説明

瞬発力発生装置及び瞬発力発生方法

【課題】小さなトルクで瞬発力を発生させることができる瞬発力発生装置及び瞬発力発生方法を提供する。
【解決手段】瞬発力発生装置の一具体例である跳躍ロボット1は、帯状の弾性体3と、弾性体3の一端を固定するフレーム部材2と、フレーム部材2に回動可能に取り付けられ、弾性体3の他端が固定される駆動部材4とを備えている。そして、駆動部材4の回動により弾性体3が撓んで、その弾性体3に蓄えられた弾性エネルギが所定値以上になると、フレーム部材2は弾性体3の弾性エネルギによって弾性変形し、その後の駆動部材4の回動により弾性体3に飛び移り座屈が生じる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性体の弾力を利用して瞬発力を発生させる瞬発力発生装置及び瞬発力発生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、装置全体の小型化を図りながら大きな瞬発力を得るために、柔軟物(弾性体)の力学的機能を利用した瞬発力発生装置が開発されている。このような瞬発力発生装置としては、例えば、特許文献1に記載されているようなものがある。
【0003】
特許文献1には、帯状の弾性体(柔軟物)を曲げることで得た弾性エネルギを、弾性体に飛び移り座屈を発生させることにより開放して瞬発力を発生させる技術が開示されている。この特許文献1に記載された瞬発力発生装置は、帯状の弾性体の一端を固定し、他端をモータなどの駆動部により回転させることで弾性体を曲げている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2009/035016号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された瞬発力発生装置において大きな瞬発力を得るには、帯状の弾性体の厚みや幅を大きくして、弾性体に蓄えられる弾性エネルギを増加させる必要がある。しかしながら、帯状の弾性体に蓄えられる弾性エネルギが大きいほど、弾性体が撓み難くなるため、モータなどの駆動部のトルクを大きくしなければならない。
【0006】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、小さなトルクで瞬発力を発生させることができる瞬発力発生装置及び瞬発力発生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の瞬発力発生装置は、帯状の弾性体と、弾性体の一端を固定する固定部材と、固定部材に回動可能に取り付けられ、弾性体の他端が固定される駆動部材と、を備えている。
固定部材は、駆動部材の回動により弾性体が撓んで、その弾性体に蓄えられた弾性エネルギが所定値以上になると、弾性体の弾性エネルギによって弾性変形する。そして、固定部材の弾性変形後の駆動部材の回動により、弾性体には、飛び移り座屈が生じる。その結果、弾性体は、蓄えている弾性エネルギを開放して瞬発力を発生させる。
【0008】
本発明の瞬発力発生方法は、まず、帯状の弾性体の一端を固定する固定部材に回動可能に取り付けられ、且つ、弾性体の他端が固定された駆動部材を回動させて弾性体を撓ませる。
次に、弾性体に蓄えられた弾性エネルギが所定値以上になると、固定部材が弾性体の弾性エネルギによって弾性変形し、駆動部材のさらなる回動を可能にする。
そして、弾性体に飛び移り座屈を発生させることにより、弾性体に蓄えられた弾性エネルギを開放して瞬発力を発生させる。
【0009】
上記構成の瞬発力発生装置及び瞬発力発生方法では、弾性体に蓄えられた弾性エネルギが所定値以上になると、その弾性エネルギによって固定部材が弾性変形する。これにより、弾性体に蓄えられた弾性エネルギが減少するため、駆動部材のさらなる回動が可能になり、弾性体をさらに撓ませることができる。
その結果、駆動部材のトルクを増大させなくても、弾性体に飛び移り座屈を生じさせることができ、所望の瞬発力を発生させることができる。
【0010】
