説明

短絡型サイリスタ

【課題】本発明は、保持電流特性に影響を与えずに、オン状態に移行するブレークオーバ電圧の低電圧化を実現する短絡型サイリスタを提供することを目的とする。
【解決手段】第1領域(P領域1)と第2領域(N領域2)と第3領域(P領域3)と第4領域(N領域4)とが順に接合され、第1領域(P領域1)と第2領域(N領域2)を短絡させる電極11を有する短絡型サイリスタ100は、第3領域(P領域3)に接して形成され、第3領域(P領域3)より不純物濃度が高い第5領域(P++領域31)と、第2領域(N領域2)及び第5領域(P++領域31)に接して形成され、第2領域(N領域2)より不純物濃度が高い第6領域(N++領域41)とを有し、第5領域(P++領域31)の不純物濃度と第6領域(N++領域41)の不純物濃度とによってブレークオーバ電圧値が設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、短絡型サイリスタに関する。
【背景技術】
【0002】
PNPNサイリスタにおいて、他の部分と比べて接合耐圧の低い領域を接合部に設けることにより、オン状態に移行する耐圧であるブレークオーバ電圧を下げる短絡型サイリスタが開示されている(例えば、特許文献1から特許文献4を参照)。
図4に示される従来の短絡型サイリスタでは、端子T1から端子T2にバイアスが印加された場合、接合部J2に逆方向電圧が印加される。これにより、接合部J2よりも接合耐圧の低い高濃度不純物層P++領域が、先にブレークダウンする。その結果、このP++領域に電流が集中して流れる。この電流が増大すると、横方向の抵抗成分により、P1領域直下のN1領域に電圧降下が生じる。この電圧降下により、接合部J1が順バイアスされ、P++領域において、バイアス値が最大となる。このバイアスが、接合部J1の拡散電位を超えるとP1領域から正孔の注入が起こり、端子T1と端子T2間がオン状態に移行する。このように、図4に示される従来の短絡型サイリスタでは、オン状態に移行するブレークオーバ電圧は、P++領域とN1領域との接合耐圧によって決定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平03−62571号公報
【特許文献2】特開平04−106935号公報
【特許文献3】特開平03−233973号公報
【特許文献4】特開平05−190837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、図4に示される短絡型サイリスタでは、オン状態に移行するブレークオーバ電圧は、P++領域とこれに接するN1領域の不純物濃度に基づいて決定される。そのため、極低ブレークオーバ電圧の短絡型サイリスタを実現する場合、P++領域とN1領域の双方の不純物濃度を変更する必要がある。しかし、N1領域の不純物濃度を変更する場合、サイリスタの特性である保持電流特性に影響を与える。そのため、N1領域の不純物濃度を変更することにより、保持電流特性を維持してブレークオーバ電圧を下げることは、困難である。このように、図4に示される短絡型サイリスタでは、保持電流特性に影響を与えずに、オン状態に移行するブレークオーバ電圧の低電圧化を実現することが困難であるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、保持電流特性に影響を与えずに、オン状態に移行するブレークオーバ電圧の低電圧化を実現する短絡型サイリスタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するために、本発明は、第1の導電型の第1領域と第2の導電型の第2領域と前記第1の導電型の第3領域と前記第2の導電型の第4領域とが順に接合され、前記第1領域と前記第2領域を短絡させる電極を有する短絡型サイリスタであって、前記第3領域に接して形成され、前記第3領域より不純物濃度が高い前記第1の導電型の第5領域と、前記第2領域及び前記第5領域に接して形成され、前記第2領域より不純物濃度が高い前記第2の導電型の第6領域とを有し、前記第5領域の不純物濃度と前記第6領域の不純物濃度とによってブレークオーバ電圧値が設定され、少なくとも前記第2領域の不純物濃度を含むパラメータによって保持電流値が設定された短絡型サイリスタである。
【0007】
また、本発明は、上記発明において、前記第5領域又は第6領域は、前記第2領域と前記第3領域との接合面の内、前記電極と前記第2領域との接触面からの距離が最長となる位置に形成されていることを特徴とする。
また、本発明は、上記発明において、前記第5領域と前記第6領域との接合面が、前記電極と接する半導体基板の表面と垂直であることを特徴とする。
また、本発明は、上記発明において、前記第5領域と前記第6領域との接合面が、前記電極と接する半導体基板の表面と平行であることを特徴とする。
また、本発明は、上記発明において、少なくとも前記第5領域と前記第6領域のいずれか一方は、前記電極と接する半導体基板の表面に露呈させて形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、短絡型サイリスタは、第1の導電型の第1領域と第2の導電型の第2領域と第1の導電型の第3領域と第2の導電型の第4領域とが順に接合され、第1領域と第2領域を短絡させる電極を有する。また、短絡型サイリスタは、第3領域に接して形成され、第3領域より不純物濃度が高い第1の導電型の第5領域と、第2領域及び第5領域に接して形成され、第2領域より不純物濃度が高い第2の導電型の第6領域とを有する。このような短絡型サイリスタにおいては、第1領域と第4領域との間にバイアス電圧を印加すると、第5領域の不純物濃度と第6領域の不純物濃度とが高いために、第2領域と第3領域との接合面より先に、第5領域と第6領域との接合面でブレークダウンが生じる。このため、短絡型サイリスタがオン状態に移行するブレークオーバ電圧は、第5領域と第6領域との接合耐圧によって決まることになる。ここで、この接合耐圧は、第5領域の不純物濃度と第6領域の不純物濃度とによって決まり、保持電流特性に関係する第2領域の不純物濃度には依存しない。
