説明

石炭火力発電システム及びフライアッシュの平均粒径を拡大させる方法

【課題】多額の初期投資が不要で、大規模な追加設備を必要とせずに、フライアッシュの平均粒径を拡大させることが可能な石炭火力発電システム、又は、フライアッシュの平均粒径を拡大させる方法を提供すること。
【解決手段】石炭火力発電システムにおける石炭燃焼プラント10は、フライアッシュのうち平均粒径が大きいフライアッシュが取り除かれる部分の近傍に開口部114bを有する電気集塵装置90と、燃焼ボイラ40の下流かつ電気集塵装置90の上流に配置され、開口を形成する開口部42を有する燃焼ボイラ40と、開口部114bから開口部42までを連通するフライアッシュ移送管170と、フライアッシュ移送管170内を開口部114bから開口部42に向けて吸引する吸引装置180と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭火力発電システム及びフライアッシュの平均粒径を拡大させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭火力発電システムでは、原料として使用される石炭の燃焼によって、クリンカアッシュ、フライアッシュなどの石炭灰が副生物として生成される。クリンカアッシュは火炉から落下するもので、ボトムアッシュとも称される。また、フライアッシュは残りの煤塵である。
【0003】
フライアッシュ(煤塵)は、主に集塵装置、例えば、電気集塵装置などによって高い効率(例えば、95%以上)で補集される。このフライアッシュは、従来埋め立て処分がなされていたが、近年、環境保全の観点から、コンクリート混和剤やセメント原料、更には、地盤改良剤などに有効利用されている。
【0004】
しかし、石炭には、炭素以外にも、ホウ素、フッ素、セレン、ヒ素、六価クロムなどの有害な元素を微量ながら含んでいる(以下、ホウ素、フッ素、セレン、ヒ素、六価クロムなどを有害微量元素という)ため、フライアッシュにも有害微量元素が含まれる。したがって、フライアッシュの有効利用を図るために、有害微量元素の溶出を抑制する技術の検討が行われている。
【0005】
例えば、特許文献1には、電気集塵装置内に配置された複数の集塵段のうち、特定の集塵段からフライアッシュを捕集し、かつ、排ガスの鉛直方向に設置された複数の集塵段のうち、最も排ガス上流側に位置する集塵段からフライアッシュを捕集することにより、フライアッシュの中の有害微量元素の溶出を防止する方法が開示されている。
【特許文献1】特開2006−35123号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、捕集されたフライアッシュの有害微量元素の溶出防止を図れたとしても、集塵装置の性能によっては、平均粒径が微小なフライアッシュを集塵装置が捕集できずに、有害微量元素を含むフライアッシュが煙突より大気中に放出されてしまう可能性がある。すなわち、集塵装置の分離限界粒子径よりも平均粒径が小さいフライアッシュが存在する場合、有害微量元素を含むフライアッシュが集塵装置をすり抜けて煙突より大気中に放出されてしまう。このため、フライアッシュの平均粒径が小さいために既設の集塵装置ではフライアッシュが取り除けない場合、新たな設備を増強する必要がある。しかし、新たな設備を設ける場合には、コストの増大といった問題や設置スペースが不足するといった問題が発生する。
【0007】
したがって、多額の初期投資が不要で、大規模な追加設備を必要とせずに、分離限界粒子径よりもフライアッシュの平均粒径を大きくさせる石炭火力発電システム、又は、フライアッシュの平均粒径を大きくさせる方法が求められている。
【0008】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、多額の初期投資が不要で、大規模な追加設備を必要とせずに、フライアッシュの平均粒径を拡大させることが可能な石炭火力発電システム、又は、フライアッシュの平均粒径を拡大させる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1) 石炭を燃焼させる燃焼ボイラと、前記燃焼ボイラの下流に配置され前記石炭の燃焼により発生した排ガス中に含まれるフライアッシュを取り除く集塵装置と、を備えた石炭火力発電システムにおいて、前記集塵装置は、前記フライアッシュが取り除かれる部分の近傍に第一開口部を有しており、前記燃焼ボイラの下流かつ前記集塵装置の上流に配置され、開口を形成する第二開口部を有する下流部と、前記第一開口部から前記第二開口部までを連通するフライアッシュ移送管と、前記フライアッシュ移送管内を第一開口部から前記第二開口部に向けて吸引する吸引手段と、を備える石炭火力発電システム。
