキシ基等による置換)若しくは非置換アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、iso−プロピル基、n−プロピル基、iso−ブチル基、n−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基等)、
置換(例えば、水酸基、ハロゲン原子、炭素数1乃至18のアルキル基、炭素数1乃至18のアルコキシ基等による置換)若しくは非置換アリール基(例えば、フェニル基、p−クロロフェニル基、m−メチルフェニル基、p−メトキシフェニル基、p−シアノフェニル基、p−カルボキシフェニル基、p−ヒドロキシフェニル基、p−メルカプトフェニル基、p−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル基、p−ニトロフェニル基、p−アセチルフェニル基、1−ナフチル基等)、
炭素数1乃至18の直鎖状もしくは分岐鎖状の置換(例えば、水酸基、ハロゲン原子[フッ素、塩素、臭素、沃素等]、炭素数1乃至18のアルキル基、炭素数1乃至18のアルコキシ基等)または非置換アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、iso−プロポキシ基、n−プロポキシ基、iso−ブトキシ基、n−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−デシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基等)、
炭素数3乃至12のシクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等)、
炭素数1乃至18のアシル基(例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、オクタノイル基、ベンゾイル基、p−メチルベンゾイル基、1−ナフトイル基、チエノイル基等)等を挙げることができる。
【0048】
本発明におけるキノフタロン系化合物としては、式(1)又は(2)におけるXが水酸基であり且つR又はR12がカルボキシル基であることが特に好ましい。
上記式(1)又は(3)で表されるキノフタロン系化合物の具体例として、下記式(I)におけるX、Y、R乃至Rを特定した下記化合物例1−1乃至1−10を挙げることができる。但し、勿論本発明はこれらに限定されるものではない。
【0049】
【化11】

・・・(I)
【0050】
【表1】

但し、表1において、OMeはOCH3、OAcはOCOCHを示す。
【0051】
特に好ましいものとして下記化合物例1−1乃至1−3を挙げることができる。
【0052】
化合物例1−1
【化12】

【0053】
化合物例1−2
【化13】

【0054】
化合物例1−3
【化14】

【0055】
上記式(2)又は(4)で表されるキノフタロン系化合物の具体例として、下記式(II)におけるX、Y、R乃至R、R乃至R14を特定した下記化合物例2−1乃至2−10を挙げることができる。但し、勿論本発明はこれらに限定されるものではない。
【0056】
【化15】

・・・(II)
【0057】
【表2】

但し、表2において、OMeはOCH3、OAcはOCOCHを示す。
【0058】
特に好ましいものとして下記化合物例2−1を挙げることができる。
【0059】
化合物例2−1
【化16】

