説明

研磨パッドおよびその製造方法

【課題】研磨パッドの作業温度領域にガラス転移点を発現させず、かつ粘弾性挙動を安定的とし、温度変化に係る研磨安定性と、更には形状的または構造的な研磨安定性とを確保する。
【解決手段】ポリオールおよびイソシアネートからなる主原料と各種副原料とから構成される単一のポリウレタンフォームから成形された研磨パッドであって、前記ポリウレタンフォームのガラス転移点を、20℃未満または50℃を超える範囲に存在させると共に、そのASTM 2240に規定されるD硬度を40〜70の範囲とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、研磨パッドおよびその製造方法に関し、更に詳細には、半導体ウェハ等の高い精度でその表面の平担化が要求される部材を研磨し得る化学機械研磨(Chemical Mechanical Polishing;CMP)に好適に使用し得る研磨パッドおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近のコンピュータ等の情報技術機器の著しい高度化は、内蔵されるCPU(中央演算装置)を構成する超LSIデバイスの配線多重化による高性能化・高集積化により達成されている。この多重化は、超LSI等の元となるシリコンウェハーの表面平坦度(以下、単に平坦度と云う)を高くすることで達成され、一般的にはCMP(化学機械研磨)等の超精密ポリシングをなす研磨パッドが好適に採用されている。そしてポリシングするために、(1)研磨中の研磨パッドに微小な砥粒を懸濁させたスラリーを適宜供給したり、または(2)該研磨パッド内に砥粒を含有(固定)させた、所謂固定砥粒式の研磨パッドが採用されている。
【0003】
ここで(1)では、使用されるスラリーが高価である点が問題であり、(2)では、(1)に較べて安価である一方、高い研磨レートを達成すべく高硬度とされている固定砥粒が、研磨対象物であるウェハーにスクラッチを付ける問題がある。この問題に対処すべく、下記の特許文献1に開示の発明「研磨方法及び装置」や、特許文献2に開示の発明「研磨パッド」が案出されている。これらは何れも研磨対象物に直接的に接触する研磨工具や、研磨パッドのガラス転移点(温度)を制御し、柔軟性を確保することでスクラッチの発生を抑制し、更に特定の温度域での温度変化による研磨安定性の低下を回避している。
【特許文献1】特開2003−220552号公報
【特許文献2】特開2004−235446号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
[特許文献1]に係る発明は、単に研磨作業温度を研磨工具のガラス転移点以上に設定するものである。このため、例えば研磨レートを高める等の目的で、硬度等の物性が優先され、ガラス転移点が研磨作業の可能な範囲外にあるスラリーや研磨パッド等に対しては適用が不可能であった。また[特許文献2]に係る発明は、研磨作業が実施される温度(作業温度)外にガラス転移点をもつ2つの樹脂から研磨パッドを形成することで、作業温度領域にガラス転移点を発現させず、これにより柔軟な条件下での研磨を可能としている。しかしこの方法によって得られる研磨パッドは、使用される樹脂の相溶性等の問題から、2つの樹脂のガラス転移点間で粘弾性が不安定な挙動を示して細かなピークが多数発現するため、作業温度の変化によって研磨レート等が変動して安定的な研磨が望めない。
【0005】
また(a)スクラッチを低減し、かつ(b)研磨対象物の安定的な研磨を達成するためには、研磨パッドの構造・形状等も重要である。基本的に(a)スクラッチを低減するためには、柔軟性を高める構造が好適である。また(b)安定的な研磨は、スラリーを使用する研磨パッドでは均質なスラリー保持で達成される研磨の均質性によって、固定砥粒式の研磨パッドではその表面の平坦度によって、夫々略決定される。そして柔軟性を高める構造としては、その表面に気泡を有する発泡体構造が好適である。この場合、スラリー保持性の向上による高い研磨レートの達成と、研磨時に発生する研磨カスの排出によるスクラッチ低減も期待できる。そしてガラス転移点を制御し得る高分子素材を発泡体とする方法としては、原料の選択性が高く、かつ物性を適宜選択可能であると共に、大量生産可能な化学的発泡によるスラブ発泡法が好適である。
【0006】
しかしスラブ発泡法で得られる発泡体は、スラリーを保持するセル径や密度の制御が困難で、また部位によりこれらが異なるため、スラリー保持の均質性は悪い。また製造された発泡体の塊をスライス加工等して所要形状の研磨パッドとするため、平坦度も低い。特に高分子素材は、その粘弾性故に安定的な切り出しが困難であり、材質的にも平坦度を高めることは困難である。従ってガラス転移点の制御では、温度変化に係る研磨安定性が向上する一方で、形状的または構造的な研磨安定性が確保されない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本発明に係る研磨パッドは、ポリオールおよびイソシアネートからなる主原料と各種副原料とから構成される単一のポリウレタンフォームから成形された研磨パッドであって、
前記ポリウレタンフォームのガラス転移点を、20℃未満または50℃を超える範囲に存在させると共に、そのASTM 2240に規定されるD硬度を40〜70の範囲としたことを特徴とする。
