説明

短い核酸のマルチプレックス増幅

本教示は、マイクロRNAのような小核酸の逆転写および増幅のための方法、組成物およびキットを提供する。高レベルのマルチプレックス化が、zipコード化されたフォワードプライマーを含む、PCRに基づくプレ増幅反応に加えて、zipコード化されたステムループ逆転写プライマーの使用によって、提供される。復号PCRの下流における検出プローブは、上記ステムループ逆転写プライマーによって導入されるzipコードを利用し得る。いくつかの実施形態においては、さらなる増幅が、逆転写反応をサイクリングさせることにより、達成される。本教示はまた、本明細書に記載の逆転写反応および増幅反応を行うために有用な組成物およびキットを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(分野)
本教示は、分子および細胞生物学の分野、特に短い核酸(例えば、マイクロRNA)のマルチプレックス増幅の分野中に存在する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
分子生物学における非常に多くの分野は、標的ポリヌクレオチド配列の同定を必要とする。逆転写および増幅は、標的ポリヌクレオチドの正体を尋ねるため(query)に用いられる、二つの頻繁に使用される手順である。ポストゲノミクス(post−genomics)時代において、科学者に利用可能な配列情報の量の増加は、複雑な核酸試料を尋ねるために、迅速な、信頼性のある、低コストで、高スループットであり、感度の高く、かつ正確な方法のための、増加した必要性を生み出した。細胞を規定および特徴付ける方法は、強固な増幅技術、および慣習的に分析された分子(例えば、メッセンジャーRNA)の分子の複雑さによって妨げられている。マイクロRNAは、細胞機能の理解において顕著な見込みを提供する、最近発見された分子クラスである。しかしながら、マイクロRNAの定量的分析は、これらの比較的短いサイズにより、妨げられている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
(要旨)
いくつかの実施形態においては、本教示は、短い標的核酸のそれぞれが18〜30ヌクレオチド長である、少なくとも300の異なる短い標的核酸を定量する方法を提供し、上記方法は、以下、上記少なくとも300の異なる短い標的核酸と、少なくとも300の異なる標的特異的ステムループ逆転写プライマーとを接触させる工程であって、ここで、上記少なくとも300のステムループ逆転写プライマーのそれぞれが、独特の3’標的特異的部分、独特のzipコード化ステム、およびループを含む、工程;上記少なくとも300のステムループ逆転写プライマーを、逆転写反応において伸長させ、逆転写産物の収集物を形成する工程;PCRに基づくプレ増幅産物の収集物を形成するために、逆転写産物の収集物に対し、PCRに基づくプレ増幅を行う工程であって、ここで上記PCRに基づくプレ増幅が、少なくとも300の異なるフォワードプライマーおよび少なくとも一つのリバースプライマーを含み、ここで上記リバースプライマーの配列が、少なくとも一つのステムループ逆転写プライマーのループと実質的に同じ配列、およびTm増大テイルを含む、工程;(この工程においては、少なくとも300の異なるフォワードプライマーのそれぞれが、i)特定の逆転写産物の配列の5’末端に相補的である3’標的特異的部分、およびii)特定の逆転写産物の配列に独特である5’zipコードテイルを含む);そして、PCRに基づくプレ増幅産物の収集物を、少なくとも300の異なる反応容器へ分割する工程;上記少なくとも300の異なる反応容器において復号PCRを行う工程であって、ここでそれぞれの復号PCRは、特定の標的核酸配列のための上記PCRに基づくプレ増幅反応におけるフォワードプライマーと実質的に同じ配列を含むフォワードプライマー、リバースプライマー、および検出プローブを含み、ここで上記検出プローブの配列は、i)特定のステムループ逆転写プライマーの3’ステム領域と同じである、少なくとも6核酸塩基の配列、およびii)特定のステムループ逆転写プライマーにより尋ねられる短い標的核酸に相補的である、少なくとも6核酸塩基の配列を含む、工程;上記少なくとも300の異なる反応容器において、検出プローブを検出する工程;ならびに、上記少なくとも300の異なる短い標的核酸を定量する工程を包含する。
【0004】
当業者は、以下に記載の図面が、例示的目的にすぎないことを理解する。図面は、決して、本教示の範囲を制限するとは意図されない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
(例示的な実施形態の記述)
本教示の局面は、以下の実施例を考慮してさらに理解され得る(あらゆる方法において、本教示の範囲は限定的に解釈されるべきではない)。本明細書で使用されるセクションの表題は、単に構成的目的のためであり、そしていかなる方法においても記述された主題を限定するとは解釈されない。本出願に引用されるすべての文献および類似の資料(特許、特許出願、記事、書籍、論文、およびインターネットのウエブページが挙げられるが、これらには限定されない)は、あらゆる目的のためにそれらの全体が、参考として明示的に援用される。援用された参考文献中の用語の定義が、本教示中に規定された定義と異なっている場合、本教示中の定義が統制する。わずかなそして実質のない偏差が、本明細書の教示の範囲内であるように、本教示中において、論議される温度、濃度、時間、などの前の含意された「約」が存在することが理解される。本出願において、別に具体的に述べられない限り、単数形の使用は複数形を含む。例えば、「プライマー」は、1より多いプライマーが、存在し得る(しかし存在する必要はない)ということを意味する;例えば、1コピー以上の特定のプライマー種のおよび1様式以上の特異的プライマー型(しかしこれらに制限されない)、例えば、複数の異なったフォーワードプライマー(しかしこれらに制限されない)。また、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(contain)」、「含む」(contains)、「含む(containing)」、「含む(include)」、「含む(includes)」、および「含む(including)」の使用は、制限を意図しない。前述の一般的な記述および次の詳細な記述の両方は、単に例示的および説明的であり、そして本発明の制限とはならないことを理解すべきである。
【0006】
(いくつかの定義)
本明細書中で使用される、用語「標的核酸」は、増幅および/または定量されることが求められるポリヌクレオチド配列を指す。上記標的ポリヌクレオチドは、あらゆる供給源から獲得し得、そしてかなり多数の異なった組成の構成部分を含み得る。例えば、上記標的は、核酸(例えば、DNAまたはRNA)、トランスファーRNA、siRNAであり得、そして核酸アナログまたは他の核酸模倣物(mimic)を含み得る(一般的には、上記標的は、メッセンジャーRNA(mRNA)および/またはマイクロRNA(miRNA)であるが)。上記標的は、メチル化され得るか、メチル化され得ないか、またはその両方をされ得る。上記標的は、ウラシルへ変換される、亜硫酸水素塩処理され、かつメチル化されていないシトシンであり得る。さらに、「標的ポリヌクレオチド」は、標的ポリヌクレオチドそのもの、およびその代用物(surrogate)(例えば、増幅産物)、ならびに本来の配列を指し得ることが理解される。いくつかの実施形態において、上記標的ポリヌクレオチドは、減成された供給源由来の短いDNA分子であり、このような標的ヌクレオチドは、例えば、法医学試料(例えば、Butler,2001,Forensic DNA Typing:Biology and Technology Behind STR Markersを参照のこと)(しかし、これらには制限されない)に存在し得る。本教示の標的ポリヌクレオチドは、任意の多数の供給源(限定するものではないが、ウイルス、原核生物、真核生物(例えば、植物、真菌、および動物(しかしこれらに制限されない))が挙げられる)に由来し得る。これらの供給源として、全血、組織バイオプシー、リンパ、骨髄、羊水、毛、皮膚、精液、生物戦争用薬品(biowarfare agent)、肛門分泌、膣分泌、発汗、唾液、頬側スワブ、種々の環境試料(例えば、農業、水、および土壌の試料)、一般的な研究試料、一般的な精製試料、培養細胞、溶解させた細胞を含み得るが、これらに制限されない。標的ポリヌクレオチドは、当該技術分野において公知である任意のいろいろな手順(例えば、Applied Biosystems ABI PrismTM 6100 Nucleic Acid PrepStation,およびABI PrismTM 6700 Automated Nucleic Acid Workstation、Boom et al.,米国特許第5,234,809号,mirVana RNA isolation kit(Ambion)、など)を使用し、試料から単離され得ることが理解される。標的ポリヌクレオチドは、分析より前に、切断または剪断され得る(機械的な力、超音波処理、制限エンドヌクレアーゼ切断、または当該技術分野で任意の公知の方法、のような手順の使用が挙げられる)ことが理解される。いくつかの実施形態においては、標的ポリヌクレオチドは二重鎖であり得、そして一本鎖は変性に起因し得るが、一般に、本教示の標的ポリヌクレオチドは一本鎖である。
【0007】
本明細書で使用される、用語「逆転写反応」は、伸長反応を指し、ここでは、ステムループプライマーの3’標的特異的部分は、伸長反応産物(標的ポリヌクレオチドに相補的な鎖を含む)を形成するために伸長させられる。いくつかの実施形態においては、標的ポリヌクレオチドは、miRNA分子であり、そして伸長反応は、逆転写酵素を含む逆転写反応である(ここでは、ステムループプライマーの3’末端が伸長させられる)。いくつかの実施形態においては、伸長反応は、真正細菌目の細菌由来のポリメラーゼを含む逆転写反応である。いくつかの実施形態においては、伸長反応は、rTthポリメラーゼ(例えば、Applied Biosystemsカタログ番号N808−0192、およびN808−0098として市販されている)を含み得る。いくつかの実施形態においては、上記標的ポリヌクレオチドは、miRNAまたは他のRNA分子であり、そして逆転写特性をまた含むポリメラーゼの使用が、最初の逆転写反応をさせ得、その後、同一の反応容器中においての、マルチプレックス(multi−plexed)PCRに基づくプレ増幅(pre−amplification)のような、増幅反応が続く。この方法により1つの反応容器中で2つの反応を統合させる。いくつかの実施形態においては、上記標的ポリヌクレオチドは、DNA分子であり、ならびに上記伸長反応は、ポリメラーゼを含みそしてDNAの相補鎖の合成に終わる。用語、逆転写はまた、鋳型DNA分子のDNA相補鎖(DNA complement)の合成を含む。同様に、逆転写産物は、逆転写反応において合成されるDNA分子であり得、したがって、このDNA分子は、上記鋳型へ相補的である。
【0008】
本明細書で使用される、用語「リバースプライマー」は、逆転写反応のような反応において伸長される場合に、相補鎖を形成するプライマーをいう。伸長反応に続いて、フォワードプライマーは、合成鎖にハイブリダイズし得、そして伸長され得る。いくつかの実施形態においては、ステムループ逆転写プライマーは、逆転写反応において最初のリバースプライマーとして作用する。その後は、ステムループプライマーによりコード化された2番目のリバースプライマーが用いられ得、そして2番目のリバースプライマーは、フォワードプライマーの伸長から生じる鎖にハイブリダイズし得る。多くのステムループ逆転写プライマーが、同一の配列または実質的に同一の配列をそのループ中に含む実施形態においては、PCRに基づく、プレ増幅反応において使用される逆転写プライマーを、ユニバーサルリバースプライマーと呼ぶ。このユニバーサルリバースプライマーは、一般的にループ配列およびTm増大テイル(enhancing tail)を含む。
【0009】
