説明

石油の重質炭化水素を接触水素化処理する方法

本発明は、大きな濃度の汚染物(金属及びアスファルテン)を含む重質石油炭化水素を接触水素化処理するための方法に関し、それは、反応器の型及び供給原料の種類と一緒に低圧操作条件で行われる。本発明は、生成物中の沈澱物及びスラッジの形成を抑制し、改良された性質及び、精製方式のための標準的供給原料として一般に報告されている範囲内に入る、汚染物、API比重、及び留出油レベルを有する水素化処理された炭化水素を生成するために用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石油の重質炭化水素の接触水素化処理(catalytic hydrotreatment)を行なって、それらの性質を改良する油精製工業の方法を与える。
【背景技術】
【0002】
精製工業の発展は、水素化分解及び接触改質の方法と同様に、技術的及び経済的重要性を有する石油重質炭化水素の水素化処理をもたらしている。石油重質炭化水素の中には、重質原油(heavy crude)、超重質原油(extra-heavy crude)、重質原油と軽質原油との混合物、及び大気圧又は真空蒸留から得られた残油のような石油残油があり、それらは32°APIより小さな比重、及び80体積%より少ない538℃で回収される留出油含有量を与える。
【0003】
大きな硫黄及び金属含有量を有する重質原油の生産及び石油残油の入手性のみならず、燃料のエコロジー的品質についての改良に関する要求は、この種の供給原料を精製するための水素化処理方法の発展及び拡大をもたらしてきた。
【0004】
1970年代以降、石油残油の水素化処理についての報告があり、そこでの主たる目的は、重質ヘテロ原子濃度を低くした価値のある留分の回収であることが述べられている。
【0005】
重質原油は、それらの水素/炭素(H/C)比が低く、大きな粘度、本質的に硫黄、窒素、及び金属である汚染物の高い含有量、及び留出油の低い収率を特徴としていると言う事実により、それらを処理するために石油残油と同様な処理を必要としている。
【0006】
反応装置は、殆どの配慮がこの種の供給原料の処理に置かれている方法の一部分であり、それは固定床、沸騰床、又は分散相になっていてもよい。精製工業では、殆ど固定床型を用いている。
【0007】
重質原油及び石油残油中の金属濃度が高いことは、触媒を早く不活性化することに反映され、従って、これらの供給原料を、それらを処理する第一段階で脱金属化し、後の段階で他の汚染物の除去を最大にし、それによりこれらの段階で用いられる触媒のライフサイクルを増大することが重要である。
【0008】
汚染物を除去するのに最も効果的な精製方法は、ナフサ、中間蒸留油、真空蒸留油、残油のような油の事実上全ての留分に適用される水素化処理の方法である。重質原油及び石油残油の場合には、主に金属、硫黄、窒素、及びアスファルテンである種々の汚染物を同時に除去することが望まれており、その方法を有益なものにする操作条件と同様、これらの反応のための大きな活性度及び選択性を有する触媒、反応器の型を適切に選択することが必要である。
【0009】
石油重質炭化水素の改良は、通常水素化処理に基づく処理方式を用いることにより、汚染物を除去し、水素/炭素(H/C)比を増大するようにそれを処理することを意味している。
【0010】
現在存在している商業的方法は、大きな転化率が得られる固定床及び沸騰床(ebullated-bed)については140〜220kg/cmの範囲の大きな圧力を用いた操作条件で石油重質炭化水素の水素化処理を行なっている。これらの方法の操作で連続性を維持するために、沈澱物及びスラッジの形成が、最大0.80重量%の含有量に限定されている。
【0011】
140kg/cmより低い低圧で石油重質炭化水素を水素化処理する方法の操作は、これらの方法に特徴的な問題である沈澱物及びスラッジの形成により制約を受けている。沈澱物及びスラッジの形成は、重質留分(沸点>538℃)の軽質留分への転化も増大する場合か、又は反応器中の圧力を低下することにより増大する。このため、重質炭化水素の水素化分解の商業的方法は、重質留分の魅力的転化を得るために、140kg/cmより高い高圧操作条件で操作されている。
【0012】
石油重質炭化水素の水素化処理法に関連した特許文献として次の発明がある:
【0013】
1997年1月7日のアメリカ特許、US5,591,325は、二段階で石油の重油を水素化処理するための触媒法を特許請求している。第一段階は、固定床反応器でニッケル+バナジウム(Ni+V)の80%以下、好ましくは30〜70%を除去するために行われるが、実施例では45.3〜47%の除去が述べられている。この段階の操作条件は次の通りである:320〜410℃の温度、50〜250kg/cmの圧力、0.1〜2.0時−1の空間速度(LHSV)、及び300〜1,200nl/lの水素/炭化水素(H/HC)比。第二段階は、沸騰床反応器で硫黄、窒素、及び残留金属を除去するためのものであり、次の操作条件で行う:350〜450℃の温度、50〜250kg/cmの圧力、0.2〜10.0時−1のLHSV、及び500〜3,000nl/lのH/HC比。
【0014】
これに関し、前記特許が、二段階反応で、大気圧残油を次の操作条件で水素化処理する場合を正確に例示していることに注意することは重要である;第一及び第二段階の夫々について、150kg/cmの圧力、0.2時−1のLHSV、370〜395℃の温度、及び700nl/lのH/HC比。それにより109wppmのNi+V、1,970wppmの全窒素、6.6重量%のn−C(アスファルテン)としての不溶性物、及び3.78重量%の全硫黄の全除去のみならず、0.01重量%の沈降物及びスラッジの形成を得ている。前記特許は、第一段階については第VIA族、第VIII族、及び第V族の金属に基づく触媒、及び第二段階については有機酸化物に支持された水素化用金属を用いた触媒を使用することも特許請求している。
【0015】
アメリカ特許、US5,591,325のPCTである、1998年7月14日のアメリカ特許、US5,779,992は、a′)石油の重油を水素化脱金属するための触媒を充填した固定床反応器、及びb′)反応器領域a′)の流出生成物を水素化処理するための水素化脱硫触媒を充填した懸濁床反応器を含む装置に関する。この発明の装置によれば、先ず石油の重油を、水素化脱金属触媒を充填した固定床中へ供給し、次にb)段階a)で水素化脱金属した石油の重油を水素化脱硫触媒を入れた懸濁床反応器へ、その一層深い水素化処理を行うために供給する。水素化処理は、長い時間行なってもよい。操作条件は、米国特許、US5,591,325に記載されているものと同様である。
【0016】
メキシコ石油協会(Instituto Mexicano del Petroeleo)による1995年8月25日のメキシコ特許、MX179,301は、25〜40のAPI比重を有する合成原油を得るために重質原油を水素化処理する方法を与えている。この方法は、次の工程を含んでいる:24より低いAPI比重、760mmHgの圧力で室温〜800℃の最終沸点温度範囲、及び2重量%より大きな硫黄、1,000wppmの窒素、150wppmの金属(ニッケル及びバナジウム)、及び5重量%のアスファルテン、の汚染物含有量を有する重質原油の接触水素化処理;液相及び別の気相として反応器からの流出物の分離、及び液相の洗浄器への搬送。この方法は、汚染物含有量が低く、慣用的精製方式で100%の一つの供給原料として処理することができる処理済み又は改良原油を回収し、留出油の収率を増大し、その品質を向上する。
【0017】
1975年8月26日の特許、US3,901,792は、多段階で原油又は大気圧残油を脱金属及び脱硫するための方法を特許請求している。最初は、重質供給原料を、水素と共に沸騰触媒床中に次の操作条件で導入する:68〜170kg/cmの圧力、387〜440℃の温度、0.20〜1.5時−1のLHSV;ここで、脱金属化度は、供給物のニッケル及びバナジウムの量により、50〜80重量%以上の範囲にある。反応器の上方部分から酸性ガスとして軽質留分が出、その軽質炭化水素留分を後で回収するのに対し、液体流出物は、第一段階の特性と同じ特性の床中でそれを水素化脱硫するために水素の流れと混合し、反応の第二段階へ導入する。反応器の上方部分では、ガス状留分を回収し、後でそれを処理するのに対し、この第二反応器で回収された液体流出物は、後の精留又は処理のために送る。
