説明

石英ガラス内に存在する内容物分析の前処理方法及びこれに用いる装置

【課題】内容物を観察することなく、内容物の面出し及び構成元素の把握が確実にできる石英ガラス内に存在する内容物分析の前処理方法を提供する。
【解決手段】本石英ガラス内に存在する内容物分析の前処理方法は、石英ガラス内に存在する内容物分析に先行して、レーザ光により内容物の3次元座標を特定し、その座標に基づいて内容物の端部から100μm以上離れた位置で石英ガラスを切断し、内容物が分析面となるように切断面を鏡面研磨して、内容物を研磨面に露出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は石英ガラス内に存在する内容物分析の前処理方法及びこれに用いる前処理装置に係り、特にフォトマスク材を始めとした石英ガラスの光学特性に影響を及ぼす内容の分析の際、確実に内容物の断面を露出させるための石英ガラス内に存在する内容物分析の前処理方法及びこれに用いる前処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
透過する光線が影響を受けないようにするため、レンズ材等の光学材料や半導体回路製造用のフォトマスク材に用いられる石英ガラスでは、この石英ガラス中の内容物は光学特性に影響を及ぼすため、発生させてはならないものであり、その発生の予防のためには、内容物の構成元素の把握が不可欠であり、通常は内容物の断面を露出させたあと、EPMA法等により分析を実施している。
【0003】
しかしながら、内容物は図8に示すように、大きさが数100μmの透明の円盤状をなし、SiOを主成分に他の元素が数%混じり込んだものであり、肉眼や光学顕微鏡では把握しにくく、内容物研磨の過程で見失うことが多々あり、確実に内容物の断面を露出させた保証がない状態で分析せざるを得ない場合があるという問題があった。
【0004】
なお、レーザを照射して異物を検出する方法は特許文献1に提案されているが、この方法は反射方式であり、欠陥からの反射散乱光以外の光を防止するために遮蔽板を設けるため、検出感度が著しく低下することが予想される。
【特許文献1】特開平6−281587号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上述した事情を考慮してなされたもので、肉眼や光学顕微鏡で内容物を観察することなく、内容物の面出し及び構成元素の把握が確実にできる石英ガラス内に存在する内容物分析の前処理方法を提供することを目的とする。
【0006】
また、本発明は上述した事情を考慮してなされたもので、肉眼や光学顕微鏡で内容物を観察することなく、内容物の面出し及び構成元素の把握が確実にできる石英ガラス内に存在する内容物分析の前処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するため、本発明に係る石英ガラス内に存在する内容物分析の前処理方法は、石英ガラス内に存在する内容物分析に先行して、レーザ光により内容物の3次元座標を特定し、その座標に基づいて内容物に接触しない近傍位置で石英ガラスを切断し、その後、内容物断面が分析面となるように切断面を鏡面研磨して、内容物断面を研磨面に露出させることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る石英ガラスに存在する内容物の分析の前処理装置は、石英ガラス試料が載置され90°回動及び昇降可能な試料ステージ及び前記石英ガラス試料に照射されたレーザ光から試料の3次元座標を特定する位置特定部と、前記座標に基づいて内容物の端部に接触しない近傍位置で石英ガラスを切断する切断部と、内容物が分析面となるように内容物の切断面を研磨する研磨部を有することを特徴とする。
【0009】
好適には、前記座標特定部は、石英ガラス試料中の内容物の有無を確認する内容物の有無確認手段を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る石英ガラス内に存在する内容物分析の前処理方法によれば、肉眼や光学顕微鏡で内容物を観察することなく、内容物の面出し及び構成元素の把握が確実にできる石英ガラス内に存在する内容物分析の前処理方法を提供することができる。
【0011】