本明細書で使用される、用語「ハイブリダイゼーション」は、一つの核酸と別の核酸との、相補塩基対の相互作用をいい、これが、二本鎖DNA分子、三本鎖DNA分子(triplex)、または他の高度に規則正しい構造の形成をもたらし、そして、本明細書においては、「アニーリング」と交換可能に使用される。一般的には、ワトソン/クリック型およびフーグスティーン型の水素結合により、一次的な相互作用は塩基特異的である。(例えば、A/TおよびG/C)。塩基スタッキングおよび疎水性の相互作用はまた、二本鎖DNA分子の安定性に貢献し得る。相補的および実質上相補的な標的配列へのプライマーをハイブリダイズさせるための条件は周知であり、例えば、Nucleic Acid Hybridization,A Practical Approach,B.HamesおよびS.Higgins,編,IRL Press,Washington,D.C.(1985)ならびにJ.WetmurおよびN.Davidson,Mol.Biol.31:349以下参照(1968)に記載されている。一般的に、そのようなアニーリングが起こるかどうかは、数あるなかで、上記ポリヌクレオチドおよび上記相補鎖(complementary)の長さ、pH、温度、一価のまたは二価の陽イオン、ハイブリダイズする領域におけるGおよびCヌクレオチドの割合、媒体の粘性、および変性剤の存在によって影響される。そのような変項は、ハイブリダイゼーションに必要な時間に影響する。従って、好ましいアニーリング条件は、特定の応用に依存している。そのような条件は、しかしながら、過度の実験をすることなしに当業者によってごく普通に決定され得る。相補性は、完全である必要はなく;標的配列と、本教示の一本鎖核酸との間でのハイブリダイゼーションを最小限妨げる、少数の不適正塩基対があり得ることが理解される。しかしながら、最低限にストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションが起こり得ないほど不適正塩基対の数が多い場合、この配列は、一般的に、相補的標的配列ではない。このように、本明細書において、相補性とは、プライマーが、本教示の目的を達成するために、選択された反応条件の下で、ハイブリダイズする標的配列に十分に相補的であることを意味している。
【0010】
本明細書で使用される、用語「増幅する」は、標的ポリヌクレオチドおよび/または標的ポリヌクレオチド代用物(surrogate)の少なくとも一部が複製される任意の手段を指し、一般的には、鋳型依存性の様式によって、線形的または指数関数的のいずれかにより、核酸配列を増幅するための広範囲な技術を含んでいる(しかし、これらに制限されない)。いくつかの実施形態においては、例えば、米国特許第6,153,425号および同第6,649,378号中に記載されているように、試料の調製および検出を含む独立した統合されたアプローチによって、増幅は達成され得る。核酸の増幅は、可逆的に改変した酵素、例えば米国特許第5,773,258号に記載の酵素(しかし、これに制限されない)を使用し得る。本教示はまた、様々なウラシルに基づく除染戦略を企図する。ここで、例えば、ウラシルは増幅反応に組み込まれ得、そして続いて様々なグリコシラーゼ処理(例えば、Andersen et al.の米国特許第5,536,649号、および米国非仮出願特許出願第11/173,112号を参照のこと)で、繰越し汚染産物が取り除かれ得る。当業者は、所望の酵素活性を有する任意のタンパク質が、開示された方法およびキット中で使用され得ることを理解する。逆転写酵素、ウラシルN−グリコシラーゼなどを含む、DNAポリメラーゼの記載を、他の場所の中、Twyman,Advanced Molecular Biology,BIOS Scientific Publishers,1999;Enzyme Resource Guide,rev.092298,Promega,1998;SambrookおよびRussell;Sambrook et al.;Lehninger;PCR:The Basics;およびAusbel et alで見い出し得る。
【0011】
本明細書で使用される、用語「一致する」は、用語が指す要素間の、特定の関係を指す。一致する、のいくつかの例は以下を含む(しかし、これらに制限されない):リバースプライマーは、標的核酸と一致し得、同様に標的核酸は、リバースプライマーと一致し得る。フォワードプライマーは、標的核酸に一致し得、同様に標的核酸は、フォワードプライマーに一致し得る。
【0012】
本明細書で使用される、用語「反応容器」は一般的に、その中で、本教示にしたがう反応が起こり得る任意の容器を指す。いくつかの実施形態においては、反応容器は、エッペンドルフチューブであり得、そして現代の分子生物学の研究室での通常の実施における別の種類の容器であり得る。いくつかの実施形態においては、反応容器は、マイクロタイタープレート中のウエル、ガラススライド上のスポット、またはApplied Biosystems TaqMan Low Density Array for gene expression(以前は、MicroCardTM)中のウェルであり得る。例えば、多数の反応容器が、同一の支持体に存在する。いくつかの実施形態においては、例えばCaliperおよびFluidigmから市販されているラボオンチップ(lab−on−a−chip)様装置は、反応容器を提供し得る。いくつかの実施形態においては、Wenz et al.の米国本特許出願第11/059,824号に記載のように、様々なマイクロ流体アプローチが用いられ得る。様々な反応容器が当該技術分野において利用可能であり、そして本教示の文脈において使用され得ることを認める。
【0013】
本明細書で使用される、用語「PCRに基づくプレ増幅」は、複数のプライマーの組がマルチプレックスPCR増幅反応に含まれ、かつ、上記PCRに基づくプレ増幅反応が、PCRプラトーおよび/または試薬の枯渇より先に終結するように、上記マルチプレックス増幅反応が制限されたサイクル数を受ける、プロセスを指す。用語「PCRに基づくプレ増幅」は、PCRに基づくプレ増幅反応よりも、一般的により低い構成単位(lower−plexy)のレベルで2番目の増幅反応が、続いて行われることを示すと考えられ得る。この2番目の増幅反応、一般的に複数の別々の2番目の増幅反応は、マルチプレックスPCRに基づくプレ増幅反応中で使用されるプライマーによってコード化されるプライマーの組を使用し得る。しかしながら、2番目の増幅反応それぞれは、一般的に、1つまたは数個のプライマーの組を含む。PCRに基づくプレ増幅アプローチの例が、例えば、Xtranaの米国特許第6,605,451号、およびAndersen et al.の米国特許出願第10/723,520号中に見い出され得る。
【0014】
本明細書で使用される、用語「検出」は、標的ポリヌクレオチドの、存在および/または量および/または同一性を決定する、任意の様々な方法を指す。ドナー部分およびシグナル部分を使用するいくつかの実施形態においては、特定のエネルギーを移動させる蛍光色素を使用し得る。特定の、制限することにならない、例示的な、ドナー(ドナー部分)およびアクセプター(シグナル部分)の組は、例えば、米国特許番号第5,863,727号;同5,800,996号;および同5,945,526号中に例示されている。ドナーおよびアクセプターのいくつかの組み合わせの使用は、FRET(蛍光共鳴エネルギー移動)と呼ばれる。いくつかの実施形態においては、シグナリングプローブ(signaling probe)として使用され得るフルオロフォアとして、ローダミン、シアニン3(Cy 3)、シアニン5(Cy 5)、フルオレセイン、VicTM、LizTM、TamraTM、5−FamTM、6−FamTM、およびTexas Red(Molecular Probes)が挙げられる(しかし、これらに制限されない)。(VicTM、LizTM、TamraTM、5−FamTM、6−FamTM(すべてApplied Biosystems,Foster City,CAから購入可能である))。いくつかの実施形態においては、励起された光に応じて蛍光シグナルを与える検出プローブの量は、一般的に、増幅反応において産出される核酸の量と関連がある。従って、いくつかの実施形態においては、蛍光シグナルの量は、増幅反応において生成される産物の量と関連がある。このような実施形態においては、ゆえに、蛍光指示薬から蛍光シグナルの強度を測定することにより、増幅産物の量を測定し得る。いくつかの実施形態により、蛍光シグナルにより示される増幅産物を定量するための内部標準を使用し得る。例えば、米国特許第5,736,333号を参照のこと。蛍光指示薬を含んでいる組成物を用いるサーマルサイクリング反応を実行し得、特定波長の光線を放射し得、蛍光色素の強度を読み取る、そして、それぞれのサイクル後、蛍光の強度を表示し得る装置が開発された。サーマルサイクラー、光線放射器、および蛍光シグナル検出器を備える装置は、例えば、米国特許第5,928,907号;同第6,015,674号;および同第6,174,670号に記載されており、そしてこのような装置としては、ABI Prism(登録商標)7700 seqence Detection System(Applied Biosystem,Foster City,California)、ABI GeneAmp(登録商標)5700 seqence Detection System(Applied Biosystem,Foster City,California)、ABI GeneAmp(登録商標)7300 seqence Detection System(Applied Biosystem,Foster City,California)、およびABI GeneAmp(登録商標)7500 seqence Detection System(Applied Biosystems)が挙げられるが、これらには制限されない。いくつかの実施形態においては、これらの機能のそれぞれは、別々の装置によって実行され得る。例えば、もし、増幅のためQ−ベータレプリカーゼ反応を使用する場合、この反応はサーマルサイクラーにおいては起こり得ないが、特定波長で放射される光線、蛍光シグナルの検出、ならびに増幅産物の量の計算および表示を含み得る。いくつかの実施形態においては、組み合わせたサーマルサイクリングおよび蛍光検出装置が、試料中の標的の核酸配列の正確な定量のために用いられ得る。いくつかの実施形態においては、蛍光シグナルは、1以上のサーマルサイクルの間および/または後に、検出および表示され得、従って、反応が「リアルタイム」に起こっている時、増幅産物のモニタリングを可能にする。いくつかの実施形態においては、増幅前の試料中にどれだけの標的核酸配列が存在するか見積もるための、増幅産物の量および増幅サイクルの数を使用し得る。いくつかの実施形態においては、試料中の標的核酸配列の存在を示すために十分な、所定のサイクル数の後、増幅産物の量を単にモニタリングし得る。当業者は、任意の与えられた試料型、プライマー配列および反応条件について、与えられた標的ポリヌクレオチドの存在を決定するため、何サイクルが十分かを簡単に決定し得る。本明細書において使用されるように、標的の存在を決定することは、標的を同定し、そして必要に応じて標的を定量化することを含み得る。いくつかの実施形態においては、増幅産物は、与えられたサイクル数が完了するや否や、陽性または陰性として記録され得る。いくつかの実施形態においては、この結果は、電子的に直接データベースへ伝達され得、作表され得る。従って、いくつかの実施形態においては、このような機械が使用された場合、たくさんの試料が、より少ない時間および労力で処理されそして分析され得る。いくつかの実施形態においては、異なる検出プローブは、異なる標的ポリヌクレオチド間を、識別し得る。このようなプローブの制限されない例として、5’−ヌクレアーゼ蛍光プロープ(例えば、TaqMan(登録商標)プローブ分子)が挙げられる。ここでは、蛍光分子が、オリゴヌクレオチド結合要素を介して、蛍光消光分子に結びつけられている。いくつかの実施形態においては、5’−ヌクレアーゼ蛍光プロープのオリゴヌクレオチド結合要素(link element)は、同定する部分またはこの相補鎖(complement)の特定の配列に結合する。いくつかの実施形態においては、それぞれが異なる波長において蛍光を発する、異なる5’−ヌクレアーゼ蛍光プロープは、同じ増幅反応内における異なる増幅産物間を識別し得る。例えば、いくつかの実施形態においては、2つの異なる波長(WLおよびWL)において蛍光を発し、かつ2つの異なる伸長反応産物(A’およびB’のそれぞれ)の2つの異なる領域に特異的である、2つの異なる5’−ヌクレアーゼ蛍光プロープを使用し得る。増幅産物A’は、標的ポリヌクレオチドAが試料内に存在する場合に形成され、そして増幅産物B’は、標的ポリヌクレオチドBが試料内に存在する場合に形成される。