【0009】
このように、本発明の短絡型サイリスタにおいて、ブレークオーバ電圧を決めるパラメータが第5領域の不純物濃度と第6領域の不純物濃度とであり、保持電流を決めるパラメータの1つが第2領域の不純物濃度であるという関係になっている。このため、ブレークオーバ電圧と保持電流とを独立して制御することができる。これにより、本発明の短絡型サイリスタは、保持電流特性に影響を与えずに、ブレークオーバ電圧の低電圧化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態による短絡型サイリスタを示す断面構成図である。
【図2】第2の実施形態による短絡型サイリスタを示す断面構成図である。
【図3】第3の実施形態による短絡型サイリスタを示す断面構成図である。
【図4】従来の短絡型サイリスタを示す断面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1の実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態による短絡型サイリスタについて図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態による短絡型サイリスタ100を示す断面構成図である。
図1において、短絡型サイリスタ100は、P領域(1、3、5)、N領域(2、4)、チャネルストッパ(6〜9)、電極(11、12)、絶縁層(21〜24)、P++領域(31、32)、及びN++領域(41、42)を備える。
【0012】
P領域3は、第1の導電型としてのp型半導体の領域であり、短絡型サイリスタ100のバルク層となる半導体基板を構成する。ここで、図1における半導体基板の上側の面を第1の表面F1とし、半導体基板の下側の面を第2の表面F2とする。
N領域2は、第2の導電型としてのn型半導体の領域である。N領域2は、P領域1とP領域3の間に形成され、その一部分が、第1の表面F1に接する。
P領域1は、p型半導体の領域であり、第1の表面F1に露呈させて形成される。
N領域4は、n型半導体の領域である。N領域4は、P領域3とP領域5の間に形成され、その一部分が、第2の表面F2に接する。
P領域5は、p型半導体の領域であり、第2の表面F2に露呈させて形成される。
【0013】
チャネルストッパ(6〜9)は、第1の表面F1又は第2の表面F2と短絡型サイリスタ100の側面に接して形成され、P領域3よりも不純物濃度が高いp型半導体の領域である。チャネルストッパ(6〜9)は、短絡型サイリスタ100の機能として望ましくない漏れ電流(チャネル電流)を抑制する。
絶縁層21は、第1の表面F1に接して設けられ、第1の表面F1に面している。絶縁層21は、チャネルストッパ6の一部分からP領域1の一部分までを覆うように形成される。絶縁層22は、第1の表面F1に接して設けられ、第1の表面F1に面している。絶縁層22は、チャネルストッパ7の一部分からN領域2の一部分までを覆うように形成される。
また、絶縁層23は、第2の表面F2に接して設けられ、第2の表面F2に面している。絶縁層23は、チャネルストッパ9の一部分からP領域5の一部分までを覆うように形成される。絶縁層24は、第2の表面F2に接して設けられ、第2の表面F2に面している。絶縁層24は、チャネルストッパ8の一部分からN領域4の一部分までを覆うように形成される。
【0014】
電極11は、第1の表面F1にそって、絶縁層21に覆われていないP領域1の一部分と絶縁層22に覆われていないN領域2の一部分に接して形成される。電極11の材質は、金属であり、例えば、アルミニウムである。電極11は、P領域1とN領域2を短絡させると共に、P領域1及びN領域2とオーミック接触する。
また、電極12は、第2の表面F2にそって、絶縁層23に覆われていないP領域5の一部分と絶縁層24に覆われていないN領域4の一部分に接して形成される。電極12の材質は、金属であり、例えば、アルミニウムである。電極12は、P領域5とN領域4を短絡させると共に、P領域5及びN領域4とオーミック接触する。
【0015】
P++領域31は、P領域3に接して絶縁層21の下に形成され、P領域3より不純物濃度が高いp型半導体の領域である。また、P++領域31は、第1の表面F1に露呈させて形成される。
P++領域32は、P領域3に接して絶縁層23の上に形成され、P領域3より不純物濃度が高いp型半導体の領域である。また、P++領域32は、第2の表面F2に露呈させて形成される。
N++領域41は、N領域2及びP++領域31に接して絶縁層21の下に形成され、N領域2より不純物濃度が高いn型半導体の領域である。また、N++領域41は、第1の表面F1に露呈させて形成される。
N++領域42は、N領域4及びP++領域32に接して絶縁層23の上に形成され、N領域4より不純物濃度が高いn型半導体の領域である。また、N++領域42は、第2の表面F2に露呈させて形成される。
