説明

破片検出センサ

【課題】 流体中に混入する破片の有無または大きさまたは蓄積量を、混入する破片の量に左右されずに安定良く検出できる破片検出センサを提供する。
【解決手段】 この破片検出センサは、流体中に混入する破片を検出する破片検出センサであって、3つの電極5A,5B,7と、これら3つの電極のうち少なくとも1つの電極7を動かすことによっていずれか2つの電極間に前記破片を挟み込ませる電極移動機構9と、測定・判定手段17とを備える。測定・判定手段17は、挟み込んだ2つの電極のギャップを測定することで、前記破片の有無、大きさ、および蓄積量のいずれかを検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、潤滑油などの流体中に混入した破片を検出する破片検出センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車や航空機、ヘリコプタ等の潤滑油中に、エンジンやトランスミッション、軸受等の摩耗や破損によって生じた金属破片あるいは金属粉が混入していることを検出する装置として、メタルチェックセンサあるいはオイルチェックセンサあるいはデブリスセンサなどと呼ばれる金属片検出装置が提案されている(特許文献1〜5)。
このような金属片検出装置は、エンジンやギアボックス、軸受等の各種装置の健全性を検査する手段として使用され、検査対象の装置の各部位における劣化の情報をこれらの部位に破壊的な故障が生じる前に得ることができる。
【特許文献1】特開昭55−052943号公報
【特許文献2】特開昭61−253455号公報
【特許文献3】特開2000−321248号公報
【特許文献4】特許2703502号公報
【特許文献5】特許2865857号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
現在、特に航空機用ジェットエンジンにおいて、その小型化と高速化が求められている。従来より、航空機用ジェットエンジンの主軸用軸受では、その転動体に金属材料が用いられてきたが、現状の転動体材料では更なる高速化が困難な状況にある。高速化に耐えうるためには、軸受の転動体を窒化珪素(Si3N4 )等を原材料とするセラミック玉やセラミックころとする必要がある。また、ジェットエンジン用軸受にセラミック玉やセラミックころを適用した場合、大きく性能が向上し、ひいてはジェットエンジンの効率が向上し、環境負荷を軽減できる可能性がある。
一方、従来の金属片検出装置では、金属材料あるいは磁性材料あるいは導電性材料の破片のみ検出が可能であり、非金属、非磁性、非導電性を特徴とするセラミック材の検出は不可能であった。したがって、例えばセラミック製の転動体を使用した軸受の場合には、破壊的な故障が生じる前に、金属片検出装置を用いて劣化や損傷に関する情報を得ることができない。そのため、現状ではこの様な構成の軸受は、用途が限定された航空機にしか使用されていない。
【0004】
そこで、このような課題を解決する破片検出センサとして、2つの対面する平板を設け、これら2つの平板のうち少なくとも1つの平板を平板移動機構で対面方向に動かすことで流体中に混入する破片を前記2つの平板間に挟み込むようにし、この状態での2つの平板間のギャップ変動を静電容量の変化やインダクタンス変化などとして検出するギャップセンサを設け、そのギャップセンサの測定値から前記破片の有無や大きさ、あるいは蓄積量を検出する構成のものが考えられる。
【0005】
しかし、この構成では、検査対象の潤滑油などの流体を前記2つの平板間に流して流体中の破片を2つの平板で挟む場合に、流体中に検出対象の破片がごく僅かしか存在しないと、破片が挟み込まれる確率が低くなってしまうので、できるだけ検出領域を大きくして検出確率を高める必要がある。
【0006】
この発明の目的は、流体中に混入する破片の有無または大きさまたは蓄積量を、混入する破片の量に左右されずに安定良く検出できる破片検出センサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の破片検出センサは、流体中に混入する破片を検出する破片検出センサであって、3つの電極を備え、これら3つの電極のうち少なくとも1つの電極を動かすことによっていずれか2つの電極間に前記破片を挟み込ませる電極移動機構と、挟み込んだ2つの電極のギャップを測定することで、前記破片の有無、大きさ、および蓄積量のいずれかを検出する測定・判定手段を設けたものである。
