説明

矢板を相互連結する連結形材

【課題】矢板を相互連結するための連結部材に生じる、曲げ応力とねじり応力を低減させる連結部材を提供する。
【解決手段】連結形材10は中央帯板14を具備し、2枚の矢板12の止め金部分30を左右逆さに引っ掛けるための同一の2個のフック16が、中央帯板14から互いに反対向きの主接続方向X,Yに突出し、フック16のフック部分24は互いに左右逆さに延在している。その結果、両フック16のフック部分24に係合する止め金部分30が主接続方向X,Yに沿って互いに最大軸方向間隔を有するときに、連結形材10に取付けられた矢板12の主接続方向X,Yが共通の一平面E内にほぼ延在するように、両フック16が中央帯板14上で互いにずれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中央帯板を具備し、2枚の矢板の止め金部分を左右逆さに引っ掛けるための同一の2個のフックが、中央帯板から互いに反対向きの主接続方向突出し、それらフックのフック部分が互いに左右逆さに延在している、矢板を相互連結するための一定横断面の連結形材に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の連結形材は、従来技術、例えば特許文献1から知られている。このような連結形材は特に、直線に沿って互いに連結される複数の矢板から矢板壁が構築されるときに、互いに連結すべき矢板壁部分の間に発生し得る位置ずれを補正するために使用される。
【特許文献1】DE 103 18 769 A1
【0003】
そのために、連結形材は互いに左右逆さに延在する2つの同一のフックを備えている。このフックには、互いに直接連結すべき矢板の止め金部分が引っ掛けられる。矢板の主接続方向、すなわち止め金部分が揺動しないでフックに引っ掛けられるときの矢板の延在方向は、互いに反対向きである。止め金部分が連結形材のフック内で揺動することにより、連結形材は位置のずれを補正する。
【0004】
公知の連結形材の場合には、フックの左右逆さの配置により、引っ掛けられた止め金部分によって生じて主接続方向に沿って作用する引張り力が、互いに離隔させるように連結形材に作用し、また、大きな曲げ応力およびねじり応力を連結形材に生じ、連結形材がこの曲げ応力およびねじり応力を受け止めなければならないという問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この従来技術から出発して、本発明の課題は、連結形材で生じる曲げ応力とねじり応力が低減される連結形材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、請求項1記載の特徴を有する連結形材、特に両フックのフック部分に係合する止め金部分が主接続方向に沿って互いに最大軸方向間隔を有するときに、連結形材に取付けられた矢板の主接続方向が共通の一平面内にほぼ延在するように、両フックが中央帯板上で互いにずれている連結形材によって解決される。
【0007】
本発明による連結形材の構成により、連結形材が引張り応力を実質的に受けるように、フックに引っ掛けられた止め金部分によって生じる保持力が連結形材に伝達される。引張り力が共通の一平面内で作用するので、本発明による連結形材の場合には、従来技術の場合に発生するねじり応力と曲げ応力が回避されるか少なくとも低減される。連結形材における改善された応力変化により、連結形材はそれに作用する大きな保持力に耐えることができるかあるいは小さく採寸および設計することができる。
【0008】
本発明の他の効果は、以下の説明、図面および従属請求項から明らかである。
【0009】
本発明による連結形材のきわめて有利な実施例では、矢板に対して所定の位置に連結形材を保持するために、両フックの一方を越えて中央帯板を延長して、フック帯板として形成することが提案される。この実施例の場合、フック帯板はその自由端にフック状の接続部分を備え、この接続部分は、一方のフックの方に向き、そのフック部分の自由端は、上記の接続部分から離れる方向に向いている。好ましくは両主接続方向に対して直角な方向に延在するこの付加的なフック帯板には、例えば他の矢板あるいはT字形支持体、ダブルT字形支持体、パイプ杭または類似の支持要素のような支持要素に固定された接続形材が取付けられる。
【0010】
取付けられる矢板または接続される支持要素をできるだけ確実に保持するために、付加的なフック帯板の接続部分の横断面は好ましくはくさび状に広がっている。
【0011】
その際、フック帯板が両フックと共に、矢板または接続形材を取付けるための所定の止め金部分を形成していると特に有利である。上記の実施例のきわめて有利な発展形態では、フック帯板と、接続部分と、接続部分寄りのフックの平らな側面とが、ラルゼン(Larssen)形止め金部分を形成している。これにより、フックは2つの機能を発揮する。一方では、フックは主接続方向に沿って矢板を取付ける働きをする。他方では、当該のフックは他の止め金部分の構成部材としての働きをする。この他の止め金部分には、例えば他の矢板のラルゼン形止め金部分を引っ掛けることができる。
【0012】
その代わりに、一方のフックがフック部分とは反対側のその側面に、平らな溶接側面を備えていることにより、本発明による連結形材は溶接形材として形成可能である。連結形材はダブルT字形支持体またはパイプ杭のような適当な支持要素または隣接する矢板に溶接可能である。両フックが溶接面を備え、それによって連結形材の溶接時に連結形材の組込み位置に留意しなくてもよいようにすると有利である。これによって、支持要素における連結形材の予備組み立てが一層簡単になる。