P++領域(31、32)、及びN++領域(41、42)は、例えば、イオン注入法などにより第1の表面F1又は第2の表面F2に露呈させて形成される。
【0016】
なお、P++領域31又はN++領域41は、N領域2とP領域3との接合部J2における接合面の内、電極11とN領域2との接触面からの距離が遠くなるように配置する。望ましい配置位置は、電極11とN領域2との接触面からの距離が最長となる位置又はその位置付近である。また、P++領域31とN++領域41との接合部J5において、接合部J5の接合面は、電極11と接する第1の表面F1と垂直となる。また、P++領域32又はN++領域42は、N領域4とP領域3との接合部J3における接合面の内、電極12とN領域4との接触面からの距離が遠くなるように配置する。望ましい配置位置は、電極12とN領域4との接触面からの距離が最長となる位置又はその位置付近である。また、P++領域32とN++領域42との接合部J6において、接合部J6の接合面は、電極12と接する第2の表面F2と垂直となる。
なお、接合部J5及びJ6において、接合部J5及びJ6の接合面積が広い程、サイリスタがオン状態に移行しやすくすることができる。そこで、接合部J5及びJ6の形状は、サイリスタの仕様に応じて、接合部J5及びJ6の接合面積が広くなるように調整して適宜設定されても良い。
【0017】
短絡型サイリスタ100は、電極11に接続された端子T1と、電極12に接続された端子T2との間にバイアス電圧が印加され、端子T2の端子電圧より端子T1の端子電圧が高い第1の場合には、オン状態のPNPNPサイリスタとして動作する。この第1の場合に、短絡型サイリスタ100は、P領域1(第1領域)、N領域2(第2領域)、P領域3(第3領域)、N領域4(第4領域)がPNPNの順に接合されたサイリスタと等価になる。ここで、P++領域31は、第5領域とし、N++領域41は、第6領域とする。
また、短絡型サイリスタ100は、端子T2と端子T1との間にバイアス電圧が印加され、端子T1の端子電圧より端子T2の端子電圧が高い第2の場合には、オン状態のPNPNPサイリスタとして動作する。この第2の場合に、短絡型サイリスタ100は、P領域5(第1領域)、N領域4(第2領域)、P領域3(第3領域)、N領域2(第4領域)がPNPNの順に接合されたサイリスタと等価になる。ここで、P++領域32は、第5領域とし、N++領域42は、第6領域とする。このように短絡型サイリスタ100は、いわゆる双方向性2端子構造のサイリスタである。
【0018】
次に、本実施形態の動作について説明する。
まず、図1に示される短絡型サイリスタ100において、端子T1と端子T2との間にバイアス電圧が印加された上記第1の場合の動作を説明する。
図1において、上記第1の場合、接合部J2と接合部J5にそれぞれ逆方向電圧(逆バイアス)が印加される。接合部J2は、N領域2(第2領域)とP領域3(第3領域)との接合部であり、接合部J5は、N++領域41(第6領域)とP++領域31(第5領域)との接合部である。N++領域41の不純物濃度は、N領域2の不純物濃度より高い。また、P++領域31の不純物濃度は、P領域3の不純物濃度より高い。このため、接合部J5の接合耐圧は、接合部J2の接合耐圧より低くなる。これにより、接合部J5が、接合部J2より先にブレークダウンする。その結果、N++領域41とP++領域31が接合する部分に電流が集中して流れる。この電流が増大すると、N領域2における横方向の抵抗成分、すなわち、電極11とN領域2との接触面からP領域1の下方を通ってN++領域41に到達する領域の抵抗成分により、P領域1直下のN領域2に電圧降下が生じる。この電圧降下により、P領域1とN領域2との接合部J1が順バイアスされ、P++領域31において、バイアス値が最大となる。このバイアスが、接合部J1の拡散電位を超えるとP領域1から正孔の注入が起こり、端子T1と端子T2間がオン状態に移行する。
【0019】
なお、短絡型サイリスタ100において、端子T1と端子T2間がオン状態に移行する電圧をブレークオーバ電圧という。上記第1の場合のブレークオーバ電圧は、接合部J5がブレークダウンする電圧と等しくなる。接合部J5がブレークダウンする電圧は、P++領域31の不純物濃度とN++領域41の不純物濃度とによって設定される。つまり、上記第1の場合のブレークオーバ電圧は、P++領域31の不純物濃度とN++領域41の不純物濃度とによって設定される。また、サイリスタの特性の1つであり、端子T1と端子T2間のオン状態を維持するための電流値を示す保持電流値は、少なくともN領域2の不純物濃度を含むパラメータによって設定される。なお、保持電流値を決めるパラメータには、他にP領域1の不純物濃度と拡散深さ、P領域3の不純物濃度と拡散深さ、P領域1のパターン形状などが含まれる。N領域2の不純物濃度は、保持電流値を決めるパラメータの1つである。
【0020】
次に、図1に示される短絡型サイリスタ100において、端子T2と端子T1との間にバイアス電圧が印加された上記第2の場合の動作を説明する。
