説明

短レーザーパルス発生装置

本発明は短レーザーパルス発生装置に関する。当該装置は:レーザービームを発生及びフィルタリングする手段(2,9)であって、入力レーザーパルスを供する入力レーザービーム(3)を発生させるように備えられているレーザービームを発生及びフィルタリングする手段(2,9);非線形の分散性材料を有する透明薄片(4)であって、前記レーザービームを発生する手段が、自己位相変調によって前記入力レーザーパルスのスペクトルを広げるように備えられていることで、広いスペクトルのレーザーパルス(5)を発生させる透明薄片(4);短レーザーパルス(7)を発生させるため、前記広いスペクトルのレーザーパルスを短縮するように備えられる短縮手段(6);を有し、前記レーザービームを発生する手段は、前記入力レーザービーム(3)が前記透明薄片(4)上で空間的に均一で、かつ前記入力レーザービーム(3)が前記透明薄片(4)を通過するときに3未満の積分Bを有する、ことを特徴とする。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、短レーザーパルスを発生させる装置に関する。この装置では、短レーザーパルスが、入力パルスの期間を減少させることによって得られる。
【背景技術】
【0002】
本発明の一の目的は、高エネルギー(典型的には1[J]よりも大きな値)及び短レーザーパルス(典型的には数[fs])の利用を可能にする短レーザーパルス発生装置を供することである。
【0003】
たとえば非特許文献1に記載されているような短レーザーパルスを発生させる従来の装置では、入力レーザーパルスが、該入力レーザーパルスのスペクトルを広げる非線形効果を有する光ファイバへ入射される。従来の装置では、前記高エネルギー入力レーザーパルスの利用はできない。その理由は、そのレベルのエネルギーではファイバ損傷があるからである。
【0004】
本発明は、たとえば導光されない媒体内部で自由伝播する短レーザーパルスを発生させる装置に関する。
【0005】
本発明はより詳細には、以下のような短レーザーパルスを発生させる装置に関する。当該装置は:
− 入力レーザーパルスを供する入力レーザービームを発生させるように備えられたレーザー発生手段;
− 非線形分散性材料を有する透明薄片であって、自己位相変調によって前記入力レーザーパルスのスペクトルを広げるように備えられることで、広いスペクトルのレーザーパルスを発生させる透明薄片;
− 前記短レーザーパルスを発生させるように前記広いスペクトルのレーザーパルスを短縮するように備えられた短縮手段;を有する。
【0006】
自己位相変調は、1011W/cm2よりも大きなパワー密度を有するレーザーパルスで得られることが観測された。
【0007】
係る装置は非特許文献2から既知である。非特許文献2は、高エネルギー(典型的には1[J]よりも大きな値)及び短期間(典型的には数[fs])の入力レーザーパルスの利用を可能にすることを目的としている。
【0008】
非特許文献2では、入力レーザービームが注入される非線形材料であるBK7の薄片のおかげで、入力パルススペクトルを広げることを可能にする自己位相変調は、導光されない媒体内部で実現される。よってその薄片を飛び出すとき、新たな周波数を有する広いスペクトルが得られる。実際、薄片内で受光されるビームでのパワー密度が1011W/cm2よりも大きい場合、自己位相変調効果が非線形材料の薄片内で生じる。
【0009】
チャープミラー−つまり分散制御素子−は、この広いパルスを短縮することで、短パルスの生成を助ける。
【0010】
非特許文献2では、入力レーザービームは空間的にはガウス分布を示す。このビームは、レンズを介して空間フィルタ上で集光される。非線形薄片は、広いスペクトルのレーザーパルスを発生させるように、レンズと空間フィルタとの間に設けられている。
【0011】
しかし特許文献2では、非線形効果はビーム全体にわたって同様ではない。そのため期間の(再)短縮は不均一となるため、不完全である。
【0012】
しかも特許文献2では、ガウス関数の空間分布を利用するので、非線形薄片と交差することで、ビームの自己集束効果が発生する。この第2の非線形自己集束効果は、レーザービームを空間的に劣化させることで、特に高エネルギーの場合に、光学にとって使い勝手が悪くかつ有害なものにしてしまう効果を有する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】シェンケル(Schenkel)他、“Generationoff 3.8 fs pulses from adaptive compression of a cascaded hollow fibersupercontinuum”
