説明

着色酸化剤組成物

【課題】 保管時における安定性に優れ、且つ水に希釈または溶解して使用する場合に、得られた水溶液の着色を安定的に行い得る着色酸化剤組成物を提供する。
【解決手段】 ハロゲン系酸化剤及び又は酸素系酸化剤と、耐酸化性に優れるリボフラビンを着色剤として配合し着色酸化剤組成物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄剤、漂白剤、消臭剤、殺菌消毒剤等に好適に使用される着色酸化剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハロゲン系酸化剤や酸素系酸化剤(以下、両者を指して酸化剤と云うことがある)は、汚れの酸化分解による漂白洗浄、汚れの腐敗を防止して悪臭の発生を抑える消臭、病気や食中毒の原因となる細菌やウィルスの殺菌消毒等の機能を有しているので、洗濯用、台所用、住居用、トイレ用、風呂用等の漂白剤、洗浄剤、消臭剤、殺菌消毒剤等の薬剤の有効成分として、広く使用されている。その際、それらの薬剤はその適用部位が容易に視認できるように、或いは、商品の質感を高めたり、快適な使用感を得ることを目的として、酸化剤に着色剤を配合して着色することが行われている。しかしながら、一般的に使用されている着色剤は耐酸化性に劣るので、酸化剤と混合した状態で保管した場合、あるいはその混合物を水に希釈または溶解させて使用した場合には、着色剤が酸化剤と反応して、変色、褪色あるいは脱色されてしまい、漂白剤、洗浄剤、消臭剤、殺菌消毒剤等の薬剤の着色が安定的に行えないという難点があった。
例えば、特開昭61−287996号公報には、酸素系または塩素系漂白剤、界面活性剤およびチオインジゴ誘導体系色素を含有する着色洗浄剤組成物が提案されているが、未だ満足すべき着色安定性を有するには至っていない。
【0003】
【特許文献1】特開昭61−287996号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、保管時における安定性に優れ、且つ水に希釈または溶解して使用する場合に、得られた水溶液の着色を安定的に行い得る着色酸化剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の目的を達成しようと鋭意研究を重ねた結果、黄色の着色剤として知られているリボフラビンが、耐酸化性に優れていることを見出し、本発明を完成させるに至ったものである。
即ち、本発明は、ハロゲン系酸化剤及び又は酸素系酸化剤と、リボフラビンを含有することを特徴とする着色酸化剤組成物である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の着色酸化剤組成物は、長期間に渡って保管した場合でも、その着色を安定に保持することができ、また使用に際して水に希釈または溶解した場合にも、得られた水溶液の着色を長時間に渡って安定に保持することができる。そして、漂白剤、洗浄剤、消臭剤、殺菌消毒剤等に使用された場合には、その適用部位が容易に視認でき、商品の質感を高めることができ、快適な使用感を得ることができるので、洗濯用、台所用、住居用、トイレ用、風呂用等に好適なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の実施において使用する代表的なハロゲン系酸化剤としては、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム等の次亜塩素酸塩類、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム、トリクロロイソシアヌル酸等の塩素化イソシアヌル酸類、1,3−ジクロロ−5,5−ジメチルヒダントイン、1−ブロモ−3−クロロ−5,5−ジメチルヒダントイン、1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン等のハロゲン化ヒダントイン類等が挙げられる。
【0008】
同じく、酸素系酸化剤としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸水素ナトリウム、過硫酸水素カリウム等の過硫酸アルカリ金属塩類、過ホウ酸ナトリウム、過ホウ酸カルシウム等の過ホウ酸塩類、過酸化水素水、過炭酸ナトリウム、過酢酸等が挙げられる。
【0009】
本発明の実施おいて使用するリボフラビンは、化1の構造式で示されるイソアロキサジン骨格を有する水溶性の黄色固体であるが、ビタミンB2として医薬品や家畜用飼料の添加剤として使用されている他、食品用の着色剤としても使用されている。
【0010】
【化1】