また、弾性体に飛び移り座屈が生じると、固定部材が元の形状に戻る。そのため、弾性変形後の形状で予め形成した弾性変形不可能な固定部材を用いた場合よりも、得られる瞬発力を大きくすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の瞬発力発生装置及び瞬発力発生方法によれば、小さなトルクで瞬発力を発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の瞬発力発生装置の一実施形態の斜視図である。
【図2】本発明の瞬発力発生装置の一実施形態において弾性体に飛び移り座屈が生じる直前の状態を示す斜視図である。
【図3】本発明の瞬発力発生装置の一実施形態において弾性体に飛び移り座屈が生じて瞬発力を発生させた状態を示す斜視図である。
【図4】本発明の瞬発力発生装置の一実施形態の動作を説明する形状遷移図である。
【図5】本発明の瞬発力発生装置の一実施形態の動作を説明する形状遷移図である。
【図6】本発明の瞬発力発生装置の一実施形態に係る固定部材が弾性変形した状態の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の瞬発力発生装置及び瞬発力発生方法の実施の形態例について、図面を参照して説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。
【0014】
[瞬発力発生装置の構成]
まず、本発明の瞬発力発生装置の一実施形態の構成について、図1を参照して説明する。
図1は、本発明の瞬発力発生装置の一実施形態の斜視図である。
【0015】
図1に示す瞬発力発生装置は、発生させた瞬発力を利用して飛び跳ねる跳躍ロボット1である。この跳躍ロボット1は、固定部材の一具体例を示すフレーム部材2と、帯状の弾性体3と、駆動部材4とを備えている。
【0016】
フレーム部材2は、略長方形の枠体からなり、対向する前部片11及び後部片12と、これら前部片11及び後部片12を接続する左側部片13及び右側部片14とを有している。
以下、前部片11と後部片12が対向する方向を前後方向とし、左側部片13と右側部片14が対向する方向を左右方向とする。そして、前後方向及び左右方向に直交する方向を上下方向とする。
【0017】
フレーム部材2は、所定の力が加えられると弾性変形して撓むようになっている。
このフレーム部材2は、弾性体3よりも弾性係数が大きい(剛性が大きい)。したがって、弾性変形した弾性体3に所定値以上の弾性エネルギが蓄えられるまで、フレーム部材2は弾性変形しない。
【0018】
フレーム部材2の材料としては、例えば、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合合成樹脂(ABS樹脂)、ポリプロピレン(PP)などの合成樹脂を挙げることができる。また、フレーム部材2は、各種熱可塑性エラストマ、各種金属材料等から形成してもよい。
【0019】
前部片11は、略長方形の板状に形成されており、上面11aと下面11bを有している。前部片11の下面11bには、弾性体3の一端が固定ねじや接着剤などの固定方法により固定されている。後部片12は、四角柱状に形成されている。
【0020】
左側部片13及び右側部片14は、略長方形の板状に形成されており、平面が左右方向に直交している。左側部片13は、前部片11と後部片12の長手方向(左右方向に一致)の一端に接続されており、右側部片14は、前部片11と後部片12の長手方向の一端に接続されている。
【0021】
右側部片14の長手方向(前後方向に一致)の後部片12側には、前後方向に略平行な係合溝14aが設けられている。この係合溝14aには、後述するクランク部材21の係合ピン21cが係合する。
【0022】
また、左側部片13と右側部片14との間には、駆動部材4を回動可能に支持する支持軸15が設けられている。この支持軸15は、円柱状に形成されており、その軸方向が左右方向に一致している。支持軸15の軸方向の一端は、左側部片13に接続されており、他端は、右側部片14に接続されている。
【0023】
