説明

研磨材、研磨工具、研磨装置、研磨材の製造方法、研磨工具の製造方法、及び研磨方法

【課題】安定した電気粘性効果および良好な保存安定性が維持される電気粘性流体(ER流体)を用いて、研磨能力の優れた研磨材、研磨工具、研磨装置、研磨材の製造方法、研磨工具の製造方法及び研磨方法を提供する。
【解決手段】 本発明の研磨材は、電気レオロジーゲル(ERG)12と砥粒12Aとを含んで構成したので、ワーク(被加工物)の表面粗度に応じてERGの硬度を変化させることができ、研磨を効率的に行うことができる。また、砥粒がERG中に拡散・沈降することがないため、電気レオロジー特性が低下することなく、長期間に渡って研磨材としての性能が維持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨材、研磨工具、研磨装置、研磨材の製造方法、研磨工具の製造方法、及び研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電気粘性流体(以下、ER流体ともいう。)と呼ばれる組成物が知られている。この組成物は、例えば電気絶縁性の媒体中に分散相粒子を分散させて得られる流体であり、これに外部電界を加えると、その粘度が著しく増大し、場合によっては固化する性質を持つ、いわゆる電気レオロジー効果(以下、ER効果ともいう。)を有する流体組成物である。
このER流体は前記のようなER効果を有するために、クラッチ、ダンパー、ショックアブソーバー、振動素子のような電気制御による機器の動力伝達用または制動用の分野などで利用されている。
【0003】
一方、このようなER流体の特異的性質を用いて、光学素子の研磨に応用しようという試みがある。例えば、特許文献1に記載された研磨工具では、光学素子を研磨する研磨ポリシャの裏面側に空隙部を設け、そこにER流体を充填している。そして、ER流体への印加電圧を制御することにより、研磨初期は研磨ポリシャを硬く、研磨終期には研磨ポリシャを柔らかく変化させている。その結果、被加工物である光学素子表面の面精度を良好なのものにしようというものである。
また、特許文献2のように、砥粒が分散されたER流体の中で光学素子を回転させながら、ER流体に対して相対的に運動させて研磨を行う装置も知られている。この研磨装置によれば、印加電圧を変えてER流体の粘度を変えることで、最適な研磨圧力により非球面形状光学素子の表面をくまなく研磨することができる。
【0004】
【特許文献1】特開2002−307280号公報
【特許文献2】特開平08−229793号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この特許文献1の研磨工具では、研磨ポリシャという、研磨対象物の形状に対応した研磨材を前もって準備する必要がある。また、研磨ポリシャとER流体との間に金属板が存在するため、ER流体が持つ独特の性質が十分利用されていない。
一方、特許文献2の研磨装置では、ER流体中に分散した砥粒が研磨の主体であるため、砥粒を光学素子に押しつける圧力はER流体の流れに依存し、非球面形状の光学素子に対する研磨力を高めることが困難である。
さらに、前記の分散相粒子を用いたER流体は、上述したように多くの優れたER効果を有するものではあるが、長期間静置されると、分散相粒子が分散媒中に沈降し、また一旦沈降すると、凝集して再分散が困難になるという問題もある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、ER流体を用いて、研磨対象物の形状に左右されない自由度と研磨能力に優れた研磨材、研磨工具、研磨装置、研磨材の製造方法、研磨工具の製造方法及び研磨方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の研磨材は、電気レオロジーゲル(以後、「ERG」ともいう)と砥粒とを含むことを特徴とする。
ここで、ERGとは、ER流体が流動性を失ったゲル状物質である。また、「ERGと砥粒とを含む」とは、例えば、ERGの中に砥粒が分散しているような構造をいい、ER流体中に砥粒を分散させてゲル化を行えばそのような構造が得られる。
【0008】
本発明によれば、研磨材が、ERGと砥粒とを含んでいるので、ERGの特質を生かした研磨材としての機能が発揮できる。すなわち、ERGを一定の力でワーク表面に押し付けると、ERG自体がワークの表面形状に倣った形状に変形するため、研磨材を前もってワークの表面形状に合わせて製造する必要がなく、研磨材製造の自由度が非常に高い。
また、被加工物(ワーク)の表面粗度に応じてERGの硬度を変化させることができるので、被加工物の表面粗度が大きなときはERGに高い電圧をかけて硬くして、被加工物の表面粗度が小さくなったときはERGにかける電圧を下げて柔らかくすることで研磨を効率的に行うことができる。
さらに、砥粒がERG中に拡散・沈降することがないため、電気レオロジー特性が低下することなく、長期間に渡って研磨材としての性能が維持できる。
【0009】
なお、ERGに対する電圧のかけ方としては、両側電極と片側電極の2通りの方式が考えられる。両側電極とは、ERGを挟んで両側から電圧をかける方式であり、ワーク自体をERGに対する一方の電極とする方式である。これに対して、片側電極とは、ERGの一方の側に正負の電極を配置して電圧をかける方式である。
