石炭中の無機鉱物の化学形態の推定方法
【課題】 石炭中の無機鉱物の化学形態を推定するために、NMR法を利用して、高炉などの冶金炉やボイラーなどの燃焼炉で広く使用される石炭中の無機鉱物の化学形態を迅速かつ簡便に推定する方法を提供する。
【解決手段】 予め各銘柄を代表する複数種の石炭について、該石炭中に存在する各無機鉱物の化学形態を27Al−NMRスペクトル測定法により特定するともに、該石炭中のAl量およびSi量を成分分析法により測定し、該石炭中のAl量およびSi量と無機鉱物の化学形態との関係を示す無機鉱物推定マップを作成した後、評価対象である石炭について、該石炭中のAl量およびSi量を成分分析法により測定し、該石炭中のAl量およびSi量から前記無機鉱物推定マップに基づいて、該石炭中に存在する無機鉱物の化学形態を推定することを特徴とする石炭中の無機鉱物の化学形態の推定方法。
【解決手段】 予め各銘柄を代表する複数種の石炭について、該石炭中に存在する各無機鉱物の化学形態を27Al−NMRスペクトル測定法により特定するともに、該石炭中のAl量およびSi量を成分分析法により測定し、該石炭中のAl量およびSi量と無機鉱物の化学形態との関係を示す無機鉱物推定マップを作成した後、評価対象である石炭について、該石炭中のAl量およびSi量を成分分析法により測定し、該石炭中のAl量およびSi量から前記無機鉱物推定マップに基づいて、該石炭中に存在する無機鉱物の化学形態を推定することを特徴とする石炭中の無機鉱物の化学形態の推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭中の無機鉱物の化学形態の推定方法に関する。更に詳しくは、核磁気共鳴(以下、NMRと略称することもある)スペクトル測定法を利用して、高炉などの冶金炉やボイラーなどの燃焼炉で利用される石炭中の無機鉱物の化学形態を簡便に推定する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製鉄プロセスにおける冶金炉、例えば高炉の操業において、一般に鉄鉱石などの鉄含有原料と、石炭を乾留して得られるコークスなどの還元剤を炉頂から交互に装入することが行なわれる。また、近年、高炉炉頂から装入するコークスの一部をより安価な石炭に代替し、高炉の羽口から熱風とともに吹き込む方法が盛んに行われている。
【0003】
また、発電プロセスにおけるボイラー等の燃焼炉の運転においても、従来から使用されている重油の代替燃料として石炭が見直され、微粉炭吹込み法が特に注目されている。
【0004】
このように、鉄鋼業や発電事業等の幅広い分野において石炭が多量に用いられており、各設備の安定操業や稼働率向上などの観点から、使用する石炭の成分組成や特性などの品質を管理することが重要となってきている。
【0005】
従来、鉄鋼業や発電事業等の用途では、石炭中の炭素や水素などの有機成分の管理はされていたものの、石炭中の無機成分についてはほとんど注目されていなかった。
【0006】
しかし、近年、例えば、コークス化における石炭中の無機成分の粘結性および膨張性発現への関与、さらには、高炉で使用する際のコークス反応粉化への関与、無機成分の除去による石炭の有機成分の有効利用促進などの点から、石炭中の無機鉱物の含有量のみならず、その化学形態を評価することの重要性が高まりつつある。
【0007】
また、高炉の微粉炭吹き込み操業や自家発電やIPP等の発電事業での微粉炭利用技術において、微粉炭を吹き込み口まで気体搬送する過程で石炭中の無機成分が配管内に固着し、吹き込み量が低下するという問題も出てきている。
【0008】
この原因は、微粉炭の石炭銘柄、粒度、水分などの他に、石炭中の無機鉱物種も原因となっていることを本発明者は確認しており、微粉炭利用技術において、設備の安定操業と稼働率向上のために、石炭中の無機成分の正確な評価が求められる。
【0009】
従来の石炭中の無機成分の化学形態を評価する手法として、石炭中のAl量やSi量を化学分析法や蛍光X線分析(以下、XRFと略称する)法を用いて測定し、Al量が全てカオリン鉱物に由来するものと見なし、Si量からカオリン鉱物の理想化学組成から算出したSi量を差し引いた残りを、石炭中に含有するカオリン鉱物以外のSi化合物(SiO2等)とする石炭中の無機物の化学形態推定方法が知られている。
【0010】
しかしながら、実際の石炭中のAl量は全てカオリン鉱物として存在しているのではなく、カオリン鉱物以外に、アルミノケイ酸塩(粘土鉱物)や、Al2O3等の化合物として存在しており、石炭によってカオリン鉱物の定量結果に大きな誤差が生じる可能性がある。
【0011】
また、X線回折(以下、XRDと略称する)法を用いて、回折線の位置および強度から、石炭中の無機化合物の同定および定量を行う方法も知られている。
【0012】
しかし、このXRD法では、無機化合物の結晶格子からの回折像を測定するという性質上、粘土鉱物などの結晶性の低い無機化合物に対しては回折線が極端に広幅化し、高い精度の形態評価は困難である。また、XRD法では特定元素のみの情報を抽出することができないため、カオリン鉱物の回折線が他の無機鉱物に由来する回折線と重なり合い、同定が困難になる場合も多い。
【0013】
一方、近年、核磁気共鳴(NMR)法を用いて石炭中の無機化合物を推定する方法が提案されている。
【0014】
Thompsonらは、27Al−MAS NMRスペクトルから得られる全アルミニウム量に対する4配位型アルミニウムの比率から、石炭中の無機鉱物の種類を推定している(例えば、非特許文献1、参照)。
【0015】
この方法によれば、各産地から産出された数種の無機鉱物について、27Al−MAS NMRスペクトルを測定し、4配位型アルミニウムが存在しないものをカオリン鉱物、4配位型アルミニウムが0〜10%含有するものをモンモリロナイト、配位型アルミニウムが24〜29%含有するものをイライトあるいは雲母−モンモリロナイト混合層鉱物と特定する。
【0016】
この27Al−MAS NMRスペクトルから同定した4配位型アルミニウムの割合から無機鉱物種を推定する方法は、単独で存在する無機鉱物の種類を特定することはできるが、石炭中には複数の種類の無機鉱物が存在することが多いため、この方法により石炭中の各無機鉱物の種類を推定することは不可能である。
【0017】
しかしながら、複数の種類の無機鉱物が存在している場合は、4配位型アルミニウムの比率だけから推定した無機鉱物の種類の精度はかなり低くなってしまうという問題がある。
【0018】
実際、長年に渡る複雑な続成作用や風化作用、熱水変質により石炭が形成されていることを鑑みると、石炭中の無機鉱物は様々な変質を受けており、単一の無機鉱物しか存在しないということは非常に考えにくく、この方法で石炭中の無機成分の正確な化学構造を捉えることは困難である。
【0019】
石炭の27Al−NMRスペクトルを測定し、4配位Alではなく、6配位Alピークの全Alピークの積算値に対する比率から、石炭中のカオリン類を定量する方法が提案されている(例えば、特許文献1、参照)。しかし、この方法は、石炭中に存在するカオリン類以外の複数種類の無機鉱物を無機鉱物の化学形態を特定することはできない。
【0020】
この方法によれば、予め各無機鉱物試料から特定したの石炭の27Al−NMRスペクトルにおけるピークの位置(化学シフト値)から石炭中の複数の無機鉱物の化学形態を特定することができ、上記方法と異なり、無機鉱物の種類やその数を問わずに適用できる。
【0021】
しかしながら、これらのNMRスペクトルの測定には、一般的に長時間が必要であり、測定すべき炭種が今後増加した場合、その化学形態の評価を行うのに長期の期間を必要とすることが予想される。
【0022】