【0060】
本発明の配合着色剤は、着色成分として、上記式(1)乃至(4)の何れかで表されるキノフタロン系化合物を1種又は2種以上と、他の着色成分を含有する。
【0061】
本発明におけるキノフタロン系化合物は黄色系の着色作用を有するので、これを他の色相の着色剤と組み合わせることにより。例えば、オレンジ色(黄色+赤色)、緑色(例えば黄色+青色)、紫色(例えば赤色+青色)、黒色(例えば青色+黄色+赤色、または、紫色+黄色)といった種々の色相を呈する配合着色剤を得ることができる。工業的には、この中で黒色着色剤としての用途が重要である。
【0062】
配合することができる他の着色成分の好ましい例としては、アゾ系染料・顔料、アゾ系含金染料・顔料、ナフトールアゾ系染料・顔料、アゾレーキ系染料・顔料、アゾメチン系染料・顔料、アントラキノン系染料・顔料、キナクリドン系染料・顔料、ジオキサジン系染料・顔料、ジケトピロロピロール系染料・顔料、アントピリドン系染料・顔料、イソインドリノン系染料・顔料、インダンスロン系染料・顔料、ペリノン系染料・顔料、ペリレン系染料・顔料、インジゴ系染料・顔料、チオインジゴ系染料・顔料、キノリン系染料・顔料、ベンズイミダゾロン系染料・顔料、及び、トリフェニルメタン系染料・顔料からなる群から選ばれた1又は2以上の有機染顔料を挙げることができる。それらの着色剤が呈する色は、黄色、赤色、青色、緑色、黒色等を挙げることができる。
【0063】
本発明の配合着色剤は、前記他の着色成分として、近赤外透過性を有する、アゾ系染料、トリフェニルメタン系染料、アントラキノン系染料、ペリノン系染料、及び、アントラピリドン系染料からなる群から選ばれた1又は2以上を用いたものとすることができる。この場合の配合着色剤は、近赤外透過フィルターや光ディスクの透過側の着色剤として好適である。
【0064】
また本発明の配合着色剤は、前記他の着色成分が、酸性染料を有機アミンにより造塩した造塩染料であるものとすることができる。このような造塩染料は、酸性染料から得られるアニオン成分と有機アミンから得られるカチオン成分によって得ることができる。すなわち、酸性染料から得られるアニオンと有機アミン(例えば、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、グアニジン類、又はロジンアミン類等から得られるカチオン)との造塩反応により得ることが可能である。この造塩反応には、公知のイオン反応を用いることができる。例えば、スルホン酸基を2個有する酸性染料成分を水中に分散させ、その染料の1.5乃至2.5倍モルの有機アミン成分を塩酸水に溶解させた溶液を前記分散液中に滴下し、数時間攪拌して反応させる。その反応混合物を濾過し、濾取物を水洗して乾燥させることにより、造塩染料を得ることができる。
【0065】
このように得られた造塩染料は、熱可塑性樹脂との相溶性が良好であり、成形工程において色調の退色が生じ難く、着色された成形物の耐ブリード性が高い。これは、熱可塑性樹脂組成物中で造塩染料がアンカー効果を発現し、本発明のキノフタロン系化合物と相俟ってブリード現象が好適に抑制されるためであると考えられる。
【0066】
上記有機アミンから得られるカチオン成分としては、例えば公知の芳香族系アミンや脂肪族系アミン等を挙げることができる。有機アミンの具体例としては、ブチルアミン、ヘキシルアミン、ペンチルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、ミリスチルアミン、パルミチルアミン、セチルアミン、オレイルアミン、ステアリルアミン、ジブチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、ジ−(2−エチルヘキシル)アミン、ドデシルアミン等の脂肪族アミン;シクロヘキシルアミン、ジ−シクロヘキシルアミン、ロジンアミン等の脂環族アミン;3−プロポキシプロピルアミン、2−エチルヘキシルアミン、ジ−(3−エトキシプロピル)アミン、3−ブトキシプロピルアミン、オクトオキシプロピルアミン、3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミン等のアルコキシアルキルアミン;N−シクロヘキシルエタノールアミン、N−ドデシルイミノ−ジ−エタノール等のアルカノ−ル基含有アミン;ジメチルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミンのようなジアミン;1、3−ジフェニルグアニジン、1−o−トリルグアニジン、ジ−o−トリルグアニジン等のグアニジン誘導体のアミン;アニリン、ベンジルアミン、ナフチルアミン、フェニルアミン、フェニレンジアミン、メチルフェニレンジアミン、キシレンジアミン(もしくは、N−モノアルキル置換体)等の芳香族アミン等を挙げることができる。このような有機アミンのうち好ましい例としては、脂環族アミン及びグアニジン誘導体を挙げることができる。
【0067】
上記アニオン成分を得る酸性染料の例としては、次のような酸性染料を挙げることができる。
【0068】
赤色酸性染料として、
C.I.Acid Red 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, 11, 12, 13, 14, 15, 16, 17, 18, 19, 20, 21, 22, 23, 24, 25, 25:1, 26, 26:1, 26:2, 27, 29, 30, 31, 32, 33, 34, 35, 36, 37, 39, 40, 41, 42, 43, 44, 45, 49, 53, 54, 55, 57, 59, 60, 62, 64, 68, 74, 76, 76:1, 88, 102, 106, 107, 108, 110, 113, 120, 127, 131, 132, 133, 134, 135, 137, 138, 141, 155, 157, 160, 161, 172, 175, 176, 177, 181, 231, 237, 239, 240, 242, 249, 252, 253, 257, 263, 264, 267, 274, 276, 280, 283, 309, 311, 324, 325, 326, 334, 335, 336, 337, 340, 343, 344, 347, 348, 353, 354等のモノアゾ系酸性染料;
C.I.Acid Red 47, 56, 65, 66, 67, 70, 71, 73, 85, 86, 89, 97, 99, 104, 111, 112, 114, 115, 116, 123, 125, 128, 142, 144, 148, 150, 151, 152, 154, 158, 163, 164, 167, 170, 171, 173, 241, 255, 260, 286, 299, 323, 333, 350, 351等ジスアゾ系酸性染料;
C.I.Acid Red 80, 81, 82, 83, 356等のアントラキノン系酸性染料(アントラピリドン酸性染料を含む)が挙げられる。
【0069】
紫色酸性染料として、
C.I.Acid Violet 29, 31, 33, 34, 36, 36:1, 39, 41, 42, 43, 47, 51, 63, 76, 103, 118, 126等のアントラキノン系酸性染料(アントラピリドン酸性染料を含む);
C.I.Acid Violet 15, 16, 17, 19, 21, 23, 24, 25, 38, 49, 72等のトリフェニルメタン系酸性染料が挙げられる。
【0070】
青色酸性染料として、
C.I.Acid Blue 2, 8, 14, 25, 27, 35, 37, 40, 41, 41:1, 41:2, 43, 45, 46, 47, 49, 50, 51, 51, 53, 54, 55, 56, 57, 58, 62, 62:1, 63, 64, 65, 68, 69, 70, 78, 79, 80, 81, 96, 111, 124, 127, 127:1, 129, 137, 138, 143, 145, 150, 175, 176, 183, 198, 203, 204, 205, 208, 215, 220, 221, 225, 226, 227, 230, 231, 232, 233, 235, 239, 245, 247, 253, 257, 258, 260, 261, 264, 266, 270, 271, 272, 273, 274, 277, 277:1, 278, 280, 281, 282, 286, 287, 288, 289, 290, 291, 292, 293, 294, 295, 298, 301, 302, 304, 305, 306, 307, 313, 316, 318, 322, 324, 327, 331, 333, 336, 339, 340, 343, 344, 350等のアントラキノン系酸性染料;
C.I.Acid Blue 1, 3, 5, 7, 9, 11, 13, 15, 17, 22, 24, 26, 34, 48, 75, 83, 84, 86, 88, 90, 90:1, 91, 93, 99, 100, 103, 104, 108, 109, 110, 119, 123, 147, 206, 213, 269等のトリフェニルメタン系酸性染料が挙げられる。