例えば、研磨の対称がプラスチックレンズ等の射出成形に用いられる金型のように導電性である場合は、両側電極と片側電極の両方式を用いることができる。一方、プラスチックレンズのような非導電性材料を研磨する場合には片側電極を用いることでERGに電圧をかけることができる。
すなわち、この研磨材は、レンズ表面を直接磨くこともできるし、あるいは、レンズ成形用の金型を研磨することにも好適に用いることができる。
【0010】
本発明の研磨材は、砥粒がERGの表層部分に保持されていることが好ましい。
本発明によれば、砥粒がERGの表層部分に保持されているため、研磨材が被加工物と接触した際に、ER効果が直接的に砥粒に反映するため、効率的に研磨を行うことができる。
【0011】
本発明では、ERG中の液体成分が電気絶縁性媒体で、その電気絶縁性媒体中に分散相粒子が分散されていることが好ましい。
本発明によれば、ERG中の液体成分が電気絶縁性媒体であるので、電圧印加時に電流が流れることなく、ER効果が好適に発現される。また、その電気絶縁性媒体中に分散相粒子が分散されているので、分散相粒子が沈降することがなくER効果が長期間安定して得られる。
【0012】
本発明では、ERGが、ポリシロキサン架橋体中に電気絶縁性媒体および分散相粒子が分散された構造を持つことが好ましい。
本発明によればERGの基本骨格がポリシロキサン架橋体であるため、その骨格中に電気絶縁性媒体を多量に保持することができ、ERGの製造にとって好適である。
【0013】
本発明では、ポリシロキサン架橋体がハイドロジェンシリコーンおよび不飽和基含有化合物のヒドロシリル化反応生成物であることが好ましい。
本発明によれば、ポリシロキサン架橋体がハイドロジェンシリコーンおよび不飽和基含有化合物のヒドロシリル化反応生成物であるため、製造が容易である。
【0014】
本発明の研磨工具は、上述の研磨材が工具本体に固着されていることを特徴とする。
ここで、研磨材が工具本体に固着されているとは、研磨材自身の吸着力により工具本体に吸着している場合や、工具側に溝を作成しておくなどして研磨材が工具本体に固定されている状態を意味する。
本発明によれば、研磨材が工具本体に固着されているため、研磨材が工具本体から剥離してしまうことなく、研磨工具として使用したときに上述の効果を好適に奏することができる。
【0015】
本発明の研磨装置は、上述の研磨工具を備えていることを特徴とする。
本発明によれば、研磨装置が上述の研磨工具を備えているため、研磨装置として、上述の効果を好適に奏することができる。
【0016】
本発明における研磨材の製造方法は、電気粘性流体を被加工物の研磨予定面に接触した状態でゲル化した後、ゲル化後の電気粘性流体の被加工物との接触面を被加工物から解離して、砥粒を前記接触面に散布することを特徴とする。
本発明の製造方法によれば、ERGを製造した後、砥粒をそのERGの表面に散布するという簡便な方法で研磨材を得ることができる。さらに、ERGの表面が、被加工物(ワーク)の研磨予定面に応じた形状をしているため、研磨を極めて効率的に行うことができる。例えば、プラスチックレンズ成型用の金型を研磨する場合、研磨材の表面を凸面や凹面にする必要があり、各々の場合に合わせて研磨材を交換しなければならないが、本発明の製造方法によれば、自動的にその金型の表面形状に合わせた研磨材が得られるため、極めて便利である。
【0017】
本発明は、砥粒を含んだ電気粘性流体をゲル化して研磨材とする研磨材の製造方法であって、前記電気粘性流体を被加工物の研磨予定面に接触した状態でゲル化を行い、前記ゲル化後の電気粘性流体の被加工物との接触面を被加工物から解離することを特徴とする。
本発明の製造方法によれば、電気粘性流体の中にすでに砥粒が含まれているため、電気粘性流体をゲル化してERGとするだけで、そのまま研磨材として利用できる。
【0018】
本発明は、研磨材を先端に備えた研磨工具の製造方法であって、前記研磨材は、電気粘性流体を被加工物の研磨予定面に接触した状態でゲル化を行い、前記ゲル化後の電気粘性流体の被加工物との接触面を被加工物から解離して、砥粒を前記接触面に散布したものであることを特徴とする。
本発明によれば、電気粘性流体を被加工物の研磨予定面に接触した状態でゲル化を行うので、被加工物の表面形状に沿った研磨工具を製造することができ、研磨効率が向上する。
【0019】
本発明は、研磨材を先端に備えた研磨工具の製造方法であって、前記研磨材は、砥粒を含んだ電気粘性流体を被加工物の研磨予定面に接触した状態でゲル化を行い、前記ゲル化後の電気粘性流体の被加工物との接触面を被加工物から解離したものであることを特徴とする。
本発明によれば、電気粘性流体の中にすでに砥粒が含まれているため、電気粘性流体をゲル化してERGとするだけ研磨材とすることができ、その研磨材を先端に備えているため、研磨工具の製造方法として簡便である。さらに、電気粘性流体を被加工物の研磨予定面に接触した状態でゲル化を行うので、被加工物の表面形状に沿った研磨工具を製造することができ、研磨効率も向上する。
【0020】