この構成によると、3つの電極のうち少なくとも1つの電極を電極移動機構で動かすことによって、いずれか2つの電極間に破片を挟み込み、挟み込んだ2つの電極のギャップを測定・判定手段で測定することで、破片の有無、大きさ、および蓄積量のいずれかを検出するものとしているので、2つの電極間に破片が挟み込まれる確率が高くなり、流体中に混入する破片の有無または大きさまたは蓄積量を、混入する破片の量に左右されずに安定良く検出できる。
また、上記破片検出センサを自動車,航空機,ヘリコプタ等に組み込んだ場合、潤滑油中に混入した破片の状態をモニターすることができるため、故障の前兆あるいは故障の診断を行い、運転の停止や部品交換が必要なことを知らせることができ、安全性が向上する。また、機械部品の寿命や経年変化を予測できるため、部品の無駄な交換や遅れた交換がなくなり、経済性が向上する。
【0008】
この発明において、3つの電極のうち、上側2つの電極の間、および下側2つの電極の間に、それぞれギャップを測定するギャップ測定手段を設け、前記電極移動機構は、上側2つの電極間および下側2つの電極間に破片を挟み込むように、中央の電極を上下動作させるものであっても良い。この構成の場合、中央の電極の1回のストロークの両端でそれぞれ検出動作を行えることになり、検出動作の効率も高めることができる。
【0009】
この発明において、中央の電極を動作させる電極移動機構が、前記流体を流す流路の外部に設置され、この電極移動機構は、固定側の2つの電極のうちのいずれか一方の電極に設けた孔を貫通した貫通体を介して可動電極を動かすものであっても良い。この構成の場合、3つの電極をコンパクトに配置できる。
【0010】
この発明において、前記測定・判定手段は、破片を挟み込んだ2つの電極間の静電容量を測定する静電容量測定手段と、この静電容量測定手段の出力から前記2つの電極間のギャップの大きさを推定する判定手段とで構成されるものであっても良い。
【0011】
この発明において、前記測定・判定手段は、前記破片を挟み込んだ2つの電極間のギャップを測定する変位センサを有し、前記静電容量測定手段の出力と前記変位センサの出力とから、前記2つの電極間に挟まれた破片の導電性と非導電性の判別をする導電性・非導電性判別部を有するものとしても良い。この構成の場合、検出した破片が金属材料等の導電性材料であるか、樹脂・セラミック材料のような非導電性材料であるかを識別することができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明の破片検出センサは、流体中に混入する破片を検出する破片検出センサであって、3つの電極を備え、これら3つの電極のうち少なくとも1つの電極を動かすことによっていずれか2つの電極間に前記破片を挟み込ませる電極移動機構と、挟み込んだ2つの電極のギャップを測定することで、前記破片の有無、大きさ、および蓄積量のいずれかを検出する測定・判定手段を設けたため、流体中に混入する破片の有無または大きさまたは蓄積量を、混入する破片の量に左右されずに安定良く検出できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
この発明の第1の実施形態を図1ないし図5と共に説明する。図1は、この実施形態の破片検出センサの概略構成図を示す。この破片検出センサは、検査対象である流体中に混入する破片を検出するセンサであって、3つの電極5A,5B,7と、これら3つの電極5A,5B,7のうち少なくとも1つの電極を動かすことによっていずれか2つの電極間に破片13(図4)を挟み込ませる電極移動機構9と、挟み込んだ2つの電極のギャップを測定することで、前記破片13の有無、大きさ、および蓄積量のいずれかを検出する測定・判定手段17とを備える。この破片検出センサの場合、潤滑油が検査対象の流体とされる。
【0014】