【0011】
本発明の着色酸化剤組成物中に含まれるリボフラビンの含有量は、特に限定されないが0.001〜20重量%の割合が好ましい。
【0012】
本発明の着色酸化剤組成物には、溶解速度を調整するために発泡剤、無機塩、増粘多糖類等を、また洗浄効果を高めるために界面活性剤を配合することができる。
【0013】
発泡剤の成分としては、水に接触した場合に二酸化炭素を発生するものであれば特に限定されないが、炭酸塩と有機酸とを組み合わせて用いることが好ましい。
炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、セスキ炭酸ナトリウム、過炭酸ナトリウム等が挙げられる。
また有機酸としては、クエン酸、酒石酸、アスコルビン酸、リンゴ酸、フマル酸、コハク酸、マロン酸、アジピン酸、シュウ酸、乳酸等が挙げられる。
これらの炭酸塩および有機酸はそれぞれ1種又は2種以上の混合物として用いることができる。
【0014】
前記の無機塩としては、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム等が挙げられる。
前記の増粘多糖類としては、カラギーナン、グアーガム、ローカストビーンガム、アルギン酸、アルギン酸のアルカリ金属塩、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。
前記の界面活性剤としては、脂肪酸塩、アルキル硫酸塩等のアニオン系界面活性剤が挙げられる。
【0015】
本発明の着色酸化剤組成物の形態は、液状または固形状である。固形の場合には、粉末状または顆粒状、ブリケット状、タブレット状等の成形物とすることができる。
【0016】
成形物とする場合には、粉末状または粒状の原料を臼杵を用いて加圧する方法を採用することができる。あるいは、流動化剤を配合してペースト状とした原料を加圧押出して任意の長さに切断して棒状に成形する方法を採用することができる。
【実施例】
【0017】
以下、本発明を実施例および比較例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例で使用した原料および評価試験方法は次のとおりである。
【0018】
[原料]
・リボフラビン:和光純薬工業社製試薬
・青色1号:東京化成工業社製試薬、「AcidBlue9」
・Direct Yellow 12:東京化成工業社製試薬、「Chrysophenine」
・次亜塩素酸ナトリウム溶液:和光純薬工業社製試薬
・次亜塩素酸カルシウム:和光純薬工業社製試薬
・ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム:四国化成工業社製「SDIC−MG」
・トリクロロイソシアヌル酸:四国化成工業社製「TICA−G」
・1,3−ジクロロ−5,5‘−ジメチルヒダントイン:ロンザ社製「ダントブロムRW」
・1−ブロモ−3−クロロ−5,5‘−ジメチルヒダントイン:ロンザ社製「ダントクロアRW」
・モノ過硫酸水素カリウム複塩:デュポン社製「オキソン」
・過炭酸ナトリウム:日本パーオキサイド社製「PC−F」
・コハク酸:武田薬品工業社製
・フマル酸:川崎化成工業社製
・炭酸ナトリウム:トクヤマ社製
・炭酸水素ナトリウム:トクヤマ社製
・ラウリル硫酸ナトリウム:新日本理化社製界面活性剤「シノリン90TK−N」
・直鎖ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム:東京化成工業社製試薬
・硫酸ナトリウム:四国化成工業社製「中性無水芒硝A0」
・カルボキシメチルセルロース:四国化成工業社製「GT−5」
・椰子油:日清オイリオ社製
【0019】
[評価試験]
実施例および比較例において調製した着色酸化剤組成物の安定性について、着色安定性と酸化剤の安定性の両面から評価した。試験方法は、以下のとおりである。
【0020】
(1) 着色酸化剤組成物を水に希釈または溶解した場合の着色安定性(使用時を想定)
所定量の着色酸化剤組成物を水に希釈または溶解させて、着色剤の濃度を約10ppmに調整したサンプル液を調製した。これらのサンプル液について、紫外可視分光光度計を用いて調製直後の吸光度と室温1.5時間静置後の吸光度を測定し、それらの数値から1.5時間静置後の吸光度の低下率(%)を算出して着色安定性を評価した。この数値が小さい程、該組成物の退色が少なく着色安定性が優れているものと判定される。
なお、吸光度の測定に使用した波長は、以下のとおりである。
・リボフラビン:450nm
・青色1号:630nm
・Direct yellow 12:420nm
【0021】
(2) 着色酸化剤組成物を水に希釈または溶解した場合の酸化性能の安定性(使用時を想定)
着色酸化剤組成物1gを1000mlの水に希釈または溶解させて、サンプル液を調製した。これらのサンプル液について調製直後と室温1.5時間静置後のサンプル液中の活性ハロゲン濃度または活性酸素濃度(注1)を測定し、それらの数値から1.5時間静置後の活性ハロゲン濃度または活性酸素濃度の低下率(%)を算出し、酸化性能の安定性を評価した。この数値が小さい程、酸化性能の安定性が優れているものと判定される。
【0022】
(3) 着色酸化剤組成物を加温加湿した場合の着色安定性(保管時を想定)
先ず、加温加湿を行う前の着色酸化剤組成物を所定量計り取り、前記(1)と同様にして吸光度を測定した。
次いで、該組成物をポリエチレン製袋に入れて密封し、40℃/75%RHに制御した恒温恒湿槽内に保管し30日間加温加湿した。その後、恒温恒湿槽から取り出した該組成物を、加温加湿前の場合と同様にして、吸光度を測定した。
これらの吸光度の数値から、加温加湿前後の吸光度の低下率を算出して着色安定性を評価した。この数値が小さい程、退色が少なく着色安定性が優れているものと判定される。
【0023】
(4) 着色酸化剤組成物を加温加湿した場合の酸化性能の安定性(保管時を想定)
先ず、加温加湿を行う前の着色酸化剤組成物中に含まれる活性ハロゲンまたは活性酸素の含有割合(注2)を測定した。
次いで、該組成物を前記(3)と同様にして加温加湿した。その後、恒温恒湿槽から取り出した該組成物中に含まれる活性ハロゲンまたは活性酸素の含有割合を、加温加湿前と同様に測定し、それらの数値から加温加湿後の活性ハロゲンまたは活性酸素の含有割合(注2)の低下率(%)を算出し、酸化性能の安定性を評価した。この数値が小さい程、酸化性能の安定性が優れているものと判定される。
【0024】
(注1)サンプル液中の活性ハロゲン濃度または活性酸素濃度の測定
サンプル液中に含まれる活性塩素濃度または活性酸素濃度は、ハイポ法により塩素換算した有効塩素濃度として測定した。即ち、サンプル液中にヨウ化カリウムを添加した後、酢酸を添加して液を酸性としてヨウ化カリウムからヨードを遊離させ、これをチオ硫酸ナトリウムで滴定して、チオ硫酸ナトリウムの消費量から有効塩素濃度を算出した。
【0025】
(注2)組成物中に含まれる活性ハロゲンまたは活性酸素の含有割合の測定
組成物中に含まれる活性ハロゲンまたは活性酸素の含有割合は、ハイポ法により塩素換算した有効塩素含有割合として測定した。即ち、組成物を水に入れ、ヨウ化カリウムを添加した後、酢酸を添加して液を酸性としてヨウ化カリウムからヨードを遊離させ、これをチオ硫酸ナトリウムで滴定して、チオ硫酸ナトリウムの消費量から有効塩素含有割合を算出した。
【0026】
〔実施例1〕
次亜塩素酸ナトリウム溶液とリボフラビンを混合して、表1記載の組成を有する着色酸化剤組成物を調製し、評価試験を行った。得られた試験結果は、表1に示されるとおりであった。
【0027】
〔実施例2〜9、比較例1〜2〕
実施例1と同様にして、表1に記載の組成を有する着色酸化剤組成物を調製し、評価試験を行った。得られた試験結果は、表1に示されるとおりであった。
【0028】
〔実施例10〕
実施例9において調製した着色酸化剤組成物5gを、直径20mmの臼に充填し、面圧1.2t/cmで加圧して、成形物を調製した。
得られた成形物について、実施例1と同様にして評価試験を行ったところ、これらの試験結果は表1に示したとおりであった。
【0029】
〔実施例11〕
表1に記載の組成を有する着色酸化剤組成物を調製し、一軸押出機を用いて加圧押出して、直径30mm、厚み10mmの成形物を調製した。
得られた成形物について、実施例1と同様にして評価試験を行ったところ、これらの試験結果は表1に示したとおりであった。
【0030】
〔比較例3〕
表1に記載の組成を有する着色酸化剤組成物を調製し、実施例10と同様にして錠剤を作成し、評価試験を行った。得られた試験結果は、表1に示されるとおりであった。
【0031】
〔比較例4〕
表1に記載の組成を有する着色酸化剤組成物を調製し、実施例11と同様にして成形物を作成し、評価試験を行った。得られた試験結果は、表1に示されるとおりであった。
【0032】
【表1】