支持軸15は、フレーム部材2が弾性変形しても撓まない程度の強度を有している。したがって、支持軸15の材料としては、適当な強度を有する鋼鉄、ステンレス鋼材、アルミニウム鋼材などの金属材料が好ましい。
【0024】
弾性体3は、適当な幅を有する帯状に形成されたばね材からなっている。
この弾性体3の材料としては、例えば、熱処理ばね鋼SUP(例えば、Si−Mn鋼、Mn−Cr鋼、Si−Mn−Cr鋼、高合金鋼等)を挙げることができる。また、弾性体3は、熱処理ばね鋼SUPだけでなく、炭素工具鋼(SK)、合金工具鋼(SKS,SKD)、高速度工具鋼(SKH)、みがき帯鋼、みがき特殊帯鋼、焼入れリボン鋼、炭素繊維等から形成することもできる。
【0025】
上述したように、弾性体3の長手方向の一端は、フレーム部材2における前部片11の下面11bの固定されている。一方、弾性体3の長手方向の他端は、駆動部材4の後述する固定部17aに固定ねじや接着剤などの固定方法により固定されている。
なお、弾性体3は、撓んだ状態でフレーム部材2及び駆動部材4に固定されている。
【0026】
駆動部材4は、外装体17と、この外装体17の内部に配置されたモータ(不図示)とから構成されている。モータは、バッテリ(不図示)に電気的に接続されている。このバッテリは、例えば、外装体17やフレーム部材2に着脱可能に取り付けられる。
【0027】
外装体17は、略四角形の筐体からなっている。この外装体17の前方へ向いた面には、固定部17aが設けられている。弾性体3の長手方向の他端は、接続ブラケット18を介して駆動部材4の固定部17aに固定されている。なお、本発明の瞬発力発生装置としては、弾性体3の軸方向の他端を、駆動部材4の固定部17aに直接固定してもよい。
外装体17の後方へ向いた面には、一対の軸受け部17c,17bが設けられている。これら軸受け部17c,17bには、支持軸15が貫通する軸受け孔が設けられている。
【0028】
駆動部材4とフレーム部材2の右側部片14との間には、クランク部材21が配設されている。このクランク部材21と、右側部片14に設けられた係合溝14aは、支持軸15を中心に駆動部材4を揺動させる揺動スライダクランク機構を構成している。
【0029】
クランク部材21は、回転部21aと、この回転部21aに連続するアーム部21bと、このアーム部21bに設けられた係合ピン21cからなっている。
回転部21aは、駆動部材4におけるモータ(不図示)の回転軸に固定される。この回転部21aは、適当な厚みを有する円板状に形成されている回転部21aの一方の端面には、モータの回転軸が嵌合する嵌合孔が設けられている。
【0030】
アーム部21bは、回転部21aの外周面に連続しており、回転部21aの軸方向に直交する方向へ突出している。係合ピン21cは、アーム部21bの右側部片14に対向する面に設けられており、回転部21aの軸方向と平行な方向に突出している。この係合ピン21cは、右側部片14の係合溝14aに摺動可能に係合する。
【0031】
クランク部材21の係合ピン21cが右側部片14の係合溝14aに係合されることにより、係合ピン21cの上下方向の移動が係止される。これにより、クランク部材21の回転部21aが係合ピン21cに対して相対的に移動し、駆動部材4が支持軸15を中心に揺動する。
【0032】
[瞬発力発生装置の動作]
次に、瞬発力発生装置の一実施形態である跳躍ロボット1の動作について、図1〜図5を参照して説明する。
図2は、跳躍ロボット1の弾性体3に飛び移り座屈が生じる直前の状態を示す斜視図である。図3は、跳躍ロボット1の弾性体3に飛び移り座屈が生じて瞬発力を発生させた状態を示す斜視図である。図4及び図5は、跳躍ロボット1の動作を説明する形状遷移図である。
【0033】
図4Aは、図1に示す状態の跳躍ロボット1を側方から見た説明図である。
図1及び図4Aに示す状態では、弾性体3が上方に凸となるアーチ状になっており、弾性体3に弾性エネルギが蓄えられている。このとき、フレーム部材2は、弾性体3の弾性エネルギによる反発力によって弾性変形しない。
【0034】