いくつかの実施形態においては、増幅産物A’および/または増幅産物B’は、たとえ適切な標的ポリヌクレオチドが試料中に存在しなくても形成し得るが、このようなことは、上記適切な標的ポリヌクレオチドが試料中に存在する場合よりも、はっきりと、より少ない程度で起こる。増幅後、どの特定の標的核酸配列が試料中に存在しているか、検出されたシグナルの波長およびシグナルの強度に基づいて、決定し得る。従って、適切かつ検出可能な、波長WLのみのシグナル値が検出された場合、上記試料は、標的ポリヌクレオチドAを含むが、標的ポリヌクレオチドBを含まないことがわかる。適切かつ検出可能な、波長WLおよびWLのシグナル値が検出された場合、上記試料は、標的ポリヌクレオチドAおよび標的ポリヌクレオチドBの両方を含むことがわかる。いくつかの実施形態においては、検出は、様々なマイクロアレイおよび関連ソフトウェア、例えば、Applied Biosystems 1700 Chemiluminescent Microarray Analyzerを備えるApplied Biosystems Array System、および数あるなかでAffymetrix,Agilent,IlluminaおよびAmersham Biosciencesから利用可能な、別の市販アレイシステム(Gerry et al.,J.Mol.Biol.292:251−62,1999;De Bellis et al.,Minerva Biotec 14:247−52,2002;およびStears et al.,Nat.Med.9:140−45、増刊号を含む、2003をまた参照のこと)により達成され得る。検出は、反応産物に組み込まれている(標識されたプライマーの一部としてかまたは増幅の間の標識されたdNTPの組み込みのおかげのいずれか)レポーター基(reporter group)、あるいは反応産物へ付着させられている(例えば非限定例として、レポーター基を含むハイブリダイゼーションタグ相補鎖(complement)を媒介して、または反応産物に統合もしくは付着させたリンカーアーム(linker arm)を媒介して)レポーター基を含み得る、ということがまた理解される。例えば、質量分析を使用する、非標識化反応産物の検出はまた、本教示の範囲内にある。
【0015】
本明細書で使用される、用語「検出プローブ」は、一般的に、定量的またはリアルタイムPCR分析ならびに終点分析のための、増幅反応において使用される分子を指す。このような検出プローブは、標的マイクロRNA、ならびに/あるいは内因性のコントロール小核酸および/または合成の内部コントロールのような核酸コントロールの増幅をモニタリングするために使用され得る。いくつかの実施形態においては、増幅反応に存在する検出プローブは、時間の関数として生成されるアンプリコン(amplicon)(単数および複数)の量をモニタリングするのに適当である。このような検出プローブの限定されない例としては、5’−エキソヌクレアーゼアッセイ(本明細書に記載の、TaqMan(登録商標)プローブ(米国特許第5,538,848号をまた参照のこと))、様々なステムループ分子ビーコン(例えば、米国特許第6,103,476号および第5,925,517号ならびにTyagiおよびKramer,1996,Nature Biotechnology 14:303−308を参照のこと)、ステムレス(stemless)または線形ビーコン(例えば、WO第99/21881号を参照のこと)、PNA Molecular BeaconsTM(例えば、米国特許第6,355,421号および第6,593,091号を参照のこと)、線形PNAビーコン(例えば、Kubista et al.,2001,SPIE 4264:53−58を参照のこと)、非FRETプローブ(例えば、米国特許第6,150,097号を参照のこと)、Sunrise(登録商標)/Amplifluor(登録商標)プローブ(米国特許第6,548,250号)、stem−loop and duplex ScorpionTMプローブ(Solinas et al.,2001,Nucleic Acids Research 29:E96および米国特許第6,589,743号)、湾曲(bulge)ループプローブ(米国特許第6,590,091号)、シュードノット(pseudo knot)プロープ(米国特許第6,589,250号)、cyclicons(米国特許第6,383,752号)、MGB EclipseTMプローブ(Epoch Biosciences)、ヘアピンプローブ(米国特許第6,596,490号)、ペプチド核酸(PNA)ライトアップ(light−up)プローブ、自己集合したナノ粒子プローブ、および、例えば、米国特許第6,485,901号;Mhlanga et al.,2001,Methods 25:463−471;Whitcombe et al.,1999,Nature Biotechnology.17:804−807;Isacsson et al.,2000,Molecular Cell Probes.14:321−328;Svanvik et al.,2000,Anal Biochem.281:26−35;Wolffs et al.,2001,Biotechniques 766:769−771;Tsourkas et al.,2002,Nucleic Acids Research.30:4208−4215;Riccelli et al.,2002,Nucleic Acids Research 30:4088−4093;Zhang et al.,2002 Shanghai.34:329−332;Maxwell et al.,2002,J.Am.Chem.Soc.124:9606−9612;Broude et al.,2002,Trends Biotechnol.20:249−56;Huang et al.,2002,Chem Res.Toxicol.15:118−126;およびYu et al.,2001,J.Am.Chem.Soc 14:11155−11161に記載されているフェロセン−改変プローブが挙げられる。検出プローブはまた、クエンチャー(例えば、ブラックホールクエンチャー(Biosearch)、アイオワブラック(Iowa Black)(IDT)、QSYクエンチャー(Molecular Probes)、およびDabsylおよびDabcelスルホネート/カルボキシレートクエンチャー(Epoch)などが挙げられるが、これらに制限されない)を含み得る。検出プローブはまた、2つのプローブを含み得る。ここでは、例えば、蛍光体(fluor)は1つのプローブ上に存在し、クエンチャーはもう一方のプローブ上に存在しており、標的上での2つのプローブ一緒のハイブリダイゼーションは、シグナルを消光し、または標的上でのハイブリダイゼーションは、蛍光の変化を通して、シグナルのサインを変える。一方の分子がL−DNAであり、もう一方の分子がPNAである、2つのプローブを含む例示的検出プローブは、Lao et al.の米国非仮特許出願第11/172,280号中で見出され得る。検出プローブはまた、カルボキシレート基の代わりにSO3を有しているフルオレセイン(fluorescenin)色素のスルホネート誘導体、フルオレセインのホスホロアミダイト体、CY5のホスホロアミダイト体(例えば、Amershamから市販されている)を含み得る。いくつかの実施形態においては、エチジウムブロマイド、SYBR(登録商標)グリーンI(Molecular Probes)、およびPicoGreen(登録商標)(Molecular Probes)のような挿入標識が使用され、これによって、検出プローブの非存在下において増幅産物の、リアルタイムでのまたは終点での可視化を可能にしている。いくつかの実施形態においては、挿入検出プローブおよび配列に基づいた検出プローブの両方を含み得る、リアルタイムの可視化が使用され得る。いくつかの実施形態においては、上記検出プローブは、増幅反応において相補的配列にハイブリダイズしなかった場合、少なくとも部分的に消光させられ、そして増幅反応において相補的配列にハイブリダイズした場合、少なくとも部分的に消光させない。いくつかの実施形態においては、プローブはさらに、所望の熱力学特性をさらに提供するため、多様な改変(例えば、マイナーグルーブ(minor groove)結合剤)を含み得る(例えば、米国特許第6,486,308号を参照のこと)。いくつかの実施形態においては、検出プローブは、ステムループ逆転写プライマーによって導入されたzipコードに対応し得る。
【0016】
いくつかの実施形態においては、上記検出プローブは、i)上記ステムループリバースプライマーの3’ステム領域と同一である核酸塩基少なくとも6個の配列、およびii)標的核酸に相補的である核酸塩基少なくとも6個の配列を含む。いくつかの実施形態においては、上記検出プローブは、i)上記ステムループリバースプライマーの3’ステム領域と同一である核酸塩基少なくとも7個の配列、およびii)標的核酸に相補的である核酸塩基少なくとも7個の配列を含む。いくつかの実施形態においては、上記検出プローブは、i)上記ステムループリバースプライマーの3’ステム領域と同一である核酸塩基少なくとも8個の配列、およびii)標的核酸に相補的である核酸塩基少なくとも8個の配列を含む。当然、8より大きい長さが使用され得る。一般的に、核酸塩基5個よりも小さい長さは、認められない、というのは核酸塩基5個よりも小さい長さは、非特異的相互作用を導くからである。検出プローブは、i)上記ステムループリバースプライマーの3’ステム領域と同一である核酸塩基少なくともX個の配列、およびii)標的核酸に相補的である核酸塩基少なくともY個の配列を含み得、ここでXおよびYは異なる数である、ということがまた、理解される。
【0017】
本明細書で使用される、用語「ステムループプライマー」は、3’標的特異的部分、ステム、ループを含む分子を指す。例示的ステムループプライマーは、図1、本教示中の他の場所にも、そしてChen et al.の米国特許出願第10/947,460号において描写される。用語「3’標的特異的部分」は、標的マイクロRNAまたは内因性コントロール小RNAのような標的ポリヌクレオチドへ相補的な、ステムループプライマーの一本鎖部分を指す。上記3’標的特異的部分は、ステムループプライマーのステムから下流に位置している。一般的に、3’標的特異的部分は、6個から9個の間の長さのヌクレオチドである。いくつかの実施形態においては、上記3’標的特異的部分は7ヌクレオチド長である。ごく普通の実験で、別の長さを生成し得ること、そして8ヌクレオチドより長い、または6ヌクレオチドより短い、3’標的特異的部分がまた、本教示により予期されることが理解される。一般的に、3’標的特異的部分の3’末端に近いヌクレオチドは、フォワードプライマーの3’ヌクレオチドと、最小限の相補性重複部分を有するか、または少しも重複部分を有しない;これらの領域の重複部分が、続いて起こる増幅反応における、所望されないプライマー二量体の増幅産物を、生成し得ることが理解される。いくつかの実施形態においては、3’標的特異的部分の3’末端に近いヌクレオチドおよびフォワードプライマーの3’ヌクレオチドとの間の重複部分は、0、1、2、または3個のヌクレオチドである。いくつかの実施形態においては、3より大きいヌクレオチドが、3’標的特異的部分の3’末端に近いヌクレオチドとフォワードプライマーの3’ヌクレオチドとの間で相補的であり得るが、一般的にこのようなシナリオには、この中に散在させられた、さらなる非相補的ヌクレオチドが付随する。いくつかの実施形態においては、LNAのような改変された塩基が、ステムループプライマーのTmを増加させるために、3’標的特異的部分において使用され得る(例えば、Petersen et al.,Trends in Biochemistry(2003),21:2:74−81を参照)。いくつかの実施形態においては、ユニバーサル塩基が、例えば、ステムループプライマーのより小さいライブラリーを可能にするために、使用され得る。いくつかの実施形態においては、LNAおよびユニバーサル塩基を含むが、これらに制限されない改変は、逆転写の特異性を改善し得、そして潜在的に検出特異性を高め得る。用語「ステム」は、3’標的特異的部分およびループの間に存在する、ステムループプライマーの二重鎖領域を指し、そして以下により十分に論議される。用語「ループ」は、例えば、図1に描写されているように、ステムの2つの相補的鎖の間に配置されている、ステムループプライマーの領域を指す。一般的に、改変DNAまたは改変RNA、炭素スペーサー(Carbon spacer)(例えば、C18)、および/またはPEG(ポリエチレングリコール)を含む別の部分も可能だが、上記ループは、一本鎖ヌクレオチドを含む。一般的に、上記ループは、4から30の間のヌクレオチド長である。いくつかの実施形態においては、上記ループは、14から18の間のヌクレオチド長である。いくつかの実施形態においては、上記ループは、16ヌクレオチド長である。当業者は、4ヌクレオチドより短いループおよび20ヌクレオチドより長いループは、ごく普通の方法論の過程において、そして過度な実験をすることなしに、同定され得ること、ならびにこのようなより短いおよびより長いループは、本教示により予期されることを理解する。いくつかの実施形態においては、上記ループは、「zipコード」としてまた公知である同定部分を含み得る。
