説明

着色粒子分散物とその製造方法、および表示素子用の着色粒子

【課題】本発明は、油/油(O/O)分散重合技術によって、ナノレベルからマイクロレベルの粒子合成の工程数を削減し、かつ安価に製造可能な着色粒子分散物、およびその製造方法を提供するものである。
【解決手段】本発明は、相溶性のほとんどない二種類の有機溶媒を使用する非水系の乳化・懸濁分散重合において、連続相の有機溶媒として、非極性溶媒である有機溶媒Aを用い、分散相の有機溶媒として、前記有機溶媒Aとの相溶性が乏しく、かつ前記有機溶媒Aより沸点が低く、蒸発速度が速い有機溶媒Bを用い、前記分散相の成分としては、モノマとして一分子を構成する成分中に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有した多官能(メタ)アクリレートと、10時間半減期温度が60℃以下である熱重合開始剤と、着色材料として染料、無機または有機顔料を含有させ、乳化・懸濁分散重合を行う着色粒子分散物とその製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は相溶性のほとんどない2種類以上の有機溶媒を用い、油/油乳化分散を行って製造される着色粒子分散物とその製造方法、および表示素子用の着色粒子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、有機溶媒また水中において粒子を合成する方法として用いられた技術は、水/油(W/O)、油/水(O/W)型エマルションといった技術であり、これらの方法にて印刷用インキ、複写用トナーなどの着色粒子などの用途に展開され、近年飛躍的に高い技術が構築されている。また近年、様々な微粒子(またナノ粒子)が着目されており、それら粒子の機能を保持したまま、さらに別の機能を付与して新しい粒子を創製する、いわゆる「粒子の多機能化」が盛んに研究されている。
【0003】
「粒子の多機能化」の方法としては、粒子を他の物質で表面を被覆する皮膜型複合化の技術が盛んであり、多くは粒子の表面改質、電磁気学的あるいは静電的性質の改質が研究されている。表面改質の目的は、粒子表面の界面化学的な改質、粒子径制御と形状制御、吸着性の向上および刺激応答性の付与など様々である。粒子表面の皮膜型複合化に関しては気相中で行う皮膜をコーティングと液相中で行うマイクロカプセル化がある。前者は機械的、物理的な方法であるのに対し、後者は化学的、物理化学的方法で作製されている。
【0004】
マイクロカプセル化の化学的方法については、物理的造粒工程(単純造粒法、W/OまたはO/W型エマルション)と界面重縮合反応工程があり、これら方法は疎水性のモノマと親水性のモノマとの組み合わせで界面の反応を進行させる。物理化学的方法については、水溶液系からの相分離法、有機溶液系からの相分離法、液中乾燥法などがあるが、これらも、W/OまたはO/W型エマルションを形成した後に、攪拌反応されるか、遠心力反応させるなどして、粒子の表面改質、皮膜形成、マイクロカプセル化を行っている。
【0005】
以上のことより、粒子の表面改質が、粒子の新しい機能の付与に関して極めて重要な技術であるのに対して、従来の液相中での微粒子造粒に関してはW/OまたはO/W型エマルションを形成し界面縮合反応させるか界面反応させる方法が主流であった。粒子表面の改質として従来行われてきた技術として、インキ、複写用トナー等の着色剤のひとつであるカーボンブラックの表面改質技術がある。その方法は、カーボンブラックが有する反応基に重合しうる重合体等をグラフト重合させ、カーボングラックグラフトポリマを造粒するものである(特許文献1〜4など)。
【特許文献1】特公昭44−3826号公報、
【特許文献2】特公昭46−26970号公報
【特許文献3】特開昭63−270767号公報
【特許文献4】特開平6―301239号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、従来困難とされ報告例が少ない油/油(O/O)分散重合技術によって、ナノレベルからマイクロレベルの粒子合成の工程数を削減し、かつ安価に製造可能な着色粒子分散物とその製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、この着色粒子分散物から得られる、液晶、携帯端末用カラーフィルタ、電子ペーパー等の表示素子用の着色粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下のものに関する。