【0008】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本願の別の発明に係る研磨パッドの製造方法は、ポリオールおよびイソシアネートからなる主原料と各種副原料とから構成される単一のポリウレタンフォームから成形された研磨パッドを製造する方法であって、
前記ポリオールとして、その数平均分子量を3,000〜10,000の範囲とされたものを使用し、かつ各種副原料である鎖伸張剤としてアミン系化合物とグリコールとを併用すると共に、NCOインデックスを100〜200の範囲として、
前記ポリオールに対して不活性ガスを溶存させた後、イソシアネートおよび各種副原料と混合することでガス溶存原料とし、
前記ガス溶存原料を調整された圧力下に成形型に注入し、
所要量の前記ガス溶存原料が成形型に注入された直後に常圧に戻すことで、
前記ポリウレタンフォームのガラス転移点を少なくとも20℃未満または50℃を超える範囲に存在させると共に、形成されるセル(20)の大きさが均質化された研磨パッドを製造するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る研磨パッドおよびその製造方法によれば、素材として単一のポリウレタンを使用し、その原料であるポリオールの数平均分子量を一定範囲とし、かつ鎖伸張剤として特定物質を使用し、更にNCOインデックスを所要の範囲とすることで、ソフトセグメントおよびハードセグメントのガラス転移点を夫々20℃未満および50℃を超えるようにすると共に、そのASTM 2240に規定されるD硬度を、40〜70の範囲として、研磨レート等の性能を維持しつつ、研磨対象物に対するスクラッチの低減と、温度変化に対する高い研磨安定性とを達成し得る研磨パッドを製造し得る。また各原料に対して不活性ガスを溶存させたガス溶存原料を、反応射出成形法によって調圧下に成形型内に注入し、注入完了後に常圧に戻して研磨パッドを製造することで、複雑形状に対応しつつ微細なセルを均質に備えて、該研磨パッドの外形状および構造に由来する研磨安定度を向上させ得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に本発明の好適な実施例に係る研磨パッドおよびその製造方法につき、好適な実施例を挙げて、以下説明する。本願発明者は、研磨パッドをなす材質として、単一のポリウレタンフォームを使用すると共に、該ポリウレタンフォームのガラス転移点をソフトセグメントとハードセグメントとで夫々所要の値とし、かつそのASTM 2240に規定されるD硬度を40〜70の範囲とすることで、研磨レートを維持しつつ、温度変化に対する研磨安定性を向上させ、かつ研磨対象物に発生するスクラッチを低減させ得ることを知見した。またポリウレタンフォームに不活性ガスを溶存させ、所定の圧力に調整された制御下で、反応射出成形法(以下、RIM成形法と云う)によって研磨パッドを成形することで複雑形状に対応しつつ微細なセルを均質に備えて、該研磨パッドの外形状および構造に由来する研磨安定度を向上させ得る研磨パッドを製造し得ることを知見したものである。なお本発明においてガラス転移点は、周波数1Hz、昇温速度3℃/minの条件で測定される粘弾性挙動を測定した際に得られるtanδのピーク値温度を指すものと定義する。
【0011】
本実施例に係る研磨パッドは、基本的に主原料であるポリオールおよびイソシアネートと各種副原料とからなる単一のポリウレタンフォームから成形されている。このポリウレタンフォームは、その構成をなすソフトセグメントおよびハードセグメントの夫々のガラス転移点が、夫々20℃未満および50℃を超えるようにされる。このため20〜50℃の範囲においては、研磨パッドの各種物性に大きな影響を与える弾性損失(tanδ)の変化が大きく抑制された状態となっている。なお20〜50℃の温度範囲は、一般的に使用される研磨パッドの使用温度域であり、この温度範囲で温度変化に対して硬度等の変動がなければ、常に研磨安定性が確保される。また特にtanδに大きな影響を及ばすソフトセグメントのガラス転移点については、−20℃未満であることが好ましい。−20℃未満とすることで研磨パッドのtanδは、研磨パッドの使用温度域である20〜50℃の温度範囲において、より平滑化された状態となる。
【0012】
ソフトセグメントは、ポリウレタンフォームの主原料の1つであるポリオールによって形成される領域であり、基本的にポリオールの数平均分子量を3,000以上とすることでソフトセグメントのガラス転移点は20℃未満とされる。またハードセグメントは、ポリウレタンフォームの主原料の1つであるイソシアネート等によって形成される領域である。そして鎖伸張剤として一定以上の数平均分子量(後述)を有するアミン系化合物およびグリコールを併用することで、ハードセグメントのガラス転移点は50℃を超えるものとされる。またイソシアネートの種類については特に限定されないが、後述([0017])する如く、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)系を採用することで成形性が良好となり、かつハードセグメントのガラス転移点を容易に50℃を超えるものとし得るため好ましい。
【0013】