さらに、固体NMRスペクトルの測定条件の設定は一般に煩雑であり、専門の測定および解析担当者を必要とすることから、各製鉄所等の現場において、NMR法による無機鉱物の化学形態の評価を積極的に行うことは容易ではないのが現実である。
【0023】
【非特許文献1】Energy & Fuels,15(2001)176
【特許文献1】特開2004−317423号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
しかしながら、上記評価方法はいくつかの問題点を有している。まず、AlおよびSiを化学分析法やXRF法で定量して評価する方法であるが、実際の製鉄現場においては、各無機成分の存在量がほとんど同じ炭種でも、石炭加熱過程の無機化合物からの脱水挙動や、微粉炭吹き込み時の高炉内での無機成分の挙動に違いが見られており、成分分析だけでは石炭中の無機成分の実体管理ができないという問題がある。
【0025】
このような従来技術の現状に鑑み、本発明は、数種類の石炭に対して、AlおよびSiの存在量を測定し、NMR法による特定した石炭中の無機鉱物の化学形態との相関を示すマップを用いることによって、無機鉱物の化学形態が未知である石炭中のAlおよびSiの存在量のみから、前記石炭中の無機鉱物の化学形態を簡便に推定する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
即ち、本発明の要旨とするところは以下の通りである。
【0027】
(1)予め各銘柄を代表する複数種の石炭について、該石炭中に存在する各無機鉱物の化学形態を27Al−NMRスペクトル測定法により特定するともに、該石炭中のAl量およびSi量を成分分析法により測定し、該石炭中のAl量およびSi量と無機鉱物の化学形態との関係を示す無機鉱物推定マップを作成した後、評価対象である石炭について、該石炭中のAl量およびSi量を成分分析法により測定し、該石炭中のAl量およびSi量から前記無機鉱物推定マップに基づいて、該石炭中に存在する無機鉱物の化学形態を推定することを特徴とする石炭中の無機鉱物の化学形態の推定方法。
【0028】
(2)前記無機鉱物がAl主成分とする粘土鉱物および酸化物であることを特徴とする上記(1)に記載の石炭中の無機鉱物の化学形態の推定方法。
【0029】
(3)石炭の27Al−NMRスペクトルを測定し、該測定スペクトルのピーク位置と、予め測定したカオリン鉱物、スメクタイト、雲母粘土鉱物またはAl2O3の27Al−NMRスペクトルにおけるピーク位置との関係に基づいて、前記石炭中に存在する各無機鉱物の化学形態を特定することを特徴とする上記(1)または(2)に記載の石炭中の無機鉱物の化学形態の推定方法。
【0030】
(4)石炭中のAl量およびSi量を2次元グラフにプロットし、該グラフ上の各プロットに対応する石炭中に存在する無機鉱物の化学形態を分類し、該化学形態別にグループ化することによって、前記無機鉱物推定マップを作成することを特徴とする上記(1)〜(3)の何れかに記載の石炭中の無機鉱物の化学形態の推定方法。
【0031】
(5)前記27Al−NMRスペクトル測定法として、27Al−マジック角回転(MAS)法、または、27Al−多量子マジック角回転(MQMAS)法を用いることを特徴とする上記(1)〜(4)の何れかに記載の石炭中の無機鉱物の化学形態の推定方法。
【0032】
(6)前記成分分析法として、化学分析法、または、蛍光X線分析法を用いることを特徴とする上記(1)〜(5)の何れかに記載の石炭中の無機鉱物の化学形態の推定方法。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、石炭中の無機鉱物の化学形態を迅速かつ簡便に推定することが可能となり、電力業および製鉄業等、石炭を使用する産業における利用価値は極めて高いものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明の実施形態について以下に説明する。
【0035】
本発明は、従来の成分化学分析法、蛍光X線分析法、X線回折法などでは不可能であった石炭中の無機鉱物の化学形態を27Al−NMRスペクトル測定法により予め特定しておき、実際の評価対象である石炭中の無機鉱物の化学形態の推定は、簡便な測定方法でありかつ測定時間が短い成分分析法を用いて、石炭中のAl量およびSi量の測定結果を基に迅速かつ確実に行うことを技術思想とする。
【0036】
つまり、本発明は、予め各銘柄を代表する複数の石炭について、これらの石炭中に存在する各無機鉱物の化学形態を27Al−NMRスペクトル測定法により特定するともに、これらの石炭中のAl量およびSi量を成分分析法により測定し、石炭中のAl量およびSi量と無機鉱物の化学形態との関係を示す無機鉱物推定マップを作成した後、評価対象である石炭について、該石炭中のAl量およびSi量を成分分析法により測定し、該石炭中のAl量およびSi量から前記無機鉱物推定マップに基づいて、該石炭中に存在する無機鉱物の化学形態を推定するものである。
【0037】
図1に、石炭中のAlとSiを主成分とする無機鉱物の代表例としてカオリン鉱物、スメクタイト、雲母粘土鉱物の化学形態を示す。
【0038】
一般に、石炭中には、それぞれ化学構造の異なるAlとSiを主成分とする無機鉱物として、図1に示すようなカオリン鉱物(Al2Si2O5(OH)4)、スメクタイト(X(=Na,1/2Ca)0.33(Al1.67Mg0.33)Si4O10(OH)2・nH2O)、雲母粘土鉱物(K0.75(Al1.75R(=2価金属)0.25.)(Si3.50Al0.50)O10(OH)2・nH2O)等のアルミノケイ酸塩の粘土鉱物、さらに、アルミナ(Al2O3)、シリカ(SiO2)等が含有される。
【0039】
カオリン鉱物は、Al3+イオンを中心とした8面体(6配位型Al)構造およびSi4+イオンを中心とした4面体(6配位型Si)構造が1:1で層を形成した構造をとっている。
【0040】
スメクタイトは、Si4+イオンを中心とした4面体(4配位型Si)構造がAl3+イオンを中心とした8面体(6配位型Al)構造を上下から挟み込んだような、2:1の層構造を形成しており、4配位型Si4+イオンの一部をAl3+イオンが置換した構造をとっていることから、4配位型Alも存在している。
【0041】
雲母粘土鉱物も、スメクタイトと同様に、SiO4の4面体構造とAlO6の8面体構造構造が2:1で層を形成した構造をとっており、SiO4のSi4+イオンの一部がAl3+イオンで置き換わっている。4配位型Alの量はスメクタイトよりも多いのが特徴である。
【0042】
アルミナ中のAlは6配位型構造をとっており、シリカは4配位型Siで、Q4(SiO4ユニット中の酸素が全て隣接するSiO4ユニットと共有されている)の構造をとっている。
【0043】
本発明では、石炭中に存在する各無機鉱物の化学形態を特定するための方法として、27Al−NMRスペクトル測定法を用いる。
【0044】
27Al−NMRスペクトル測定法によりアルミノケイ酸塩やアルミナ等、アルミニウムを含む化合物の化学形態を特定することができる。
【0045】
27Al核は核スピンが2/5であり、核四極子相互作用を有することから、27Al−NMR測定においては、27Al−マジック角回転(Magic Angle Spinning、以下、MASと略称する)法に比べてより核四極子相互作用を平均化できる27Al−多量子マジック角回転(Multiple Quantum Magic Angle Spinning、以下、MQMASと略称する)法の方が、測定精度を向上させるために好ましい。
【0046】
MQMASスペクトルは、MASスペクトルの線形を示すF2軸と、核四極子相互作用が平均化された線形を示すF1軸の両軸から成る2次元スペクトルとして表され、F2軸上での見かけの化学シフト値(以後、MASシフト値と表記する)が同じ化合物でも、四極子結合定数(核四極子相互作用の大きさを表すパラメータ)が異なれば、F1軸上のシフト値(以後、Isotropicシフト値と表記する)が異なってくるので、2次元スペクトル上でこれらの化合物を区別することが可能となる。
