説明

知識作成装置

【課題】 検査を行なうのに有効な特性指標を簡単に見つけるとともに、検査時に算出したその特性指標についての特徴量値と比較するための閾値を容易に設定することがでる知識作成装置を提供すること
【解決手段】 サンプルの波形データに対し、特徴量とパラメータの所定の組み合わせについて求めたそれぞれの特徴量値の集合であるプロファイルを記憶するプロファイル保存部11と、プロファイル保存部から読み出したプロファイルを、特徴量の軸とパラメータの軸からなる2軸の座標系で表示装置14に表示するプロファイル表示部13と、表示されたプロファイル中から選択された特徴量とパラメータの組み合わせで特定される特性指標についての特徴量値を特性指標値としてプロファイル保存部から抽出する特性指標値抽出部16と、抽出した特性指標値の分布状況をグラフ表示する特性指標値表示部18と、分布状況から閾値を設定する閾値操作部19と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、検査対象から取得した波形データに対し、その波形データの特徴を表す特徴量を演算して得られた特徴量演算結果に基づいて良否判定を行なう検査装置に設定するための、その良否判定を行なう際に使用する知識を求める知識作成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車や家電製品などには、モータが組み込まれた回転機器が非常に多く用いられている。例えば自動車を例にとってみると、エンジン,パワーステアリング,パワーシート,ミッションその他の至る所に回転機器が実装されている。また、家電製品は、冷蔵庫,エアコン,洗濯機その他各種の製品がある。係る回転機器が実際に稼働した場合、モータ等の回転に伴って音が発生する。
【0003】
係る音は、正常な動作に伴い必然的に発生するものもあれば、不良に伴い発生する音もある。不良に伴う異常音の発生原因は、ベアリングの異常,内部の異常接触,アンバランス,異物混入などがある。例えば、ギヤ1回転について1度の頻度で異常音が発生する原因は、ギヤの欠け,異物のかみ込み,スポット傷,モータ内部の回転部と固定部が回転中の一瞬だけこすれ合うことなどがある。また、人が不快と感じる音は、例えば人間の可聴範囲である20Hzから20kHzの中で様々な音がある。不快と感じる音の周波数の一例としては、例えば約15kHz程度のものがある。従って、係る所定の周波数成分の音が発生している場合も異常音となる。もちろん、異常音はこの周波数(15kHz)に限らない。
【0004】
係る不良に伴う音は、不快であるばかりでなく、さらなる故障を発生させるおそれもある。そこで、それら各製品に対する品質保証を目的とし、生産工場においては、通常検査員による聴覚や触覚などの五感に頼った「官能検査」を行ない、異常音の有無の判断を行なっている。具体的には、耳で聞いたり、手で触って振動を確認したりすることによって行なっている。ここで官能検査とは、人間の感覚器官が感知できる属性を人間の感覚器官そのものによっておこなう検査のことである。
【0005】
ところで、数年前から自動車に対する音品質の要求が急速に高くなってきている。すなわち、自動車業界では、エンジン,ミッション,パワーシートなどの車載駆動パーツの検査を定量的に自動検査するニーズが高まっており、従来から行なわれている検査員による上記の官能検査のように定性的で曖昧な検査ではそのニーズに応える品質を得ることができなくなってきている。
【0006】
そこで、係る問題を解決するため、定量的かつ明確な基準による安定した検査を目的とした異音検査装置が開発されている。この異音検査装置は、「官能検査」工程の自動化を目的とした装置であり、マイクロフォンで取得した音データから特徴量を抽出し、抽出した特徴量から異常の有無やその原因などを求めるものである。
【0007】
上記の異音検査装置は、検査を実行する際に使用する最適な特徴量の選択および特徴量演算用の諸パラメータの選択を行なう必要がある。その特徴量の選択などの知識を作成するための支援装置として、特許文献1に開示された装置がある。
【0008】
この特許文献1に開示された支援装置は、検査対象から取得した波形データに対し、設定された特徴量とパラメータの所定の組み合わせについて特徴量を演算して求められた演算結果を取得する。ついで、その取得した演算結果に基づき、設定された特徴量およびパラメータをそれぞれ縦軸と横軸にとったプロファイルを表示する。このとき表示されるプロファイルの各マスの領域は、縦軸,横軸の組み合せ毎の演算結果に対応した濃度で示される。このように、特徴量値を濃度で示すことで、ユーザはより濃度の濃い領域を簡単に見つけることができ、その領域に対応する特徴量、パラメータの組み合わせを見ることにより、検査対象から取得した波形データにとって最適な特徴量およびパラメータの組み合わせを得る。