(1) 相溶性のほとんどない二種類の有機溶媒を使用する非水系の乳化・懸濁分散重合において、連続相の有機溶媒として、非極性溶媒である有機溶媒Aを用い、分散相の有機溶媒として、前記有機溶媒Aとの相溶性が乏しく、かつ前記有機溶媒Aより沸点が低く、蒸発速度が速い有機溶媒Bを用い、前記分散相の成分としては、前記有機溶媒B中に溶解または分散可能で熱により重合可能なモノマとして一分子を構成する成分中に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有した多官能(メタ)アクリレートと、10時間半減期温度が60℃以下である熱重合開始剤と、着色材料として染料または顔料を含有させ、乳化・懸濁分散重合を行う着色粒子分散物の製造方法。
(2) 上記(1)において、着色粒子分散物を減圧又は加熱することによって有機溶剤Bが除去された後に生成する着色粒子が、熱により重合し、三次元架橋され耐溶剤性に優れる着色粒子分散物の製造方法。
(3) 上記(1)又は(2)において、着色粒子分散物中の着色粒子の平均粒子径が10nm〜100μmである着色粒子分散物の製造方法。
(4) 上記(1)から(3)の何れかにおいて、有機溶媒Aが炭化水素系溶媒であり、有機溶媒Bが低級アルコールである着色粒子分散物の製造方法。
(5) 上記(1)から(4)の何れかの着色粒子分散物の製造方法によって製造される着色粒子分散物。
(6) 上記(5)の着色粒子分散物から得られる、表示素子用の着色粒子。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、従来困難とされ報告例が少ない油/油(O/O)分散重合技術によって、ナノレベルからマイクロレベルの粒子合成の工程数を削減し、かつ安価に製造可能な着色粒子分散物とその製造方法を提供することが可能となる。また、本発明によれば、この着色粒子分散物から得られる、液晶、携帯端末用カラーフィルタ、電子ペーパー等の表示素子用の着色粒子を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、相溶性のほとんどない二種類の有機溶媒を使用する非水系の乳化・懸濁分散重合による着色粒子分散物とその製造方法、また、この着色分散物から得られる、表示素子用の着色粒子である。連続相の有機溶媒は、非極性溶媒である有機溶媒Aであり、反応相(分散相)の有機溶媒は、前記有機溶媒Aとの相溶性が乏しく、かつ前記有機溶媒Aより沸点が低く、蒸発速度が速い有機溶媒Bを用いる。反応相(分散相)の成分としては、有機溶媒B中に溶解または分散可能で熱により重合可能なモノマとして、一分子を構成する成分中に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有した多官能(メタ)アクリレートと、10時間半減期温度が60℃以下である熱重合開始剤と、さらに着色材料として染料、無機または有機顔料を含有させる。そして、非水系の乳化・懸濁分散重合を行うことによって着色粒子分散物を得る。また、この着色分散物から表示素子用の着色粒子を得る。
【0010】
本発明によれば、反応相(分散相)に、多官能(メタ)アクリレート、熱重合開始剤、着色材料を含有することにより、着色材料を架橋反応させ、得られた着色高分子複合粒子(着色粒子)が様々な溶剤に耐性を有する。また、乳化・懸濁分散重合した後に、着色粒子分散物から有機溶媒Bを減圧又は加熱の方法で除去することにより、ナノレベルからマイクロレベルの着色粒子合成の工程数を削減し、かつ安価に行うことが可能となる。さらに、本発明の着色粒子は、インキ、複写用トナーをはじめ、各種用途の塗料、近年フルカラー化の需要が飛躍的に高まる液晶および携帯端末用カラーフィルタ用着色材料、またフルカラー化が望まれている電子ブック、リタイタブルペーパー(電子ペーパー)の着色材料として使用することが可能である。
【0011】
溶媒について