【0018】
1979年8月28日のアメリカ特許、US4,166,026は、重質原油、抜頭原油、真空残油、又はアスファルテン、重金属及び硫黄の含有量の大きい瀝青油のような重質炭化水素の二段階水素化処理法を特許請求している。アスファルテンの水素化脱金属及び水素化分解の第一段階のために、重油を水素流と一緒に加熱する。この第一段階にかけた後の流出物を気・液分離器へ送り、そこで水素に富むガス状留分、硫化水素、及び軽質炭化水素を洗浄器へ送り、軽質炭化水素を回収するのに対し、液体流出物は再循環水素の一部分と一緒にして反応の第二段階へ送り、そこで主に水素化脱硫及び水素化脱窒素の反応を行う。然る後、この段階からの流出物を気・液分離器へ送り、そこで液体生成物を回収し、分離器へ送り、軽質留分及び重質留分を得る。その間に、水素、硫化水素、及び軽質炭化水素に富むガス状留分を洗浄器へ送り、軽質炭化水素を回収し、水素に富むガス状留分及び水素を後の装置で洗浄する。この方法を好ましくは両方の段階で操作する操作条件は、次の通りである:30〜250kg/cmの圧力、350〜450℃の温度、導入物について100〜2,000標準(normal)リットル/リットルのH/HC比、及び0.1〜10.0時−1のLHSV。
【0019】
本発明の方法は、目的、操作条件、及び結果に関して、上記文献のものと比較してかなりの相違を与える。なぜなら、それは、低圧操作条件、反応器の型、及び水素化処理する供給原料の種類の組合せで、それらが一緒になって金属、硫黄、窒素、及びアスファルテンを除去する大きな能力を与えるのみならず、沈澱物及びスラッジの形成を抑制し、改良された性質を有する水素化処理された炭化水素を得る組合せによって達成されるからである。それらのことは次の節で明確に且つ詳細に記述する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
発明の詳述
本発明は、工業的石油精製方法において、石油重質炭化水素の接触水素化処理を固定床又は沸騰床反応器を用いた二段階反応で行い、然も、それを、低圧操作条件、反応器の型、及び水素化処理する供給原料の種類の組合せで、それらが一緒になって金属、硫黄、窒素、及びアスファルテンを除去する大きな能力を与えると共に、沈澱物及びスラッジの形成を抑制する組合せにより行い、改良された性質を有する水素化処理された炭化水素を得る方法を与える。
【0021】
本発明の方法で水素化処理することができる石油重質炭化水素の中には、重質原油、超重質原油、重質及び軽質原油混合物、大気圧又は真空蒸留からの残油のような石油残油があり、それらは32°より低いAPI比重及び80体積%より少ない538℃で回収される留出油含有量を与える。
【0022】
従って、本発明の目的は、低圧操作条件、反応器の型、及び水素化処理する供給原料の種類の組合せで、それらが一緒になって沈澱物及びスラッジの形成を抑制する組合せにより、石油重質炭化水素を接触水素化処理するための方法を与えることにある。
【0023】
本発明の別の目的は、32°より低いAPI比重、及び80体積%より少ない538℃で回収される留出油含有量を与える、石油重質炭化水素の接触水素化処理法を与えることにある。
【0024】
本発明の更に別の目的は、改良された性質の炭化水素が、最少の沈澱物及びスラッジ含有量で得られる、石油重質炭化水素の接触水素化処理方法を与えることにある。
【0025】
本発明の更に別の目的は、沈澱物及びスラッジの形成を抑制するのと同様、金属、硫黄、窒素、及びアスファルテンを除去する大きな能力を有する、石油重質炭化水素の接触水素化処理方法を与えることにある。
【0026】
本発明の更に別の目的は、慣用的精製方式で処理される供給原料として用いることができ、或は改良された性質を有する石油炭化水素として販売することができる改良された性質を有する炭化水素が得られる、石油重質炭化水素の接触水素化処理方法を与えることにある。
【0027】
本発明の更に別の目的は、慣用的精製法の前に配置することができる、石油重質炭化水素の接触水素化処理のための方法を与えることにある。
【0028】
図1の方式は、本発明を実施することができる設備の特別な配置を例示しているが、それは、本発明を特定の設備に限定するものと見做してはならない。
【0029】
本発明についての詳細な記述
異なった水素化処理触媒を用いた固定床又は沸騰床反応器で、二段階反応で石油重質炭化水素の水素化処理を行うための、本出願人により知られている最もよい方法を下に記述するが、そこでは主に、第一段階で石油重質炭化水素の水素化脱金属及びアスファルテンの水素化分解を行い、第二段階で石油重質炭化水素の水素化脱硫及び水素化脱窒素が行われ、然も、それは、低圧操作条件、反応器の型、水素化処理する供給原料の種類の組合せで、それらが一緒になって金属、硫黄、窒素、及びアスファルテンを除去する大きな能力を与えるのみならず、沈澱物及びスラッジの形成を抑制し、改良された性質を有する水素化処理された炭化水素を得る組合せにより行われる。
【0030】
一般に、本発明の方法への供給物として用いられる炭化水素の種類には限定は存在しない。石油重質炭化水素中には、重質原油、超重質原油、重質及び軽質原油混合物、大気圧又は真空蒸留からの残油のような石油残油があり、それらは32°より低いAPI比重及び80体積%より少ない538℃で回収される留出油含有量を与える。本発明を適用する例には、重質原油及び残油が含まれ、後者は大気圧及び真空蒸留から得られるものである。
【課題を解決するための手段】
【0031】
本発明は、
I.石油重質炭化水素を、水素化処理触媒を用いた固定床又は沸騰床反応器へ供給し、そこで主に、石油重質炭化水素の水素化脱金属及びアスファルテンの水素化分解を行う段階、及び
II.段階Iで水素化処理された石油重質炭化水素を、水素化処理触媒を用いた固定床又は沸騰床反応器へ送り、石油重質炭化水素の一層深い水素化脱硫及び水素化脱窒素を行う段階、
を含む。
【0032】
石油重質炭化水素が、沈澱物及びスラッジの重質化合物前駆物質を多量に含むという事実により、必然的にそれらが水素化処理中に形成され、そのため本発明の方法を、低圧操作条件、反応器の型、水素化処理する供給原料の種類の組合せで、それらが一緒になって金属、硫黄、窒素、及びアスファルテンを除去する大きな能力を与えるのみならず、沈澱物及びスラッジの形成を抑制し、改良された性質を持つ水素化処理された炭化水素を得る組合せにより行う。
【0033】
実際、スラッジ及び沈澱物は、重質炭化水素中に存在する重質アスファルテンの脱アルキル化によるのと同様、樹脂及び軽質アスファルテン留分の水素化分解により水素化処理反応中に生成する化合物であることは注目に値する;それらの相互溶解性が減少することにより、沈澱及びスラッジの形成を起こす。沈澱物形成の別の原因は、好ましくは沸騰床反応器中で行われる操作中の水素化処理触媒の摩耗によるものである。
【0034】
本発明で行うように、反応を低圧で行なった場合、石油重質炭化水素の重質留分の水素化分解が、供給原料の穏やかな転化も得られるような仕方で穏やかに行われることに注意することも重要である。低圧操作条件でその方法を行なった時、このことは沈澱物及びスラッジの形成に都合がよく、従って、本発明の方法を、低圧操作条件、反応器の型、及び水素化処理する供給原料の種類の組合せで、それらが一緒になって沈澱物及びスラッジの形成を抑制する組合せによって実施することも述べておく。
【0035】
本発明の出願人は、下で言及する低圧操作条件で二段階反応で行うことにより、供給原料の性質が改良され、生成物中の沈澱物及びスラッジの形成が抑制されることを思いがけなく見出した。
【0036】
【表1】