【0010】
(2) 前記集塵装置は、前記フライアッシュのうち平均粒径が大きいフライアッシュが取り除かれる部分の近傍に第一開口部を有している、(1)に記載の石炭火力発電システム。
【0011】
燃焼ボイラの下流かつ集塵装置の上流に配置される下流部には石炭の燃焼によって生成されるフライアッシュが排出されるが、そのなかには集塵装置の分離限界粒子径よりも平均粒径が小さいフライアッシュが含まれる場合がある。
【0012】
(1)の発明によれば、集塵装置はフライアッシュが取り除かれる部分の近傍に第一開口部を有し、下流部は燃焼ボイラの下流かつ集塵装置の上流に配置され、開口を形成する第二開口部を有し、フライアッシュ移送管は第一開口部から第二開口部までを連通し、吸引手段は第一開口部から第二開口部に向けてフライアッシュ移送管内を吸引する。したがって、第二開口部には第一開口部からフライアッシュが移送される。ここで、下流部に存在する平均粒径の小さいフライアッシュは、ボイラ内の燃焼部から移行してきた直後であって完全に冷却固化されておらず、少なくとも表面が溶融した状態となっている。このため、平均粒径の小さいフライアッシュが比較的平均粒径の大きいフライアッシュの表面に合体することにより、多額の初期投資をせずに、かつ、大規模な追加設備を必要とせずに平均粒径が大きいフライアッシュを生成させることができる。すなわち、フライアッシュの平均粒径を大きくさせることができる。
【0013】
また、(2)の発明によれば、下流部に移送されるフライアッシュが、平均粒径の大きなものであるので、平均粒径の小さなフライアッシュの捕捉を、効率よく行うことができる。
【0014】
ここで、「燃焼ボイラの下流かつ集塵装置の上流に配置される下流部」とは、後述する、熱交換ユニットに相当する火炉上部分割壁、過熱器、再熱器、若しくは、節炭器の近傍、又は、排気通路などが相当する。この下流部においては、燃焼ボイラの燃焼部を通過したフライアッシュが完全に冷却固化しておらず、フライアッシュが溶融された状態に維持されていることが好ましい。
【0015】
また、「フライアッシュのうち平均粒径が大きいフライアッシュ」とは、例えば、電気集塵装置でいえば、複数の捕集段があるとすると、排ガスの上流側の捕集段で捕集されるフライアッシュである。また、重量集塵装置でいえば、排ガスが水平方向に装置内を流れるとすれば、装置の入口側に沈降したフライアッシュである。このように、同じ集塵装置であっても、取り出す位置によってフライアッシュの平均粒径が異なることがある。この場合でも、本発明で下流部に移送されるフライアッシュは、集塵装置で取り出される全フライアッシュの中でも大きい粒径のものである。下流部に移送されるフライアッシュは、全フライアッシュの中の平均粒径に対して、110%以上、300%以下の粒径であることが好ましい(例えば、平均粒径が35μmとしたとき、40μm以上100μm以下)。
【0016】
(3) 前記石炭として微粉炭を使用する(1)又は(2)に記載の石炭火力発電システム。
【0017】
(3)の発明は、本発明に係る石炭火力発電システムに使用される燃料が微粉炭であることを規定している。本発明に係る石炭火力発電システムにおいて、燃料として微粉炭を使用した場合は、フライアッシュの平均粒径が小さくなるため、フライアッシュの平均粒径を拡大させることは大変に意義がある。すなわち、本発明に係る石炭火力発電システムにより、燃料が微粉炭のために平均粒径が小さいフライアッシュであっても、その平均粒径を大きくさせることができる。
【0018】
(4) 前記下流部は、前記燃焼ボイラの下流に配置される熱交換ユニットである(1)から(3)のいずれかに記載の石炭火力発電システム。
【0019】
(4)の発明は、平均粒径が大きいフライアッシュが移送される場所を下流部の位置と規定している。(4)の発明によれば、平均粒径が大きいフライアッシュが移送される下流部は、燃焼ボイラの下流に配置される熱交換ユニットである。この熱交換ユニットは、火炉上部分割壁、過熱器、再熱器、及び節炭器などと呼ばれ、450℃から900℃前後の温度が維持されている領域である。このように熱交換ユニットでは高い温度領域が維持されているので、ボイラ内の燃焼部で溶融した平均粒径の小さいフライアッシュが完全に冷却固化されず、平均粒径の大きいフライアッシュの表面に合体することが可能である。したがって、平均粒径が大きいフライアッシュを生成させることができる。すなわち、多額の初期投資をせずに、かつ、大規模な追加設備を必要とせずに、フライアッシュの平均粒径を大きくさせることができる。