本発明において、有機溶媒Aは、乳化・懸濁分散において連続相として用いる。油/油(O/O)分散重合に用いられるほとんど相溶性のない有機溶媒Aとしては、非極性溶媒であり、電気抵抗が109Ω以上、且つ誘電率が10以下の担体液として好ましくは直鎖状もしくは分枝状の脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素等が使用できる。
【0012】
例えば、脂肪族炭化水素であればアイソパーE、アイソパーG、アイソパーH、アイソパーLおよびアイソパーM等(エクソンモービル社、商品名)(「アイソパー」は登録商標)が好ましく、特に有機溶媒Bとの乳化安定性が良いものとしては、アイソパーMであるが、これに限定されない。また、2,3−ジメチルブタン、ヘプタン、オクタン、3−メチルヘプタン、イソオクタン、ノナン、2,2,5−トリメチルヘキサン、デカン、ドデカン等は、分散雰囲気により、有機溶媒Bに混和する恐れもあるが、若干の混和であり、乳化・懸濁分散可能であれば使用することが可能である。
【0013】
また、芳香族炭化水素としても、有機溶媒Bとほとんど混和しない溶媒であれば特に限定はない。例えばペンチルベンゼン、ジペンチルベンゼンの他に、ドデシルベンゼン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、シス−ビシクロヘキシル、トランス−ビシクロヘキシル等を使用する場合は環境を限定することにより使用可能である。
【0014】
脂肪族系炭化水素および芳香族系炭化水素と有機溶媒Bとの混和性は温度に依存するため、極力混和性を低くする場合は低温25℃以下で乳化・懸濁分散を行うものとする。
【0015】
本発明において、有機溶媒Bは乳化・懸濁分散において反応相(分散相)として用いられる。この有機溶剤Bとしては、上記有機溶媒Aとほとんど相溶せず、さらに有機溶剤Aよりも沸点が10℃以上、好ましくは20℃以上、さらに好ましくは30℃以上低く、蒸発速度が速い有機溶剤であれば良い。沸点の差が10℃以下である場合は、有機溶剤Bを減圧にて除去する際、有機溶剤Aも同時に除去される恐れがあり、このことにより、分散安定性が低下する恐れがある。本発明では、有機溶剤Bとしては、低級アルコールであるメタノールが好ましい。
【0016】
有機溶媒AおよびBは、おのおの一種ずつ使用しても良いが、後述するオリゴマ、ポリマ、反応性モノマおよび分散剤等の溶解性を向上させるために、同一系の溶剤を2種以上使用しても良い(例えばアイソパーLとM、メタノールとエタノールのような組み合わせ)。ただし連続相と反応相(分散相)が目視で相溶したことが判断可能な有機溶媒を使用した場合、乳化・懸濁分散の安定性が損なわれる恐れがある。
【0017】
さらに有機溶媒A中に、合成された油滴(粒子)を分散安定化させるために、分散剤を溶解・分散しても良い。本発明者等の検討結果によれば、塩基性または酸性のリニア型またはくし型の分散剤が特に良い分散性を示したが、合成される粒子の表面・界面状態により検討する必要があり、また用途によっても最適化をする必要があるため、特に限定されるものではなく、分子量、モノマ組成も特に限定はしない。本発明者等が検討した分散剤は、Solplus K210、Solsperse 17000、Solsperse 3000(日本ルーブリゾール株式会社、商品名)(「SOLPLUS」、「SOLSPERSE」は登録商標)である。これら分散剤の添加量は、有機溶剤Aに対して0.01重量%〜60重量%であり、さらに0.05重量%〜50重量%が好ましく、0.1重量%〜45重量%が特に好ましい。
【0018】
また有機溶剤B中にも分散剤を溶解・分散しても良い。この場合は有機溶剤Bを用いた反応相(分散相)に、着色材料(例えば、有機顔料または無機顔料など)を安定に分散させることが可能な材料であれば特に限定されない。
【0019】
重合可能なモノマについて