【0037】
特に、本出願人は、各工程についての低圧操作条件は、次の通りであることを見出した:
【0038】
【表2】

【0039】
【表3】

【0040】
反応の二つの段階で用いられる水素化処理触媒は、それらの物理的、化学的、及び組織的性質で異なっており、汚染物の除去に対し異なった選択性を与える結果になることに注意することは重要である。
【0041】
本発明の方法により水素化処理される炭化水素は、主に次の特定の性質を変化させることにより、供給された重質炭化水素と比較して、それらの性質のかなりの改良を与える:約15単位までのAPI比重、供給物と比較して、最少の沈澱物及びスラッジ含有量で、約50体積%までの、538℃で回収される留出油の含有量。
【0042】
石油重質炭化水素から多量の不純物が除去されるが、低圧操作条件、反応器の型、水素化する供給物の種類の組合せを用いて実施することにより、本発明の方法はその連続的操作中、それらの材料による閉塞を生ずることなく、その方法によって維持される沈澱物及びスラッジの含有量が予想外に低いことに注意すべきである。
【0043】
本発明の方法により、次に、石油重質炭化水素と水素との混合物を、直接燃焼加熱器で予熱して、その反応温度に到達させる。
【0044】
第一反応段階で、石油重質炭化水素と水素との混合物を、主にアスファルテンの水素化脱金属及び水素化分解の反応を実施するのに必要な条件になった接触水素化処理反応器へ供給し、重金属(ニッケル及びバナジウム)の量を減少し、留出油の体積を実質的に増大する。それと平行して、水素化脱硫及び水素化脱窒素のような他の反応も行う。
【0045】
次に、第一反応段階からの流出物を、水素化処理の第二反応段階へ送り、そこでは深い水素化脱硫及び水素化脱窒素が主たる反応であり、全硫黄含有量を、慣用的精製方式で処理するための生成物として要求されるレベルまで減少させる。それと平行して、水素化脱金属及び水素化分解のような他の反応を実施する。
【0046】
第一反応段階で用いられる水素化脱金属(HDM)触媒は、ニッケル・モリブデン系触媒であるのに対し、第二反応段階で用いられる水素化脱硫(HDS)触媒は、コバルト・モリブデン系触媒である。両方の触媒とも、担体としてγアルミニウムを用いている。
【0047】
HDM触媒は、低い比表面積を示し、HDS触媒よりも大きな気孔孔径及び気孔体積を示す。HDM触媒の気孔は、100〜250Åの範囲に一層集中している(〜70%)のに対し、HDS触媒の場合には、気孔が最も集中している範囲は50〜100Å(〜60%)である。HDM触媒は、250Åより大きな気孔を約20%有するのに対し、HDS触媒では、気孔のこの範囲は0.5%より少ない(表3及び18参照)。
【0048】
本発明の主な利点は、25°より低いAPI比重及び80体積%より少ない538℃で回収される留出油含有量を与える石油重質炭化水素の接触水素化処理法が、低圧操作条件、反応器の型、水素化処理する供給原料の種類の組合せで、それらが一緒になって金属、硫黄、窒素、及びアスファルテンを除去する大きな能力を与えるのみならず、沈澱物及びスラッジの形成を抑制する組合せにより行われ、改良された性質を有する水素化処理された炭化水素を得るということである。本発明の方法を実施する低圧操作条件は、一般に構成Iに与えたものであるが、各反応段階に関しては、夫々構成II及びIIIに与えたように、低圧操作条件の特定又は好ましい範囲が存在する。
【0049】
特に、本発明で提案した方法を遂行するために、本出願人に知られている最良のやり方を例示している図1の工程図を下に説明する。
【0050】
ライン(1)で示した石油重質炭化水素を、供給タンク(2)へ導入し、ポンプ(3)を通って送り、ライン(7)で示した水素と混合するが、その水素は、新しい水素の一部分(5)及び再循環水素(36)により構成されている。
【0051】
ライン(4)によって示した新しい水素を二つの部分に分け、第一部分(5)を、再循環水素(36)と一緒に石油重質炭化水素(1)へ注入し、混合したもの(8)を段階Iの触媒反応器(12)へ送り、第二部分(6)を段階IIの触媒反応器(15)へ送る。
【0052】
供給物と水素との混合物(8)を、反応器からの流出物(16)と共に熱交換器(9)により予熱し、次にその温度を直接燃焼加熱器(10)により上昇させる。加熱された流出物(11)を、段階Iの触媒反応器(12)へ、構成IIに示した反応温度で送り、主に水素化脱金属及び水素化分解の反応のみならず、僅かな程度の水素化脱硫及び水素化脱窒素のための補助的反応を行う。
【0053】
第一反応段階で水素化処理された生成物(13)を、ライン(6)により示された新しい水素の別の部分と混合し、流れ(14)を形成し、それを段階IIの触媒反応器(15)へ導入し、そこで主に水素化脱硫及び水素化脱窒素の反応を行うと共に、構成IIIに示した低圧操作条件により、僅かな程度の水素化脱金属及び水素化分解のための補助的反応を行う。
【0054】
二つの反応段階で水素化処理された生成物(16)を、熱交換器(9)により冷却し、洗浄水(18)の噴射にかけ、更に熱交換器(17)により冷却し、次に高圧分離器(19)へ送り、そこで気・液分離を行う。
