説明

研削工具

【課題】
グラインダ等の研削工具を用いて切断と研削の両方の作業に対応できる2分割式で、コンパクトな保護カバーを提供すること。
【解決手段】
駆動源であるモータと、前記モータを収容する本体と、前記本体より突出するスピンドルと、前記スピンドルに固定され、円形をした切断刃具と、前記本体に固定され、前記切断刃具の少なくとも一部を覆う第1のカバーと、前記第1のカバーに固定され、前記切断刃具の少なくとも一部を覆う第2のカバーと、前記第2のカバーに固定され、前記切断刃具で研削した切粉を排出可能な排出可能な排出口と、有することを特徴とする研削工具によって、解決することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研削工具に関する。特に、研削の際に用いる保護カバーを有する研削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の研削工具を図8、図9を用いて説明する。
【0003】
図8に示すように、グラインダ等の研削工具での切断及び研削作業において、従来の保護カバーAは、切断刃具の略半分を覆うような構造をしており、切断作業を考慮して設計されていた。しかし、保護カバーAを有する研削工具における研削作業においては、保護カバーの回転軸先端側が完全に開放されているため、発生するコンクリートや石材の粉じんが周囲に飛散して作業場の汚れ等が問題となる場合があった。
【0004】
また、図9に示すように、切断刃具のほぼ全体を覆うような一体式の集じんカバーBも市場には存在するが、研削刃具の外周を全周にわたって覆わなくてはならず、その結果集じんカバーの外径が大きくなり作業性が損なわれてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−023006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した従来の保護カバーAは、切断作業を考慮して設計されているので使用上問題ないが、研削作業においては、保護カバーの回転軸先端側が完全に開放されているため、発生するコンクリートや石材の粉じんが周囲に飛散し、作業者の健康への影響や作業場の汚れ等が問題となる。
【0007】
また、従来の集塵カバーBは、作業をする際、特に壁の近くを際を研削する場合は集じんカバーが邪魔となり作業しにくい。また、切断の作業の際には、切断作業に適した保護カバーAと全体を交換しなくてはならなかった。
【0008】
本発明の目的は、上記従来の欠点を解消し、グラインダ等の研削工具を用いて切断と研削の両方の作業に対応できる2分割式で、コンパクトな保護カバーを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的は、駆動源であるモータと、前記モータを収容する本体と、前記本体より突出するスピンドルと、前記スピンドルに固定され、円形をした切断刃具と、前記本体に固定され、前記切断刃具の少なくとも一部を覆う第1のカバーと、前記第1のカバーに固定され、前記切断刃具の少なくとも一部を覆う第2のカバーと、前記第2のカバーに固定され、前記切断刃具で研削した切粉を排出可能な排出可能な排出口と、有することを特徴とする研削工具によって達成することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の研削工具によれば、切断と研削の両方の作業に対応できるコンパクトな研削工具が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す全体平面図
【図2】本発明の第1の実施形態の分解状態を示す要部正面図
【図3】本発明の第1の実施形態を示す要部底面図
【図4】本発明の第1の実施形態を構成するブラシ等を示す部分断面図
【図5】本発明の第1の実施形態の分解状態を示す要部平面図
【図6】本発明の第1の実施形態を示す要部平面図
【図7】本発明の第1の実施形態の分解状態を示す要部正面図
【図8】従来の研削工具を示す全体平面図
【図9】他の従来の研削工具を示す全体平面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明保護カバーの一実施形態を図1〜図7を用いて説明する。
【0013】
図1に、本発明の研削工具である第1の実施形態を示す全体正面図を示す。
【0014】
研削工具は、ハウジング1を有する。ハウジングは、ギヤハウジング1Aと、モータハウジング1Bを有する。モータハウジングとギヤハウジングはネジで固定されており、モータハウジングの前方にギヤハウジングが配置されている。モータハウジング1Bの後端からは、電源コード1Cが突出している。電源コード1Cには図示しないプラグが設けられており、このプラグはコンセントに接続できるようになっている。また、モータハウジング1Cの後端には、スイッチ1Dが設けられている。