このように単一のポリウレタンフォームを構成するソフトセグメントおよびハードセグメントのガラス転移点を、夫々研磨パッドの使用温度域である20〜50℃以外の温度範囲とすることで、図1に示すように当該温度域について温度変化に対する研磨安定性が達成される。これに対して、当該温度域にガラス転移点を有さない2種類以上にポリウレタンフォームを混合して研磨パッドの素材とした場合、ガラス転移点は当該温度域外となる一方、複数のポリウレタンフォームの相溶性その他による当該温度域のtanδの変動は回避されず、従って温度変化に対する研磨安定性も達成されない。特に粘性の割合が高く、tanδが高くなる場合には、研磨パッドに、所謂熱ごもりが発生して温度変化に対する研磨安定性は更に低下する。なお図1には、複数のポリウレタンフォームから製造した研磨パッドのtanδの一例を想像線で表している。
【0014】
硬度については、ASTM 2240に規定されるD硬度を40〜70の範囲としている。そしてJIS K 7110に規定されるIZOD衝撃強度を9.5kg/m以上としている。研磨パッドは、柔らか過ぎると研磨対象物を好適に研磨し得なくなり、硬過ぎると迅速な研磨ができる一方で研磨パッド自体が脆くなり、研磨作業によって研磨対象物にパーティクルが発生してスクラッチの原因となる。このD硬度およびIZOD衝撃強度は、NCOインデックスと、ポリオールの数平均分子量とに大きく依存している。この数値範囲とされたD硬度は、従来の研磨パッドと同様の研磨レートを確保するものである。なおこのD硬度は、((架橋剤量+イソシアネート量)/(総添加量×100))で算出されるハードセグメントコンテントでも表すことが可能で、その値は35〜60%とされる。またIZOD衝撃強度の物性値範囲は、D硬度を上限である70以下とすることで達成される。
【0015】
NCOインデックスは、ポリオールとイソシアネートとの混合割合を示す値で、この値が大きくなる程、ポリウレタンフォームにおいてハードセグメントが増加して硬度が増す。そして本発明においてNCOインデックスは、100〜200の範囲とされる。このようにイソシアネートを過剰とすることで、アロファネート結合、ビューレット結合またはイソシアヌレート結合がポリウレタンフォーム内に形成され、結合部の耐熱性が高く強固なハードセグメント形成されて、前述した硬度達成の一因となる。この値が100未満であると、相対的にポリオールが過剰となってD硬度が40未満となり、研磨レートが低下して生産性が悪化する。一方200を超えると、D硬度が70を超えると共に、脆性が発現するため、パーティクルが発生してマイクロスクラッチを誘発する。またポリオールの数平均分子量は、D硬度の観点から3,000〜10,000の範囲とされる。そしてNCOインデックスに拘わらず、3,000未満の場合、ハードセグメントが優勢となってD硬度が70を超えてしまい、10,000を超える場合、ソフトセグメントが優勢となってD硬度が40未満となる。
【0016】
その数平均分子量が3,000〜10,000の範囲とされ、本発明に係る研磨パッドをなすポリウレタンフォームの原料に好適なポリオールとして、例えばトリオールの如き高分子量ポリオールが挙げられる。具体的に使用可能なポリオールは、(1)ポリエステルポリオール、(2)ポリエステルエーテルポリオール、(3)ポリカーボネートポリオールまたは(4)ポリエーテルポリオール等の公知物質が使用可能である。(1)ポリエステルポリオールとしては、例えばコハク酸、アジピン酸、セバシン酸またはアゼライン等の脂肪族ジカルボン酸、例えばフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸またはナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、例えばヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸またはヘキサヒドロイソフタル酸等の脂環族ジカルボン酸、或いはこれらの酸エステルや酸無水物と、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール等またはこれらの混合物との脱水縮合反応で得られるポリエステルポリオール、ε−カプロラクトンまたはメチルバレロラクトン等のラクトンモノマーの開環重合で得られるポリラクトンジオール等が挙げられる。(2)ポリカーボネートポリオールとしては、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオールまたはジエチレングリコール等の多価アルコールの少なくとも1種と、ジエチレンカーボネート、ジメチルカーボネートまたはジエチルカーボネート等とを反応させて得られるものが挙げられる。(3)ポリエステルエーテルポリオールとしては、例えばコハク酸、アジピン酸、セバシン酸またはアゼライン酸等の脂肪族ジカルボン酸、例えばフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸またはナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、例えばヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸またはヘキサヒドロイソフタル酸等の脂環族ジカルボン酸、或いはこれらの酸エステルや酸無水物と、ジエチレングリコールまたはプロピレンオキシド付加物等のグリコール等或いはこれらの混合物との脱水縮合反応で得られるもの挙げられる。