説明

石炭発電装置の複合サイクル効率を向上するための脱水システム及び方法

【課題】石炭洗浄処理の廃水流れを処理する方法を改善する。
【解決手段】石炭を処理する方法は、石炭から鉱物を除去するように調製された浸出剤と石炭を接触させることと;水及びある濃度の汚染物質を含む廃水流れを形成することと;加圧下で逆浸透膜の第1の面と廃水流れを接触させることとを含み、逆浸透膜を透過した汚染物質を低濃度で含む透過物流れは、逆浸透膜の第2の面から流出し、且つ汚染物質を更に高い濃度で含む濃縮物流れは、逆浸透膜の第1の面に保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に石炭発電装置に関し、特に複合サイクル効率を向上させた石炭発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気を発生するために石炭の燃焼効率を石炭タービンの利用によって向上することができる。しかし、タービン翼及び他のシステム構成要素への損傷を防止するために、無機鉱物などの石炭中の種々の鉱物を除去すべきであり、鉱物は無機鉱物に限定されない。従って、燃焼前又は燃焼後、鉱物は燃焼ガスがタービンに流入する前に除去される。燃焼前に鉱物を除去する場合、石炭の鉱物含有量は、約0.1重量パーセント(wt%)未満まで減少される。この純度の石炭はウルトラクリーン石炭(UCC)と呼ばれる。UCCは、膨大な数の有用な有機化合物及びポリマーを製造するための原料として利用されてもよい。
【0003】
石炭中に存在する鉱物は石炭の採掘場所によって異なり、カオリナイト、石英、緑泥石及びモンモリロナイトなどの粘土、黄鉄鉱、アナタース型酸化チタン及び隕鉄(siderate)を含む。鉱物はヘマタイト、ナトロジャロサイト、ドロマイト、アパタイト、フルオアパタイト、長石及び石膏を更に含んでもよい。
【0004】
UCCを製造する方法の1つは、強酸などの浸出剤によって石炭を洗浄することにより鉱物を浸出する。クリーン石炭を製造するための浸出方法はよく知られている。浸出剤には、例えばフッ化水素酸、硝酸及び硝酸第二鉄などがある。特定の方法において、まず石炭はフッ化水素酸の水溶液によって浸出され、次に硝酸又は硝酸第二鉄の水溶液によって浸出される。本明細書において、フッ化水素酸の水溶液による石炭の浸出はフッ化物処理と呼ばれる。
【0005】
使用後の浸出液はフッ化水素酸、硝酸又は硝酸第二鉄を含むばかりでなく、石炭から浸出された鉱物をも含む。石炭の中に存在する鉱物不純物は、浸出剤によって溶解されることにより、ケイ素、アルミニウム、鉄、チタン、カリウム、カルシウム、ナトリウム、マグネシウム、バリウム、ストロンチウム、バナジウム、銅、マンガン、ジルコニウム、亜鉛、セリウム又はそれらの元素のうち少なくとも1つを含む組み合わせを浸出剤溶液の中へ放出する。浸出剤溶液の中へ放出される元素及び元素の量は、石炭の採掘場所及び石炭中の鉱物含有量によって異なる。
【0006】
使用済み浸出液は廃水流れであるので、廃水を処理せずに周囲環境へ直接放出してはならない。この廃水を処理する方法の1つは、廃水を蒸発させ且つ固体残留物を廃棄する。しかし、廃水から水を蒸発させる処理によって、石炭タービン発電装置のエネルギー効率は低下する。廃水を蒸発させるためのエネルギーを含めて、高位発熱量(HHV)の単位で測定可能な石炭タービン発電装置の複合サイクル効率は、わずか約33%である。効率がそのように低いので、発電のためにUCCを燃焼することは環境の面でも、経済的にも望ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6,338,803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