前記3つの電極5A,5B,7と電極移動機構9はセンサユニット1に組み込まれる。このセンサユニット1はベース部材4を有し、そのベース部材4には検査対象である潤滑油を流す油路4aが貫通して設けられている。油路4aの一端には給油配管2が接続され、油路4aの他端には排油配管3が接続されている。この場合、潤滑油は、給油配管2の油路2aからベース部材4の油路4aを経由し、排油配管3の油路3aに流れる。例えば、給油配管2はエンジンやギアボックス、軸受等で使用された潤滑油が収集される配管に接続され、排油配管3はオイルタンクへの配管に接続される。
【0015】
3つの電極5A,5B,7はいずれも導電性材料からなり、前記ベース部材4の油路4aの途中において、その油路4aの貫通方向と直交する方向に互いに平行となるように並べて配置される。そのうち1つの電極5Aは平板状とされた固定電極であって、絶縁材料からなる電極固定部材6Aを介してベース部材4に電気的に絶縁された状態で固定されている。この固定電極5Aは、その表面が油路4a内に臨む向きとなるようにベース部材4の下側に配置される。もう1つの電極5Bも平板状とされた固定電極であって、絶縁材料からなる別の電極固定部材6Bを介してベース部材4に電気的に絶縁された状態で固定されている。この固定電極5Bは、その表面が油路4a内に臨み前記下側の固定電極5Aと対面する向きとなるようにベース部材4の上側に配置される。残る1つの電極7は、平板状の電極基体7aと、この電極基体7aの片面から垂直に延びて前記固定電極5Bおよび電極固定部材6Bに設けられた孔19を貫通する貫通体7bとからなる断面T字状の可動電極であって、その貫通体7bの後端が電極移動機構9の可動軸9aに連結され、可動軸9aと一体に進退自在とされる。この可動電極7は、その電極基体7aが前記油路4aにおける前記両固定電極5A,5B間の中央部に位置して電極基体7aの各片面が両固定電極5A,5Bにそれぞれ対面するように配置される。なお、上側の固定電極5Bを貫通する可動電極7の貫通体7bは、固定電極5Bに対して電気的に絶縁状態が保たれている。貫通体7bだけを絶縁材料とすることにより、固定電極5Bとの間が電気的絶縁状態となるようにしても良い。
【0016】
電極移動機構9はプッシュプルソレノイド等からなる直動アクチュエータであって、その可動軸9aが前記ベース部材4の油路4aの貫通方向と直交する方向に進退自在となるように、アクチュエータ固定部材10を介してベース部材4に固定されている。電極移動機構9の可動軸9aの先端部には、絶縁材料からなる電極固定部材8を介して、前記可動電極7の貫通体7bが電気的に絶縁された状態で固定されている。ここでは電極移動機構9としてプッシュプルソレノイドからなる直動アクチュエータを使用した例を示しているが、直線動作を行えるものであれば、その種類は問わない。例えば、電動モータとボールネジを組み合わせたものでも良いし、空圧や油圧を使用したものでも良い。直動アクチュエータを用いた場合は、回転駆動源を用いる場合と異なり、回転を直線運動に変換する機構が不要で、破片検出センサを簡素でコンパクトな構成とできる。
電極移動機構9を動作させると、その可動軸9aに電極固定部材8を介して連結された可動電極7が進退して、両固定電極5A,5Bに近づいたり、離れたりする。
【0017】
電極移動機構9の可動軸9aは、その後端部に固定されたばね受け部材11とアクチュエータ固定部材10との間に介在させた圧縮ばね12により、進出方向に付勢される。
図1は、電極移動機構9に電源を投入して可動軸9aの進出を規制する第1のモードに設定した状態を示し、このとき可動軸9aは圧縮ばね12を圧縮させて若干後退しており、可動電極7は両固定電極5A,5Bから共に離れた中央位置にある。一方、電極移動機構9に電源を投入していない状態では、圧縮ばね12が復元する力によって、可動電極7は図2のように下側の固定電極5Aに接触する位置まで進出する。可動電極7と固定電極5Aとが接触した状態で、可動電極7には圧縮ばね12による予圧が与えられているので、可動電極7と固定電極5とは一定の圧力で接触した状態となる。図3は、電極移動機構9に電源を投入して、可動軸9aを図1の第1のモードの状態よりも上側に後退させる第2のモードに設定した状態を示し、このとき可動電極7は上側の固定電極5Bに接触する位置まで後退する。
【0018】