(4)ポリエーテルポリオールとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシドまたはテトラヒドロフラン等の環状エーテルを夫々重合させて得られるポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールまたはポリテトラメチレンエーテルグリコール等或いはこれらのコポリエーテルが挙げられる。またグリセリンやトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等の多価アルコールを用い、前述の環状エーテルを重合させて得ることができる。また本発明においては、これらポリオールは単独で用いてもよく2種以上を用いてもよい。
【0017】
他方の主原料であるイソシアネートについては、基本的に前述の各物性を達成し得る物であれば使用可能であり、更に後述([0021])するRIM成形法で研磨パッドを製造する場合には、その反応性が高いことが望まれる。また反応射出を容易とするため粘性については低い方が良く、そのNCO%が20〜30%、好ましくは23〜27%の範囲内となることが好ましい。具体的には、平均官能基数2.1〜2.7のジフェニルメタンジイソシアネ−トを基にした重合体芳香族イソシアネ−トの採用が好適である。使用可能なイソシアネートは、例えばジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、粗製ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、P−フェニレンジイソシアネート(PPDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチレンジイソシアネート(TMXDI)またはトリジンジイソシアネート(TODI)等の芳香族イソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、シクロヘキシルジイソシアネート(CHDI)、水添化XDI(HXDI)または水添化MDI(H12MDI)等の脂環族イソシアネート或いはヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、リシンジイソシアネート(LDI)またはリシントリイソシアネート(LTI)等の脂肪族イソシアネート類が挙げられ、その変性体としてはイソシアネート化合物のウレタン変性体、2量体、3量体、カルボジイミド変性体、アロファネート変性体、ビュ−レット変性体、ウレア変性体またはプレポリマ−等が挙げられる。これら有機イソシアネートの中で、特に反応性および研磨パッドとしての機械物性を考慮すると、芳香族系物質使用が好ましく、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート単体または2,4'−ジフェニルメタンジイソシアネートとの混合物、粗製ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネートの単体または2,4'−ジフェニルメタンジイソシアネートの混合物の一部をカルボジイミド変性したジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)から選択される1種または2種以上の混合物が特に好ましい。
【0018】
鎖伸張剤であるアミン系化合物としては、そのアミン当量が138以下となるジアミン、すなわち数平均分子量が276以下のものが使用される。またグリコールとしては、官能基数が2〜5であって水酸基当量が500以下のもの、すなわち数平均分子量が2,500以下のものが使用される。これらの数値が範囲外となると、ハードセグメントのガラス転移点が50℃以下となってしまう。そしてこれら鎖伸張剤の添加量は、ポリオール100重量部に対して、10〜50重量部の範囲とされ、その混合重量比率はアミン化合物:グリコール=1:1〜1:5とされている。ここでアミン化合物は、ハードセグメントにおけるガラス転移点を上昇させる作用と、ポリウレタンフォーム内において耐熱性の高いピューレット結合量および/またはアロファネート結合量を増加させ、NCOインデックスおよびハ−ドセグメントコンテントを向上させる作用とを有する。グリコールは、アミン化合物の使用で悪化するポリウレタンフォームの成形性を向上させる役割を有する。従って、鎖伸張剤の添加量が10重量部未満であると、ハードセグメントにおけるガラス転移点が50℃を超えなかったり、D硬度が低く発現して研磨レートが不足し、一方50重量部を超えると、D硬度が高く発現して脆性が高くなる。そしてアミン化合物:グリコールでアミン化合物が少ないと、ハードセグメントにおけるガラス転移点が50℃を超えなかったり、D硬度が低く発現して研磨レートが不足し、多いと研磨パッドとしての成形性が悪化する。
【0019】