石炭洗浄処理の廃水流れを処理する方法を改善することが望ましい。特に、水の蒸発と関連するエネルギー効率の低下を招かずに廃水から水を除去する方法を提供することができれば好都合であろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の1つの態様によれば、石炭を処理する方法は、石炭から鉱物を除去するように調製された浸出剤と石炭を接触させることと、水及びある濃度の汚染物質を含む廃水流れを形成することと、加圧下で逆浸透膜の第1の面と廃水流れを接触させることとを含み、逆浸透膜を透過した汚染物質を低い濃度で含む透過物流れは、逆浸透膜の第2の面から流出し、且つ汚染物質を更に高い濃度で含む濃縮物流れは、逆浸透膜の第1の面に保持される。
【0010】
本発明の別の態様によれば、石炭処理システムは、ウルトラクリーン石炭を製造するように構成された高度石炭処理段を含み、高度石炭処理段は、石炭から鉱物を除去し且つ廃水流れを形成するように構成された浸出剤処理システムと;浸出剤処理システムと流体連通し且つ廃水流れの中の汚染物質の濃度を低下するように構成された脱水システムとを具備し、脱水システムは、廃水流れと流体連通する逆浸透膜を具備する。
【0011】
上記の利点及び特徴並びに他の利点及び特徴は、添付の図面と関連させた以下の説明から更に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明であるとみなされる主題は、本明細書の末尾の特許請求の範囲の中で特定して指摘され且つ明確に特許請求される。本発明の上記の特徴及び利点並びに他の特徴及び利点は、添付の図面と関連させた以下の詳細な説明から明らかである。
【図1】図1は高位発熱量の単位で表される複合サイクル効率と溶質の水倍率との関係を示したグラフである。
【図2】図2は浸透圧及び溶質のwt%と水除去率(%)との関係を示したグラフである。
【図3】図3は石炭タービン発電装置の例示的な一実施形態を示したフローチャートである。
【図4】図4は図3の石炭タービン発電装置のフッ化物石炭処理システムの例示的な一実施形態を示したフローチャートである。
【0013】
以下の詳細な説明は、例として添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態をその利点及び特徴と共に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書には、石炭発電装置の複合サイクル(CC)効率を向上するシステム及び方法、特に石炭洗浄処理から出る廃水流れから水が除去される場合に起こる効率の低下を低減する脱水システム及び脱水方法が開示される。発明者は、逆浸透を利用する脱水システムにより石炭のフッ化物洗浄処理の廃水を除去でき且つ溶解塩を濃縮できるという予期せぬ成果を得た。廃水はpHが低く、極めて腐食性の高い性質を有し且つ廃水の溶解個体の総量が多いにもかかわらず、この処理は水の除去に有効である。
【0015】
先に述べた通り、ウルトラクリーン石炭を使用する石炭タービン発電装置のCC効率(HHV)は、石炭を洗浄する処理で生成される廃水から水を蒸発させるために必要とされるエネルギーによって低下する。経済的にも、環境の面でも、効率のよい石炭発電装置であることが望ましい。特に、タービンの等級に応じて、50%に近いか又は50%を超える効率を有する直接燃焼式ガスタービンは、石炭発電装置のコストを削減し且つ環境に及ぼす影響も低減すると考えられる。燃焼前にフッ化物処理によって石炭を洗浄することは、この処理において重要な工程である。廃水流れから溶解固体を捕捉して、更に処理するために、現在、水は蒸発によって除去され且つ固体は濃縮されている。しかし、水を蒸発させる処理は、CC効率を最大で17ポイント低下させる。本明細書において開示されるような脱水方法は、このCC効率低下を2ポイントまで減少できる。
【0016】