重合可能なモノマについては、構成する分子内に(メタ)アクリロイル基を一つ以上有するモノマであり、低級アルコールに溶解すれば特に限定されない。例えば、ビスフェノールFEO変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAEO変性ジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコール系ジ(メタ)アクリレート、エチレングリコール系ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートモノステアレートなどの二官能基を有するモノマ、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンPO変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどの多官能基を有するモノマであり、その添加量は、有機溶媒Bに対して、0.1重量%〜99重量%、さらに0.5重量%〜97重量%が好ましく、特に1重量%〜95重量%がより好ましい。0.1重量%以下である場合は、種種の溶剤に対しての耐性が低く、溶解または膨潤など発生させ、着色粒子として不完全なものであり、99重量%以上添加した場合は、粘度が高くなりすぎて乳化・懸濁分散安定性が不安定になる可能性がある。
【0020】
一分子内に(メタ)アクリロイル基を2つ以上有するモノマを用いることにより、三次元架橋構造を有する高分子粒子を形成することができ、耐溶剤性に優れた粒子を得ることができる。
【0021】
熱により重合を開始させる熱重合開始剤について
熱重合開始剤としては、10時間半減期温度が60℃以下の熱重合開始剤であれば特に限定することはなく、例えばイソブチリルパーオキサイド、ビス3,3,5−トリメチルヘキサノールパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカネート、α−クミルパーオキシネドデカネート、t−ブチルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシネオヘプタネート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、ジ−3−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジー2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジーイソプロピルパーオキシジカーボネートなどの有機過酸化物や、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二硫酸塩二水和物、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミド)ジヒドロクロライドなどのアゾニトリル化合物および/または環状アゾアミジン化合物および/またはアゾアミド化合物が使用される。なお、重合開始剤における10時間半減期温度とは、ある温度において重合開始剤がラジカルに分解して、10時間後に初期重量が半減する場合の、その温度を意味する。
【0022】
これら熱重合開始剤の添加量は、モノマに対して0.01重量%から10重量%であり、好ましくは0.01重量%から9重量%であり、特に好ましくは、0.01重量%から8重量%である。添加量が0.01重量%より少ない場合は、硬化が不十分であり、着色粒子の耐薬品性が低い可能性があり、10重量%を超える場合は得られる着色粒子の分子量が低く、脆くなる恐れがある。
【0023】
着色材料について
本発明の着色粒子分散物は、着色材料によって様々な着色が可能になる。着色材料の種類は、有機溶剤Bに溶解または分散され、有機溶剤Aに溶解されないものであれば特に限定するものではない。本発明における色素(着色材料)には、染料、顔料いずれも使用できるが、耐熱性や耐光性を考慮すると顔料の方が好ましい。使用できる染料としては、有機溶剤に可溶なものとして、Spisol Yellow 7040、Spisol Red 7345、Spisol Black 7970等の金属錯塩性染料、またOil Blue 5511等のシアニン系染料(有本化学工業株式会社、商品名)が挙げられる。
【0024】
顔料には無機と有機があり、いずれも使用することができる。有機顔料としては、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、インジゴ系、アントラキノン系、ペリレン系、キナクリドン系、メチン・アゾメチン系、イソインドリノン系等が挙げられる。
【0025】