【特許文献1】特開2006−3345号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1の装置を用いることで、ユーザは、知識作成に際して着目すべき特徴量とバラメータの組み合わせである特性指標を知ることかできる。しかし、係る組み合わせの特性指標がわかっても、ユーザはそれをノート等に記録し、判定ルールや閾値などの知識作成を別途行なう必要があり、時間がかかる。そして、有効な組み合わせを記録することと、それに基づいて知識を作成することは、それぞれ人手にて行なわれるので、ある確率で誤操作が発生する。
【0010】
プロファイルと特性指標と閾値の関係が複雑で、知識作成には波形に現れる異常の特徴や特徴量数値化アルゴリズム,ツールについて深い知識が必要とされ、誰もが容易に扱えることができない。
【0011】
この発明は、検査を行なうのに有効な特性指標を簡単に見つけるとともに、検査時に算出したその特性指標についての特徴量値と比較するための閾値を容易に設定することができる知識作成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明による知識作成装置は、検査対象から取得した波形データに対し、その波形データの特徴を表す特徴量を演算して得られた特徴量演算結果に基づいて良否判定を行なう検査装置に設定するための、その良否判定を行なう際に使用する知識を求める知識作成装置であり、サンプルの波形データに対し、特徴量とパラメータの所定の組み合わせについて求めたそれぞれの特徴量値の集合であるプロファイルを記憶するプロファイル保存手段と、そのプロファイル保存手段から読み出したプロファイルを、特徴量の軸とパラメータの軸からなる2軸の座標系で表示するプロファイル表示手段と、その表示されたプロファイル中から選択された特徴量とパラメータの組み合わせで特定される特性指標についての特徴量値を前記プロファイル保存手段から抽出する抽出手段と、その抽出手段で抽出した特徴量値の分布状況から閾値を設定する閾値設定手段と、を備える。抽出手段は、実施形態の特性指標抽出部16に対応する。閾値設定手段は、実施形態では主として閾値操作部19に対応する。
【0013】
特性指標を選択すると、その特性指標に関連する特徴量値(特性指標値)が読み出され、その分布状況がグラフで表示されるので、ユーザは表示された分布状況から視覚により良否を分離するための閾値を容易に認識し、設定することができる。特徴量とパラメータの組み合わせからなる特性指標と、設定する閾値との関係が知識作成装置側で自動的に関連付けることができる。よって、着目すべき特性指標を決めれば、短時間に知識作成ができるとともに、誤操作も生じにくい。更に、波形に現れる異常の特徴や特徴量数値化アルゴリズム、ツールについて深い知識がなくても容易に知識作成ができる。
【0014】
閾値設定手段は、抽出手段で抽出した特徴量値の分布状況をグラフ表示し、ユーザからの入力を受けて閾値設定ラインを表示し、さらに閾値設定ラインを移動させ、確定時の閾値設定ラインの位置から閾値を設定するようにしてもよい。
【0015】
閾値設定手段は、グラフ表示された分布状況のグラフ中に閾値設定ラインを表示し、ユーザからの入力を受けてその閾値設定ラインを移動させ、確定時の閾値設定ラインの位置から閾値を設定するものとした。閾値設定ラインの移動は、表示されたラインをドラッグすることなどにより行なうことができる。分布状況のグラフ中に閾値設定ラインを表示し、それを移動させることで、良否を分けるために適するライン(閾値)を視覚的に直感的に理解できるので、容易かつ性格に設定することができる。
【0016】
選択された特性指標と、閾値設定手段で設定された閾値と、を関連づけて知識候補ファイルとして記憶する記憶手段を備え、その記憶手段に格納された知識候補ファイルの一覧を表示し、ユーザが選択した知識候補ファイルを正規の知識ファイルとするとよい。記憶手段は、実施形態の知識保存部22に対応する。
【0017】
記憶手段に格納される知識候補ファイルは、異なる複数の特性指標に基づくものであり、その複数の特性指標に基づく知識候補ファイルの中から1または複数の正規の知識ファイルが選択されるものとすることができる。