【0018】
本明細書において使用される、用語「ループの配列の少なくとも70パーセントを含む」は、ステムループ逆転写プライマーのループの配列に関してのリバースプライマーの配列を指す。例えば、図5およびこの中に含まれる配列に関して、ステムループ逆転写プライマーは、
【0019】
【化1】

である。
【0020】
したがって、上記リバースプライマー配列は、上記ループ配列よりも核酸塩基が2個短い。この故に、上記ループは20個の核酸塩基であり、そして上記リバースプライマーは18個の核酸塩基であるので、上記リバースプライマーは、上記ループの配列の18/20、または、90パーセントを含むと言い得る。この意味において、「ループの配列の少なくとも70パーセントを含む」との表現が、本教示中で使用される。
【0021】
もちろん、本教示は、ひとりよがりの盲目的模倣者(would−be copy−cat)が、上記ループに関するリバースプライマーの配列において、単に1塩基または2塩基、または3塩基を変更しようと企てたに過ぎない実施形態をさらに予期する。本教示は、これらのおよび類似しているシナリオを予期する。この故に、成句「と実質的に同じ」が、配列を指すために使用された場合、これは、本教示の範囲内で、使用される配列にわずかな偏差を含むことを意図されていることが理解される。このようなわずかな改変は、本教示によって明瞭に予期される。疑わしさを回避するため、「と実質的に同じ」は、一般的に、配列が対応する配列と少なくとも90パーセント同じということを意味する。さらに、例えば、リバースプライマーが、ステムループ逆転写プライマーのループ中に含まれている配列と、実質的に同じ配列を含むという事実を指す場合、「ループの配列の少なくとも70パーセント」があてはまるということ、そしてさらに、少なくとも70パーセント、少なくとも90パーセントのループの配列が、対応するループ配列と同じということが、理解される。
【0022】
さらに、図5に示されている例示的配列に関して、本明細書において使用されるように、用語「zipコード化されたステム(zip−coded stem)」は、ステムループ逆転写プライマーの二重鎖領域を指す。図5におけるステムループ逆転写プライマーのステムは、8塩基対の長さである。いくつかの実施形態においては、ステムは9塩基対の長さであり得る。いくつかの実施形態においては、ステムは10塩基対の長さであり得る。いくつかの実施形態においては、ステムは11塩基対の長さであり得る。いくつかの実施形態においては、ステムは12塩基対の長さであり得る。いくつかの実施形態においては、ステムは13塩基対の長さであり得る。いくつかの実施形態においては、ステムは14塩基対の長さであり得る。一般的に、より長いステムが可能であるが、これはオリゴヌクレオチド製造において増加した出費という損害をかけて手に入り、さらに反応の複雑性を増す。いくつかの実施形態においては、ステムは7塩基対の長さであり得る。いくつかの実施形態においては、ステムは長さ6塩基対であり得る。6塩基対の長さより短いステムは可能であるが、検出プローブ結合のレベルにおける特異性を犠牲にして遂行される。
【0023】
本明細書において使用されるように、用語「ステムループ逆転写プライマーの3’ステム領域」は、ステムのうちの1つの鎖、特にステムループ逆転写プライマーの3’末端に一番近い鎖を指す。別の鎖は、「ステムループ逆転写プライマーの5’ステム領域」として言われ得る。
【0024】
本明細書において使用されるように、用語「Tm増大テイル」は、PCRに基づくプレ増幅反応において使用されるリバースプライマーの5’末端に含まれる、少数(一般的に3個から10個の間)の核酸塩基を指す。上記Tm増大テイルは、逆転写産物に相補的ではない。いくつかの実施形態においては、Tm増大テイルは、4塩基である。いくつかの実施形態においては、Tm増大テイルは、5塩基である。いくつかの実施形態においては、Tm増大テイルは、6塩基である。いくつかの実施形態においては、Tm増大テイルは、7塩基である。一般的に、より長いTm増大テイルが可能であるが、これはオリゴヌクレオチド製造において増加した出費という損害をかけて手に入り、さらに反応の複雑性を増し、そしてTmを所望しないレベルにまで引きあげ得る。
【0025】
本明細書において使用されるように、用語「5’zipコードテイル」は、PCRに基づくプレ増幅反応中で使用される、フォワードプライマーの5’末端に含まれる、一般的に7個から15個の間の、核酸塩基の配列を指す。5’zipコードテイルは特定の標的核酸配列と結合している。すなわち、標的核酸(例えば、マイクロRNA let−7a)は、PCRに基づくプレ増幅反応中で増幅され得る。この反応中、フォワードプライマーの5’zipコードテイルは、let−7aと独特に結合する。このことは、フォワードプライマーにおける3’標的特異的部分とzipコードが対にされる賢明な設計(note−keeping)によって、達成され、従って、zipコードが、所定の標的核酸と一緒に変化することを可能にしている。その結果、例えばマイクロRNA miR−297を尋ねるフォワードプライマーの5’zipコードテイルは、マイクロRNA let−7aを尋ねるフォワードプライマーの5’zipコードテイルと異なっている。このコード化(encoding)は高度にマルチプレックス環境下でより高い能力を可能にし、そして多数の目的の標的核酸が、対応するフォワードプライマーの5’zipコードテイルによるzipコード情報を用いて独特にコード化されることを可能にする。従って、いくつかの表現において、本教示は、固有の逆転写産物配列に独特である5’zipコードテイルを指す。いくつかの実施形態においては、zipコードテイルは8個の核酸塩基である。いくつかの実施形態においては、zipコードテイルは9個の核酸塩基である。いくつかの実施形態においては、zipコードテイルは10個の核酸塩基である。いくつかの実施形態においては、zipコードテイルは11個の核酸塩基である。いくつかの実施形態においては、zipコードテイルは12個の核酸塩基である。一般的に、5’zipコードテイルのより長いステムが可能であるが、これはオリゴ製造において増加した出費という損害をかけて手に入り、そしてさらに反応の複雑性を増す。zipコードの記載を、他の場所の中、米国特許第6,309,829号(この中で「タグセグメント(tag segment)」として呼ばれる);同第6,451,525号(この中で「タグセグメント」として呼ばれる);同第6,309,829号(この中で「タグセグメント」として呼ばれる);同第5,981,176号(この中で「グリッドオリゴヌクレオチド」として呼ばれる);同第5,935,793号(この中で「同定タグ」として呼ばれる);およびPCT公報番号WO第01/92579号(この中で「アドレスで呼び出せる(addressable)支持体特異的配列」として呼ばれる)で見い出し得る。
【0026】
(例示的実施形態)
図1は、本教示のいくつかの実施形態に記載の特定の構成内容を描写する。上段、miRNA分子(1、破線)が描写される。中段、ステムループ逆転写プライマー(2)が描写される(3’標的特異的部分(3)、ステム(4)、およびループ(5)を例示する)。下段、ステムループプライマー(2)にハイブリダイズさせた、miRNA(1)が描写される(miRNA(1)の3’末端領域(6)にハイブリダイズさせた、ステムループプライマー(2)の3’標的特異的部分(3)を例示する)。
【0027】
図2は、本教示のいくつかの実施形態に記載のプロセスの全体像を例示する。ここで、マルチプレックスの逆転写反応は、マイクロRNAのような、複数の核酸上で行われる。この逆転写を、本教示のいくつかの実施形態、例えば、2つのセグメントサイクル手順、または3つのセグメントサイクル手順にしたがってサイクルし得る。また、この逆転写反応は、ステムループ逆転写プライマーを含み得る。上記逆転写反応に続いて、そして上記逆転写反応と同じ容器内で必要に応じて起こる、マルチプレックスPCRに基づくプレ増幅が行われ得る。このマルチプレックスPCRに基づくプレ増幅の次に、複数の別々の、復号PCR(decoding PCR)、ここではPCR 1、PCR 2、PCR 3、が続き得る。標的ポリヌクレオチドのPCRに基づくプレ増幅(例えば、Andersen et al.の米国特許出願第10/723,520号、およびXtranaの米国特許第6,605,451号を参照)は、1,000倍よりもより多く、最大キロ単位(kilo−plex)の数の標的核酸について、cDNAをプレ増幅させ得る。続いて起こるより低い構成単位(lower−plex)の増幅反応は、続いて、これらのマルチプレックス反応を復号し得、その結果、試薬の節約をともなって、複数の異なる標的ポリヌクレオチドの検出および定量を可能にする。所定の細胞型または細胞型の収集物における、1つ、一部の、またはすべてのマイクロRNAの同定および定量は、‘マイクロRNAサイン(signature)‘として呼ばれ得、そして本教示の方法の適用によって達成し得る。サインの論議は、例えば米国特許第6,110,711号および同第5,514,545号で見出し得、ここでメッセンジャーRNAサインは、マイクロアレイのような文脈において論議される。本教示の方法は、マイクロRNAのサインを個々の細胞(例えば、個々の幹細胞およびそれより生じる細胞)から規定することを可能にする。本教示は、非常に高度なレベルのマルチプレックス化(multiplexing)、および単一の細胞から、多数の標的マイクロRNAを代表するサインの起源を提供する。
【0028】
例示的反応の全体像を、図3に示し、これは、本教示のいくつかの実施形態にしたがうマルチプレックスアッセイの設計を示す。ここで、miRNAが、ステムループ逆転写プライマー(41)を含むハイブリダイゼーション反応において、尋ねられることが示される。ハイブリダイゼーションに続いて、逆転写伸長反応が、伸長産物(42)を形成するためのサイクリング手順で、必要に応じて行われ得る。上記伸長産物は、続いて、マイクロRNA特異的な、フォワードプライマー(43)およびリバースプライマー(44)を使用する、マルチプレックスPCRに基づくプレ増幅を受け得る。その後は、マルチプレックスPCRに基づくプレ増幅の上記産物は、3つ別々の、復号増幅反応へと分割される(この場合、PCR1、PCR2、およびPCR3)。
【0029】
図3には明示されていないが、複数のマイクロRNA種が、このアッセイ中に存在し得ることが理解される。上記アッセイにおいては、逆転写反応において、複数の標的特異的ステムループ逆転写プライマーが使用され得る。さらに、複数の逆転写反応産物は、複数の標的特異的プライマー対を使用する、マルチプレックスPCRに基づくプレ増幅反応において、増幅され得る。その後は、シングルプレックス(single−plex)のPCR復号反応の収集が行われ得る。例えば、PCR1は、最初のmiRNAに対して特異的なフォワードプライマーを含み得、PCR2は、2番目のmiRNAに対して特異的なフォワードプライマーを含み得、そしてPCR3は、3番目のmiRNAに対して特異的なフォワードプライマーを含み得る。上記フォワードプライマーのそれぞれは、固有にzipコード化され、特定のマイクロRNAと結合させられる、非相補的なテイル部分をさらに含み得る。さらに、PCR1、PCR2、およびPCR3はすべて、逆転写反応において、ステムループプライマーのループによってコード化されている、リバースプライマーを含み得る。さらに、PCR1は、最初のmiRNAの3’末端領域に対応する別個の検出プローブ、および最初のステムループ逆転写プライマーの、zipコード1ステムを含み得、PCR2は、2番目のmiRNAの3’末端領域に対応する別個の検出プローブ、および2番目のステムループ逆転写プライマーの、zipコード2ステムを含み得、PCR3は、3番目のmiRNAの3’末端領域に対応する別個の検出プローブ、および3番目のステムループ逆転写プライマーの、zipコード3ステムを含み得る。