アミン化合物としては、2,4−トルエンジアミン、2,6−トルエンジアミン、3,5−ジエチル−2,4−トルエンジアミン、4,4'−ジ−sec−ブチル−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、3,3'−ジクロロ−4,4'−ジアミノジフェニルメタン、2,2',3,3'−テトラクロロ−4,4'−ジアミノジフェニルレメタン、4,4'−ジアミノ−3,3'−ジエチル−5,5'−ジメチルジフェニルメタン、3,3'−ジエチル−4,4'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−メチレン−ビス−メチルアンスラニレート、4,4'−メチレン−ビス−メチルアンスラニックアシッド、4,4'−ジアミノジフェニルスルフォン、N,N’−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、3,3'−ジクロロ−4,4−ジアミノ−5,5'−ジエチルジフェニルメタン、1,2−ビス(2−アミノメチルチオ)エタン、トリメチレングリコール−ジ−P−アミノベンゾエ−トまたは3,5−ビス(メチルチオ)−2,4−トルエンジアミン等に例示されるジアミン類が挙げられる。特に芳香族ジアミンは、剛直な芳香族環による強度の出現が見込まれ、またその反応性の高さ故にRIM成形(後述[0021])の実施が容易となる。またグリコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコールまたはブタンジオールや、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールまたはソルビトール等の多価アルコール類、ヘキサメチレンジアミン、ヒドラジン、ジエチルトルエンジアミンまたはジエチレントリアミン等のアミン類或いはモノエタノールアミン、ジエタノールアミンまたはトリエタノールアミン等のアミノアルコール類の末端に水酸基を付加したものが挙げられる。
【0020】
触媒としては公知の物を使用することが可能で、例えばジメチルシクロヘキシルアミン、N−メチルジシクロヘキシルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、N−メチルモルフォリン、N−エチルモルフォリンまたはN−ジメチルベンジルアミン等の非反応型モノアミン、トリエチレンジアミン、テトラメチルヘキサメチレンジアミン、ビスジメチルアミノエチルエーテル、テトラメチルプロパンジアミン、ジメチルアミノエチノレモノレフォリン、テトラメチルエチレンジアミン、ジアゾビシクロウンデセンまたは2−メチル−1,4−ジアゾ(2,2,2)ビシクロオクタン等の非反応型ジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミンまたはペンタメチルジプロピレントリアミン等の非反応型トリアミン、ジメチルエタノールアミン、N−トリオキシエチレン−N,N−ジメチルアミンまたはN,N−ジメチル−N−ヘキサノールアミン等の反応型アミンやこれらの有機酸塩、1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾールまたは1−ブチル−2−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物或いはスタナスオクトエ−ト、スタナスオレエ−ト、ジブチルチンジラウレート、ジブチルチンジマレエート、オクチル酸鉛等の有機金属化合物、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノアルキル)ヘキサヒドロ−S−トリアジン、酢酸カリウム、オクチル酸カリウムまたは2−エチルヘキサン酸カリウム等の3量化触媒が挙げられる。なお他の副原料としては、製造される研磨パッドが発現すべき物性に準じて、整泡剤、発泡剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、老化防止剤、充填剤、可塑剤、着色剤、防徽剤、抗菌剤、研磨剤その他各種物質が必要に応じて使用される。また一般的な硬度上昇の手段として、芳香族または脂肪族の短鎖化合物等の硬化剤を使用する方法があるが、硬度が確保される一方で脆性が大きくなってしまうため不適である。また硬度の上昇に関しては各種フィラーの使用でも達成されるが、フィラーがスクラッチの発生原因となってしまうため不適である。
【0021】
(製造方法の一例)
以下に本発明に係る研磨パッドを好適に製造する方法の一例を説明する。本実施例に係る研磨パッドは、前述した如く、そのポリオールの数平均分子量を所定の範囲とする等により、温度変化に対する研磨安定性を高めている。そして製造方法として、RIM成形法を採用することで、更に研磨パッドの外形状および構造の双方に由来する研磨安定度を向上させ得る。概略的にはポリオールおよび副原料を所定量秤量して予備攪拌して得られるポリオール成分と、イソシアネ−トとを、ピストンポンプおよびプランジャーによる高圧注入機を使用して急速に衝突混合した後、RIM成形型(以下、単に成形型と云う)に射出して型締め後、所定時間を経た後に脱型することで、研磨等の後加工なしに一度に所要形状の研磨パッドとされる。具体的には図2に示す如く、原料準備段階S1、混合・射出工程S2、パッド成形工程S3および最終工程S4とからなる。ここで混合・射出工程S2はポリオールおよびイソシアネート等を圧力下で衝突混合させてガス溶存原料とし、成形型内への射出を行なう工程であり、最終工程S4は成形型内で成形された製品の脱型、検査等が実施される工程であり、従来のRIM成形法と同様であるため詳細については省略する。また研磨パッドをなすポリウレタンフォームの密度は、基本的に造泡用気体のガスロ−ディング量によって調整される。すなわちポリオール成分および/またはイソシアネ−トの貯留手段に不活性ガスを吹き込んで加圧・溶存させた状態で、前述の衝突混合をなし、成形型内に射出されるときの圧力解放によって発泡体が形成される。なお、本発明がRIM成形に限定されないことは云うまでもない。