【0047】
27Al−NMRスペクトルの他に、29Si−NMRスペクトルを用いて、石炭中の無機鉱物の化学形態を同定することも、原理的には可能である。
【0048】
しかし、29Si−NMRスペクトル測定では、一般的に化学シフトの異方性が強いため、線幅が広幅化しやすく、測定対象となる石炭中に化学構造が類似した複数種の無機鉱物が存在すると、それらの分離が困難となる場合がある。
【0049】
また、29Si−NMRスペクトル測定では、29Si核のスピン−格子緩和時間(以下、T1と略称する)が一般に長く、そのため長時間の測定時間を要する。
【0050】
これらの理由から、本発明では、測定精度および測定時間などの実用面から27Al−NMRスペクトル測定を用いることが好ましい。
【0051】
本発明では、予め各銘柄を代表する複数の石炭中に存在する各無機鉱物の化学形態を、上記27Al−NMRスペクトル測定法を用いて以下のように特定する。
【0052】
まず、測定対象となる石炭の27Al−NMRスペクトルを測定する前に、予め上記カオリン鉱物、スメクタイト、雲母粘土鉱物、アルミナ(Al2O3)などのAlとSiを主成分とする無機鉱物の標準試料を用いて、各無機鉱物の27Al−NMRスペクトルを測定し、各無機鉱物のピーク位置を特定しておく。
【0053】
図2は、27Al−多量子マジック角回転(MQMAS)法を用いて各無機鉱物(カオリン鉱物、スメクタイト、雲母粘土鉱物またはアルミナ)の標準試料の27Al−NMRスペクトルを測定した結果の一例を示す。
【0054】
なお、図2は、各無機鉱物の標準試料について、それぞれ、27Al−NMR2次元スペクトルを測定した結果を便宜上1つにまとめたものである。
【0055】
例えば、図2の2次元スペクトルから、スメクタイトの6配位型Alに相当するピークは、F2=3.4ppm,F1=7.6ppm、雲母粘土鉱物の6配位型Alに相当するピークは、F2=4.2ppm,F1=9.0ppm、カオリン鉱物の6配位型Alに相当するピークは、F2=5.7ppm,F1=9.3ppm、アルミナの6配位型Alに相当するピークは、F2=12.5ppm,F1=15.7ppm、とそれぞれ特定される。
【0056】
また、図2の2次元スペクトルには、各無機鉱物の6配位型Alに相当するピークの他に、スメクタイトおよび雲母粘土鉱物には4配位型Alに相当するピークも存在するが、これらのピークは重なって判別がし難いため、後述する石炭中の各無機鉱物の特定および定量には、標準無機鉱物のピークとして各無機鉱物のピークが判別しやすい6配位型Alに相当するピークを用いるのが好ましい。
【0057】
なお、ppmは“part per million”の略称であり、各ピークに対して、(ピークの観測周波数/共鳴周波数×106)×106で定義され、NMRスペクトル測定に用いる装置の静磁場強度の大きさに依存しない無次元の単位である。
【0058】
本発明では、上記のように予め測定した各無機鉱物の標準試料の27Al−NMRスペクトルにおける各無機鉱物のピークトップ位置と、測定対象である石炭の27Al−NMRスペクトルにおけるピーク位置とを照合することで、以下のように当該石炭中に存在する無機鉱物の化学形態を特定することができる。
【0059】
図3は、27Al−多量子マジック角回転(MQMAS)法を用いて表1に示す測定対象である石炭Hの石炭の27Al−NMRスペクトルを測定した結果(2次元スペクトル)の一例を示す。
【0060】
図3から、測定対象である石炭Hの27Al−NMR2次元スペクトルには、F1=15.7ppm,F2=12.1ppmの位置およびF1=8.5ppm,F2=3.9ppmの位置にピークトップを示すピークが存在している。
【0061】
これら2つのピークトップ位置は、上記図2に示される各無機鉱物の標準試料のピーク位置と照合すると、前者がアルミナに相当し、後者はスメクタイトと雲母粘土鉱物のピークの間にピークトップを示していることから、スメクタイトと雲母粘土鉱物の両方あるいは両者の混合層鉱物が存在していると特定できる。
【0062】
本発明では、予め各銘柄を代表する複数の石炭を選定し、これらについて、上記の要領でNMRスペクトル測定を行うことにより、当該石炭中に存在する各無機鉱物の化学形態を特定するともに、石炭の成分分析により、当該石炭中のAl量およびSi量を測定し、Al量およびSi量と無機鉱物の化学形態別グループの関係を示す無機鉱物推定マップを作成する。
【0063】
本発明において、石炭の成分分析法は特に制限する必要はないが、一般に、ICP法等を用いた化学分析および蛍光X線分析(XRF)法が用いられる。なお、化学分析法は、石炭中のAlおよびSiを精度良く定量することが可能であるが、石炭試料を溶解する等の煩雑な手順を要する。
【0064】
一方、XRF法は、各元素に由来する特性X線のピーク強度から定量する手法であり、特別の前処理を必要とせず、ペレット化した固体試料を直接測定に用いることができる。さらに、同時に多元素の自動分析が可能であることから、化学分析と比較して短時間で定量が可能である。
【0065】
これらの得失を考慮して、化学分析法またはXRF法のいずれかを選択し、石炭の成分分析法を行うことが好ましい。
【0066】
表1に、無機鉱物評価マップの作成のために用いた15種類の石炭(A〜O)について、蛍光X線分析(XRF)法によって測定したAlおよびSiの質量%を示す。
【0067】
【表1】
【0068】
本発明では、表1に示した15種類の石炭(A〜O)について、上記27Al−NMRスペクトル測定を行い、上述した要領で、当該石炭中に存在している無機鉱物の化学形態を特定し、15種類の石炭中のAl量およびSi量と、当該石炭中の無機鉱物の化学形態の関係から無機鉱物評価マップを作成する。
【0069】
図7は、表1に示した15種類の石炭(A〜O)について、上記27Al−NMRスペクトル測定および成分分析の測定結果を基に、石炭中のAl量およびSi量を両軸とした2次元グラフを作成し、それぞれのプロットに対応する石炭中に存在する無機鉱物の化学形態を分類し、グループ化することによって、石炭中のAl量およびSi量と当該石炭中の無機鉱物の化学形態別グループとの関係を示した無機鉱物推定マップの一例である。
【0070】
無機鉱物推定マップを作成するために用いられる石炭の個数および石炭銘柄の種類は、測定対象となる石炭銘柄を代表する石炭から適宜選定することができ、特に限定されるものではない。
【0071】
本発明者の検討によれば、石炭中に存在している無機成分の化学形態は、石炭中のAlおよびSiの存在量に応じて、大きく5つのグループに分類されることを確認しているため、少なくともこれらの各グループで1種類以上、合計5種類以上、さらに好ましくは、各グループ2種類以上、合計10種類以上を選定することが好ましい。
【0072】
これにより、無機鉱物推定マップを基に、成分分析により測定した石炭中のAlおよびSi量のみから石炭中の無機鉱物の化学形態を特定するための精度が向上する。
【0073】
本発明では、予め各銘柄を代表する複数の石炭を選定し、これらについて、上記の要領でNMRスペクトル測定を行うことにより、当該石炭中に存在する各無機鉱物の化学形態を特定するともに、石炭の成分分析により当該石炭中のAl量およびSi量を測定し、例えば、図7に示すような、Al量およびSi量と無機鉱物の化学形態別グループの関係を示す無機鉱物推定マップを作成する。
【0074】