赤色の着色材料には、単一の赤色顔料系を用いてもよいし、黄色顔料系を赤色顔料系に混合して調色を行ってもよい。赤色顔料系としては、例えば、カラーインデックス名でピグメントレッド9、123、155、168、177、180、217、220、224、254などが挙げられる。また、黄色顔料系としては、例えば、カラーインデックス名でピグメントイエロー17、20、24、83、93、109、110、117、125、128、129、138、139、147、154などが挙げられる。これらの赤色及び黄色顔料は、それぞれ2種以上混合して用いることもできる。また、赤色顔料系と黄色顔料系を混合して用いる場合には、赤色顔料系と黄色顔料系の総量100重量部に対して黄色顔料系を90重量部以下で用いることが好ましい。
【0026】
緑色の着色材料には、単一の緑色顔料系を用いてもよいし、黄色顔料系を緑色顔料系に混合して調色を行ってもよい。緑色顔料系としては、例えば、カラーインデックス名でピグメントグリーン7、36、37等が挙げられる。また、黄色顔料系としては、例えば、カラーインデックス名でピグメントイエロー17、20、24、83、93、109、110、117、125、128、129、138、139、147、154などが挙げられる。これらの緑色及び黄色顔料は、それぞれ2種以上混合して用いることもできる。また、緑色顔料系と黄色顔料系を混合して用いる場合には、緑色顔料系と黄色顔料系の総量100重量部に対して黄色顔料系を90重量部以下で用いることが好ましい。
【0027】
青色の着色材料には、単一の青色顔料系を用いてもよいし、紫色顔料系を青色顔料系に混合して調色を行ってもよい。青色顔料系としては、例えば、カラーインデックス名でピグメントブルー15、15:3、15:4、15:6、22、60等が挙げられる。また、紫色顔料系としては、例えば、カラーインデックス名でピグメントバイオレット19、23、29、37、50等が挙げられる。これらの青色及び紫色顔料は、それぞれ2種以上混合して用いることもできる。また、青色顔料系と紫色顔料系を混合して用いる場合には、青色顔料系と紫色顔料系の総量100重量部に対して紫色顔料系を90重量部以下で用いることが好ましい。
【0028】
黒色の着色材料には、例えば、カーボンブラック、黒鉛、チタンカーボン、黒色酸化鉄、二酸化マンガンまた金属複合酸化物等の黒色顔料が用いられる。
【0029】
白色の着色材料には、例えば、酸化チタン、酸化ゲルマニウム等の高い屈折率を有する白色無機顔料が用いられる。
【0030】
これら着色材料の添加量は、有機溶剤Bに対して0.01重量%から90重量%であり、好ましくは0.1重量%から85重量%であり、特に好ましくは、0.5重量%から80重量%である。0.01重量%より少ない場合は、分散溶液の着色性が低く、80重量%より多い場合は、反応相(分散相)の乳化安定性が低下する可能性がある。
【0031】
本発明によれば、ナノレベルからマイクロレベルの着色粒子を有する着色粒子分散物が形成されるが、例えば電子ペーパーの着色粒子、カラーフィルターの着色材料等の用途に着色粒子を用いる場合、その平均粒径が10nm〜100μmであることが好ましい。
【0032】
製造方法について
本発明の着色粒子分散物の製造方法の詳細を下記に示すが、分散方法、乳化方法および有機溶剤Bの除去方法に関しては、この方法に限定されない。
【0033】
反応相(分散相)溶液は、重合可能なモノマ、重合可能なモノマを重合させる光および/または熱重合開始剤、染料、有機または無機顔料、さらに必要であれば有機顔料または無機顔料を分散させるための分散樹脂と有機溶剤Bで構成される。有機顔料または無機顔料は、ロールミル、三本ロール、ジェットミル、ペイントシェーカーまたはホモジナイザー等で微細化された後、反応相(分散相)溶液中に分散する。
【0034】
連続相は有機溶媒Aと必要であれば反応相(分散相)溶液ならびに最終的に得られる粒子の分散安定性を維持するための分散樹脂を混合して連続相溶液とする。連続相溶液と反応相(分散相)溶液を静かに添加し、混合させ、ディスパー、ホモジナイザー、ホモミキサー、攪拌子および攪拌機、攪拌羽根等を使用して乳化または懸濁させる。目的の粒子径が得られたら、乳化溶液をエバポレーター等の真空脱気可能な装置に移し、減圧し有機溶媒Bを除去しながら、UVを照射する装置および/またはウォーターバスあるいはオイルバス等を使用し、重合反応を促進させることができる。
【0035】
作製された着色粒子の評価方法について