従って、石炭タービン発電装置において石炭を処理する方法は、石炭から鉱物を除去するのに有効な温度、圧力及び持続時間で石炭を浸出剤と接触させ、ある濃度の汚染物質を含む廃水流れを形成することと;加圧下で逆浸透膜の第1の面と廃水流れを接触させることとを含み、逆浸透膜を透過した汚染物質を低濃度で含む透過物流れは、逆浸透膜の第2の面から流出し、且つ汚染物質を更に高い濃度で含む濃縮物流れは、逆浸透膜の第1の面に保持される。逆浸透膜に入る時点の廃水は場合によっては「フィード」と呼ばれてもよい。
【0017】
石炭洗浄処理の浸出液から取り出される廃水汚染物質は、フッ化水素酸、硝酸、硝酸第二鉄、又はそれらの浸出剤のうち少なくとも1つを含む組み合わせを含むと考えられるが、これに限定されない。石炭から浸出された無機鉱物から取り出される廃水汚染物質はケイ素、アルミニウム、鉄、チタン、カリウム、カルシウム、ナトリウム、マグネシウム、バリウム、ストロンチウム、バナジウム、銅、マンガン、ジルコニウム、亜鉛、セリウム又はそれらの元素のうち少なくとも1つを含む組み合わせを含むと考えられるが、これに限定されない。廃水流れの中の汚染物質の種類及び量は、使用される浸出剤、石炭の採掘場所及び石炭の鉱物含有量によって異なる。
【0018】
逆浸透膜を介する水の除去により濃縮される特定の汚染物質は、フッ化水素酸、フッ化物、硝酸、硝酸第二鉄、窒化物、ケイ素、アルミニウム、鉄又はそれらの汚染物質のうち少なくとも1つを含む組み合わせを含むと考えられる。廃水のpH並びにケイ素及びフッ素の濃度に応じて、ケイ素はSiO、Si(OH)、SiF3+、SiF2+、SiF、SiF、SiF2−、又はそれらのケイ素錯体のうち少なくとも1つを含む組み合わせの形態であると考えられる。廃水のpH並びにアルミニウム及びフッ化物の濃度に応じて、アルミニウムはAl(OH)、AlF2+、AlF、AlF、AlF2−及びAlF3−、又はそれらのアルミニウム錯体のうち少なくとも1つを含む組み合わせの形態であると考えられる。鉄はFe(OH)、FeF2+、FeF、FeF、又はそれらの鉄錯体のうち少なくとも1つを含む組み合わせの形態であると考えられる。陽イオンの電荷に応じて、これらの陽イオン錯体は、いずれも、1つ以上の水酸化物配位子と置換可能である。
【0019】
脱水処理前、廃水流れの中の総溶解固体濃度は1リットル当たり約10,000ミリグラム(mg/L)〜約60,000mg/Lである。廃水のpHは約0〜約4である。脱水前、廃水は、フッ化水素酸、フッ化物、硝酸、硝酸第二鉄、窒化物、ケイ素、アルミニウム又は鉄を含むが、それらに限定されない種々の汚染物質を様々に異なる濃度で、例えば約0.1mg/L〜約100,000mg/Lの濃度で含む。
【0020】
一実施形態において、脱水処理後、廃水流れのpHは約4〜約7まで上がり、廃水流れの中の総溶解固体濃度は約0.1mg/L〜約10,000mg/Lまで減少する。換言すれば、逆浸透透過物は、フッ化水素酸、フッ化物、硝酸、硝酸第二鉄、窒化物、ケイ素、アルミニウム又は鉄を含むが、それらに限定されない種々の汚染物質を多様な濃度で、例えば約0.1mg/L〜約10,000mg/Lの濃度で含む。
【0021】
一実施形態において、脱水処理後、濃縮物中の総溶解固体濃度は、約8,000mg/L〜約500,000mg/Lである。換言すれば、逆浸透濃縮物は、フッ化水素酸、フッ化物、硝酸、硝酸第二鉄、窒化物、ケイ素、アルミニウム又は鉄を含むが、それらに限定されない種々の汚染物質を多様な濃度で、例えば約8,000mg/L〜約500,000mg/Lの濃度で含む。
【0022】
一実施形態において、逆浸透膜は非対称膜又は薄膜複合膜である。非対称膜は溶液から1つのポリマーから成る一体の部材に鋳造され、厚い多孔質支持層と接触する薄く密な層を具備する。例えば、薄く密な層は約0.2μmの厚さを有し、厚い多孔質支持層は0.2μmを超える厚さを有する。密な層は、膜の選択的搬送特性(溶解固体を透過せずに水を高い選択性で透過し且つ高流率を有する)を実現する主な要素である。多孔質支持層は膜に機械的一体性及び強度を与える。流率は、逆浸透膜を通過する流れの単位面積当たりの流量として定義される。本明細書において使用される流率の単位は、毎時平方メートル当たりのリットル数(L/hrm)である。