【0020】
(5) 石炭を燃焼させる燃焼ボイラと、前記燃焼ボイラの下流に配置され前記石炭の燃焼により発生した排ガス中に含まれるフライアッシュを取り除く集塵装置と、を備えた石炭火力発電システムにおけるフライアッシュの平均粒径を拡大させる方法であって、前記集塵装置によって取り除かれた前記フライアッシュを、前記集塵装置から前記燃焼ボイラと前記集塵装置との間に設けられ前記排ガスが通過する下流部に移送させることにより、フライアッシュの平均粒径を拡大させる方法。
【0021】
(6) 前記集塵装置によって取り除かれた前記フライアッシュのうち平均粒径が大きいフライアッシュを、前記集塵装置から前記燃焼ボイラと前記集塵装置との間に設けられ前記排ガスが通過する下流部に移送させる、(5)に記載のフライアッシュの平均粒径を拡大させる方法。
【0022】
(5)及び(6)の発明は、(1)及び(2)の発明を方法として捉えたものである。(1)及び(2)の発明と同様に、平均粒径が大きいフライアッシュを生成させることができる。すなわち、多額の初期投資をせずに、かつ、大規模な追加設備を必要とせずに、フライアッシュの平均粒径を大きくさせることができる。
【0023】
(7) 前記石炭として微粉炭を使用する(5)又は(6)記載のフライアッシュの平均粒径を拡大させる方法。
【0024】
(7)の発明は、(3)の発明を方法として捉えたものである。(3)の発明と同様に、本発明に係るフライアッシュの平均粒径を拡大させる方法を燃料が微粉炭の場合に適用することにより、燃料が微粉炭のために平均粒径が小さいフライアッシュであっても、その平均粒径を大きくさせることができる。
【0025】
(8) 前記下流部は、前記燃焼ボイラの下流に配置される熱交換ユニットとする(5)から(7)のいずれかに記載のフライアッシュの平均粒径を拡大させる方法。
【0026】
(8)の発明は、(4)の発明を方法として捉えたものである。(4)の発明と同様に、平均粒径が大きいフライアッシュを生成させることができる。すなわち、多額の初期投資をせずに、かつ、大規模な追加設備を必要とせずに、フライアッシュの平均粒径を大きくさせることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、多額の初期投資をせずに、かつ、大規模な追加設備を必要とせずに、フライアッシュの平均粒径を大きくさせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の一例を示す実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0029】
<石炭火力発電システムにおける石炭燃焼プラントの構成>
図1は、石炭火力発電システムにおける石炭燃焼プラント10を示す概略説明図である。ここで、図1に示すように、石炭燃焼プラント10は、少なくとも、石炭を燃焼させる燃焼ボイラ40と、石炭を燃焼したことにより発生した排ガス中に含まれるフライアッシュ(煤塵)を取り除く電気集塵装置90と、を備える。
【0030】
更に、石炭燃焼プラント10は、石炭サイロ(図示しない)から運炭設備によって供給された石炭を貯蔵する石炭バンカ20と、微粉炭機30と、燃焼ボイラ40の下流側に設けられた排気通路(煙道)50と、この排気通路50に設けられた脱硝装置60と、空気予熱器70と、ガスヒータ(熱回収用)80と、誘引通風機210と、脱硫装置220と、ガスヒータ(再加熱用)230と、脱硫通風機240と、煙突250と、を備える。また、図2は、燃焼ボイラ(火炉)40付近の拡大図である。
【0031】
微粉炭機30は、石炭バンカ20から給炭機25を介して供給された石炭を、微細な粒度に粉砕して微粉炭を形成する。そして、この微粉炭と空気とを混合することにより、微粉炭を予熱及び乾燥させ、燃焼を容易にする。形成された微粉炭には、エアーが吹きつけられて、これにより、微粉炭機30は、燃焼ボイラ40に微粉炭を供給する。
【0032】
燃焼ボイラ40は、微粉炭機30から供給された微粉炭を、強制的に供給された空気とともに燃焼する。微粉炭を燃焼することによりクリンカアッシュ及びフライアッシュなどの石炭灰が生成されるとともに、排ガスが発生する。後述するように、フライアッシュは電気集塵装置90によって取り除かれる。
【0033】