測定・判定手段17は、静電容量測定手段14と変位センサ16と判定手段15とでなる。静電容量測定手段14は、可動電極7と各固定電極5A,5Bとの間の静電容量を測定する手段であり、静電容量測定手段14の入力端子14a,14bがそれぞれ可動電極7と固定電極5A,5Bに接続される。変位センサ16は、可動電極7と各固定電極5A,5Bとの間のギャップを測定するギャップセンサであり、例えば下側の固定電極5Aに埋め込んだ状態で設けられる。この場合、変位センサ16は、直接的には可動電極7と下側の固定電極5Aの間のギャップを測定することになるが、両固定電極5A,5B間の距離および可動電極7の電極基体7aの厚みが一定であることより、可動電極7と下側の固定電極5Aの間のギャップ測定値から可動電極7と上側の固定電極5Bの間のギャップも自動的に算出される。
【0019】
ここでは、変位センサ16として例えば渦電流式のものが用いられるが、磁気式,光学式等の他の方式のものを用いても良い。判定手段15は、静電容量測定手段14の測定値と変位センサ16の測定値とから潤滑油中の破片13の有無、破片13の材質、大きさ、または蓄積量を推定する手段であり、例えば測定値と判定結果の関係を定めたテーブルまたは演算式の判定規則を有し、その判定規則と測定値とを比較して判定結果を出力する。判定手段15は、その機能の一部として検出された破片13が導電性材料であるか非導電性材料であるかを判別する導電性・非導電性判別部18を有する。
【0020】
次に、この破片検出センサを用いて、エンジン,ギアボックス,軸受等の装置の摩耗や破損によって生じた各種材料からなる破片が混入している潤滑油から、その破片を検出する動作を説明する。
上記したように、電極移動機構9に電源を投入して例えば第2のモードに設定すると、図3のように可動軸9aが後退して、その可動軸9aに電極固定部材8を介して設置された可動電極7が下側の固定電極5Aから離れ、可動電極7は上側の固定電極5Bに接触する位置となる。
【0021】
次に、検査対象の流体として、エンジン,ギアボックス,軸受等に使用されている潤滑油を給油配管2の油路2aからベース部材4の油路4a内を経由して排油配管3の油路3aに流す。このとき、ベース部材4の油路4aを流れる潤滑油中に、エンジンやギアボックス、軸受等の摩耗や破損によって生じた破片13が混入していると、その破片13は可動電極7と下側の固定電極5Aとの間を流れる。
この状態のもとに、電極移動機構9への電源の投入を停止すると、圧縮ばね12の復元力により、可動軸9aと一体に可動電極7が下側の固定電極5Aに接近する方向に進出して、図4のように可動電極7と下側の固定電極5Aとの間に破片13が挟み込まれる。これにより、可動電極7と固定電極5Aとの間には、破片13の厚み分だけギャップdが生じる。このギャップdを変位センサ16が測定する。同時に、このギャップdにより、2つの電極5A,7間には静電容量Cが形成される。
【0022】
ところで、一般的に、平行平板間の静電容量Cは
C=εoεrS/d ……(1)
となることが知られている。すなわち、静電容量C[F]は、真空中の誘電率εo(8.854 ×10-12 [F/m])と潤滑油の誘電率εr と平行平板の面積S[m2 ]とを掛け合わせたものを、平行平板間のギャップd[m]で割った値となる。潤滑油の誘電率εr は一定であり、平行平板の面積Sが一定であると、静電容量Cの値は平行平板間のギャップdに依存する。
そこで、2つの電極5A,7間の静電容量Cを前記静電容量測定手段14で測定することにより、変位センサ16による測定とは別の方法で電極5A,7間のギャップdの値を検出でき、その値によっても破片13の大きさや蓄積量を推定することができる。
【0023】
ここで、挟み込まれた破片13が導電性材料であると2つの電極5A,7間は短絡状態となるので、静電容量Cの測定から求められるギャップd2は、ゼロもしくは非常に小さな値となる。これに対して、変位センサ16によって得られるギャップd1は、静電容量測定手段14の測定値から推定されるギャップd2とは異なった値となる。このように、2 つの測定結果の違いを検出して、検出された破片13が導電性であるか非導電性であるかを判別することが可能となる。すなわち、判定手段15の導電性・非導電性判別部18は検出された破片13が導電性材料か非導電性材料かを判断する機能を有し、
d1≫d2 ……(2)