【0071】
緑色酸性染料として、
C.I.Acid Green 10, 17, 25, 25:1, 27, 36, 37, 38, 40, 41, 42, 44, 54, 59, 69, 71, 81, 84, 95, 101, 110, 117等のアントラキノン系酸性染料;
C.I.Acid Green 3, 5, 6, 7, 8, 9, 11, 13, 14, 15, 16, 18, 22, 50, 50:1等のトリフェニルメタン系酸性染料が挙げられる。
【0072】
またその他の用いることができる染料の具体的な例として、
C.I.Solvent Orange 60, 78、C.I.Vat Orange 15等の橙色系ペリノン染料;
C.I.Solvent Red 135, 162, 178, 179、C.I.Vat Red 7等の赤色系ペリノン染料;
C.I.Solvent Violet 29等の紫色系ペリノン染料が挙げられる。
【0073】
本発明の配合着色剤は、原材料を任意の配合方法で配合することにより得られる。配合成分は、通常、できるだけ均質化させることが好ましい。具体的には例えば、全ての原材料をブレンダー、ニーダー、バンバリーミキサー、ロール、押出機等の混合機で混合して均質化させて配合着色剤を得る。配合着色剤を、高濃度着色樹脂組成物として得ることもできる。高濃度着色樹脂組成物については、予めドライブレンドされた原材料を、加熱した押出機で溶融混練して均質化した後、針金状に押出し、次いで所望の長さに切断して着色粒状をなす樹脂組成物(着色ペレット)として得ることもできる。
【0074】
本発明のキノフタロン系化合物及び配合着色剤は、造粒処理して又は顆粒処理して用いることができる。造粒又は顆粒状にすることにより、着色剤の飛散防止や取扱いが容易になると共に、樹脂の分散性を改善することもできる。造粒方法としては、造粒機を用いた機械的な造粒方法、溶解液又は分散液をスプレードライヤーにより噴霧して固化させる方法等がある。また各種の添加剤や造粒化剤を用いることもできる。前記造粒化剤の例としては、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、水溶性高分子化合物等が挙げられる。例えば噴霧乾燥造粒法を用いる場合において、少なくともキノフタロン系化合物又は配合着色剤と造粒化剤と溶媒を、ディスパーやホモミキサー等により予め均一に混合する際、必要に応じ、コロイドミル、サンドミル、ボールミル等の粉砕機を用いてもよい。
【0075】
上記界面活性剤の例としては、脂肪酸類及びその塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物等のアニオン界面活性剤:ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル等のノニオン界面活性剤:脂肪族アミン類、第4級アンモニウム塩類、アルキルピリジニウム塩類等のカチオン界面活性剤が挙げられる。
【0076】
上記水溶性高分子化合物の例としては、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、化工デンプン、アラビアガム、アルギン、シクロデキストリン、プルラン、カゼイン、ゼラチン、リグニン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリル酸塩、スチレン−無水マレイン酸共重合体、オレフィン−無水マレイン酸共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン等が挙げられる。
【0077】
本発明のキノフタロン系化合物(着色剤)及び配合着色剤はマスターバッチ(高濃度着色樹脂組成物)用の良好な着色剤になり得る。また、キノフタロン系化合物と他の着色成分を含有する黒色配合着色剤の場合にマスターバッチとすることが好適である。押出処理等により本発明のキノフタロン系化合物を含有するマスターバッチを製造する際に、本発明のキノフタロン系化合物に、高温による分解や昇華が生じ難く、変色し難いためである。このようなマスターバッチは、例えば、マスターバッチのベースとなる熱可塑性樹脂の粉末又はペレット、及び本発明のキノフタロン系化合物又は配合着色剤、並びに必要に応じその他の成分を、タンブラー又はスーパーミキサー等で混合し、押出機、バッチ式混練機又はロール式混練機等を用いて、加熱溶融法によりペレット化又は粗粒子化することにより得ることができる。また、例えば合成後未だ溶液状態にある熱可塑性樹脂に前記本発明のキノフタロン系化合物又は配合着色剤並びに必要に応じその他の成分を添加した後、溶媒を除去してマスターバッチを得ることもできる。(なお、同様に処理して通常濃度の成形用着色樹脂組成物を得ることもできる。)
このようにして得られた着色ペレット又は粗粒子(着色剤形態がマスターバッチ)を熱可塑性樹脂の着色に用いて常法で成形処理を行うことにより、均一に着色された樹脂成形物が得られる。
【0078】
マスターバッチの場合、熱可塑性樹脂に対し、前記着色剤を例えば1乃至30重量%含有するものとすることができる。好ましくは5乃至15重量%である。
【0079】
本発明のキノフタロン系化合物(着色剤)又は配合着色剤により着色した樹脂成形物の製造は、通常行われる種々の手順により行い得る。例えば、着色樹脂組成物(ペレット等)を用いて、押出機、射出成形機、ロールミル等の加工機により成形することにより行うこともでき、また、透明性を有する樹脂のペレット又は粉末、粉砕された着色剤(キノフタロン系化合物または配合着色剤)、及び必要に応じ各種の添加物を、適当なミキサー中で混合し、この混合物を、加工機を用いて成形することにより行うこともできる。また例えば、適当な重合触媒を含有するモノマーに着色剤を加え、この混合物を重合により所望の樹脂とし、これを適当な方法で成形することもできる。成形方法としては、例えば射出成形、押出成形、圧縮成形、発泡成形、ブロー成形、真空成形、インジェクションブロー成形、回転成形、カレンダー成形、溶液流延等、一般に行われる何れの成形方法を採用することもできる。樹脂成形物における着色剤の濃度としては、熱可塑性樹脂に対し、0.01乃至5重量%が好適であり、0.1乃至1重量%が更に好適である。
【0080】
本発明のキノフタロン系化合物(着色剤)若しくは配合着色剤により着色する熱可塑性樹脂(本発明のレーザー光透過性着色樹脂組成物若しくはマスターバッチに用いる熱可塑性樹脂を含む)の例としては、ポリアミド樹脂(例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン69、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン96、非晶質性ナイロン、高融点ナイロン、ナイロンRIM、ナイロンMIX6等)、ポリオレフィン樹脂(例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体等のポリエチレン系樹脂;プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体若しくはランダム共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体等のポリプロピレン系樹脂;ポリブテン−1、ポリ4−メチルペンテン−1等)、ポリスチレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、メタクリル樹脂、アクリルポリアミド樹脂、EVOH(エチレンビニルアルコール)樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル樹脂(例えば、テレフタル酸とエチレングリコールとの重縮合反応によって得られるポリエチレンテレフタレート樹脂、及びテレフタル酸とブチレングリコールとの重縮合反応によって得られるポリブチレンテレフタレート樹脂等)、ポリアセタール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアリルサルホン樹脂、フッ素樹脂、非結晶(透明)ナイロン、液晶ポリマー等が挙げられる。これらのうち好ましいものとしては、ポリアミド樹脂(ナイロン)、ポリエステル樹脂、フェニレンサルファイドを挙げることができる。
【0081】
また、前記熱可塑性樹脂の2種又は3種以上の共重合体樹脂、例えば、AS(アクリロニトリル−スチレン)共重合体樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)共重合体樹脂、AES(アクリロニトリル−EPDM−スチレン)共重合体樹脂、PA−PBT共重合体樹脂、PET−PBT共重合体樹脂、PC−PBT共重合体樹脂、PC−PA共重合体樹脂等を用いることができる。
【0082】
他の熱可塑性樹脂の例としては、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマー;上記樹脂類を主成分とする合成ワックス又は天然ワックス等を挙げることができる。なお、これらの熱可塑性樹脂の分子量は、特に限定されるものではない。
【0083】