【0022】
また好適な製造方法をなす装置は、一般的な反応射出成形装置を基本として、タンク等のポリオール貯留手段に対して所定の圧力を掛けつつ造泡用気体を供給する造泡用気体供給手段が付加された形態となっている。またポリオール貯留手段には、攪拌手段があることが好ましい。また成形型には、ガス溶存原料の速やかな注入を阻害する内部空気を排出するベントが備えられているが、本実施例においては、このベントによる成形型の内部空気の排出等は、制御下(後述[0025])に実施される。
【0023】
原料準備段階S1では、ポリオールおよびイソシアネート等(以下、液状原料と云う)の調整が実施されるが、本発明においては貯留されたポリオール100体積部に対して、10〜70体積部の範囲となる造泡用気体がガスローディングにより混合・溶存される。この割合は、各原料が成形されて研磨パッドとなった際に、該パッド内に存在する造泡用気体の数値であり、製造過程において成形型外に排出される量は含まれない。これにより研磨パッドに好適な研磨レートを達成する600〜1,100kg/m程度の密度を達成し得る。そしてこの値が10体積部未満では、造泡用気体の溶存(溶解)量が少なく後述([0026])の常圧化段階S32で、均質なセル20の形成が困難となり、一方70体積部を超えると、得られるガス溶存原料をなす液状原料と造泡用気体との平衡が崩れ、充分に溶解したガス溶存原料が得られなくなってしまう。造泡用気体としては、拡散係数の大きいCOや、乾燥空気または窒素等の、ポリオールやイソシアネートとの反応に影響を及ぼさない公知の物が採用可能である。なおここでは造泡用気体は、化学的に安定性の高いポリオールに混合されるが、イソシアネートに混合してもよい。そして70体積部以上の造泡用気体をガスローディングする場合は、好適には造泡用気体を超臨界状態として実施する。またRIM成形法であっても液状原料の種類等によっては化学的発泡が生起するため、研磨パッドをなすポリウレタンフォームの密度は、ガスローディングされた造泡用気体の量だけでなく該化学的発泡による密度の低下分を考慮する必要がある。
【0024】
パッド成形工程S3は、計量された所要量のガス溶存原料を成形型内に注入して研磨パッドを成形する工程であり、調圧下注入段階S31、常圧化段階S32および樹脂化段階S33からなる。調圧下注入段階S31は、図3に示す如く、成形型30のキャビティ30a内に計量されたガス溶存原料Mを順次注入する段階(図3(a)〜(c)参照)であり、2秒程度の短時間で完了する。この調圧下注入段階S31においては、ポリオールに造泡用気体の全量が溶解し得るようにキャビティ30aの内圧は調整され、ポリオールの貯留手段内と略同一に保持されている。
【0025】
そしてガス溶存原料Mが注入されると、その量に応じた体積の(成形型の)内部空気が連続的に排出されるため、原料Mの速やかな注入と、その中に溶解している造泡用気体の気化によるボイド発生の防止とが達成される。なおこの段階のガス溶存原料Mは、造泡用気体が溶解しているため、その粘度は低く、キャビティ30a内への注入は効率的になされる。この連続的な制御をなすベント32には、設定圧力で開口する調圧バルブや、ガス溶存原料Mに掛けられる圧力や注入速度等を許容する口径を備え、好適な開閉制御をなし得る制御バルブ等が採用される。またキャビティ30a内の部分的な圧力変動を抑制するよう、ベント32を数カ所に設けてもよい。
【0026】
そしてガス溶存原料M全量の注入が完了した時点から、常圧化段階S32が開始される。具体的にはベント32を開放することで、保持されていた圧力を瞬時に解除して成形型30内を常圧状態として造泡用気体を一気に気化させる工程である。この圧力解除によって、注入済みのガス溶存原料Mが瞬時に発泡して体積を増加させつつ、予め計量された通り、キャビティ30a内に略完全に充填される。時間的には、調圧下注入段階S31の完了直後に完了することが好ましい。そしてこの瞬間に、ガス溶存原料M内に溶解している造泡用気体が全て気化してセル20を形成することになる。この際、セル20の基となる、所謂核が略同時に多数発生する(図3(d)参照)ため、形成されるセル20の大きさ(セル径)が全体的に揃った単分散状態となる(図3(e)参照)。そしてセル20の平均径におけるバラツキは、平均径±10%程度であり、高い均一性を示す。またこのセル20の発生機構では、その形状が略真球形状となり、研磨パッドの押圧力が均一になる効果もある。すなわち部位によらずセル20の大きさおよびスラリー保持量が均質であり、構造的に研磨安定性の高い研磨パッドが得られる。
【0027】