図1及び図4Aに示す状態から駆動部材4のモータが回転駆動すると、クランク部材21が矢印L方向(図4A参照)へ回転する。このとき、クランク部材21の係合ピン21cがフレーム部材2の係合溝14aに係合しているため、駆動部材4が矢印R1方向へ回動する。これにより、弾性体3は、全体として略S字形状に撓み、弾性体3に蓄えられる弾性エネルギが増加する。
【0035】
図4Bは、図2に示す状態の跳躍ロボット1を側方から見た説明図である。
図2及び図4Bに示すように、駆動部材4が矢印R1方向へ回動すると、弾性体3は、全体として略S字形状に撓み、弾性体3に蓄えられる弾性エネルギが増加する。つまり、弾性体3に蓄えられる弾性エネルギは、弾性体3における曲線の曲率半径が小さくなるほど大きくなる。
【0036】
一方、駆動部材4を回動させるには、弾性体3の弾性エネルギによる反発力に抗するトルクが必要になる。駆動部材4のトルクが小さければ、飛び移り座屈が生じるまで弾性体3を弾性変形させることができない。
そこで、跳躍ロボット1では、弾性体3に蓄えられた弾性エネルギが所定値以上になると、飛び移り座屈が生じる前に、弾性体3の弾性エネルギによってフレーム部材2が弾性変形する。
【0037】
図6は、弾性体3に蓄えられた弾性エネルギによってフレーム部材2が弾性(撓み)変形した状態の例を示している。
図6に示すように、フレーム部材2は、左側部片13及び右側部片14における前部片11に接続された端部が左右方向に変位するように撓み、且つ、前部片11が支持軸15に対して傾くように弾性変形する。これにより、弾性体3の前部片11に固定された一端(一方の短辺)は、駆動部材4に固定された他端(他方の短辺)に対して傾斜する。
【0038】
その結果、弾性体3の一方の長辺における曲線の曲率半径が小さくなり、他方の長辺における曲線の曲率半径が大きくなる。つまり、弾性体3の一方の長辺が急な曲線になり、他方の長辺が緩やかな曲線になる。そして、弾性体3の他方の長辺側に蓄えられた弾性エネルギが減少する。
【0039】
これにより、駆動部材4のトルクを小さく設定しても、弾性体3の弾性エネルギによる反発力に抗するトルクを確保することができ、飛び移り座屈が生じるまで弾性体3を弾性変形させることができる。その結果、駆動部材4を小型化することができ、跳躍ロボット1の小型化・軽量化を図ることができる。
【0040】
図4Cは、図3に示す状態の跳躍ロボット1を側方から見た説明図である。
図3及び図4Cに示すように、駆動部材4が矢印R1方向へさらに回動すると、弾性体3に飛び移り座屈が生じる。これにより、弾性体3は、略S字状から下方に凸となるアーチ状へと瞬間的に変形して瞬発力を発生する。このとき、弾性体3に発生した瞬発力は、弾性体3から地面に伝達され、跳躍ロボット1の跳躍力となる。
【0041】
このように、跳躍ロボット1では、フレーム部材2が弾性変形することにより、弾性体3に蓄えられた弾性エネルギを僅かに減少させる。そのため、駆動部材4のトルクを小さくしても弾性体3に飛び移り座屈を生じさせることができ、効率よく瞬発力を発生させることができる。
【0042】
また、弾性体3に飛び移り座屈を生じると、弾性変形していたフレーム部材2が元の形状に戻る。このとき、フレーム部材2に蓄えられていた弾性エネルギが弾性体3の瞬発力に付加される。したがって、予め弾性変形後の形状であって、且つ、弾性変形不可能に形成したフレーム部材を用いた場合よりも、得られる瞬発力を大きくすることができる。
【0043】
図5Aは、弾性体3に飛び移り座屈が生じた後に駆動部材4の回動する方向が逆になる状態の跳躍ロボット1を側方から見た説明図である。
図4Cに示す状態からクランク部材21が矢印L方向へさらに回転すると、駆動部材4は、矢印R1方向へ回動する。そして、図5Aに示すように、クランク部材21のアーム部21bが係合溝14aに略垂直な姿勢になると、駆動部材4は、矢印R1方向とは逆方向である矢印R2方向へ回動する。このとき、弾性体3は、下方に凸となる緩やかなアーチ状になっている。
【0044】
図5Bは、図5Aに示す状態から駆動部材4が矢印R2方向へ回動した状態の跳躍ロボット1を側方から見た説明図である。