そして、石炭中の無機物の化学形態が未知であるような測定・評価すべき石炭について、化学分析法または蛍光X線分析(XRF)法などを用いた成分分析により石炭中のAl量およびSi量を測定し、これらの測定値から、上記無機鉱物推定マップを基に当該石炭中に存在する無機鉱物の化学形態を迅速かつ確実に推定することが可能となる。
【0075】
本発明によれば、予め無機鉱物推定マップを作成し、該マップを基に、NMR法のような専門的技術を必要としない簡便な成分分析のみより測定された石炭中のAl量およびSi量のみから、測定対象とする石炭中の無機鉱物の化学形態を迅速かつ確実に推定することが可能となる。
【実施例】
【0076】
以下に本発明を実施例を用いて説明するが、本発明の目的および技術思想を逸脱しない限り、本発明の実施形態は以下の条件のみに限定されるものではない。
【0077】
(実施例1)
銘柄の異なる15種類(A〜O)の石炭を直径4mmのNMR固体用試料管に均一になるように各々充填した後、700MHz固体専用NMR装置(測定磁場強度16.4T)にセットし、外部磁場に対してマジック角(54.7°)で18kHzの高速で回転させた。
【0078】
このときの27Al共鳴周波数は182.4MHzであった。27Al−NMRの化学シフト基準として、1mol/l AlCl3水溶液を−0.1ppmとした。
【0079】
上記条件下で、石炭A〜Oについてそれぞれ27Al−MQMASスペクトル(27Al−多量子マジック角回転(MQMAS)法によるNMRスペクトル)を測定した。一例として、石炭A,H,J,Nの27Al−MQMASスペクトルを、それぞれ、図4、3、5、6に示す。
【0080】
本発明法を用いて測定した石炭A〜Oの27Al−MQMASスペクトルにおける各ピーク位置と、予め各無機鉱物の標準試料を用いて測定したカオリン鉱物、スメクタイト、雲母粘土鉱物またはアルミナ(Al2O3)の27Al−MQMASスペクトル(図2、参照)における各無機鉱物のピークトップ位置とを照合することにより、石炭A〜O中に存在する各無機鉱物の化学形態を特定した。
【0081】
次に、蛍光X線分析(XRF)法によって石炭A〜O中のAl量およびSi量(質量%)を測定した。その結果を表1に示す。
【0082】
石炭A〜Oの上記27Al−NMRスペクトル測定およびXRF法による成分分析の測定結果を基に、横軸に石炭中のAl量(質量%)、縦軸にSi量(質量%)をそれぞれとって、2次元グラフを作成し、それぞれのプロットに対応する石炭中に存在する無機鉱物の化学形態を分類し、グループ化することによって、石炭中のAl量およびSi量と当該石炭中の無機鉱物の化学形態別グループとの関係を示した図7に示すような無機鉱物推定マップを作成した。
【0083】
図7に示す無機鉱物推定マップから、石炭A〜O中のAl量およびSi量から、当該石炭中の無機鉱物の化学形態を大きく5種類にグループ分けできることが明らかとなった。
【0084】
なお、図7中に示された無機鉱物の化学形態の分類で、括弧内で示された無機鉱物種はその存在量比が少ないことを意味する。
【0085】
図7に示す石炭中の無機鉱物推定マップを用い、測定対象の新規石炭種のAl量およびSi量を成分分析により測定し、その測定値から無機鉱物推定マップを基に、当該石炭中に存在する無機鉱物の化学形態を簡便に、かつ精度良く推定することが可能となる。
【0086】
続いて、4種類の新規石炭(P,Q,R,S)について、XRF法の成分分析により、石炭中のAl量およびSi量(質量%)を測定し、図7に示す石炭中の無機鉱物推定マップを用いて、新規石炭(P,Q,R,S)中に存在する無機鉱物の化学形態の推定を行った。
【0087】
表2に、新規石炭(P,Q,R,S)の成分化学分析によって測定したAlおよびSiの質量%の値を示す。
【0088】
【表2】
【0089】
図7に示す石炭中の無機鉱物推定マップ中に示した石炭P,Q,R,SのAl量およびSi量の測定値から、石炭P,Q,R,Sの石炭中には、それぞれ、カオリン鉱物グループ、スメクタイト+雲母粘土鉱物+アルミナグループ、スメクタイト+(カオリン鉱物)グループ、カオリン鉱物+5配位Alグループの化学形態に属する無機鉱物が存在することがわかった。
【0090】
次に、石炭P,Q,R,Sについて、27Al−MQMASスペクトル測定を用いて各石炭中に存在する無機鉱物の化学形態を確認したところ、それぞれ、図8,9,10,11に示すように、これらのMQMASスペクトル測定による特定された各石炭中に含まれる無機鉱物の化学形態は、図7に示す石炭中の無機鉱物推定マップを基に、成分分析による石炭P,Q,R,SのAl量およびSi量の測定値から推定した無機鉱物の化学形態と一致し、本発明による推定評価の有効性が実証された。
【0091】
また、石炭P,Q,R,Sの27Al−MQMASスペクトル測定に要する時間は、石炭1種当たりの平均で約25時間であったが、XRF法の成分分析による石炭中のAlおよびSiの定量分析時間は、1時間程度しか必要としなかった。
【0092】
これらの測定時間の比較から、本発明は、従来のNMRによる石炭中の無機物化学形態の推定方法と比較して、飛躍的に短い時間で石炭中の無機鉱物の化学形態を確実に推定することができることが証明された。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】層状アルミノケイ酸塩の粘土鉱物の結晶構造を示す模式図である。
【図2】各無機鉱物標準試料の27Al−MQMASスペクトルのピーク位置の分類図である。
【図3】石炭Hの27Al−MQMASスペクトルを示す図である。
【図4】石炭Aの27Al−MQMASスペクトルを示す図である。
【図5】石炭Jの27Al−MQMASスペクトルを示す図である。
【図6】石炭Nの27Al−MQMASスペクトルを示す図である。
【図7】石炭中のAlおよびSiの存在量と石炭中の無機鉱物の化学形態との相関を示す図である。
【図8】石炭Pの27Al−MQMASスペクトルを示す図である。
【図9】石炭Qの27Al−MQMASスペクトルを示す図である。
【図10】石炭Rの27Al−MQMASスペクトルを示す図である。
【図11】石炭Sの27Al−MQMASスペクトルを示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭中の無機鉱物の化学形態の推定方法に関する。更に詳しくは、核磁気共鳴(以下、NMRと略称することもある)スペクトル測定法を利用して、高炉などの冶金炉やボイラーなどの燃焼炉で利用される石炭中の無機鉱物の化学形態を簡便に推定する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製鉄プロセスにおける冶金炉、例えば高炉の操業において、一般に鉄鉱石などの鉄含有原料と、石炭を乾留して得られるコークスなどの還元剤を炉頂から交互に装入することが行なわれる。また、近年、高炉炉頂から装入するコークスの一部をより安価な石炭に代替し、高炉の羽口から熱風とともに吹き込む方法が盛んに行われている。
【0003】
また、発電プロセスにおけるボイラー等の燃焼炉の運転においても、従来から使用されている重油の代替燃料として石炭が見直され、微粉炭吹込み法が特に注目されている。
【0004】
このように、鉄鋼業や発電事業等の幅広い分野において石炭が多量に用いられており、各設備の安定操業や稼働率向上などの観点から、使用する石炭の成分組成や特性などの品質を管理することが重要となってきている。
【0005】
従来、鉄鋼業や発電事業等の用途では、石炭中の炭素や水素などの有機成分の管理はされていたものの、石炭中の無機成分についてはほとんど注目されていなかった。
【0006】
しかし、近年、例えば、コークス化における石炭中の無機成分の粘結性および膨張性発現への関与、さらには、高炉で使用する際のコークス反応粉化への関与、無機成分の除去による石炭の有機成分の有効利用促進などの点から、石炭中の無機鉱物の含有量のみならず、その化学形態を評価することの重要性が高まりつつある。