樹脂化段階S33は、セル20が時間経過によって合一等で大きくなる前、具体的には両段階S31およびS32が完了すると略同時に、液状原料を完全に反応・硬化させて樹脂化させる段階である。この段階ではガス溶存原料Mの樹脂化反応と、ローディングされた造泡用気体の気化によるガス溶存原料Mの粘度上昇とが同時に進行するため、研磨パッドの内部構造が不均質化する前に固定化が完了する。またセル径は、ポリオールおよびイソシアネート等からなる液状原料の反応性や、NCO%によって容易に制御し得る。通常のRIM成形法の液状原料の反応は30秒程であり、そのセル径は100μmを超えるが、反応が迅速に完了する本発明ではセル径を30〜100μmとし得る。
【0028】
このような工程を経て、キャビティ30aを外部輪郭形状とした研磨パッドが成形・製造される。また通常、RIM成形により得られる研磨パッドの表面には、スキン層と呼ばれる数μm程度の高密度層が形成されるが、これは使用により短時間で消失するので特に問題はない。またRIM成形であるため、どのような形状や、突起または溝が形成されている研磨パッドであっても、後加工等を必要とせずに製造可能である。またポストキュアを施すことにより、反応が完結して経時的な物性の変化や、各製造ロッド間の物性のばらつきを低減し得る。
【0029】
前述の実施において造泡用気体が、成形型の内圧等によりその全量が液状原料中に混合・溶存されている例を挙げたが、本発明はこれに限定されない。また瞬時に反応するRIM成形法においてガス溶存原料Mの粘度は、成形型30内で欠肉部を造らないようにするため、できる限り低い方がよい。この粘度は前述の如く、NCO%や造泡用気体の溶存量によって低減されるため、より低い粘度の達成を目的として過剰量となる造泡用気体のガスローディングが好ましい。そしてその量はポリオール100体積部に対して、10〜2000体積部の範囲、好適には70〜500体積部の範囲とされる。この値が10体積部未満の場合は均質なセル20の形成が困難となり、一方2000体積部を超えると、成形型30や射出成形機の耐圧性等の問題から現実的ではない。また10体積部程度の造泡用気体が溶存したガス溶存原料Mを好適に成形型30内の全域に行き渡らすためには、70体積部以上の造泡用気体のガスローディングが好適である。一方、500体積部を超える造泡用気体のガスローディングについては、ガス溶存原料Mの粘度低減が大きいが、超臨界状態を採用してもその達成が困難であるため常用には適さない。
【0030】
(実験例)
以下に、本発明に係る研磨パッドについての実験例を示す。なお研磨パッドの各物性値を測定するための試験片は、所要の原料をRIM成形法にて成形し、130℃×1時間の条件でポストキュアを施すことで作製している。
【0031】
(実験1) 各原料の物性および配合と、研磨パッドの物性とについて
下記の各原料を使用して、表1に記載する配合として各原料を混合して実施例1−1〜1−9および比較例1−1〜1−6に係る試験片を作製し、この各試験片についてtanδまーのピーク温度(℃)、ソフトセグメントのガラス転移点(℃)およびハードセグメントのガラス転移点(℃)と、D硬度、IZOD衝撃強度(kg/m)およびハードセグメントコンテントと、密度(kg/m)とを測定した。なお参考例として、上市されている研磨パッド(商品名 IC1000;ロデールニッタ製)と同様の物性を備える研磨パッドを準備・比較した。
【0032】
(使用された各原料)
・主原料:
ポリオールA:ポリエーテルポリオール(分子量700(商品名 G−700;アデカ製))
ポリオールB: 〃 (分子量1,000(商品名 PTG−1000;保土ヶ谷化学製))
ポリオールC: 〃 (分子量3,000(商品名 GL−3000;三洋化成製))
ポリオールD: 〃 (分子量5,000(商品名 FA−703;三洋化成製))
ポリオールE: 〃 (分子量6,000(商品名 プレミノール7001K;旭硝子製))
ポリオールF: 〃 (分子量10,000(商品名 プレミノール7012;旭硝子製))
イソシアネートA:イソシアネートプレポリマー(商品名 M393;住化バイエルウレタン製)
イソシアネートB:商品名 コロネートT−80;日本ポリウレタン工業製)
・副原料:
鎖伸張剤A:アミン系化合物(DETDA(3,5-ジエチル-2,4-トルエンジアミン;住化バイエルウレタン製))
鎖伸張剤B:グリコール(商品名 スミフェンVB;住化バイエルウレタン製)
鎖伸張剤C:3,3'-ジクロロ-4,4'-ジアミノジフェニルメタン(商品名 イハラキュアミンMT;イハラケミカル工業製)
添加剤A:触媒(DBTDL(ジブチル錫ジウラレート))
添加剤B:触媒(商品名 33LV;中京油脂製)
添加剤C:触媒(商品名 DABCO K−15;エアプロダクト製)
・造泡用気体:ドライエアー
【0033】
(各物性の測定方法)
・ガラス転移点:周波数1Hz、昇温速度3℃/minの条件で測定された粘弾性挙動から算出した(使用機器:粘弾性測定装置(商品名 ARES 1KFRTN1-FCO;Rheometric Scientific F.E.Ltd製))。
・D硬度:ASTM 2240に準拠して測定した。
・IZOD衝撃強度:JIS K 7110に準拠して測定した。
・密度:JIS K 6401に準拠して測定した。
【表1】

【0034】
(実験1の結果)