図2を参照して、燃焼ボイラ40内について詳しく説明すると、図2において、燃焼ボイラ40は全体として略逆U字状をなしており、図中矢印に沿って排ガス(燃焼ガス)が逆U字状に移動した後、2次節炭器41eを通過後に、再度小さくU字状に反転する。燃焼ボイラ40の排気通路50(図2における矢印の最後)は、図1における脱硝装置60に接続されている。
【0034】
燃焼ボイラ40の下方には、燃焼ボイラ40内のバーナーゾーン41a’付近で微粉炭を燃焼するためのバーナ41aが配置されている。また、燃焼ボイラ40内のU字頂部付近には、第一の過熱器41bが配置されており、更にそこから第二の過熱器41cが続いて配置されている。更に、第二の過熱器41cの終端付近からは、1次節炭器41d、2次節炭器41eが2段階に設けられている。ここで、節炭器(ECOとも呼ばれる)は、排ガスの保有する熱を利用してボイラ給水を予熱するために設けられた伝熱面群である。
【0035】
また、燃焼ボイラ40の側面であって、1次節炭器41dの近傍に開口が形成される開口部(第一開口部)42には、フライアッシュ移送管170が開口部42に連結するように設けられている。
【0036】
排気通路50上に配置される脱硝装置60は、排ガス中の窒素酸化物を除去するものである。すなわち、比較的高温(300℃〜400℃)の排ガス中に還元剤としてアンモニアガスを注入し、脱硝触媒との作用により排ガス中の窒素酸化物を無害な窒素と水蒸気に分解する、いわゆる乾式アンモニア接触還元法が好適に用いられる。そして、排ガスは、空気予熱器(AH)70で燃焼用の空気と熱交換することで冷却され、ガスヒータ80によって熱回収された後に電気集塵装置90へ送られる。
【0037】
電気集塵装置(EP)90は、排ガス中の石炭灰を電極で収集する装置である。図3及び図4を参照して、電気集塵装置90について詳しく説明すると、図3に示すように、電気集塵装置90は、入口絞りダクト92、出口絞りダクト94を左右のそれぞれに形成した箱形の密閉チャンバ96と、密閉チャンバ96上に配置された長方形の3つの碍子室98と、碍子室98上に配置された複数の高圧変圧整流器102と、密閉チャンバ96上に配置された一対の槌打装置104と、密閉チャンバ96内にあって、入口絞りダクト92に面して配置された多孔板106と、多孔板106の背部に設けられ仕切り板状をなしてその面内方向が出入口方向に沿うように横列状態に多数配置された集塵極108と、各集塵極108の間に配設され、かつ碍子室98内に配置された放電極支持碍子110に接続された放電極112と、密閉チャンバ96の下部にあって、両極108,112の集合体からなる複数の静電極群の配列位置に対向して配置された4つの集塵ホッパ114,115,116,117(117は図示されず)とからなり、更に各静電極群周囲における床面に点検用のフロア118を設けたものである。
【0038】
電気集塵装置90の動作原理は、図4に示すように、高圧変圧整流器102によって作られた直流高圧電源の+側に集塵極108が接続してプラスに帯電し、−側に放電極112が接続している。したがって、入口絞りダクト92から排ガスが流入し、この排ガスに含まれているフライアッシュが集塵極108間を通過すると、放電極112から放出される−の電荷によりフライアッシュは−に帯電し、集塵極108の表面に吸着され、ここに堆積する。
【0039】
また、排ガスの通風を停止し、かつ電源を遮断した後、槌打装置104によって振動が与えられると、集塵極108に吸着され堆積したフライアッシュは集塵ホッパ114〜117内のいずれかに落下し、集塵ホッパ114〜117を通じて図1に示すフライアッシュ回収装置120に回収される。
【0040】
電気集塵装置90の場合、集塵ホッパ114〜117のうち、入口絞りダクト92側の集塵ホッパである集塵ホッパ114及び115に落下するフライアッシュは平均粒径の大きいものである。そして、集塵ホッパ114の側面114aには、開口部(第二開口部)114bが形成されている。すなわち、電気集塵装置90は、フライアッシュのうち平均粒径が大きいフライアッシュが取り除かれる部分の近傍に開口部114bを有する。この開口部114bには、フライアッシュ移送管170が連結されている。このフライアッシュ移送管170は、開口部114bから開口部42までを連通している。このフライアッシュ移送管170上には、図1に示すように、開口部114bから開口部42の向きに吸引するように吸引装置(吸引手段)180が設けられている。
【0041】