となる場合には、検出された破片13が導電性のものであると判断する。また、2 つの値d1,d2が互いに近い値であって、かつゼロギャップでない場合、つまり
d1≒d2(≠0) ……(3)
となる場合には、検出された破片13が非導電性のものであると判断する。また、判定手段15は、破片13の大きさを、変位センサ16の検出値d1で代表して出力する。
【0024】
一方、2つの電極5A,7間に破片13がない場合にも、2つの電極5A,7間は短絡状態となるので、静電容量Cの測定から求められるギャップd2は、ゼロもしくは非常に小さな値となる。この場合、変位センサ16によって得られるギャップd1もゼロギャップとなるので、これらの結果から判定手段15は破片13が無いと判断する。
【0025】
次に、図4の状態から、電極移動機構9に電源を投入して第2のモードに設定すると、図5のように可動軸9aが第1のモードよりもさらに後退して、可動電極7と上側の固定電極5Bとの間に破片13が挟み込まれる。これにより、可動電極7と上側の固定電極5Bとの間には、破片13の厚み分だけギャップdが生じる。このギャップdを変位センサ16が測定する。この場合、変位センサ16は、下側の固定電極5Aと可動電極7の間のギャップ測定値を基にして、可動電極7と上側の固定電極5Bの間のギャップを間接的に測定することになる。同時に、このギャップdにより、2つの電極5B,7間には静電容量Cが形成される。ここでも、可動電極7と下側の固定電極5Aとの間に破片13が挟まれる場合と同様にして、破片13の有無、大きさ、蓄積量が検出され、さらには検出された破片13が導電性か非導電性かが判断される。
【0026】
図6は、図1の破片検出センサにおける測定・判定手段17の構成要素である静電容量測定手段14の一構成例を示す。この静電容量測定手段14は、直列接続した発振器20と電流測定手段21とでなり、発振器20から可動電極7と固定電極5A,5Bに交流電流を流し、電極5A,7間および電極5B,7間の静電容量Cをインピーダンスに換算して電流測定手段21で測定する。この場合、測定したインピーダンスから静電容量Cを求めることもできる。その他の構成は図1の場合と同様である。
【0027】
図7は、図1の破片検出センサにおける測定・判定手段17の構成要素である静電容量測定手段14の他の構成例を示す。この静電容量測定手段14は、OPアンプ32で構成した発振器30と、この発振器30の発振周波数から静電容量を推定する周波数対応容量推定手段31とでなり、測定した発振器30の周波数から電極5A,7間および電極5B,7間の静電容量Cを推定する。この場合の発振器30はリラクセーションオシレータ(relaxation oscillator )と呼ばれ、OPアンプ32に抵抗33Ra ,33Rb ,33Rt 、およびコンデンサ33Ct を接続して構成される。抵抗33Ra ,33Rb ,33Rt の抵抗値をRa ,Rb ,Rt 、コンデンサ33Ct の静電容量をCt とすると、発振周波数fは、およそ、
f=1/(2Rt Ct ) ……(4)
となることが知られている。ここでは、前記発振器30のコンデンサ33Ct が前記電極5A,7間および電極5B,7間の静電容量Cに置き換えられることで、その静電容量Cが推定される。
【0028】
図8は、図1の破片検出センサにおける測定・判定手段17の構成要素である静電容量測定手段14のさらに他の構成例を示す。この静電容量測定手段14は、充放電手段40と、その充電および放電の繰り返しにおける過度現象によって生じる充放電時間より静電容量を推定する充放電時間対応静電容量推定手段41とでなる。充放電手段40は、充電抵抗42と充電スイッチ43の直列回路部を被測定静電容量Ct に直列接続すると共に、放電スイッチ44と放電抵抗45の直列回路部を被測定静電容量Ct に並列接続した回路である。充放電時間対応静電容量推定手段41は、充放電手段40での充放電電圧を監視する電圧測定手段46と、この電圧測定手段46が監視する電圧が規定電圧になるまでの時間を測定することにより、被測定静電容量Ct を推定する判断手段47とでなる。
【0029】