【非特許文献2】メーベル(Mevel)他、“Extracavitycompression technique for high-energy femtosecond pulses”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の一の目的は、上述の装置におけるパルス期間の短縮の特質を、具体的には当該装置の光学系を保持することによって改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明はこの目的を実現する。その理由は、入力ビームが、透明薄片上で空間的に均一で、かつ、前記透明薄片を通過するときに3未満の積分Bを有する、ようにレーザー発生手段が備えられているからである。
【0016】
このことは、前記薄片の非線形効果及び分散効果がビーム全体ずっと均一であることを意味する。その結果、自己変調によって生じるスペクトル広がりは均一となるので、ビーム全体にわたって期間を均一に短縮される。
【0017】
従ってパルス期間の短縮の特質は顕著に改善される。特に、約10[fs]のオーダーの期間では、当該装置を飛び出すときに、入力パルスに対して2〜3倍パルス期間が短縮されるので、本発明は非常に高エネルギーのパルスを生成する。この短縮因子はエネルギーが100[J]を超える入力パルスについて得ることができる。
【0018】
対照的に、非特許文献2に記載された装置では、本発明で用いられるように、空間的に均一なビームを利用することができない。実際、非特許文献2に記載の装置において透明薄片の前で用いられている収束レンズでは、その透明薄片上で均一な分布を得ることができない。
【0019】
ここで本発明の有利な実施例について説明する。
【0020】
それに加えて、z方向の交点で非線形の屈折率n2(z)とパワー密度I(z)を有する厚さlの媒質へ入射する波長λのレーザービームの積分Bが次式のように定義される。
【0021】
【数1】

積分Bの値は、高エネルギーにとって重要である。なぜならこれらのビームの強度は、パルスが薄片内部を進行するにつれて、非線形効果がなおいっそう顕著になるような値だからである。
【0022】
3未満のBでは、空間的な歪みはある程度無視できることが分かった。事実、均一(つまり階段状)な入力ビームが雑音を含んでいるとき、その雑音は高い空間周波数を有する。透明博版へ入射する際、積分Bの指数に比例する増幅が、周波数に依存して生成される。ビームの空間的な歪みは、積分Bの値が3よりも大きくなると重要になる。
【0023】
よって、本発明によって得られるパルス期間短縮因子は、積分Bの値のオーダーである。特に、パルスが時間的にガウス関数形状である理想的な場合には、積分Bの値に等しい。
【0024】
上述の装置では、前記レーザー発生手段は、前記入力ビームが前記透明薄片を通過するときに、積分Bが2〜3となるように備えられる。
【0025】
実質的に2〜3のパルス期間短縮因子を得るため、前記レーザー発生手段は、前記入力ビームが前記透明薄片を通過するときに、積分Bが2〜3となるように備えられることが好ましい。
【0026】
好適には、前記透明薄片の前で前記入力レーザービームの均一な空間分布が失われるのを避けるため、レーザービームは、前記透明薄片へ向かってコリメートされなければならない。特に上述したように、前記透明薄片の前でレンズを用いたのでは、均一な分布を前記透明薄片上で維持することは不可能である。
【0027】
前記短縮手段は、少なくとも1つのチャープミラー又はパルス短縮ネットワークを有して良い。
【0028】
好適には前記透明薄片はシリカ(SiO2)薄片でなければならない。実際、この材料は、良好なフラックス耐性レベルを有し、かつ当該装置にとって満足行く性能のレベルの実現を助ける。前記薄片は前記入力ビームに対して透明である。前記薄片はまたガラスで構成されても良い。
【0029】
有利となるように、前記レーザー発生手段は、周波数ドリフト増幅レーザーを有して良い。この周波数ドリフト増幅レーザー−「チャープパルス増幅」又はCPAとして広く知られている−は、フェムト秒(fs)領域での入力パルスのエネルギー準位を高い値にする。
【0030】
本発明の一の実施例によると、前記レーザー発生手段は空間フィルタを有して良い。前記空間フィルタは、レーザービームを均一にすることで、前記空間フィルタの出口から、空間的に均一な入力レーザーを前記透明薄片上に供するように備えられる。上述したようにレーザー発生手段を形成することは、唯一利用可能なレーザービームが均一でないとき、かつ特にそのレーザービームが十分なエネルギーを有していないときに有利となる。この場合、前記空間フィルタは、前記薄片を透過する空間的に均一な入力レーザーが得られるように、このレーザービームを均一にすることを助ける。
【0031】
好適には、本発明は、短縮された期間レーザーパルスを供する出力ビームを、前記透明薄片へ再入射させるように備えられた手段をさらに有しなければならない。このようにして、前記透明薄片を経由する複数の経路を作成することで、前記装置パルスにおける短縮効果を反復することが可能である。