【0013】
きわめて有利な実施例では、連結形材はいわゆるラルゼン形止め金部分を有する矢板を互いに連結するように設計されている。そのために、各フックは中央帯板に対してほぼ直角に延在するほぼ真っ直ぐな接続部分を備え、この接続部分はフック部分に接続している。フック部分はほぼ180°にわたって弧状に延在しているので、その自由端は中央帯板の方に向き、かつこの中央帯板と共に止め金部分を引っ掛けるためのくわえ口を形成している。フックの両くわえ口は互いに反対方向に向いている。このように形成されたフックは一方では、上記のラルゼン形止め金部分を確実にかつ問題なく引っ掛けるために適しており、他方ではフック内でのラルゼン形止め金部分の十分な揺動運動を可能にする。
【0014】
フックに作用する力が特に接続部分と中央帯板の間の移行部分に曲げモーメントを生じるので、連結形材の特にこの移行部分を頑丈に形成することが提案される。そのために、両フックの少なくとも一方の接続部分の、内室とは反対側の、外側に向いた側面は、中央帯板の縦方向端部に面一に接続するように形成されている。これにより、移行部分の範囲における材料の肉盛りが達成され、大きな応力を受けるこの部分においてフックに大きな強度が与えられる。
【0015】
フックに作用する引張り応力を中央帯板に良好に伝達できるようにするために更に、中央帯板が曲率半径をなして接続部分に接続するように、各フックの内室が形成されている。この形状により、一方では引張り応力が妨害されることなく中央帯板に伝達され、他方では接続部分と中央帯板の間の移行部分に材料肉盛りが形成され、この材料肉盛りによって、大きな応力を受けるこの部分において連結形材の強度が高められる。
【0016】
更に、各フックの内室の横断面を楕円形に形成することが提案される。それによって、フックに引っ掛けられるラルゼン形止め金部分がフック内でできるだけ大きな範囲にわって往復揺動することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、図を参照して2つの実施の形態に基づき、本発明を詳細に説明する。
【0018】
図1は、2つの主接続方向X,Yに沿って2枚のラルゼン(Larssen)形矢板12を互いに連結するための本発明による連結形材10の第1の実施の形態の平面図である。
【0019】
連結形材10は中央帯板14を有する。この中央帯板には、同一に形成された2個のフック16が設けられている。各フック16は中央帯板14の平らな側面に対してほぼ直角に延在するほぼ真っ直ぐな接続部分18を有する。この接続部分18の外向きの側面は平らであり、中央帯板14の縦方向端部に面一に接続している。内室20を画成する接続部分18の側面は、曲率半径22をなして中央帯板14の平らな側面に接続している。この形状により、一方では接続部分18と中央帯板14の間の接続部の強度が高められ、他方ではフック16に作用する力が中央帯板14に均一に伝達される。
【0020】
接続部分18は更に、フック部分24に連続している。このフック部分は180°にわたって弧状に延在し、図示した実施の形態では一定の半径を有する。すなわち、半円をなしている。フック部分24の自由端26は、接続部分18の長さに亘って、中央帯板14から離隔して配置され、この中央帯板と共にくわえ口28を形成している。このくわえ口には矢板12のラルゼン形止め金部分30が引っ掛けられる。ラルゼン形止め金部分30がフック16から外れないようにするために、くわえ口28の幅はラルゼン形止め金部分30の幅よりも幾分狭くなっている。両フック16が左右逆さに中央帯板14に設けられているので、フック16のくわえ口28は互いに反対の方向に開放している。
【0021】
図1に更に示すように、両フック16は互いにずらして中央帯板14に形成されている。両フックの間のこのずれは次のように選定されている。すなわち、ラルゼン形止め金部分30がフック16に正しく引っ掛けられ、矢板12がその主接続方向X,Y方向に延在するときに、連結形材10に取付けられる両矢板12の主接続方向X,Yが共通の一平面E内に延在するように選定されている。これは、ラルゼン形止め金部分30の先細のくさび状のラルゼン形フック32がフック16のフック部分24に引っ掛けられ、ラルゼン形止め金部分30が図1に示すように主接続方向X,Y方向において最大軸方向間隔を有する場合である。
【0022】
これにより、矢板12によって連結形材10に作用する力が、付加的な曲げモーメントを連結形材10に発生せずに、引張り力として連結形材10に作用し、矢板12が同時に主接続方向X,Yに沿った共通の線内に延在する。
【0023】
接続部分18の外向きの側面を平らに形成することにより、連結形材10を溶接形材として使用するときに、この接続部分の側面を同時に接触面として使用することができる。連結形材を溶接形材として使用するためには、連結形材10の平らな接続部分18だけを、支持要素、例えばT字形支持体、ダブルT字形支持体、パイプ杭等に、あるいは矢板の平らな側面にあてがい、接続部分18の縦方向端部に沿って支持要素または矢板に溶接する。
【0024】
図2には、本発明による連結形材40の第2の実施の形態が示してある。この連結形材40は、中央帯板42が両フック44の一方を越えて延長することによりフック帯板46を形成している点だけが、図1に示した連結形材10と異なっている。フック帯板46は矢板12の主接続方向X,Yに対してほぼ直角に延在している。