前記着色樹脂組成物(前記レーザー光透過性着色樹脂組成物及び前記マスターバッチを含む)には、必要に応じ種々の添加剤を配合することも可能である。このような添加剤としては、例えば助色剤、分散剤、充填剤、安定剤、可塑剤、改質剤、紫外線吸収剤又は光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、潤滑剤、離型剤、結晶促進剤、結晶核剤、難燃剤、及び耐衝撃性改良用のエラストマー等が挙げられる。
【0084】
前記樹脂組成物は、用途及び目的に応じ、各種の補強材又は充填材を適量含有するものとすることができる。この補強材又は充填材は、通常の合成樹脂に用い得るものであればよく、繊維状、板状、粉末状、粒状等、特に限定されない。
【0085】
繊維状補強材としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、その他の無機繊維、及び有機繊維(アラミド、ポリフェニレンスルフィド、ナイロン、ポリエステル及び液晶ポリマー等)、繊維状のチタン酸カリウムウィスカー、チタン酸バリウムウィスカー、ほう酸アルミニウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカー等を用いることができる。レーザー透過性を考慮すると、樹脂の補強にはガラス繊維が好ましい。好適に用いることができるガラス繊維の繊維長は2乃至15mmであり繊維径は1乃至20μmである。ガラス繊維の形態については特に制限はなく、例えばロービング、ミルドファイバー等、何れであってもよい。これらのガラス繊維は、一種類を単独で用いるほか、二種以上を用いることもできる。その含有量は、熱可塑性樹脂100重量%に対し5乃至120重量%とすることが好ましい。5重量%未満の場合、十分なガラス繊維補強効果が得られ難く、120重量%を超えると成形性が低下することとなり易い。好ましくは10乃至60重量%、特に好ましくは20乃至50重量%である。
【0086】
充填材としては、例えば、マイカ、セリサイト、ガラスフレーク等の板状充填材、タルク、カオリン、クレー、ウォラストナイト、ベントナイト、アスベスト、アルミナシリケート等の珪酸塩、アルミナ、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン等の金属酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト等の炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の硫酸塩、ガラスビーズ、セラミックビ−ズ、窒化ホウ素、炭化珪素等の粒子状充填材等を用いることができる。充填材の添加量は、熱可塑性樹脂100重量%に対し5乃至50重量%の範囲が好ましい。またこれらの繊維強化材及び充填材は2種以上を併用することができる。また、これらの繊維強化材や充填材をシラン系、エポキシ系又はチタネート系等のカップリング剤(表面処理剤)で処理して使用することは、より優れた機械的強度を得る上で好ましい
【0087】
本発明のレーザー光透過性着色樹脂組成物からなるレーザー光透過性部材は、レーザー光吸収性部材と当接させた状態で、レーザー光が前記レーザー光透過性部材を透過して前記レーザー光吸収性材に吸収されるようにそのレーザー光を照射することにより、前記レーザー光透過性部材とレーザー光吸収性部材との当接部を溶着させるレーザー溶着方法に用いることができ、それにより本発明のレーザー溶着体を得ることができる。
【0088】
一般的にレーザー溶着方法の長所は、3次元溶着が可能であるため、溶着対象となる樹脂製のレーザー光透過材及びレーザー光吸収材の成型品の金型形状の自由度が上がること、振動溶着と異なり溶着面のバリがなくなるので意匠性が向上すること、振動や摩耗粉が発生しないため電子部品への適用が可能となること等を挙げることができる。逆に短所は、レーザー溶着機という装置についての先行投資が必要であること、溶着対象となる樹脂製のレーザー光透過材及びレーザー光吸収材の成形の際のヒケにより溶着部材間に隙間が形成され得ることが挙げられる。特にこの隙間の問題は、レーザー溶着を実施する際の最大の問題点であり、クランプなどの押さえ冶具を溶着対象部材の形状に合わせて個別に作成して用いる例も多い。もし隙間が0.02mm生じると隙間がない場合に比し溶着強度が半減し、0.05mm以上生じると溶着しないことがわかっている。
【0089】
レーザー溶着機としては、レーザーが動く走査タイプ、溶着部材が動くマスキングタイプ、多方向から溶着部材にレーザーを同時照射するタイプ等が挙げられる。自動車業界が注目している方法は走査タイプであり、5m/分という走査速度を生産タクトタイムの基準としている。
【0090】
生産効率を上げるためには走査速度を上げる必要があるが、そのためには、高出力タイプのレーザー溶着機が必要となる。
【0091】
また、溶着強度を上げるには、ある程度の吸収部材の表面熱量が必要になり、そのためには、出力設定を上げる、走査速度を下げる、スポット径を小さくする等の各条件を組み合わせて検討する必要があるが、レーザーが付与する表面熱量が大きすぎると、溶着部分の外観が損なわれることや、甚だしくは、吸収部材から煙が吹くこともあるため、レーザー溶着の条件設定が重要であると共に、溶着対象となる樹脂製のレーザー光透過材のレーザー光透過率が極めて重要である。
【0092】
レーザー光吸収部材は、レーザー光吸収剤を有するレーザー吸収層を供えたレーザー光吸収材であり、レーザー光吸収層はレーザー光透過部材と接する層に位置し、レーザー吸収部材の一部または全部として形成しても良い。すなわちレーザー溶着する接合面にレーザー光吸収剤が存在すればよい。
【0093】
レーザー光吸収剤として用い得るもの(黒色着色剤としての機能を併せ持つ場合もある)としては、カーボンブラック、ニグロシン、アニリンブラック等又はこれらの2種以上の組み合せ(例えばカーボンブラックとニグロシンの組み合せ)を挙げることができる。その他のレーザー光吸収剤の例としては、フタロシアニン、ナフタロシアニン、ペリレン、クオテリレン、金属錯体、スクエア酸誘導体、インモニウム染料、ポリメチン等が挙げられ、また、これらの2以上を混合してのレーザー光吸収剤とすることもできる。更に、上記レーザー光透過性着色剤とレーザー光吸収剤を組み合わせて着色剤として用いることもできる。
【0094】
レーザー吸収性が良好なカーボンブラックとしては、1次粒子径が15乃至100nm(好ましくは15乃至50nm)のものを挙げることができ、更に、BET比表面積が30乃至500m/g(好ましくは、100乃至300m/g)のものを挙げることができる。
【0095】
このようなレーザー光吸収性着色樹脂組成物(レーザー光吸収性着色熱可塑性エラストマーを含む)における着色剤の使用量は、熱可塑性樹脂また熱可塑性エラストマーに対し、例えば0.01乃至10重量%とすることができ、好ましくは0.05乃至5重量%である。レーザー光吸収材の製造は、レーザー光吸収剤を含有すること以外はレーザー光透過材と同様にして行うことが可能である。
【0096】
本発明のレーザー光透過性熱可視性樹脂組成物及びレーザー溶着体の主な用途としては、例えば自動車部品を挙げることができる。より具体的には、例えば内装においてインストルメントパネル、エンジンルーム内においてレゾネター(消音器)を挙げることができる。従来は、熱可視性樹脂製部品を接合する上で接着剤の使用が困難であり、接合するためには、表面処理をするなどの工夫が必要であったが、レーザー溶着を用いる場合、前処理や樹脂のアロイ化などの必要性はなく、接着剤に比し強度面やリサイクル面でも優れた手段と言える。
【実施例】
【0097】
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、勿論本発明はこれらのみに限定されるものではない。なお、以下の記述においては、「重量部」を「部」と略す。
【0098】
製造例1
ニトロベンゼン50部に、8-ヒドロキシキナルジン10部と無水トリメリット酸13部を加え、175乃至180℃に加熱して3時間反応させた。その後、メチルアルコール50部を加え、析出した沈殿を濾取して水洗したところ、20部の化合物例1−1が得られた。(収率97%)
【0099】
元素分析値
実測値 C:68.12%、H:3.38%、N:4.17%
計算値 C:68.47%、H:3.33%、N:4.20%
【0100】
製造例2
無水トリメリット酸に代えて無水ピロメリット酸を用いる以外は製造例1と同様に175乃至180℃に加熱して反応させ、反応がそれ以上進行しなくなるまで175乃至180℃に維持した。その後、3−メトキシ-プロピルアミン20部を加えて3時間175乃至180℃に加熱を続けた。反応終了後、メチルアルコール50部を加え、析出した沈殿を濾取して水洗したところ、25部の化合物例1−2が得られた。(収率89%)
【0101】
製造例3
ニトロベンゼン60部に、8-ヒドロキシキナルジン10部と無水ベンゾトリメリット酸18部を加え、175乃至180℃に加熱して3時間反応させた。その後、メチルアルコール60部を加え、析出した沈殿を濾取して水洗したところ、25部の化合物例2−1が得られた。(収率90%)
【0102】
物性評価試験
製造例1及び2において得られた化合物例1−1及び1−2並びに下記比較化合物例1乃至3(着色剤)について、下記の試験を行い、それぞれの物性を評価した。
【0103】
比較化合物例1(C.I.Acid Yellow 3)
【化17】

