説明

石油留分の水素化転化のための触媒組成物を調製する方法

本発明は、周期律表の第VIII族からの少なくとも1つの非貴金属と第VIB族からの少なくとも1つの金属を有する触媒組成物を調製する方法に関する。本発明はまた、軽質留分及び中間留分の水素化処理に伴う反応において、好ましくは、水素化脱硫(HDS)、水素化脱窒素(HDN)、及び水素化脱芳香族(HDA)を含む、炭化水素ストリームの水素化処理に伴う反応において、高い比活性を有する、上記のように生産される触媒組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周期律表の少なくとも1つの第VIII族非貴金属と少なくとも1つの第VIB族金属で構成された触媒組成物を調製するプロセスに関する。触媒組成物(同様に、本発明の目的)は、軽質留分及び中間留分の水素化処理反応において、好ましくは、その中でもとりわけ、水素化脱硫(HDS)、水素化脱窒素(HDN)、及び水素化脱芳香族(HDA)を見出すことができる、炭化水素流の水素化処理反応において、高い比活性を呈する。
【背景技術】
【0002】
環境保護政府機関は、硫黄及び窒素などの、大気汚染に対する前駆体成分の含有量が低く、かつ、とりわけ、ニッケル金属及びバナジウム金属の含有量が低い、益々多くの燃料を要求する。さらに、原油埋蔵量を最大限利用するために、益々重い負荷を処理することが必要であり、また、前記汚染物質の含有量が、生産される燃料において増加する。したがって、より効率的な方法で、炭化水素又は化石燃料からこれらの汚染物質をなくして、大気を汚染するガス放出を最小にし、これによって、益々厳しくなりつつある環境規制に対応する、新しい触媒プロセス及び材料を開発することが必要である。
【0003】
化石燃料汚染物質を除去するための最も効率的な工業プロセスは、ガソリン、ディーゼル、接触分解用フィードストック(FCC)、及び中間蒸留物などの石油の実際上全ての留分に適用される水素化転化プロセスである。本発明の特定の場合、軽質及び中間の石油留分は、その沸点が180℃以下である炭化水素を含む留分、及び、その沸点が180.1℃以上でかつ400℃以下である炭化水素を含む中間石油留分であると考えられる。
【0004】
水素化転化プロセスでは、軽質及び中間の石油留分は、水素の存在下で水素化処理される、かつ/又は、水素化分解される。水素化転化プロセスは、水素化、水素化脱硫、水素化脱窒素、水素化脱金属、水素化脱芳香族、水素化脱異性化、及び水素化分解などの、高温高圧で炭化水素の留分が水素と反応するプロセスの全てを含む。
【0005】
同様に、使用される触媒は、アルミナ、シリカ、チタニア、及び/又はその混合物などの金属酸化物で構成された高い比表面積支持体上に堆積し、任意で、ハロゲン、リン、ボロンなどのような2次的な助触媒又は添加剤を含有する、周期律表の少なくとも1つの第VIII族非貴金属成分と少なくとも1つの第VIB族金属成分で主に構成される。触媒は、一般に、対象となる金属成分を含有する水性溶液で支持体を含浸させ、その後、乾燥及び焼成手順を施すことによって調製される。水素化処理のための触媒調製手順は、米国特許US5,089,462及びUS2,853,257並びに欧州特許EP0,448,117及びEP0,469,675において述べられた。
【0006】
一般に使用される支持体は、アルミナで構成される耐火性材料に基づく。コバルトで促進されたモリブデン−アルミナ触媒は、好ましくは、必要とされるプロセスが水素化脱硫プロセスであるときに使用され、一方、ニッケルで促進されたモリブデン−アルミナ触媒は、ニッケルに固有の高い水素化活性のために水素化処理されなければならない留分において、水素化脱硫に加えて、水素化脱窒素及び芳香族の水素化(水素化脱芳香族)が必要とされるときに、広く使用される。
【0007】
水素化脱硫及び水素化脱窒素用の触媒に関して、また、一般に水素化処理用の触媒において、最近達成されたほとんどの関連する進歩は、コバルト又はモリブデン酸ニッケルタングステン非担持相に基づく(US6,534,437、US6,582,590)。Ni−Mo−W−O又はCo−Mo−W−Oのこれらのバルク触媒は、100〜200m/gで構成された高い比面積を呈する。これらの触媒の水素化脱硫活性は、ジベンゾチオフェン(DBT)の分子モデルを用いて測定された。これらの触媒は、アルミナ上に担持された従来の触媒の活性より優れた、比活性[分子/gs]を呈する。これらの触媒は、高い密度を呈するため、多くの量の材料が、1単位の反応器容積に嵌る。そのため、触媒の容積に関して測定される活性は、アルミナ上に担持されたモリブデン酸ニッケルの市販の従来の触媒と比較して、約4倍高いことがわかる。
【0008】
周期律表の第VIII族及び第VIB族からの金属に基づく非担持触媒の合成は、過去に実施された(Catal.Lett.10(1991)181;J.Thermal Anal.40(1993)1253)。これらの触媒は、一般に、炭化水素の酸化、たとえば、プロパン酸化的脱水素、及び/又は、アクロレイン酸及びアクリル酸へのプロピレンの部分酸化に焦点を当てた。NiMoO・mNH,nHOからのアンモニア相沈殿が知られている。この沈殿手順は、最近、異なる石油留分の水素化脱硫及び水素化処理用の触媒の調製に適用されてきた。
【0009】
今日まで、アンモニア錯体から形成される沈殿物についての提案された構造は、化学量論式(NH)HNi(OH)(MoOに相当するハイドロタルサイト様の構造を有するモリブデン酸アンモニウムニッケル相である。この材料は、水酸化ニッケル薄層で結合された層間領域内にモリブデン酸アニオンを含有する層状構造を呈する。このタイプの材料を合成するのに使用される手順は、Appl.Catal.72,321−329(1991)及びSolid State Ionics63−65(1993)731−735に記載される。
【0010】
米国特許US6,156,696B及びUS6,162,350Bにおいて、ニッケル又はコバルトであることができる少なくとも1つの第VIII族非貴金属及びモリブデン及びタングステンであることができる少なくとも2つの第VIB族金属で構成された触媒組成物用の調製のための手順が述べられる。述べられる一般的な式は、(X)(Mo)(W)である。ここで、xは第VIII族非貴金属(Ni又はCo)であり、モル比b/(c+d)は、0.5〜3の値をとり、z=[2b+6(c+d)]2である。これらの材料は、アモルファス材料の特有のX線回折パターンを呈し、2.53及び1.7オングストロームの距離に非常に幅広のピークを有する。材料において、モリブデン原子をタングステン原子に置換することによって、焼成されると、未知の構造に結晶化し、また、位置2θで53.82°の回折ピークを呈し、1.3〜1.7°にわたるピーク中間点幅を有する、アモルファス構造又は微結晶構造を得ることが可能になる。使用される塩の沈殿において最適な収率を達成するために、塩のうちの少なくとも1つの塩が、沈殿中に部分的に溶解することが必要である。得られる触媒は、アルミナと混合され、押出し成形され、異なる石油留分からの水素化処理反応において水素化脱硫及び水素化脱窒素の高い活性を呈する。
【0011】
水素化脱硫用のバルク触媒の合成について使用されてきた別の方策は、アンモニウムチメタレートの熱分解による。特許US4,243,554は、式(NH[MoO4−x](xは2である)を有する、いくつかのチオモリブデンアンモニウム塩の熱分解によって得ることができる、高い比面積を有するコバルト及びニッケルで促進された二硫化モリブデン触媒を請求する。チオ塩の分解は、硫黄化合物類を含有する炭化水素溶液の存在下で、高圧の水素を用いかつ300〜800℃の温度で起こる。
【0012】
他方、炭化水素の存在下でのこれらの塩の分解は、炭素を含有する、ある種類の硫化モリブデンベースの触媒を生成し、これは、活性部位の発生及びこれらの材料の水素化脱硫の高い活性の原因となることが、ある方法でわかる(Berhault等,J.Catal.198,9−19(2001))。特許US4,508,847は、MoS2−xの触媒組成を明らかにする。ここで、zは炭素含有量であり、0.01<z<3であり、xは硫黄含有量であり、0.01<x<0.5である。この触媒は、150〜600℃の温度の硫黄、水素、及び炭化水素からなるストリームで、チオモリブデン酸アンモニウム又はチオタングステン酸アンモニウム、モリブデン酸アンモニウム又はタングステン酸アンモニウム−チオモリブデン酸、モリブデン酸、チオタングステン酸、タングステン酸代用物などのモリブデン前駆体を暴露することによって得られる。触媒は、高い比表面積を呈し、また、コバルト及び/又はニッケルに似た他の金属によって促進されて、アルミナ上に担持された同様の金属を用いた触媒と比べて高い、水素化処理反応における高活性触媒を生成することができる。しかし、この特許で述べる手順では、主要な炭素供給源は、前駆体分解中に存在する炭化水素の炭化から生じる。
【0013】
無機モリブデン塩に対する炭素供給源としての有機化合物の添加、又は、モリブデンからの有機塩の直接硫化は、MoSなどの金属カーバイド硫化種の形成を促進するだけでなく、触媒内に大きな密度の活性部位を生成することができる、MoSへのモリブデンの完全な硫化にも有利である(Farag H.Energy & Fuel,16(2002)944−950)。こうしたことは、特許US4,528,089及びUS4,650,563でもそうであり、これら特許は、硫黄の存在下でかつ酸素無しの条件下での、前駆体塩の熱処置からなる、炭素を含有する二硫化モリブデン触媒を得る手順を明らかにする。前駆体塩は、ML(Mo1−x)の一般式を有する。ここで、Mは、Ni、C0、Zn、Cu、又はそれらの混合物などの、1つ又は複数の二価助触媒(divalent promoter)金属であり、xは0〜1であり、Lは、窒素を含有する、キレート環を作る歯状リガンドの役目を果たすことができる、1つ又は複数の中性有機錯体である。こうして得られた触媒は、その比面積がそれほど高くないことがわかったとしても、アルミナ上のコバルト−モリブデンなどの従来の前駆体を用いて得られた触媒より優れた、水素化処理反応における高い活性を呈する。
【0014】