本発明の研磨方法は、ERGと砥粒とを含む研磨材を用いて、このERGに印加した電圧を制御しながら研磨することを特徴とする。
本発明によれば、ERGに印加した電圧を制御しながら研磨することで、ERGの硬度を制御することができ、被加工物(ワーク)の表面粗度に応じた研磨が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、本発明の実施形態を詳細に説明する。
(1)ERGの構造及び製法
本実施形態におけるERGは、電気絶縁性媒体および分散相粒子が分散されたERGである。具体的には、ポリシロキサン架橋体中に電気絶縁性媒体および分散相粒子が分散されたERGを用いている。ポリシロキサン架橋体は、ハイドロジェンシリコーンと前記不飽和基含有化合物のヒドロシリル化反応生成物であることが好ましい。
【0022】
本実施形態で用いられる電気絶縁性媒体としては、シリコーンオイル、塩化ジフェニル、トランスオイルなどがあるが、シリコーンオイルは絶縁破壊電圧、体積抵抗率などの電気的特性に優れ、物理的、化学的に安定なため長期にわたって安定した電気特性を発揮することができ、難燃性が高いため好ましく用いることができる。本発明で用いられる電気絶縁性媒体の粘度は限定されないが、好ましくは、25℃において1〜10万mm2/s、特に好ましくは5〜1000mm2/sである。粘度が1mm2/s未満では、ERGの貯蔵安定性を低下させるため好ましくない。一方、10万mm2/sを超えると、攪拌時に気泡を巻き込み、その気泡が抜け難くなり、取り扱いに支障をきたす恐れがあるので好ましくない。
【0023】
シリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、フェニル変性シリコーンオイルのいずれか1種または2種以上が好適に用いられる。フッ素変性シリコーンオイルとしては、例えば、トリフルオロプロピル基(CF324−)を有するポリシロキサン、ノナフルオロヘキシル基(C4924−)を有するポリシロキサン、環状型ポリシロキサン化合物などがある。この中でも、ER流体中における分散相は、化学的、電気的に不活性で、変成シリコーンより安価なジメチルシリコーンオイルを用いるのが好ましい。
【0024】
本実施形態で用いられる分散相粒子は、電気絶縁性媒体中に分散されてER流体を構成するものであり、シリカゲル、セルロース、でんぷん、大豆カゼイン、ポリスチレン系イオン交換樹脂などのような粒子の表面に水を吸着保有する固体粒子やカーボン粒子などがある。また、分散相粒子としては、有機高分子化合物からなる芯体と、電気半導体性無機物粒子からなる表層とからなるER流体用複合粒子(以下、「ER複合粒子」と略記する。)、またはER複合粒子の表層に親和性表面処理が施され、電気絶縁性媒体との親和性が高められているER流体用複合粒子(以下、「親和性ER複合粒子」と略記する。)も用いられる。安定したER効果および良好な保存安定性が維持されることから、分散相粒子としては、ER複合粒子または親和性ER複合粒子が好ましく用いられている。
【0025】
上記ER複合粒子または、親和性ER複合粒子についての詳細および製造方法は、例えば、特願平11−202351号公報、特願平8−274920号公報、特願平7−231828号公報などに記載されている。
【0026】
上記分散相粒子は、電気絶縁性媒体中に均一に攪拌混合してER流体とすることができる。分散相粒子の含有率は、特に限定されるものではないが、ER流体の1〜75重量%の範囲、特に10〜60重量%の範囲とすることが好ましい。含有率が1重量%未満では、十分なER効果が得られず、75重量%を超えると、電圧を印加しない状態での初期粘度が過大となって使用に適さなくなる。
【0027】
本実施形態においては、上記電気絶縁性媒体および分散相粒子はゲル骨格中に分散されている。ゲル骨格は限定されないが、電気絶縁性のものが好ましい。具体的には、ポリシロキサン架橋体が骨格中に電気絶縁性媒体を多量に保持することができるため好ましく、特に、ハイドロジェンシリコーンおよび不飽和基含有化合物のヒドロシリル化反応生成物が製造の容易性の理由から好ましい。ここで、ハイドロジェンシリコーンとは、例えばシロキサン鎖のケイ素原子に結合した水素原子を持つジアルキルポリシロキサンで、例えば下記式(B)で示される化合物が挙げられる。
【0028】
【化1】

【0029】
(式中、R1は互いに独立して置換もしくは無置換の炭素数1〜18のアルキル基、炭素数7〜21のアラルキル基、または置換もしくは無置換の炭素数6〜20のアリール基を示し、n1は0〜500の整数を示す。)
1により示されるアルキル基には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基、ドデシル基などが含まれ、アラルキル基には、例えばベンジル基、フェネチル基などが含まれ、そして、アリール基には、例えば、フェニル基、トルイル基、ナフチル基などが含まれる。R1により示される置換アルキル基には、例えば、トリフルオロプロピル基、クロロプロピル基などのハロゲン化アルキル基、および2−シアノエチル基のようなシアノアルキル基が含まれる。好ましくは、R1はメチル基であり、n1は10〜200の整数である。ハイドロジェンシリコーンの具体例としては、下記式(B−1)、式(B−2)および式(B−3)で示されるものが挙げられる。