【0055】
基本的に水素化及び硫化水素により構成された分離された蒸気(21)を、二つの部分へ分ける:a)その蒸気の第一部分(23)は、コンプレッサー(32)の吸引タンクへ導入し、そこで軽質液体炭化水素(33)を水素に富む流れ(34)から分離し、それをコンプレッサー(35)による処理へ再循環する;b)蒸気の第二部分(27)は、サワーガス・スイートニングへ送る。更に、この高圧分離器で、過剰の残留サワー水が得られ、それを水処理へ送る。
【0056】
サワー水中に溶解したアンモニア塩を含有する液体流出物(22)を、水素化処理された生成物から分離し、水処理へ送る。
【0057】
高圧分離器(19)からの液体流出物(20)を膨張バルブ(24)へ送り、液体・蒸気流(25)を得、それを低圧で操作される第二分離器(26)へ導入し、そこから残留ガスの流れ(28)が得られ、それをガス処理プラントへ送り、本発明の方法で得られた軽質炭化水素を回収する。
【0058】
低圧分離器(26)で得られた液体流出物(30)を、ポンプ(31)を通って一連の域内(battery limits)へ送り、慣用的精製方式でそれを処理するか、或は石油軽質炭化水素としてそれを販売する。更に、過剰の残留サワー水(29)が、この分離器で得られ、それを水処理へ送る。
【実施例】
【0059】
本発明の方法を一層よく例示するため、上で述べたことを裏付ける実施例を下に記載するが、それは特許請求の範囲を限定するものではない。
【0060】
例1
本発明の動機になった、慣用的精製方式のための典型的な供給原料を得るか、或は改良された性質を有する炭化水素として販売するためのものを得るために、石油重質炭化水素を接触水素化処理する方法の特別な適用は、表1に与える特定の性質を有する重質原油を、表2に示す低圧操作条件の組合せにより、表3に与える性質を有する水素化脱金属(HDM)及び水素化脱硫(HDS)触媒を使用した二段階固定床反応で水素化処理することについて実施したものである;それらは一緒になって、金属、全硫黄、アスファルテン、及び全窒素の意義ある除去を思いがけなく達成するが、沈澱物及びスラッジの形成が予想外に抑制され、表4に与える改良された性質を有する水素化処理された炭化水素が得られることを実証する。
【0061】
表1は、水素化処理法の反応の各々を行なった時に沈澱物及びスラッジが形成されるのであって、供給物がそれらを含んでいるのではないことを示している。
【0062】
表4は、二つの反応段階後、金属が353.5wppmから113.8wppmへ減少し、硫黄が3.44重量%から0.66重量%へ減少し、アスファルテンが12.4重量%から4.67重量%へ減少し、全窒素が3,700wppmから2,045wppmへ減少することを示している。
【0063】
【表4】

【0064】
【表5】

【0065】
前記表は、汚染物質の意義ある除去が、重質原油の水素化処理(HDT)を行なった後に得られる場合、沈澱物及びスラッジの形成が0.65重量%で、これらの方法の操作の連続性を維持するために許容できる限界である0.8重量%より低い値になることも示している。
【0066】
同じ表は、API比重が20.91から28.93°APIへ増大し、538℃で回収される留出油含有量が62.5体積%から88.1体積%へ増大し、68.3体積%の供給原料転化率が得られることを報告している。
【0067】
【表6】

【0068】
【表7】

【0069】
得られた結果は、本発明の重質炭化水素の接触水素化処理法を用いて、低圧操作条件、反応器の型、及び水素化処理する供給原料の種類の組合せにより、意義ある量の汚染物質が除去され、沈澱物及びスラッジの形成が、工業的操作の継続を保証する許容可能な限界より低いレベルまで予想外に抑制され、更に供給原料の顕著な転化率を得、精製方式に典型的な供給物で一般に報告されている範囲内のレベルの汚染物、API比重、及び留出油を有する改良された性質の水素化処理炭化水素を生ずることを示している。
【0070】
これに関して、供給原料の転化率は、次の式で計算されることに注意することは重要である。
【0071】
【数1】

【0072】
例2
本発明の石油重質炭化水素の接触水素化処理の方法の別の特定の適用は、表1に報告した特定の性質を有する例1の重質原油の水素化処理を、表5に示した低圧操作条件の組合せにより、表3に与えた性質を有する例1のHDM及びHDS触媒を使用して二段階固定床反応の触媒装置中で行ったものである;それらは一緒になって、沈澱物及びスラッジの形成を抑制するのみならず、金属、全硫黄、アスファルテン、及び全窒素の意義ある除去を達成し、表6に示す改良された性質を有する水素化処理された炭化水素が得られることを明らかに実証している。
【0073】
前の例とは異なり、本発明のこの特別な適用については、その方法を余り厳しくないものにする為、圧力だけを(一層低い値に)修正し、本方法の第二反応段階で空間速度を(一層高い値に)修正したが、低圧、反応器の型及び水素化する供給原料の種類についての他の操作条件は、何等変化することなく保持した。
【0074】
【表8】