図1において、上記第2の場合、接合部J3と接合部J6にそれぞれ逆方向電圧(逆バイアス)が印加される。接合部J3は、N領域4(第2領域)とP領域3(第3領域)との接合部であり、接合部J6は、N++領域42(第6領域)とP++領域32(第5領域)との接合部である。N++領域42の不純物濃度は、N領域4の不純物濃度より高い。また、P++領域32の不純物濃度は、P領域3の不純物濃度より高い。このため、接合部J6の接合耐圧は、接合部J3の接合耐圧より低くなる。これにより、接合部J6が、接合部J3より先にブレークダウンする。その結果、N++領域42とP++領域32が接合する部分に電流が集中して流れる。この電流が増大すると、N領域4における横方向の抵抗成分、すなわち、電極12とN領域4との接触面からP領域5の上方を通ってN++領域42に到達する領域の抵抗成分により、P領域5直上のN領域4に電圧降下が生じる。この電圧降下により、P領域5とN領域4との接合部J4が順バイアスされ、P++領域32において、バイアス値が最大となる。このバイアスが、接合部J4の拡散電位を超えるとP領域5から正孔の注入が起こり、端子T2と端子T1間がオン状態に移行する。
【0021】
なお、短絡型サイリスタ100において、上記第2の場合のブレークオーバ電圧は、接合部J6がブレークダウンする電圧と等しくなる。接合部J6がブレークダウンする電圧は、P++領域32の不純物濃度とN++領域42の不純物濃度とによって設定される。つまり、上記第2の場合のブレークオーバ電圧は、P++領域32の不純物濃度とN++領域42の不純物濃度とによって設定される。また、端子T2と端子T1間のオン状態を維持するための電流値を示す保持電流値は、少なくともN領域4の不純物濃度を含むパラメータによって設定される。なお、保持電流値を決めるパラメータには、他にP領域5の不純物濃度と拡散深さ、P領域3の不純物濃度と拡散深さ、P領域5のパターン形状などが含まれる。N領域4の不純物濃度は、保持電流値を決めるパラメータの1つである。
【0022】
以上のように、本実施形態における短絡型サイリスタ100は、P領域1とN領域2とP領域3とN領域4とが順にPNPN接合され、短絡型サイリスタ100は、P領域1とN領域2を短絡させる電極11を有する。また、短絡型サイリスタ100は、P領域5とN領域4とP領域3とN領域2とが順にPNPN接合され、P領域5とN領域4を短絡させる電極12を有する。短絡型サイリスタ100は、P領域3より不純物濃度が高いP++領域31(又は32)と、N領域2より不純物濃度が高いN++領域41と、N領域4より不純物濃度が高いN++領域42とを有する。このため、電極11と電極12との間にバイアス電圧を印加すると、接合部J2より先にP++領域31とN++領域41との接合部J5(又は接合部J3より先にP++領域32とN++領域42との接合部J6)でブレークダウンが生じる。短絡型サイリスタ100がオン状態に移行するブレークオーバ電圧は、P++領域31とN++領域41との接合耐圧(又はP++領域32とN++領域42との接合耐圧)によって決まる。
【0023】
この接合耐圧は、P++領域31とN++領域41との不純物濃度(又はP++領域32とN++領域42との不純物濃度)によって決まる。このため、この接合耐圧は、保持電流特性に関係するN領域2(又は4)の不純物濃度には依存せずに決定できる。例えば、ブレークオーバ電圧の低電圧化を行う場合、N++領域(41、42)の不純物濃度を高めることで、P++領域31とN++領域41との接合耐圧(又はP++領域32とN++領域42との接合耐圧)を下げることができる。これにより、短絡型サイリスタ100は、ブレークオーバ電圧の低電圧化を行うことができる。
また、このようにブレークオーバ電圧の設定が容易になることから、例えば、各種LED(Light Emitting Diode)の順方向電圧に合わせたブレークオーバ電圧を設定できる。これにより、短絡型サイリスタ100は、LEDのオープン故障の際に電流バイパス素子として適用できる。
【0024】
このように、本実施形態における短絡型サイリスタ100は、ブレークオーバ電圧を決めるパラメータがP++領域31(又は32)の不純物濃度とN++領域41(又は42)の不純物濃度とである。また、保持電流を決めるパラメータの1つがN領域2(又は4)の不純物濃度である。このため、ブレークオーバ電圧と保持電流とを独立して制御することができる。これにより、短絡型サイリスタ100は、保持電流特性に影響を与えずに、ブレークオーバ電圧の低電圧化を実現することができる。
【0025】
<第2の実施形態>
以下、本発明の第2の実施形態による短絡型サイリスタについて図面を参照して説明する。
図2は、本実施形態による短絡型サイリスタ100aを示す断面構成図である。
図2において、短絡型サイリスタ100aは、P領域(1、3、5)、N領域(2、4)、チャネルストッパ(6〜9)、電極(11、12)、絶縁層(21〜24)、P++領域(31a、32a)、及びN++領域(41a、42a)を備える。この図において、図1と同じ構成には同一の符号を付す。
【0026】
P++領域31aは、P領域3に接して絶縁層21の下方に形成され、P領域3より不純物濃度が高いp型半導体の領域である。また、P++領域31aは、P領域1の下方の接合部J2の部分に形成される。
P++領域32aは、P領域3に接して絶縁層23の上方に形成され、P領域3より不純物濃度が高いp型半導体の領域である。また、P++領域32aは、P領域5の上方の接合部J3の部分に形成される。
N++領域41aは、N領域2及びP++領域31aに接して形成され、N領域2より不純物濃度が高いn型半導体の領域である。また、N++領域41aは、P++領域31aの上方の部分に形成される。
N++領域42aは、N領域4及びP++領域32aに接して形成され、N領域4より不純物濃度が高いn型半導体の領域である。また、N++領域42aは、P++領域32aの下方の部分に形成される。
P++領域(31a、32a)、及びN++領域(41a、42a)は、例えば、埋め込み拡散法などにより半導体基板の内部に埋め込まれて形成される。
