説明

睡眠時無呼吸センサ用光ファイバシート

【課題】本発明は、睡眠時の呼吸時における寝具への圧力変化を寝具の上と人体との間に敷きつめられた光ファイバにより検知し、夜中に激しく動き回る乳幼児の無呼吸睡眠状態などの呼吸疾患を無拘束状態で迅速簡便に検査する光ファイバシートに関するものである。
【解決手段】 光ファイバに加わる側圧により発生する過剰損失による伝送信号光の変化を計測する睡眠時無呼吸センサ用の光ファイバを蛇行させて配置した光ファイバシートにおいて、一本の光ファイバを用いて複数の象限構造を持たせ、二重とか四重に折りたたんで格納できる構造にしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、睡眠時の呼吸における寝具への圧力変化を寝具の上と人体との間に敷きつめられた光ファイバにより検知し、光ファイバへの側圧変化に起因する信号をパソコンやマイコン等で制御されたメモリーカード等に収録し、無呼吸睡眠状態を検知し乳幼児等も含む被験者の呼吸疾患を迅速に検出するための光ファイバシート及びその構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)とは睡眠中に10秒以上の呼吸が停止もしくは、気道が狭くなり呼吸が細くなること(10秒以上換気量が50%以下に低下すること)が5回以上繰り返される病気である。起床時の頭痛,日中の眠気などの症状が現れる。また,高血圧を引き起こす原因となり,心筋梗塞・脳卒中などの合併率も高くなる。その他にも夜間頻尿やインポテンツ、頭重感や口渇などの症状がある。また、中高年の男性にみられることが多いが,女性も男性よりは低い割合では発症する。これは、柔らかい食物を多く摂取するようになり顎が退化し始めた人類宿命の病気とも言われている。また、睡眠時無呼吸症候群の患者では眠気が強いと居眠り運転をして交通事故や産業事故を起こしやすく、電車等の公共交通機関の運転手などでこのような病気の者が運転に携わることは社会的に極めて危険なことである。2003年の新幹線居眠り運転などで−躍注目を集めるようになったSASの患者数が、全国人口の4%、数にして480万人とも言われ、そのうち潜在的な患者数は280万人とも言われている。この病気は中高年の肥満の男性や女性のみならず、顎の細い細身の中高生の若者でも発病し、集中力の低下、寝起きの悪さから学業の低下を招く。さらには、乳幼児でも発症し、深い眠りが妨げられると成長ホルモンの分泌を阻害し、小人症を引き起こす要因ともなる。従って本発明のような体に何も装着しないで測定できる検査装置に用いる光ファイバシートは特に乳幼児には最適であると言える。
【0003】
本発明は、睡眠中の呼吸時と無呼吸時での、寝具(シーツや敷布団等)に設置した光ファイバへの応力付加変化による過剰損失の変化を計測し、パソコンやマイコン等で制御されたメモリーカード等に一晩の睡眠時の経時変化を記録するものである。使用する光ファイバの中でもプラスチック光ファイバは、曲げに強く、安価なため、睡眠時に動きの激しい乳幼児には適している。石英系光ファイバや石英コア−プラスチッククラッド光ファイバも適用可能である。さらに、低価格なLEDを光源とすることで低コスト化が可能である。一般にプラスチック光ファイバは変形しやすく、応力付加によりプラスチック光ファイバの形状は変化する。その形状変化により、導波構造が乱れ、プラスチック光ファイバの伝送損失に過剰損失が発生する。石英光ファイバにおいては側圧付加によりマイクロベンディングロスが発生し、光ファイバの伝送損失に過剰損失が発生する。この側圧による過剰損失発生を原理とするセンシング機能を活かし、光ファイバを用いた睡眠時無呼吸センサ用光ファイバシートを提供するものである。乳幼児への適用のためには、ベッド上を広くカバーし、検査に使用しないときは折りたたんで格納できることが臨床現場からは望まれており、そのような格納性を付与した構造の睡眠時無呼吸センサ用光ファイバシートを提供するものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在主に行われているSASの診断には、一晩の入院により行う終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG検査)や、自宅にて携帯用装置を用いて行う睡眠検査(パルスオキシメータによる簡易検査)がある。しかしながら、これらの検査は、入院や検査後に、技師による解析が必要であり、手間・時間、そして高い費用がかかっていた。