【0025】
連結形材40のその他の形状、例えば両フック44の形状、中央帯板42上における両フックのずらし配置は、前述の連結形材10の形状に一致している。連結形材40に取付けられる両矢板12の主接続方向X,Yは同様に、共通の平面E内に延在している。
【0026】
フック帯板46の端部は、直角に曲げられてくさび状に拡げられた接続部分48を備えている。その際、接続部分48はフック44の方向に向いている。フックのくわえ口は接続部分48とは反対側にある。接続部分48と、フック帯板46の長さと、接続部分48寄りのフック44の側面は、それらが共通の1つのラルゼン形止め金部分を形成するように採寸されている。
【0027】
図3には、3つの矢板壁部分50,52,54からなる構造体で使用された図2の連結形材40を示している。この場合、共通の線上に配置された矢板壁部分50,52の矢板12が両フック44に引っ掛けられ,一方、第3の矢板壁部分54の矢板12が、フック帯板46に設けた接続部分48に係合している。
【0028】
それによって、連結形材40は他の両矢板壁部分50,52に対して所定の位置に保持される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】2枚の矢板を取付けた本発明による連結形材の第1の実施の形態の平面図である。
【図2】ラルゼン形止め金部分としての働きをするフック帯板を付加した、本発明による連結形材の第2の実施の形態の平面図である。
【図3】図2に示した連結形材が3つの矢板壁部分を連結するために使用されている、ラルゼン形U型矢板からなる3つの矢板壁部分の構造体の平面図である。
【符号の説明】
【0030】
10 連結形材
12 矢板
X 接続方向
Y 接続方向
14 中央帯板
16 フック
18 接続部分
20 内室
22 半径
24 フック部分
26 自由端部
28 くわえ口
30 ラルゼン形止め金部分
32 ラルゼン形フック
40 連結形材
42 中央帯板
44 フック
46 フック帯板
48 接続部分
50 矢板壁部分
52 矢板壁部分
54 矢板壁部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央帯板(14;42)を具備し、2枚の矢板(12)の止め金部分(30)を左右逆さに引っ掛けるための同一の2個のフック(16;44)が、前記中央帯板から互いに反対向きの主接続方向(X,Y)に突出し、フック(16;44)のフック部分(24)が互いに左右逆さに延在している、矢板を相互連結するための一定横断面の連結形材において、
両フック(16;44)のフック部分(24)に係合する止め金部分(30)が主接続方向(X,Y)に沿って互いに最大間隔を有するときに、連結形材(10;40)に取付けられた矢板(12)の主接続方向(X,Y)が共通の一平面(E)内にほぼ延在するように、両フック(16;44)が中央帯板(14;42)上で互いにずれていることを特徴とする連結形材。
【請求項2】
中央帯板(42)が両フックの内の一方のフック(44)を越えて延長して、フック帯板(46)を形成し、このフック帯板がその自由端にフック状の接続部分(48)を備え、この接続部分が上記一方のフック(44)の方に向き、そのフック部分の自由端が接続部分(48)から離れる方向に向いていることを特徴とする請求項1に記載の連結形材。
【請求項3】
接続部分(48)の横断面がくさび状であることを特徴とする請求項2に記載の連結形材。
【請求項4】
フック帯板(46)と、接続部分(48)と、接続部分(48)寄りのフック(44)の平らな側面とが、ラルゼン形止め金部分を形成していることを特徴とする請求項2または3に記載の連結形材。
【請求項5】
一方のフックが自由端とは反対側のその側面に、平らな溶接側面を備えていることにより、連結形材が溶接形材としての働きをすることを特徴とする請求項1に記載の連結形材。
【請求項6】
各フック(16;44)が中央帯板(14;42)に対してほぼ直角に延在するほぼ真っ直ぐな接続部分(18)を備え、この接続部分がほぼ180°にわたって弧状に延在するフック部分(24)に接続し、このフック部分の自由端(26)が中央帯板(14;42)の方に向き、かつこの中央帯板と共に、止め金部分(30)を引っ掛けるためのくわえ口(28)を形成し、フック(16;44)の両くわえ口(28)が互いに反対方向に向いていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の連結形材。
【請求項7】
両フック(16;44)の少なくとも一方の接続部分(18)の、内室(20)とは反対側の、外側に向いた側面が、中央帯板(14;42)の縦方向端部に面一に接続していることを特徴とする請求項6に記載の連結形材。
【請求項8】
中央帯板(14;42)が各フック(16;44)の内室(20)に、曲率半径(22)をなして接続部分(18)に接続していることを特徴とする請求項6または7に記載の連結形材。
【請求項9】
各フック(16;44)の内室(20)の横断面が楕円形に形成されていることを特徴とする請求項6,7または8に記載の連結形材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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