特許US4,581,125及びUS4,514,517は、炭素を含有する前駆体塩の熱分解によって得られ、(NR[M(WS]又は(NR[M(MoS]であることができる二硫化モリブデン触媒に言及する。熱分解は、150℃より高い温度で、硫黄と水素の存在下で酸素無しの雰囲気内で起こる。(NR)基は、炭素を含有し、アンモニウムカチオン代用物である。ここで、Rはアルキル基又はアリール基であることができる。Mは、金属助触媒であり、アニオン(MoS又はy(WS4)と、共有結合により密接に相互作用し、ニッケル、コバルト、又は鉄であることができ、xは、Mがニッケルである場合2であり、yは、Mがコバルト又は鉄である場合3である。理想的には、触媒は、最大の触媒性能を得るために、炭化水素の存在下で形成されるべきである。チオ塩分解から得られる触媒の比面積を増加させるために、特許US6,156,693は、高沸点を有する溶媒及び350〜400℃の温度の水素圧下の水に溶解する、テトラチオモリブデン酸アンモニウム前駆体塩についての熱水処理手順を述べる。水の存在は、活性部位の発生にとって有効である。しかし、より活性のあるMoS触媒に道をひらくために、テトラチオモリブデン酸アンモニウム分解後に、水はなくされるべきである。
【0015】
特許US2005/0059545は、熱水手順によって、炭素を含有する硫化モリブデンベースの触媒及び/又はタングステンベースの触媒を得る手順を述べる。この手順は、テトラチオモリブデン酸アンモニウム前駆体塩AMoSを処理するためにある。ここで、Aは、熱水条件下で、ニッケル、コバルト、鉄、又はルテリウムであることができる助触媒塩の存在下で、アンモニウムイオン、テトラアルキルアンモニウムイオン(x=2)、又は、ジアミンイオン(x=1)である。得られる触媒Ni/CoMoS2−x(xは0〜1の値をとる)は、水素化脱硫反応の前に、高温でHS/Hの雰囲気内で活性化される。
【0016】
アルミナ上に担持された水素化脱硫触媒の含浸溶液内へのキレート錯体又は有機金属錯体などの有機添加剤の組み込みは、活性金属成分の最適な硫化及び二硫化モリブデンの最大促進を助け、その分散を有利にし、高密度の活性部位を生成し、それにより、水素化処理反応における触媒活性の増加が達成された。
【0017】
特許US6,566,296B2は、10〜30重量%の濃度のMoO、30〜50重量%の濃度のWO、30〜50重量%の濃度のNiO、及び0〜20重量%の濃度のAlの触媒組成化合物に言及する。触媒組成物は、塩の共沈殿法によって調製され、塩の共沈殿法では、塩のうちの少なくとも1つの塩が、固体のままであるか、又は、部分的に溶解し、その後、それらは、アルミナと混合されて、成形品(extrudes)を形成する。得られた成形品は、ジエチレングリコール、又は、アミノ基代用物NR(Rは、最高10炭素原子を含有することができる)などの有機化合物で含浸される。成形品の含浸において、炭素供給源として使用することができる他の添加剤は、グリコール、サッカリン、多糖類、及びエチレンジアミン四酢酸(EDTA)である。炭素供給源として有機化合物を組み込むこの方策を用いると、水素化処理反応において、これらの触媒の触媒活性のかなりの増加が達成される。
【0018】
水素化脱硫のバルク触媒へのタングステンの添加は、モリブデンだけを含有する触媒と比較して、触媒活性に有利である、US6,534,437。これらの触媒の平均バルク密度は、従来の触媒の密度よりずっと高く、それが、所与の反応器のある容積を満たすのにより多くの量の触媒材料が必要とされる理由である。バルク触媒の場合、触媒のコストは、かなり増加し、それが、クロム及びマンガンなどの密度の低い他の金属でモリブデン原子を置換するための新しい代替法(US6,635,599B1、US6,783,663B1)が求められてきた理由である。
【0019】
その主要相が、基本的に、コバルト、ニッケル、鉄、モリブデン及びタングステンでそれらの硫化相中で構成される、担持と非担持の両方の、水素化処理反応用の触媒範囲が存在する。しかし、燃料の汚染物質のレベルをなくすか、又は、減少させるために、より効率的な触媒システムを供給する必要性も存在する。本発明では、少なくとも1つの第VIII族非貴金属と少なくとも1つの第VIB族金属からなり、また、さらに、硫化及び水素化処理反応における触媒活性を有利にする、合成中における有機化合物の添加によって発生する炭素を含有する触媒組成物を得る手順が提案される。
【0020】
本発明の目的であるプロセス及び触媒は、これらの触媒が、クリーンな燃料の生成、異なる炭化水素留分及びカット内の硫黄及び窒素の削減のため、また、燃料内の芳香族の含有量の低減のための石油改質プロセスで使用されるため、水素化脱硫、水素化脱窒素、及び芳香族水素化を含む水素化処理反応で使用される。これらは、真空残渣及び重質原油のような重質留分の水素化処理で使用することもできる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明は、石油に含有される異なる炭化水素留分の水素化転化のための、好ましくは、水素化脱硫、水素化脱窒素、及び芳香族水素化反応のための、新規な活性の高い触媒組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の主題である触媒は、少なくとも1つの第VIII族非貴金属元素、第VIB族からの少なくとも1つの元素、及び、活性金属相と密接な相互作用状態にある炭素前駆体としての1つの有機成分からなる。
【0023】
したがって、本発明の目的の1つは、基本的に、モリブデン又はタングステン、好ましくは、モリブデンであることができる前駆体塩からの、少なくとも1つの第VIB族金属で構成され、極性溶媒内で溶解性があり、コバルト、ニッケル、鉄、又はルテニウム前駆体塩、好ましくは、ニッケル及び/又はコバルトからの、少なくとも1つの第VIII族非貴金属で構成され、また、イオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、又は中性界面活性剤、或いは置換アンモニウムからの第4級塩(NR)(Rは、アルキル鎖内で1〜8の炭素からなるアルキル基又はアリール基であることができる)などの界面活性剤であることができる炭素前駆体としての有機化合物で構成された触媒組成物を得ることである。
【0024】
本発明の別の目的は、触媒を得る手順を確立することであり、手順は、水などの極性溶媒内で前駆体塩を完全溶解し、水酸化アンモニウム、炭酸アンモニウム、又は、水酸化テトラブチルアンモニウムなどの第4級アンモニウム塩の水酸化物であることができる塩基の添加によって溶液をpH5〜14に維持するためにある。完全に溶解性の錯体が形成されると、使用される塩基が、第4級水酸化アンモニウムでなかった場合、有機化合物が添加され、有機化合物は、イオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、又は中性界面活性剤などの界面活性剤からなる。その後、錯体は、過剰の溶媒の蒸発によって結晶化され、したがって、第VIB族の混合金属オキシ水酸化物及び炭素又は有機化合物を含有する第VIII族金属が得られる。
【0025】
本発明の別の目的は、得られた金属が受けなければならない熱処理手順であり、得られた金属は、どんな状況でも、200℃より高い温度の酸化体ガス雰囲気に付されるべきではない。前記手順は、窒素、ヘリウム、又はアルゴンなどの不活性ガス流内で、200〜1000℃を包含する温度で熱処理するためにあり、選択された金属がモリブデン及びニッケルである場合、炭素を含有するモリブデン酸ニッケル混合酸化物又は炭素を含有するモリブデン酸ニッケルが得られ、選択された金属がモリブデン及びコバルトである場合、モリブデン酸コバルト、炭素を含有するコバルト−モリブデン混合酸化物が得られ、又は、第VIII族の2つの金属成分及びモリブデンが選択される場合、ニッケル、コバルト、及びモリブデン混合酸化物或いはニッケルとコバルトの混合モリブデン酸が得られる。
【0026】
本発明の別の目的は、触媒の硫化形態を得るための硫化手順であり、硫化手順は、乾燥材料及び/又は不活性雰囲気内で熱処理された材料を、200〜600℃を包含する温度で、水素容積内で0.5〜30%に希釈されたHS流内に暴露することからなる。別の方法は、乾燥材料、コバルト−ニッケルモリブデンオキシ水酸化物、或いは、熱処理された材料、モリブデン酸ニッケルか、モリブデン酸コバルトか、又は、モリブデン酸ニッケルとモリブデン酸コバルトを、200〜600℃を包含する温度で、かつ、1〜100Kg/cmを包含する水素圧力で、0.1〜5重量%の硫黄を有する濃度で、二硫化ジメチル(DMDS)を富化した硫黄含有有機化合物を含む炭化水素液体ストリームに直接暴露するためにある。この手順によって、活性成分の酸化相は、活性硫化相に転化される。炭素の存在は、硫化、二硫化モリブデンの促進、及び活性種の高い表面濃度の形成を有利にする。
【0027】
本発明に含まれる活性種は、少なくとも1つの第VIII族非貴金属の硫化相、及び、炭素を含有する少なくとも1つの第VIB族金属の硫化相からなる。
【0028】
本発明の別の目的は、触媒組成物(同様に、本発明の目的)が、集積化される、或いは、アルミナ、チタニア、ジルコニア、シリカ、又はそれらの混合物であることができる、成形品の配合組成ための結合材料などの無機材料を、塩基として存在する酸化物の総量を考えて、対応する金属の酸化物として0〜50重量%を包含する割合で含むことができる。
【0029】
本発明のもう1つの目的は、成形品の配合組成のための密度の低い結合材料の結合によって担持される従来触媒の密度と同じ密なかさ密度を有する成形品の形態の触媒を得ることである。
【0030】
本発明の別の目的は、炭化水素留分水素化処理プロセスを含み、触媒は、典型的な水素化処理条件下で、炭化水素留分の液体負荷に接触する硫化相で使用される。
【0031】
石油留分水素化転化用の触媒組成物の理解を得るために、図が参照されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明は、少なくとも1つの第VIII族非貴金属及び少なくとも1つの第VIB族金属、並びに、金属と密接な相互作用状態にある炭素前駆体としての有機成分からなる触媒組成物を調製するプロセスに関する。プロセスは、前駆体塩を含有する溶液と有機成分を含有する溶液を調製し、混合し、反応させ、また、過剰な溶媒の削減によってその後結晶化することを含む。金属と有機成分との密接な相互作用を達成するために、成分は全て、結晶化プロセスが始まる前に完全に溶解すべきである。
【0033】