【0030】
従って、いくつかの実施形態においては、本教示がコード化する反応スキームおよび復号する反応スキームを予期する。上記実施形態においては、コード化するマルチプレックスの逆転写反応に、マルチプレックスのコード化するPCRに基づくプレ増幅反応が続き、そしてマルチプレックスのコード化するPCRに基づくプレ増幅反応に、複数のより低い構成単位の(例えば、シングルプレックスの)復号する増幅反応が続く。従って、本教示は、マルチプレックス増幅反応における異なった分子の数を最小化するための様々な戦略を提供する。
【0031】
図4に示すように、本教示はzipコード情報を増幅産物内へコード化する新規な方法を提供する。(A)においては、マイクロRNA配列(7)は、ステムループ逆転写プライマー(8)を用いて尋ねられる。このことは逆転写反応において起こり得る。ステムループ逆転写プライマー(8)の構造は、3’標的特異的部分(9)、二重鎖ステム(10、12)、およびループ(11)を含む。特定のマイクロRNAを尋ねる特定のステムループリバースプライマーのステムは、上記ステム中に存在する固有のzipコード配列が、特定のマイクロRNA配列と結合するようにzipコード化され得る。ステムループ逆転写プライマーの3’ステム領域は(10)として示されており、そして「ステムループ逆転写プライマーの5’ステム領域」は(12)に示されている。
【0032】
図4においてzipコード配列情報は、終始点線として示されている。(A)においては、ステム(10,12)は、特定のマイクロRNA配列と別個に結合するzipコード配列を含む。ステムループリバースプライマー(8)の3’標的特異的部分(9)の伸長は、元のマイクロRNA標的に相補的である鎖の合成に帰着し得る。
【0033】
(A)における、上記ステムループ逆転写プライマーの上記マイクロRNA配列とのハイブリダイゼーションおよび伸長反応に続いて、伸長反応産物は、(B)における(13)に帰着する。この伸長反応産物は、ステムループリバースプライマー(8)のステム(10、12)における配列によって、コード化されたzipコードを含む。(下記で述べられるように、上記ステムループ逆転写プライマー(10)の3’ステム領域によりコード化されるzipコードは、(C)において起こっている復号PCRにおいて利用され得る)。(B)において起こる、PCRに基づくプレ増幅反応において、フォワードプライマー(14)は、伸長反応産物(13)の3’末端へハイブリダイズする。フォワードプライマー(14)は、3’標的特異的部分(15)およびzipコードテイル(16)を含む。フォワードプライマーのzipコードテイルは、特定のマイクロRNAと結合させられている配列である。従って、工程(A)におけるステムループリバースプライマー(8)中の最初のzipコード(10、12)、および工程(B)におけるフォワードプライマー中の2番目のzipコードによって、基礎をなす標的核酸に隣接する2つの別個の領域(これらのそれぞれは、実験者が導入する)を含む、マイクロRNA配列が、増幅され得る。(B)における上記PCRに基づくプレ増幅反応は、さらにリバースプライマー(17)を含む。上記リバースプライマーは、3’標的特異的部分(18)およびTm増大テイル(19)を含む。注意、リバースプライマー(17)の上記3’標的特異的部分(18)は、(A)のステムループ逆転写プライマー(11)のループの配列である。
【0034】
最終的に、PCRに基づくプレ増幅に続いて、アリコートが、より低い構成単位の復号PCRに置かれ得る。例えば、(C)において、(B)のPCRに基づくプレ増幅に起因するアンプリコンの鎖が、示されている(20)。この鎖は、復号PCRにおいて増幅され得、そして元の標的核酸が定量され得る。(C)に示されるように、上記PCRは、フォワードプライマー(14)およびリバースプライマー(17)を含み得る。上記プライマーは、上記PCRに基づくプレ増幅において使用されるフォワードプライマー(14)およびリバースプライマー(17)と同じ配列である。(C)における復号PCRは、フルオロフォア(F)およびクエンチャー(Q)を含む検出プローブ(例えば、5’ヌクレアーゼ切断可能なプローブ(21))を使用して、リアルタイムに分析され得る。上記検出プローブは、(A)におけるステムループリバースプライマー中に導入されたzipコードにより、特定の増幅された標的核酸に対し高度に特異的であり得る。上記検出プローブは、標的核酸の3’末端領域に相補的な配列、およびステムループ逆転写プライマーの3’ステム領域の、zipコード配列と同じ配列を含む。
【0035】
それゆえ、図4に描写される分子構造により表される論理を応用することで、本教示は、多数の標的マイクロRNA配列を定量するためのアプローチを提供する。例えば、330個の異なったマイクロRNAを増幅および定量するレベルで達成することに成功し、そしてより高度なレベルが、本教示に基づいて可能である。例えば、1000の目的とする標的を想定し、本教示は、1000の構成単位の逆転写反応、続いて高度なマルチプレックスPCRに基づくプレ増幅反応を提供する。マルチプレックスPCRに基づくプレ増幅反応からのアリコートは、1000のシングルプレックスのPCR復号反応に配置され得る。
【0036】
高い程度の正確さが、それぞれのアンプリコンにコード化される、2つのzipコードにより達成される。最初、zipコードは、個別のzipコードステムにより、それぞれのステムループリバースプライマーへコード化される。従って、1000の目的の標的のために、1000の異なったステムループ逆転写プライマーが使用される。1000のステムループ逆転写プライマーのそれぞれは、特定の目的の標的を尋ねる3’標的特異的部分を有している。1000のステムループリバースプライマーそれぞれは、さらに、ステム中に固有のzipコード配列を有している。そして、1000のステムループリバースプライマーそれぞれは、ループを有している。上記ループは、1000のステムループリバースプライマーのすべてに関して同じ配列であり得、それにより、マルチプレックスPCRに基づくプレ増幅反応において、単一のリバースプライマーが使用されることを可能にしている。マルチプレックスPCRに基づくプレ増幅反応の間、1000の異なったフォワードプライマーが使用され得る。マルチプレックスPCRに基づくプレ増幅反応においては、それぞれのフォワードプライマーは、3’標的特異的部分、および特定の標的核酸と固有に結合するzipコード配列を含む、5’zipコードテイル領域を含み得る。
【0037】
最後に、1000の復号シングルプレックスPCRのそれぞれが、逆転写コード化およびマルチプレックスPCRに基づくプレ増幅反応のコード化に由来するアンプリコンの両末端で起こる、zipコードの配列情報を利用し得る。シングルプレックスのそれぞれは、逆転写/PCRに基づくプレ増幅反応において使用される、zipコードに対応する一組のプライマーを含み得る。特に、シングルプレックスの復号PCRのそれぞれは、共通のユニバーサルリバースプライマーおよび固有のフォワードプライマーを有し得る。復号PCRは、上記標的マイクロRNAに対応する配列、およびステムループリバースプライマーのzipコードステムに対応する配列を有する検出プローブをさらに含み得る。このようなアプローチは、1000のシングルプレックスPCRにおいて、1000のzipコードプライマーのユニバーサルの組(universal battery)が使用されることを可能にし得、従って、冗長性をもつユニバーサルプライマーおよび費用において対応する削減を提供している。本教示のいくつかの実施形態においては、1000のステムループリバースプライマーのそれぞれが、同じループを含み得る。従って、単一のリバースプライマー配列が、PCRに基づくプレ増幅反応において使用され得る。さらに、上記同一のリバースプライマー配列が、複数の復号PCRにおいて使用され得る。そのようなアプローチは、多数の異なった標的を尋ねるために必要とされる異なった分子の数を、最小化する利益を有している。もちろん、必ずしも、単一のユニバーサルリバースプライマーを使用する必要はない。従って、いくつかのステムループリバースプライマーは、これらのループ中において異なった配列を含み得、従って、PCRに基づくプレ増幅反応において、異なったリバースプライマーの対応する組の使用をもたらす。
【0038】
マイクロRNA let−7aを尋ねるために有用である、配列の例示的収集物が、図5に示され、これらは、それぞれ、フォワードプライマー、let−7aマイクロRNA、ステムループ逆転写プライマー、検出プローブ、およびリバースプライマーである。
【0039】
配列番号1:5’GAGGTCAGGGTGAGGTAGTAGGTTGT3’
配列番号2:5’UGAGGUAGUAGGUUGUAUAGUU3’
配列番号3:5’CATATCAACTACTCCTTTAACGGCTGAGGTGCTGTGAGGAGTAG3’
配列番号4:5’TTTCCTCATCAACTATAC3’
配列番号5:5’CTCAAGTGTCGTGGAGTCGGCAA3’。
【0040】
(逆転写(RT)反応のサイクリング)
いくつかの実施形態においては、本教示は、サーマルサイクリングによる増強された逆転写プライマー利用のための方法を提供する。無意識的に制限を意図することなく、本教示のサイクリング方法は、誤ったプライマーの低温での会合を破壊し、そして反復性の相同的なプライマー/RNA核形成を可能にする、と考えられており、従って逆転写反応産物量を増加させている。本教示の方法は、miRNA逆転写反応において逆転写産物を増加させること、および標的核酸としてメッセンジャーRNA(mRNA)を含むマルチプレックスRT−PCR反応において逆転写産物を増加させること、を含むいくらかの状況に応用され得る。
【0041】
慣習的に、RT反応は、単一の比較的低温、37℃〜42℃で長時間行われる(30分〜1時間、例えば、Sambrook et al.,第3版を参照)。一般的に、これらの反応の目標は、例えば、mRNAをcDNAへ転換するポリ(T)およびランダムプライマーを使用しての、長いcDNAの生成である。インキュベーションの長時間の間隔は、RT反応を完了することを可能にし、可能な限り最長のcDNA分子を生成すると期待される。本教示によって提供される、2個の関連した考慮は、以下を含む:(1)RNA標的が短い、または規定されたcDNA産物が短い場合、長いインキュベーション時間は、ポリメラーゼにとって鋳型を逆転写させるために、必ずしも必要ではない。(2)単一の低ハイブリダイゼーション温度は、非相同性会合および内部の鎖の崩壊が、真正のプライミング活性を妨げることを可能にする。
【0042】
相同性の低温プライマーハイブリダイゼーションの背後の動力学の原理は、複雑で完全には定義されていない。これらの低温では、短い相補的領域は、真正の相補的ハイブリダイゼーションを妨げる、安定した分子内結合および分子間結合を形成し得る。RT反応において一般的に存在する、プライマーおよび標的RNAの間の、濃度の大きな差のために、プライマーの小断片のみ、一工程のRT反応で、標的配列へ豊富にアニーリングする。従って、本発明者らは、(1)標的会合から離して、これらのプライマーを解離させる、(2)短い分子内ハイブリダイゼーションを解離させる、および(3)RTプライマーの再ハイブリダイゼーションを可能にするという条件は、過剰な未反応のプライマーに、RTの別の回のためのRNA標的と反応する別の機会を与え得るとの仮定した。さらに、本発明者らは、これらの条件が逆転写酵素を不活性化させない場合、そのあと、これらの条件の反復は、利用可能な標的RNA分子が使い尽くされるまで、cDNAの合成を増加させ得るとの仮定した。
【0043】
原則として、上記プライマーの濃度を、50〜100nMから1uM以上まで増加させることは、生産的なプライマー標的ハイブリダイゼーションの数を増加させると予測されるが、このような条件はまた、特にマルチプレックス反応におけるプライマー対プライマーの相互作用の問題を増加させる。元の未反応プライマーを再利用する手順は、プライマー利用の効率を増加させ、そしてこの故に、RT反応における産物の量を増加させると仮定した。いくつかのRT酵素は、50℃、60℃以上まで安定であり得る、という仮定で、温度サイクリングRT反応(temperature cycling RT reaction)のスキームを設計した。