m+n=2又は3(推定構造)
【0104】
比較化合物例2(C.I.Solvent Yellow 114)
【化18】

【0105】
比較化合物例3
【化19】

【0106】
(1)熱分析(TG/DTA)試験
TG/DTA測定器(セイコーインスツルメンツ社製 商品名:SII EXSTAR6000)を用い、Air(空気)で200ml/分の雰囲気下、30乃至550℃では昇温速度10℃/分、550℃到達後28分間は550℃の定温状態として、試料(着色剤)について測定を行い、高融点タイプの樹脂である芳香族ナイロンやPPS(成形温度320℃)に使用できるか否かの目安について評価した。TG/DTAのチャートにおいて、樹脂の成形温度に近い200乃至350℃の間に吸熱ピークを含んでいると、成形機中で色素の結合が切断されるものと推測され、耐熱試験後の試験片が変色すると考えられる。大型成形機では更に高温で長時間さらされる可能性が高くなる。結果を表3に示す。
【0107】
耐熱性の評価基準
○:吸熱ピークが存在しないか又は吸熱ピークの温度が380℃以上の温度に存在する場合
△:吸熱ピークが320℃以上380℃未満の温度に存在する場合
×:吸熱ピークが320℃未満の温度に存在する場合
【0108】
(2)純度測定(HPLC分析)
HPLC(島津製作所社製 商品名LC−VP;SCL−10A、RID−10A、LC−10AT、CTO−10A、L−Column)により、アセトニトリル50%水溶液をキャリヤーとし、流量0.5ml/min、45℃で試料(着色剤)の純度を測定した。結果を表3に示す。
【0109】
【表3】

【0110】
実施例1乃至3においては、それぞれポリアミド66樹脂、芳香族ナイロン樹脂、及びポリフェニレンサルファイド樹脂と化合物例1−1及び1−2並びに比較化合物例1乃至3を用いて得た樹脂組成物を用いて樹脂成形試験片の作成を行った。各成形試験片についての物性評価を表4乃至6に示す。
【0111】
実施例1(試験片A)
ポリアミド66樹脂(デュポン社製 商品番号:ZYTEL[登録商標(以下同じ)]70G33L) 1000gと各着色剤2gをステンレス製タンブラーに入れ、1時間撹拌混合した。得られた混合物を、射出成形機(東洋機械金属社製 商品名:Si−50)を用いて、シリンダー温度290℃、金型温度80℃で通常の方法で射出成形したところ、外観及び表面光沢が良好で色むらがない均一な黄色の試験片が得られた。
【0112】
実施例2(試験片B)
芳香族ナイロン樹脂(デュポン社製 商品番号:ZYTEL HTN51G35HSL)1000gと各着色剤2gをステンレス製タンブラーに入れ、1時間撹拌混合した。得られた混合物を、射出成形機(東洋機械金属社製 商品名:Si−50)を用いて、シリンダー温度320℃、金型温度140℃で通常の方法で射出成形したところ、外観及び表面光沢が良好で色むらがない均一な黄色の試験片が得られた。
【0113】
実施例3(試験片C)
ポリフェニレンサルファイド樹脂(ポリプラスチックス社製 商品番号:0220A9)1000gと各着色剤2gをステンレス製タンブラーに入れ、1時間撹拌混合した。得られた混合物を、射出成形機(東洋機械金属社製 商品名:Si−50)を用いて、シリンダー温度320℃、金型温度140℃で通常の方法で射出成形したところ、外観及び表面光沢が良好で色むらがない均一な黄色の試験片が得られた。
【0114】
物性評価試験
(3−1)色相
上記射出成形において得られた試験片の外観にて判断した。結果を表4乃至6に示す。
化合物例1−1及び化合物例1−2をそれぞれ含有する試験片A−1及び試験片A−2について、分光光度計(日本分光社製 商品名:V−570)を用いて吸光度の測定を行った。横軸を波長、縦軸を吸光度として測定結果をそれぞれ図1及び図2に示す。
【0115】
(3−2)分散性と評価
上記射出成形において得られた試験片が均一に着色していれば良好○、不均一であれば不良×と判断した。結果を表4乃至6に示す。
【0116】
(3−3)耐熱性試験(成形機における熱滞留試験)と評価
上記射出成形において、配合物の混合物により通常ショットを行った後、残りの混合物をその時のシリンダー温度で15分間滞留させ、その後、射出成形を行って試験片を得た。
【0117】
15分間シリンダー内で滞留させて得られた試験片と通常ショットで得られた試験片の色差ΔEを、分光色差計(JUKI社製 商品名:JP7000)を用いて測定した。結果を表4乃至6に示す。ΔEが1.0以下であれば、耐熱性があるものと評価することができる。
【0118】
(3−4)耐湿試験と評価
恒温槽に試験片を入れ、80℃、湿度95%で1週間放置した後、試験片の表面を白い布で拭き取った。白い布に着色剤が付着していれば、試験片中から着色剤が移行したものと判断した。結果を表4乃至6に示す。
【0119】
耐湿性の評価
○:白色布に着色が見られない。
△:白色布に着色が殆ど見られないが、薄く着色していて元の白色布との違いを判別することができる。
×:白色布に明らかに着色している。
【0120】
(3−5)耐溶剤試験と評価
試験片をエチレングリコール中に完全に浸した状態で密閉した、これを恒温槽中において80℃で100時間放置した。その後、エチレングリコールの液の色を目視観察した。エチレングリコール液が着色していれば、試験片中の着色剤の一部が溶け出してエチレングリコール中に拡散したものと推測される。従ってその場合は耐溶剤性がないものと判断した。結果を表4乃至6に示す。
【0121】
耐溶剤性の評価
○:着色剤の溶け出しがない。
×:着色剤の溶け出しがある。
【0122】
(3−6)耐昇華性試験と評価
試験片に白色のPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムを貼りつけ、それをオーブンにより160℃で3時間放置し、その後、試験片からPETフィルムを剥して観察し易いように無色透明のOHP(オーバーヘッドプロジェクタ)用シートに貼りつけた。PETフィルムに色素が移行していなければ耐昇華性があると判断した。結果を表4乃至6に示す。
【0123】
耐昇華性の評価
○:PETフィルムに着色が見られない。
△:PETフィルムに着色が殆ど見られないが、薄く着色していて元のPETフィルムとの違いが判別できる。
×:PETフィルムに明らかに着色している。
【0124】
試験片Aの評価結果
【表4】