本発明の主題である触媒組成物調製プロセスにとって、成分は全て、有機化合物又は界面活性剤を含有する溶液の添加中に完全に溶解することがきわめて重要である。プロセスは、極性溶媒内で完全に溶解する関連する金属の錯体であって、溶媒結晶化又は蒸発プロセスによって後で結晶化される、関連する金属の錯体を形成するために、触媒成分金属を含有する溶液と有機化合物又は界面活性剤を含有する溶液を混合し、反応させることを含む。本文脈における「完全に溶解した(completely dissolved)」という用語は、前駆体塩と界面活性剤を含有する溶液の混合中に、懸濁液も沈殿物も形成されないこと、すなわち、透明溶液が得られることを意味する。
【0034】
触媒組成物(本発明の目的)は、少なくとも1つの第VIII族非貴金属及び少なくとも1つの第VIB族金属を有する。第VIB族金属は、モリブデン、タングステン、クロム、又はそれらの混合物、好ましくは、モリブデン及びタングステン、より具体的には、モリブデンであることができる。第VIII族非貴金属は、鉄、コバルト、ルテリウム、ニッケル、好ましくは、ニッケル及びコバルトであることができる。又は、触媒組成物は、ニッケル−コバルト−モリブデンか、ニッケル−コバルト−タングステンか、ニッケル−コバルト−モリブデン−タングステンか、ニッケル−コバルト−モリブデン−タングステン−クロム、好ましくは、ニッケル−コバルト−モリブデンなどの金属の組合せであることができる。
【0035】
本発明のプロセスに適用される第VIB族金属/第VIII族金属のモル比は、0.1から10まで、好ましくは、0.4から2まで、より具体的には、0.5から1.5まで変わる。触媒組成物が、第VIB族金属としてモリブデン及びタングステンを含むとき、Mo/Wモル比は、10から1まで、好ましくは、10から5まで変わる。第VIB族元素が、経済的な理由で、排他的にモリブデンで構成されることは、タングステンの組み込みが触媒密度を増加させ、前記金属のコストがモリブデンのコストよりずっと高くなるため、特に重要である。触媒組成物が、第VIII族金属としてニッケル及びコバルトで構成されるとき、Ni/Coモル比は、0.05から20まで、好ましくは、0.1から10まで変わる。
【0036】
水が極性溶媒として使用されるとき、第VIB族金属成分の前駆体塩は、アセチルアセトン酸モリブデン、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸、タングステン酸アンモニウム、タングステン酸、好ましくは、メタタングステン酸アンモニウム及び/又はヘプタモリブデン酸アンモニウムであることができる。
【0037】
水が極性溶媒として使用される場合、第VIII族金属成分の前駆体塩は、硝酸塩、塩化物、アセチルアセトン、酢酸塩、硫酸塩、水酸化物、好ましくは、硝酸塩及び/又は塩化物であることができる。第VIII族金属がニッケルを指すとき、前駆体塩は、硝酸ニッケル、塩化ニッケル、酢酸ニッケル、クエン酸ニッケル、好ましくは、硝酸ニッケル及び/又は塩化ニッケルであることができる。第VIII族金属がコバルトを指すとき、前駆体塩は、硝酸コバルト、塩化コバルト、酢酸コバルト、クエン酸コバルト、好ましくは、硝酸コバルト及び/又は塩化コバルトであることができる。
【0038】
溶液の調製は、別々に実施されることができる。すなわち、それぞれの金属成分の前駆体塩は、水か、アルコールか、又はそれらの混合物であることができる極性溶媒内に別々に溶解され、次に、混合されて、触媒配合組成ごとに、完全に溶解された金属成分全てを所定の濃度で含有する溶液を形成することができる。任意選択で、溶液の調製はまた、同じ容器内での前駆体塩の溶解によって実施されて、完全溶解状態で関係する金属成分を含有する結晶溶液を形成することができる。金属成分の非溶解性前駆体が使用されるとき、触媒合成に関わる金属全てが完全溶解状態になるために、温度上昇による非溶解性固形物の全体の消化及び塩基又は酸の添加についての条件が求められるべきである。他方、有機化合物又は界面活性剤を含有する溶液は、水か、アルコールか、又はそれらの混合物などの極性溶媒内での、第4級アンモニウム塩又はイオン系界面活性剤又は中性界面活性剤の溶解によって別々に調製される。
【0039】
モリブデン、タングステン、及び/又はクロム、好ましくは、モリブデン及びタングステン、より好ましくは、モリブデンだけであることができる少なくとも1つの第VIB族金属の金属成分を含有する溶液の調製において、ヘプタモリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸、アセチルアセトン酸モリブデン、三酸化モリブデン、及び/又は、メタタングステン酸アンモニウム、タングステン酸、三酸化タングステン、好ましくは、ヘプタモリブデン酸アンモニウム又はメタタングステン酸アンモニウムなどの金属前駆体塩は、極性溶媒内で溶解される。コバルト、ニッケル、鉄、ルテリウムなど、好ましくは、ニッケル及びコバルトなどの少なくとも1つの第VIII族非貴金属を含有する溶液は、水か、アルコールか、又はそれらの混合物であってよい極性溶媒内で、硝酸塩、塩化物、アセチルアセトン、酢酸塩、硫酸塩、水酸化物、又は炭酸ニッケル、及び/又は、コバルト、好ましくは、硝酸塩、塩化物、酢酸塩などの前駆体塩の溶解によって調製される。
【0040】
炭素供給源前駆体として有機化合物を含有する溶液は、極性溶媒内での第4級アンモニウム塩又は固形界面活性剤の溶解によって調製される。カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、又は中性界面活性剤、好ましくは、カチオン系又はアニオン系などの界面活性剤は、無機成分によって形成されたアニオン間で最適相互作用を達成するためにある。界面活性剤は、テトラアルキルアンモニウムイオン(NR)の塩であってよい。ここで、Rは、アルキル基であり、1から最高8まで炭素原子をそれぞれ含有することができる飽和炭化水素鎖又はアルキル基に相当する。アルキル基は全て、同じ炭素数を含むことができるか、又は、それぞれ異なるサイズであることができる。テトラアルキルアンモニウムイオンは、塩素又は臭素で置換され、ハロゲン化されるか、或いは、水酸基化される、すなわち、水酸基(OH)で置換されてもよい。界面活性剤は、R’NRで表される大きなアルキル基鎖を有するカチオン系界面活性剤であってよい。ここで、R’は、飽和炭化水素の長鎖、又は、12〜20の炭素を含有するアルキル基に相当し、Rは、他のアルキル基であり、1〜8の炭素原始を含有する炭化水素の短鎖に相当する。
【0041】
金属成分及び有機化合物を含有する溶液は、連続撹拌によって混合され、その後、溶液のpHが、5〜14、好ましくは、8〜12を包含する値に上昇するまで、水酸化アンモニウム、炭酸アンモニウム、及び/又は水酸化ナトリウム、或いはカリウム、好ましくは、水酸化アンモニウムなどの濃縮した塩基溶液が添加される。その後、溶液の温度が、50〜200℃、好ましくは、60〜100℃を包含する値に増加し、一方、塩基性溶液が、全ての成分を完全溶解状態に維持するために添加され、その溶液が、5分〜24時間、好ましくは、5分〜10時間を包含する期間の間、撹拌状態に保たれて、関係する全ての金属成分と有機化合物炭素前駆体との間の完全な相互作用が達成される。関係する全ての金属種が、有機化合物の存在下で、極性溶媒内で完全溶解状態にされることは、金属種間での最大相互作用を可能にし、金属種が反応して、上述した結晶化が起こるときに、無機成分と有機成分との間で混合錯体が形成される。
【0042】
使用される極性溶媒が水である場合、反応温度は、水の沸点より低い、すなわち、60〜100℃であること、及び、反応が、大気圧の開いた容器内で、又は、溶媒還流システムを用いて起こることが好ましい。水の沸点より高い温度が使用される場合、反応は、オートクレーブなどの、自己圧力下の閉じた容器内で実施されるべきであり、閉じた容器内では、調製された溶液内に存在する成分の結晶化は、熱水条件及び自己圧力下で実施されるべきである。
【0043】
本発明の目的である調製プロセスが、反応温度及びpHを適切に選択して、触媒の調製に関係する全ての金属成分を完全溶解状態に維持することが重要であり、pH間隔は、5〜14、好ましくは、8〜12、より好ましくは、8〜10である。反応時間は、5分〜24時間、好ましくは、5分〜10時間、より好ましくは、5分〜5時間の間で変わる。
【0044】
関係する全ての成分間の最適相互作用及び反応について必要な時間が経過すると、完全結晶溶液又は完全溶解状態の溶液が、過剰のアンモニウムイオンの削減及び極性溶媒、好ましくは、水の蒸発からなる結晶化プロセスに流れる。過剰の溶媒が削減されるにつれて、ニッケル含有量が支配的か、コバルト含有量が支配的かに応じて、緑又は紫になる沈殿物が形成される。得られる材料の収率は、溶媒の蒸発の程度に依存し、結晶化プロセスが、適切に制御される場合、99%より大きい収率を得ることが可能である。
【0045】
触媒調製に関係する全ての金属を含有する溶液の結晶化プロセスは、瞬時的又は漸進的であってよく、また、連続して、又は、バッチで起こってもよい。こうした理由で、プロセスは、バッチ反応器及び/又は蒸発器内などの、大規模実施について実行可能である。
【0046】
結晶化が、漸進的蒸発によって実施されるとき、ろ過及び/又は遠心分離による可能性がある後続の固体−液体分離プロセスが必要とされる。分離から生じる、母液内に含有される少量の金属の喪失を回避するために、少量の金属が、母液内で溶解したままになり、これが、本発明の目的であるプロセスを再循環させるはずである。固形材料が得られると、固形材料は、乾燥していても、湿潤していても、50〜300℃、好ましくは、80〜150℃を包含する温度で、ストーブの中で静的であるか、熱い空気流によるか、又は、乾燥器又は等価物内での連続乾燥プロセスによることができる乾燥プロセスを受ける。
【0047】
本発明はまた、その全てが水素化処理触媒についての安定した支持体である、アルミナ、チタニア、アルミナ−チタニア、ゼオライト、シリカ、及びシリカ−アルミナなどの既存の粘結剤の群から選択される、幾何学的形態を有する触媒を生産するための結合剤として、無機酸化物又は混合酸化物の添加を考慮する。「粘結剤又は結合剤(binder or binding agent)」という用語は、材料粒子を固定床触媒プロセスで使用するための適切な形態にするために、材料粒子を、成形品、ペレット、又は球の形態で集積化又は結合することを可能にする無機酸化物を指す。
【0048】