【0027】
なお、P++領域31a又はN++領域41aは、N領域2とP領域3との接合部J2における接合面の内、電極11とN領域2との接触面からの距離が遠くなるように配置する。望ましい配置位置は、電極11とN領域2との接触面からの距離が最長となる位置又はその位置付近である。また、P++領域31aとN++領域41aとの接合部J5aにおいて、接合部J5aの接合面は、電極11と接する第1の表面F1と平行となる。また、P++領域32a又はN++領域42aは、N領域4とP領域3との接合部J3における接合面の内、電極12とN領域4との接触面からの距離が遠くなるように配置する。望ましい配置位置は、電極12とN領域4との接触面からの距離が最長となる位置又はその位置付近である。また、P++領域32aとN++領域42aとの接合部J6aにおいて、接合部J6aの接合面は、電極12と接する第2の表面F2と平行となる。
【0028】
短絡型サイリスタ100aは、端子T1と端子T2との間にバイアス電圧が印加され、端子T2の端子電圧より端子T1の端子電圧が高い第1の場合には、オン状態のPNPNPサイリスタとして動作する。この第1の場合に、短絡型サイリスタ100aは、P領域1(第1領域)、N領域2(第2領域)、P領域3(第3領域)、N領域4(第4領域)がPNPNの順に接合されたサイリスタと等価になる。ここで、P++領域31aは、第5領域とし、N++領域41aは、第6領域とする。
また、短絡型サイリスタ100aは、端子T2と端子T1との間にバイアス電圧が印加され、端子T1の端子電圧より端子T2の端子電圧が高い第2の場合には、オン状態のPNPNPサイリスタとして動作する。この第2の場合に、短絡型サイリスタ100aは、P領域5(第1領域)、N領域4(第2領域)、P領域3(第3領域)、N領域2(第4領域)がPNPNの順に接合されたサイリスタと等価になる。なお、ここで、P++領域32aは、第5領域とし、N++領域42aは、第6領域とする。このように短絡型サイリスタ100aは、いわゆる双方向性2端子構造のサイリスタである。
【0029】
次に、本実施形態の動作について説明する。
図2に示される短絡型サイリスタ100aは、短絡型サイリスタ100のP++領域(31、32)とN++領域(41、42)をP++領域(31a、32a)とN++領域(41a、42a)に置き換える点を除いて同様に動作する。
【0030】
図2において、N++領域41aの不純物濃度は、N領域2の不純物濃度より高い。また、P++領域31aの不純物濃度は、P領域3の不純物濃度より高い。このため、接合J5aの接合耐圧は、接合部J2の接合耐圧より低くなる。上記第1の場合、N++領域41a(第6領域)とP++領域31a(第5領域)との接合部J5aが、接合部J2より先にブレークダウンする。その後の動作は、短絡型サイリスタ100と同様である。
なお、短絡型サイリスタ100aにおいて、上記第1の場合のブレークオーバ電圧は、接合部J5aがブレークダウンする電圧と等しくなる。接合部J5aがブレークダウンする電圧は、P++領域31aの不純物濃度とN++領域41aの不純物濃度とによって設定される。つまり、この上記第1の場合のブレークオーバ電圧は、P++領域31aの不純物濃度とN++領域41aの不純物濃度とによって設定される。また、端子T1と端子T2間のオン状態を維持するための電流値を示す保持電流値は、少なくともN領域2の不純物濃度を含むパラメータによって設定される。なお、保持電流値を決めるパラメータには、他にP領域1の不純物濃度と拡散深さ、P領域3の不純物濃度と拡散深さ、P領域1のパターン形状などが含まれる。N領域2の不純物濃度は、保持電流値を決めるパラメータの1つである。
【0031】
また、N++領域42aの不純物濃度は、N領域4の不純物濃度より高い。また、P++領域32aの不純物濃度は、P領域3の不純物濃度より高い。このため、接合部J6aの接合耐圧は、接合部J3の接合耐圧より低くなる。これにより、上記第2の場合、N++領域42a(第6領域)とP++領域32a(第5領域)との接合部J6aが、接合部J3より先にブレークダウンする。その後の動作は、短絡型サイリスタ100と同様である。
なお、短絡型サイリスタ100aにおいて、上記第2の場合のブレークオーバ電圧は、接合部J6aがブレークダウンする電圧と等しくなる。接合部J6aがブレークダウンする電圧は、P++領域32aの不純物濃度とN++領域42aの不純物濃度とによって設定される。つまり、この上記第2の場合のブレークオーバ電圧は、P++領域32aの不純物濃度とN++領域42aの不純物濃度とによって設定される。また、端子T2と端子T1間のオン状態を維持するための電流値を示す保持電流値は、少なくともN領域4の不純物濃度を含むパラメータによって設定される。なお、保持電流値を決めるパラメータには、他にP領域5の不純物濃度と拡散深さ、P領域3の不純物濃度と拡散深さ、P領域5のパターン形状などが含まれる。N領域4の不純物濃度は、保持電流値を決めるパラメータの1つである。
【0032】
以上のように、本実施形態における短絡型サイリスタ100aは、P領域3より不純物濃度が高いP++領域31a(又は32a)と、N領域2より不純物濃度が高いN++領域41aと、N領域4より不純物濃度が高いN++領域42aとを有する。このため、電極11と電極12との間にバイアス電圧を印加すると、接合部J2より先にP++領域31aとN++領域41aとの接合部J5a(又は接合部J3より先にP++領域32aとN++領域42aとの接合部J6a)でブレークダウンが生じる。短絡型サイリスタ100aがオン状態に移行するブレークオーバ電圧は、P++領域31aとN++領域41aとの接合耐圧(又はP++領域32aとN++領域42aとの接合耐圧)によって決まる。