【0044】
従って、いくつかの実施形態においては、複数の異なった標的ポリヌクレオチドおよび複数の異なった標的特異的ステムループ逆転写プライマーが、サイクリングさせる逆転写反応において使用され、同一の反応容器において、マルチプレックスPCRに基づくプレ増幅反応が続く。
【0045】
(2セグメントでの、RT反応のサイクリング)
いくつかの実施形態においては、最初の温度(変性温度)は、47℃〜53℃であり、そして2番目の温度(アニーリング/伸長温度)は37℃〜43℃である。
【0046】
いくつかの実施形態においては、サイクリング逆転写反応は、最初の温度での1〜5秒間および2番目の温度での45〜75秒間を、少なくとも30サイクル含む。
【0047】
いくつかの実施形態においては、サイクリング逆転写反応は、最初の温度での1〜5秒間および2番目の温度での25〜35秒間を、少なくとも60サイクル含む。
【0048】
(3セグメントでの、RT反応のサイクリング)
いくつかの実施形態においては、サイクリングは、以下の3つのセグメントを含む:低温セグメント、中温セグメント、高温セグメント。制限することを意図することなく、3つのセグメントそれぞれの間に起こる優勢な反応は、次のように考えられ得る:上記低温セグメントは、アニーリングセグメントと考えられ得、上記中温セグメントは、伸長セグメントと考えられ得、そして上記高温セグメントは、変性セグメントと考えられ得る。したがって、いくつかの実施形態においては、サイクリング逆転写反応は、最初16℃での30分間のインキュベーションを含み得、これに20℃での30秒間、42℃での30秒間、および50℃での1秒間の、60サイクルが続く。これらの60サイクルに、逆転写酵素を不活性化する工程、例えば、5分間、温度を85℃まで上昇させることが続き得る。
【0049】
いくつかの実施形態においては50〜70の間のサイクルであり得る。いくつかの実施形態においては、40〜80の間のサイクルであり得る。いくつかの実施形態においては、30〜100の間のサイクルであり得る。いくつかの実施形態においては、100より大きいサイクルであり得る。
【0050】
いくつかの実施形態においては、上記低温セグメントは18℃〜22℃であり得る。いくつかの実施形態においては、上記低温セグメントは19℃〜21℃であり得る。いくつかの実施形態においては、上記低温セグメントは15℃〜25℃であり得る。
【0051】
いくつかの実施形態においては、上記低温セグメントは、25〜35秒間続き得る。いくつかの実施形態においては、上記低温セグメントは、20〜40秒間続き得る。いくつかの実施形態においては、上記低温セグメントは、15〜60秒間続き得る。いくつかの実施形態においては、より長い時間は、結果の取得に不必要な遅れを加算し得ることが理解されるが、上記低温セグメントは、60秒より長く続き得る。
【0052】
いくつかの実施形態においては、上記中温セグメントは、37℃〜45℃であり得る。いくつかの実施形態においては、上記中温セグメントは、39℃〜43℃であり得る。
【0053】
いくつかの実施形態においては、上記中温セグメントは、25〜35秒間続き得る。いくつかの実施形態においては、上記中温セグメントは、20〜40秒間続き得る。いくつかの実施形態においては、上記中温セグメントは、15〜60秒間続き得る。いくつかの実施形態においては、より長い時間は、結果の取得に不必要な遅れを加算し得ることが理解されるが、上記中温セグメントは、60秒より長く続き得る。
【0054】
いくつかの実施形態においては、上記高温セグメントは、48℃〜55℃であり得る。いくつかの実施形態においては、上記高温セグメントは、49℃〜51℃であり得る。いくつかの実施形態においては、より高い温度は、酵素活性を変性させ得および/または消失させ得ることが理解されるが、上記高温セグメントは、55℃よりも高温であり得る。
【0055】
いくつかの実施形態においては、上記高温セグメントは、1〜10秒間続き得る。いくつかの実施形態においては、上記高温セグメントは、2〜8秒間続き得る。いくつかの実施形態においては、上記高温セグメントは、1〜5秒間続き得る。いくつかの実施形態においては、高温でのより長い時間は、酵素活性を変性させ得および/または消失させ得る(特に、より長い時間が用いられた場合)ことが理解されるが、上記高温セグメントは、10秒より長く続き得る。より長い時間は、結果の取得に不必要な遅れを加算し得ることがさらに理解される。
【0056】
いくつかの実施形態においては、特に、メッセンジャーRNAのような、より長い核酸が尋ねられる実施形態においては、標的特異的プライマー対は、100〜150ヌクレオチド長の間である標的ポリヌクレオチドの領域を尋ねる。より長い領域が尋ねられた時、一般的にインキュベーション時間は増加し得、そして、そのうえ変性温度は増加し得る。
【0057】
(キット)
特定の実施形態において、本教示はまた、特定の方法を行うことをはかどらせるために設計されたキットを提供する。いくつかの実施形態においては、キットは、この方法を実行することに使用される2以上の構成要素を集合させることにより、目的の方法を行うことをはかどらせるのに役立つ。いくつかの実施形態においては、キットは、最終消費者による測定のために必要なことを最小にするために、あらかじめ測定した単位量の構成要素を含み得る。いくつかの実施形態においては、キットは、本教示の1以上の方法を行うことのための説明書を含み得る。特定の実施形態において、上記キットの構成要素は、お互いに関連して機能するように最適化されている。
【0058】
したがって、いくつかの実施形態においては、本教示は、少なくとも300の短い標的核酸を増幅するためのキットを提供する。上記キットは以下を含む;少なくとも300のステムループ逆転写プライマーそれぞれが、実質的に同じループ配列を含む、少なくとも300のステムループ逆転写プライマー;それぞれのフォワードプライマーが、別個の3’標的特異的部分および別個の5’テイルを含む、少なくとも300のフォワードプライマー;ユニバーサルリバースプライマーの配列が、少なくとも300のステムループ逆転写プライマーのループ中に含まれる配列の少なくとも70パーセントと実質的に同じ配列、およびTm増大テイルを含む、ユニバーサルリバースプライマー。いくつかの実施形態においては、上記キットはさらに、逆転写酵素を含む。いくつかの実施形態においては、上記キットはさらに、dNTPを含む。いくつかの実施形態においては、上記キットはさらに、DNAポリメラーゼを含む。いくつかの実施形態においては、上記キットはさらに、少なくとも330のフォワードプライマーのそれぞれ、およびユニバーサルリバースプライマーが、別々のウェル中に配置させられている、マイクロタイタープレートを含む。
【0059】
本教示は、これらの例示的実施形態によって記載されているが、当業者は、これらの例示的実施形態の多数の変化および改変が、過度の実験をすることなく可能であることを、容易に理解する。そのような変化および改変のすべてが、本教示の範囲内に存在する。本教示の局面は、さらに次の実施例に照らして理解され得、この実施例は、決して本教示の範囲を制限するものとは解釈されるべきではない。
【実施例】
【0060】
ヒトの肺および心臓のRNAを、Ambion Inc.から購入した。Let−7a合成miRNAを、Integrated DNA Technologies Inc.から購入可能した。DNAオリゴヌクレオチドプライマーを、Applied Biosystemsによって合成した。
【0061】
図4および図5は、本実施例中で使用される反応成分構成を描写する。図4中に示されるように、工程AおよびBは、既知ヒトmiRNAのうち、ほとんどすべて(332組のうち330組)に対するRTプライマーおよび二番目の鎖の合成プライマーの330組を用いるマルチプレックス反応である。工程BのPCRは、cDNA産物を増幅し、工程Cのために十分な産物を提供する。工程Cを、384ウェル反応プレートにおける個々のシングルプレックスTaqMan(登録商標)反応として処理し、このマルチプレックスRT−PCR反応後の、330個のmiRNAのそれぞれが豊富なことをモニタリングする。上記リバースステムループRTプライマー、フォワードプライマー(二番目の鎖の合成およびプレPCRプライマー)、およびTaqMan(登録商標)プローブすべてが、zipコード化された配列(それぞれのプライミング反応の特異性を増加させるために、それぞれのmiRNAに、特異的に割り当てられる)を含むことに注意せよ。この方法によって、miRNAにおけるわずかな配列の差異でさえ、引き続く反応において増幅される。なぜなら、あらゆるmiRNA配列の差異が、さらなる、特異的なmiRNAのzipコード化される配列によって、PCR産物およびリアルタイムPCR反応において増幅されるからである。また、ユニバーサルリバースプライマーのTmを増加させるために、さらなる配列を加えた(本来のステムループRTプライマーのループ配列の5’末端へ)。この付加的配列を、Tm増大テイルと呼ぶ。
【0062】
(逆転写)
5ulの逆転写反応は、10倍濃度のcDNA Archivingキットバッファー(Applied Biosystems)を5ul、0.335ulのMMLV逆転写酵素(50U/ul)、100mM dNTPを0.25ul、AB RNase阻害剤20u/ulを0.065ul、330構成単位のリバースステムループプライマー(それぞれ50nM)を0.5ul、ヒト肺精製総RNAを2ul、および1.35ulのHOを含む。反応混合物を、RNA試料の2ulを、少なくとも10反応のための残りの反応成分を含む新たに調製したストック反応混合物の3ulへ加えることにより調製した。上記反応を次のインキュベーション条件を用いて行った:(20℃/30秒〜42℃/30秒〜50℃/1秒)60サイクル。続いて、85℃で5分間のインキュベーションにより、上記酵素を不活性化した。
【0063】
(PCRに基づくプレ増幅)
PCRに基づくプレ増幅は、25ulを含んだ。この中に、UNGを含まない2倍濃度のUniversal Master Mix 9R(Applied Biosystems)を12.5ul、RT試料を5ul、330構成単位のフォワードプライマー(500nM)それぞれを2.5ul、100uMのユニバーサルリバースプライマーを1.25ul、5u/ulのAmpliTaq Gold(登録商標)を1.25ul、100mM dNTPを0.5ul、100mM MgClを0.5ul、および1.5ulのdHOを含む。反応に関する温度のプロフィールは、Taq−GOLD(登録商標)を活性化するための95℃で10分間のインキュベーション、55℃での2分間のインキュベーションを含み、これに、95℃で1秒間および65℃で1分間の18サイクルが続いた。
【0064】
(リアルタイムPCR)
PCRに基づくプレ増幅からの産物の25ulへ、75ulのHOを加え、100ulへ希釈した。それぞれのTaqMan(登録商標)反応についての検出プローブは、5’側にFamおよび3’側にクエンチャーMGB(マイナーグルーブ結合剤)を含んだ。リアルタイム反応の混合物は、UNGを含まない2倍濃度のUniversal Master Mix(登録商標)(Applied Biosystems)を5ul、5uMのフォワードプライマーと1uMのTaqMan(登録商標)プローブとの混合物を、2ul、100uMユニバーサルリバースプライマーを0.1ul、4倍濃度の希釈したPCRに基づくプレ増幅試料を0.1ul、および2.8ulのdHOを含んだ。リアルタイム反応の混合物を、個々のフォワードプライマーおよびTaqMan(登録商標)プローブの2ulを、リアルタイムPCR試薬の残りを含む、新たに調製したストック溶液の8ulへ加えることにより集めた。リアルタイムPCRを、95℃、10分間でのホットスタート、続いて95℃で15秒間および60℃で1分間の、40サイクルからなる温度管理様式を用いて、384ウェル形式におけるAB 7900 HT Sequence Detection Systemに基づいて行った。それぞれのmiRNAに関しての上記リアルタイムPCRを、二連で処理した。
【0065】
(実施例の結果と考察)