この場合、例えば、充電スイッチ43をオンにして充電を開始し、被測定静電容量Ct の充電電圧を電圧測定手段46で監視して、その充電電圧が規定電圧になるまでの充電時間を判断手段47で測定することにより、被測定静電容量Ct を推定できる。または、予め所定電圧まで充電させた被測定静電容量Ct に対して、放電スイッチ44をオンにして放電を開始し、被測定静電容量Ct の放電電圧を電圧測定手段46で監視して、その放電電圧が規定電圧になるまでの放電時間を判断手段47で測定することにより、被測定静電容量Ct を推定できる。ここでは、前記被測定静電容量Ct が電極5A,7間および電極5B,7間の静電容量Cに置き換えられることで、その静電容量Cが推定される。
【0030】
このように、この実施形態の破片検出センサでは、3つの電極5A,5B,7のうち少なくとも1つの電極(可動電極)7を電極移動機構9で動かすことによって、いずれか2つの電極間(下側の固定電極5Aと可動電極7との間、および上側の固定電極5Bと可動電極7との間)に破片13を挟み込み、挟み込んだ2つの電極のギャップを測定・判定手段17で測定することで、破片13の有無、大きさ、および蓄積量のいずれかを検出するものとしているので、2つの電極間に破片13が挟み込まれる確率が高くなり、潤滑油中に混入する破片13の有無または大きさまたは蓄積量を、混入する破片13の量に左右されずに安定良く検出できる。
また、上記破片検出センサを自動車,航空機,ヘリコプタ等に組み込んだ場合、潤滑油中に混入した破片の状態をモニターすることができるため、故障の前兆あるいは故障の診断を行い、運転の停止や部品交換が必要なことを知らせることができ、安全性が向上する。また、機械部品の寿命や経年変化を予測できるため、部品の無駄な交換や遅れた交換がなくなり、経済性が向上する。
【0031】
また、この実施形態では、3つの電極5A,5B,7のうち、上側2つの電極(固定電極5Bと可動電極7)の間、および下側2つの電極(可動電極7と固定電極5A)の間に、それぞれギャップを測定するギャップ測定手段(変位センサ16と静電容量測定手段14)を設け、電極移動機構(直動アクチュエータ)9は、上側2つの電極5B,7間および下側2つの電極7,5A間に破片13を挟み込むように、中央の電極(可動電極)7を上下動作させるものとしているので、中央の電極(可動電極)7の1回のストロークの両端でそれぞれ検出動作を行えることになり、検出動作の効率も高めることができる。
【0032】
また、この実施形態では、中央の電極(可動電極)7を動作させる電極移動機構(直動アクチュエータ)9を、検査対象の流体(潤滑油)を流す流路(油路)4aの外部に設置し、2つの固定電極5A,5Bのうち一方の固定電極5Bに設けた孔19を貫通する貫通体7bを介して可動電極7を動かすものとしているので、3つの電極5A,5B,7をコンパクトに配置できる。
【0033】
さらに、この実施形態では、固定電極5Aと可動電極7の間、および固定電極5Bと可動電極7の間の静電容量を静電容量測定手段14で測定すると共に、これら各2つの電極間のギャップを変位センサ16で測定し、これら二種類のセンサ14,16の出力から破片13の導電性と非導電性の判別をする導電性・非導電性判別部18を有するものとしているので、検出した破片13が金属材料等の導電性材料であるか、樹脂・セラミック材料のような非導電性材料であるかを識別することができる。
【0034】
なお、前記2つの電極5,7の間のギャップを測定する手段としては、前記実施形態のように、静電容量測定手段14と変位センサ16を併用する場合に限らず、静電容量測定手段14だけを用いても良いし、変位センサ16だけを用いても良い。また、静電容量測定手段14だけを用いる場合、各2つの電極における少なくともいずれか一方の電極対向面に絶縁材料のコーティング層を設けるものとすれば、2つの電極間に挟み込まれる破片13が導電性材料からなる場合であっても2つの電極間が短絡しないので、破片13が導電性材料であるか非導電性材料であるかを問わず2つの電極間の静電容量を正しく測定でき、破片13の有無、大きさ、蓄積量を正確に検出できる。
【0035】
図9は、この発明の破片検出センサの他の実施形態を示す。この実施形態では、図1に示す実施形態における変位センサ16を、アクチュエータ固定部材10における可動軸9aの後端と対向する位置に設けたものである。
【0036】