従来の睡眠時無呼吸センサは口元や鼻の近くにサーミスタを配置するものなど、自然な睡眠を妨げるものであった。また、敷布団の上に特殊マットを置き、呼吸によるマットの高低の変化を気圧の変化(高度の変化による気圧の変化)で捉えるという極めてS/Nの悪い、即ち、脈拍や寝返りと呼吸による区別を特殊な数学的信号解析から行なう手法で信頼性に問題がある手法が開発されていた。このような成人向けの装置が乳幼児にも適用され、多くのセンサを装着して測定するPSGは乳幼児には全く不向きであり、むしろ配線コードの巻きつき等の危険性も伴う。多くの場合パルスオキシメータによる簡易検査は乳幼児に適用されるが、指にきつく装着したり、鼻にカニューレと呼ばれる管を装着したりするので、夜中の睡眠中に無意識にはずしてしまうことが多く、安定した測定が困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以上の点を解決するために、光ファイバ(安全性を要求する場合はプラスチックファイバを、高感度を要求する場合は石英系光ファイバ)を寝具、特にシーツなどの下に敷きつめるなり、織り込むなどして、自然な睡眠を妨げないようにし、また側圧の大きさによる伝送損失の変化で呼吸状態、無呼吸状態を捉える睡眠時無呼吸センサ用光ファイバシートを提供しようというものである。さらに、光ファイバに加わる側圧により発生する過剰損失による伝送信号光の変化を計測する睡眠時無呼吸センサ用の光ファイバを蛇行させて配置した光ファイバシートにおいて、一本の光ファイバを用いて複数の象限構造を持たせ、その複数の象限構造が2象限からなる場合は、二つに折って畳んで二重重ねの構造で、広げた状態の元のファイバシートの1/2の面積で格納できるようにし、また複数の象限構造が4象限からなる場合は、二つ に折って畳んだ後にさらにそれを二つに折って四重重ね(直角四つ折り)の構造で、広げた状態の元のファイバシートの1/4の面積で格納できるようにする構造を持たせた。これらの複数の象限構造間の光ファイバの配線は象限間の境界領域を斜めに通過するように配線させる構造も持たせた。
【0006】
それら複数の象限構造が4象限からなり、各象限ごとに分離配線されていて、それぞれの象限のファイバシートはそれぞれの光アダプタで接続されて4象限が一体となった光ファイバシートを構成する構造も持たせた。
【0007】
また、同一パターンの配線構造を持つファイバシートを光アダプタで接続して、縦列接続で2枚、3枚、4枚、5枚、6枚、7枚、8枚、及びそれ以上の任意の枚数で任意の縦長面積構造に拡張できるようにしたり、横列接続で2枚、3枚、4枚、5枚、6枚、7枚、8枚及びそれ以上の任意の枚数で任意の横長面積構造に拡張できるようにしたりできる構造も持たせた。
【0008】
さらに、2枚x2(4枚)、2枚x3(6枚)、2枚x4(8枚)、3枚x3(9枚)や3枚以上の枚数とその倍数のといった任意の組み合わせにより、任意の形状と任意の広さへ展開可能な拡張性を持たせることができる光ファイバシート配線構造を持たせた。
【発明の効果】
【0009】
本発明は次のような効果を奏する。本発明の光ファイバシートを睡眠時無呼吸センサに用いることにより、睡眠時無呼吸状態を自然な睡眠を妨げない状態で日常、自宅でいつもの睡眠時に測定可能となる。即ち非侵襲性の健康管理器具を提供するものである。また、摩擦による静電気等の電気的雑音の影響を受けないために誤動作が少ない。また、荷重の大きさ、寝返りによる信号と呼吸による信号を完全に判別できるという特徴がある。光ファイバは10gの1点荷重に対しても測定可能な過剰損失を与えるほど、側圧に敏感であり、極めて感度の良い、睡眠時無呼吸センサーの提供が可能である。一筆書き状に蛇行配線しているため、夜中に子供がどんなに激しく、ベッドやふとん上を動き回っても、シーツの下に広げて敷いた光ファイバシート上のどこかに体が触れていれば、即ち寝相が悪い乳幼児の被験者に対しても十分測定が可能である。さらに、通気性のあるスポンジ構造やメッシュ構造の中敷きマットを用い、カバーにも布あるいは細孔穴あけ構造のプラスチックカバーを用いているので通気性が十分に確保され、激しく寝汗をかく乳幼児等でも普段の快適な睡眠状態を確保できる。黒い布製カバーで迷光を十分に遮光し、S/N比の確保もできている。内カバー、外カバーの二重構造で外カバーの洗濯を可能とし、衛生的な面での配慮も可能である。粘着シート上への光ファイバ配線により大量生産に向けた製造の容易性も確保されている。複数の象限構造にしたことにより、使用しないときは、二重、三重、四重に折り畳んで、小さな面積にして格納できる便利さもある。