作製された着色粒子の評価は、粒度分布計により粒子径を測定し、さらにアセトン溶液を加えることにより耐溶剤性を評価した。粒度分布計は、ゼータ電位計(ZETASIZER 3000HSA、MALVERN Instruments、商品名)を用い、アセトンは和光純薬特級試薬を使用した。
【実施例】
【0036】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。
【0037】
(実施例1)
連続相として、分散樹脂Solplus K210(日本ルーブリゾール株式会社、商品名)(「SOLPLUS」は登録商標)を2重量%、脂肪族炭化水素系溶剤アイソパーM(エクソンモービル社、商品名)(「アイソパー」は登録商標)を98重量%で混合し溶解させた(以下、連続相溶液と示す)。反応相(分散相)として、重合可能なモノマとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート35重量%、熱重合開始剤として10時間半減期温度30℃の2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)0.2重量%、Spisol Red 7345(有本化学工業、商品名)5重量%、メタノール59.8重量%で混合し溶解させた(以下、反応相(分散相)溶液と示す)。100mL用ポリカップに、反応相(分散相)溶液を20重量%、連続相溶液80重量%添加し、総量20gとした。
【0038】
この混合液を、ホモジナイザー(ULTRA SONIC HOMOGENIZER UH−150:SMT Company、商品名)を使用して5分間乳化分散を行った。乳化分散を行う際は、分散で発生する熱を除去するために、氷水で100mLのポリカップを冷却しながら行った。
【0039】
乳化分散した溶液の反応相(分散相)溶液中に存在するメタノールを除去するために、ウォーターバスの液温を40℃に保ち、上記乳化分散させた分散液をナスフラスコに入れ、ウォーターバスに浸しながら、4時間エバポレーターを用いて脱メタノール処理を行った。
【0040】
脱メタノール処理4時間後の残存するメタノール量をガスクロマトグラフで検出したが検出限界であり、ほぼ完全にメタノールが除去されていることを確認した。さらに熱重合開始剤を失活させるために、ウォーターバス温度を70℃にし1時間攪拌した。
【0041】
(実施例2)
連続相として、分散樹脂Solplus K210(日本ルーブリゾール株式会社、商品名)(「SOLPLUS」は登録商標)を2重量%、脂肪族炭化水素系溶剤アイソパーM(エクソンモービル社、商品名)(「アイソパー」は登録商標)を98重量%で混合し溶解させた(以下、連続相溶液と示す)。反応相(分散相)として、重合可能なモノマとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート35重量%、熱重合開始剤として10時間半減期温度30℃の2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)0.2重量%、酸化チタンTTO−55(平均粒子径0.05μm、石原産業、商品名)1重量%、メタノール63.8重量%で混合し溶解させた(以下、反応相(分散相)溶液と示す)。
【0042】
100mL用ポリカップに、反応相(分散相)溶液を20重量%、連続相溶液80重量%添加し、総量20gとした。この混合液を、ホモジナイザー(ULTRA SONIC HOMOGENIZER UH−150、SMT Company、商品名)を使用して5分間乳化分散を行った。乳化分散を行う際は、分散で発生する熱を除去するために、氷水で100mLのポリカップを冷却しながら行った。
【0043】
乳化分散した溶液の反応相(分散相)溶液中に存在するメタノールを除去するために、ウォーターバスの液温を40℃に保ち、上記乳化分散させた分散液をナスフラスコに入れ、ウォーターバスに浸しながら、4時間エバポレーターを用いて脱メタノール処理を行った。
【0044】
脱メタノール処理4時間後の残存するメタノール量をガスクロマトグラフで検出したが検出限界であり、ほぼ完全にメタノールが除去されていることを確認した。さらに熱重合開始剤を失活させるために、ウォーターバス温度を70℃にし1時間攪拌した。
【0045】
(比較例)