【0023】
あるいは、薄膜複合膜は、別個に形成され且つ異なるポリマー組成を有してもよい2つの層を含む。薄膜複合膜は薄く密なポリマー層を具備し、このポリマー層は、それ自身とは別個に形成された厚い多孔質支持層により支持される。例えば、薄く密な層は約0.2μmの厚さを有してもよく、厚い多孔質支持層は0.2μmを超える厚さを有する。この場合にも、多孔質支持層は密な層とは異なる組成から形成されてもよい。非対称膜と同様に、密な層は膜の選択的搬送特性を実現する主な要素であり、多孔質支持層は機械的一体性及び強度を与える。
【0024】
薄膜複合構造又は非対称構造のいずれが使用されるかに関わらず,逆浸透膜は平坦なシート、管状、螺旋巻き付け構成、中空繊維又は他の同様な構成で装着できる。例えば、平坦なシートの構成は、平板熱交構成で配置された複数の膜を含んでもよく、それらの膜は、平坦で剛性の多孔質スペーサ構造により支持される。
【0025】
管状構成の場合、平坦な膜がロール状に巻かれて継目で接合されるか、又は円筒形に直接鋳造される。膜と物理的に連通するように配設された多孔質管は、膜支持体として機能するばかりでなく管状構成における収納容器としても使用される。逆浸透膜は、廃水が貫流される多孔質管の内側又は外側のいずれに配置されてもよい。水は管状膜の全長に沿って膜を透過し、透過物は管の低圧側端部で回収される。一実施形態において、容器モジュールの中に複数の管状膜ユニットが並列に結合されていてもよく、フィード流れ、濃縮物流れ及び透過物流れを接続するためのマニホルドが配置される。
【0026】
螺旋巻き付け構成において、中心の孔あき透過物回収管の周囲に積層膜構造が巻き付けられ、収納容器として使用される規格品パイプの中に設置される。積層構造は、多孔質フィードスペーサ及び多孔質透過物スペーサにより分離された2つの膜から構成されてもよく、そこに液体が貫流される。積層構造の一方の縁部は開いており、回収管と接触する。廃水は、モジュールに沿って多孔質フィードスペーサにより形成される膜の間の流路を通って軸方向に流れる。透過物は、多孔質透過物スペーサにより形成される膜の間の流路に沿って回収管まで内側へ螺旋状に進む。
【0027】
中空繊維構成において、繊維の端部は、ループを形成するか又は閉塞された繊維を使用して管シートに埋め込まれる。1つの構成において、廃水は繊維の外側を貫流され、浄化された廃水は繊維を透過し、透過物は繊維の内側の孔から回収される。別の構成において、廃水フィードは繊維の孔の内側を貫流され、透過物は繊維の外面から回収される。
【0028】
膜の所望の構成に関わらず、脱水システムにおいて所望の汚染物質濃縮を実現するのに十分な任意の数の逆浸透膜が使用されてよい。更に、膜のうち1つ以上及び/又は膜容器モジュールは、直列又は並列に接続されてもよい。例えば、膜は逆浸透容器の中に配設された中空繊維構成又は螺旋構成であってもよい。廃水流れの中の汚染物質を所望の程度まで減少するために、複数の容器が使用されてもよい。複数の容器は直列流体連通状態であってもよいし、あるいは容器の並列アレイとして配列されてもよい。
【0029】
更に、構造又は構成に関わらず、逆浸透膜は廃水流れを脱水するのに適する任意の材料から製造されてよい。例えば膜の材料は、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリアミド、ポリエーテルスルホン又はそれらのポリマーのうち少なくとも1つを含む組み合わせを含んでもよいが、材料はこれに限定されない。逆浸透膜は約97.5%〜約99.9%の塩化ナトリウム除去率を有してもよい。
【0030】