【0010】
また、複数の各象限を分離配線し各象限をアダプタ接続、各象限のファイバが万が一損傷した場合でも損傷がある象限のみ取り換えれば良く、交換保守が効率的で経済的に行うことが可能となる。
【0011】
さらに、同一パターンの配線構造を持つファイバシートを光アダプタで接続して、縦列接続で2枚、3枚、4枚、5枚、6枚、7枚、8枚、及びそれ以上の任意の枚数で任意の縦長面積構造に拡張できるようにしたり、横列接続で2枚、3枚、4枚、5枚、6枚、7枚、8枚及びそれ以上の任意の枚数で任意の横長面積構造に拡張できるようにしたりできる構造にすることにより、光ファイバシートごとの交換が可能であり、交換保守が効率的で経済的に行うことが可能となるのみならず、同一配線のファイバシートを使用するために在庫リスクを軽減し、在庫管理が容易となるメリットが生じる。
【0012】
さらに、2枚x2(4枚)、2枚x3(6枚)、2枚x4(8枚)、3枚x3(9枚)や3枚以上の枚数とその倍数のといった任意の組み合わせにより、任意の形状と任意の広さへ展開可能な拡張性を持たせることができる光ファイバシート配線構造を持たせることにより、任意のベッドサイズに合わせて配置することが可能となり、汎用性を大きく高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、各実施例はあくまで本発明を説明するための代表的実施形態の一例であり、本発明の普遍的な基本技術内容が各実施例によって限定されるものではない。
【実施例1】
【0014】
図1は本発明の睡眠時無呼吸センサ用光ファイバシートの一使用形態を示す回路構成図である。使用した装置は光ファイバ型睡眠時無呼吸センサ(F−SASセンサ)である。このF−SASセンサの光源(100)に赤色LEDを用いてSC型光コネクタ(101)を介して入力信号を入射端に入力させた。プラスチック光ファイバ(102)を用いて蛇行配置された光ファイバシート(103)を、出力端に受光素子であるPD(フォトダイオード)が装着された光パワーメータ(104)と、出射端はSC形光コネクタを介して接続した。このような配線回路を用いて、一般家庭で睡眠時無呼吸の可能性のある被験者の測定を行った使用形態例を図2に示す。即ち、図2は本発明の睡眠時無呼吸センサ用光ファイバシートを含む光ファイバ型睡眠時無呼吸症候群測定システムを用いた実際の測定の1例である。図2に示すように、光ファイバシートを和式布団あるいは洋式のベッド上に設置し、シーツで覆う。続いて、100Vの家庭用電源にAC/DCアダプタ(105)を差込み、これを制御部側面に接続し、制御部(106)の電源ボタン(107)を押す。続いて、測定開始用赤ボタン(108)を押し、測定開始すると、表示部(109)に日時とSASセンサからの光出力パワーが表示されるのを確認したら、通常の状況就寝状態を取ってもらい、翌朝、測定開始用赤ボタン(108)押して測定を終了する。この間、寝返りも、横向きや仰向けで寝ることも、トイレへ出向くことも自由である。一晩の測定データは106(▲2▼)の制御部側面に装着されたメモリーカードに蓄えられており、測定終了後はこのカードを抜いて、F−SASセンサ自動解析プログラムをインストールしたPCで解析を数秒で行う。白い4つのボタンで構成されるモードボタン(110)で詳細な測定条件を選択する。図3はこの測定に用いた、本発明の睡眠時無呼吸センサ用光ファイバシートの一形態を示す例であり、その組み立て構成図である。蛇行させたプラスチック光ファイバ(102)を、通気性のあるメッシュ構造の網(111)上に這わせても良いし、多数の空孔のあるスポンジ状の3mm厚の中敷きマット(112)上に這わせても良い。あるいはメッシュ構造の網(111)に光ファイバを編込み、中敷きマット(112)上に配置した「メッシュ上編込みスポンジ状中敷きマット上配置光ファイバシート」(113)の上に、黒い布製の外カバーを被せた「メッシュ上編込みスポンジ状中敷きマット上配置黒色布カバー付光ファイバシート」(114)を用いると、明るい室内での使用でも迷光の影響を避ける遮光効果が十分に得られた。このような本発明の睡眠時無呼吸センサ用光ファイバシート及び本発明の睡眠時無呼吸センサ用光ファイバシート含んで成る光ファイバ型睡眠時無呼吸症候群測定システムで測定した結果を図4に示す。病室でのポリソムノグラフィー(PSG)測定時にベッドのシーツの下に光ファイバシートを設置し、PSGとF−SASセンサとの同時測定を行った。AHI40以上の被験者による同時測定結果である。