【0007】
また、高炉の微粉炭吹き込み操業や自家発電やIPP等の発電事業での微粉炭利用技術において、微粉炭を吹き込み口まで気体搬送する過程で石炭中の無機成分が配管内に固着し、吹き込み量が低下するという問題も出てきている。
【0008】
この原因は、微粉炭の石炭銘柄、粒度、水分などの他に、石炭中の無機鉱物種も原因となっていることを本発明者は確認しており、微粉炭利用技術において、設備の安定操業と稼働率向上のために、石炭中の無機成分の正確な評価が求められる。
【0009】
従来の石炭中の無機成分の化学形態を評価する手法として、石炭中のAl量やSi量を化学分析法や蛍光X線分析(以下、XRFと略称する)法を用いて測定し、Al量が全てカオリン鉱物に由来するものと見なし、Si量からカオリン鉱物の理想化学組成から算出したSi量を差し引いた残りを、石炭中に含有するカオリン鉱物以外のSi化合物(SiO2等)とする石炭中の無機物の化学形態推定方法が知られている。
【0010】
しかしながら、実際の石炭中のAl量は全てカオリン鉱物として存在しているのではなく、カオリン鉱物以外に、アルミノケイ酸塩(粘土鉱物)や、Al2O3等の化合物として存在しており、石炭によってカオリン鉱物の定量結果に大きな誤差が生じる可能性がある。
【0011】
また、X線回折(以下、XRDと略称する)法を用いて、回折線の位置および強度から、石炭中の無機化合物の同定および定量を行う方法も知られている。
【0012】
しかし、このXRD法では、無機化合物の結晶格子からの回折像を測定するという性質上、粘土鉱物などの結晶性の低い無機化合物に対しては回折線が極端に広幅化し、高い精度の形態評価は困難である。また、XRD法では特定元素のみの情報を抽出することができないため、カオリン鉱物の回折線が他の無機鉱物に由来する回折線と重なり合い、同定が困難になる場合も多い。
【0013】
一方、近年、核磁気共鳴(NMR)法を用いて石炭中の無機化合物を推定する方法が提案されている。
【0014】
Thompsonらは、27Al−MAS NMRスペクトルから得られる全アルミニウム量に対する4配位型アルミニウムの比率から、石炭中の無機鉱物の種類を推定している(例えば、非特許文献1、参照)。
【0015】
この方法によれば、各産地から産出された数種の無機鉱物について、27Al−MAS NMRスペクトルを測定し、4配位型アルミニウムが存在しないものをカオリン鉱物、4配位型アルミニウムが0〜10%含有するものをモンモリロナイト、配位型アルミニウムが24〜29%含有するものをイライトあるいは雲母−モンモリロナイト混合層鉱物と特定する。
【0016】
この27Al−MAS NMRスペクトルから同定した4配位型アルミニウムの割合から無機鉱物種を推定する方法は、単独で存在する無機鉱物の種類を特定することはできるが、石炭中には複数の種類の無機鉱物が存在することが多いため、この方法により石炭中の各無機鉱物の種類を推定することは不可能である。
【0017】
しかしながら、複数の種類の無機鉱物が存在している場合は、4配位型アルミニウムの比率だけから推定した無機鉱物の種類の精度はかなり低くなってしまうという問題がある。
【0018】
実際、長年に渡る複雑な続成作用や風化作用、熱水変質により石炭が形成されていることを鑑みると、石炭中の無機鉱物は様々な変質を受けており、単一の無機鉱物しか存在しないということは非常に考えにくく、この方法で石炭中の無機成分の正確な化学構造を捉えることは困難である。
【0019】
石炭の27Al−NMRスペクトルを測定し、4配位Alではなく、6配位Alピークの全Alピークの積算値に対する比率から、石炭中のカオリン類を定量する方法が提案されている(例えば、特許文献1、参照)。しかし、この方法は、石炭中に存在するカオリン類以外の複数種類の無機鉱物を無機鉱物の化学形態を特定することはできない。
【0020】
この方法によれば、予め各無機鉱物試料から特定したの石炭の27Al−NMRスペクトルにおけるピークの位置(化学シフト値)から石炭中の複数の無機鉱物の化学形態を特定することができ、上記方法と異なり、無機鉱物の種類やその数を問わずに適用できる。
【0021】
しかしながら、これらのNMRスペクトルの測定には、一般的に長時間が必要であり、測定すべき炭種が今後増加した場合、その化学形態の評価を行うのに長期の期間を必要とすることが予想される。
【0022】
さらに、固体NMRスペクトルの測定条件の設定は一般に煩雑であり、専門の測定および解析担当者を必要とすることから、各製鉄所等の現場において、NMR法による無機鉱物の化学形態の評価を積極的に行うことは容易ではないのが現実である。
【0023】
【非特許文献1】Energy & Fuels,15(2001)176
【特許文献1】特開2004−317423号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
しかしながら、上記評価方法はいくつかの問題点を有している。まず、AlおよびSiを化学分析法やXRF法で定量して評価する方法であるが、実際の製鉄現場においては、各無機成分の存在量がほとんど同じ炭種でも、石炭加熱過程の無機化合物からの脱水挙動や、微粉炭吹き込み時の高炉内での無機成分の挙動に違いが見られており、成分分析だけでは石炭中の無機成分の実体管理ができないという問題がある。
【0025】
このような従来技術の現状に鑑み、本発明は、数種類の石炭に対して、AlおよびSiの存在量を測定し、NMR法による特定した石炭中の無機鉱物の化学形態との相関を示すマップを用いることによって、無機鉱物の化学形態が未知である石炭中のAlおよびSiの存在量のみから、前記石炭中の無機鉱物の化学形態を簡便に推定する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
即ち、本発明の要旨とするところは以下の通りである。
【0027】
(1)予め各銘柄を代表する複数種の石炭について、該石炭中に存在する各無機鉱物の化学形態を27Al−NMRスペクトル測定法により特定するともに、該石炭中のAl量およびSi量を成分分析法により測定し、該石炭中のAl量およびSi量と無機鉱物の化学形態との関係を示す無機鉱物推定マップを作成した後、評価対象である石炭について、該石炭中のAl量およびSi量を成分分析法により測定し、該石炭中のAl量およびSi量から前記無機鉱物推定マップに基づいて、該石炭中に存在する無機鉱物の化学形態を推定することを特徴とする石炭中の無機鉱物の化学形態の推定方法。
【0028】
(2)前記無機鉱物がAl主成分とする粘土鉱物および酸化物であることを特徴とする上記(1)に記載の石炭中の無機鉱物の化学形態の推定方法。
【0029】
(3)石炭の27Al−NMRスペクトルを測定し、該測定スペクトルのピーク位置と、予め測定したカオリン鉱物、スメクタイト、雲母粘土鉱物またはAl2O3の27Al−NMRスペクトルにおけるピーク位置との関係に基づいて、前記石炭中に存在する各無機鉱物の化学形態を特定することを特徴とする上記(1)または(2)に記載の石炭中の無機鉱物の化学形態の推定方法。
【0030】
(4)石炭中のAl量およびSi量を2次元グラフにプロットし、該グラフ上の各プロットに対応する石炭中に存在する無機鉱物の化学形態を分類し、該化学形態別にグループ化することによって、前記無機鉱物推定マップを作成することを特徴とする上記(1)〜(3)の何れかに記載の石炭中の無機鉱物の化学形態の推定方法。
【0031】
(5)前記27Al−NMRスペクトル測定法として、27Al−マジック角回転(MAS)法、または、27Al−多量子マジック角回転(MQMAS)法を用いることを特徴とする上記(1)〜(4)の何れかに記載の石炭中の無機鉱物の化学形態の推定方法。