逆浸透膜を介する浄化廃水の透過は、加圧下で実行される。浸透圧に対抗するような圧力を加えることが必要である。膜により分離される濃度の異なる2つの溶液の間には、浸透圧の差が存在する。2つの濃度を均等にするために、浸透圧によってより濃度の低い溶液の溶媒が膜を透過し、より濃度の高い溶液に流入する。従って、膜を通して溶媒を逆方向に、すなわちより濃度の低い溶液からより濃度の高い溶液に向かう方向に流すために、逆方向の等しい圧力が必要とされる。
【0031】
本明細書において開示されるように、加えられる圧力、すなわち動作圧力は、濃度の薄い浄化廃水から濃縮物流れへ汚染物質及び浸出剤を流すのに十分な値である。本発明における逆浸透脱水処理の動作圧力の範囲は、例えば約1メガパスカル(MPa)〜約12MPaであってもよい。一実施形態において、高圧逆浸透処理が使用されてもよく、その場合、動作圧力は約7MPa〜約12MPaである。溶質の濃度が高いほど、溶液と純溶媒との浸透圧差は大きくなる。図1は、浸透圧と、フッ化物処理石炭洗浄処理で得られた濃縮水溶液の水除去率(%)との関係を示したグラフである。フィードからの目標水除去率(x軸)が高いほど、濃縮物の中の溶質の重量パーセント(右側y軸)は高くなり且つ濃縮物の浸透圧(左側y軸)は高くなる。従って、所望の水除去率が高いほど廃水濃縮物に加えられる圧力は高くなる。例えば5wt%の総溶解固体を含む廃水流れから始めて、逆浸透により50%の水を除去すると約10%の総溶解固体を含む濃縮物が形成される。図1によれば、50vol%の水を除去すると、約800psi、すなわち5.5MPaの浸透圧で濃縮物が形成される。従って、廃水流れから50vol%の水を除去するためには、少なくとも5.5MPaの圧力を加えることが必要である。
【0032】
次に図2を参照すると、石炭タービン発電装置の動作のCC効率(HHV単位で測定される)と廃水流れにおける溶質の水倍率との関係を示したグラフが示される。10の水倍率は、廃水流れの中に汚染物質1部当たり10部の水が存在することを示す。図2に示されるように、石炭のフッ化物処理から生成される廃水は、約5wt%の総溶解固体を含み、これは、約20の溶質の水倍率(「脱水なし」として示されている)に対応する。先に述べた通り、本明細書において説明されるような逆浸透によって固体を濃縮しない場合、廃水流れから水を蒸発させなければならないであろう。水を蒸発させる処理は発電装置のCC効率を低下する。水を蒸発させるために必要とされるエネルギーを含めて、そのような石炭発電装置のCC効率は約33%になるであろうと評価される。
【0033】
本明細書において説明される逆浸透処理により約5wt%の総溶解固体を含む廃水流れから約50vol%の水を除去すると、約10wt%の総溶解固体を含む濃縮物流れが形成される。これは、約10の水倍率に相当する。図2に「従来のRO」として表されたデータポイントにより示されるように、このレベルの廃水濃縮(すなわち脱水)はCC効率を約41%まで向上できる。
【0034】
別の特定の実施形態において、動作圧力が約7MPa〜約12MPaである高圧逆浸透処理を脱水に使用できる。図1に戻って説明する。動作圧力が約1,600psi(11MPa)まで増加されると、約80vol%の水を除去可能であり、約20wt%の総溶解固体を含む濃縮物が形成される。図2に戻ると、これは、約4の溶質の水倍率に相当する。高圧逆浸透によってこの程度まで廃水を濃縮することにより、発電装置のCC効率を約44%まで向上できる。これは、「高圧RO」として示されたデータポイントに相当する。このレベルの効率で石炭発電システムが動作する場合、コストは削減され且つ環境面でも利点がある。例えば、廃水流れから水を蒸発させるために消費されると考えられる電力と比較して、逆浸透脱水処理で消費される電力は少ない。
【0035】