この接合耐圧は、P++領域31aとN++領域41aの不純物濃度(又はP++領域32aとN++領域42aの不純物濃度)によって決まる。このため、この接合耐圧は、保持電流特性に関係するN領域2(又は4)の不純物濃度には依存せずに決定できる。
これにより、本実施形態における短絡型サイリスタ100aは、第1の実施形態における短絡型サイリスタ100と同等の効果が期待できる。
【0033】
<第3の実施形態>
以下、本発明の第3の実施形態による短絡型サイリスタについて図面を参照して説明する。
図3は、本実施形態による短絡型サイリスタ100bを示す断面構成図である。
図3において、短絡型サイリスタ100bは、P領域(1a、1b、3)、N領域(2a、2b、4)、チャネルストッパ(6〜9)、電極(11a、12a)、絶縁層(22a、22b、25)、P++領域31b、及びN++領域(41b、42b)を備える。この図において、図1と同じ構成には同一の符号を付す。
【0034】
P領域1a、1bは、p型半導体の領域であり、第1の表面F1に露呈させて形成される。
N領域2aは、n型半導体の領域であり、P領域1aとP領域3の間に形成される。また、N領域2aは、その一部分が、第1の表面F1に接する。
N領域2bは、n型半導体の領域であり、P領域1bとP領域3の間に形成される。また、N領域2bは、その一部分が、第1の表面F1に接する。
N領域4は、n型半導体の領域であり、第2の表面F2に露呈させて形成される。
【0035】
絶縁層22aは、第1の表面F1に接して設けられ、第1の表面F1に面している。絶縁層22aは、チャネルストッパ7の一部分からN領域2aの一部分までを覆うように形成される。また、絶縁層22bは、第1の表面F1に接して設けられ、第1の表面F1に面している。絶縁層22bは、チャネルストッパ6の一部分からN領域2bの一部分までを覆うように形成される。また、絶縁層25は、第1の表面F1に接して設けられ、第1の表面F1に面している。絶縁層25は、P領域1aの一部分からP領域1bの一部分までを覆うように形成される。
電極11aは、第1の表面F1にそって、絶縁層25に覆われていないP領域(1a、1b)の一部分と絶縁層(22a、22b)に覆われていないN領域(2a、2b)の一部分に接して形成される。電極11aの材質は、金属であり、例えば、アルミニウムである。電極11aは、P領域(1a、1b)とN領域(2a、2b)を短絡させると共に、P領域(1a、1b)及びN領域(2a、2b)とオーミック接触する。
また、電極12aは、第2の表面F2にそってN領域4とチャネルストッパ(8、9)に接して形成される。電極12aの材質は、金属であり、例えば、アルミニウムである。また、電極12aは、N領域4とオーミック接触する。
【0036】
P++領域31bは、P領域3に接して絶縁層25の下に形成され、P領域3より不純物濃度が高いp型半導体の領域である。また、P++領域31bは、第1の表面F1に露呈させて形成される。
N++領域41bは、N領域2a及びP++領域31bに接して絶縁層25の下に形成され、N領域2aより不純物濃度が高いn型半導体の領域である。また、N++領域41bは、第1の表面F1に露呈させて形成される。
N++領域42bは、N領域2b及びP++領域31bに接して絶縁層25の下に形成され、N領域2bより不純物濃度が高いn型半導体の領域である。また、N++領域42bは、第1の表面F1に露呈させて形成される。
P++領域31b、及びN++領域(41b、42b)は、例えば、イオン注入法などにより第1の表面F1に露呈させて形成される。
【0037】
なお、N++領域41bは、N領域2aとP領域3との接合部J2aにおける接合面の内、電極11aとN領域2aとの接触面からの距離が遠くなるように配置する。望ましい配置位置は、電極11aとN領域2aとの接触面からの距離が最長となる位置又はその位置付近である。また、P++領域31bとN++領域41bとの接合部J7aにおいて、接合部J7aの接合面は、電極11aと接する第1の表面F1と垂直となる。また、N++領域42bは、N領域2bとP領域3との接合部J2bにおける接合面の内、電極11aとN領域2bとの接触面からの距離が遠くなるように配置する。望ましい配置位置は、電極11aとN領域2bとの接触面からの距離が最長となる位置又はその位置付近である。また、P++領域31bとN++領域42bとの接合部J7bにおいて、接合部J7bの接合面は、電極11aと接する第1の表面F1と垂直となる。
【0038】
短絡型サイリスタ100bは、電極11aに接続された端子T1と、電極12aに接続された端子T2との間にバイアス電圧が印加され、端子T2の端子電圧より端子T1の端子電圧が高い第1の場合には、オン状態のPNPNPサイリスタとして動作する。この第1の場合に、短絡型サイリスタ100bは、P領域1a(第1領域)、N領域2a(第2領域)、P領域3(第3領域)、N領域4(第4領域)及びP領域1b(第1領域)、N領域2b(第2領域)、P領域3(第3領域)、N領域4(第4領域)がPNPNの順に接合されたサイリスタと等価になる。ここで、P++領域31bは、第5領域とし、N++領域(41b、42b)は、第6領域とする。
また、短絡型サイリスタ100bは、端子T2と端子T1との間にバイアス電圧が印加され、端子T1の端子電圧より端子T2の端子電圧が高い第2の場合には、逆バイアスとなり導通しない。