まず、正常呼吸領域(115)、無呼吸領域(116)、低呼吸領域(117)の各領域と寝返り信号(118)が明確に分離して捕捉されていることが明らかである。F−SASセンサはC−SAS(中枢型睡眠時無呼吸症)、O−SAS(閉塞型睡眠時無呼吸症)、M−SAS(混合型睡眠時無呼吸症)に関わらず無呼吸を検知可能であることと、軽症のSASではPSGとの対応は良好であるが、重症例でのpro−AHI(一般的なRDIに対応する値)はPSGで得られるAHIより低めに検出される傾向も明らかとなった。これは、総臥床時間と総睡眠時間で補正することで、PSGによるRDI[29.6]とF−SASセンサによるRDI[25.2](pro−AHI)とが比較的良く一致することが示された。本発明の光ファイバシートが普段の就寝時に無侵襲性な測定で睡眠時無呼吸症の可能性の高い潜在患者をスクリーンニングする上で極めて有効であることが明らかとなった。
【実施例2】
【0015】
図5は本発明の睡眠時無呼吸センサ用光ファイバシートの一実施形態で、119は2象限構造型睡眠時無呼吸センサ用光ファイバシートを示している。これは2象限構造から成り立っており、プラスチック光ファイバを蛇行配線させ、それと垂直に交わるようにプラスチック光ファイバの横糸を配置して多数の交点を形成し、側圧が加わったときにマイクロベンドロスが効率よく発生し、光ファイバシートの側圧に対する感度がより向上するように設計されている。このような配置を右側半分の領域に形成すると同様に左側半分の領域にも形成した。全体のサイズは800mmx600mmである。右側半分(約600mmx400mm弱)を第一象限(120)とし左側半分(約600mmx400mm弱)を第二象限(121)とすると両者を連絡する中央部(122)は横糸の配線は行わず、第一象限から第二象限に連絡するプラスチックファイバ二本が斜めにそのプラスチック光ファイバ配線空白地帯(境界領域)(122)を通過する配置にした。この配線構造により、第一象限と第二象限は中央のプラスチック光ファイバ配線空白地帯(境界領域)(122)に沿って折り曲げられ、二つの象限は二重重ねの状態で折り畳まれて元のファイバシートの面積が半分の状態で格納できた。この2象限構造の光ファイバシート119を広げてもとの大きさの面積にして、図1に示したF−SASセンサの光ファイバシート(103)の置き換えとして106の制御部に101のSC形光コネクタにより光ファイバ接続し、100のLED光源をオンにして104の光パワーメータの液晶出力表示を読むと−25.70dBmであった。次に上記のように二つに折って1/2の面積状態で測定しても、−25.8dBmとほとんど変化は生じなかった。さらに再度広げて計測すると−25.7dBmであり折りたたみによる伝送損失への影響は少ないことがわかった。このファイバシートを用いて、小児科の協力を得て倫理委員会承認のもとに10歳児(女子、身長100.8cm、体重15kg、BMI14.8)の睡眠時無呼吸症の測定を行った。就寝前の夕方に検査技師が二つ折り状態の光ファイバシート119を広げて、ベッドのシーツの下に敷き、体に何も装着せずに10歳の子供の睡眠時の呼吸状態の測定を1晩で回測定を行った。結果は、pro−AHI(RDI)が1.0であり、同時測定のSAS2100(呼気フローセンサ付きパルスオキシメータ)のAHIは2.2で健常者もしくは極めて軽症である可能性が示された。測定前あるいは終了後はベッドから簡単にとりはずし、ふたつ折りの状態にして小さく格納できるので、検査技師には大変好評であった。
【実施例3】
【0016】
図6は本発明の睡眠時無呼吸センサ用光ファイバシートの一実施形態で、123は4象限構造型睡眠時無呼吸センサ用光ファイバシートを示している。124はその側面図である。これは4象限構造から成り立っており、プラスチック光ファイバを蛇行配線させ、それと垂直に交わるようにプラスチック光ファイバの横糸を配置して多数の交点を形成し、側圧が加わったときにマイクロベンドロスが効率よく発生し、光ファイバシートの側圧に対する感度がより向上するように設計されている。このような配置を右側上側四分の一の領域に第一象限(125)として形成すると同様に、左側上側四分の一の領域にも第二象限(126)として形成、左側下側四分の一の領域にも第三象限(127)として形成、右側下側四分の一の領域にも第四象限(128)として形成した。全体のサイズは800mmx800mmである。