結合剤の添加は、本発明の目的である触媒調製プロセスの異なるステージで実施されることができる。所望である場合、結合剤は、第VIII族金属元素前駆体塩と第VIB族金属元素前駆体塩の溶解中に無機酸化物前駆体塩の形態で添加されることができる。粘結剤として選択される無機酸化物前駆体塩は、硝酸塩、塩化物、酢酸塩、硫酸塩、水酸化物などである。前記前駆体塩は、水酸化物及び/又は炭酸アンモニウム及び/又は水酸化ナトリウムからなる塩基性溶液が添加されるとすぐに、沈殿するであろう。他方、粘結剤の添加はまた、反応ステージが終了すると、金属成分錯体及び有機成分錯体を含有する溶液内に、粉末形態の結合剤を組み込むことによって実施されることができ、その後、結晶化が、結合剤の存在下で溶媒を蒸発させることによって実施される。好ましくは、第VIII族及び第VIB族から選択される金属成分を含有する触媒の乾燥結晶化粒子に対する粘結剤の添加が実施されることができる。特に、粘結剤は、硝酸、塩酸、リン酸、ホウ酸、硫酸、クエン酸、酢酸など、好ましくは、リン酸、クエン酸、硝酸、及び/又は酢酸などの、無機酸又は有機酸でコロイド状溶液にされた、乾燥状態であってもよく、又は、湿潤状態であってもよい。両方の部分、すなわち、粘結剤と乾燥状態の触媒粒子の混合が、実施される場合、粘結剤のコロイド化が、希釈した有機酸又は無機酸の添加によって実施される。その後、湿潤粘結剤粒子と触媒の均質混合は、適切な流動学的特性が現れた状態で、完全に均質で一様なペーストが得られるまで、マラー混練機で実施される。
【0049】
粘結剤又は結合剤として使用される材料は、水素化処理触媒の粘結剤として従来から使用される材料の中から選択されてもよい。さらに、シリカ、シリカ−アルミナ、アルミナ(ベーマイト、擬ベーマイト、バイヤライト、ギブサイトなど)などの酸化物、水酸化物、オキシ水酸化物など、及び/又は、ガンマ、エータ、テータ、及びカイアルミナ、ジルコニア、ジルコニア−アルミナ、ジルコニア−シリカ、異なる構造(ZSM−5、ベータ、Y、Xなど)を有するゼオライトなどのアルミニウム酸化物の群を使用することもできる。MCM材料の族からの珪素アルミン酸塩も使用することができる。鋭錐石、金紅石、及びブロカイトなどの異なる構造を有するチタニア、比面積が高いナノ管状形態及び/又はナノ繊維形態を有する、水素及び/又はナトリウムからの混合チタン酸塩、チタニア−アルミナ、チタニア−ジルコニア、チタニア−シリカなどが選択されてもよい。好ましくは、粘結剤は、アルミナ、ジルコニア、シリカ、シリカ−アルミナ、及びチタニア、及び/又はそれらの成分の混合物である。より好ましくは、粘結剤は、アルミナ、ジルコニア、チタニア、アルミナ−チタニア、及びジルコニア−チタニアである。オキシ水酸化チタン、水素チタン酸塩、及び/又は、比面積が高くかつ密度が低いナノ繊維形態及び/又はナノプレート形態を有する水素及び/又はナトリウムからの混合チタン酸塩の使用、並びに/又は、比面積が高くかつ密度が低いナノ繊維形態及び/又はナノプレート形態を同様に有するアルミナ粘結剤の使用は、本発明の特別な選好である。選択された粘結剤の表面積は、一般に、窒素吸着によって測定され、また、BET法を適用すると、20〜700m/g、好ましくは、150〜500m/gの間で変わり、また、0.05〜最大2.5cm/g、好ましくは、0.1〜最大2cm/gの間で変わる孔容積を有する。
【0050】
触媒の最終組成物における粘結剤の組成は、その酸化形態での触媒成分の総量の0〜50重量%、好ましくは、0〜40重量%、より好ましくは、0〜20重量%の間で変わる。しかし、粘結剤の組成は、対象となる用途、最終触媒組成物において所望される機械的抵抗に応じて調整されるべきである。本発明の目的である触媒配合組成プロセスは、固定床プロセスにおいて適用されるために、成形品、ペレット、球、及び/又は微小球の配合組成、好ましくは、成形品及び/又はペレットの配合組成を含む。配合組成される成形品は、1インチの1/20〜1/8を包含する半径サイズの円柱であってよく、又は、3裂状又は4裂状であってよい。
【0051】
成形プロセスは、既に示したように、異なるサイズの成形品を調製するために、異なる直径のオリフィスを有するダイに結合した機械式押出し器で実施される。成形品が得られると、成形品は、5分〜12時間、好ましくは、5分〜5時間を包含する期間の間、静止状態にされる。その後、成形品は、静的空気雰囲気のストーブ上でか、50〜300℃、好ましくは、80〜150℃を包含する温度で暖かい空気流によるか、又は、50〜300℃を包含する温度の制御された雰囲気を用いて連続乾燥器内で、乾燥プロセスを受ける。このステージでは、触媒は、酸化形態にさせるために焼成されてもよく、又は、焼成されなくてもよい成形品、ペレット、又は球として配合組成される。触媒は、界面活性剤として添加された有機化合物を含有し、有機化合物は、熱処理されることによって、炭素残渣を残し、それが、成形品を安定にし、成形品により強い機械的強度を与えるために、熱処理を適用することが望ましい理由である。どんな状況であっても、熱処理は、酸素又は空気雰囲気内で実施されるべきではない。熱処理は、窒素流、アルゴン流、ヘリウム流、又はそれらの混合物流であることができる、不活性雰囲気で実施されるべきである。この熱処理は、0.1時間〜24時間、好ましくは、0.5時間〜10時間を包含する時間の間、200〜1000℃、好ましくは、300〜600℃、より好ましくは、300〜500℃を包含する温度で実施されるべきである。熱処理中に触媒組成物を通過する不活性ガス流量は、0.01〜5L/g分、好ましくは、0.01〜1L/g分を包含する。乾燥成形品は、熱処理を受けず、硫化ステージ(同様に、本発明の目的)へ直接流れてもよい。
【0052】
触媒組成物の調製プロセス(本発明の目的)は、硫化ステージを含む。このステージは、不活性雰囲気内での熱処理の前であっても、後であっても、触媒粒子を、硫黄化合物を含有する液体又は気体ストリーム及び水素の気体ストリームに接触状態にさせることからなる。硫化に使用される硫黄化合物は、硫化水素、二硫化ジメチル、二硫化炭素、チオフェン、多硫化物、ベンゾチオフェン、又は、硫化有機化合物を含有する炭化水素のストリームであってよい。任意で、硫化は、乾燥炭素又は不活性雰囲気内で熱処理された炭素を含有する触媒組成物に関して実行されることができる。気相における硫化手順は、硫化状態で材料を得るために、200〜600℃、好ましくは、250〜500℃を包含する温度で、触媒組成物の固定床にわたって水素で均衡した、0.5〜30容積%のHSの流れを作ることからなる。液相における硫化手順は、触媒組成物を、硫黄有機化合物、或いは、DMDS、チオフェン、又はCSを富化した化合物などの、0.1〜5重量%の硫黄を含有する炭化水素の液体ストリームと、200〜600℃、好ましくは、250〜500℃を包含する温度で、かつ、1〜100Kg/cmを包含する圧力の水素流に接触状態にすることからなる。
【0053】
固定床反応器の炭化水素の水素化処理反応における用途の場合、硫化は、熱処理の前又は後で「現場で(in situ)」実施されるべきである。好ましくは、硫化は、「その場で」、かつ、炭素を含有する有機成分を含む乾燥触媒組成物に対して直接、かつ/又は、不活性雰囲気内で熱処理することによって乾燥触媒組成物を安定させた後に実施されるべきである。不活性雰囲気内での熱処理後に、触媒組成物(本発明の目的)は、酸化状態の、少なくとも1つの第VIII族非貴金属及び少なくとも1つの第VIB族金属からなり、さらに、炭素を含有する。第VIB族金属成分がモリブデンである(本発明の選好である)場合、X線回折パターンは、図1で観測されるように、ベータ相及び/又はアルファ相、或いは、2相の混合を有するニッケル及びコバルトモリブデン酸塩構造の特性ピークを呈した。触媒組成物が、タングステン及び/又はモリブデンからなる、或いは、タングステンの濃度が高い場合、X線回折パターンは、アモルファス材料に特有であり、かつ、JCPDS(Powder Diffraction Standards)カードに関する準備委員会で既に報告されたどの相にも割り当てることができない幅広のピークを呈した。
【0054】
第VIII族非貴金属元素がニッケルであり、かつ、第VIB族元素がモリブデンである場合、X線回折は、アルファ相及び/又はベータ相の、モリブデン酸ニッケルの特有のピークを示す、又は、X線回折ピークが両方の相に相当してもよい。アルファ相では、構造は、モリブデンが4面体対称で4配位結合し、ニッケルが8面体対称で6配位結合するモノリシックであり、一方、ベータ相は、モリブデン及びニッケルが、8面体対称で6配位結合する斜方晶系構造を呈する。第VIII族非貴金属成分元素がコバルトであり、かつ、第VIB族元素がモリブデンである場合、X線回折ピークは、アルファ相及び/又はベータ相或いは2相の混合のモリブデン酸コバルトに相当する。第VIII族非貴金属成分が、ニッケルとコバルトの混合物からなるとき、X線回折ピークは、アルファ相及び/又はベータ相或いは2相の混合のニッケル−コバルトの混合モリブデン酸塩に相当する。
【0055】
不活性雰囲気内での熱処理後に、炭素、少なくとも1つの第VIII族非貴金属、及び少なくとも1つの第VIB族金属を含有する触媒は、50〜300m/g、好ましくは、70〜150m/gを包含する比面積、0.05〜1.5m/g、好ましくは、0.1〜0.7m/gの孔容積を呈した。不活性雰囲気内での熱処理後の触媒の孔直径は、窒素吸着によって決定され、3〜20nm、好ましくは、3〜10nmを包含する。
【0056】
触媒の組織特性は、成形品が、触媒組成物で使用される場合、成形品の配合組成に使用される粘結剤又は結合剤の量に依存する。次に、添加される粘結剤の量は、触媒組成物において所望される活性に依存し、酸化形態の触媒成分の総重量の0〜50%、好ましくは、0〜40重量%、より好ましくは、0〜20重量%の間で変わる。しかし、粘結剤組成物は、対象となる用途、並びに、最終の触媒組成物において所望される活性及び機械的抵抗に応じて調整されるべきである。
【0057】
触媒粒子が、粘結剤内に一様でかつ密に分布することが重要であり、粘結剤は、触媒粒子用の結合ガムの役目を果たし、また、連続固定床水素化処理プロセスにおいて評価されることができるように、触媒粒子が、成形品、ペレット、及び/又は球として配合組成されることを可能にする。こうして、先に述べた粘結剤組成物によって、触媒は、少なくとも2lb/mm、好ましくは、4lb/mm以上の機械側粉砕強度を呈する。
【0058】
硫化形態では、本発明の目的である触媒組成物は、少なくとも1つの第VIII族非貴金属及び少なくとも1つの第VIB族金属並びに、さらに、結晶化ステージ中に添加された有機化合物から生じる残渣炭素の硫化物からなる。硫化物及び炭素以外に、粘結剤が添加されると、触媒組成物はまた、水素化処理触媒用の金属又は従来の支持体の群から選択された無機酸化物からなる。