【0125】
試験片Bの評価結果
【表5】

【0126】
試験片Cの評価結果
【表6】

【0127】
実施例4乃至6において、本発明のキノフタロン系化合物(黄色着色剤)と他の着色剤を配合した配合着色剤を用いて、樹脂組成物を得、これを用いて射出成形を行い樹脂成形試験片を得た。得られた試験片を実施例1乃至3と同様に評価して、表7に示した。
【0128】
実施例4
C.I.Acid Blue 80(アントラキノン系酸性染料)のヘキサメチレンジアミン塩・・・・40g
C.I.Acid Red 80(アントラピリドン系酸性染料)のヘキサメチレンジアミン塩・・・・30g
化合物例1−1(着色剤)・・・・30g
【0129】
上記配合物をステンレス製タンブラーに入れ、1時間撹拌混合して、黒色配合着色剤95gを得た。
【0130】
芳香族ナイロン樹脂(デュポン社製 商品番号:ZYTEL HTN51G35HSL)400gと上記配合着色剤1.6gをステンレス製タンブラーに入れ、1時間撹拌混合した。得られた混合物を、射出成形機(東洋機械金属社製 商品名:Si−50)を用いて、シリンダー温度320℃、金型温度140℃で通常の方法で射出成形したところ、外観及び表面光沢が良好で色むらがない均一な黒色の試験片が得られた。
【0131】
実施例5
C.I.Acid Blue 80(アントラキノン系酸性染料)のヘキサメチレンジアミン塩・・・・40g
C.I.Acid Red 143(アントラピリドン系酸性染料)のヘキサメチレンジアミン塩・・・・20g
化合物例1−2(着色剤)・・・・30g
【0132】
上記配合物をステンレス製タンブラーに入れ、1時間撹拌混合して、黒色配合着色剤86gを得た。
【0133】
ポリアミド66樹脂(デュポン社製 商品番号:ZYTEL70G33L)400gと上記配合着色剤1.6gをステンレス製タンブラーに入れ、1時間撹拌混合した。得られた混合物を、射出成形機(東洋機械金属社製 商品名:Si−50)を用いて、シリンダー温度290℃、金型温度80℃で通常の方法で射出成形したところ、外観及び表面光沢が良好で色むらがない均一な黒色の試験片が得られた。
【0134】
実施例6
C.I.Acid Blue 127(アントラキノン系酸性染料)のヘキサメチレンジアミン塩・・・・40g
化合物例1−2の着色剤・・・・40g
【0135】
上記配合物をステンレス製タンブラーに入れ、1時間撹拌混合して、緑色配合着色剤75gを得た。
【0136】
ポリアミド66樹脂(デュポン社製 商品番号:ZYTEL70G33L)400gと上記配合着色剤1.6gをステンレス製タンブラーに入れ、1時間撹拌混合した。得られた混合物を、射出成形機(東洋機械金属社製 商品名:Si−50)を用いて、シリンダー温度290℃、金型温度80℃で通常の方法で射出成形したところ、外観及び表面光沢が良好で色むらがない均一な緑色の試験片が得られた。
【0137】
実施例7乃至9において、本発明のキノフタロン系化合物(黄色着色剤)と他の着色剤を配合した配合着色剤を用いて高濃度樹脂組成物(マスターバッチ)を得、それを無着色樹脂により希釈した樹脂組成物を得、これを用いて射出成形を行うことによりレーザー光透過性樹脂試験片を得た。得られた試験片を実施例1乃至3と同様に評価して、表7に示した。
【0138】
実施例7
ポリアミド66樹脂・・・・900g(デュポン社製 商品番号:ZYTEL101NC010L)
C.I.Acid Red 143(アントラピリドン系酸性染料)のヘキサメチレンジアミン塩・・・・50g
化合物例1−1(着色剤)・・・・50g
【0139】
上記配合物をステンレス製タンブラーに入れ、1時間撹拌混合した。得られた混合物を、単軸押出機(エンプラ産業社製 商品番号:E30SV)を用いて、シリンダー温度290℃で溶融混合した。その混合物を水槽中で冷却ししながら、ペレタイザーでカットして着色ペレットを得た。この後、乾燥工程を経て、着色剤濃度10重量%のオレンジ色マスターバッチを得た。
【0140】
次いで、
ポリアミド66樹脂・・・・490g (デュポン社製 商品番号:ZYTEL70G33L)
前記オレンジ色マスターバッチ・・・・10g
からなる配合物をステンレス製タンブラーに入れ、1時間撹拌混合した。得られた混合物を、射出成形機(東洋機械金属社製 商品名:Si−50)を用いて、シリンダー温度290℃、金型温度80℃で通常の方法で射出成形したところ、外観及び表面光沢が良好で色むらがない均一なオレンジ色の試験片が得られた。
【0141】
実施例8
芳香族ナイロン・・・・900g(デュポン社製 商品番号:ZYTEL HTN501NC010)
C.I.Acid Blue 80のヘキサメチレンジアミン塩・・・・40g
C.I.Acid Red 80のヘキサメチレンジアミン塩・・・・30g
化合物例1−1(着色剤)・・・・30g
【0142】
上記配合物をステンレス製タンブラーに入れ、1時間撹拌混合した。得られた混合物を、単軸押出機(エンプラ産業社製 商品番号:E30SV)を用いて、シリンダー温度320℃で溶融混合した。その混合物を水槽中で冷却しながら、ペレタイザーでカットして着色ペレットを得た。この後、乾燥工程を経て、着色剤濃度10重量%の黒色マスターバッチを得た。
【0143】
次いで、
芳香族ナイロン・・・・475g(デュポン社製 商品番号:ZYTEL HTN51G35HSL)
上記黒色マスターバッチ・・・・25g
からなる配合物をステンレス製タンブラーに入れ、1時間撹拌混合した。得られた混合物を、射出成形機(東洋機械金属社製 商品名:Si−50)を用いて、シリンダー温度320℃、金型温度140℃で通常の方法で射出成形したところ、外観及び表面光沢が良好で色むらがない均一な黒色の試験片が得られた。
【0144】
実施例9
ポリフェニレンサルファイド・・・・900g(ポリプラスチックス社製 商品番号:0220A9)
化合物例1−2(着色剤)・・・・100g
【0145】
上記配合物をステンレス製タンブラーに入れ、1時間撹拌混合した。得られた混合物を、単軸押出機(エンプラ産業社製 商品番号:E30SV)を用いて、シリンダー温度310℃で溶融混合した。その混合物を水槽中で冷却ししながら、ペレタイザーでカットして着色ペレットを得た。この後、乾燥工程を経て、着色剤濃度10重量%の黄色マスターバッチを得た。
【0146】
次いで、
ポリフェニレンサルファイド・・・・490g(ポリプラスチックス社製 商品番号:0220A9)
前記黄色マスターバッチ・・・・10g
からなる配合物をステンレス製タンブラーに入れ、1時間撹拌混合した。得られた混合物を、射出成形機(東洋機械金属社製 商品名:Si−50)を用いて、シリンダー温度320℃、金型温度140℃で通常の方法で射出成形したところ、外観及び表面光沢が良好で色むらがない均一な黄色の試験片が得られた。
【0147】
実施例4乃至9の配合着色剤及び高濃度着色樹脂組成物を使用した試験片について上記(3−1)乃至(3−6)の試験を行なった結果を表7に示す。
【0148】
【表7】

