説明

砂糖様味質をもつ新規甘味料、その製造法および用途

【課題】 異性化糖液(ブドウ糖、フラクトース混合液糖)の味質を改善し、合わせて肥満等の生活習慣病を予防できる新規甘味料並びに当該新規甘味料を食品、飲料素材とする利用法の開発。
【解決手段】異性化糖液(D-ブドウ糖、D-フラクトース混合液糖)に、D−タガトースを含有させることにより異性化糖の味質を改善し、合わせて肥満の原因とならない新規甘味料(生成物)並びに製造法並びに使用用途を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、果糖ブドウ糖液糖(異性化糖)の構成成分であるDグルコースおよびDフラクトースとD-タガトースの混合物を含む甘味料、その使用用途、特に食品素材、医療品、化粧品に応用する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
澱粉を糖化して糖化液とし、これをグルコースイソメラーゼで処理して製造される異性化糖は、生産コストの安さから、ソフトドリンクや他の飲料に甘味料として広く使用され、アメリカでは800万トン以上消費されている。代表的な方法では澱粉を酵素で加水分解してデキストリンとし、これを更に別の酵素で加水分解してブドウ糖溶液、すなわち糖化液とする。この糖化液中にはブドウ糖の他にオリゴ糖が若干含まれている。グルコースイソメラーゼによるブドウ糖の果糖への異性化反応は平衡反応であり、異性化糖のD-グルコースとD-フラクトースとの比率は通常58:42程度である。さらに、甘味不足を解消するために、精製D-フラクトースを添加する場合があるが、この場合最終のD-グルコースとD-フラクトースとの比率は通常45:55程度である。上記の通り、異性化糖は、経済的メリットにより広く使われているが、日本、アメリカなどをはじめとする先進国において、高血糖や過体重(肥満)(「メタボリックシンドローム」)などの原因として疑われている(非特許文献1)。
【0003】
また、異性化糖の甘味度や甘味質は、広く一般に使用されている砂糖に比べ、差が見られ、DグルコースとD-フラクトースの比を変えることになどにより、砂糖の甘味度、甘味質に近づける工夫がされているが、満足のいくものは未だ得られていない。
【0004】
一方、D-タガトースは、希少糖の一種であるが、D-ガラクトースをアルカリ処理することにより生産され、血糖値の上昇を防ぐことなどが知られている。
特許文献1および2には、D-タガトースと非栄養性甘味料及びエリスリトールを含めることにより甘味を持たせることによるダイエット飲料や食品の味質を改善することが記載されている。また、非栄養性甘味料としてアスパルテーム、アセスルファムK等の高甘味度甘味料が開示されている。
しかし、非栄養性甘味料であるアスパルテーム、アセスルファムK等とD-タガトースだけでは、時として味覚が軽すぎる(ボディ感が不足する)ことになる欠点があった。
【0005】
【特許文献1】特表2004−520072号公報
【特許文献2】特開2008−148号公報
【非特許文献1】Am. J. Clin. Nutr.2004, 79, 774-9.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、広く食品業界で甘味料として使われている果糖ブドウ糖液糖の第一の問題点、すなわち、甘味度、甘味質ともに砂糖とは異なっていることを改善して、従来の果糖ブドウ糖液糖を砂糖の甘味度および味質に非常に近い甘味料として提供することを目的とする。
また、本発明は、広く食品業界で甘味料として使われている果糖ブドウ糖液糖の第二の問題点、すなわち、肥満などの生活習慣病の原因となることを改善して、味質を改善することで得たD-タガトースを含む甘味料として提供することを目的とする。
さらにまた、本発明は、D-タガトースを含む甘味料を用いた医薬品もしくは医薬部外品、化粧品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく、鋭意研究を重ねてきた。その中で、ある一定のD-グルコース、D-フラクトース、D-タガトース比からなる、新規甘味料が、甘味度、甘味質が砂糖に近く、その上肥満等の生活習慣病の予防効果を持つことを発見し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の(1)ないし(3)に記載の甘味料を要旨としている。