【0033】
〔実施例12〕
実施例10において調製した錠剤1錠を15リットルの水に溶解して漂白洗浄液を調製した(有効塩素濃度:約70ppm)。この漂白洗浄液に、茶渋の付着した陶器製カップを1時間浸漬したところ、茶渋は完全に除去されて、良好な漂白洗浄効果が認められた。
【0034】
〔実施例13〕
実施例12において調製した漂白洗浄液に、馬血液汚染布を15分間浸漬した後、5分間流水で濯いだところ、汚染布の白色度が63から70に上昇し、良好な漂白洗浄効果が認められた。
【0035】
〔実施例14〕
実施例10において調製した錠剤1錠を2リットルの水に溶解して漂白洗浄液を調製した(有効塩素濃度:約500ppm)。この漂白洗浄液に、紅茶汚染布を5分間浸漬した後、5分間流水で濯いだところ。汚染布の白色度が40から68に上昇し、良好な漂白洗浄効果が認められた。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハロゲン系酸化剤及び又は酸素系酸化剤と、リボフラビンを含有することを特徴とする着色酸化剤組成物。


【公開番号】特開2007−77202(P2007−77202A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−264173(P2005−264173)
【出願日】平成17年9月12日(2005.9.12)
【出願人】(000180302)四国化成工業株式会社 (167)
【Fターム(参考)】