最近(Lao et al.,Biochemical and Biophysical Research Communications(2006),343:85−89)、本発明者らは、上記短いmiRNAを、はるかに長いステムループプライマーの3’末端に位置していた、短い8ヌクレオチドのプライミングRT配列と、3’末端に上記miRNA配列の残りを有するフォワードの、二番目の鎖合成プライマーと5’末端における任意のTm増大配列との間で分配することによって、複数のmiRNAの概略を提示し得ることを示した。これらのプライマーを、マルチプレックスな方法でmiRNAを逆転写およびPCR増幅することに使用し、個別のシングルプレックスリアルタイムPCRのための十分な試料を提供し、増幅されたmiRNAのそれぞれの相対的濃度を決定した。上記反応は、PCRに基づくプレ増幅反応の多くのサイクルに関して強固であったが、マルチプレックスのレベルの増加は、総ヒト肺miRNAの、シングルプレックスプロフィールとマルチプレックスプロフィールとを比較するプロットへ、ばらつき度の増加を加える。ばらつき度を減ずるために、本発明者らは、miRNAを、48のmiRNAに対するプライマーのマルチプレックス群へ分類した。
【0066】
本教示は、これに関してはいくつかの新規な特徴、そしてマイクロRNA定量に対する別のマルチプレックスアプローチを提供する。最初に、複数のリバースプライマーおよびフォワードプライマー、ならびにTaqMan(登録商標)プローブを、330構成単位へ増加させた。二番目に、プライマーおよびプローブのそれぞれを、図4および図5に示すように、zipコード化した。三番目に、特別の配列を、このプライマーのTmを上昇させるために、プレPCR増幅反応のUR(ユニバーサルリバース)プライマーの5’末端へ加えた。四番目に、プレPCR増幅サイクル数を、14から18へ増加させた。
【0067】
したがって、図4は、miRNAをマルチプレックス群へ分割することに関して、本教示にしたがう一つの戦略を示す。この戦略は、単一の群におけるすべてのmiRNAのマルチプレックスアッセイを可能にする。図4は、すべてのmiRNAに対する上記プライマーおよびTaqMan(登録商標)プローブは、それぞれのmiRNAに対して特異的な配列によってzipコード化されていることを示す。これは、上記PCRに基づくプレ増幅およびリアルタイムPCRのための上記miRNAプライマーおよびプローブは、実際のmiRNA配列における差異によっては、もはやお互いに違いがないが、加えられたzipコード化配列のために、大きな差異も有していることを意味する。プライマー設計においての変更は、類似したまたは関連した配列領域(tract)を含むmiRNA配列に由来する、プライマーとプライマーとの相互作用を、大いに減らす。この設計は、いまだ発見されていない新規なmiRNAを含む、すべてのmiRNAのマルチプレックスプロフィールを可能にすることが予想される。
【0068】
これらの実験からの結果は、上記zipコード化されたプライマー設計は、マルチプレックスのPCRに基づくプレ増幅の多くのサイクルを通して、330のmiRNAを正確にプレ増幅することを示した。上記マルチプレックスのPCRに基づくプレ増幅反応を、1、5、10、14および18サイクルのPCRの間増幅した。次に、それぞれのmiRNA相対的濃度を、材料および方法に記載されているように、リアルタイムPCRにより決定した。これらのPCR増幅におけるそれぞれのmiRNAに関するCt値での理論上の差異は、1から5まで、5から10まで、10から14まで、および14から18までのそれぞれのPCRサイクルにおける増加に対して、4、5、4および4であるはずである。これらの間隔についての平均観察差異は、それぞれ4.15、5.29、3.87および4.25である。
【0069】
zipコード化されたプライマーのダイナミックレンジを評価するために、総ヒト肺RNAを、100ngから10pgまで希釈し、そして18サイクルのPCRに基づくプレ増幅を使用する、材料および方法に記載される330miRNAのためのマルチプレックス手法により概略を提示した。それぞれのmiRNAの相対的豊富さに対する、総RNA試料の大きさの影響をまた分析し、そして、仮定したように用量応答関係を発見した。
【0070】
これらの実験において、37は、Applied Biosystems’ AB 7900 HT Sequence Detection Systemに基づく単一コピー鋳型に関して、予想されるCt値である。しかし、上記miRNAを18サイクルのPCRを用いて増幅し、そして続いて400倍(8.7Ctの損失)に希釈したので、単一コピーDNAの実際のCt値は、27.7(37−18+8.7)である。ゆえに、このプロトコルの妥当性の評価において、28未満のCt値を有するデータポイントのみが、意義があると見なされるべきである。それぞれの希釈工程は10倍希釈であったので、それぞれの希釈間隔(dilution interval)の間のそれぞれのmiRNAに関してのCtにおける予想された差異は、3.3である。28未満のCtを有するmiRNAに関する平均観察差異は、100ngから10pgまでの希釈間隔に関して、それぞれほんの、2.93、3.40、3.86および3.9である。予想される平均差異は、それぞれ0.40、−0.07、−0.53および−0.57のみである。
【0071】
適切なプライマーおよびプローブのzipコード化によって、マルチプレックスPT−PCRに付与されるさらなる特異性に関しての一つの有効な試験は、非常に密接に関連しているmiRNAに対する、非zipコード化プライマーおよびzipコード化プライマーの能力の直接比較である。このような密接に関連しているmiRNAの群を、miRNAのlet−7ファミリーに見出す。図6は、100pMの合成let−7a miRNAと反応させた場合、Lao et al.,Biochemical and Biophysical Research Communications(2006),343:85−89の190構成単位の非zipコード化プライマーおよびプローブの能力と、本教示の330構成単位のzipコード化プライマーおよびプローブの能力とを比較する。zipコード化バージョンのためのマルチプレックス化の上記レベルが、偽プライマー(spurious primer)の相互作用の潜在性を増加させる、140のさらなるプライマーの組を含むので、上記比較は、特に厳密である。図6は、マルチプレックスRT−PCRの非zip化バージョンが、has−let−7aと同じ長さを有する上記let−7 miRNAファミリーのすべてのメンバーに対する顕著な交差反応を有しており、そして3’末端の1ヌクレオチドを欠くファミリーのメンバーのみを区別することを示している。他方では、上記zipコード化プライマーの組は、has−let−7fに対してのみ交差反応を示し、このhas−let−7fはフォワードプライマーの3’末端から離れて配置される1塩基のみだけ、has−let−7aと異なる。この密接に関連しているファミリーのその他の7メンバーとは交差反応しない。zipコード化がマルチプレックスRT−PCR反応に付与するさらなる特異性は、単一の細胞内で見出されるRNA試料に対応する総RNA試料の大きさに対しての、単一のマルチプレックスRT−PCR反応由来のすべてのmiRNAのmiRNAプロファイリング(profiling)を可能にする。したがって、本教示は、非常に小さな生検および単一細胞(単一の幹細胞を含む)におけるすべての公知のヒトmiRNAの概略を提示するための新規な方法、組成物、およびキットを提供する。さらに、本教示は、新規マイクロRNAが発見されるようなマルチプレックスのレベルの増大を可能にするために十分、柔軟でありかつ強固である。
【0072】
したがって、いくつかの実施形態においては、本教示は、少なくとも300の小核酸のマルチプレックスの定量を提供する。上記実施形態においては、小核酸のそれぞれは、30ヌクレオチド長未満である。いくつかの実施形態においては、本教示は、少なくとも400の小核酸のマルチプレックスの定量を提供する。上記実施形態においては、小核酸のそれぞれは、30ヌクレオチド長未満である。いくつかの実施形態においては、本教示は、少なくとも500の小核酸のマルチプレックスの定量を提供する。上記実施形態においては、小核酸のそれぞれは、30ヌクレオチド長未満である。いくつかの実施形態においては、本教示は、少なくとも600の小核酸のマルチプレックスの定量を提供する。上記実施形態においては、小核酸のそれぞれは、30ヌクレオチド長未満である。いくつかの実施形態においては、本教示は、少なくとも700の小核酸のマルチプレックスの定量を提供する。上記実施形態においては、小核酸のそれぞれは、30ヌクレオチド長未満である。いくつかの実施形態においては、本教示は、少なくとも800の小核酸のマルチプレックスの定量を提供する。上記実施形態においては、小核酸のそれぞれは、30ヌクレオチド長未満である。いくつかの実施形態においては、本教示は、少なくとも900の小核酸のマルチプレックスの定量を提供する。上記実施形態においては、小核酸のそれぞれは、30ヌクレオチド長未満である。いくつかの実施形態においては、本教示は、少なくとも1000の小核酸のマルチプレックスの定量を提供する。上記実施形態においては、小核酸のそれぞれは、30ヌクレオチド長未満である。いくつかの実施形態においては、ダイナミックレンジは少なくとも3 logである。いくつかの実施形態においては、ダイナミックレンジは少なくとも4 logである。いくつかの実施形態においては、ダイナミックレンジは少なくとも5 logである。いくつかの実施形態においては、ダイナミックレンジは少なくとも6 logである。いくつかの実施形態においては、ダイナミックレンジは少なくとも7 logである。いくつかの実施形態においては、ダイナミックレンジは少なくとも8 logである。
【0073】
上記開示された教示は、さまざまな応用、方法、キット、および組成物に関して述べられているが、さまざまな変化および改変が、本明細書の教示および以下の特許請求される発明から逸脱することなく、行われ得ることが理解される。前述の実施例は、開示された教示をよりよく例示するために提供され、そして本明細書に示される教示の範囲を制限するとは意図されない。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】図1は、本教示のいくつかの実施形態にしたがう様々な構成の特定の局面を描写する。
【図2】図2は、本教示のいくつかの実施形態にしたがう一つの作業の流れを描写する。
【図3】図3は、本教示のいくつかの実施形態にしたがう様々な構成の特定の局面を描写する。
【図4】図4は、本教示のいくつかの実施形態にしたがう様々な構成の特定の局面を描写する。
【図5】図5は、本教示のいくつかの実施形態にしたがう様々な構成の特定の局面を描写する。
【図6】図6は、本教示のいくつかの実施形態にしたがうCt値の形態における例示的データ(date)を描写する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれの短い標的核酸が18〜30ヌクレオチド長である、少なくとも300の異なる短い標的核酸を定量するための方法であって、該方法が、以下、
該少なくとも300の異なる短い標的核酸と、少なくとも300の異なる標的特異的ステムループ逆転写プライマーとを接触させる工程であって、ここでそれぞれの該少なくとも300のステムループ逆転写プライマーが、固有の3’標的特異的部分、固有のzipコード化ステム、およびループを含む、工程;
逆転写産物の収集物を形成するために、逆転写反応において、該少なくとも300のステムループ逆転写プライマーを伸長する工程;
PCRに基づくプレ増幅(PCR−based pre−amplification)産物の収集物を形成するために該逆転写産物の収集物に対し、PCRに基づくプレ増幅を行う工程であって、ここで、該PCRに基づくプレ増幅が、少なくとも300の異なるフォワードプライマーおよび少なくとも一つのリバースプライマーを含み、ここで該リバースプライマーの配列が、該少なくとも一つのステムループ逆転写プライマーのループと実質的に同じ配列、およびTm増大テイルを含み、;
この工程においては、それぞれの該少なくとも300の異なるフォワードプライマーが、i)特定の逆転写産物の配列の5’末端に相補的である3’標的特異的部分、およびii)特定の逆転写産物の配列に独特である5’zipコードテイルを含む、工程;そして