このように短絡型サイリスタ100bは、いわゆる片方向性2端子構造のサイリスタである。
【0039】
次に、本実施形態の動作について説明する。
図3に示される短絡型サイリスタ100bは、以下の点を除いて、図1に示される短絡型サイリスタ100と同様の動作をする。
(1)短絡型サイリスタ100bは、片方向性2端子構造のサイリスタである。
(2)短絡型サイリスタ100bでは、短絡型サイリスタ100のP領域1がP領域(1a、1b)に、N領域2がN領域(2a、2b)にそれぞれ置き換えられる。
(3)短絡型サイリスタ100bでは、短絡型サイリスタ100のP++領域(31、32)とN++領域(41、42)がP++領域31bとN++領域(41b、42b)に置き換えられる。
【0040】
図3において、N++領域41bの不純物濃度は、N領域2aの不純物濃度より高く、N++領域42bの不純物濃度は、N領域2bの不純物濃度より高い。また、P++領域31bの不純物濃度は、P領域3の不純物濃度より高い。このため、N++領域41bとP++領域31bの接合部J7aの接合耐圧は、N領域2aとP領域3の接合部J2aの接合耐圧より低くなる。また、N++領域42bとP++領域31bの接合部J7bの接合耐圧は、N領域2bとP領域3の接合部J2bの接合耐圧より低くなる。端子T1と端子T2との間にバイアス電圧が印加された上記第1の場合、N++領域41a及び42a(第6領域)とP++領域31b(第5領域)との接合部J7a及びJ7bが、接合部J2a及びJ2bより先にブレークダウンする。その後の動作は、短絡型サイリスタ100と同様である。
なお、短絡型サイリスタ100bにおいて、上記第1の場合のブレークオーバ電圧は、接合部J7a及びJ7bがブレークダウンする電圧と等しくなる。接合部J7a及びJ7bがブレークダウンする電圧は、P++領域31bの不純物濃度とN++領域(41b、42b)の不純物濃度とによって設定される。つまり、この上記第1の場合のブレークオーバ電圧は、P++領域31bの不純物濃度とN++領域(41b、42b)の不純物濃度とによって設定される。また、端子T1と端子T2間のオン状態を維持するための電流値を示す保持電流値は、少なくともN領域(2a、2b)の不純物濃度を含むパラメータによって設定される。なお、保持電流値を決めるパラメータには、他にP領域(1a、1b)の不純物濃度と拡散深さ、P領域3の不純物濃度と拡散深さ、P領域(1a、1b)のパターン形状などが含まれる。N領域(2a、2b)の不純物濃度は、保持電流値を決めるパラメータの1つである。
【0041】
また、端子T2と端子T1との間にバイアス電圧が印加された上記第2の場合、短絡型サイリスタ100bは、逆バイアスとなるため、導通しない。
【0042】
以上のように、本実施形態における短絡型サイリスタ100bは、P領域3より不純物濃度が高いP++領域31bと、N領域2aより不純物濃度が高いN++領域41bと、N領域2bより不純物濃度が高いN++領域42bとを有する。このため、端子T1と端子T2との間にバイアス電圧を印加する上記第1の場合、接合部J2aより先にP++領域31bとN++領域41bとの接合部J7a(又は接合部J2bより先にP++領域31bとN++領域42bとの接合部J7b)でブレークダウンが生じる。短絡型サイリスタ100bがオン状態に移行するブレークオーバ電圧は、P++領域31bとN++領域41bとの接合耐圧(又はP++領域31bとN++領域42bとの接合耐圧)によって決まる。
この接合耐圧は、P++領域31bとN++領域41bの不純物濃度(又はP++領域31bとN++領域42bの不純物濃度)によって決まる。このため、この接合耐圧は、保持電流特性に関係するN領域2a及び2bの不純物濃度には依存せずに決定できる。
これにより、本実施形態における短絡型サイリスタ100bは、第1の実施形態における短絡型サイリスタ100と同等の効果が期待できる。
【0043】
なお、本発明の実施形態によれば、第1導電型(p型半導体)の第1領域(P領域1)と第2導電型(n型半導体)の第2領域(N領域2)と第1の導電型の第3領域(P領域3)と第2の導電型の第4領域(N領域4)とが順に接合され、第1領域(P領域1)と第2領域(N領域2)を短絡させる電極11を有する短絡型サイリスタ100は、第3領域(P領域3)に接して形成され、第3領域(P領域3)より不純物濃度が高い第1の導電型の第5領域(P++領域31)と、第2領域(N領域2)及び第5領域(P++領域31)に接して形成され、第2領域(N領域2)より不純物濃度が高い第2の導電型の第6領域(N++領域41)とを有する。また、短絡型サイリスタ100は、第5領域(P++領域31)の不純物濃度と第6領域(N++領域41)の不純物濃度とによってブレークオーバ電圧値が設定され、少なくとも第2領域(N領域2)の不純物濃度を含むパラメータによって保持電流値が設定される。
これにより、短絡型サイリスタ100は、保持電流特性に影響を与えずに、ブレークオーバ電圧の低電圧化を実現することができる。
【0044】
また、第5領域(P++領域31)又は第6領域(N++領域41)は、第2領域(N領域2)と第3領域(P領域3)との接合面(接合部J2の接合面)の内、電極11と第2領域(N領域2)との接触面からの距離が最長となる位置に形成されている。
これにより、第2領域(N領域2)における横方向の抵抗成分が大きくなる。この抵抗成分が大きい程、第1領域(P領域1)と第2領域(N領域2)を順バイアスにする電圧降下が大きくなる。このため、この距離が長い程、サイリスタがオン状態に移行しやすくすることができる。