第一象限から第四象限との各サイズはおおよそ400mmx400mm弱で、第一象限と第二象限、第二象限と第三象限、第三象限と第四象限を連絡する境界部は横糸の配線は行わず、各象限間を連絡するプラスチックファイバー本のみが斜めにそのプラスチック光ファイバ配線空白地帯(境界領域)を通過する配置にした。この4象限配線構造により、第一象限と第二象限の境界及び第三象限と第四象限の境界に沿って同時に全体が半分の面積になるように二重重ねで折り曲げられ、続いて第一象限と第四象限、第二象限と第三象限の境界で折り曲げて四重重ね(直角四つ折り)にして面積が四分の一になるようにして格納が可能となった。この4象限構造の光ファイバシート123を広げてもとの大きさの面積にして、図1に示したF−SASセンサの光ファイバシート(103)の置き換えとして106の制御部に光コネクタにより光ファイバ接続し、100のLED光源をオンにして104の光パワーメータの液晶出力表示を読むと−27.4dBmであった。次に上記のように二つに折って、さらにそれを二つに折って直角4つ折りとした1/4の面積状態で測定しても、−27.5dBmとほとんど変化は生じなかった。さらに再度広げて計測すると−27.4dBmであり、折りたたみによる伝送損失への影響は少ないことがわかった。このファイバシートを用いて、小児科の協力を得て、倫理委員会承認のもとに7歳児(女子、身長115cm、体重21kg、BMI15.9)の睡眠時無呼吸症の測定を行った。就寝前の夕方に検査技師が四つ折り状態の光ファイバシート123を広げて、ベッドのシーツの下に敷き、体に何も装着せずに7歳の子供の睡眠時の呼吸状態の測定を1晩で1回測定を行った。結果は、pro−AHI(RDI)が1.3であり、同時測定のSAS2100(呼気フローセンサ付きパルスオキシメータ)のAHIは1.3で健常者もしくは極めて軽症である可能性が示された。さらに小児科の協力を得て、倫理委員会承認のもとに7歳児(男子、身長111.9cm、体重17.8kg、BMI14.2)の睡眠時無呼吸症の測定を行った。就寝前の夕方に検査技師が四つ折り状態の光ファイバシート123を広げて、ベッドのシーツの下に敷き、体に何も装着せずに7歳の子供の睡眠時の呼吸状態の測定を1晩で1回測定を行った結果は、pro−AHI(RDI)が4.0であり、同時測定のSAS2100(呼気フローセンサ付きパルスオキシメータ)のAHIは9.7で軽症ではあるが小児睡眠時無呼吸症の可能性が示された。いずれのケースの場合も測定前あるいは終了後はベッドから簡単にとりはずすことができ、直角四つ折りの状態にして小さく格納できるので、検査技師には大変好評であった。
【実施例4】
【0017】
図7は本発明の睡眠時無呼吸センサ用光ファイバシートの一実施形態で、129は3象限構造型睡眠時無呼吸センサ用光ファイバシートである。これは3象限構造から成り立っており、プラスチック光ファイバを蛇行配線させ、それと垂直に交わるようにプラスチック光ファイバの横糸を配置して多数の交点を形成し、側圧が加わったときにマイクロベンドロスが効率よく発生し、光ファイバシートの側圧に対する感度がより向上するように設計されている。このような配置を右側1/3の領域に第一象限(130)を形成すると同様に、中央側1/3の領域に第二象限(131)、左側1/3の領域に第三象限(132)の領域にも形成した。全体のサイズは900mmx600mmである。右側1/3(約600mmx300mm弱)を第一象限(130)とし、中央側1/3(約600mmx300mm弱)を第二象限(131)とし左側1/3(約600mmx300mm弱)を第三象限(132)とすると各隣接象限同士を連絡する中央部(133)、(134)は横糸の配線は行わず、第一象限から第二象限に連絡するプラスチックファイバ二本が斜めにそのプラスチック光ファイバ配線空白地帯(境界領域)(133)を通過する配置にした。同様に、第二象限から第三象限に連絡するプラスチックファイバ日本が斜めにそのプラスチック光ファイバ配線空白地帯(境界領域)(134)を通過する配置にした。この配線構造により、第一象限と第二象限は中央のプラスチック光ファイバ配線空白地帯(境界領域)(133)に沿って折り曲げられ、二つの象限は二重重ねの状態で折り畳まれ、さらに第ニ象限と第三象限は中央のプラスチック光ファイバ配線空白地帯(境界領域)(134)に沿って折り曲げられ、元のファイバシートの面積が1/3の状態で格納できた。この3象限構造の光ファイバシート129を広げてもとの大きさの面積にして、図1に示したF−SASセンサの光ファイバシート(103)の置き換えとして106の制御部に光コネクタにより光ファイバ接続し、100のLED光源をオンにして104の光パワーメータの液晶出力表示を読むと−26.20dBmであった。