【0059】
熱処理及び後続の硫化後、又は、直接硫化後に、触媒組成物は、酸化物及び/又は硫黄の総組成に基づいて、0〜10重量%、好ましくは、0.05〜5重量%を包含する濃度の炭素を含有する。非常に低い濃度で、ある種の硫化物カーバイドを形成するか、又は、アモルファス炭素の形態の炭素が存在してもよい。
【0060】
硫化処理後に、少なくとも1つの第VIII族非貴金属及び少なくとも1つの第VIB族金属の酸化相の少なくとも60%が硫化された、好ましくは、金属の少なくとも80%が硫化された、より好ましくは、触媒組成物に関わる金属の少なくとも95%が硫化された。有機又は炭素成分の存在は、触媒組成物に関わる金属の硫化を有利にする。
【0061】
硫化相にある触媒組成物のX線回折パターンは、図1(c)に観測されるように、第VIII族非貴金属硫化物及び第VIB族金属硫化物並びに第VIII族と第VIB族の混合金属硫化物からの結晶相によるものと考えられる結晶ピークを呈した。
【0062】
本発明の目的である触媒組成物は、図2(a,b)で理解されるように、薄層構造を有する粒子で構成され、高い密度の粒子が湾曲され、2層の薄層から20層の薄層までの積層レベルを有する、フラーレンナノ粒子を形成することが透過型電子顕微鏡(Electron Transmission Microscopy)によって判定された。
【0063】
それが、触媒組成物の直接硫化水和によるものであっても、少なくとも1つの第VIII族非貴金属及び少なくとも1つの第VIB族金属並びに残渣炭素を含有する触媒組成物の以前の熱処理による、酸化種の硫化であっても、活性硫化種は、軽質及び中間の石油留分の、炭化水素の水素化処理反応、好ましくは、水素化脱硫、水素化脱窒素、及び水素化脱芳香族における触媒として評価された。
【0064】
本発明の特定の場合、軽質及び中間の石油留分は、その沸点が180℃以下である炭化水素を含む留分であると考えられ、中間の石油留分は、その沸点が180.1℃以上でかつ400℃以下である炭化水素を含む留分であると考えられる。
【0065】
本発明の触媒組成物の用途のうちの1つである水素化脱硫反応の場合、ジベンゾチオフェン(DBT)分子モデルが、その用途を制限することなく使用された。それは、前記化合物が、軽質及び中間の石油留分の水素化脱硫反応用の分子モデルを表すからである(M.Daage及びR.R Chianelli,J.Catal.149,414−427(1994))。環境に対する硫化触媒の暴露を最小にし、硫酸処理種の配合組成による硫化触媒の不活性化を回避するために、硫化材料は、グローブチャンバ内でDBTモデル分子を含有する炭化水素と接触状態に置かれ、その後、オートクレーブ反応器内に装填される。好ましくは、触媒は、考えられる範囲で硫酸化を回避するために、窒素、ヘリウム、又はアルゴンの不活性雰囲気下で添加されるべきである。
【0066】
水素化脱硫される反応混合物内でのDBTの量の制御は、先の手順と同様に実施される。すなわち、炭化水素の量が、高精度分析スケールで量られ、次に、水素化処理をしたいと思うDBTの量が添加され、次に、触媒が添加され、したがって、グローブチャンバ及び不活性雰囲気の環境に対する暴露が回避される。
【0067】
軽質又は中間の石油留分を水素化脱硫したいと思うとき、触媒の添加は、水素化脱硫反応を開始する前に有機溶媒によって100mlに仕上げられる所望の留分の10mlに対して直接実施される。
【0068】
水素化脱硫反応は、反応混合物が、溶媒及びDBTとして使用される炭化水素で形成されようが、評価したいと思う触媒を含有する水素化脱硫をしたいと思う石油留分で形成されようが、反応混合物が添加されるオートクレーブバッチによって3相反応器内で実施された。
【0069】
反応器が装填されると、システムは、存在する空気をパージングするために、窒素、ヘリウム、及び/又はアルゴン、好ましくは、窒素などの不活性ガスで加圧される。その後、内部拡散効果の存在をなくすために、機械的撹拌が、100〜2000rpm、好ましくは、800〜1500rpmで開始した。その後、反応器の温度は、300〜400℃、好ましくは、320〜360℃の間隔で最終動作温度まで上昇した。最後に、動作圧が、40〜100kg/cm、好ましくは、50〜70kg/cmの水素の添加によって調整された。
【0070】
先の章で述べた反応条件に達すると、転化率、反応速度、選択性、及び収率などのパラメータを決定するために、頻繁なサンプリングによる触媒評価が実施された。こうした理由で、反応性炭化水素に関して擬似1次反応モデル、及び、過剰の水素が供給されたことによって、水素に関するゼロ次反応モデルであると考えられた。反応から得られる生成物の識別及び定量化のために、取得された液体サンプルが、水素炎イオン化検出器及びUltra2キャピラリーカラム(Crosslinked 5% Ph Me Silicone)を装備するVarian3400CXガスクロマトグラフにおいて分析された。実際の負荷が使用されると、硫黄の総濃度は、化学発光検出器(SCD)及びキャピラリーカラムを装備するHP篩ガスクロマトグラフにおいて決定された。触媒活性は、本発明の目的である触媒の配合組成に関する固有の反応速度定数(K)([L/g・s]で定義される)を計算することによって決定された。
【0071】
比較のために、市販の触媒の触媒活性が、反応固有速度定数が、それに関して決定されたアルミナ塩基を有する高い比面積の支持体上に堆積した同じ活性成分に基づいて決定された。この決定結果は、基準触媒の反応速度定数として使用され、また、触媒活性と基準触媒の活性の比として定義される、本発明の目的である触媒の相対的活性を決定するのに役立つ基準定数と名付けられた。前記比は、触媒の反応速度定数を市販の基準触媒に関する反応基準定数で割った値である。反応が、水素化脱硫反応モデル分子としてDBTを用いて実施された場合、触媒配合組成(本発明の目的)は、3〜4時間の反応のビフェニル(BP)の形成に対して30〜40%を包含する選択性を、BPを構成する芳香族環の水素化生成物としてのシクロヘキシルフェノール(CHP)及びビシクロヘキシル(BCH)に対して60〜70%の選択性を呈し、このことは、これらの触媒が、高い水素化能力を所有することを示す。前記水素化能力は、CHP選択性とBCH選択性を足したものをBP選択性で割る反応生成物選択性の比[(SCHP+SBCH)/SBP]よって決定された。本発明の目的である触媒の水素化の能力は、アルミナ上に担持された同じ金属に基づく従来の触媒の能力より優れていることがわかった。触媒組成物内での炭素の存在は、水素化脱硫速度だけでなく、材料の水素化能力もまた有利にすることが実証された。粘結剤が、炭素を含有する触媒組成物(本発明の目的)に添加されると、水素化脱硫能力が、わずかに低下する。しかし、その水素化能力は、劇的に減少する。1〜3、好ましくは、1.5〜2.5を包含する選択性の比[(SCHP+SBCH)/SBP]は、0.05〜0.5を包含する値に減少する。一般に、同じ金属に基づく市販の触媒では、この比は、0.1〜0.3を包含する。
【0072】
さらに、粘結剤又は結合剤を含有する、少なくとも1つの第VIII族非貴金属及び少なくとも1つの第VIB族金属の触媒組成物内の炭素の存在は、その脱硫能力を有利にし、その水素化能力を促進する。したがって、本発明の目的である触媒組成物内の炭素の存在は、深い水素化脱硫レベル及び硫黄含有量が非常に低い燃料を達成する高性能触媒に到達するために、きわめて重要であることがわかる。
【0073】
最後に、実施例12では、本発明の触媒組成物の水素化処理能力は、その特性が表3に示される、250〜500ppmの高い窒素含有量を有する1次軽質ガスオイル(PLGO)について実証される。本発明の目的である触媒組成物は、表4に示すように、アルミナ上に担持された同じ金属成分を有する従来の市販の触媒の触媒活性に比べて約5倍高い触媒活性を呈した。得られる生成物の硫黄含有量は、評価が、2.5時間−1の空間速度で実施されると、硫黄重量で30ppmより低いレベルに減少した。一方、空間速度が1.5時間−1に減じると、生成物の留分内の硫黄含有量は、重量で10ppmのレベルより低いレベルに減少した。したがって、軽質及び中間の留分の水素化脱硫において本発明の目的である触媒組成物を適用することは、極低硫黄燃料を達成するための代替法である。
【実施例】
【0074】
実施例1
11.93gのヘプタモリブデン酸アンモニウム[(NHMo24]、21.18gの硝酸ニッケル[Ni(NO.6HO]、及び0.33gの臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)が、150mlの脱イオン水内で溶解される。4〜6のpHを有する緑色の結晶溶液が得られ、その後、28容積%水酸化アンモニウム、約125mlが、8〜10のpHに達するまで添加され、溶液は、結晶性を残し、その色が、緑から青に変わる。その後、溶液は、79〜90℃に加熱され、過剰の水(125ml)の蒸発及び緑の沈殿物の形成が可能になる。形成された懸濁液は、7.3のpHを呈する。得られた材料は、ろ過され、豊富な量の脱イオン水で洗浄され、18時間の間、120℃で乾燥される。
【0075】
粉末形態で得られた材料は、モリブデン及びニッケルの混合オキシ水酸化アンモニウムに特有の結晶構造を呈し、その式は、(NH)HNi(OH)(MoOと表される(図1(a)を参照されたい)。その後、有機化合物を含有するモリブデン及びニッケルのオキシ水酸化アンモニウムで構成された5gの材料は、2時間の間、10容積%のHSと90容積%のHで構成されたガスの混合物からの100ml/分の流量を作成する石英管内で、400℃で直接硫化された。その後、固形物は、室温で冷却された。その硫化相では、材料は、Ni2.5Mo6.7で構成された結晶相とNiS1.19で構成された結晶相の混合を呈した(図1(c)を参照されたい)。得られたモリブデン及びニッケルの混合硫化物は、フラーレン形態を呈した。すなわち、混合硫化物は、2の構造層から20の構造層の積層レベルを有する、5〜20nmを包含する寸法を有する微小球で構成される。
【0076】