【0015】
モータハウジング1Bの内部には、図示しない電気モータが設けられており、プラグより供給される電力によって、この電気モータは回転可能となっている。
【0016】
ギヤハウジング1Aの内部には、モータの回転軸に固定されるギヤと噛合する傘歯車が設けられている。この傘歯車は、後述するスピンドル6に固定されている。なお、モータの軸と、スピンドルの軸は、約90度で交わるように構成されている。
【0017】
図2に本発明の第1の実施形態の分解状態を示す要部正面図を示す。
【0018】
ギヤハウジング1Aに固定されるように、カバー取付部2が設けられている。カバー取付部2は、ほぼ筒形状をしており、その断面は円筒形状である。
【0019】
カバー取付部2より下方に突出するように、スピンドル6が突出している。このスピンドル6には、ホイルワッシャ7が取付けられ、ホイルワッシャ7の下方に切断刃具11が配置され、切断刃具の下方にホイルナット9が配置されるようになっている。切断刃具は、ホイルワッシャ7とホイルナット9によって、スピンドル6に固定されるようになっている。
【0020】
カバー取付部2の外周に取付けられるように、第1のカバー3と、第2のカバー10とが設けられる。第1のカバー3は、切断刃具11のほぼ後方半分を覆うようになっている。第1のカバー3には、雌ねじ3A1、3A2が左右の2箇所に設けられている。なお、この雌ねじ3A1、3A2は、ナットを溶接によって固定させることによって構成されている。
【0021】
雌ねじ3A1、3A2と対向する位置に、2つの穴部4A1、4A2を有するセットプレート4が設けられている。セットプレートの2つの穴部4A1、4A2に対向する位置に、2つの穴部10A1、10A2を有する第2のカバーが設けられている。
【0022】
ホルト5は、2本設けられている。ボルト5は、穴部10A1を前方から貫通し、穴部4A1を前方から貫通し、雌ねじと螺合するようになっている。
【0023】
図3に示すように、切断刃具11の外周は、後方をほぼブラシ14で覆われるように構成されている。また、切断刃具11の外周の前方側は、一部を覆わないような状態でブラシ20によって覆われている。
【0024】
図4に示すように、第2のカバーには、ブラシ20が固定されている。ブラシは金属によって設けられている。
【0025】
また、第2のカバーには、左右に2箇所の引掛け部16が設けられている。引掛け部は、弾性変形できるようになっており、この弾性力によって、ブラシ部12を保持できるようになっている。ブラシ部12は、ブラシ保持具13と、ブラシ14と、ブラシ保持具に設けられた凹部15と有する。引掛け部16の凸部は、この凹部16と嵌合するようになっている。
【0026】
このブラシ14は、第2のカバーに固定されているが、第1のカバー3の外周を覆うように構成されている。
【0027】
図5に示すように、第2のカバー10の上面からは、筒体18が突出している。筒体18は、カバー10の内部と空間的に接続されている。この筒体18は、ホース20と接続できるようになっている。このホース20は、例えば掃除機19に接続されるようになっている。この集塵機19に接続されれば、第1のカバー3と第2のカバー10で覆われる空間内部で研削刃具11が研削した粉塵や切粉を集塵することができる。このように、集塵機19に接続すれば、図1に示すような、矢印a方向への粉塵等も集塵機で集塵することができる。
【0028】
なお、集塵機19に接続せずとも、フィルタ機能を有する集塵バッグなどに接続するようにしても良い。
【0029】
図6に、第1のカバー3に対して、第2のカバー10を、図1とは異なる位置で固定した状態を示す。
【0030】
図1と図6で異なるのは、ボルト5で貫通するように、セットプレート4と、第2のカバー10の間に、複数のスペーサを設けた点である。
【0031】
図1の状態では、第2のカバー10の前端より切断刃具11が突出していた。しかし、図6の状態では、第2のカバー10に切断刃具11が覆われるように配置されている。このため、図1の状態では、粉塵等が第2のカバー10から多くもれる可能性があったが、図6の状態では、粉塵等がもれる可能性が低くなる。
【0032】
図7に、カバー取付け部2第1のカバー3のみを取付ける状態を示す。この場合には、切断刃具8を用いている。セットプレート4に設けられた2つの穴部4A1、4A2にボルト5を貫通させ、雌ねじに3Aに螺合するようにする。このようにすれば、容易に、第1のカバー3のみをカバー取付け部に固定することができる。
【0033】
上記したような構造の研削工具の動作を説明する。
【0034】