電気集塵装置(EP)90を通過した排ガスは、誘引通風機210を介して脱硫装置220へ導かれる。脱硫装置220は、燃焼ガスに石灰石と水との混合液を吹き付けることにより、燃焼ガスに含有されている硫黄酸化物を混合液に吸収させて脱硫石膏スラリーを生成させ、この脱硫石膏スラリーを脱水処理することで脱硫石膏を生成するようにしており、生成された脱硫石膏を、この装置に接続された脱硫石膏回収装置222で回収するようにしている。
【0042】
そして、脱硫装置220で硫黄酸化物が除去された空気は、ガスヒータ230によって加熱され、脱硫通風機240を介して煙突250へ導かれる。ガスヒータ230は、脱硫装置220で低下した燃焼ガスの温度を加温することで煙突効果を利用して燃焼ガスを煙突から効果的に排出させるようにしている。
【0043】
次に、フライアッシュ移送管170によって平均粒径が大きいフライアッシュ(以下、フライアッシュA)が移送され、このフライアッシュAの表面に、1次節炭器41d付近のフライアッシュ(以下、フライアッシュB)が溶融して合体することにより、フライアッシュ(以下、フライアッシュC)が生成されるまでを説明する。
【0044】
吸引装置180の吸引力で集塵ホッパ114内が吸引されると、集塵ホッパ114に落下したフライアッシュAは、フライアッシュ移送管170内に吸い込まれる。吸い込まれたフライアッシュAは、フライアッシュ移送管170を経由して、開口部42から燃焼ボイラ40の内部に設けられている1次節炭器41d付近に放出される。温度が450℃〜500℃の1次節炭器41d付近にはフライアッシュBが存在している。このフライアッシュBは燃焼ボイラ40の燃焼部を通過した後、完全に冷却固化されておらず、表面が溶融された状態となっている。すると、フライアッシュAの表面にフライアッシュBが溶融して合体し、新たなフライアッシュCが生成される。すなわち、フライアッシュA及びBが合体して、平均粒径が大きいフライアッシュCが生成する。
【0045】
また、移送されるフライアッシュAの平均粒径は、1μm以上100μm以下であることが好ましい。1μm未満では平均粒径が小さ過ぎて新たに生成されるフライアッシュCの平均粒径も小さくなってしまう。100μmを超えてもそれ以上の効果は奏しない。
【0046】
1次節炭器41d付近のフライアッシュBの平均粒径は、1μm以上100μm以下であることが好ましく、10μm以上50μm以下であることがより好ましい。
【0047】
なお、フライアッシュ移送管170は、集塵ホッパ115と連結しているが、1つだけの集塵ホッパだけでなく、少なくも1つ以上の集塵ホッパと連結していればよい。
【0048】
また、集塵装置として電気集塵装置90が設けられているが、集塵ホッパは他の種類の集塵装置でもよく、例えば、フライアッシュの重力による自然沈降によって分離する重力集塵装置、フライアッシュに作用する慣性力、遠心力、静電気力などの力や粒子群の拡散運動などにより障害物上に分離する障害物形式集塵装置、遠心力集塵装置などであってもよい。集塵装置の種類が変わる場合は、当然に、フライアッシュのうち平均粒径が大きいフライアッシュが取り除かれる部分の近傍に、フライアッシュ移送管170に連結される開口部を設けるようにする。
【0049】
また、フライアッシュ移送管170は、1次節炭器41d付近で燃焼ボイラ40と連結されているが、フライアッシュAが溶融可能な状態であれば他の場所、例えば、燃焼ボイラ内のバーナーゾーン41a’付近で燃焼ボイラ40と連結されていてもよく、また、排気通路50で連結されていてもよい。この場合、フライアッシュAが移送される場所の温度は、400℃以上の範囲にあることが好ましい。フライアッシュAが移送される場所の温度が400℃未満ではフライアッシュBが完全に冷却固化されてしまい、フライアッシュBの表面が溶融された状態を保つことができなくなるおそれがある。
【0050】
また、吸引装置180は、フライアッシュ移送管170内を開口部42から開口部114bに向けて吸引するものであれば、公知の手段を採用できる。
【0051】
以上のように、電気集塵装置90はフライアッシュのうち平均粒径が大きいフライアッシュが取り除かれる部分の近傍に開口部114bを有し、開口部42を有する燃焼ボイラの1次節炭器41dは燃焼ボイラ40の下流、かつ、電気集塵装置90の上流に配置され、フライアッシュ移送管170は開口部114bから開口部42までを連通し、吸引装置180は開口部114bから開口部42に向けてフライアッシュ移送管170内を吸引する。したがって、開口部42には開口部114bから平均粒径が大きいフライアッシュが移送される。ここで、開口部42の近傍に存在する平均粒径の小さいフライアッシュは、燃焼ボイラ40の余熱によって少なくとも表面が溶融されている状態となっている。このため、平均粒径の小さいフライアッシュが平均粒径の大きいフライアッシュの表面に合体することにより、多額の初期投資をせずに、かつ、大規模な追加設備を必要とせずに平均粒径が大きいフライアッシュを生成させることができる。すなわち、フライアッシュの平均粒径を大きくさせることができる。