また、本発明に係る石英ガラス内に存在する内容物分析の前処理装置によれば、肉眼や光学顕微鏡で内容物を観察することなく、内容物の面出し及び構成元素の把握が確実にできる石英ガラス内に存在する内容物分析の前処理装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係る石英ガラス内に存在する内容物分析の前処理装置について添付図面を参照して説明する。
【0013】
図1は本実施形態に係る石英ガラス内に存在する内容物分析の前処理装置の概念図である。
【0014】
図1に示すように、本実施形態の石英ガラス内に存在する内容物分析の前処理装置1は、石英ガラス内に存在する内容物の3次元座標を特定する位置特定部2と、内容物の端部から所定距離離れた位置で石英ガラスを切断する切断部3と、内容物が分析面となるように内容物の切断面を研磨する研磨部4を備えている。
【0015】
位置特定部2は、スリット21aを介して、試料(石英ガラス)Sにレーザ光を照射するレーザ光源21と、試料Sが載置される位置決め機構部22と、試料Sを透過したレーザ光を受光する検出器23を備えている。
【0016】
図2に示すように、レーザ光源21は、例えば波長514nmレーザを用いる。また、位置決め機構部22は、試料Sが載置される試料ステージ22aと、この試料ステージ22aを90°回動及び昇降させるいずれも図示しないモータとボールネジから回動昇降機構22bを備えている。
【0017】
検出器23は、特に限定されるものではないが、二次元検出器であることが好ましい。二次元検出器としては、CCDが最適である。
【0018】
また、検出器23にはAD変換回路23a、画像処理装置23bが接続され、さらに、本装置全体を制御し、ROM、RAM、CPUを備えた制御装置5に接続されている。
【0019】
切断部3は試料Sを切断する刃部3aを備え、この刃部3aは切断位置を決定する位置決め機能と送り機能を備えた位置決め送り機構3bに取付けられている。
【0020】
さらに、研磨部4は、試料Sを研磨する回転研磨板4aと、この回転研磨板4aを送り回転させる送り回転機構4bを備えている。
【0021】
位置決め送り機構3b及び送り回転機構4bも、制御装置5に接続され、制御されるようになっている。
【0022】
次に本発明に係る石英ガラス内に存在する内容物分析の前処理方法について、図3に示すフローに沿って説明する。
【0023】
最初に直方体形状に切り出された試料S中の内容物の有無を確認する(S1)。
【0024】
図2に示すように、この有無確認は、試料Sを試料ステージ22aに載置し、レーザ光源21から試料Sにレーザ光を照射して、試料Sを透過するレーザ光を検出器23で受け、この透過光情報をAD変換回路23a、画像処理装置23b及び制御装置5に送信し、光透過度の違いによって、内容物の有無を検出感度よく判断する(S2)。
【0025】
このように、レーザ光源21、検出器23、AD変換回路23a、画像処理装置23b及び制御装置5が、本発明における内容物の有無確認手段として機能する。
【0026】
なお、目視によって明らかに試料中の内容物が存在することが確認できる場合には、この内容物の有無の確認は省略し、内容物の3次元座標の特定を行う。
【0027】
次に試料中の内容物が存在する場合には、内容物の位置の特定すなわち3次元(X、Y、Z)座標の特定を行う(S3)。
【0028】
図4〜図6に示すように、試料Sの長手方向の軸例えばX軸がレーザ光と直交するように試料ステージ22aを回動させ、X軸と水平に直交する長手方向の軸例えばY軸とし、この交点を通る垂直方向の軸例えばZ軸とし、この3軸の交点を基準点(X、Y、Z)とする。
【0029】
基準点(X、Y、Z)設定後、図4の状態にある試料Sにレーザ光を照射し、内容物iの図中右側先端位置の測定を行い、その位置情報(X)とし、さらに、試料Sの右側先端位置の測定を行い、その位置情報(X)として制御装置5に記憶する。
【0030】
しかる後、図5に示すように、試料ステージ22aを90°回動させ、同様にして、内容物iの図中左側先端位置の測定を行い、その位置情報(Y)を制御装置5に記憶する。
【0031】
さらに、図6に示すように、試料ステージ22aを上昇させ、内容物iの図中下側先端位置の測定を行い、その位置情報(Z)を制御装置5に記憶する。
【0032】