粉末形態(80:100 Tyler mesh)の硫化材料のある部分は、考えられる最大限、環境に対する暴露を回避しながら、ジベンゾチオフェン(DBT)水素化脱硫反応において評価された。0.3gのDBTを100mlのn−ヘキサデカン内で溶解することによって調製された100mlの溶液は、500mlオートクレーブ内に設置され、オートクレーブに、0.2gの硫化材料が、触媒として添加された。反応器は、密閉され、不活性ガスでパージされた。その後、2〜20℃/分の加熱速度で、温度が320℃まで上昇し、水素圧が、56Kg/cmに調整された。4〜6時間を包含する期間の間、反応し、ガスクロマトグラフィによって分析するために、30分ごとに反応混合物から部分標本を取得することが可能にされた。表1では、4時間の反応の終わりに、DBT転化率が、96%になることが確認され、その反応速度定数は1.4810−4l/g.sであった。
【0077】
ビフェニル(BP)に対する選択性は、32.75モル%であることがわかった。一方、シクロヘキシルフェニル(CHP)及びビシクロヘキシル(BCH)に似た生成物に対する選択性は、67.25%より大きいことがわかった。CHP及びBCHに対する高い選択性は、この触媒が、高い水素化能力を所有することを示す。この触媒の水素化能力は、CHP選択性とBCH選択性を足したものをBP選択性で割る反応生成物選択性の比[(SCHP+SBCH)/SBP]よって決定され、前記比は、2.05より大きいことがわかった。これは、高い水素化能力を示す。
【0078】
硫化材料の別の留分は、オートクレーブ内での1次軽質ガスオイル(PLGO)の水素化脱硫における触媒として評価された。この実験の場合、表1で報告された特性を有する20mlのPLGOが、80mlのヘキサデカン内で希釈され、この混合物が、500mlオートクレーブ内に設置され、触媒として2gの硫化材料が添加され、80〜100Tyler meshを包含する粒子サイズに圧縮された(strained)。反応器は、密閉され、窒素でパージされ、その後、温度は、2〜20℃/分を包含する加熱速度で、温度が350℃まで上昇した。その温度に達すると、水素圧が、70Kg/cmに調整され、6時間の間、反応することが可能にされた。反応混合物内の硫黄の初期濃度は、約2688ppmであり、6時間の反応後、反応の液体生成物は、35ppmの硫黄を含有した。この評価について決定された反応速度定数は、3.4210−6L/g.sであった。
【0079】
実施例2
触媒組成物内に残渣炭素前駆体として添加された界面活性剤の影響を評価するために、実施例1で調製された材料は、空気雰囲気内で400℃の温度で焼成された。得られた材料の酸化相は、その形態が、ニッケルモリブデン混合酸化物のナノ粒子からなる、β−NiMoO相及び少量のα−NiMoO相に相当する結晶構造を呈し(図1(b)を参照されたい)、また、105m/gのBET表面積、0.18cm/gの平均孔容積、及び6.9nmの平均孔直径を呈した。
【0080】
酸化形態の材料は、硫化処置を受ける。硫化処置を受けるために、材料は、100ml/分の窒素流量を使用して石英管内で、400℃に達するまで4℃/分の速度で加熱される。400℃に達すると、窒素流は、10容積%のHS及び90容積%のHからなるガスの混合物に変更され、2時間の間維持される。
【0081】
粉末形態(80:100 Tyler mesh)の硫化材料の一部分は、考えられる最大限、環境に対する暴露を回避しながら、ジベンゾチオフェン(DBT)の水素化脱硫反応において評価された。0.3gのDBTを100mlのヘキサデカン内で溶解することによって調製された100mlの溶液は、500mlオートクレーブ内に設置され、オートクレーブに、0.2gの硫化材料が、触媒として添加された。反応器は、密閉され、不活性ガスでパージされた。その後、2〜20℃/分を包含する加熱速度で、温度が350℃まで上昇し、水素圧が、56Kg/cmに調整された。4〜6時間を包含する期間の間、反応し、ガスクロマトグラフィによって分析するために、30分ごとに反応混合物から部分標本(aliquot)を取得することが可能にされた。表1で観測することができるように、4時間の反応の終わりに、DBT転化率が、87%になることがわかり、その反応速度定数は9.3410−5L/g.sであった。これらの結果は、焼成処理も酸化処理も存在しない実施例1で報告された結果よりかなり小さく、実施例1に含まれる有機化合物は、不活性雰囲気熱処理手順で残渣炭素を形成した。
【0082】
ビフェニル(BP)に対する選択性は、35.52モル%であることがわかった。一方、シクロヘキシルフェニル(CHP)及びビシクロヘキシル(BCH)に似た生成物に対する選択性は、64.48モル%より大きいことがわかった。CHP及びBCHに対する高い選択性は、この触媒が、実施例1と同じ方法で決定された、1.82の高い水素化能力を所有することを示す。しかし、この値は、触媒組成物が残渣炭素を含有する実施例1で観測された値より低かった。
【0083】
触媒内での残渣炭素前駆体としての界面活性剤の添加は、触媒の脱硫速度及び水素化能力を有利にし、促進することが実施例1及び2の比較から引き出されることができる。
【0084】
実施例3
この実施例は、実施例1に述べる同じ方法に従う。この実施例では、材料は、炭素前駆体有機成分の添加無しで調製された。この実施例で使用される塩の量は、界面活性剤としてのCTABの添加の無い実施例1の場合と同じであった。得られた沈殿物は、ろ過され、豊富な量の脱イオン水で洗浄された。
【0085】
得られた乾燥材料は、図1に提示されるような、ニッケル−モリブデンオキシ水酸化物のアンモニア錯体に相当する、実施例1と同じ結晶構造を呈した。
【0086】
材料は、実施例1に述べる手順で直接硫化された。粉末形態の材料は、DBTの水素化脱硫反応の実施例1に述べる手順に従って触媒として評価され、1.0210−4L/g.sの反応速度定数で6時間の反応中に96モル%の転化率が得られた。したがって、この触媒は、残渣炭素前駆体界面活性剤が添加される組成物に関して実施例1で得られるより50%小さい活性、及び、空気雰囲気内での400℃の焼成によって炭素がなくなった実施例2に関して非常に似た触媒活性を有することがわかった。触媒調製中における残渣炭素前駆体としての界面活性剤の添加の重要性は、この比較から引き出される。
【0087】
PLGOに関する評価は、実施例1と同じ条件下で実施された。6時間の反応後に、重量で48ppmより低い硫黄含有量を有する最終生成物が得られ、反応速度定数は、実施例1の同じ試験で観測されたより小さい、2.8510−6l/g.sであった。
【0088】
実施例4
実施例3で得られた乾燥材料は、実施例2に述べる同じ手順に従って空気雰囲気内で焼成された。酸化相では、材料は、実施例2で報告された同じ結晶構造を呈した。しかし、BET表面積は92m/gであり、孔容積は0.132cm/gであり、平均孔直径は5.1nmであった。酸化形態の材料は、硫化処置を受ける。硫化処置を受けるために、材料は、100ml/分の窒素流量を使用して石英管内で、400℃に達するまで4℃/分の速度で加熱される。400℃に達すると、窒素流は、10容積%のHS及び90容積%のHからなるガスの混合物に変更され、2時間の間維持される。粉末形態(80:100 Tyler mesh)の硫化材料の一部分は、実施例1に述べる手順及び条件によって、考えられる最大限、環境に対する暴露を回避しながら、ジベンゾチオフェン(DBT)の水素化脱硫反応において評価された。
【0089】
表1で観測することができるように、4時間の反応の終わりに、DBT転化率が、89%になることがわかり、その反応速度定数は7.510−5L/g.sであった。これらの結果は、焼成処理が存在しない実施例1及び3で報告された結果よりかなり小さく、また、混合中に有機化合物が添加される同様な焼成処理に関する実施例2の結果より著しく小さく、合成の反応ステージがなくされた。しかし、表1で理解することができるように、生成物選択性の分布(distribution of product selectivities)は、実施例3で得られるものと実際には同じであった。すなわち、この場合、焼成中になくなるべき有機化合物前駆体が存在しなかったことから、両方の触媒は、同じ水素化能力を呈した。
【0090】
実施例5
この例では、触媒は、粘結剤又は結合剤の存在下でのニッケルモリブデン混合オキシ水酸化物の沈殿によって調製された。243m/gの表面積、0.336cm/gの平均孔容積、及び5.54nmの平均孔直径を有するベーマイト相のアルミナが使用された。このために、ちょうど実施例1と同様に、11.93gの硝酸ニッケル、21.18gのヘプタモリブデン酸アンモニウム、及び0.33gの界面活性剤(CTAB)が、150mlの水内に溶解された(pH=5)。溶液は、緑色を取得し、その後、この溶液は、90℃に加熱され、125mlの水酸化アンモニウム(pH=10)が添加され、結晶溶液は青色を取得した。この溶液は、90℃に加熱しながら、30分間維持され、その後、68.25gのベーマイト(Catapal)が添加された。蒸発によって水を除去するために、ベーマイトを添加された溶液は、青から緑、その後、浅緑への色の変化が認められるまで、先に示した温度で約3時間の間、加熱し続けた。得られた沈殿物は、室温で冷却されたままにされ、蒸留水で4回、洗浄ごとに600mlで洗浄された。最後に、得られた生成物は、18時間の間、120℃の温度で乾燥された。その後、材料は、実施例1で述べた手順に従って焼成された。酸化相では、材料は、ガンマ−アルミナに特有の回折パターンを示す。酸化相の触媒は、16.4重量%のMoO、7.17重量%のNiO、及び76.4重量%のAlを含有する。この材料は、271m/gの窒素吸着によって測定された比面積、0.31cm/gの孔容積、及び4.5nmの孔直径を示す。
【0091】
乾燥材料の一部分は、炭素前駆体有機化合物をなくさないために、実施例1で述べる手順に従って直接硫化される。その触媒活性は、実施例1で述べる方法に従ってDBT水素化脱硫反応において評価された。4時間の反応の終わりに、乾燥材料は、98%の転化率及び1.2710−4L/g.sの水素化脱硫に対する触媒活性を呈した。
【0092】
BPに対する選択性は、79.07モル%であることがわかった。一方、水素化生成物CHP及びBCHに対する選択性は、20.93モル%であることがわかった。水素化能力は、選択性の比[(SCHP+SBCH)/SBP]より、0.26であり、実施例1と同様に決定され、実施例1で観測された値よりずっと小さい。水素化脱硫速度は高いが、水素化能力は、触媒組成物が粘結剤を含有しない実施例1〜4と比較して低いことがわかった。
【0093】
実施例6