次に上記のように三重重ねにして1/3の面積状態で測定しても、−26.3dBmとほとんど変化は生じなかった。さらに再度広げて計測すると−26.2dBmであり折り畳みによる伝送損失への影響は少ないことがわかった。このファイバシートを用いて、小児科の協力を得て、倫理委員会承認のもとに2歳児(男子、身長91.2cm、体重12.9kg、BMI15.5)の睡眠時無呼吸症の測定を行った。就寝前の夕方に検査技師三つ折り状態の光ファイバシート129を広げて、ベッドのシーツの下に敷き、体に何も装着せずに2歳の子供の睡眠時の呼吸状態の測定を1晩で1回測定を行った。結果は、pro−AHI(RDI)が6.4であり、同時測定のSAS2100(呼気フローセンサ付きパルスオキシメータ)のAHIは9.3で軽症ながら睡眠時無呼吸症である可能性が示された。この横に3象限の配列構造は、ベッドサイズからの要求に応じて、横に4象限配列、5象限配列、6象限配列、7象限配列、8象限配列とすることも可能であった。同様に、縦に2象限配列、3象限配列、4象限配列、5象限配列、6象限配列、7象限配列、8象限配列とすることも可能であった。
【実施例5】
【0018】
実施例1から実施例4の結果をもとに、2象限配置の2つ折り構造のファイバシート(119)を用いた、F−SASセンサの小児睡眠時無呼吸症候群診断への本格的臨床応用結果は以下のようになった。従来と同様に光ファイバシートからの光コードを呼吸計測制御装置に接続し、就寝時の呼吸状態の8時間〜11時間の連続計測・記録を実施した。無呼吸/低呼吸イベントは各被験者の二呼吸時間以上の無呼吸/低呼吸で定義し計測した。(3)[解析方法]計測後、基準装置であるSAS2100の低呼吸・無呼吸指数(AHI)の算出と、F−SASセンサの呼吸障害指数(RDI)の算出は、夫々完全独立、双方ブラインドで各装置に蓄積された計測データの波形解析を行い、後に両者の相関を取った。[測定結果]測定結果を図8に示す。この図は同時測定を行った際の携帯型睡眠時無呼吸検査装置SAS2100(呼気フローセンサー付きパルスオキシメーター)と本発明の2象限配置の2つ折り構造のファイバシート(119)を用いたF−SASセンサによるRDI(pro−AHI)との相関を示す図(135)である。横軸が携帯型睡眠時無呼吸検査装置SAS2100(呼気フローセンサー付きパルスオキシメーター)のAHI指数(136)で縦軸がF−SASセンサによるRDI(pro−AHI)(137)である。携帯型睡眠時無呼吸検査装置SAS2100でのAHIと、完全自動解析によるF−SASセンサでのRDIの間には極めて良い正の相関があり、相関係数は0.76という大変良好な結果が得られた。体に何も装着しないで測定可能なF−SASセンサは幼児の睡眠時の無呼吸/低呼吸状態を、無拘束で捉えるのに極めて有効であると言える。
【実施例6】
【0019】
図9は本発明の睡眠時無呼吸センサ用光ファイバシートの一実施形態で、138は光コネクタ接続型4象限睡眠時無呼吸センサ用光ファイバシートである。139はその側面図である。これは4象限構造から成り立っており、プラスチック光ファイバを蛇行配線させ、それと垂直に交わるようにプラスチック光ファイバの横糸を配置して多数の交点を形成し、側圧が加わったときにマイクロベンドロスが効率よく発生し、光ファイバシートの側圧に対する感度がより向上するように設計されている。このような配置を右側上側四分の一の領域に第一象限(140)として形成すると同様に、左側上側四分の一の領域にも第二象限(141)として形成、左側下側四分の一の領域にも第三象限(142)として形成、右側下側四分の一の領域にも第四象限(143)として形成した。各象限の光ファイバは分離した状態で配置し、各象限はそれぞれ光ファイバアダプタ(144から146)で光接続される。図9で示すように、第一象限と第四象限はアダプタ(144)で、第二象限と第三象限はアダプタ(145)で、第三象限と第四象限はアダプタ(146)で光接続される。このような配線構造にしたことにより、数十回以上の繰り返し使用において、万が一幼い子供が夜尿をして部分的に光ファイバシートを汚した場合には、その象限のみをアダプタを外して、新規のファイバシートに交換して用いることが可能でる。また、繰り返し使用でプラスチック光ファイバに急激な曲げなどのクセがついた場合(即ち塑性変形が生じた場合)、その象限のみをアダプタを外して、新規のファイバシートに交換して用いることが可能である。このような構造にすることで、看護師や検査技師の扱いが極めて楽で、いつでも取り換えられるという安心感の増大につながり、また、直角4つ折りの状態にして小さく格納できるので、看護師や検査技師には大変好評であった。