【0032】
(6)前記成分分析法として、化学分析法、または、蛍光X線分析法を用いることを特徴とする上記(1)〜(5)の何れかに記載の石炭中の無機鉱物の化学形態の推定方法。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、石炭中の無機鉱物の化学形態を迅速かつ簡便に推定することが可能となり、電力業および製鉄業等、石炭を使用する産業における利用価値は極めて高いものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明の実施形態について以下に説明する。
【0035】
本発明は、従来の成分化学分析法、蛍光X線分析法、X線回折法などでは不可能であった石炭中の無機鉱物の化学形態を27Al−NMRスペクトル測定法により予め特定しておき、実際の評価対象である石炭中の無機鉱物の化学形態の推定は、簡便な測定方法でありかつ測定時間が短い成分分析法を用いて、石炭中のAl量およびSi量の測定結果を基に迅速かつ確実に行うことを技術思想とする。
【0036】
つまり、本発明は、予め各銘柄を代表する複数の石炭について、これらの石炭中に存在する各無機鉱物の化学形態を27Al−NMRスペクトル測定法により特定するともに、これらの石炭中のAl量およびSi量を成分分析法により測定し、石炭中のAl量およびSi量と無機鉱物の化学形態との関係を示す無機鉱物推定マップを作成した後、評価対象である石炭について、該石炭中のAl量およびSi量を成分分析法により測定し、該石炭中のAl量およびSi量から前記無機鉱物推定マップに基づいて、該石炭中に存在する無機鉱物の化学形態を推定するものである。
【0037】
図1に、石炭中のAlとSiを主成分とする無機鉱物の代表例としてカオリン鉱物、スメクタイト、雲母粘土鉱物の化学形態を示す。
【0038】
一般に、石炭中には、それぞれ化学構造の異なるAlとSiを主成分とする無機鉱物として、図1に示すようなカオリン鉱物(Al2Si2O5(OH)4)、スメクタイト(X(=Na,1/2Ca)0.33(Al1.67Mg0.33)Si4O10(OH)2・nH2O)、雲母粘土鉱物(K0.75(Al1.75R(=2価金属)0.25.)(Si3.50Al0.50)O10(OH)2・nH2O)等のアルミノケイ酸塩の粘土鉱物、さらに、アルミナ(Al2O3)、シリカ(SiO2)等が含有される。
【0039】
カオリン鉱物は、Al3+イオンを中心とした8面体(6配位型Al)構造およびSi4+イオンを中心とした4面体(6配位型Si)構造が1:1で層を形成した構造をとっている。
【0040】
スメクタイトは、Si4+イオンを中心とした4面体(4配位型Si)構造がAl3+イオンを中心とした8面体(6配位型Al)構造を上下から挟み込んだような、2:1の層構造を形成しており、4配位型Si4+イオンの一部をAl3+イオンが置換した構造をとっていることから、4配位型Alも存在している。
【0041】
雲母粘土鉱物も、スメクタイトと同様に、SiO4の4面体構造とAlO6の8面体構造構造が2:1で層を形成した構造をとっており、SiO4のSi4+イオンの一部がAl3+イオンで置き換わっている。4配位型Alの量はスメクタイトよりも多いのが特徴である。
【0042】
アルミナ中のAlは6配位型構造をとっており、シリカは4配位型Siで、Q4(SiO4ユニット中の酸素が全て隣接するSiO4ユニットと共有されている)の構造をとっている。
【0043】
本発明では、石炭中に存在する各無機鉱物の化学形態を特定するための方法として、27Al−NMRスペクトル測定法を用いる。
【0044】
27Al−NMRスペクトル測定法によりアルミノケイ酸塩やアルミナ等、アルミニウムを含む化合物の化学形態を特定することができる。
【0045】
27Al核は核スピンが2/5であり、核四極子相互作用を有することから、27Al−NMR測定においては、27Al−マジック角回転(Magic Angle Spinning、以下、MASと略称する)法に比べてより核四極子相互作用を平均化できる27Al−多量子マジック角回転(Multiple Quantum Magic Angle Spinning、以下、MQMASと略称する)法の方が、測定精度を向上させるために好ましい。
【0046】
MQMASスペクトルは、MASスペクトルの線形を示すF2軸と、核四極子相互作用が平均化された線形を示すF1軸の両軸から成る2次元スペクトルとして表され、F2軸上での見かけの化学シフト値(以後、MASシフト値と表記する)が同じ化合物でも、四極子結合定数(核四極子相互作用の大きさを表すパラメータ)が異なれば、F1軸上のシフト値(以後、Isotropicシフト値と表記する)が異なってくるので、2次元スペクトル上でこれらの化合物を区別することが可能となる。
【0047】
27Al−NMRスペクトルの他に、29Si−NMRスペクトルを用いて、石炭中の無機鉱物の化学形態を同定することも、原理的には可能である。
【0048】
しかし、29Si−NMRスペクトル測定では、一般的に化学シフトの異方性が強いため、線幅が広幅化しやすく、測定対象となる石炭中に化学構造が類似した複数種の無機鉱物が存在すると、それらの分離が困難となる場合がある。
【0049】
また、29Si−NMRスペクトル測定では、29Si核のスピン−格子緩和時間(以下、T1と略称する)が一般に長く、そのため長時間の測定時間を要する。
【0050】
これらの理由から、本発明では、測定精度および測定時間などの実用面から27Al−NMRスペクトル測定を用いることが好ましい。
【0051】
本発明では、予め各銘柄を代表する複数の石炭中に存在する各無機鉱物の化学形態を、上記27Al−NMRスペクトル測定法を用いて以下のように特定する。
【0052】
まず、測定対象となる石炭の27Al−NMRスペクトルを測定する前に、予め上記カオリン鉱物、スメクタイト、雲母粘土鉱物、アルミナ(Al2O3)などのAlとSiを主成分とする無機鉱物の標準試料を用いて、各無機鉱物の27Al−NMRスペクトルを測定し、各無機鉱物のピーク位置を特定しておく。
【0053】
図2は、27Al−多量子マジック角回転(MQMAS)法を用いて各無機鉱物(カオリン鉱物、スメクタイト、雲母粘土鉱物またはアルミナ)の標準試料の27Al−NMRスペクトルを測定した結果の一例を示す。
【0054】
なお、図2は、各無機鉱物の標準試料について、それぞれ、27Al−NMR2次元スペクトルを測定した結果を便宜上1つにまとめたものである。
【0055】
例えば、図2の2次元スペクトルから、スメクタイトの6配位型Alに相当するピークは、F2=3.4ppm,F1=7.6ppm、雲母粘土鉱物の6配位型Alに相当するピークは、F2=4.2ppm,F1=9.0ppm、カオリン鉱物の6配位型Alに相当するピークは、F2=5.7ppm,F1=9.3ppm、アルミナの6配位型Alに相当するピークは、F2=12.5ppm,F1=15.7ppm、とそれぞれ特定される。
【0056】
また、図2の2次元スペクトルには、各無機鉱物の6配位型Alに相当するピークの他に、スメクタイトおよび雲母粘土鉱物には4配位型Alに相当するピークも存在するが、これらのピークは重なって判別がし難いため、後述する石炭中の各無機鉱物の特定および定量には、標準無機鉱物のピークとして各無機鉱物のピークが判別しやすい6配位型Alに相当するピークを用いるのが好ましい。
【0057】
なお、ppmは“part per million”の略称であり、各ピークに対して、(ピークの観測周波数/共鳴周波数×106)×106で定義され、NMRスペクトル測定に用いる装置の静磁場強度の大きさに依存しない無次元の単位である。
【0058】