該PCRに基づくプレ増幅産物の収集物を少なくとも300の異なる反応容器へ分ける工程;
該300の異なる反応容器のそれぞれにおいて復号PCRを行う工程であって、ここでそれぞれの復号PCRは、特定の標的核酸配列に関する該PCRに基づくプレ増幅反応におけるフォワードプライマーと実質的に同じ配列を含むフォワードプライマー、リバースプライマー、および検出プローブを含み、ここで、該検出プローブの配列は、i)特定のステムループ逆転写プライマーの3’ステム領域と同じである少なくとも6核酸塩基の配列、およびii)該特定のステムループ逆転写プライマーにより尋ねられる該短い標的核酸に対して相補的である少なくとも6核酸塩基の配列を含む、工程;
該少なくとも300の異なる反応容器のそれぞれにおいて、該検出プローブを検出する工程;ならびに、
該少なくとも300の異なる短い標的核酸を定量する工程を含む、方法。
【請求項2】
前記逆転写がサイクリングを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記サイクリングが、20℃で30秒間、42℃で30秒間、および50℃で1秒間の60サイクルを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記PCRに基づくプレ増幅が、12〜20サイクルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記PCRに基づくプレ増幅が、14〜18サイクルを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記12〜20サイクルそれぞれが、95℃で1秒間および65℃で1分間を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも300の短い標的核酸が、マイクロRNAである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも300の短い標的核酸が、単一の細胞から収集される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも300のステムループ逆転写プライマーが、実質的に同じループ配列を含み、そして前記PCRに基づくプレ増幅反応において使用される前記リバースプライマーの配列が、該ループの配列の少なくとも70パーセントを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記PCRに基づくプレ増幅反応における少なくとも一つのリバースプライマーの前記Tm増大テイルが、少なくとも4核酸塩基を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記PCRに基づくプレ増幅反応における、少なくとも一つのリバースプライマーの前記Tm増大テイルが、5核酸塩基である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
標的核酸を定量するための方法であって、以下、
該標的核酸と標的特異的ステムループ逆転写プライマーを接触させる工程であって、該ステムループ逆転写プライマーが、3’標的特異的部分、zipコード化ステム、およびループを含む、工程;
逆転写産物を形成するために、逆転写反応において該ステムループ逆転写プライマーを伸長する工程;
PCRに基づくプレ増幅産物を形成するために、該逆転写産物に対しPCRに基づくプレ増幅を行う工程であって、ここで該PCRに基づくプレ増幅が、フォワードプライマーおよびリバースプライマーを含み、ここで該リバースプライマーの配列が、該少なくとも一つのステムループ逆転写プライマーのループと実質的に同じ配列、および非相補的テイルを含み、ここで該フォワードプライマーの配列が、i)特定の逆転写産物の配列の5’末端に相補的である配列、およびii)5’zipコードテイルを含む、工程;
該PCRに基づくプレ増幅の産物のアリコートに対し復号PCRを行う工程であって、該復号PCRは、該PCRに基づくプレ増幅反応におけるフォワードプライマーと同じ配列であるフォワードプライマー、該PCRに基づくプレ増幅反応におけるリバースプライマーと実質的に同じ配列を含むリバースプライマー、および、検出プローブを含み、該検出プローブの配列が、i)該ステムループリバースプライマーの3’ステム領域と同じである、少なくとも6塩基の配列、およびii)該標的核酸に対して相補的である、少なくとも6塩基の配列を含む、工程;
該検出プローブを検出する工程;ならびに
該標的核酸を定量する工程を含む、方法。
【請求項13】
前記逆転写がサイクリングを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記標的核酸がマイクロRNAである、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記標的核酸が単一の細胞から収集される、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記PCRに基づくプレ増幅反応において使用される前記リバースプライマーが、前記ステムループ逆転写プライマーのループと、実質的に同じ配列を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記標的核酸が18〜30ヌクレオチド長である、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記逆転写がサイクリングを含み、そして該サイクリングが、20℃で30秒間、42℃で30秒間、および50℃で1秒間の60サイクルを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記PCRに基づくプレ増幅が12〜20サイクルを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
それぞれの短い標的核酸が18〜30ヌクレオチド長である、少なくとも300の短い標的核酸を定量するための方法であって、該方法が、
マルチプレックスの逆転写反応を行う工程;
マルチプレックスのPCRに基づくプレ増幅反応を行う工程;
少なくとも300の異なる復号PCRを行う工程;および
それぞれの短い標的核酸が18〜30ヌクレオチド長である、すくなくとも300の短い標的核酸を定量する工程を含む、方法。
【請求項21】
前記マルチプレックスの逆転写反応がサイクリングを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記短い標的核酸がマイクロRNAである、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記短い標的核酸が単一の細胞から収集される、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記短い標的核酸が18〜30ヌクレオチド長である、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記マルチプレックスの逆転写反応が、サイクリングを含み、そして、該サイクリングが、20℃で30秒間、42℃で30秒間、および50℃で1秒間の60サイクルを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
前記マルチプレックスのPCRに基づくプレ増幅が、12〜20サイクルを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項27】
標的核酸を増幅するための方法であって、以下、
該標的核酸と標的特異的ステムループ逆転写プライマーとを接触させる工程であって、該ステムループ逆転写プライマーが、3’標的特異的部分、zipコード化ステム、およびループを含む、工程;
逆転写産物を形成するために、逆転写反応において該ステムループ逆転写プライマーを伸長する工程であって、該逆転写反応がサイクリングを含む、工程;
PCRに基づくプレ増幅産物を形成するために、該逆転写産物に対してPCRに基づくプレ増幅を行う工程であって、ここで該PCRに基づくプレ増幅が、フォワードプライマーおよびリバースプライマーを含み、該リバースプライマーの配列が、該少なくとも一つのステムループ逆転写プライマーのループと実質的に同じ配列、およびTm増大テイルを含み、そして該フォワードプライマーの配列が、i)特定の逆転写産物の配列の5’末端に相補的である配列、およびii)5’zipコードテイルを含む、工程;ならびに
該標的核酸を増幅する工程を含む、方法。
【請求項28】
前記マルチプレックスの逆転写反応が、サイクリングを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記短い標的核酸が、マイクロRNAである、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記短い標的核酸が、単一の細胞から収集される、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記短い標的核酸が18〜30ヌクレオチド長である、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
前記マルチプレックスの逆転写反応が、サイクリングを含み、ならびに、該サイクリングが20℃で30秒間、42℃で30秒間、および、50℃で1秒間の60サイクルを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項33】
前記マルチプレックスのPCRに基づくプレ増幅が12〜20サイクルを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項34】
少なくとも300の短い標的核酸を増幅するためのキットであって、該キットが、以下、
それぞれ実質的に同じループ配列を含む、少なくとも300のステムループ逆転写プライマー;
それぞれ別個の3’標的特異的部分および別個の5’テイルを含む、少なくとも300のフォワードプライマー;
ユニバーサルリバースプライマーであって、ここで該ユニバーサルリバースプライマーの配列が、該少なくとも300のステムループ逆転写プライマーのループ中に含まれている配列と実質的に同じ配列、およびTm増大テイルを含む、ユニバーサルリバースプライマーを含む、キット。
【請求項35】
さらに逆転写酵素を含む、請求項34に記載のキット。
【請求項36】
さらにdNTPを含む、請求項34に記載のキット。
【請求項37】
さらにDNAポリメラーゼを含む、請求項34に記載のキット。
【請求項38】
さらにマイクロタイタープレートを含む、請求項34に記載のキットであって、少なくとも330のフォワードプライマーのそれぞれ、および前記ユニバーサルリバースプライマーが別々のウェルに配置させられている、キット。
【請求項39】
18〜35核酸塩基長の少なくとも300の異なる短い標的核酸を含む組成物であって、該少なくとも300の異なる短い標的核酸のそれぞれが、固有のステムループ逆転写プライマーにハイブリダイズされ、該少なくとも300のステムループ逆転写プライマーのそれぞれが、実質的に同じループ配列ならびに固有のzipコードステム部分および固有の3’標的特異的部分を含む、組成物。
【請求項40】
さらに逆転写酵素を含む、請求項39に記載の組成物。
【請求項41】
さらにdNTPを含む、請求項39に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−545430(P2008−545430A)
【公表日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−514824(P2008−514824)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【国際出願番号】PCT/US2006/021172
【国際公開番号】WO2007/117256
【国際公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(500069057)アプレラ コーポレイション (120)
【住所又は居所原語表記】850 Lincoln Centre Drive Foster City CALIFORNIA 94404 U.S.A.
【Fターム(参考)】