プラグをコンセントに接続した状態で、スイッチ1Dを操作すると、電気モータに給電され、電気モータが回転する。この電気モータの回転は、モータの軸に設けられる歯車を回転させる。歯車の回転は、傘歯車を回転させ、スピンドル6が回転する。スピンドル6が回転すると、スピンドル6に固定される研削刃具11も回転する。研削刃具11をコンクリート等の被削材に押し付けると、研削刃具11によってコンクリートなどが研削される。この研削される際に、コンクリート等の粉塵等が発生する。
【0035】
粉塵等は、研削刃具11により、回転方向の力を受けつつ、第1のカバー3と第2のカバー10によってガイドされて、筒体18から、ホース20を介して、集塵機19によって集塵される。なお、第1のカバーの外周に設けられるブラシ14によって、粉塵等がもれにくくなっている。また、第2のカバー10に設けられるブラシ20によって、粉塵などがもれにくくなっている。
【0036】
なお、図1に示す状態においては、第2のカバー10の前端から研削刃具11が突出している。このため、壁際などを研削する場合にも、第2のカバー10が壁と当たらないので、壁際をしっかりと研削できるようになる。
【0037】
図6に示すように、複数のスペーサを設けることによって、第2のカバー10によって、研削刃具11を覆うようにすることができる。このようにすれば、粉塵等がもれないようにすることができる。
【0038】
また、図7に示すように、容易に、第1のカバー3のみを取付けることができる。すなわち、切断の際に必要となる第1のカバー3にはブラシ14が固定されていない。これは、ブラシ14が切断の際に邪魔になるためである。研削の際に必要となるブラシ14は、第2のカバー10に固定されている。また、研削の際に必要となる筒体18も第2のカバー10に固定されている。このため、切断の際にスムーズに作業を行うことができるようになっている。
【0039】
本発明の一実施形態においては、電気モータによって、研削刃具・切断刃具を回転駆動するよう構成した電動工具であった。しかし、これ以外の方法によって、回転駆動するものであっても良い。例えば、エンジンで回転駆動するエンジン工具であっても良い。また、圧縮空気によって回転駆動されるエア工具であっても良い。
【符号の説明】
【0040】
1はハウジング、2はカバー取付部、3は第1のカバー、4はセットプレート、5はボルト、6はスピンドル、7はホイルワッシャ、8は切断刃具、9はホイルナット、10は第2のカバー、11は研削刃具、12はブラシ部、13はブラシ保持具、14はブラシ、15は凹部、16は引っ掛け部、17はスペーサー、18は筒体、19は集じん機、20はホース、である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源であるモータと、
前記モータを収容する本体と、
前記本体より突出するスピンドルと、
前記スピンドルに固定され、円形をした切断刃具と、
前記本体に固定され、前記切断刃具の少なくとも一部を覆う第1のカバーと、
前記第1のカバーに固定され、前記切断刃具の少なくとも一部を覆う第2のカバーと、
前記第2のカバーに固定され、前記切断刃具で研削した切粉を排出可能な排出可能な排出口と、有することを特徴とする研削工具。
【請求項2】
前記第2のカバーは、前記切断刃具を覆う領域が小さい第1の位置で、前記第1のカバーに対して固定可能であり、
前記第2のカバーは、前記切断刃具を覆う領域が大きい第2の位置で、前記第1のカバーに対して固定可能であることを特徴とする請求項1記載の研削工具。
【請求項3】
前記第1のカバーには雌ねじが固定されており、
前記第2のカバーには、前記雌ねじに嵌合可能なボルトが保持可能であり、
前記ボルトによって貫通されるスペーサを設けない場合には、前記第2のカバーは、
前記第1の位置に固定され、
前記ボルトによって貫通されるスペーサを設ける場合には、前記第2のカバーは、
前記第2の位置に固定されることを特徴とする請求項2記載の研削工具。
【請求項4】
前記第1のカバーの外周には、前記第2のカバーに固定される第1のブラシが設けられており、
前記第2のカバーには、第2のブラシが設けられていることを特徴とする請求項1記載の研削工具。
【請求項5】
前記第1のカバーには、2つの雌ネジ部が設けられており、
前記ボルトは2つ設けられており、
前記本体には、筒形状をしたカバー取付部が設けられており、
前記カバー取付部に取付可能であって、前記2つのボルトによって貫通されるセットプレートが設けられており、
前記第2のカバーには、2つの穴が設けられており、前記2つボルトは前記2つの穴を貫通することを特徴とする請求項1記載の研削工具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−115947(P2012−115947A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−267664(P2010−267664)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)
【Fターム(参考)】