(1)フラクトース、グルコースおよびタガトースを必須成分とする砂糖の甘味度および味質を有する甘味料。
(2)D-フラクトース30〜80重量部に対して、D-グルコースおよびD-タガトースの合計が70〜20重量部である(1)に記載の甘味料。
(3)D-グルコースおよびD-タガトースの合計を100重量部とした場合、D-タガトースが10重量部以上含まれる(2)に記載の甘味料。
【0009】
また、本発明は、以下の(4)および(5)に記載の飲食物を要旨としている。
(4)(1)ないし(3)のいずれかに記載の甘味料を使用してなる飲食物。
(5)炭水化物100重量部に対して、5重量部以上のD-タガトースを含む、(4)に記載の飲食品。
【0010】
さらにまた、本発明は、以下の(6)および(7)に記載の医薬品もしくは医薬部外品、口腔用組成物、化粧品を要旨としている。
(6)(1)ないし(3)のいずれかに記載の甘味料を使用してなる医薬品もしくは医薬部外品、口腔用組成物、化粧品。
(7)炭水化物100重量部に対して、5重量部以上のD-タガトースを含む、(6)に記載の医薬品もしくは医薬部外品、口腔用組成物、化粧品。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、広く食品業界で甘味料として使われている果糖ブドウ糖液糖の第一の問題点、すなわち、甘味度、甘味質ともに砂糖とは異なっていることの改善として、従来の果糖ブドウ糖液糖にD-タガトースを併用することにより、砂糖の甘味度および味質に非常に近い甘味料を提供することができる。
また、本発明により、広く食品業界で甘味料として使われている果糖ブドウ糖液糖の第二の問題点、すなわち、肥満などの生活習慣病の原因となることの改善として、D-タガトースを含む甘味料を提供することができる。
さらにまた、本発明は、D-タガトースを含む甘味料を用いた医薬品もしくは医薬部外品、化粧品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の甘味料の具体的態様は、D-フラクトースの割合が20〜80重量部、好ましくは30〜80重量部、D-グルコースとD-タガトースの合計の割合が80〜20重量部、好ましくは70〜20重量部で、かつ、D-フラクトース、D-グルコースおよびD-タガトースの合計を100重量部とした場合、D-タガトースが2重量部以上、好ましくは10重量部以上含まれる、砂糖の甘味度と味質に近く肥満などの生活習慣病を予防する新規甘味料である。
【0013】
本発明の新規甘味料の概略を説明すると、その成分であるD-フラクトース、D-グルコース、D-タガトースの混合物であり、各成分を混合して得られる。D-フラクトース、D-グルコースは、天然界で一般に存在する単糖であり、天然界から単離して得られるほか、D-フラクトースは、D-グルコースをグルコースイソメラーゼ処理して得られた果糖ブドウ糖液糖等から分離して得られる。また、D-グルコースは、澱粉を加水分解して製造されている。また、D-タガトースは、天然界では、わずかしか存在しない希少糖の一種で、D-ガラクトースをアルカリ処理することに等により得られる。
【0014】
本発明の新規甘味料において、D-フラクトースと(D-グルコースとD-タガトースの合計)の比は80〜20重量部:20〜80重量部が好ましい。D-フラクトースは、80部以上になると甘みが増す反面ボディー感が低下する。またD-フラクトースが20部以下では、甘み感に物足りなさを感じる傾向にある。また、D-タガトースがD-グルコースおよびD-タガトースの合計を100重量部とした場合、2重量部以上、好ましくは10重量部の比率で砂糖の甘味度および味質を有する甘味料となり、また、全体の3重量部以上の比率で内臓脂肪蓄積予防効果が顕著になり、好ましくは5重量部以上の比率で内臓脂肪蓄積予防効果がより顕著になる。
【0015】
本発明の甘味料の製造方法の詳細を説明する。