【0018】
本発明において、「パラメータ」とは、与えられた波形データの特徴量の演算結果に影響を与えうる演算処理上の設定項目である。このパラメータは、特徴量との関係において、以下に示す2種類がある。1つ目は、特徴量を演算する前に計測波形に対して実施する前処理のためのパラメータである。このパラメータを変更した場合、計測波形が同じでも特徴量演算を行なう処理部に入力する波形が変化する。この前処理のパラメータとしては、フィルタの定数等がある。つまり、周波数フィルタの上下限値などを変えることで、そのフィルタを通過する周波数成分が異なるため、特徴量を演算する演算処理部に入力する波形が異なる。また、この前処理のパラメータとしては、フィルタの定数以外にも、波形変換処理における包絡線処理の平滑化データ個数など各種のものがある。
【0019】
2つ目は、特徴量演算そのもののパラメータである。つまり、特徴量演算の実行に必要なパラメータで、これにより特徴量演算を行なう処理部に入力される波形が同じでも、特徴量の演算結果が変化する。例えば、特徴量の対象周波数範囲指定や、特徴量と比較するしきい値等のパラメータがある。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、検査を行なうのに有効な特性指標を簡単に見つけるとともに、検査時に算出したその特性指標についての特徴量値と比較するための閾値を容易に設定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
まず、本発明の実施形態で、官能検査をする際に使用する特徴量およびパラメータ並びに判定閾値を含む知識ファイルを設定する対象となる検査装置を簡単に説明する。異音検査装置は、振動センサまたは音声マイクなどで取得した波形データに対し前処理を行なった後、1または複数の特徴量を演算し、求めた特徴量値と判定用の閾値とを比較し、良品/不良品の判断を行なうことを基本構成としている。
【0022】
その前処理としてのフィルタには、バンドパスフィルタ,ローパスフィルタ,ハイパスフィルタなど複数種類用意されるとともに、演算する特徴量も多数用意される。ここでは、前処理に用いるフィルタの種類(周波数)はパラメータとしている。
【0023】
検査装置の判定結果の正確さは、使用する特徴量やパラメータの組み合わせはもちろんのこと、判定用の閾値を適切に設定する必要がある。そこで、本実施形態の装置は、特徴量とパラメータの適した組み合わせを容易に見つけるとともに、その組み合わせにおける有効な閾値を設定するための情報を提供する機能を備えた。なお、ここでいう特徴量値は、特徴量演算をして得られた結果そのものはもちろんのこと、その特徴量演算結果を正規化した値も含む。
【0024】
図1は、本発明の知識作成装置の好適な一実施形態を示している。この知識作成装置10は、プロファイル保存部11に格納された波形のプロファイルや統計プロファイルを用いて、知識ファイルを作成する。本実施形態におけるプロファイルは、1または複数のサンプルの波形データに対し、予め設定した特徴量,パラメータの条件に基づき特徴量演算し、得られたそれぞれの特徴量値の集合である。
【0025】
このプロファイルは、例えば特許文献1(特開2006−3345号公報)に開示された支援装置を用いて作成することができる。また、このプロファイルは、1つの波形単位ごとに作成されたものでもよいし、同一グループを形成する複数の波形の特徴量値の平均等を求めた統計プロファイルでも良い。統計プロファイルは、良品の波形データに基づいて生成されたOKの統計プロファイルと、不良品の波形データに基づいて生成されたNGプロファイルとがある。さらに、OKの統計プロファイルとNGの統計プロファイルとの関係、たとえば、差分を求めたSN比のプロファイルもある。
【0026】
知識作成装置10は、上記のプロファイル保存部11に加え、プロファイル選択部12,プロファイル表示部13,表示装置14,特製指標選択部15,特性指標値抽出部16,特性指標記憶部17,特性指標値表示部18,閾値操作部19,閾値記憶部20,知識採用部21,知識保存部22並びに知識データベース24を備えている。
【0027】