【0030】
【化2】

【0031】
また、上記不飽和基含有化合物とは、下記式(D)で示されるものが挙げられる。
【0032】
【化3】

【0033】
(式中、R2は互いに独立して水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜18のアルキル基、または置換もしくは無置換の炭素数6〜20のアリール基を示し、R3は炭素数1〜18のアルキレン基、炭素数7〜21のアリールアルキレン基、ヘテロ原子数1〜6で炭素数1〜12のヘテロ原子含有アルキレン基、または直接結合を示し、n2は3以上の整数であり、そして、Zはn2と同じ価数を持つ連結基であって、炭素原子、ケイ素原子、一置換3価ケイ素原子、炭素数1〜30の脂肪族基、ヘテロ原子数1〜6で炭素数1〜30のヘテロ原子含有有機基、またはケイ素原子数2〜50の直鎖状、分枝状または環状のアルキルシロキサン基を示す。)
2により示されるアルキル基には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基、ドデシル基などが含まれ、そして、アリール基には、例えば、フェニル基、トルイル基、ナフチル基などが含まれる。R3により示されるアルキレン基には、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、オクチレン基、ドデシレン基などが含まれ、アリールアルキレン基には、例えば、フェニルメチレン基、フェニルエチレン基、フェニルエチリデン基などが含まれる。R3について使用される「ヘテロ原子含有アルキレン基」という用語は、ヘテロ原子として、酸素、硫黄または窒素原子を含有する基であって、それらへテロ原子を炭素原子とみなすことにより、全体をアルキレン基とみなすことができる基を意味する。そのような基には、メチレンオキシメチレン基、メチレンオキシエチレン基、メチレンオキシプロピレン基、エチレンオキシプロピレン基、メチレンオキシエチレンオキシメチレン基、エチレンオキシエチレンオキシエチレン基、プロピレンオキシエチレンオキシプロピレン基、それらの酸素原子が硫黄または窒素原子で置き換えられたもの、およびそれらの酸素原子の一部が硫黄および/または窒素原子で置き換えられたものが含まれる。Zにより示される脂肪族基には、3価以上の直鎖状または分枝状のアルキル基が含まれ、例えば、メチニル基、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、オクチニル基、ドデシニル基などが含まれる。Zについて使用される「ヘテロ原子含有有機基」という用語は、ヘテロ原子として、酸素、硫黄または窒素原子を含有する脂肪族または芳香族の官能基を意味する。そのような官能基には、メチレンオキシメチニル基、メチレンオキシエチニル基、メチレンオキシプロピニル基、エチレンオキシプロピニル基、メチレンオキシエチレンオキシメチニル基、エチレンオキシエチレンオキシエチニル基、プロピレンオキシエチレンオキシプロピニル基、フェニレンビス(メチルオキシエチニル)基、それらの酸素原子が硫黄または窒素原子で置き換えられたもの、およびそれらの酸素原子の一部が硫黄および/または窒素原子で置き換えられたものが含まれる。Zの一置換3価ケイ素原子には、例えば、化学式≡Si−アルキル基が含まれ、具体例としては≡Si−CH3を挙げることができる。好ましくは、R2は水素原子またはメチル基であり、R2は−CH2OCH2−、−CH2OCH2CH2−、または−CH2OCH2CH2OCH2−である。不飽和基含有化合物の具体例としては、下記式(D−1)、式(D−2)、式(D−3)、式(D−4)、式(D−5)、式(D−6)、式(D−7)で示されるものが挙げられる。
【0034】
【化4】

【0035】
【化5】

【0036】
ヒドロシリル化は、反応速度の温度依存性が大きいことから、室温以下で混合し、加熱して反応を促進させることができる。これはヒドロシリル化反応の大きな利点であって、反応物を適度な粘性で混合し、成形した後、加熱すれば、一挙に所望の形状の重合物が得られる。この場合の加熱温度としては50℃から150℃程度、好ましくは60℃から120℃程度である。
【0037】
このヒドロシリル化反応には、触媒を使用することが好ましい。ヒドロシリル化反応に使用可能な触媒としては、白金、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウムなどの化合物が知られている。特に白金化合物が有用であり、白金化合物の例としては、塩化白金酸、白金の単体、アルミナ、シリカ、カーボンブラックなどの担体に固体白金を担持させたもの、白金−ビニルシロキサン錯体、白金−ホスフィン錯体、白金−ホスファイト錯体、白金アルコラート触媒などが使用できる。白金触媒の場合は白金として、0.0001重量%程度添加することができる。電気絶縁性媒体および分散相粒子は、上記ヒドロシリル化反応の前にハイドロジェンシリコーンと不飽和基含有化合物に予め混合しておくと、直接、ERGが得られ好ましいが、ヒドロシリル化反応後に生成物に含浸させてERGにすることも可能である。