【0149】
実施例10(レーザー光吸収性試験片の作成)
カーボンブラックをレーザー光吸収剤且つ黒色着色剤とし、ポリアミド66樹脂、芳香族ナイロン樹脂、及びポリフェニレンサルファイド樹脂と混合してそれぞれ樹脂組成物を得た。これを用いて射出成形を行い、黒色のレーザー光吸収性試験片D、E、Fを得た。
【0150】
(1)試験片D
ポリアミド66樹脂(デュポン社製 商品番号:ZYTEL70G33L)1000gとカーボンブラック0.2gとをステンレス製タンブラーに入れ、1時間撹拌混合した。得られた混合物を、射出成形機(東洋機械金属社製 商品名:Si−50)を用いて、シリンダー温度290℃、金型温度80℃で通常の方法で射出成形したところ、外観及び表面光沢が良好で色むらがない均一な黒色の試験片が得られた。
【0151】
(2)試験片E
芳香族ナイロン樹脂(デュポン社製 商品番号:ZYTEL HTN51G35HSL)1000gとカーボンブラック0.2gとをステンレス製タンブラーに入れ、1時間撹拌混合した。得られた混合物を、射出成形機(東洋機械金属社製 商品名:Si−50)を用いて、シリンダー温度320℃、金型温度140℃で通常の方法で射出成形したところ、外観及び表面光沢が良好で色むらがない均一な黒色の試験片が得られた。
【0152】
(3)試験片F
ポリフェニレンサルファイド樹脂(ポリプラスチックス社製 商品番号:0220A9)1000gとカーボンブラック0.5gとをステンレス製タンブラーに入れ、1時間撹拌混合した。得られた混合物を、射出成形機(東洋機械金属社製 商品名:Si−50)を用いて、シリンダー温度320℃、金型温度140℃で通常の方法で射出成形したところ、外観及び表面光沢が良好で色むらがない均一な黒色の試験片が得られた。
【0153】
実施例11乃至13(レーザー溶着試験及びレーザー溶着体)
実施例11乃至13において、実施例7乃至9で得られたレーザー光透過性試験片と実施例10で得られたレーザー光吸収性試験片を用いてレーザー溶着試験を行い、レーザー溶着体を得た。
【0154】
(4)レーザー溶着試験
表8に示すレーザー光透過性試験片とレーザー光吸収性試験片の組合せにより、下記のようにレーザー溶着試験を行った。
【0155】
図3(側面図)及び図4(斜視図)に示すように、実施例7乃至9で得られた各レーザー光透過性試験片(試験片10)とレーザー光吸収性試験片D,E,F(試験片12)[何れも、縦60mm×横18mm×厚さ3mm(縦20mm部分は厚さ1.5mm)]を、それぞれ縦20mm×横18mm×厚さ1.5mmの部分同士を当接させて重ね合わせた。
【0156】
重ね合わせた部分に対し、試験片10の図における上方から、出力60Wのダイオード・レーザー[波長:940nm 連続的](ファインデバイス社製)によるレーザービーム14を、走査速度を変えて横方向(図3の平面に垂直な方向)に走査させた。
【0157】
レーザー光が試験片10を透過してレーザー光吸収性試験片12に吸収されれば、レーザー光吸収性試験片12が発熱し、この熱により、レーザー光を吸収した部分を中心としてレーザー光吸収性試験片12が溶融し、更に試験片10も溶融して双方の樹脂が融合し、冷却により両者は接合されてレーザー溶着体が得られる。図4における16は溶着部分を示す。
【0158】
(5)透過率測定
分光光度計(日本分光社製 商品番号:V−570型)に実施例7乃至9の各試験片をセットし、透過率を測定した。半導体レーザー光の波長である940nmの透過率を表8に示す。
【0159】
(6)引張強度試験
前記(4)で得られたレーザー溶着体に対し、JIS−K7113−1995に準じ、引張試験機(島津製作所社製AG−50kNE)にて、レーザー光透過性試験片10側とレーザー光吸収性試験片12側に縦方向(図3における左右方向)に試験速度10mm/minで引張試験を行って、引張溶着強度を測定した。溶着性能の欄の○は良好、×は不良を示す。
【0160】
【表8】

【図面の簡単な説明】
【0161】
【図1】試験片A−1の吸光度である。
【図2】試験片A−2の吸光度である。
【図3】レーザー溶着試験の側面図である。
【図4】レーザー溶着試験の斜視図である。
【符号の説明】
【0162】
10 試験片(実施例7,8,9)
12 レーザー光吸収性試験片(テスト試験片D,E,F)
14 レーザービーム
16 溶着部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)又は(2)で表されるキノフタロン系化合物。
【化1】