この実施形態の場合、変位センサ16は、可動軸9aの変位量を測定することになるが、可動電極7は電極固定部材8を介して可動軸9aに連結されているため、可動軸9aの変位量から、固定電極5Aと可動電極7の間のギャップd、および固定電極5Bと可動電極7の間のギャップdを検出することができる。
【0037】
図10は、この発明の破片検出センサのさらに他の実施形態を示す。この実施形態では、図1に示す実施形態において、判定手段15の次段に記録手段50を追加して、潤滑油中に混入した破片13の状態をリアルタイムでモニターできるようにしたものである。記録された数値の変化履歴により潤滑油の状態を推測し、ゴミや破片の増加傾向などの情報を出力することができる。静電容量測定手段14は、図6〜図8に示したいずれの構成のものを使用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】この発明の第1の実施形態に係る破片検出センサの電源投入時の第1モードでの状態を示す概略構成図である。
【図2】同破片検出センサの電源投入停止時の概略構成図である。
【図3】同破片検出センサの電源投入時の第2モードでの状態を示す概略構成図である。
【図4】同破片検出センサの検出動作の説明図である。
【図5】同破片検出センサの検出動作の他の説明図である。
【図6】同破片検出センサにおける静電容量測定手段として一構成例を用いた場合の検出動作の説明図である。
【図7】同破片検出センサにおける静電容量測定手段の他の構成例を示す回路図である。
【図8】同破片検出センサにおける静電容量測定手段のさらに他の構成例を示す回路図である。
【図9】この発明の他の実施形態に係る破片検出センサの検出動作の説明図である。
【図10】この発明のさらに他の実施形態に係る破片検出センサの検出動作の説明図である。
【符号の説明】
【0039】
4a…油路
5A,5B…固定電極
7…可動電極
7b…貫通体
9…電極移動機構
13…破片
14…静電容量測定手段
15…判定手段
16…変位センサ
17…測定・判定手段
18…導電性・非導電性判別部
19…孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体中に混入する破片を検出する破片検出センサであって、3つの電極を備え、これら3つの電極のうち少なくとも1つの電極を動かすことによっていずれか2つの電極間に前記破片を挟み込ませる電極移動機構と、挟み込んだ2つの電極のギャップを測定することで、前記破片の有無、大きさ、および蓄積量のいずれかを検出する測定・判定手段を設けた破片検出センサ。
【請求項2】
請求項1において、3つの電極のうち、上側2つの電極の間、および下側2つの電極の間に、それぞれギャップを測定するギャップ測定手段を設け、前記電極移動機構は、上側2つの電極間および下側2つの電極間に破片を挟み込むように、中央の電極を上下動作させるものである破片検出センサ。
【請求項3】
請求項2において、中央の電極を動作させる電極移動機構が、前記流体を流す流路の外部に設置され、この電極移動機構は、固定側の2つの電極のうちのいずれか一方の電極に設けた孔を貫通した貫通体を介して可動電極を動かすものである破片検出センサ。
【請求項4】
請求項1において、前記測定・判定手段は、破片を挟み込んだ2つの電極間の静電容量を測定する静電容量測定手段と、この静電容量測定手段の出力から前記2つの電極間のギャップの大きさを推定する判定手段とで構成される破片検出センサ。
【請求項5】
請求項4において、前記測定・判定手段は、前記破片を挟み込んだ2つの電極間のギャップを測定する変位センサを有し、前記静電容量測定手段の出力と前記変位センサの出力とから、前記2つの電極間に挟まれた破片の導電性と非導電性の判別をする導電性・非導電性判別部を有するものとした破片検出センサ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−107151(P2008−107151A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−288757(P2006−288757)
【出願日】平成18年10月24日(2006.10.24)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】