【0038】
本実施形態におけるERG組成物の架橋密度は、上記式(B)で示される化合物の分子量によりある程度決定されるが、化合物(B)と上記式(D)で示される多官能性化合物は、以下に示す式(1)に従っている。
式:0.5≦[(化合物(D)のモル数×化合物(D)の価数)/(化合物(B)のモル数×2)]≦1.5 (1)
この場合、特に、式(1)の下限が0.8で上限が1.2である場合に好ましい架橋密度のERG組成物が得られる。
【0039】
また、ハイドロジェンシリコーンおよび不飽和基含有化合物は、合計でERGの0.5〜70重量%、好ましくは1〜30重量%の量で存在する。
【0040】
本実施形態のERGは電気絶縁性媒体と分散相粒子がゲル骨格中に分散されたものなので、分散相粒子が沈降することはない。また、電圧印加時には分散相粒子がゲル骨格内部において移動可能なので、電界方向に配列してER効果が発現されると考えられる。
【0041】
以下、ERG製造の具体例を示す。まず、以下に示すような製造方法によって、分散相粒子を調製した。
アンチモンドーピング酸化錫(石原産業社製、SN−100P、電気伝導度:1.0×100Ω-1/cm) 30g水酸化チタン(石原産業社製、一般名:含水チタン、C−II、電気伝導度:9.1×10-6Ω-1/cm) 10g アクリル酸ブチル300g 1,3−ブチレングリコールジメタクリレート 100g 重合開始剤(アゾビスイソバレロニトリル) 2g上記処方の混合物を、第三リン酸カルシウム25gを分散安定剤として含む水1800ml中に分散し、60℃で1時間攪拌下に懸濁重合を行い、得られた生成物を酸処理し、水洗後、脱水乾燥し、無機・有機複合粒子を得た。この粒子200gに鉄フタロシアニン(山陽色素社製P−26)2gを加え、ボールミルにて75時間複合化処理を行い、次いでこれをジェット気流処理機(奈良機械製作所社製、ハイブリタイザー)を用いて周速75m/秒で210秒間ジェット気流処理を行い、分散相粒子のER複合粒子を得た。
【0042】
上記分散相粒子を、電気絶縁性媒体のジメチルシリコーンオイル中に均一に分散させ、式(B−1)で示される化合物、式(D−1)で示される化合物および白金触媒を加えて混合し、90℃で6時間加熱することにより、ERGを得た。ここで使用したジメチルシリコーンオイルは、L−45(100)(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)、室温(25℃)における粘度が100mm2/s、比重0.97/25℃、屈折率1.402/25℃のものである。また、白金触媒は0価の白金触媒を10mm2/sのジメチルシリコーンに白金濃度0.3重量%で溶解させたものである。表1に、この例のERGの配合を示す。
【0043】
【表1】

【0044】
このようにして得られたERGの特性について調べた。
(1-1)剪断応力および電流値の測定
前記で得たERGを二重円筒型回転粘度計にいれ、それぞれ内外円筒間に直流電圧2.0kv/mmを印加し、かつ内筒電極に回転力を与えて、25℃で、剪断速度100sec-1における剪断応力(Pa)を測定した。結果を表2に示す。
【0045】
【表2】

【0046】
(1-2)ERGの沈降性の評価
次に、前記のERGについて常温における沈降性について次の測定法を用いて評価した。このERGを、内径6mmの試験管に深さ100mmとなるように導入し、このまま常温(25℃)にて6ヶ月間静置し、ER複合粒子の粒子沈降による試験管の上澄み層の厚さを測定した。沈降性の大きいものほど、この数値は大きくなる。結果を表3に示す。
【0047】
【表3】

【0048】
表2の結果から、この例のERGは、電圧印加時の剪断応力が向上し、実用に耐え得る範囲であることが分かる。表3の結果から、この例のERGは6ヶ月間静置しても、ER複合粒子の沈降が認められなかった。よって、常温放置後の保存安定性が著しく優れていて長期使用に耐えるものとなっていることが分かる。
【0049】
(2)研磨材の製造方法
〔研磨材製造装置の構成〕
図1に、本実施形態に係る研磨材を製造するための研磨材製造装置1の断面図を、図2に、その分解斜視図を示す。
【0050】
研磨材製造装置1は、ワーク保持側壁部材11と、このワーク保持側壁部材11に抜き差し可能でかつ回転可能な導電性部材であるERG固着部材12と、このERG固着部材12の中央に形成されたER流体注入部13と、ワーク10を支えるワーク保持基台部材14と、ERG固着部材12とワーク10との間に形成されるクリアランス部15と、このクリアランス部15のクリアランスを調整するクリアランス調整部材16と、ワーク保持側壁部材11の側面に形成された排出口17と、ワーク保持側壁部材11及びERG固着部材12に設けられた電圧印加部18と、装置基台19とを含んで構成される。
ここで、本実施形態においては、この研磨材製造装置1自体に加熱装置は内在していない。ゲル化のために加熱する際は、例えば、所定温度の加熱基板(ホットプレート)に載せることで、クリアランス部15に保持されたER流体を容易にゲル化できる。
【0051】
この研磨材製造装置1は、後述するように研磨工具の製造装置でもあり、また研磨装置の本体でもある。