プロファイル選択部12は、ユーザがプロファイル保存部11に格納されたプロファイルを選択するためのユーザインタフェースとなり、選択されたプロファイルの情報をプロファイル表示部13に送る。具体的には、プロファイル選択部12は、表示装置14にプロファイル保存部11に格納されたファイルをリストアップした選択画面を表示する。そして、ユーザは、選択画面中にリストアップされた1または複数のファイルの中から必要なファイルを選択(ポインティングデバイス等を操作してクリック)する。プロファイル選択部12は、選択されたプロファイルの情報として、ファイル名等のプロファイル本部11にアクセスするための情報をプロファイル表示部13に渡す。或いは、プロファイル選択部12がプロファイル保存部11に格納されたプロファイル(波形プロファイル,統計プロファイル)を読み出し、その読み出したプロファイル自体をプロファイル表示部13に渡すようにしても良い。
【0028】
プロファイル表示部13は、プロファイル選択部12から与えられた情報に基づいて取得したユーザが指定したプロファイルを表示装置13に表示する。すなわち、図2に示すように、プロファイル表示部13は、プロファイルを2軸の直交座標系上に表示するようにしている。図示の例では、縦軸を特徴量とし、横軸をパラメータとしているが、この組み合わせはプロファイルにより決定される。
【0029】
直交座標系の各交点のマスMは、対応する縦軸,横軸にそれぞれ割り付けられた条件で特徴量が演算され、算出された特徴量値の大きさに対応した濃淡で示される。図示の例では、特徴量値が大きいほど色が濃くなるように設定される。すなわち、特徴量値の最大から最小まで複数段階に分け、求めた特徴量値が最大の範囲に属する場合には、その領域は黒色となり、最小の範囲に属する場合には、その領域は白色となる。
【0030】
特徴量値の大小を濃淡で示しているため、ユーザは濃度の濃いマスMを簡単に見つけることができ、そのマスに対応するそれぞれの縦軸と横軸の値の組み合わせを見ることにより、対象の波形データにとって有効な特徴量・パラメータの組み合わせなどの条件を容易に見つけることができる。このように、マスMは、有効な特性の組み合わせ(特徴量×パラメータ)を見つけるための目印となることから、このマスMを、“特性指標”と称する。
【0031】
なお、本発明は、上記のように特徴量値の大小を濃淡で表すものに限ることはなく、表示色を変えたり、パターン・模様を替えたりするなど、視覚的に相違がわかるものであればよい。
【0032】
図3は、プロファイル表示部13により表示されプロファイルの一例を示している。図3(a)は複数の良品から得た波形データについての統計プロファイルであり、図3(b)は複数の不良品から得た波形データについての統計プロファイルである。それら図3(a),(b)は、同一の検査対象に対する良品と不良品の統計プロファイルであり、図3(c)はそれら両統計プロファイルの差分を採ったSN統計プロファイルである。図では、パラメータとしてバンドパスフィルタ番号が記載されており、各バンドパスフィルタ番号に対応して、それぞれ異なる通過帯域が設定されている。同様に、特徴量番号(図では、1から5)ごとに、所定の特徴量が割り付けられている。
【0033】
特性指標選択部15は、表示装置14に表示されたプロファイル中の任意の特性指標をユーザに選択させるためのユーザインタフェースとなり、選択された特性指標の情報を特性指標値抽出部16,特性指標記憶部17に送る。具体的には、特性指標選択部15は、ユーザによるポインティングデバイス等の操作により、表示されたプロファイル上で任意の特性指標を指定した状態でダブルクリックなどで選択された特性指標を認識する。そして、特製し表選択部15は、その認識した特性指標を特定する情報(特徴量とパラメータの組み合わせ等)を特性指標値抽出部16と特性指標記憶部17とに与える。特性指標記憶部17は、どの特性指標(どのマスM)が選択されたかを記憶する。
【0034】
また、本実施形態では、選択された特性指標は、図2(a)に示すようにプロファイル上に印Sが付けられる。この処理も特性指標選択部15が行なう。このように印Sを付することで、ユーザは、選択したものを確認することができ、誤操作が防止される。
【0035】
特性指標値抽出部16は、特製指標選択部15から与えられた情報に基づきユーザによって選択された特性指標に対応するプロファイルの特性指標値をプロファイル保存部11から読出す。つまり、特性指標値は、選択された特性指標についての特徴量値のことを意味する。この読み出したプロファイルの特性指標値は、特性指標値表示部18に渡される。
【0036】
特性指標値表示部18は、特性指標値抽出部16で読出した特性指標値の分布状況を、表示装置14に表示する。図4は、特性指標値表示部18が出力表示する特性指標値表示画面(グラフ)の一例である。この例では、横軸が各データのデータ番号で、縦軸がそのデータ番号で特定される製品(サンプル)についての特徴量値(特性指標値)である。