連続相として、分散樹脂Solplus K210(日本ルーブリゾール株式会社、商品名)(「SOLPLUS」は登録商標)を2重量%、脂肪族炭化水素系溶剤アイソパーM(エクソンモービル社、商品名)(「アイソパー」は登録商標)を98重量%で混合し溶解させた(以下、連続相溶液と示す)。反応相(分散相)として、重合可能なモノマとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート35重量%、熱重合開始剤として10時間半減期温度67℃の2,2’−アゾビス(2−メチルイソブチロニトリル)0.2重量%、Spisol Red 7345(有本化学工業、商品名)5重量%、メタノール59.8重量%で混合し溶解させた(以下、反応相(分散相)溶液と示す)。
【0046】
100mL用ポリカップに、反応相(分散相)溶液を20重量%、連続相溶液80重量%添加し、総量20gとした。この混合液を、ホモジナイザー(ULTRA SONIC HOMOGENIZER UH−150:SMT,Company)を使用して5分間乳化分散を行った。乳化分散を行う際は、分散で発生する熱を除去するために、氷水で100mLのポリカップを冷却しながら行った。
【0047】
乳化分散した溶液の反応相(分散相)溶液中に存在するメタノールを除去するために、ウォーターバスの液温を40℃に保ち、上記乳化分散させた分散液をナスフラスコに入れ、ウォーターバスに浸しながら、4時間エバポレーターを用いて脱メタノール処理を行った。
【0048】
脱メタノール処理4時間後の残存するメタノール量をガスクロマトグラフで検出したが検出限界であり、ほぼ完全にメタノールが除去されていることを確認した。さらに熱重合開始剤を失活させるために、ウォーターバス温度を70℃にし1時間攪拌した。
【0049】
上記の実施例および比較例で得られた着色粒子の平均粒子径および耐溶剤性評価結果を表1に示す。
【0050】
【表1】


【0051】
以上説明した通り、本実施例では、相溶性のほとんどない2種類以上の有機溶媒を用い、油/油乳化分散を行う製造方法によって、非極性有機溶媒中にナノレベルからマイクロレベルの着色粒子が分散されている着色粒子分散物が得られる。また、着色粒子分散物の有機溶媒を除去して得られた着色粒子は耐溶剤性を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相溶性のほとんどない二種類の有機溶媒を使用する非水系の乳化・懸濁分散重合において、
連続相の有機溶媒として、非極性溶媒である有機溶媒Aを用い、
分散相の有機溶媒として、前記有機溶媒Aとの相溶性が乏しく、かつ前記有機溶媒Aより沸点が低く、蒸発速度が速い有機溶媒Bを用い、
前記分散相の成分としては、前記有機溶媒B中に溶解または分散可能で熱により重合可能なモノマとして一分子を構成する成分中に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有した多官能(メタ)アクリレートと、10時間半減期温度が60℃以下である熱重合開始剤と、着色材料として染料または顔料を含有させ、
乳化・懸濁分散重合を行う着色粒子分散物の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
着色粒子分散物を減圧又は加熱することによって有機溶剤Bが除去された後に生成する着色粒子が、熱により重合し、三次元架橋され耐溶剤性に優れる着色粒子分散物の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、着色粒子分散物中の着色粒子の平均粒子径が10nm〜100μmである着色粒子分散物の製造方法。
【請求項4】
請求項1から3の何れかにおいて、有機溶媒Aが炭化水素系溶媒であり、有機溶媒Bが低級アルコールである着色粒子分散物の製造方法。
【請求項5】
請求項1から4の何れかの着色粒子分散物の製造方法によって製造される着色粒子分散物。
【請求項6】
請求項5の着色粒子分散物から得られる、表示素子用の着色粒子。

【公開番号】特開2009−249598(P2009−249598A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−102593(P2008−102593)
【出願日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】