また、ワーク保持側壁部材11の内部に存在するワーク10は、研磨の対象物であり、例えば、プラスチックレンズ等の射出成形に用いられる金型である。ワーク10は、導電性であればよく、表面の形状は特に問題とされない。ワーク保持側壁部材11は、ワーク10を保持するための円筒状の構造体(スリーブ)である。
【0052】
ERG固着部材12は、詳細は後述するが、ERGを吸着・保持した後に、研磨工具の本体ともなる導電性の構造体である。(このERG固着部材12は、研磨工具となったときに、前述のワーク保持側壁部材11の中で高速回転する。)また、その中央には、ER流体を流し込むための流路であるER流体注入部13が形成されている。
【0053】
ワーク保持基台部材14は、ワーク10を下から支える部材である。このワーク保持基台部材14は、研磨時にワーク10が回転しないように、ワーク10と嵌合する凹凸部を持つことが好ましい。
【0054】
クリアランス部15は、ER流体を流し込んでゲル化するための空間であって、上述のワーク保持側壁部材11、ERG固着部材12及び被加工物(ワーク)20により形成される。
クリアランス調整部材16は、ワーク保持側壁部材11の上面とERG固着部材12のフランジ部との間に配設されたドーナツ状のスペーサであって、その厚みを変えることによって、クリアランス部15の厚み、すなわち、製造するERGの厚みを変えることができる。
【0055】
排出口17は、ワーク保持側壁部材11の側壁に形成された流路であって、余分なER流体を外部に排出するときに使用される。
電圧印加部18は、前記ワーク保持側壁部材11の側壁面に貫通形成されたねじ孔に配設される電圧印加部正極18Aと、前記ER流体注入部13に形成されたねじ孔に配設された電圧印加部負極18Bとを含んで構成される。電圧印加部正極18Aは、中央の孔に電線が配されており、先端の電極がワーク10に押しつけられている。電圧印加部負極18Bは、回転するERG固着部材12に対してブラシによって通電するように構成されている。これらは、研磨装置を作動させるときに使用されるが詳細は後述する。
なお、ワーク保持側壁部材11とワーク保持基台部材14は、装置基台19にボルト191により固定されている。これらのワーク保持側壁部材11、ワーク保持基台部材14、及び、装置基台19については、ベークライトのような合成樹脂製、あるいは、セラミック製の電気絶縁材料が用いられる。
【0056】
〔研磨材および研磨工具の製造〕
以下に、上述の研磨材製造装置1を用いた研磨材の製造方法について、図1、図2を用いて説明する。ERGの製造方法は、前記実施形態(1)で述べたとおりであるが、ERGを備えた研磨材を製造する際は、以下のようにして行う。
【0057】
ゲル化前のER流体(配合は表1に示す)を、研磨材製造装置1のER流体注入部13からクリアランス部15に流し込む。余分のER流体は、排出口17から排出される。
その後、クリアランス部15のER流体を、90℃で6時間加熱してゲル化を完了させ、ERGを得る。このERGの下面は、ワーク10の上面の形状(凹面、凸面等)に応じた形状となっている。
【0058】
次に、ERGがERG固着部材12に吸着・保持された状態のまま、このERG固着部材12をワーク保持側壁部材11から抜き出す。
そして、ERG固着部材12に吸着・保持されたERGの表面に、砥粒を散布する。
図3に示すように、このERG固着部材12は、先端に、ERGと砥粒とからなる研磨材12Aを備えており、研磨工具100を構成する。この研磨工具100は、後述するように、研磨材製造装置1のワーク保持側壁部材11に挿入された後は、研磨装置の本体部分となる。
【0059】
(3)研磨装置及びその動作
図4に、研磨材製造装置1を含んだ研磨装置200を模式的に示す。
研磨装置200は、研磨材製造装置1と、トルクセンサ2と、高圧電源部3と、モータ4と、動力伝達手段5と、制御手段6とを含んで構成される。
前述の研磨工具100は、研磨材製造装置1のワーク保持側壁部材11に回転可能に挿入されている。
【0060】
トルクセンサ2は、研磨材12A(研磨工具100)が回転する際のトルクを測定して、制御手段6としてのPC(Personal Computer)に伝える。このトルクの変化により、研磨の状況が確認できる。なお、PC6は、A/D変換ボード61や抵抗62を介して、トルクセンサ2や高圧電源部3と接続されている。
高圧電源部3は、電圧印加部正極18Aと電圧印加部負極18Bを介してERGに直流の高電圧をかけ、ER効果を発揮させる。電圧印加部正極18Aはワーク保持側壁部材11に形成された孔を通してワーク10に電気的に接続されている。電圧印加部負極18BはERG固着部材12に形成されたER流体注入部13の先端に接続されている。
【0061】
ここで所定のトルクを設定して、そのトルクに応じて自動的に電圧を上げ下げしてもよいし、また、手動で電圧を変化させてもよい。なお、電圧を上げれば、ERGは硬くなり、電圧を下げると、ERGは柔らかく(当初の硬さに)なる。
モータ4は、動力伝達手段(ベルト)5を介して所定の回転数にて研磨工具100を回転させる。そして、研磨材12Aによりワーク10の表面が研磨される。
【0062】
上述のような本実施形態によれば、ERGの特質を生かした研磨材12A、研磨工具100およびこれらを備えた研磨装置200を得ることができる。