本発明では、上記のように予め測定した各無機鉱物の標準試料の27Al−NMRスペクトルにおける各無機鉱物のピークトップ位置と、測定対象である石炭の27Al−NMRスペクトルにおけるピーク位置とを照合することで、以下のように当該石炭中に存在する無機鉱物の化学形態を特定することができる。
【0059】
図3は、27Al−多量子マジック角回転(MQMAS)法を用いて表1に示す測定対象である石炭Hの石炭の27Al−NMRスペクトルを測定した結果(2次元スペクトル)の一例を示す。
【0060】
図3から、測定対象である石炭Hの27Al−NMR2次元スペクトルには、F1=15.7ppm,F2=12.1ppmの位置およびF1=8.5ppm,F2=3.9ppmの位置にピークトップを示すピークが存在している。
【0061】
これら2つのピークトップ位置は、上記図2に示される各無機鉱物の標準試料のピーク位置と照合すると、前者がアルミナに相当し、後者はスメクタイトと雲母粘土鉱物のピークの間にピークトップを示していることから、スメクタイトと雲母粘土鉱物の両方あるいは両者の混合層鉱物が存在していると特定できる。
【0062】
本発明では、予め各銘柄を代表する複数の石炭を選定し、これらについて、上記の要領でNMRスペクトル測定を行うことにより、当該石炭中に存在する各無機鉱物の化学形態を特定するともに、石炭の成分分析により、当該石炭中のAl量およびSi量を測定し、Al量およびSi量と無機鉱物の化学形態別グループの関係を示す無機鉱物推定マップを作成する。
【0063】
本発明において、石炭の成分分析法は特に制限する必要はないが、一般に、ICP法等を用いた化学分析および蛍光X線分析(XRF)法が用いられる。なお、化学分析法は、石炭中のAlおよびSiを精度良く定量することが可能であるが、石炭試料を溶解する等の煩雑な手順を要する。
【0064】
一方、XRF法は、各元素に由来する特性X線のピーク強度から定量する手法であり、特別の前処理を必要とせず、ペレット化した固体試料を直接測定に用いることができる。さらに、同時に多元素の自動分析が可能であることから、化学分析と比較して短時間で定量が可能である。
【0065】
これらの得失を考慮して、化学分析法またはXRF法のいずれかを選択し、石炭の成分分析法を行うことが好ましい。
【0066】
表1に、無機鉱物評価マップの作成のために用いた15種類の石炭(A〜O)について、蛍光X線分析(XRF)法によって測定したAlおよびSiの質量%を示す。
【0067】
【表1】
【0068】
本発明では、表1に示した15種類の石炭(A〜O)について、上記27Al−NMRスペクトル測定を行い、上述した要領で、当該石炭中に存在している無機鉱物の化学形態を特定し、15種類の石炭中のAl量およびSi量と、当該石炭中の無機鉱物の化学形態の関係から無機鉱物評価マップを作成する。
【0069】
図7は、表1に示した15種類の石炭(A〜O)について、上記27Al−NMRスペクトル測定および成分分析の測定結果を基に、石炭中のAl量およびSi量を両軸とした2次元グラフを作成し、それぞれのプロットに対応する石炭中に存在する無機鉱物の化学形態を分類し、グループ化することによって、石炭中のAl量およびSi量と当該石炭中の無機鉱物の化学形態別グループとの関係を示した無機鉱物推定マップの一例である。
【0070】
無機鉱物推定マップを作成するために用いられる石炭の個数および石炭銘柄の種類は、測定対象となる石炭銘柄を代表する石炭から適宜選定することができ、特に限定されるものではない。
【0071】
本発明者の検討によれば、石炭中に存在している無機成分の化学形態は、石炭中のAlおよびSiの存在量に応じて、大きく5つのグループに分類されることを確認しているため、少なくともこれらの各グループで1種類以上、合計5種類以上、さらに好ましくは、各グループ2種類以上、合計10種類以上を選定することが好ましい。
【0072】
これにより、無機鉱物推定マップを基に、成分分析により測定した石炭中のAlおよびSi量のみから石炭中の無機鉱物の化学形態を特定するための精度が向上する。
【0073】
本発明では、予め各銘柄を代表する複数の石炭を選定し、これらについて、上記の要領でNMRスペクトル測定を行うことにより、当該石炭中に存在する各無機鉱物の化学形態を特定するともに、石炭の成分分析により当該石炭中のAl量およびSi量を測定し、例えば、図7に示すような、Al量およびSi量と無機鉱物の化学形態別グループの関係を示す無機鉱物推定マップを作成する。
【0074】
そして、石炭中の無機物の化学形態が未知であるような測定・評価すべき石炭について、化学分析法または蛍光X線分析(XRF)法などを用いた成分分析により石炭中のAl量およびSi量を測定し、これらの測定値から、上記無機鉱物推定マップを基に当該石炭中に存在する無機鉱物の化学形態を迅速かつ確実に推定することが可能となる。
【0075】
本発明によれば、予め無機鉱物推定マップを作成し、該マップを基に、NMR法のような専門的技術を必要としない簡便な成分分析のみより測定された石炭中のAl量およびSi量のみから、測定対象とする石炭中の無機鉱物の化学形態を迅速かつ確実に推定することが可能となる。
【実施例】
【0076】
以下に本発明を実施例を用いて説明するが、本発明の目的および技術思想を逸脱しない限り、本発明の実施形態は以下の条件のみに限定されるものではない。
【0077】
(実施例1)
銘柄の異なる15種類(A〜O)の石炭を直径4mmのNMR固体用試料管に均一になるように各々充填した後、700MHz固体専用NMR装置(測定磁場強度16.4T)にセットし、外部磁場に対してマジック角(54.7°)で18kHzの高速で回転させた。
【0078】
このときの27Al共鳴周波数は182.4MHzであった。27Al−NMRの化学シフト基準として、1mol/l AlCl3水溶液を−0.1ppmとした。
【0079】
上記条件下で、石炭A〜Oについてそれぞれ27Al−MQMASスペクトル(27Al−多量子マジック角回転(MQMAS)法によるNMRスペクトル)を測定した。一例として、石炭A,H,J,Nの27Al−MQMASスペクトルを、それぞれ、図4、3、5、6に示す。
【0080】
本発明法を用いて測定した石炭A〜Oの27Al−MQMASスペクトルにおける各ピーク位置と、予め各無機鉱物の標準試料を用いて測定したカオリン鉱物、スメクタイト、雲母粘土鉱物またはアルミナ(Al2O3)の27Al−MQMASスペクトル(図2、参照)における各無機鉱物のピークトップ位置とを照合することにより、石炭A〜O中に存在する各無機鉱物の化学形態を特定した。
【0081】
次に、蛍光X線分析(XRF)法によって石炭A〜O中のAl量およびSi量(質量%)を測定した。その結果を表1に示す。
【0082】
石炭A〜Oの上記27Al−NMRスペクトル測定およびXRF法による成分分析の測定結果を基に、横軸に石炭中のAl量(質量%)、縦軸にSi量(質量%)をそれぞれとって、2次元グラフを作成し、それぞれのプロットに対応する石炭中に存在する無機鉱物の化学形態を分類し、グループ化することによって、石炭中のAl量およびSi量と当該石炭中の無機鉱物の化学形態別グループとの関係を示した図7に示すような無機鉱物推定マップを作成した。
【0083】
図7に示す無機鉱物推定マップから、石炭A〜O中のAl量およびSi量から、当該石炭中の無機鉱物の化学形態を大きく5種類にグループ分けできることが明らかとなった。
【0084】
なお、図7中に示された無機鉱物の化学形態の分類で、括弧内で示された無機鉱物種はその存在量比が少ないことを意味する。
【0085】
図7に示す石炭中の無機鉱物推定マップを用い、測定対象の新規石炭種のAl量およびSi量を成分分析により測定し、その測定値から無機鉱物推定マップを基に、当該石炭中に存在する無機鉱物の化学形態を簡便に、かつ精度良く推定することが可能となる。
【0086】