【0032】
この場合、空間フィルタリング手段が、前記出力ビームを前記透明薄片へ再入射させる前に、期間が短縮されたレーザーパルスを供する前記出力ビームをフィルタリングするように備えられて良い。特に前記フィルタリング手段は、前記透明薄片上への入射ビーム−この場合であれば再入射ビーム−が3未満の積分Bを有するのかをチェックすることを可能にする。
【0033】
本発明はまた、短縮された期間レーザーパルスを発生させるシステムにも関する。当該システムは上述の第1装置及び上述の第2装置を有する。前記の短縮された期間レーザーパルスを供する第1装置からの出力ビームは、前記第2装置の入力ビームを供するのに用いられる。
【0034】
当該システムは、前記第1装置の出力ビームを空間的にフィルタリングし、前記第2装置の入力ビームとして利用されるフィルタリングされたビームを生成するように備えられたフィルタリング手段をさらに有して良い。これらのフィルタリング手段はまた、前記の第2装置の透明薄片上への入射ビームが、3未満のBを有するか否かをチェックすることをも可能にする。
【0035】
本発明はまた、期間が短縮されたレーザーパルスの発生方法にも関する。当該方法は:
− 入力レーザーパルスを供する入力レーザービームを発生させる手順;
− 前記入力レーザービームに、非線形の分散性材料を有する透明薄片を透過させることで、前記透明薄片は、自己位相変調によって前記入力レーザーパルスのスペクトルを広げ、広いスペクトルのレーザーパルスを生成する、手順;
− 前記広いスペクトルのレーザーパルスを短縮することで短レーザーパルスを生成する手順;を有する。
【0036】
当該方法は、前記入力レーザービームが前記透明薄片上で空間的に均一であることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1実施例による短レーザーパルス発生装置の概略図である。
【図2】a-dは、本発明による装置内部での入力レーザーパルスと広いスペクトルのレーザーパルスの時間及びスペクトルプロファイルを表している。
【図3】本発明の第1実施例による短レーザーパルス発生装置の概略図である。
【図4】本発明による入力パルスと広いスペクトルパルスの波長分布を表している。
【図5】本発明による装置内部での広いスペクトルのパルスの半値全幅(FWHM)を表している。
【図6】本発明による装置内部での入力パルスと短入力パルスの期間を表す。
【図7】図1-6を参照して説明した複数の装置をつないだものを有するシステムを表す。
【図8】図1-6を参照して説明した複数の装置をつないだものを有するシステムで用いられるフィルタリング手段を表す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
ここで添付図面を参照しながら本発明の実施例について説明する。
【0039】
図中、同一参照番号は同一種類の技術的素子を指称するものとする。
【0040】
図1に図示されているように、本発明による短レーザーパルス発生装置はフェムト秒超強力レーザー光源2を有する。時間伸張、増幅、及び再短縮によるこのCPAレーザーの動作原理は周知である。
【0041】
レーザー光源2はレーザービーム3を発生させる。レーザー光源2は、入力パルスとして知られるレーザーパルスを供する。そのレーザーパルスの期間はたとえば30[fs]である。
【0042】
レーザービーム3は空間的に均一である。換言すると、レーザービーム3は、階段形状の空間状態を有する。この階段形状の状態は「トップハット」としても知られている。1[J]よりも大きな高エネルギーレーザー2については、レーザー光源2から射出されるレーザービーム3は均一な空間振幅であるので、不均一なビームを均一にする必要がないので、前記ビームのエネルギーの一部を失うことが回避される。
【0043】
レーザービーム3はコリメートされて、非線形材料を有する薄片4を透過する。非線形材料とはたとえばシリカ(SiO2)又はガラスである。薄片4は入力ビームスペクトル範囲内の波長に対して透明である。
【0044】
レーザー光源2は、レーザービーム3が透明薄片4上で1011[W/cm2]よりも大きなパワー密度を有するようなものである。ここでパワー密度とは、入力パルスエネルギーを、入力ビームの期間と透明薄片4へ入射した際のレーザービーム3の表面積との積で除したものと定義される。
【0045】
そのようなパワー密度では、透明薄片4内の材料の非線形性には、前記透明薄片4内部で生じる自己位相変調が含まれる。この自己位相変調効果は、新たな波長の生成によって入力ビームスペクトルを広げる。従って透明薄片4を飛び出すビーム5は、入力ビーム3の入力パルススペクトルと比較して広いスペクトルのパルスを有するインパルスビームである。
【0046】
入力パルス3と広いスペクトルパルス5は、図2a-2dを参照しながら以降において空間的かつスペクトル的に詳細に表される。
【0047】