【0045】
また、少なくとも第5領域(P++領域31又は31a)と第6領域(N++領域41又は41a)のいずれか一方は、電極11と接する半導体基板の表面(第1の表面F1又は第2の表面F2)に露呈させて形成される。
これにより、短絡型サイリスタ100は、例えば、イオン注入法などにより第5領域(P++領域31)と第6領域(N++領域41)を形成できる。短絡型サイリスタ100は、製造工程を簡略化できる。
【0046】
なお、本発明は、上記の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。上記の各実施形態において、第1の導電型をp型半導体、第2の導電型をn型半導体として説明したが、第1の導電型をn型半導体、第2の導電型をp型半導体としても良い。この場合は、第4領域(p型半導体領域)から第1領域(n型半導体領域)の方向に導通し、導通する方向が上記の各実施形態と逆になる。
【0047】
また、上記の各実施形態において、第5領域(P++領域)と第6領域(N++領域)の接合部(J5、J5a、J6、J6a、J7a、又はJ7b)における接合面の位置は、第2領域(N領域)と第1領域(P領域)との接合部(J2、J2a、J2b、又はJ3)における接合面と一致して形成する形態でも良いし、ずらした位置に形成する形態でも良い。また、チャネルストッパ(6〜9)を備える形態を説明したが、本発明は、チャネルストッパ(6〜9)を備えない形態に適用しても良い。
また、第5領域(P++領域)又は第6領域(N++領域)を、第2領域(N領域)と第3領域(P領域)との接合面の内、電極と第2領域(N領域)との接触面からの距離が最長となる位置に形成する形態を説明したが、これに限定されるものではない。サイリスタがオン状態に移行する動作を行うことができる位置であれば、他の位置に形成する形態でも良い。ただし、電極と第2領域(N領域)との接触面からの距離が長い程、横方向の抵抗成分が大きくなる。この抵抗成分が大きい程、第1領域(P領域)と第2領域(N領域)を順バイアスにする電圧降下が大きくなる。このため、この距離が長い程、サイリスタがオン状態に移行しやすくすることができる。
【0048】
また、第5領域(P++領域)が第3領域(P領域)と接し、第6領域(N++領域)が第5領域(P++領域)及び第2領域(N領域)と接していれば、第5領域(P++領域)と第6領域(N++領域)の形状及び位置関係は上記の各実施形態に限定されるものではない。例えば、第5領域(P++領域)の下に第6領域(N++領域)が配置される形態でも良い。
また、第2の実施形態において、第5領域(P++領域)と第6領域(N++領域)を
縦に積み重ねて形成する形態を説明したが、第5領域(P++領域)と第6領域(N++領域)のいずれか一方を半導体基板に露呈させて形成する形態でも良い。この場合、第5領域(P++領域)と第6領域(N++領域)のいずれか一方を、例えば、イオン注入法などにより形成できるため、製造工程を簡略化できる。
【符号の説明】
【0049】
1、3、5、1a、1b P領域
2、4、2a、2b N領域
6、7、8、9 チャネルストッパ
11、12、11a、12a 電極
21、22、23、24、25 絶縁層
31、32、31a、32a、31b、32b P++領域
41、42、41a、42a、41b、42b N++領域
100、100a、100b 短絡型サイリスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の導電型の第1領域と第2の導電型の第2領域と前記第1の導電型の第3領域と前記第2の導電型の第4領域とが順に接合され、前記第1領域と前記第2領域を短絡させる電極を有する短絡型サイリスタであって、
前記第3領域に接して形成され、前記第3領域より不純物濃度が高い前記第1の導電型の第5領域と、
前記第2領域及び前記第5領域に接して形成され、前記第2領域より不純物濃度が高い前記第2の導電型の第6領域と
を有し、
前記第5領域の不純物濃度と前記第6領域の不純物濃度とによってブレークオーバ電圧値が設定され、少なくとも前記第2領域の不純物濃度を含むパラメータによって保持電流値が設定された
ことを特徴とする短絡型サイリスタ。
【請求項2】
前記第5領域又は第6領域は、前記第2領域と前記第3領域との接合面の内、前記電極と前記第2領域との接触面からの距離が最長となる位置に形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の短絡型サイリスタ。
【請求項3】
前記第5領域と前記第6領域との接合面が、前記電極と接する半導体基板の表面と垂直である
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の短絡型サイリスタ。
【請求項4】
前記第5領域と前記第6領域との接合面が、前記電極と接する半導体基板の表面と平行である
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の短絡型サイリスタ。
【請求項5】
少なくとも前記第5領域と前記第6領域のいずれか一方は、前記電極と接する半導体基板の表面に露呈させて形成される
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の短絡型サイリスタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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