【0075】
表6は、二つの反応段階後、金属が353.5wppmから135wppmへ減少し、硫黄が3.44重量%から0.802重量%へ減少し、アスファルテンが12.4重量%から5.41重量%へ減少し、全窒素が3,700wppmから2,310wppmへ減少し、例1の場合ほど驚く程ではないが、そのようにかなり減少することを示している。
【0076】
更に、その表は、重質原油のHDTを行なった後、汚染物質の重要な除去がある場合でも、沈澱物及びスラッジの形成が思いがけなく0.32重量%になり、この種の方法の操作の連続性を維持するために許容できる限界である0.8重量%より著しく低い値になることを示している。
【0077】
【表9】

【0078】
同じ表は、API比重が20.91から27.52°APIへ増大し、538℃で回収される留出油含有量が62.5体積%から78.4体積%へ増大し、供給物転化率が42.4体積%で、例1で得られたものより低い値であるが、その方法の厳しさを減少させることができたことを考慮すると、同時に意義ある値の転化率が得られることを報告している。
【0079】
得られた結果は、本発明が、その好ましい態様の一つとして、低圧操作条件、反応器の型、水素化処理する供給原料の種類の組合せにより、重質炭化水素の接触水素化処理法の厳しさを少なくすることにより、かなりの量の汚染物を除去し、導入物の顕著な転化率を達成し、改良された性質を有する水素化処理された炭化水素を生成する場合でも、沈澱物及びスラッジの形成を、工業的操作の持続を保証する許容可能な限界よりもかなり低いレベルまで驚く程抑制することを確認させるものである。
【0080】
例3
慣用的精製方式のための典型的な供給物を得るため、或は改良された性質を有する炭化水素としてそれを販売するためのものを得るため、本発明の更に別の特別な適用を、表1に報告した特定の性質を有する例1及び2の重質原油の接触水素化処理を、表7に示した低圧操作条件の組合せにより、表3に示した性質を有する例1及び2のHDM及びHDS触媒を使用して二段階固定床反応の触媒装置で実施することにより行った;それらは一緒になって、金属、全硫黄、アスファルテン、及び全窒素の意義ある除去を達成し、表8に示した改良された性質を有する水素化処理した炭化水素を得ることの外に、沈澱物及びスラッジの形成を抑制することを実証している。
【0081】
例1とは異なって、本発明のこの特別な適用については、その方法の第二反応で空間速度だけが(例2の場合のように一層高い値に)修正され、その方法を例1のものよりも厳しくないものにしているが、例2のものよりは厳しくし、低圧、反応器の型、及び水素化する供給原料の種類についての他の操作条件は、何等変化することなく保持している。
【0082】
【表10】

【0083】
表8は、二つの反応段階後、例1の場合と殆ど同じ位驚く程、金属が353.5wppmから119.4wppmへ減少し、硫黄が3.44重量%から0.75重量%へ減少し、アスファルテンが12.4重量%から4.72重量%へ減少し、全窒素が3,700wppmから2,075wppmへ減少することを報告している。
【0084】
更に、その表は、重質原油のHDTを行なった後、汚染物質のかなりの除去がある場合でも、沈澱物及びスラッジの形成が0.53重量%になり、この種の方法の操作の連続性を維持するために許容できる限界である0.80重量%より明らかに低い値になることを示している。
【0085】
【表11】

【0086】
同じ表は、API比重が20.91から27.99°APIへ増大し、538℃で回収される留出油含有量が62.5体積%から83.5体積%へ増大し、それにより、供給物転化率が56.0体積%で、例1で得られたものより低い値で、例2のそれよれも高い値であるが、例1及び2に対して中間的レベルの厳しさでその方法を操作することができたことを考慮すると、意義ある供給物転化率が得られることを報告している。
【0087】
得られた結果は、本発明の重質炭化水素を接触水素化処理する方法を用いることにより、汚染物を著しく除去し、沈澱物及びスラッジの形成を、その方法の工業的操作の持続を保証する許容可能な限界よりもかなり低いレベルまで驚く程抑制し、改良された性質を有する水素化処理炭化水素が、精製方式に典型的な供給原料で一般に報告されている範囲内のレベルの汚染物、API比重、及び留出油を持って得られることを再確認させるものである。
【0088】
例4
本発明の更に別の特別な適用は、表1に報告した特定の性質を有する例1〜3の重質原油を二つの操作で、表9に示した低圧操作条件の組合せにより、表3に示した性質を有する例1〜3のHDM及びHDS触媒を用いて二段階固定床反応の触媒装置で水素化処理することにより実施したものである;それらは一緒になって驚くほど顕著な仕方で、沈澱物及びスラッジの形成を抑制し、表10に報告したように、慣用的精製方式に典型的な供給原料を得るか、又は改良された性質を有する水素化処理された炭化水素として販売するために、実施可能な選択事項になることを実証している。
【0089】
例1とは異なって、この本発明の特別な適用については、その方法の第二反応段階で、温度を(低い値に)修正し、圧力を(低い値に)修正し、空間速度を(高い値に)修正し、低圧、反応器の型、及び水素化する供給物の種類についての他の操作条件は何等変化することなく保持しながら、その方法を一層厳しくないものにしている。
【0090】
【表12】

【0091】
表10は、第二反応段階で、夫々360℃及び380℃の操作温度での夫々の実験について、HDT後、例1の場合ほど驚く程ではないが、かなりの程度に、金属を353.5wppmから149.7及び138.4wppmへ減少し、硫黄を3.44重量%から1.12及び0.89重量%へ減少し、アスファルテンを12.4重量%から6.41及び5.65重量%へ減少し、全窒素を3,700wppmから2,381及び2,315wppmへ減少していることを報告している。
【0092】
【表13】