・・・(1)
【化2】

・・・(2)
[式(1)及び(2)のそれぞれにおいて、
Xは、−O−Lを示し、Lは、水素原子、置換若しくは非置換アルキル基、又は、置換若しくは非置換アリール基を示し、
Yは、水素原子、水酸基、メルカプト基、置換若しくは非置換アルコキシ基、置換若しくは非置換アリールオキシ基、置換若しくは非置換ヘテロ環オキシ基、置換若しくは非置換アシルオキシ基、置換若しくは非置換アルキルスルホニルオキシ基、置換若しくは非置換アリールスルホニルオキシ基、置換若しくは非置換アルコキシカルボニルオキシ基、置換若しくは非置換アリールオキシカルボニルオキシ基、置換若しくは非置換アルキルチオ基、置換若しくは非置換アリールチオ基、又は、置換若しくは非置換ヘテロ環チオ基を示し、
式(1)中のR乃至R並びに式(2)中のR乃至R及びR乃至R14は、互いに独立的に、水素原子、ニトロ基、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、シアノ基、チオシアノ基、ハロゲン原子、置換若しくは非置換アルキル基、シクロアルキル基、置換若しくは非置換アリール基、置換若しくは非置換アミノ基、置換若しくは非置換アシル基、置換若しくは非置換アルコキシ基、置換若しくは非置換アリールオキシ基、置換若しくは非置換ヘテロ環オキシ基、置換若しくは非置換アシルオキシ基、置換若しくは非置換アルキルスルホニルオキシ基、置換若しくは非置換アリールスルホニルオキシ基、置換若しくは非置換アルコキシカルボニルオキシ基、置換若しくは非置換アリールオキシカルボニルオキシ基、置換若しくは非置換アルコキシカルボニル基、置換若しくは非置換シクロアルキルオキシカルボニル基、置換若しくは非置換アリールオキシカルボニル基、置換若しくは非置換ヘテロ環オキシカルボニル基、置換若しくは非置換カルバモイル基、置換若しくは非置換スルファモイル基、置換若しくは非置換アルキルスルホニル基、置換若しくは非置換アリールスルホニル基、置換若しくは非置換アルキルチオ基、置換若しくは非置換アリールチオ基、置換若しくは非置換ヘテロ環チオ基、置換若しくは非置換アルコキシスルホニル基、シクロアルキルオキシスルホニル基、置換若しくは非置換アリールオキシスルホニル基、又は置換若しくは非置換ヘテロ環オキシスルホニル基を示し、
式(1)中のR乃至Rの少なくとも1つはカルボキシル基であり、式(2)中のR乃至R14の少なくとも1つはカルボキシル基である。]
【請求項2】
下記式(3)又は(4)で表されるキノフタロン系化合物。
【化3】

・・・(3)
【化4】

・・・(4)
[式(3)中のR乃至R並びに式(4)中のR乃至R及びR乃至R14は、互いに独立的に、水素原子、ニトロ基、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、シアノ基、チオシアノ基、ハロゲン原子、置換若しくは非置換アルキル基、シクロアルキル基、置換若しくは非置換アリール基、置換若しくは非置換アミノ基、置換若しくは非置換アシル基、置換若しくは非置換アルコキシ基、置換若しくは非置換アリールオキシ基、置換若しくは非置換ヘテロ環オキシ基、置換若しくは非置換アシルオキシ基、置換若しくは非置換アルキルスルホニルオキシ基、置換若しくは非置換アリールスルホニルオキシ基、置換若しくは非置換アルコキシカルボニルオキシ基、置換若しくは非置換アリールオキシカルボニルオキシ基、置換若しくは非置換アルコキシカルボニル基、置換若しくは非置換シクロアルキルオキシカルボニル基、置換若しくは非置換アリールオキシカルボニル基、置換若しくは非置換ヘテロ環オキシカルボニル基、置換若しくは非置換カルバモイル基、置換若しくは非置換スルファモイル基、置換若しくは非置換アルキルスルホニル基、置換若しくは非置換アリールスルホニル基、置換若しくは非置換アルキルチオ基、置換若しくは非置換アリールチオ基、置換若しくは非置換ヘテロ環チオ基、置換若しくは非置換アルコキシスルホニル基、シクロアルキルオキシスルホニル基、置換若しくは非置換アリールオキシスルホニル基、又は置換若しくは非置換ヘテロ環オキシスルホニル基を示し、
式(3)中のR乃至Rの少なくとも1つはカルボキシル基であり、式(4)中のR乃至R14の少なくとも1つはカルボキシル基である。]
【請求項3】
吸熱ピークが380℃以上の温度に存在する請求項1又は2記載のキノフタロン系化合物。
【請求項4】
着色成分として、請求項1、2又は3記載のキノフタロン系化合物と、他の着色成分を含有する配合着色剤。
【請求項5】
黒色を呈する請求項4記載の配合着色剤。
【請求項6】
上記他の着色成分が、アゾ系染料・顔料、アゾ系含金染料・顔料、ナフトールアゾ系染料・顔料、アゾレーキ系染料・顔料、アゾメチン系染料・顔料、アントラキノン系染料・顔料、キナクリドン系染料・顔料、ジオキサジン系染料・顔料、ジケトピロロピロール系染料・顔料、アントピリドン系染料・顔料、イソインドリノン系染料・顔料、インダンスロン系染料・顔料、ペリノン系染料・顔料、ペリレン系染料・顔料、インジゴ系染料・顔料、チオインジゴ系染料・顔料、キノリン系染料・顔料、ベンズイミダゾロン系染料・顔料、及び、トリフェニルメタン系染料・顔料からなる群から選ばれた1又は2以上である請求項4又は5記載の配合着色剤。
【請求項7】
上記他の着色成分が、近赤外透過性を有する、アゾ系染料、トリフェニルメタン系染料、アントラキノン系染料、ペリノン系染料、及び、アントラピリドン系染料からなる群から選ばれた1又は2以上である請求項4又は5記載の配合着色剤。
【請求項8】
上記他の着色成分が、酸性染料を有機アミンにより造塩した造塩染料である請求項7記載の配合着色剤。
【請求項9】
熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマー、並びに請求項1乃至3の何れかに記載のキノフタロン系化合物又は請求項4乃至8の何れかに記載の配合着色剤を含有するレーザー光透過性着色樹脂組成物。
【請求項10】
上記熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、又はポリフェニレンサルファイド樹脂である請求項9記載のレーザー光透過性着色樹脂組成物。
【請求項11】
請求項9又は10記載のレーザー光透過性着色樹脂組成物からなるレーザー光透過性部材と、熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマーを有する樹脂組成物からなりレーザー光吸収層を有するレーザー光吸収性部材が、前記レーザー光透過性部材を透過したレーザー光によるレーザー溶着によって溶着されたレーザー溶着体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−45130(P2008−45130A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−215582(P2007−215582)
【出願日】平成19年8月22日(2007.8.22)
【分割の表示】特願2007−508664(P2007−508664)の分割
【原出願日】平成17年10月4日(2005.10.4)
【出願人】(000103895)オリヱント化学工業株式会社 (59)
【Fターム(参考)】