【0052】
なお、本実施形態においては、フライアッシュのうち平均粒径が大きいフライアッシュをフライアッシュ移送管170で移送する場合を例にとって説明したが、これに限定されない。すなわち、フライアッシュ移送管170で移送されるフライアッシュは、電気集塵装置90の後段の、比較的平均粒径の小さいフライアッシュであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一実施形態を示す石炭火力発電システムにおける石炭燃焼プラントを示す概略構成図である。
【図2】図1における燃焼ボイラ付近の拡大図である。
【図3】本発明の一実施形態を示す石炭火力発電システムにおける電気集塵装置を部分的に破断して内部を見せた斜視図である。
【図4】同動作原理を示す説明図である。
【符号の説明】
【0054】
10 石炭燃焼プラント
20 石炭バンカ
30 微粉炭機
40 燃焼ボイラ
41d 1次節炭器
41e 2次節炭器
50 排気通路
60 脱硝装置
70 空気予熱器
80 ガスヒータ
90 電気集塵装置
114,115,116,117 集塵ホッパ
116 フライアッシュ回収装置
118 フロア
130 ガスヒータ
140 脱硫通風機
170 フライアッシュ移送管
180 吸引装置
210 誘引通風機
220 脱硫装置
222 脱硫石膏回収装置
230 ガスヒータ
240 脱硫通風機
250 煙突

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭を燃焼させる燃焼ボイラと、前記燃焼ボイラの下流に配置され前記石炭の燃焼により発生した排ガス中に含まれるフライアッシュを取り除く集塵装置と、を備えた石炭火力発電システムにおいて、
前記集塵装置は、前記フライアッシュが取り除かれる部分の近傍に第一開口部を有しており、
前記燃焼ボイラの下流かつ前記集塵装置の上流に配置され、開口を形成する第二開口部を有する下流部と、
前記第一開口部から前記第二開口部までを連通するフライアッシュ移送管と、
前記フライアッシュ移送管内を第一開口部から前記第二開口部に向けて吸引する吸引手段と、を備える石炭火力発電システム。
【請求項2】
前記集塵装置は、前記フライアッシュのうち平均粒径が大きいフライアッシュが取り除かれる部分の近傍に第一開口部を有している、請求項1に記載の石炭火力発電システム。
【請求項3】
前記石炭として微粉炭を使用する請求項1又は2に記載の石炭火力発電システム。
【請求項4】
前記下流部は、前記燃焼ボイラの下流に配置される熱交換ユニットである請求項1から3のいずれかに記載の石炭火力発電システム。
【請求項5】
石炭を燃焼させる燃焼ボイラと、前記燃焼ボイラの下流に配置され前記石炭の燃焼により発生した排ガス中に含まれるフライアッシュを取り除く集塵装置と、を備えた石炭火力発電システムにおけるフライアッシュの平均粒径を拡大させる方法であって、
前記集塵装置によって取り除かれた前記フライアッシュを、前記集塵装置から前記燃焼ボイラと前記集塵装置との間に設けられ前記排ガスが通過する下流部に移送させることにより、フライアッシュの平均粒径を拡大させる方法。
【請求項6】
前記集塵装置によって取り除かれた前記フライアッシュのうち平均粒径が大きいフライアッシュを、前記集塵装置から前記燃焼ボイラと前記集塵装置との間に設けられ前記排ガスが通過する下流部に移送させる、請求項5に記載のフライアッシュの平均粒径を拡大させる方法。
【請求項7】
前記石炭として微粉炭を使用する請求項5又は6記載のフライアッシュの平均粒径を拡大させる方法。
【請求項8】
前記下流部は、前記燃焼ボイラの下流に配置される熱交換ユニットとする請求項5から7のいずれかに記載のフライアッシュの平均粒径を拡大させる方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−74770(P2009−74770A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−246075(P2007−246075)
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】