実施例6は、実施例5に述べる方法に従って実施された。この場合、ヘプタモリブデン酸アンモニウム塩及び硝酸ニッケル溶液の調製中に、界面活性剤は添加されなかった。結晶化は、粘結剤、実施例5で使用されるものと同じ粘結剤の存在下で実施された。
【0094】
材料の一部分は、酸化相の材料を得るために、空気雰囲気内で焼成された。この材料のX線回折パターンは、主に、ガンマ−アルミナに特有のピークを示す。酸化相では、材料は、約16.4重量%のMoO、7.2重量%のNiO、及び76.4重量%のAlを含有する。窒素吸着によって決定された比面積は、260m/gであり、0.29cm/gの平均孔容積、及び4.5nmの孔直径であることがわかった。実施例5と比較すると、この材料は、界面活性剤(surfactant or surface active agent)の存在下で調製されると、より大きな比表面積を呈した。
【0095】
材料の一部分は、実施例1に述べる手順に従って直接硫化された。その触媒活性は、実施例1に述べる方法に従ってDBT水素化脱硫反応において評価された。4時間の反応後に、この材料は、97%の転化率及び1.0610−4L/g.sのDBT水素化脱硫速度定数を呈した。BPに対する選択性は、89.04%であり、水素化生成物CHP及びBCHに対する選択性は、10.96%であることがわかった。この材料の触媒活性は、実施例5からの残渣炭素を含有する等価物より低いことがわかった。同様に、その水素化能力は、CHP及びBCHのような水素化生成物に対して小さい選択性を呈するため、0.12に減少した。実施例5と6の比較は、界面活性剤などの有機化合物の合成への組み込みは、水素化脱硫率を有利にし、また、材料が粘結剤内に組み込まれても、材料の水素化能力を促進するという証拠を提供する。
【0096】
実施例7
この例は、水素化脱硫触媒のために従来のアルミナ上に担持された本発明の目的である触媒組成物と同じ金属に基づく、市販の触媒の触媒活性の評価に相当する。触媒活性の評価は、実施例1に述べた手順に従ってDBT水素化脱硫反応において実施された。
【0097】
4時間の反応後に、DBT転化率は、96%であり、1.1210−4L/g.sの反応速度定数が示された。水素化生成物、基本的に、CHPに対する選択性は、9.53%であり、一方、90.47%は、BPに対する選択性に相当した。選択性の比[(SCHP+SBCH)/SBP]として測定された水素化能力は、わずか0.1であった。
【0098】
実施例8
実施例1に述べる方法に従って、ニッケル塩をコバルト塩で置換して、材料が調製された。こうするために、11.93gのヘプタモリブデン酸アンモニウム、21.18gの硝酸コバルト[Co(NO.6HO]、及び0.33gの臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)が使用された。
【0099】
得られた沈殿物は、ニッケルに基づく材料と同じ構造を呈し、この場合にだけ、アンモニウム錯体が、モリブデン酸コバルトの混合オキシ水酸化物(NH)HCo(OH)(MoOから得られた。得られる材料は、実施例1に述べる硫化手順によって直接硫化された。得られる硫化材料は、金属成分の硫化相MoS、CoMo、及びCoの混合物で構成される。この実施例の場合、粉末形態(80:100 Tyler mesh)の材料は、直接硫化され、その触媒活性は、ちょうど実施例1に述べたように、容積が20%のヘキサデカン内で1次軽質ガスオイル(PLGO)が希釈されたオートクレーブ反応器において決定された。ただし、この場合、反応中の動作温度は、56Kg/cmより小さかった。この反応では、硫黄の重量が79ppmである生成物は、6時間の反応後に得られ、反応速度定数は、2.1910−6l/g.sであった。
【0100】
実施例9
材料は、実施例1に述べる手順に従って調製された。こうするために、同じ量のヘプタモリブデン酸アンモニウム(11.93g)が使用され、第2金属塩の量が、2つの、10.6gの硝酸ニッケルと10.6gの硝酸コバルトに分割された。同じ方法に従って、コバルト、ニッケル、及びモリブデンの混合硝酸塩の一貫した沈殿物が得られた。沈殿物は、実施例1と同様に、洗浄され、乾燥された。
【0101】
得られた固形物は、(NH)HCoNi(OH)(MoOなどのアンモニアを有するニッケル、コバルト、及びモリブデンの混合オキシ水酸化物構造を呈した。前記構造を有する材料は、実施例1に述べた手順によって直接硫化され、粉末形態(80:100(PLGO)mesh)の触媒活性は、実施例1に述べるような希釈PLGOを使用して、炭化水素留分の水素化脱硫において評価された。この反応では、硫黄の106ppmを有する生成物が、1.8410−6L/g.sの反応速度定数で得られた。
【0102】
実施例10
合成中に添加された界面活性剤の濃度の影響を観測するために、以下の2つの例では、組み込まれる界面活性剤の量を変えた。材料は、実施例1で述べた手順に従って調製され、同じ量の前駆体塩及び溶媒の量を使用し、1.65gのCTABである添加される界面活性剤の量だけが変わった。沈殿は、実施例1と同様に洗浄され、乾燥された。
【0103】
得られた固形物は、(NH)HNi(OH)(MoOなどのアンモニアを有するニッケル、コバルト、及びモリブデンの混合オキシ水酸化物構造を呈した。前記構造を有する材料は、実施例1に述べた手順によって直接硫化され、粉末形態(80:100 Tyler mesh)の触媒活性は、実施例1に述べるような希釈PLGOを使用して、PLGO水素化脱硫において評価された。結果は、表2に提示される。この反応では、硫黄の43ppmを有する生成物が、実施例1について観測された値より少し小さい、3.0210−6L/g.sの反応速度定数で得られた。しかし、それは、非常に高い活性を呈した。
【0104】
実施例11
実施例1で述べた同じ手順に従って、また、実施例10の場合と同じ目的で、界面活性剤の量は、この実施例では、実施例1の場合と同じ量の塩と溶媒を使用して、3.3gのCTABまで増加した。
【0105】
得られた材料は、対応する金属を用いて先の実施例で得られたものと同じ構造を呈した。
【0106】
得られる材料は、実施例1に述べた手順によって直接硫化され、粉末形態(80:100 Tyler mesh)の触媒活性は、実施例1に述べるような希釈PLGOを使用して、炭化水素留分(PLGO)の水素化脱硫において評価された。結果は、表2に提示される。この反応では、硫黄の40ppmを有する生成物が、実施例1について観測された値より少し小さく、かつ、実施例10で合成された材料の活性と非常によく似た、3.0810−6L/g.sの反応速度定数で得られた。実施例1、10、及び11で調製された材料の評価において得られた結果を比較することによって、界面活性剤の量は、水素化脱硫速度に著しく影響を及ぼさず、そのことが、おそらくは、合成プロセスが、洗浄ステージを含み、関係する金属のアニオンと強く相互作用する有機化合物だけが固形のまま残り、アニオンの濃度が、界面活性剤の濃度の増加に伴って変化しないことによることを推論することができる。
【0107】
実施例12
触媒組成物は、実施例1で述べる手順に従って調製された。得られた沈殿物、ニッケル−モリブデンオキシ水酸化物は、触媒組成物の総重量に基づいて20重量%のアルミナベーマイト(alumina boehmite)を混合された。その後、蒸留水内に溶解された3重量%の硝酸の水性溶液が、ペーストが得られるように添加された。湿潤ペーストが、閉じた容器内に溜まる(left to stand)ように放置され、その後、成形された。得られる成形品は、実施例1で述べる手順に従って120℃で乾燥された。
【0108】
成形品は、混合中に添加される有機化合物CTABの削減及び考えられる炭化並びに合成プロセス中の溶液の反応が達成されるために400℃で窒素雰囲気において熱処理されて、得られる触媒組成物は、16重量%のAl、55重量%のMoO、及び37重量%のNiO並びに1.5重量%未満の炭素を含有する。不活性雰囲気内での熱処理後、触媒組成物は、135m/gの比面積、03cm/gの平均孔容積、及び6nmの平均孔直径を呈した。
【0109】
この材料のある部分は、固定床プラント、及び、材料(4.5g)の5mlが、直径が1.4cmで長さが48cmの反応器内にパッキングされた圧力で動作する連続流において評価された。その後、その特性が表3に提示される炭化水素留分が1次軽質ガスオイル(PLGO)を通過させるようにさせて、触媒が硫化され、Sの含有量を10,000ppmだけ増加させるために、二硫化ジメチル(DMDS)が添加された。こうして、最終の総硫黄含有量は、約2.5重量%重量である。硫化は、27kg/cmの圧力で実施された。硫化に使用された空間速度(LHSV)は、1.5時間−1であり、333m/mのH/炭化水素比であった。触媒床温度は、40℃/時間の比で室温から135℃まで増加した。その後、触媒床温度は、343℃になるまで28℃/時間に変更され、3時間の間安定にされた。その後、水素化処理(hydrotreat)(PLGO)される炭化水素フィードストックを供給しながら、評価条件(70kg/cm、LHSV=2.5時間−1、及び445m/m)と同様の圧力、空間速度、及びH/炭化水素比の条件でシステムが保持され、343℃で96時間の間、安定になるように放置された。その後、スラリ内のS含有量(Antek分析器及び化学発光検出器付きガスクロマトグラフ)が本質的に一定と考えられるまで、こうして動作しながら、温度が、第1評価温度(350℃)に上昇した。上記が達成されると、反応器は、評価されるべき次の温度に保持される。
【0110】
【表1】

【0111】
【表2】

【0112】
【表3】

【0113】
【表4】

【0114】
【表5】

【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】乾燥相の触媒組成物(a)、モリブデン酸ニッケルのベータ相及びアルファ相の混合に相当する熱処理された触媒組成物(b)、及び、第VIII族の硫化金属と第VIB族の硫化金属の混合物(本発明の目的)に特徴的なピークを示す硫化相の触媒組成物(c)に特徴的な、実施例1を参照した、X線回折パターンを示す図である。
【図2】触媒組成物(本発明の目的)に特有の、実施例1で調製された硫化材料の透過型電子顕微鏡画像であり、a)電子顕微鏡画像は、密度の高い第VIB族金属硫黄微小球及び第VIII族金属微小球の形態を示し、b)高分解能電子顕微鏡画像は、2〜10の構造層を含む中空微小球を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒内で完全溶解状態にある、少なくとも1つの第VIII族非貴金属及び少なくとも1つの第VIB族金属、並びに、炭素前駆体としての有機化合物で構成される触媒組成物を調製するプロセス。