透明薄片4の材料は正の分散を示す分散剤でもある。透明薄片4の材料は、パルスのスペクトル広がりに加えて、パルス群速度の分散によってそのパルスの時間を延ばす。
【0048】
透明薄片4の厚さの大きさz0のオーダーは次式によって得られる。
z0=t20/C
ここでt0はそのパルスの最初の期間で、大きさCは次式によって与えられる。
C=λD(λ)/0.322π2c2
ここでD(λ)は、前記ビームの波長λに従った前記材料内部での分散で、かつcは真空下での速度である。
【0049】
たとえば、λ=1μmであればC=0.031m-1ps2となり、λ=800nmであればC=0.080m-1ps2となる。
【0050】
実際、透明薄片の厚さは、非線形のシュレーディンガー方程式をシミュレーションによって解くことによっても得ることができる。
【0051】
入力ビーム3は、透明薄片4を通過するときには、3未満の積分Bを有する。z方向の交点で非線形の屈折率n2(z)とパワー密度I(z)を有する厚さlの媒質へ入射する波長λのレーザービームの積分Bが次式のように定義されることは周知である。
【0052】
【数2】

積分Bの値は、高エネルギーにとって重要である。なぜならこれらのビームの強度は、パルスが薄片内部を進行するにつれて、非線形効果がなおいっそう顕著になるような値だからである。3未満のBでは、空間的な歪みは相対的に無視できることが分かった。
【0053】
2〜3の短縮因子を得るため、積分Bの値は2〜3の値に選ばれることが好ましい。
【0054】
続いて広いスペクトルのパルス5は、そのパルスの期間を短縮するため、コンプレッサ6を透過する。コンプレッサ6は、たとえばCPAレーザーで用いられているような、分散制御素子としても知られているチャープミラーで構成される。これらのチャープミラーは、コンプレッサ6内で用いられることが好ましい。なぜなら良好な損傷閾値、効率、及び単純性が得られるからである。
【0055】
「回折格子」として知られるネットワークが、短縮を起こすのに用いられても良い。
【0056】
コンプレッサ6を飛び出す際、短パルス7として知られているパルスが得られる。
【0057】
この装置により、約30[fs]から約10[fs]までパルスの期間を短縮するための数個(典型的には2,3)のユニットの短縮因子が得られる。
【0058】
このような期間の短縮は、パルスの空間的歪みによって制限される。単純な2又は3のオーダーのパルス期間の短縮については、この歪みの欠点が回避される。そのような欠点には、雑音によって発生し、かつ過強度ゆえに材料を損傷させる恐れのある重大な周波数増幅が含まれる。
【0059】
結局、パルスの伝播は自由であることに留意して欲しい。つまりパルスの伝播は本発明による装置内部では導光されない。このことは、用いられるパルスのエネルギーが、具体的には光ファイバによる導光に関する制約によって制限されないことを意味する。従って本発明は、非特許文献1に記載されているような、非線形光ファイバによって供される従来のスペクトル広がりに対する非常に有利な代替解決策を供する。
【0060】
図2a-2dは入力パルス3と広いスペクトルパルス5の概略図である。
【0061】
図2aは入力ビーム3の空間分布を表している。図2aに図示されているように、入力ビーム3は直径dのビーム上で階段形状のプロファイルを有する。本発明によると、このビーム3−直径全体にわたって空間的に均一な−は透明薄片4を透過する。
【0062】
図2cは透明薄片4を飛び出す広いスペクトルのインパルスビーム5の空間分布を表しているす。図2cに図示されているように、ビーム5もまた空間的に均一である。つまりビーム5は、ビームの直径dにわたって階段形状のプロファイルを有する。
【0063】
図2bは入力インパルスビーム3のスペクトル分布を表している。そのパルスのスペクトル幅はΔλ1である。図2dは広いスペクトルのインパルスビーム5のスペクトル分布を表している。その広いスペクトルビームのスペクトル幅はΔλ2である。先述した非線形材料中での自己位相変調効果のため、Δλ2はΔλ2よりも長い。
【実施例1】
【0064】
ここで図3を参照しながら本発明の第2実施例について説明する。
【0065】
図3では、短レーザーパルス発生装置がCPA-2型のレーザー光源を有する。CPA-2型のレーザー光源は、周波数100Hzでレーザービーム8を放出する。短縮後、このビームに係るパルスは、13[mJ]のエネルギー準位、19[nm]のスペクトル幅、及び位相誤差(フーリエ限界の1.3倍)によって制限される55[fs]の期間を有する。当該装置はまた、直径11[mm]のダイアフラム9で構成される空間フィルタ9をも有する。ビーム8はダイアフラム9を透過する。
【0066】
空間フィルタ9は、空間的に均一な入力レーザービーム3を発生させるため、ビーム8の空間的に均一な中心部を選ぶように意図されている。実際、レーザービーム8のエネルギー(上述のように13[mJ])は、この方法を実行することで空間的に均一なビームを直接的に得るのには十分ではない。