本発明の甘味料を、製造するのに際し、果糖ブドウ糖液糖、D-グルコース、または澱粉を出発原料とし、本発明の甘味料を製造することが可能である。
例えば、(1)果糖ブドウ糖液糖を、澱粉または、D-グルコースからつくり、さらに、これにD-タガトースを添加混合してつくる。
(1)分解果糖ブドウ糖液糖液の作成
分解果糖ブドウ糖液糖は、定法に従いとうもろこし、馬鈴薯あるいは甘藷などのデンプンを原料に、固定化したもしくはバッチによるアルファアミラーゼ、グルコアミラーゼ、グルコースイソメラーゼなどの酵素を用い製造する。澱粉原料および用いる酵素の種類は上記に限定されるものではない。また、必要によっては酸分解によるブドウ糖液製造、アルカリを用いた異性化を行っても良い。
【0016】
このようにして得られた新規甘味料は、好みによりアスパルテームやステビアなどの甘味料と併用することもできる。またボディ感の付与などのため、甘味度が低い水溶性食物繊維(ポリデキストロースや難消化性デキストリンなど)を適宜加えても良い。
【0017】
本発明の甘味料において、D-フラクトースの割合が20〜80重量部、好ましくは30〜80重量部、(D-グルコースおよびD-タガトースの合計)の割合が、80〜20重量部、好ましくは70〜20重量部程度であるが、甘味度および甘味質を生かして用いる場合は、その含量は、特に制限されない。目的とする機能の度合い、使用態様、使用量等により適宜調整することができる。
【0018】
本発明の新規甘味料は、D−タガトースを含有するもので、肥満予防効果を有する。
D−タガトースの含有率は、全体の3重量部以上で、ラットによる肥満予防効果が顕著であり、好ましくは5重量部以上でラットによる肥満予防効果がより顕著である。
また、生活習慣病予防ということで、他の有効成分と併用混合して用いることもできる。
【0019】
本発明の甘味料は、食品、保健用食品、患者用食品、食品素材、保健用食品素材、患者
用食品素材、食品添加物、保健用食品添加物、患者用食品添加物、飲料、保健用飲料、患者用飲料、飲料水、保健用飲料水、患者用飲料水、薬剤、製剤原料、飼料、患畜および/または患獣用飼料になど甘味を必要とするものすべてに使用することができる。
【0020】
本発明の甘味料を食品に利用する場合、そのままの形態、水溶液、オイルなどに懸濁した形態、乳液状形態食、または食品業界で一般的に使用される担体を添加した形態などのものを調製してもよい。飲料の形態は、非アルコール飲料またはアルコール飲料である。非アルコール飲料としては、例えば、炭酸系飲料、果汁飲料、ネクター飲料などの非炭酸系飲料、清涼飲料、スポーツ飲料、茶、コーヒー、ココアなど、また、アルコール飲料の形態では薬用酒などの一般食品の形態を挙げることができる。
本発明の甘味料(組成物)の、前記糖質代謝異常および/または脂質代謝異常改善を目的とした食品素材あるいは食品添加物としての使用形態としては、錠剤、カプセル剤、飲料などに溶解させる粉末あるいは顆粒などの固形剤、ゼリーなどの半固形体、飲料水などの液体、希釈して用いる高濃度溶液などがある。
さらに、本発明の甘味料(組成物)を適宜食品に添加して糖質代謝異常および/または脂質代謝異常改善などを目的とした保健食または病人食とすることができる。任意的成分として、通常食品に添加されるビタミン類、炭水化物、色素、香料など適宜配合することができる。食品は液状または固形の任意の形態で食することができる。ゼラチンなどで外包してカプセル化した軟カプセル剤として食することができる。カプセルは、例えば、原料ゼラチンに水を加えて溶解し、これに可塑剤(グリセリン、D− ソルビトールなど)を加えることにより調製したゼラチン皮膜でつくられる。
【0021】
本発明の甘味料は砂糖と同様な用途で用いることができる。また、調理やお茶、コーヒーなどにも使用できる。
【0022】