【実施例7】
【0020】
図10は本発明の睡眠時無呼吸センサ用光ファイバシートの一実施形態で、147は同一モジュール接続型コネクタ接続型4象限睡眠時無呼吸センサ用光ファイバシートである。これは4象限構造から成り立っており、プラスチック光ファイバを蛇行配線させ、それと垂直に交わるようにプラスチック光ファイバの横糸を配置して多数の交点を形成し、側圧が加わったときにマイクロベンドロス が効率よく発生し、光ファイバシートの側圧に対する感度がより向上するように設計されている。このような配置をすべての象限で同一配線構造の光ファイバシートを用いて構成する方式とした。即ち、図10に示すように、右側上側四分の一の領域の第一象限(148)も、左側上側四分の一の領域の第二象限(148‘)も、左側下側四分の一の領域の第三象限(148‘‘)も、右側下側四分の一の領域の第四象限(148‘‘‘)もすべて同じファイバ配線構造の光ファイバを149、150、151の光アダプタで接続として4象限配置構造とした。もちろんベッドサイズや被験者の体格に応じて、この配線構造を横並び(横列配置)の2象限配置構造にも、3象限配置構造にも、5象限、6象限、7象限、8象限、9象限と任意にサイズに拡大、縮小することが可能である。また、同様に縦並び(縦列配置)の象限配置構造にも、3象限配置構造にも、5象限、6象限、7象限、8象限、9象限と任意にサイズに拡大、縮小することが可能である。さらに、2枚x2の4枚、2枚x3の6枚、2枚x4の8枚、3枚x3の9枚といった任意の形状と広さを持たせることも可能である。このような配線構造にしたことにより、数十回以上の繰り返し使用において、万が一幼い子供が夜尿をして部分的に光ファイバシートを汚した場合には、その象限のみをアダプタを外して、新規のファイバシートに交換して用いることが可能である。また、繰り返し使用でプラスチック光ファイバに急激な曲げなどのクセがついた場合(即ち塑性変形が生じた場合)、その象限のみをアダプタを外して、新規のファイバシートに交換して用いることが可能である。このような構造にすることで、看護師や検査技師の扱いが極めて楽で、いつでも取り換えられるという安心感の増大につながり、また、直角4つ折りの状態にしたり、あるいはアダプタを外してシートを4枚重ねた状態にして小さく格納できるので、看護師や検査技師には大変好評であった。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の睡眠時無呼吸センサ用光ファイバシートの一使用形態を示す回路構成図
【図2】本発明の睡眠時無呼吸センサ用光ファイバシートを含む光ファイバ型睡眠時無呼吸症候群測定システムを用いた実際の測定の1例
【図3】本発明の睡眠時無呼吸センサ用光ファイバシートの一形態を示す一例
【図4】本発明の睡眠時無呼吸センサ用光ファイバシート含んで成る光ファイバ型睡眠時無呼吸症候群測定システムで測定した測定結果
【図5】本発明の2象限構造の睡眠時無呼吸センサ用光ファイバシートの一実施形態
【図6】本発明の4象限構造の睡眠時無呼吸センサ用光ファイバシートの一実施形態
【図7】本発明の3象限構造の睡眠時無呼吸センサ用光ファイバシートの一実施形態
【図8】携帯型睡眠時無呼吸検査装置SAS2100と本発明の2象限配置のファイバシートを用いた本発明の睡眠時無呼吸センサ(F−SASセンサ)によるRDI(pro−AHI)との相関を示す図
【図9】本発明のコネクタ接続型4象限睡眠時無呼吸センサ用光ファイバシート一実施形態
【図10】本発明の同一モジュール接続型4象限睡眠時無呼吸センサ用光ファイバシート一実施形態
【符号の説明】
【0022】
100 LED光源
101 SC形光コネクタ
102 蛇行配置光ファイバ
103 光ファイバシート
104 Si−PD(フォトダイオード)内蔵の光パワーメータ
105 100V商用電源
106 光ファイバ型睡眠時無呼吸センサ(F−SASセンサ)制御部
107 電源ボタン
108 測定開始用赤ボタン
109 表示部
110 モードボタン
111 メッシュ構造の網
112 スポンジ状の中敷きマット
113 メッシュ上編込みスポンジ状中敷きマット上配置光ファイバシート
114 メッシュ上編込みスポンジ状中敷きマット上配置黒色布カバー付光ファイバシート
115 正常呼吸領域