【0037】
この図中に表示される横方向に延びるラインは、閾値設定用ラインLであり、閾値操作部19の操作により上下移動する。閾値操作部19は、選択された特性指標についての良否判定をする際の閾値を設定する。具体的には、ユーザによるポインティングデバイス等の操作に基づき、グラフ上に表示された閾値設定用ラインLをドラッグすることで上下移動させ、確定時に閾値設定用ラインLが位置する値が、その特性指標についての閾値となる。この閾値設定用ラインLは、初期表示位置として例えば、特徴量値(特性指標値)の上下方向の中間位置等に表示される。
【0038】
閾値操作部19は、上記の閾値設定用ラインLの操作に伴う閾値の設定機能に加え、数値を直接入力する機能も備えている。係る直接の数値入力は、例えば図5に示すように、閾値入力領域R1を設け、その閾値入力領域R1に直接数値を入力したり、上下の三角形のマークをクリックして閾値入力領域R1に表示された数値を増減したりすることで行なうことができる。いずれの方法も、特性指標値表示画面に表示されたグラフを見ながらユーザが簡単に閾値を操作できる。この閾値入力領域R1に表示される数値と、閾値設定用ラインLの表示位置は、連動させると良い。
【0039】
図5に示すように、特性指標値表示画面の下方には、キャンセルボタンとマークボタンを設けている。キャンセルボタンがクリックされると、現在の閾値がクリアされ、初期位置に戻る。また、マークボタンをクリックすると、そのときの閾値設定用ラインL/閾値入力領域R1で特定される値が閾値として設定され、閾値記憶部20に格納される。また、特性指標値表示画面の上方には、表示している特性指標(特徴量×パラメータ)を特定する情報が表示される。
【0040】
知識採用部21は、ユーザの指示に従い特性指標とその閾値の組合せからなる知識について採用するか否かを決定し、採用する場合には、当該知識を知識データベース24に格納する。具体的には、閾値操作部19により閾値が設定される(図5に示すマークボタンがクリックされる)と、そのときの特性指標と閾値の情報等を関連づけたテーブルを作成し、知識保存部22に格納する。知識保存部22は、判定に有効と判断した特性指標と、その特性指標についての閾値を一時的に保存するものである。この一時的に保存した知識の中から、最終的に決定された知識が知識データベース24に格納される。
【0041】
この最終的な決定を行なうのは、ユーザである。すなわち、知識保存部22に格納されたデータは、図6等に示す知識見出表示画面に表示され、その表示された知識についての適否をユーザが選択する。具体的には、ユーザは正式に登録したい知識については、知識見出し表示画面上にリストアップされた知識をクリックして選択した状態でOKボタンをクリックし、ユーザは正式に登録したくない知識については、知識見出し表示画面上にリストアップされた知識をクリックして選択した状態でマークの削除ボタンをクリックする。知識採用部21は、どの知識が選択された状態で何のボタンがクリックされたかを認識し、該当する知識を知識データベース24へ登録したり、或いは該当する知識を知識保存部22からのデータから削除したりする処理を行なう。
【0042】
また、図6において、マーク番号は、レコード番号であり、閾値記憶部20でマークボタンがクリックされることで自動的に付与される。検査範囲は、取得した波形データ中の特徴量を抽出する範囲を特定するものである。範囲名は、ユーザが任意に設定する名称であり、例えば、特性指標と閾値とを含む知識を用いて良否判定を行なう対象をユーザが認識しやすくするためなどに使用される。
【0043】
本実施形態では、ある種類の製品についての良否判定を行なう際に使用する知識は、1つでも良いし複数でも良い。例えば、図5に示した特性指標値表示画面において、データ番号5,14,15を不良と判断し、残りを良品であると判断するような閾値は、図5に示すようにそれぞれを弁別できる閾値“5”を設定するような知識を用いることで良否判定を行なうことができる。
【0044】
これに対し、図7に示す特性指標値表示画面において、データ番号5,7,14,15を他と分離したい場合、1つの知識を用いただけではどのように閾値を設定しても好ましく分離することはできない。係る場合には、図7(a),(b)に示すように、異なる特性指標に対してそれぞれ適切な閾値を設定する。図では、共に閾値が“6”となっているが、異なる値を採ることはもちろんある。そして、知識としては、図7(a)に示す特性指標で求めた特徴量値と、図7(b)に示す特性指標で求めた特徴量値の少なくとも一方で閾値以上になった場合には不良と判断する(両方とも閾値未満の場合には良品と判断する)ものとする。