飲食物としては、具体的には以下のものを例示することができる。洋菓子類( プリン、ゼリー、グミキャンディー、キャンディー、ドロップ、キャラメル、チューインガム、チョコレート、ペストリー、バタークリーム、カスタードグリーム、シュークリーム、ホットケーキ、パン、ポテトチップス、フライドポテト、ポップコーン、ビスケット、クラッカー、パイ、スポンジケーキ、カステラ、ワッフル、ケーキ、ドーナツ、ビスケット、クッキー、せんべい、おかき、おこし、まんじゅう、あめなど)、乾燥麺製品( マカロニ、パスタ)、卵製品( マヨネーズ、生クリーム)、飲料( 機能性飲料、乳酸飲料、乳菌飲料、濃厚乳性飲料、果汁飲料、無果汁飲料、果肉飲料、透明炭酸飲料、果汁入り炭酸飲料、果実着色炭酸飲料)、嗜好品(緑茶、紅茶、インスタントコーヒー、ココア、缶入りコーヒードリンク) 、乳製品( アイスクリーム、ヨーグルト、コーヒー用ミルク、バター、バターソース、チーズ、発酵乳、加工乳)、ペースト類( マーマレード、ジャムフラワーペースト、ピーナッツペースト、フルーツペースト、果実のシロップ漬け)、畜肉製品( ハム、ソーセージ、ベーコン、ドライソーセージ、ビーフジャーキー、ラード)、魚介類製品( 魚肉ハム、魚肉ソーセージ、蒲鉾、ちくわ、ハンペン、魚の干物、鰹節、鯖節、煮干し、うに、いかの塩辛、スルメ、魚のみりん干し、貝の干物、鮭などの燻製品)、佃煮類( 小魚、貝類、山菜、茸、昆布)、シチュウー、カレー類( 即席カレー、レトルトカレー、缶詰カレー) 、調味料剤(みそ、粉末みそ、醤油、粉末醤油、もろみ、魚醤、ソース、ケチャップ、オイスターソース、固形ブイヨン、焼き肉のたれ、カレールー、シチューの素、スープの素、だしの素、ペースト、インスタントスープ、ふりかけ、ドレッシング、サラダ油)、揚げ製品( 油揚げ、油揚げ菓子、即席ラーメン)、豆乳、マーガリン、ショートニングなどを挙げることができる。
【0023】
上記飲食物は、本発明の甘味料(組成物)を常法に従って、一般食品の原料と配合することにより、加工製造することができる。上記飲食物への組成物の配合量は食品の形態により異なり特に限定されるものではないが、通常は0 . 1〜 5 0重量% が好ましい。
【0024】
上記飲食物は、機能性食品、栄養補助食品或いは健康食品類としても用いることができる。その形態は、特に限定されるものではなく、例えば、食品の製造例としては、アミノ酸バランスのとれた栄養価の高い乳蛋白質、大豆蛋白質、卵アルブミンなどの蛋白質、これらの分解物、卵白のオリゴペプチド、大豆加水分解物などの他、アミノ酸単体の混合物などを、常法に従って使用することができる。また、ソフトカプセル、タブレットなどの形態で利用することもできる。
【0025】
栄養補助食品或いは機能性食品の例としては、糖類、脂肪、微量元素、ビタミン類、乳化剤、香料などが配合された流動食、半消化態栄養食、成分栄養食、ドリンク剤、カプセル剤、経腸栄養剤などの加工形態を挙げることができる。上記各種食品には、例えば、スポーツドリンク、栄養ドリンクなどの飲食物は、栄養バランス、風味を良くするために、更にアミノ酸、ビタミン類、ミネラル類などの栄養的添加物や甘味料、香辛料、香料、色素などを配合することもできる。
【0026】
本発明の甘味料(組成物)は、家畜、家禽、ペット類の飼料用に応用することができる。例えば、ドライドッグフード、ドライキャットフード、ウェットドッグフード、ウェットキャットフード、セミモイストドックフード、養鶏用飼料、牛、豚などの家畜用飼料に配合することができる。飼料自体は、常法に従って調製することができる。
また、本発明の甘味料(組成物)を応用した治療剤および予防剤は、ヒト以外の動物、例えば、牛、馬、豚、羊などの家畜用哺乳類、鶏、ウズラ、ダチョウなどの家禽類、は虫類、鳥類或いは小型哺乳類などのペット類、養殖魚類などにも用いることができる。
【0027】
本発明の甘味料の、甘味を生かしつつ、生理作用の発現を意図した糖質代謝異常および/または脂質代謝異常改善効果、肥満改善効果を目的とした薬剤は、これらを単独で用いるほか、一般的賦形剤、安定剤、保存剤、結合剤、崩壊剤などの適当な添加剤を配合し、液剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、錠剤、カプセル剤、丸剤、軟膏剤、貼付剤、散布剤、スプレー剤または注射剤等の適当な剤型を選んで製剤し、経口的、経鼻的、経皮的あるいは経静脈的に投与することができる。
【0028】