すなわち、ゲル化する前のER流体がワーク表面に倣った形状となり、その形状を保ってゲル化するため、ワーク毎に最適な研磨形状を持った研磨材12A、研磨工具100を製造することができる。
さらに、この研磨材12Aは、ワーク10表面に押し付けられると、ERGが適度の弾性を持ったゲルであるので、ERG自体がワークの表面形状に倣った形状に変形するため、研磨材12Aを必ずしも前もってワークの表面形状に合わせて製造する必要がなく、研磨材製造の自由度が非常に高くなる。
【0063】
また、この研磨工具100は、砥粒がERGの表層部分に保持された研磨材12Aを備えているため、ワーク10と接触した際に、ER効果が直接的に砥粒の動きに反映して、効率的に研磨を行うことができる。
すなわち、ワーク10の表面粗度に応じてERGの硬度を変化させることができるので、被加工物の表面粗度が大きなときはERGに高い電圧をかけて硬くして、被加工物の表面粗度が小さくなったときはERGにかける電圧を下げて柔らかくすることで研磨を効率的に行うことができる。
さらに、ERG中に分散相粒子が分散されているので、分散相粒子が沈降することがなくER効果が長期間安定して得られる。
【0064】
また、本実施形態における研磨材の製造方法では、ERGを製造した後、砥粒をそのERGの表面に散布するという簡便な方法で研磨材を得ることができる。
さらに、ERGの表面が、ワーク10の研磨予定面に応じた形状をしているため、研磨を極めて効率的に行うことができる。例えば、プラスチックレンズ成型用の金型を研磨する場合、研磨材の表面を凸面や凹面にする必要があり、各々の場合に合わせて研磨材を交換しなければならないが、本実施形態の製造方法によれば、自動的にその金型の表面形状に合わせた研磨材が得られるため、極めて便利である。
【0065】
また、本実施形態の研磨方法では、ERGと砥粒とを含む研磨材を用いて、前記ERGに印加した電圧を制御しながら研磨することを特徴としている。それ故、ERGに印加した電圧を制御して、ERGの硬度を制御することができ、ワーク10の表面粗度に応じた適切な研磨が可能となる。
【0066】
なお、本発明は前記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良は、本発明に含まれるものである。その他、本発明を実施する際の具体的な構造および形状等は、本発明の目的を達成できる範囲内で他の構造等としてもよい。
【0067】
例えば、前記した実施形態では、ER流体をクリアランス部15にてゲル化してERGを製造したが、前もって、装置外でERGを製造した後、砥粒を散布して研磨材を構成してもよい。
【0068】
本実施形態では、研磨対象であるワーク10が導電性の金型であるため、両側電極を用いることができた。これに対して、例えば、プラスチックのような非導電性物質を直接研磨する際には、図5に模式的に示したような片側電極500を用いればよい。この片側電極500は、正電極500Aと負電極500Bが交互に並んで構成されており、非導電性ワーク600に接しているERG700に対して、反対側から電圧をかけることができる。
【実施例】
【0069】
以下、研磨に関する実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例の内容に何ら制約されるものではない。
[実施例1〜4]
(研磨材の性状および研磨条件)
各実施例とも、前記した実施形態に記載した以外の具体的条件は以下の通りである。
ERG厚さ:0.5mm(ERGは円盤状)
回転速度 :50rpm
ワーク :SUS420
【0070】
また、各実施例で用いた砥粒は以下のとおりである
実施例1:GC#600
実施例2:GC#1200
実施例3:GC#2000
実施例4:ダイヤモンドスラリー#4000
【0071】
各実施例ともに、2KV/mmの電圧で、算術平均粗さ(中心線平均粗さ)Raが定常状態になるまで各ワーク(SUS420)を研磨した後、1KV/mmでRaが定常状態になるまで研磨し、さらに、無電場でRaが定常状態になるまで研磨を行った。
【0072】
( 結 果 )
図6〜図9に、上記実施例1〜4における各ワーク表面の算術平均粗さ(中心線平均荒さ)の変化を示した。いずれの場合も、ワークの表面を良好に研磨することができ、電圧を変えることで研磨面の精度を調節できることも確認できた。
また、図6〜図9では、各々、図(A)がワーク中央のRaの推移をあらわし、図(B)がワーク外周のRaの推移をあらわしている。ワーク中央はワーク周辺部に比べて研磨速度が遅いにもかかわらず、研磨効率は、ワーク周辺部と同様に良好であった。
【0073】
図10には、ER効果発揮のメカニズム(推定)を示した。無電場時(図10(A))では電極7がERG8を構成するER粒子81によって支えられているが、電場印加時(図10(B))では、ER粒子81が奥に入ってゲル部82が電極7に粘着するものと考えられる。