図5Aに示す状態から駆動部材4が矢印R2方向へ回動すると、図5Bに示すように、クランク部材21のアーム部21bが係合溝14aに略平行な姿勢になる。このとき、弾性体3は、下方に凸となるアーチ状を維持しながら曲線の曲率半径が小さくなる。
【0045】
図5Cは、図5Bに示す状態から駆動部材4が矢印R2方向へさらに回動した状態の跳躍ロボット1を側方から見た説明図である。
図5Bに示す状態から駆動部材4が矢印R2方向へさらに回動すると、図5Cに示すように、クランク部材21のアーム部21bが係合溝14aに略垂直な姿勢になる。つまり、クランク部材21は、図5Aに示す状態から略180度回転する。
【0046】
クランク部材21のアーム部21bが係合溝14aに略垂直な姿勢になると、駆動部材4は、矢印R2方向とは逆方向である矢印R1方向へ回動する。
一方、弾性体3は、図5Bに示す状態から図5Cに示す状態になるまでの間に、上方に凸となるアーチ状に変形する。このとき、弾性体3に飛び移り座屈が生じてもよい。
【0047】
上方に凸となるアーチ状に変形する直前の弾性体3は、下方に凸となるアーチ状である。そのため、上方に凸となるアーチ状に変形する直前に弾性体3に蓄えられる弾性エネルギは、下方に凸となるアーチ状に変形する直前に弾性体3に蓄えられる弾性エネルギよりも小さい。したがって、上方に凸となるアーチ状に変形するときに弾性体3に発生する瞬発力は、下方に凸となるアーチ状に変形するときに弾性体3に発生する瞬発力よりも小さくなる。
【0048】
図5Cに示す状態から駆動部材4が矢印R1方向へ回動すると、跳躍ロボット1は、図1及び図4Aに示す状態に戻る。
このように、跳躍ロボット1は、クランク部材21及び係合溝14aからなる揺動スライダクランク機構により、モータ(不図示)における回転軸の回転を駆動部材4の揺動(所定の範囲内の回動)に変換する。その結果、モータの回転方向を制御しなくても、弾性体3に断続的に飛び移り座屈を生じさせることができ、適当な周期で瞬発力を繰り返し発生させることができる。
【0049】
以上、本発明の瞬発力発生装置及び瞬発力発生方法の実施の形態について、その作用効果も含めて説明した。しかしながら、本発明の瞬発力発生装置及び瞬発力発生方法は、上述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0050】
上述の実施の形態では、弾性体3の長手方向の一端を固定した前部片11が支持軸15に対して傾くようにフレーム部材2を弾性変形させた。その結果、弾性体3に蓄えられている弾性エネルギの一部を開放し、駆動部材4のトルクを小さく設定しても、弾性体3の弾性エネルギによる反発力に抗するトルクを確保することができる。
【0051】
しかしながら、フレーム部材2(固定部材)の弾性変形は、上述の変形に限定されるものではなく、弾性体3に蓄えられている弾性エネルギの一部を開放するような変形であれば、適宜変更可能である。
例えば、弾性体3の長手方向の一端と他端が相対的に離れるようにフレーム部材2を弾性変形させてもよい。具体的には、フレーム部材2の左側部片13及び右側部片14が長手方向に伸びるようにフレーム部材2を構成してもよい。
【0052】
弾性体3の長手方向の一端と他端が相対的に離れる場合であっても、弾性体3に蓄えられている弾性エネルギの一部を開放することができる。そのため、駆動部材4のトルクを小さく設定しても、弾性体3の弾性エネルギによる反発力に抗するトルクを確保することができる。
【0053】
なお、弾性体3の長手方向の一端と他端が相対的に離れる場合は、弾性体3の長手方向の一端が支持軸15に対して傾く場合よりも、開放される弾性エネルギの量が多い。したがって、弾性体3の長手方向の一端を固定した前部片11が支持軸15に対して傾くようにフレーム部材2を弾性変形させる方が好ましい。
【0054】
また、フレーム部材2(固定部材)の変形は、上述した2つの変形が同時に生じるような弾性変形であってもよい。
【0055】
また、上述の実施の形態では、弾性体の長手方向の一端を固定し、且つ、駆動部材を回動可能に支持する固定部材として、略長方形の枠体からなるフレーム部材2を採用した。しかしながら、本発明に係る固定部材の形状は、枠体に限定されるものではなく、弾性体3に蓄えられている弾性エネルギの一部を開放するように弾性変形するものであれば、適宜変更可能である。
【0056】
本発明に係る固定部材は、少なくとも弾性体の長手方向の一端を固定する固定部分と、駆動部材を回動可能に支持する支持部分と、これら固定部分と支持部分を連結する連結部分を備えていればよい。
【0057】
また、上述の実施の形態では、フレーム部材2が後部片12と支持軸15を備える構成としたが、後部片12を削除することもできる。その場合は、支持軸15が後部片としての役割を兼ねる。
【0058】
また、上述した実施の形態では、フレーム部材2の前部片11、後部片12、左側部片13及び右側部片14を同一の材料によって形成した。しかしながら、本発明に係る固定部材としては、2以上の材料を連結して形成することもできる。
例えば、弾性体3に蓄えられた弾性エネルギにより弾性変形する材料と、弾性変形しない材料を組み合わせることで固定部材を形成してもよい。
【0059】
また、上述した実施の形態では、瞬発力発生装置及び瞬発力発生方法の具体例として跳躍ロボット1を適用した例を説明したが、これに限定されるものではない。本発明に係る瞬発力発生装置及び瞬発力発生方法としては、例えば、プレス装置の加圧機構、対象物に高加速度を加えて投擲するカタパルト装置等の一定方向の瞬発力が求められる装置に適用できる。
【符号の説明】
【0060】
1…跳躍ロボット(瞬発力発生装置)、 2…フレーム部材(固定部材)、 3…弾性体、 4…駆動部材、 11…前部片、 12…後部片、 13…左側部片、 14…右側部片、 14a…係合溝、 15…支持軸、 17…外装体、 17a…固定部、 17b,17c…部、 18…接続ブラケット、 21…クランク部材、 21a…回転部、 21b…アーム部、 21c…係合ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の弾性体と、
前記弾性体の一端を固定する固定部材と、
前記固定部材に回動可能に取り付けられ、前記弾性体の他端が固定される駆動部材と、を備え
前記駆動部材の回動により前記弾性体が撓んで、前記弾性体に蓄えられた弾性エネルギが所定値以上になると、前記固定部材が前記弾性体の弾性エネルギによって弾性変形し、その後の前記駆動部材の回動により前記弾性体に飛び移り座屈を生じさせ、前記弾性体に蓄えられた弾性エネルギを開放して瞬発力を発生させる瞬発力発生装置。
【請求項2】
前記固定部材は、前記弾性体の一端が前記駆動部材の回転軸に対して傾くように弾性変形する請求項1に記載の瞬発力発生装置。
【請求項3】
前記固定部材は、前記弾性体の一端と他端とが相対的に離れるように弾性変形する請求項1又は2に記載の瞬発力発生装置。
【請求項4】
前記固定部材は、枠状に形成されている請求項1〜3のいずれかに記載の瞬発力発生装置。
【請求項5】
帯状の弾性体の一端を固定する固定部材に回動可能に取り付けられ、且つ、前記弾性体の他端が固定された駆動部材を回動させて前記弾性体を撓ませ、
前記弾性体に蓄えられた弾性エネルギが所定値以上になると、前記弾性体の弾性エネルギによって固定部材を弾性変形させて前記駆動部材のさらなる回動を可能にし、
前記弾性体に飛び移り座屈を生じさせることにより、前記弾性体に蓄えられた弾性エネルギを開放して瞬発力を発生させる瞬発力発生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−137143(P2012−137143A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289887(P2010−289887)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(504171134)国立大学法人 筑波大学 (510)
【出願人】(304021277)国立大学法人 名古屋工業大学 (784)
【Fターム(参考)】