経口投与、経鼻投与、経皮投与または経静脈投与に適した医薬用の有機又は無機の固体、半固体又は液体の担体、溶解剤もしくは希釈剤を、本発明の組成物を薬剤として調製するために用いることができる。水、ゼラチン、乳糖、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、タルク、動・植物油、ベンジルアルコール、ガム、ポリアルキレングリコール、石油樹脂、ヤシ油、ラノリン、又は医薬に用いられる他のキャリアー(担体)は全て、本発明の組成物を含む薬剤の担体として用いることができる。また、安定剤、湿潤剤、乳化剤や、浸透圧を変えたり、配合剤の適切なp Hを維持するための塩類を補助薬剤として適宜用いることができる。
【0029】
また、化粧品等の製剤化に、可溶性フィルムが使用されるようになってきている。例えば、香料等を保持させたフレーバーフィルム等として気分転換、口臭予防等を目的として、可食性の可溶性フィルムが使用されている。また、保湿剤等を保持させた化粧品用フィルムを、パックとして使用したり、水に溶解して乳液として使用するといったアイディアも出されている。更に、抗炎症剤等を保持させて湿布薬として使用したりすることも検討されている。食品、医薬品等の包装材として、又食品、医薬品等の有効成分を保持する担体として、優れた溶解性とフィルム特性を示し、これらの用途に好適に用いることができる可溶性フィルムが提案されており(特開2007-091696号公報)、このようにして、本発明の砂糖の甘味度および味質を有する甘味料を医薬品もしくは医薬部外品、化粧品に適応することができる。
【0030】
本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は実施例によってなんら限定されるものではない。
【実施例1】
【0031】
〈D−フラクトースおよび、D-グルコースおよび、D−タガトースを含有する糖液の調製〉
デンプンに、水およびαアミラーゼを加え、95℃前後で分解した。液化終了後55℃まで冷却し、グルコアミラーゼを加えさらに小さく分解しブドウ糖液を生成させた。このブドウ糖液糖をグルコースイソメラーゼを固定化したカラムに60℃にて流し込み、異性化糖を生成させた。
これに所定量の市販D−タガトースを表1に記載の割合で添加混合溶解し、本発明の甘味料(D〜H、J〜L)および比較例(A〜C、I、M)を製造した。
【0032】
[試験例1]
〈D−フラクトースおよびD-グルコースおよびD−タガトースを含有する糖液の官能検査〉
パネラー9名を用い、上記で製造した本発明の甘味料、及び比較例の10%(w/v)糖液を調整し、味質試験を行った。
評価は、砂糖10%(w/v)糖液と同じ甘味度を示す糖液および、砂糖と比べ「軽い」、「変わらない」、「重い」の3種類から甘味質を選択させた。選択した人数を求め、官能試験結果を表1に示した。パネラーの構成は、20歳代〜30歳代の味覚に精通した男女9名であった。
【0033】
【表1】

【0034】
異性化糖における甘味度および甘味質は、D-フラクトースとD-グルコースの含有比率により異なる。異性化糖(フラクトース55重量部:グルコース45重量部;I)用いて官能検査を行うと、砂糖に比較し軽い甘さを感じるというコメントが多く認められた。上記結果においても、甘味度3名および甘味質3名のみで、砂糖の味質、甘味度から離れていることが考えられる。一方、官能試験結果から、砂糖の甘味度および/または味質に近い組み合わせは、フラクトース30重量部から80重量部の範囲においてD-グルコースおよびD-タガトースを(70重量部から20重量部)の範囲で含む混合糖であることが明らかとなった。さらに、Hの結果から、グルコース:タガトースの比が、9:1程度で砂糖に近い甘味度および甘味質が得られた。このことから、全量を100重量としたグルコースとの比において、タガトースが約10重量部以上で好ましい甘味度および甘味質が得られることが明らかとなった。一般的に単一成分の甘味料に比較して、混合糖は甘味のピーク幅が広がり丸い甘味特性を示すことが知られている。
また、図1の甘味曲線に示されるように、D-タガトースが加わることによって、甘味曲線は異性化糖(フラクトース+グルコース)の曲線から混合糖曲線(フラクトース+グルコース+タガトース)のように変化し、砂糖の味質に近づいたことがわかる。