116 無呼吸領域
117 低呼吸領域
118 寝返り信号
119 2象限構造型睡眠時無呼吸センサ用光ファイバシート
120 第一象限
121 第二象限
122 配線空白地帯(境界領域)
123 4象限構造型睡眠時無呼吸センサ用光ファイバシート
124 側面図
125 第一象限
126 第二象限
127 第三象限
128 第四象限
129 3象限構造型睡眠時無呼吸センサ用光ファイバシート
130 第一象限
131 第二象限
132 第三象限
133 中央部
134 中央部
135 携帯型睡眠時無呼吸検査装置SAS2100と本発明の2象限配置の2つ折り構造のファイバシートを用いたF−SASセンサによるRDI(pro−AHI)との相関を示す図
136 携帯型睡眠時無呼吸検査装置SAS2100(呼気フローセンサー付きパルスオキシメーター)のAHI指数
137 本発明の睡眠時無呼吸センサ(F−SASセンサ)によるRDI(pro−AHI)
138 光コネクタ接続型4象限睡眠時無呼吸センサ用光ファイバシート
139 側面図
140 第一象限
141 第二象限
142 第三象限
143 第四象限
144 光ファイバアダプタ
145 光ファイバアダプタ
146 光ファイバアダプタ
147 同一モジュール接続型コネクタ接続型4象限睡眠時無呼吸センサ用光ファイバシート
148 第一象限
148‘ 第二象限
148‘‘ 第三象限
148‘‘‘ 第四象限
149 光アダプタ
150 光アダプタ
151 光アダプタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバに加わる側圧により発生する過剰損失による伝送信号光の変化を計測する睡眠時無呼吸センサ用の光ファイバを蛇行させて配置した光ファイバシートにおいて、一本の光ファイバを用いて複数の象限構造を持たせて成ることを特徴とする睡眠時無呼吸センサ用光ファイバシート。
【請求項2】
前記請求項1の睡眠時無呼吸センサ用光ファイバシートにおいて、複数の象限構造が2象限からなり、二つに折って畳んで二重重ねの構造で、広げた状態の元のファイバシートの1/2の面積で格納できることを特徴とする睡眠時無呼吸センサ用光ファイバシート。
【請求項3】
前記請求項1の睡眠時無呼吸センサ用光ファイバシートにおいて、複数の象限構造が3象限からなり、三つに折って畳んで三重重ねの構造で、広げた状態の元のファイバシートの1/3の面積で格納できることを特徴とする睡眠時無呼吸センサ用光ファイバシート。
【請求項4】
前記請求項1の睡眠時無呼吸センサ用光ファイバシートにおいて、複数の象限構造が4象限からなり、二つに折って畳んだ後にさらにそれを二つに折って直角4つ折り構造で、広げた状態の元のファイバシートの1/4の面積で格納できることを特徴とする睡眠時無呼吸センサ用光ファイバシート。
【請求項5】
前記請求項1の睡眠時無呼吸センサ用光ファイバシートにおいて、複数の象限構造間の光ファイバの配線は象限間の境界領域を斜めに通過するように配線してなることを特徴とする睡眠時無呼吸センサ用光ファイバシート。
【請求項6】
前記請求項1の睡眠時無呼吸センサ用光ファイバシートにおいて、複数の象限構造が4象限からなり、各象限ごとに分離配線されていて、それぞれの象限のファイバシートはそれぞれの光アダプタで接続されて4象限が一体となった光ファイバシートを構成するように配線してなることを特徴とする睡眠時無呼吸センサ用光ファイバシート。
【請求項7】
前記請求項1の睡眠時無呼吸センサ用光ファイバシートにおいて、同一パターンの配線構造を持つファイバシートを光アダプターで接続して、縦列接続で2枚、3枚、4枚、5枚、6枚、7枚、8枚や横列接続で2枚、3枚、4枚、5枚、6枚、7枚、8枚や2枚x2の4枚、2枚x3の6枚、2枚x4の8枚、3枚x3の9枚といった任意の形状と広さを持たせることができる光ファイバシート配線構造からなることを特徴とする睡眠時無呼吸センサ用光ファイバシート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−15798(P2013−15798A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159368(P2011−159368)
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【出願人】(504303159)
【出願人】(000243342)本多通信工業株式会社 (92)
【Fターム(参考)】