図3は、石炭タービン発電装置100の例示的な一実施形態を示したフローチャートである。石炭は発電装置の石炭準備段102に入り、次に石炭ガスタービン106において燃焼される前に高度石炭処理段104へ搬送される。タービンで燃焼するのに適するように石炭を準備するために、石炭はいくつかの準備処理及び洗浄処理を受けてもよい。便宜上、図3は簡略化して示されているが、石炭タービン発電装置100における各段は、当業者には周知である種々の構成要素及びシステムを具備してもよいことを理解すべきである。例えば、石炭が高度石炭処理段104で処理される前に石炭準備段102において、石炭は分離、破砕、粉砕、分粒などの処理を受けてもよい。同様に、高度石炭処理段104は、本明細書において説明される脱水システム及び脱水処理、並びに灰除去のための石炭浮遊選鉱装置、遠心分離機及び石炭を乾燥させるための乾燥機などの任意の構成要素を具備する。その後、クリーン石炭は石炭ガスタービン106へ搬送され、そこで燃焼される。燃焼排気ガスが大気中へ放出される前に、排気ガスは放出物制御段110において処理されてもよい。放出物制御段110は、放出排ガスから石炭燃焼の副産物を除去するのに適する任意の構成要素を含んでもよい。例えば、放出物制御段110は、窒素酸化物減少装置、硫黄酸化物減少装置、粒状物質除去装置などを含んでもよい。更に、石炭タービン発電装置100は、石炭ガスタービン106と放出物制御段110との間に配設されたエネルギー回収段108を具備してもよい。エネルギー回収段108は、タービン排気中に存在するエネルギーの一部を捕捉するように構成されてもよい。例えば、エネルギー回収段108は、タービン排気熱を利用して蒸気を発生する熱回収用蒸気発生装置(HRSG)を具備してもよい。HRSGは、更に電力を発生するための蒸気タービン及び再利用のために水を捕捉する復水器に動作可能に結合されてもよい。
【0036】
次に図4を参照すると、高度石炭処理段104の更に詳細な図が示されている。特定の本実施形態において、高度石炭処理段104は、浸出剤としてフッ化水素を使用する浸出剤石炭処理システム120を含む。フッ化物石炭処理システム120は、脱水処理段126と動作可能に連係するフッ化水素石炭処理段122を具備する。フッ化水素処理段と脱水処理段との間に任意に配設される濾過段124が示される。先に述べた通り、石炭中の鉱物は炭化水素の燃焼を妨げ、灰の除去から大気中の汚染物質、例えば主に黄鉄鉱及び有機物の2つの形態で石炭中に存在する硫黄の酸化物の放出に至るまで種々の問題を引き起こす。浸出剤が石炭から鉱物を除去するのに用いられる。特定の本実施形態において、脱水処理と組み合わせてフッ化水素酸(HF)浸出処理が使用される。他の実施形態において、石炭中の鉱物を除去し且つクリーン石炭又はウルトラクリーン石炭を製造するのに適する任意の浸出剤が使用されてもよい。
【0037】
当該技術において周知の条件の下で鉱物を除去するために、石炭のHF浸出処理が実行される。例示的な実施形態において、HF浸出は約10℃から初期沸騰に至るまで、特に約10℃〜約40℃の温度で、約1/6〜約8時間、特に約2〜約5時間の時間にわたり、約5wt%〜約70wt%、特に約15wt%〜約30wt%の濃度のHFによって実行されてもよい。HF浸出は、石炭と並行する流れの中で実行されてもよいし、あるいは逆行流の中で実行されてもよい。
【0038】
処理後の廃水流れは、浸出された鉱物、フッ化水素酸、水及び処理過程で発生した他の汚染物質を含む。廃水流れの中に存在するすべての固体粒子を除去するために、廃水流れを濾過過程(124)に通してもよい。濾過装置は、カートリッジ型フィルタ、ラインフィルタ、袋濾過器、砂濾過器、多重媒体濾過器、限外濾過器、精密濾過器などから選択された1つ以上のフィルタを含んでもよい。濾過装置から出た廃水が例えば約3比濁計濁度単位(NTU)より低い濁度を有するように、濾過装置は廃水流れの中の固体を除去してもよい。廃水中の固体を減少することにより、固体による目詰まりが防止されるので逆浸透膜の寿命を延ばすことができる。一実施形態において、フィルタは、水の中に存在する有機化合物を除去するように作用する活性炭又は粒状活性炭を含む。有機化合物が除去されないと、有機化合物は逆浸透膜の面を覆い、それにより逆浸透膜の寿命が短くなってしまう。逆浸透膜の有効性を低下するおそれがある菌類及びカビなどの生物学的に活性の成分から炭素処理により逆浸透膜を保護してもよい。
【0039】
フッ化水素酸処理及び任意に実行される濾過の後、廃水は、少なくとも1つの膜を含む脱水段126において逆浸透により処理される。先に説明したように、膜を通過する水は逆浸透透過物である。給水は逆浸透ユニットを通過するたびに濃縮されるので、給水の浸透圧は上昇する。透過物中の汚染物質の濃度は減少し、従って、透過物を発電装置の種々の段で再利用(任意に更に洗浄した後に)してもよい。汚染物質を高い濃度で含む濃縮物は水から分離されているので、この時点で濃縮物を廃棄してもよい。いくつかの実施形態において、浸出剤を再生することが可能であってもよい。例えば、熱加水分解及び硫酸化によってHF酸の再生が実行されてもよい。
【0040】
石炭のフッ化物処理による廃水はpHが低く、極めて腐食性が高い性質であり且つ廃水の総溶解固体の量が多いにも関わらず、本明細書において説明される逆浸透方法はそのような廃水にも適用できるという利点がある。この方法により廃水から十分な量の水が除去されるので、発電装置のCC効率は、清浄石炭タービンの電力を経済的にも環境面でも実用可能なレベルまで改善される。
【0041】
本明細書において使用される用語は、特定の実施形態を説明する目的でのみ使用され、本発明を限定することを意図しない。本明細書において開示される範囲は記載される数値を含み且つ組み合わせ自在である(例えば、「約25wt%まで、特に約5wt%〜約20wt%まで」の範囲は、「約5wt%〜約25wt%」の範囲の終点及びすべての中間値を含むなど)。「組み合わせ」は調合物、混合物、合金、反応生成物などを含む。更に、本明細書における用語「第1の」、「第2の」などは順序、量又は重要度を示すのではなく、1つの要素を別の要素と区別するために使用されており、本明細書における単数形は量の限界を示すのではなく、そこに挙げられている項目が少なくとも1つ存在することを示す。量と関連して使用される修飾語「約」は、そこに挙げられている値を含み且つ文脈上指示される意味を有する(例えば、特定の量の測定と関連する誤差の程度を含む)。本明細書において使用される複数形は、関連する用語で示される要素が単数及び複数の双方で存在することを意味し、それによりその用語で示される要素を1つ以上含むことを意味する(例えば着色剤(colorant(s)は1つ以上の着色剤を含む)。本明細書を通して「一実施形態」、「別の実施形態」、「ある実施形態」などという場合、その実施形態と関連して説明される特定の要素(例えば特徴、構造及び/又は特性)が本明細書において説明される少なくとも1つの実施形態に含まれており且つ他の実施形態に含まれてもよいし、あるいは含まれなくてもよいことを意味する。更に、種々の実施形態において、説明される要素は任意の適切な態様で組み合わされてもよいことを理解すべきである。
【0042】
特に定義されない限り、本明細書において使用されるすべての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、本発明の実施形態が属する技術分野の当業者により共通して理解されているのと同一の意味を有する。更に、一般に使用されている辞書において定義される用語などの用語は、関連する技術及び本明細書の開示に関連するそれらの用語の意味と矛盾しない意味を有するものと解釈されるべきであり、且つ明示して定義されない限り、理想化された意味又は過剰に形式的な意味では解釈されないことが理解されるであろう。
【0043】