【0093】
更に、その表は、重質原油のHDTを行なった後、汚染物質の意義ある除去がある場合でも、第二段階で夫々360℃及び380℃の反応温度での各実験について、沈澱物及びスラッジの形成が、全く思いがけなく、0.21重量%及び0.26重量%になることを示している;これらの値は、この種の方法の操作の連続性を維持するために許容できる限界である0.8重量%より著しく低い値である。
【0094】
同じ表は、API比重が20.91から26.28及び26.72°APIへ増大し、538℃で回収される留出油含有量が62.5体積%から76.1及び77.4体積%へ増大し、それにより、例1で得られたものより低い値であるが、その方法の厳しさを減少させることができたことを考慮すると、同時に意義ある値である36.3及び39.7体積%の供給物転化率が得られることを示している。
【0095】
得られた結果は、本発明が、その好ましい態様の二つとして、低圧操作条件、反応器の型、水素化処理する供給原料の種類の組合せにより、重質炭化水素の接触水素化処理法の厳しさを少なくすることにより、かなりの量の汚染物を除去し、供給物の顕著な転化率を達成し、改良された性質を有する水素化処理された炭化水素を生成する場合でも、沈澱物及びスラッジの形成を、工業的操作の持続を保証する許容可能な限界よりもかなり低いレベルまで驚く程抑制することを確認させるものである。
【0096】
例5
本発明の更に別の特別な適用では、表11に示した特定の性質を有する大気圧蒸留の残油を二つの操作で、表12に示した低圧操作条件の組合せにより、表3に与えた性質を有する前記例の水素化脱金属(HDM)及び水素化脱硫(HDS)触媒を用いて二段階固定床反応で水素化処理することにより、それを実施した;それらは一緒になって金属、全硫黄、アスファルテン、及び全窒素の意義ある除去が得られる場合でも、沈澱物及びスラッジの形成が予想外に抑制され、表13に与えた改良された性質を有する水素化処理された炭化水素が得られることを実証している。
【0097】
前の例とは異なって、本発明のこの特別な適用については、(一層低い値の比重、一層多量の汚染物、及び538℃で回収される蒸留物の一層低い含有量を有する)遥かに一層重質の石油炭化水素を用い、前記実施例と同様なやり方で他の低圧操作条件を変化させ、同じ型の反応器を保持した。
【0098】
【表14】

【0099】
表11は、供給原料が殆ど沈澱物及びスラッジを含まないことを示している。なぜなら、それらは、水素化処理過程の反応の各々を遂行することにより形成されるからである。
【0100】
【表15】

【0101】
表13は、第二反応段階で、夫々1.0及び0.5時−1の操作空間速度(LHSV)での夫々の実験について、HDT後、例1の場合のように驚く程、金属を575.6wppmから277.8及び217.5wppmへ減少し、硫黄を4.60重量%から1.18及び1.02重量%へ減少し、アスファルテンを17.74重量%から10.8及び9.15重量%へ減少し、全窒素を5,086wppmから3,040及び2,706wppmへ減少していることを報告している。
【0102】
更に、その表は、大気圧蒸留の残油のHDTを行なった後、汚染物質の意義ある除去がある場合でも、第二段階で夫々1.0及び0.5時−1の反応空間速度(LHSV)での各実験について、沈澱物及びスラッジの形成が予想外に0.035及び0.044重量%になることを示している;これらの値は、この種の方法の操作の連続性を維持するために許容できる限界である0.8重量%より驚く程低い値である。
【0103】
【表16】

【0104】
同じ表は、API比重が7.14から16.85及び17.73°APIへ増大し、538℃で回収される留出油含有量が36.0から60.1及び69.1体積%へ増大し、それにより、37.7及び51.7体積%の供給物転化率が得られていることを報告している;これらの転化率は、例1で得られたものよりも低いが、一層低い値の比重、一層多量の汚染物、及び538℃で回収される留出油の一層低い含有量を有する遥かに一層重質の石油炭化水素を水素化処理することができたことを考慮すると、同時に意義ある値である。
【0105】
得られた結果は、本発明が、その好ましい態様の二つとして、低圧操作条件、反応器の型、水素化処理する供給原料の種類の組合せにより、極めて重質の石油炭化水素を水素化処理することにより、かなりの量の汚染物を除去し、工業的操作の持続を保証する許容可能な限界よりも驚く程低いレベルまで沈澱物及びスラッジの形成を予想外に抑制し、それにより供給物の顕著な転化率も得、精製方式に典型的な供給原料で一般に報告されている範囲内のレベルの汚染物、API比重、及び留出油を含む改良された性質を有する水素化処理された炭化水素を生成することを確認させるものである。
【0106】
例6
本発明の石油重質炭化水素の接触水素化処理の方法の別の特定の適用は、表11に報告した特定の性質を有する例5の大気圧残油の水素化処理を、表14に示した低圧操作条件の組合せにより、表3に与えた性質を有する前の例のHDM及びHDS触媒を使用して二段階固定床反応の触媒装置中で行ったものである;それらは一緒になって、沈澱物及びスラッジの形成を抑制するのみならず、金属、全硫黄、アスファルテン、及び全窒素の意義ある除去を達成し、表15に示した改良された性質を有する水素化処理された炭化水素が得られることを明らかに実証している。
【0107】
前の例とは異なり、この例にについては、温度だけを(一層低い値及び一層高い値へ)修正し、本方法の厳しさを両方の意味で変化させたが、低圧、反応器の型及び水素化する供給原料の種類についての他の操作条件は、何等変化することなく保持した。
【0108】
表15は、第二反応段階で、夫々380℃及び420℃の操作温度で夫々の実験について、HDT後、例1及び5の場合のように、金属を575.6wppmから304及び231.9wppmへ減少し、硫黄を4.60重量%から1.32及び0.95重量%へ減少し、アスファルテンを17.74重量%から11.25及び9.21重量%へ減少し、全窒素を5,086wppmから3,340及び2,690wppmへ減少していることを報告している。
【0109】
更に、その表は、大気圧蒸留の残油のHDTを行なった後、汚染物質の意義ある除去がある場合でも、第二反応段階で夫々380℃及び420℃の反応温度での各実験について、沈澱物及びスラッジの形成が予想外に0.03及び0.09重量%になることを示している;これらの値は、この種の方法の操作の連続性を維持するために許容できる限界である0.8重量%より驚く程低い値である。
【0110】
【表17】