【0045】
また、知識保存部22へ一時的に保存するのではなく、閾値操作部19にて閾値を決定したならば、それにより確定される知識(特性指標,閾値)を知識データベース24に格納するようにしても良い。この場合には、知識保存部22が不要となり、また知識採用分21も見出表示画面を生成したり、“OK/削除”についての確認を促したりする必要が無くなり、知識データベース24への書き込み機能のみが必要となる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の好適な一実施形態を示す図である。
【図2】プロファイル表示手段で表示されるプロファイルの表示態様を説明する図である。
【図3】プロファイル表示手段で表示されるプロファイルの一例を示す図である。
【図4】特性指標値表示画面(グラフ)を示す図である。
【図5】特性指標値表示画面(グラフ)を示す図である。
【図6】知識見出表示画面の一例を示す図である
【図7】特性指標値表示画面(グラフ)を示す図である。
【図8】知識見出表示画面の一例を示す図である
【符号の説明】
【0047】
10 知識作成装置
11 プロファイル保存部
12 プロファイル選択部
13 プロファイル表示部
14 表示装置
15 特製指標選択部
16 特性指標値抽出部
17 特性指標記憶部
18 特性指標値表示部
19 閾値操作部
20 閾値記憶部
21 知識採用部
22 知識保存部
24 知識データベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象から取得した波形データに対し、その波形データの特徴を表す特徴量を演算して得られた特徴量演算結果に基づいて良否判定を行なう検査装置に設定するための、その良否判定を行なう際に使用する知識を求める知識作成装置であって、
サンプルの波形データに対し、特徴量とパラメータの所定の組み合わせについて求めたそれぞれの特徴量値の集合であるプロファイルを記憶するプロファイル保存手段と、
そのプロファイル保存手段から読み出したプロファイルを、特徴量の軸とパラメータの軸からなる2軸の座標系で表示するプロファイル表示手段と、
その表示されたプロファイル中から選択された特徴量とパラメータの組み合わせで特定される特性指標についての特徴量値を前記プロファイル保存手段から抽出する抽出手段と、
その抽出手段で抽出した特徴量値の分布状況から閾値を設定する閾値設定手段と、
を備えたことを特徴とする知識作成装置。
【請求項2】
前記閾値設定手段は、前記抽出手段で抽出した特徴量値の分布状況をグラフ表示し、ユーザからの入力を受けて閾値設定ラインを表示し、さらに閾値設定ラインを移動させ、確定時の閾値設定ラインの位置から閾値を設定するものであることを特徴とする請求項1に記載の知識作成装置。
【請求項3】
前記閾値設定手段は、前記抽出手段で抽出した特徴量値の分布状況をグラフ表示し、
前記抽出手段で抽出した特徴量値の統計量により仮閾値を設定してグラフ中に仮閾値ラインを表示し、ユーザによる仮閾値の変更および確定によって閾値を設定するものであることを特徴とする請求項1に記載の知識作成装置。
【請求項4】
前記選択された特性指標と、前記閾値設定手段で設定された閾値と、を関連づけて知識候補ファイルとして記憶する記憶手段を備え、
その記憶手段に格納された知識候補ファイルの一覧を表示し、ユーザが選択した知識候補ファイルを正規の知識ファイルとすることを特徴とする請求項1ないし3に記載の知識作成装置。
【請求項5】
前記記憶手段に格納される知識候補ファイルは、異なる複数の特性指標に基づくものであり、
その複数の特性指標に基づく知識候補ファイルの中から1または複数の正規の知識ファイルが選択されるものであることを特徴とする請求項4に記載の知識作成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−292189(P2008−292189A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−135527(P2007−135527)
【出願日】平成19年5月22日(2007.5.22)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】