【0067】
ダイアフラム9を飛び出す際、約0.17TW/cm2のパワー密度では、入力ビーム3は、空間的に均一であり、かつ9[mJ]のエネルギー準位を有する。
【0068】
入力ビーム3は、厚さ22[mm]のシリカ(SiO2)薄片4へ向かうようにコリメートされる。シリカ(SiO2)薄片4は、広いスペクトルのパルス5を発生させる導光しない非線形媒体として機能する。
【0069】
続いて広いスペクトルパルス5を短縮することで、コンプレッサ6の射出口で短パルス7を得るため、ビーム5のエネルギーの20%が、シリカ(SiO2)コンプレッサプリズム6の線へ伝送される。
【0070】
図4は、入力パルス3と広いスペクトルパルス5についての、波長(nm)による規格化されたスペクトル分布を図示している。この図は、シリカ薄片4における非線形性によって引き起こされる自己位相変調効果によって生成される新たな波長を示している。入力パルス3は19[nm]の半値全幅(FWHM)を有する一方で、広いスペクトルパルスのスペクトルは38[nm]の半値全幅(FWHM)を有する。
【0071】
図5は、インパルスビーム5の中心への距離による広いスペクトルパルス5の半値全幅(FWHM)を表している。この図は、ビーム全体についてのスペクトル広がりの空間的均一性が良好であることを示している。
【0072】
図6は、入力パルス3と短パルス7の規格化表現−つまりコンプレッサ6の射出口で得られたパルスの時間変化[fs]−を表す。
【0073】
この図では、入力パルスの半値全幅(FWHM)は55[fs]である一方、短パルスの半値全幅(FWHM)は33[fs]である。
【0074】
その結果は、相対的に高い入力エネルギーでのパルス期間は良好に短縮されている。
【0075】
本発明による装置1は、100[J]のオーダーの強力レーザーで用いられて良い。これらのレーザーでは、15[fs]のオーダーのパルス期間を装置1の射出口で得ることができる。
【0076】
図7に図示されているように、本発明の一の実施例によると、システム10は、射出口で短パルスビーム7を生成する前述の装置1を有する。当該システムはまた、フィルタリングされたビーム12を発生させるため、ビーム7の空間フィルタリングを行う手段11をも有する。
【0077】
これらのフィルタリング手段11は図8で詳細に説明する。これらのフィルタリング手段11はは、ダイアフラム14内にビームを集中させる第1レンズ13とフィルタリングされたビーム12を再度コリメートする第2レンズ15を有する。
【0078】
続いてフィルタリングされたビーム12は、図1-6を参照しながら前述した短レーザーパルスを発生させる装置1’への入力ビームとして用いられる。
【0079】
より一般的には、短レーザーパルスを発生させる多数の装置−図1-6を参照しながら先に述べた−が、当該システムの射出口でさらに短いパルスを得るため、カスケードシステム内で用いられて良い。
【0080】
前記カスケードシステム内部の様々な装置間では、出力ビームを空間的にフィルタリングして、次の装置のための入力ビームとして用いられるフィルタリングされたビーム12を発生させる手段11を設置することが好ましい。それによりこの入力ビームは3未満のBを有する。
【0081】
事実、これらのフィルタリング手段が存在しないとき、本発明による第1装置からの出力ビームは、透明薄片へ直接入射するには大きすぎる積分Bの値を有するだろう。
【0082】
このカスケードによって、たとえばカスケードを構成する2つの装置と、これらの装置の間に設けられた前述したフィルタリング手段11によって、さらにパルス期間を減少させることも可能である。
【0083】
当該カスケードシステムは透過だけではなく、ミラーを用いることによって反射で利用することも可能である。この種類の反射は、出力ビームの透明薄片4への再入射を可能にする。また重要なこととして、この種類の反射は、同一の透明薄片4で複数のビーム路を用いることを可能にする。この実施例は、当該装置をより小型にすることを可能にする。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力レーザーパルスを供する入力レーザービームを発生させるように備えられているレーザービーム発生手段;
非線形の分散性材料を有する透明薄片;
を有する短レーザーパルス発生装置であって、
広いスペクトルのレーザーパルスを発生させるため、前記透明薄片が自己位相変調によって前記入力レーザーパルスのスペクトルを広げるように、前記レーザービーム発生手段は備えられ、
当該装置は、短レーザーパルスを発生させるため、前記広いスペクトルのレーザーパルスを短縮するように備えられる短縮手段をさらに有し、