前述した測定法等に従って得られた結果を表1に併記する。この結果から、本発明の数値範囲内にある各原料等を使用した場合、研磨パッドとして好適な物性を発現するポリウレタンフォームを製造し得ることが確認された。
【0035】
(実験2) RIM成形法における造泡用気体の混合量と、研磨パッドの密度とについて
実験1の実施例1−3を基本として、表2に記載する造泡用気体をガスローディングして実施例2−1〜2−5および比較例2−1〜2−4に係る試験片を作製し、この各試験片についてtanδまーのピーク温度(℃)、ソフトセグメントのガラス転移点(℃)およびハードセグメントのガラス転移点(℃)と、D硬度、IZOD衝撃強度(kg/m)およびハードセグメントコンテントと、密度(kg/m)とを測定した。なお実験2において「不活性ガス溶存量」とは、研磨パッドに成形される液状原料内に溶存している造泡用気体の量を指す。
【表2】

【0036】
(実験2の結果)
前述した測定法等に従って得られた結果を表2に併記する。この結果から、造泡用気体のガスローディング量をポリオール100体積部に対して、10〜70体積部の範囲とすることで、試験片の密度を600〜1,100kg/m程度にできることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】実施例に係る研磨パッドの弾性損失(tanδ)を測定したグラフ図である。
【図2】研磨パッドの製造工程の一例を示す工程図である。
【図3】調圧下注入段階S31および常圧化段階S32におけるRIM成形型内の様子を示す状態図である。
【符号の説明】
【0038】
20 セル、30 成形型、M ガス溶存原料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオールおよびイソシアネートからなる主原料と各種副原料とから構成される単一のポリウレタンフォームから成形された研磨パッドであって、
前記ポリウレタンフォームのガラス転移点を、20℃未満または50℃を超える範囲に存在させると共に、そのASTM 2240に規定されるD硬度を40〜70の範囲とした
ことを特徴とする研磨パッド。
【請求項2】
前記ガラス転移点は、前記ポリウレタンフォームにおけるソフトセグメントのガラス転移点を20℃未満とすると共に、ハードセグメントのガラス転移点を50℃を超えるようにすることで達成される請求項1記載の研磨パッド。
【請求項3】
前記ポリウレタンフォームのJIS K 7110に規定されるIZOD衝撃強度は、9.5kg/m以上とされている請求項1または2記載の研磨パッド。
【請求項4】
前記ポリウレタンフォームにおける各物性値は、前記ポリオールの数平均分子量を3,000〜10,000の範囲とし、鎖伸張剤としてアミン系化合物とグリコールとを併用すると共に、NCOインデックスを100〜200の範囲にすることで達成されている請求項1〜3の何れかに記載の研磨パッド。
【請求項5】
前記アミン系化合物として、アミン当量が138以下であるジアミンが使用され、かつグリコールとして、官能基数が2〜5であって水酸基当量が500以下のものが使用される請求項4記載の研磨パッド。
【請求項6】
前記鎖伸張剤は、前記ポリオール100重量部に対して、10〜50重量部使用される請求項4または5記載の研磨パッド。
【請求項7】
前記アミン系化合物とグリコールとは、その混合重量比が1:1〜1:5の範囲にされる請求項4〜6の何れかに記載の研磨パッド。
【請求項8】
前記イソシアネートとして、MDI変性体が使用される請求項1〜7の何れかに記載の研磨パッド。
【請求項9】
前記主原料および各種副原料の混合物に、不活性ガスを圧力下に溶存させたガス溶存原料(M)を反応射出成形法により成形型(30)に注入し、注入完了直後に常圧に戻すことで、形成されるセル(20)の大きさが均質化されている請求項1〜8の何れかに記載の研磨パッド。
【請求項10】
ポリオールおよびイソシアネートからなる主原料と各種副原料とから構成される単一のポリウレタンフォームから成形された研磨パッドを製造する方法であって、
前記ポリオールとして、その数平均分子量を3,000〜10,000の範囲とされたものを使用し、かつ各種副原料である鎖伸張剤としてアミン系化合物とグリコールとを併用すると共に、NCOインデックスを100〜200の範囲として、
前記ポリオールに対して不活性ガスを溶存させた後、イソシアネートおよび各種副原料と混合することでガス溶存原料(M)とし、
前記ガス溶存原料(M)を調整された圧力下に成形型(30)に注入し、
所要量の前記ガス溶存原料(M)が成形型(30)に注入された直後に常圧に戻すことで、
前記ポリウレタンフォームのガラス転移点を少なくとも20℃未満または50℃を超える範囲に存在させると共に、形成されるセル(20)の大きさが均質化された研磨パッドを製造するようにした
ことを特徴とする研磨パッドの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−231429(P2006−231429A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−46046(P2005−46046)
【出願日】平成17年2月22日(2005.2.22)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】