【請求項2】
a)水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、及び/又は水−アルコール混合物などのアルコールでよい溶媒内で前記前駆体塩を溶解し混合する工程と、
b)溶媒内に有機成分及び/又は界面活性剤を溶解する工程と、
c)工程(a)及び(b)で得られた溶液を混合する工程と、
d)5〜14、好ましくは、8〜12を包含するpHで、溶液(c)に塩基性水酸化物溶液及び/又は炭酸アンモニウムを添加する工程と、
e)工程(d)で得られた溶液についての温度を、50〜200℃、好ましくは、60〜100℃を包含する温度に増加させる工程と、
f)工程(e)の溶液を均質化する工程と、
g)工程(f)で得られた溶液を、溶媒の蒸発によって結晶化する工程と、
h)蒸発が終了しなかった場合に、結晶を分離し、母液を回収するために、工程(g)で得られた結晶化懸濁液をろ過又は遠心分離する工程と、
i)工程(h)で得られた固形物を、十分な脱イオン水及び/又は水/アルコール混合物で洗浄する工程と、
j)50〜300℃、好ましくは、80〜150℃を包含する温度で、工程(i)で得られた固形物を乾燥する工程と、
k)200〜1000℃、好ましくは、300〜600℃を包含する温度で、窒素、ヘリウム、アルゴンなどのような不活性雰囲気内で、工程(j)で得られた固形物を熱処理する工程と、
l)工程(i)か、又は、工程(j)のいずれかで得られた材料を、10容積%硫化水素で構成されたガス流内で、又は、少なくとも0.2重量%の硫黄を含有する炭化水素留分と、200〜600℃、好ましくは、250〜500℃を包含する温度で、かつ、1〜100Kg/cmを包含する圧力の水素流を用いて硫化するステージとからなる請求項1に記載の調製プロセス。
【請求項3】
第VIII族金属及び第VIB族金属前駆体塩は全て、溶媒として使用される液体内で完全に溶解する請求項1に記載の調製プロセス。
【請求項4】
完全に溶解された前駆体塩は、有機化合物を含有する溶液と混合される請求項1に記載の調製プロセス。
【請求項5】
使用される溶媒は、水及び/又はアルコール及び/又はアルコール−水混合物を有する請求項1に記載の調製プロセス。
【請求項6】
添加される有機化合物は、塩化物、臭化物、フッ化物、水酸化物などの形態であってよい、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、又は中性界面活性剤、或いは第4級アンモニウム塩(R4N)などの界面活性剤を有する請求項1に記載の調製プロセス。
【請求項7】
第VIII族非貴金属は、ニッケル、コバルト、及び/又は鉄、或いは、これらの金属の混合物を含む請求項1に記載の調製プロセス。
【請求項8】
ニッケル及び/又はコバルトは、酸化物として計算された、第VIII族非貴金属の100重量%に相当する請求項7に記載の調製プロセス。
【請求項9】
第VIB族金属は、モリブデン及び/又はタングステン及び/又はクロムを含む請求項1に記載の調製プロセス。
【請求項10】
モリブデンは、選択される第VIB族金属の少なくとも50重量%に相当し、第VIB族金属の、好ましくは少なくとも80重量%、より好ましくは、100重量%は、モリブデンである請求項1及び9に記載の調製プロセス。
【請求項11】
pHを、5〜14、好ましくは、8〜12に維持するために、水酸化物及び/又は炭酸アンモニウム及び/又は尿素又は第4級アンモニウム塩から選択されてもよい塩基性溶液を添加する工程を有する請求項2に記載の調製プロセス。
【請求項12】
溶液を均質化する工程は、選択された前駆体塩が全て、完全溶解状態にあるような、温度及びpHで起こる請求項2に記載の調製プロセス。
【請求項13】
溶液を均質化する工程は、5分〜24時間、好ましくは、5分〜10時間を包含する時間で起こる請求項2に記載の調製プロセス。
【請求項14】
溶液を結晶化する工程は、結晶槽に対して溶媒を部分的に蒸発させることによって、かつ/又は、蒸発器内で溶媒を完全に蒸発させることによって実施される請求項2に記載の調製プロセス。
【請求項15】
溶液を結晶化する工程は、80〜200℃を包含する温度で、溶媒を蒸発させることによって実施される請求項2に記載の調製プロセス。
【請求項16】
母液をろ過し、かつ/又は、遠心分離し、回収し、及び再循環させる工程は、蒸発及び/又は結晶化が終了しなかった場合に含まれる請求項2に記載の調製プロセス。
【請求項17】
不活性雰囲気内で熱処理する工程は、200〜1000℃、好ましくは、300〜600℃を包含する温度で、窒素、ヘリウム、アルゴン、又はそれらの混合物の流れの中で、少なくとも0.01L/g分の流量(flow)で実施される請求項2に記載の調製プロセス。
【請求項18】
熱処理は、どんな理由であっても、酸化雰囲気内で実施されるべきでない請求項2に記載の調製プロセス。
【請求項19】
硫化する工程は、いずれの以前の熱処理も無い状態で、直接に乾燥材料に関して実施される請求項2に記載の調製プロセス。
【請求項20】
硫化する工程は、請求項17に記載の不活性雰囲気内で、熱処理された材料に関して実施される請求項2に記載の調製プロセス。
【請求項21】
硫化する工程は、大気圧で、200〜600℃、好ましくは、250〜500℃を包含する温度で、硫化水素(HS)、二硫化炭素(CS)、二硫化ジメチル(DMDS)、チオフェンなどと水素の混合物で構成されたガス流内で、乾燥材料か熱処理された材料のいずれかに関して実施される請求項2に記載の調製プロセス。
【請求項22】
硫化する工程は、少なくとも0.1重量%の硫黄を含有する炭化水素液体留分及び200〜600℃、好ましくは、250〜500℃を包含する温度で、かつ、1〜100Kg/cmを包含する圧力の水素の存在下で、乾燥材料か熱処理された材料のいずれかに関して実施される請求項2に記載の調製プロセス。
【請求項23】
前駆体塩の混合物を均質化する工程において、アルミナ、シリカ、チタニア、シリカ−アルミナ、アルミナ−チタニア、ジルコニア、ジルコニア−チタニア、ジルコニア−アルミナ、アモルファスシリコアルミネート、及び/又は結晶、粘土などのような粘結剤に似た無機酸化物を含む請求項2に記載の調製プロセス。
【請求項24】
湿潤材料及び/又は乾燥材料の結晶化の工程後に、粘結剤に似た無機酸化物の添加を考慮する請求項2に記載の調製プロセス。
【請求項25】
材料が、熱処理された、かつ/又は、硫化された後に、粘結剤として無機酸化物の添加を考慮する請求項2に記載の調製プロセス。
【請求項26】
請求項23、24、及び25に記載の工程のうちの任意の工程において添加される粘結剤に似た無機酸化物を含有する材料の成形品の配合組成を考慮する請求項2に記載の調製プロセス。
【請求項27】
少なくとも1つの第VIII族非貴金属、少なくとも1つの第VIB族非貴金属、及び炭素を含み、任意で、酸化状態にある、かつ/又は、部分的に還元される、かつ/又は、硫化されることができる粘結剤として無機酸化物を含有してもよい触媒組成物。
【請求項28】
第VIII族非貴金属は、その濃度が、含まれる酸化物の全組成物の20重量%から50重量%まで変わる、ニッケル及び/又はコバルト或いはその混合物に相当する請求項27に記載の触媒組成物。
【請求項29】
第VIB族金属は、好ましくは、その組成が、関係する金属の酸化物として判定される全組成物の30から50%まで変わる、モリブデン及び/又はタングステンに相当する請求項27に記載の触媒組成物。
【請求項30】
第VIB族金属は、好ましくは、モリブデンである請求項29に記載の触媒組成物。
【請求項31】
炭素は、アモルファス状態にあるか、又は、その濃度が、関係する酸化物の全濃度の0.05重量%から5重量%まで変わる、第VIB族金属と第VIII族金属を有するカーバイドを形成する請求項27に記載の触媒組成物。
【請求項32】
第VIII族金属と第VIB族金属は、酸化物として判定される全触媒組成物の50〜100重量%を有する請求項27に記載の触媒組成物。
【請求項33】
触媒組成物のX線回折パターンは、第VIB族から選択される金属がモリブデンである場合、第VIII族金属のモリブデン酸塩のアルファ相又はベータ相に、かつ/又は、選択される金属がタングステンである場合、第VIII族金属のタングステン酸塩に相当する請求項27に記載の触媒組成物。
【請求項34】
触媒組成物のX線回折パターンは、第VIB族から選択される金属がモリブデンである場合、モリブデン酸塩アルファ相又はベータ相又はコバルトモリブデン酸塩又はニッケルコバルトモリブデン酸塩に、かつ/又は、第VIB族から選択される金属がタングステンである場合、タングステン酸塩又はコバルトタングステン酸塩又はニッケルコバルトタングステン酸塩に相当する請求項27に記載の触媒組成物。
【請求項35】
少なくとも1つの第VIII族非貴金属の硫化物、及び、少なくとも1つの第VIB族金属の硫化物、及び/又は、第VIII族金属と第VIB族金属の混合硫化物を含む請求項27に記載の触媒組成物。
【請求項36】
第VIB族金属の硫化物及び第VIII族金属の硫化物の少なくとも一部は、2の構造層から20の構造層の積層レベルを有するフラーレン微小球の形態を呈する請求項35に記載の触媒組成物。
【請求項37】
炭化水素留分の水素化処理反応において、高い水素化脱硫、高い水素化、及び高い水素化脱窒素を呈することを特徴とする請求項27に記載の触媒組成物。
【請求項38】
硫黄及び窒素含有量が非常に低い燃料を生産するために、水素化脱硫及び水素化脱窒素に対して高い活性を呈することを特徴とする請求項27に記載の触媒組成物。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−505830(P2009−505830A)
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−528970(P2008−528970)
【出願日】平成18年8月22日(2006.8.22)
【国際出願番号】PCT/MX2006/000091
【国際公開番号】WO2007/027079
【国際公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(506007895)インステイチユート メキシカノ デル ペトロレオ (3)
【Fターム(参考)】