次に、図11のように、このゲル部82の表面に砥粒83が存在している場合、無電場時には、滑り特性の高いER粒子81が表面に多く存在し、また、砥粒83も固定されることがなく電極7とERG8との間隙で滑りやすいため、研磨効率は悪い。しかし、高電圧をかけると、ER粒子81がゲル内部に潜り込むと同時に、逆にゲル部82が砥粒83を押し上げるように働き、砥粒83を電極7に圧接するものと考えられる。さらに、ゲル部82の粘度と粘着力が非常に増して砥粒83を強く固定するため、電圧が高くなるほど電極7(本願のワーク10に相当)への研磨力が増すよう作用するものと推定される。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の研磨材は、プラスチックレンズ等の射出成形に用いられる金型の研磨に好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の実施形態に係る研磨材製造装置の断面図。
【図2】前記実施形態における研磨材製造装置の分解斜視図。
【図3】前記実施形態における研磨工具の斜視図。
【図4】前記実施形態における研磨装置の模式図。
【図5】他の実施形態における片側電極の模式図。
【図6】本発明の実施例におけるRaの推移を示す図(GC#600)
【図7】本発明の実施例におけるRaの推移を示す図(GC#1200)
【図8】本発明の実施例におけるRaの推移を示す図(GC#2000)
【図9】本発明の実施例におけるRaの推移を示す図(ダイヤモンドスラリー#4000)
【図10】本発明の実施例におけるERG効果発現のメカニズムを推定した図。
【図11】本発明の実施例における研磨材の効果発現のメカニズムを推定した図。
【符号の説明】
【0076】
1…研磨材製造装置、10…ワーク、11…ワーク保持側壁部材、12…ERG固着部材、12A…研磨材、13…ER流体注入部、14…ワーク保持基台部材、15…クリアランス部、16…クリアランス調整部材、17…排出口、18…電圧印加部、19…装置基台、81…ER粒子、82…ゲル部、83…砥粒、100…研磨工具、200…研磨装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気レオロジーゲル(以後、「ERG」ともいう)と砥粒とを含む研磨材。
【請求項2】
請求項1に記載の研磨材において、
前記砥粒が前記ERGの表層部分に保持されていることを特徴とする研磨材。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の研磨材において、
前記ERG中の液体成分が電気絶縁性媒体で、その電気絶縁性媒体中に分散相粒子が分散されていることを特徴とする研磨材。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の研磨材において、
前記ERGが、シロキサン架橋体中に電気絶縁性媒体および分散相粒子が分散された構造を持つことを特徴とする研磨材。
【請求項5】
請求項4に記載の研磨材において、
前記ポリシロキサン架橋体がハイドロジェンシリコーンおよび不飽和基含有化合物のヒドロシリル化反応生成物であることを特徴とする研磨材。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の研磨材が工具本体に固着されていることを特徴とする研磨工具。
【請求項7】
請求項6に記載の研磨工具を備えていることを特徴とする研磨装置。
【請求項8】
電気粘性流体をゲル化して研磨材とする研磨材の製造方法であって、
前記電気粘性流体を被加工物の研磨予定面に接触した状態でゲル化を行い、
前記ゲル化後の電気粘性流体の被加工物との接触面を被加工物から解離して、
砥粒を前記接触面に散布することを特徴とする研磨材の製造方法。
【請求項9】
砥粒を含んだ電気粘性流体をゲル化して研磨材とする研磨材の製造方法であって、
前記電気粘性流体を被加工物の研磨予定面に接触した状態でゲル化を行い、
前記ゲル化後の電気粘性流体の被加工物との接触面を被加工物から解離することを特徴とする研磨材の製造方法。
【請求項10】
研磨材を先端に備えた研磨工具の製造方法であって、
前記研磨材は、
電気粘性流体を被加工物の研磨予定面に接触した状態でゲル化を行い、
前記ゲル化後の電気粘性流体の被加工物との接触面を被加工物から解離して、
砥粒を前記接触面に散布したものであることを特徴とする
研磨工具の製造方法。
【請求項11】
研磨材を先端に備えた研磨工具の製造方法であって、
前記研磨材は、
砥粒を含んだ電気粘性流体を被加工物の研磨予定面に接触した状態でゲル化を行い、
前記ゲル化後の電気粘性流体の被加工物との接触面を被加工物から解離したものであることを特徴とする研磨工具の製造方法。
【請求項12】
ERGと砥粒とを含む研磨材を用いて、前記ERGに印加した電圧を制御しながら研磨することを特徴とする研磨方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−281424(P2006−281424A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−108581(P2005−108581)
【出願日】平成17年4月5日(2005.4.5)
【出願人】(000003458)東芝機械株式会社 (843)
【出願人】(000224123)藤倉化成株式会社 (124)
【Fターム(参考)】