前記レーザービーム発生手段は、前記入力レーザービームが前記透明薄片上で空間的に均一で、かつ前記入力レーザービームが前記透明薄片を通過するときに3未満の積分Bを有する、ことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記入力レーザービームが、前記透明薄片を通過するときに、2乃至3の積分Bを有するように、前記レーザー発生手段が備えられる、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記入力レーザービームが、前記透明薄片上で1011W/cm2よりも大きなパワー密度を有する、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記入力レーザービームが、前記透明薄片へ向かってコリメートされる、請求項1乃至3のうちいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記短縮手段は、少なくとも1つのチャープミラー又はパルス短縮ネットワークを有する、請求項1乃至4のうちいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記透明薄片がシリカ(SiO2)薄片である、請求項1乃至5のうちいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記透明薄片がガラス薄片である、請求項1乃至6のうちいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記レーザー発生手段が、周波数ドリフト増幅レーザーを有する、請求項1乃至7のうちいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記レーザー発生手段が空間フィルタを有し、
前記空間フィルタは、前記入力レーザービームを均一にすることで、前記空間フィルタの出口から、空間的に均一な入力レーザーを前記透明薄片上に供するように備えられる、請求項1乃至8のうちいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記の短レーザーパルスを供する出力ビームを、前記透明薄片へ再入射させるように備えられた手段をさらに有する、請求項1乃至9のうちいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記出力ビームを前記透明薄片へ再入射させる前に、前記の短縮レーザーパルスを供する出力ビームをフィルタリングするように備えられた手段をさらに有する、請求項1乃至10のうちいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
請求項1乃至11のうちいずれか一項に記載の第1装置及び請求項1乃至11のうちいずれか一項に記載の第2装置を有する短レーザーパルスを発生させるシステムであって、
前記の短レーザーパルスを供する第1装置からの出力ビームは、前記第2装置の入力ビームを供するのに用いられる、
システム。
【請求項13】
前記第1装置の出力ビームを空間的にフィルタリングし、前記第2装置の入力ビームとして利用されるフィルタリングされたビームを生成するように備えられたフィルタリング手段をさらに有する、請求項12に記載の、短レーザーパルスを発生させるシステム。
【請求項14】
短レーザーパルスの発生方法であって、
当該方法は:
入力レーザーパルスを供する入力レーザービームを発生させる手順;
前記入力レーザービームに、非線形の分散性材料を有する透明薄片を透過させることで、前記透明薄片は、自己位相変調によって前記入力レーザーパルスのスペクトルを広げ、広いスペクトルのレーザーパルスを生成する、手順;
− 前記広いスペクトルのレーザーパルスを短縮することで短レーザーパルスを生成する手順;
を有し、
前記入力レーザービームが前記透明薄片上で空間的に均一であり、かつ前記透明薄片を通過するときには3未満の積分Bを有することを特徴とする、
方法。


【図1】
image rotate

【図2a】
image rotate

【図2b】
image rotate

【図2c】
image rotate

【図2d】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公表番号】特表2011−530087(P2011−530087A)
【公表日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−520556(P2011−520556)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【国際出願番号】PCT/FR2009/000968
【国際公開番号】WO2010/012914
【国際公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(511027965)
【Fターム(参考)】