【0111】
同じ表は、API比重が7.14から14.72及び19.39°APIへ増大し、538℃で回収される留出油含有量が36.0から56.0及び66.0体積%へ増大し、それにより31.3及び46.9体積%の供給物転化率が得られていることを報告している;これらの転化率は、例1及び5で得られるものよりも低いが、同様に意義のあるものである。
【0112】
得られた結果は、本発明が、その好ましい態様の二つとして、低圧操作条件、反応器の型、水素化処理する供給原料の種類の組合せにより、極めて重質の石油炭化水素を水素化処理することにより、かなりの量の汚染物を除去し、工業的操作の持続を保証する許容可能な限界よりも驚く程低いレベルまで沈澱物及びスラッジの形成を予想外に抑制し、それにより供給原料の顕著な転化率も得、改良された性質を有する水素化処理された炭化水素を生成することを確認させるものである。
【0113】
【表18】

【0114】
例7
本発明の石油重質炭化水素の接触水素化処理の方法の別の特定の適用は、表16に示した特定の性質を有する例5及び6で用いたものとは異なった性質を有する大気圧蒸留残油を、表17に詳細に示した低圧操作条件の組合せにより、表18に与えた性質を有する、使用した触媒/新しい触媒を70/30重量%の割合にした水素化分解触媒(中古及び新しいもの)の混合物を、両方の反応段階で使用した二段階固定床反応の触媒装置で水素化処理することにより行なったものである;それらは一緒になって、沈澱物及びスラッジの形成を抑制するのみならず、金属、全硫黄、アスファルテン、及び全窒素の意義ある除去を達成し、表19に示した改良された性質を有する水素化処理された炭化水素が得られることを明らかに実証している。
【0115】
例5及び6とは異なって、本発明この特別な適用については、水素化処理するのに同じ種類の供給原料であるが、僅かに重質性が低い(一層高い値の比重、一層少ない量の汚染物、及び538℃で回収される留出油の一層高い含有量を有する)ものを用い、空間速度を(一層低い値へ)変え、水素/炭化水素比を(一層低い値へ)変え、その外、この態様では異なった純度を有する水素を使用することを含み、本方法の厳しさを両方の意味で変化させたが、他の低圧操作条件を前記例と同様な仕方で維持し、同じ型の反応器を保持した。
【0116】
【表19】

【0117】
【表20】

【0118】
表16は、供給物が殆ど沈澱物及びスラッジを含まないことを示している。なぜなら、それらは、水素化処理過程の反応の各々を遂行した時に形成されるからである。
【0119】
表19は、夫々異なった空間速度及び水素純度で夫々の実験について、HDT後、前の例の場合のように驚く程、金属を353wppmから126、176、及び120wppmへ減少し、硫黄を3.74重量%から1.297、1.75、及び1.71重量%へ減少し、アスファルテンを10.18重量%から5.64、5.41、及び5.19重量%へ減少し、全窒素を4,400wppmから3,515、3,990、及び3,740wppmへ減少していることを報告している。
【0120】
更に、その表は、大気圧蒸留の残油のHDTを行なった後、汚染物質の意義ある除去がある場合でも、第二段階での三つの実験について沈澱物及びスラッジの形成が思いがけなく0.05重量%より少ないことを示している;これらの値は、この種の方法の操作の連続性を維持するために許容できる限界である0.8重量%よりも顕著に低い。
【0121】
【表21】

【0122】
【表22】

【0123】
同じ表は、API比重が9.25から16.70、15.39、及び15.70°APIへ増大したことを各実験について報告している。
【0124】
得られた結果は、本発明が、その三つの好ましい態様として、低圧操作条件、反応器の種類、水素化処理する供給原料の種類の組合せにより、石油重質炭化水素を水素化処理することにより、意義ある量の汚染物を除去し、工業的操作の持続を保証する許容可能な限界よりも驚く程低いレベルまで沈澱物及びスラッジの形成を予想外に抑制し、改良された性質を有する水素化処理された炭化水素を生成することを確認させるものである。
【0125】
例8
本発明の石油重質炭化水素の接触水素化処理の方法の別の特定の態様は、表16に示した特定の性質を有する例7で用いた大気圧蒸留の同じ残油を、表17に詳細に示した低圧操作条件の組合せにより、表18に与えた性質を有する、使用した触媒/新しい触媒を70/30重量%の割合にした水素化分解触媒(使用したもの及び新しいもの)の混合物を、両方の反応段階で使用した二段階沸騰床反応の触媒装置で水素化処理することにより行なったものである;それらは一緒になって、沈澱物及びスラッジの形成を抑制するのみならず、金属、全硫黄、アスファルテン、及び全窒素の意義ある除去を達成し、表20に示した改良された性質を有する水素化処理された炭化水素が得られることを明らかに実証している。
【0126】
前の例とは異なり、本発明のこの特定の適用については、二つの反応段階で反応器の型だけを(沸騰床型へ)変化させ、前の例と同様に同じ低圧操作条件を維持し、この変化に対する本方法の敏感性を観察した。
【0127】
表20は、夫々異なった空間速度及び水素純度での夫々の実験について、HDT後、前の例の場合のように驚く程、金属を353wppmから129、170、及び150wppmへ減少し、硫黄を3.74重量%から1.70、1.85、及び1.76重量%へ減少し、アスファルテンを10.18重量%から4.78、5.68、及び5.66重量%へ減少し、全窒素を4,400wppmから3,580、3,650、及び3,610wppmへ減少していることを報告している。
【0128】
【表23】

【0129】
更に、その表は、大気圧蒸留の残油のHDTを行なった後、汚染物質の意義ある除去がある場合でも、第二反応段階での三つの実験について、夫々、沈澱物及びスラッジの形成が思いがけなく、0.56、0.47、及び0.54重量%になることを示している;これらの値は、前の例の値よりも明らかに大きいが、この種の方法の操作の連続性を維持するために許容できる限界である0.8重量%よりも顕著に低い。
【0130】
同じ表は、API比重が9.25から17.07、16.25、及び16.85°APIへ増大したことを各実験について報告している。
【0131】
得られた結果は、本発明が、その好ましい三つの態様として、低圧操作条件、反応器の種類、水素化処理する供給原料の種類の組合せにより、石油重質炭化水素を水素化処理することにより、意義ある量の汚染物を除去し、工業的操作の持続を保証する許容可能な限界よりも驚く程低いレベルまで沈澱物及びスラッジの形成を予想外に抑制し、改良された性質を有する水素化処理された炭化水素を生成することを再確認させるものである。
【0132】
本発明の革新性及び発明的行為を更に裏付けるため、上の記載を裏付ける適用例で、本発明で記載したものと異なる操作条件で行なった石油重質炭化水素の接触水素化処理が、本発明と同様に、供給原料の性質を改良し、多量の汚染物を除去するが、それと引き換えに生成物中にかなりの沈澱物及びスラッジを形成し、それが、この種の技術開発の主たる目的である、そのような方法の連続的操作を妨げることを実証する適用例を下に与える。
【0133】
例9
この例は、本発明で記載する重質炭化水素の接触水素化処理の方法の特定の適用に属するものではなく、反応器の種類及び供給原料の種類と組合せて、大きな水素/炭化水素、H/HC比と一緒にした、低圧の範囲の操作条件を用いて、沈澱物及びスラッジの高度の形成と同様、背景技術で記載した特許に報告されているように、50〜80%の範囲の大きな転化率が得られることを実証するために与えられている。
【0134】
そのような目的から、触媒沸騰床反応器で真空残油の水素化処理を行なった。供給原料の特定の性質を表21に与えてあり、操作条件は表22に記載されている。水素化処理した残油の性質を、表23に示す。
【0135】
表23から分かるように、沸騰床反応器で真空残油のHDTを遂行した後、沈澱物及びスラッジの形成は、1.38重量%であった。この沈澱物及びスラッジの値は、この種の方法の操作で連続性を維持するために許容可能な0.80重量%の最大限界よりも高く、本発明の好ましい態様の全てで報告されているものよりも高い。
【0136】
【表24】