続いて、4種類の新規石炭(P,Q,R,S)について、XRF法の成分分析により、石炭中のAl量およびSi量(質量%)を測定し、図7に示す石炭中の無機鉱物推定マップを用いて、新規石炭(P,Q,R,S)中に存在する無機鉱物の化学形態の推定を行った。
【0087】
表2に、新規石炭(P,Q,R,S)の成分化学分析によって測定したAlおよびSiの質量%の値を示す。
【0088】
【表2】
【0089】
図7に示す石炭中の無機鉱物推定マップ中に示した石炭P,Q,R,SのAl量およびSi量の測定値から、石炭P,Q,R,Sの石炭中には、それぞれ、カオリン鉱物グループ、スメクタイト+雲母粘土鉱物+アルミナグループ、スメクタイト+(カオリン鉱物)グループ、カオリン鉱物+5配位Alグループの化学形態に属する無機鉱物が存在することがわかった。
【0090】
次に、石炭P,Q,R,Sについて、27Al−MQMASスペクトル測定を用いて各石炭中に存在する無機鉱物の化学形態を確認したところ、それぞれ、図8,9,10,11に示すように、これらのMQMASスペクトル測定による特定された各石炭中に含まれる無機鉱物の化学形態は、図7に示す石炭中の無機鉱物推定マップを基に、成分分析による石炭P,Q,R,SのAl量およびSi量の測定値から推定した無機鉱物の化学形態と一致し、本発明による推定評価の有効性が実証された。
【0091】
また、石炭P,Q,R,Sの27Al−MQMASスペクトル測定に要する時間は、石炭1種当たりの平均で約25時間であったが、XRF法の成分分析による石炭中のAlおよびSiの定量分析時間は、1時間程度しか必要としなかった。
【0092】
これらの測定時間の比較から、本発明は、従来のNMRによる石炭中の無機物化学形態の推定方法と比較して、飛躍的に短い時間で石炭中の無機鉱物の化学形態を確実に推定することができることが証明された。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】層状アルミノケイ酸塩の粘土鉱物の結晶構造を示す模式図である。
【図2】各無機鉱物標準試料の27Al−MQMASスペクトルのピーク位置の分類図である。
【図3】石炭Hの27Al−MQMASスペクトルを示す図である。
【図4】石炭Aの27Al−MQMASスペクトルを示す図である。
【図5】石炭Jの27Al−MQMASスペクトルを示す図である。
【図6】石炭Nの27Al−MQMASスペクトルを示す図である。
【図7】石炭中のAlおよびSiの存在量と石炭中の無機鉱物の化学形態との相関を示す図である。
【図8】石炭Pの27Al−MQMASスペクトルを示す図である。
【図9】石炭Qの27Al−MQMASスペクトルを示す図である。
【図10】石炭Rの27Al−MQMASスペクトルを示す図である。
【図11】石炭Sの27Al−MQMASスペクトルを示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め各銘柄を代表する複数種の石炭について、該石炭中に存在する各無機鉱物の化学形態を27Al−NMRスペクトル測定法により特定するともに、該石炭中のAl量およびSi量を成分分析法により測定し、該石炭中のAl量およびSi量と無機鉱物の化学形態との関係を示す無機鉱物推定マップを作成した後、評価対象である石炭について、該石炭中のAl量およびSi量を成分分析法により測定し、該石炭中のAl量およびSi量から前記無機鉱物推定マップに基づいて、該石炭中に存在する無機鉱物の化学形態を推定することを特徴とする石炭中の無機鉱物の化学形態の推定方法。
【請求項2】
前記無機鉱物がAl主成分とする粘土鉱物および酸化物であることを特徴とする請求項1に記載の石炭中の無機鉱物の化学形態の推定方法。
【請求項3】
石炭の27Al−NMRスペクトルを測定し、該測定スペクトルのピーク位置と、予め測定したカオリン鉱物、スメクタイト、雲母粘土鉱物またはAl2O3の27Al−NMRスペクトルにおけるピーク位置との関係に基づいて、前記石炭中に存在する各無機鉱物の化学形態を特定することを特徴とする請求項1または2に記載の石炭中の無機鉱物の化学形態の推定方法。
【請求項4】
石炭中のAl量およびSi量を2次元グラフにプロットし、該グラフ上の各プロットに対応する石炭中に存在する無機鉱物の化学形態を分類し、該化学形態別にグループ化することによって、前記無機鉱物推定マップを作成することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の石炭中の無機鉱物の化学形態の推定方法。
【請求項5】
前記27Al−NMRスペクトル測定法として、27Al−マジック角回転(MAS)法、または、27Al−多量子マジック角回転(MQMAS)法を用いることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の石炭中の無機鉱物の化学形態の推定方法。
【請求項6】
前記成分分析法として、化学分析法、または、蛍光X線分析法を用いることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の石炭中の無機鉱物の化学形態の推定方法。
【請求項1】
予め各銘柄を代表する複数種の石炭について、該石炭中に存在する各無機鉱物の化学形態を27Al−NMRスペクトル測定法により特定するともに、該石炭中のAl量およびSi量を成分分析法により測定し、該石炭中のAl量およびSi量と無機鉱物の化学形態との関係を示す無機鉱物推定マップを作成した後、評価対象である石炭について、該石炭中のAl量およびSi量を成分分析法により測定し、該石炭中のAl量およびSi量から前記無機鉱物推定マップに基づいて、該石炭中に存在する無機鉱物の化学形態を推定することを特徴とする石炭中の無機鉱物の化学形態の推定方法。
【請求項2】
前記無機鉱物がAl主成分とする粘土鉱物および酸化物であることを特徴とする請求項1に記載の石炭中の無機鉱物の化学形態の推定方法。
【請求項3】
石炭の27Al−NMRスペクトルを測定し、該測定スペクトルのピーク位置と、予め測定したカオリン鉱物、スメクタイト、雲母粘土鉱物またはAl2O3の27Al−NMRスペクトルにおけるピーク位置との関係に基づいて、前記石炭中に存在する各無機鉱物の化学形態を特定することを特徴とする請求項1または2に記載の石炭中の無機鉱物の化学形態の推定方法。
【請求項4】
石炭中のAl量およびSi量を2次元グラフにプロットし、該グラフ上の各プロットに対応する石炭中に存在する無機鉱物の化学形態を分類し、該化学形態別にグループ化することによって、前記無機鉱物推定マップを作成することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の石炭中の無機鉱物の化学形態の推定方法。
【請求項5】
前記27Al−NMRスペクトル測定法として、27Al−マジック角回転(MAS)法、または、27Al−多量子マジック角回転(MQMAS)法を用いることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の石炭中の無機鉱物の化学形態の推定方法。
【請求項6】
前記成分分析法として、化学分析法、または、蛍光X線分析法を用いることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の石炭中の無機鉱物の化学形態の推定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−337186(P2006−337186A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−162589(P2005−162589)
【出願日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]