これらのことから、D-フラクトースは、きれの良い清涼感のある味質を呈するのに対し、D-タガトースは、砂糖に比較的近い特性があると考えられる。
【実施例2】
【0035】
〈D−フラクトースおよび、D-グルコース、D−タガトースを含有する酸性飲料の製造〉
表2に示す割合にて本発明の新規甘味料およびショ糖を用いた飲料を作成した。
【0036】
【表2】

【0037】
その結果、得られた飲料は、ほぼ砂糖同様の好ましい甘味度および甘味質を示した。
【0038】
[試験例]
D-タガトースの内臓脂肪蓄積、血清脂質、および血糖値に対する影響に関してラットを用いて調べた。
(実験方法)
実験動物としては、3週齢の雄性Sprague-Dawley ラットを用いた。群としては、D-タガトース群(D-タガトース3重量%)および、D-タガトースをα‐コーンスターチに置き換えたコントロール群とした。実験飼料(表3)と水を自由摂取とし4週間飼育した。飼育終了後、解剖を行った。解剖時に採血および、内臓および体脂肪を採取しその重量を測定した。測定値は平均値および標準誤差で表わし、有意差検定は対応のないt検定を用いて行った。
【表3】

【0039】
(結果)
体重および餌の摂取量に関しては、有意な低下は認められなかった(実験中の観察からは、動物の行動にも顕著な変化は認められなかった。)(表4)。脂肪重量に関しては、コントロール群の体脂肪重量と比較して、D-タガトース群が有意な低下が認められた(表5)。このことから、D-タガトースの少量の摂取は、有害な体重減少など副作用を認めることなしに、体脂肪、特に内臓脂肪の減少作用を示すことが明らかとなった。血清脂質および血糖に関しては、タガトース群(D-タガトース3重量%)は、コントロール群と比較し、HDL-C(HDL-コレステロール)値の増加、トリグリセリドの低下および、血糖値の低下傾向が認められた(表6)。
【0040】
【表4】

【0041】
【表5】

【0042】
【表6】

【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明により、食品業界等で広く使われても、肥満やメタボリックシンドローム、生活習慣病の原因とならない新規甘味料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】甘味曲線を示す図面である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラクトース、グルコースおよびタガトースを必須成分とする砂糖の甘味度および味質を有する甘味料。
【請求項2】
D-フラクトース30〜80重量部に対して、D-グルコースおよびD-タガトースの合計が70〜20重量部である請求項1に記載の甘味料。
【請求項3】
D-グルコースおよびD-タガトースの合計を100重量部とした場合、D-タガトースが10重量部以上含まれる請求項2に記載の甘味料。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の甘味料を使用してなる飲食物。
【請求項5】
炭水化物100重量部に対して、5重量部以上のD-タガトースを含む、請求項4に記載の飲食品。
【請求項6】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載甘味料を使用してなる医薬品もしくは医薬部外品、口腔用組成物、化粧品。
【請求項7】
炭水化物100重量部に対して、5重量部以上のD-タガトースを含む、請求項6に記載の医薬品もしくは医薬部外品、口腔用組成物、化粧品。




【図1】
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【公開番号】特開2009−254242(P2009−254242A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−104326(P2008−104326)
【出願日】平成20年4月14日(2008.4.14)
【出願人】(000188227)松谷化学工業株式会社 (102)
【Fターム(参考)】