限られた数の実施形態のみに関連して本発明を詳細に説明したが、開示されたそのような実施形態に本発明が限定されないことは容易に理解されるはずである。本明細書には説明されていないが、本発明の趣旨に相応する任意の数の変形、変更、代替又は同等の構成を取り入れるために本発明は修正されてもよい。更に、本発明の種々の実施形態を説明したが、本発明の態様は説明された実施形態のうち一部のみを含んでもよいことを理解すべきである。従って、本発明は以上の説明により限定されず、添付の特許請求の範囲の範囲によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0044】
100 石炭タービン発電装置
104 高度石炭処理
106 石炭ガスタービン
120 浸出剤石炭処理システム
126 脱水システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭を処理する方法において、
前記石炭から鉱物を除去するように調製された浸出剤と前記石炭を接触させることと;
水及びある濃度の汚染物質を含む廃水流れを形成することと;
加圧下で逆浸透膜の第1の面と前記廃水流れを接触させることとから成り、前記逆浸透膜を透過した前記汚染物質を低濃度で含む透過物流れは、前記逆浸透膜の第2の面から流出し、且つ前記汚染物質を更に高い濃度で含む濃縮物流れは、前記逆浸透膜の前記第1の面に保持される方法。
【請求項2】
前記廃水流れの汚染物質濃度は、約10,000mg/Lから約60,000mg/Lの総溶解固体濃度を有する請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記廃水流れは約0から約4のpHを有する請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記透過物流れは、約0.1mg/Lから約10,000mg/Lの総溶解固体濃度を有する請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記濃縮物流れは、約8,000mg/Lから約500,000mg/Lの総溶解固体濃度を有する請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記透過物流れは約4から約7のpHを有する請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記濃縮物流れは約0から約3のpHを有する請求項1記載の方法。
【請求項8】
ウルトラクリーン石炭を製造するように構成された高度石炭処理段(104)を具備し、前記高度石炭処理段(104)は、
石炭から鉱物を除去し且つ廃水流れを形成するように構成された浸出剤処理システム(120)と;
前記浸出剤処理システムと流体連通し且つ前記廃水流れにおける汚染物質の濃度を低下するように構成された脱水システム(126)とを具備し、前記脱水システムは、前記廃水流れと流体連通する逆浸透膜を具備する石炭処理システム(100)。
【請求項9】
前記逆浸透膜は、前記廃水流れの前記汚染物質濃度と比較して汚染物質の濃度が低い透過物流れ及び汚染物質の濃度が高い濃縮物流れを生成するように構成される請求項8記載のシステム(100)。
【請求項10】
前記高度石炭処理段(104)と動作可能に連係し、前記ウルトラクリーン石炭を燃焼して電力を発生するように構成された石炭ガスタービンシステム(106)を更に具備する請求項8記載のシステム(100)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−202871(P2010−202871A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−34186(P2010−34186)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】