【0137】
【表25】

【0138】
【表26】

【0139】
例10
この別の例も、本発明で記載する重質炭化水素の接触水素化処理の方法の特定の適用に属するものではなく、触媒沸騰床反応器で真空残油を水素化処理する時に高い反応圧力を用いることは、沈澱物及びスラッジの形成を最小にするものではないことを実証するために与えられている。供給物の特定の性質は表24に記載されており、操作条件は表25に記載されている。水素化処理された残油の性質は表26に示されている。
【0140】
表26から、沸騰床反応器で真空残油のHDTを遂行した後、存在する沈澱物及びスラッジの形成は1.0重量%であることが分かる。この値の沈澱物及びスラッジは、この種の方法の操作で連続性を維持するための許容可能な0.80重量%の最大上限より上にあり、本発明の好ましい態様の全てで報告したものよりも高い。
【0141】
従って、上で述べたことから、最新技術に記載されている方法と、本発明の方法との間には実質的な相異があり、最新技術では1重量%に等しいか又はそれより大きく、本発明の例のそれでは0.65重量%より低い、水素化された炭化水素中の沈澱物及びスラッジの含有量の結果は注目に値することが明らかに観察される。これに関して、石油重質炭化水素の水素化処理方法の操作で連続性を維持するためには沈澱物スラッジの形成を、0.80重量%の最大含有量までに限定されることに言及しておくべきであろう。
【0142】
【表27】

【0143】
【表28】

【0144】
【表29】

【0145】
本発明を記述してきたが、それは革新的なものと考えられるものであり、従って、次に記載することの内容は、所有権として特許請求される。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】図1は、本発明で示唆した方法を遂行するための、本出願人に知られている最良の仕方を例示し、適用例で言及されているように、改良された性質及び生成物中の沈澱物及びスラッジの最低含有量を有する水素化処理された炭化水素を得るのに役立つ工程図を表している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属、全硫黄、アスファルテン、及び全窒素の高い含有量を与える石油重質炭化水素の接触水素化処理のための二段階反応方法であって、注目すべき次の条件:低圧、反応器の型、及び供給原料の種類;の操作条件の組合せで、それらの条件が供給炭化水素の性質を改良し、沈澱物及びスラッジの形成を抑制するのみならず、高度の汚染物除去を達成させる条件の組合せを用いて行われ、第一及び第二反応段階の操作条件が:40〜130kg/cmの圧力、320〜450℃の温度、0.2〜3.0時−1の空間速度(LHSV)、及び350〜1,200 ln/lの水素/炭化水素比(H/HC);であることを特徴とする二段階反応方法。
【請求項2】
第一反応段階が、炭化水素の水素化脱金属及びアスファルテンの水素化分解であり、前記第一段階を行う操作条件が、40〜130kg/cmの圧力、320〜450℃の温度、0.2〜3.0時−1の空間速度(LHSV)、及び350〜1,200 ln/lの水素/炭化水素比(H/HC);であることを特徴とする、請求項1に記載の石油重質炭化水素の接触水素化処理のための二段階反応方法。
【請求項3】
第二反応段階が、炭化水素の水素化脱硫及び水素化脱窒素であり、前記第二段階が行われる操作条件が、40〜130kg/cmの圧力、320〜450℃の温度、0.2〜3.0時−1の空間速度(LHSV)、及び350〜1,200 ln/lの水素/炭化水素比(H/HC);であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の石油重質炭化水素の接触水素化処理のための二段階反応方法。
【請求項4】
第一反応段階での好ましい操作条件が、45〜90kg/cmの圧力、350〜450℃の温度、0.2〜2.0時−1の空間速度(LHSV)、及び450〜1,050 ln/lの水素/炭化水素比(H/HC);であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の石油重質炭化水素の接触水素化処理のための二段階反応方法。
【請求項5】
第二反応段階での好ましい操作条件が、45〜90kg/cmの圧力、330〜450℃の温度、0.2〜2.0時−1の空間速度(LHSV)、及び450〜1,050 ln/lの水素/炭化水素比(H/HC);であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の石油重質炭化水素の接触水素化処理のための二段階反応方法。
【請求項6】
沈澱物及びスラッジの形成を、水素化処理された炭化水素の0.65重量%の最大値までに最小化することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の石油重質炭化水素の接触水素化処理するための二段階反応方法。
【請求項7】
次の性質:80体積%より低い538℃で回収される留出油含有量、及び32°より低いAPI比重;を有する石油重質炭化水素を水素化処理する能力を有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の石油重質炭化水素の接触水素化処理のための二段階反応方法。
【請求項8】
70体積%までの導入物転化率値を得る能力を有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の石油重質炭化水素の接触水素化処理のための二段階反応方法。
【請求項9】
供給原料と比較して、約15単位までのAPI比重、約50体積%までの538℃で回収される留出油含有量である、供給原料と比較して改良された性質を有することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の二段階反応方法により得られた生成物。

【図1】
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【公表番号】特表2007−521343(P2007−521343A)
【公表日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−503895(P2005−503895)
【出願日】平成15年7月9日(2003.7.9)
【国際出願番号】PCT/MX2003/000053
【国際公開番号】WO2005/005581
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(506007895)インステイチユート メキシカノ デル ペトロレオ (3)
【Fターム(参考)】