このようにして、内容物iの位置(X、Y、Z)は特定され、また、図7に示すように、内容物iの右側先端から試料Sの右側先端までの距離L(X−X)が測定される。
【0033】
内容物の位置の特定すなわち3次元座標の特定を行う。なお、内容物が確認されない場合は、作業は終了する(S6)。
【0034】
試料Sの切断を行う(S4)。
【0035】
切断位置は、内容物iの先端位置(X)から100μm程度離れた位置である。すなわち、試料Sの端部から(L−100μm程度)の位置で切断する。
【0036】
内容物iの先端位置(X)から離し過ぎると、次研磨作業におきて研磨量が増えて好ましくなく、また、近すぎると切断時内容物を損傷することがあり、また、損傷しなくても研磨時に内容物が削れてしまう恐れがある。内容物の端部から100μm±10μmの範囲で切断することが最も好ましい。
【0037】
試料Sの研磨を行う(S5)。
【0038】
切断面を100μm以上研磨して、内容物iの露出面、例えば内容物の中心が次作業での内容物分析時の分析面になるようにする。
【0039】
これにより、肉眼や光学顕微鏡で内容物を観察することなく、内容物の面出を行なうことができる。
【実施例】
【0040】
実施例1: 石英ガラス中の内容物の光学顕微鏡写真を図8(a)〜(d)に示す。
実施例2: 本発明に係る石英ガラス内に存在する内容物の分析の前処理装置を用いて内容物の有無を確認した。図9(a)は無、図10(b)は存在する状態を示す。内容物の有無により散乱光断面が変化していることがわかる。
実施例3: 本発明に係る前処理装置を用いて内容物を露出させ、EPMA法により元素分析した結果を図10に示す。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係る石英ガラス内に存在する内容物の分析の前処理装置の概念図。
【図2】本発明に係る石英ガラス内に存在する内容物の分析の前処理装置に用いられる位置特定部の概念図。
【図3】本発明に係る石英ガラス内に存在する内容物の分析の前処理方法のフロー図。
【図4】本発明に係る石英ガラス内に存在する内容物の分析の前処理装置に用いられたX座標特定方法の概念図。
【図5】本発明に係る石英ガラス内に存在する内容物の分析の前処理装置に用いられたY座標特定方法の概念図。
【図6】本発明に係る石英ガラス内に存在する内容物の分析の前処理装置に用いられたZ座標特定方法の概念図。
【図7】本発明に係る石英ガラス内に存在する内容物の分析の前処理方法における切断位置決定方法の概念図。
【図8】(a)〜(d)は一般的な石英ガラス中の内容物の光学顕微鏡写真図。
【図9】本発明に係る石英ガラス内に存在する内容物の分析の前処理方法よる内容物有無試験の結果図。
【図10】本発明に係る石英ガラス内に存在する内容物の分析の前処理方法よる内容物有分析試験の結果図。
【符号の説明】
【0042】
1 石英ガラス内容物分析の前処理装置
2 位置特定部
21 レーザ光源
22 位置決め機構部
22a 試料ステージ
22b 回動昇降機構
23 検出器
3 切断部
3a 刃部
4 研磨部
4a 回転研磨板
5 制御装置
S 試料(石英ガラス)
i 内容物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石英ガラス内に存在する内容物分析に先行して、レーザ光により内容物の3次元座標を特定し、その座標に基づいて内容物に接触しない近傍位置で石英ガラスを切断し、その後、内容物断面が分析面となるように切断面を鏡面研磨して、内容物断面を研磨面に露出させることを特徴とする石英ガラス内に存在する内容物分析の前処理方法。
【請求項2】
石英ガラス試料が載置され90°回動及び昇降可能な試料ステージ及び前記石英ガラス試料に照射されたレーザ光から試料の3次元座標を特定する位置特定部と、
前記座標に基づいて内容物に接触しない近傍位置で石英ガラスを切断する切断部と、
内容物が分析面となるように内容物の切断面を研磨する研磨部を有することを特徴とする石英ガラス内に存在する内容物分析の前処理装置。
【請求項3】
前記座標特定部は、石英ガラス試料中の内容物の有無を確認する内容物の有無確認手段を備えたことを特徴とする請求項2に記載の石英ガラス内に存在する内容物分析の前処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate