説明

破片検出センサ

【課題】 低コストでコンパクトに構成でき、長期安定性・信頼性の確保が可能な破片検出センサを提供する。
【解決手段】 この破片検出センサは、流体中に混入する破片を検出するセンサであって、2つの対面する平板5,7と、これら2つの平板5,7のうち少なくとも1つの平板を対面方向に動かして前記2つの平板5,7間に前記破片を挟み込ませる平板移動機構9と、前記2つの平板5,7間のギャップを測定することで、前記破片の有無、大きさ、および蓄積量のいずれかを検出する測定・判定手段17とを備える。前記2つの平板5,7のうちの可動の平板7、またはこの可動の平板7を保持する保持部材が磁性材料で構成される。前記平板移動機構9は、前記流体が流れる流路4aに対する外部に設けた電磁石により前記平板7を吸引して前記平板7を動かすものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、潤滑油などの流体中に混入した破片を検出する破片検出センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車や航空機、ヘリコプタ等の潤滑油中に、エンジンやトランスミッション、軸受等の摩耗や破損によって生じた金属破片あるいは金属粉が混入していることを検出する装置として、メタルチェックセンサあるいはオイルチェックセンサあるいはデブリスセンサなどと呼ばれる金属片検出装置が提案されている(特許文献1〜5)。
このような金属片検出装置は、エンジンやギアボックス、軸受等の各種装置の健全性を検査する手段として使用され、検査対象の装置の各部位における劣化の情報をこれらの部位に破壊的な故障が生じる前に得ることができる。
【特許文献1】特開昭55−052943号公報
【特許文献2】特開昭61−253455号公報
【特許文献3】特開2000−321248号公報
【特許文献4】特許2703502号公報
【特許文献5】特許2865857号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
現在、特に航空機用ジェットエンジンにおいて、その小型化と高速化が求められている。従来より、航空機用ジェットエンジンの主軸用軸受では、その転動体に金属材料が用いられてきたが、現状の転動体材料では更なる高速化が困難な状況にある。高速化に耐えうるためには、軸受の転動体を窒化珪素(Si3N4 )等を原材料とするセラミック玉やセラミックころとする必要がある。また、ジェットエンジン用軸受にセラミック玉やセラミックころを適用した場合、大きく性能が向上し、ひいてはジェットエンジンの効率が向上し、環境負荷を軽減できる可能性がある。
一方、従来の金属片検出装置では、金属材料あるいは磁性材料あるいは導電性材料の破片のみ検出が可能であり、非金属、非磁性、非導電性を特徴とするセラミック材の検出は不可能であった。したがって、例えばセラミック製の転動体を使用した軸受の場合には、破壊的な故障が生じる前に、金属片検出装置を用いて劣化や損傷に関する情報を得ることができない。そのため、現状ではこの様な構成の軸受は、用途が限定された航空機にしか使用されていない。
【0004】
そこで、このような課題を解決する破片検出センサとして、2つの対面する平板を設け、これら2つの平板のうち少なくとも1つの平板を平板移動機構で対面方向に動かすことで流体中に混入する破片を前記2つの平板間に挟み込むようにし、この状態での2つの平板間のギャップ変動を静電容量の変化やインダクタンス変化などとして検出するギャップセンサを設け、そのギャップセンサの測定値から前記破片の有無や大きさ、あるいは蓄積量を検出する構成のものが考えられる。
【0005】
しかし、この構成では、検査対象の潤滑油などの流体を前記2つの平板間に流して流体中の破片を2つの平板で挟む場合に、流体中に検出対象の破片がごく僅かしか存在しないと、破片が挟み込まれる確率が低くなってしまうので、できるだけ検出領域を大きくして検出確率を高める必要がある。
【0006】
この発明の目的は、低コストでコンパクトに構成でき、長期安定性・信頼性の確保が可能な破片検出センサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の破片検出センサは、流体中に混入する破片を検出するセンサであって、2つの対面する平板と、これら2つの平板のうち少なくとも1つの平板を対面方向に動かして前記2つの平板間に前記破片を挟み込ませる平板移動機構と、前記2つの平板間のギャップを測定することで、前記破片の有無、大きさ、および蓄積量のいずれかを検出する測定・判定手段を有し、前記2つの平板のうちの可動の平板、またはこの可動の平板を保持する保持部材が磁性材料で構成され、前記平板移動機構は、前記流体が流れる流路に対する外部に設けた電磁石により前記平板を吸引して前記平板を動かすものであることを特徴とする。
この構成によると、平板移動機構となる電磁石の構成部品が流体の流路に直接晒されることがなく、構成部品として可動部材も不要となる。その結果、低コストでコンパクトに破片検出センサを構成でき、流体漏れの心配がない上に、部品の耐薬品性や可動部材の摩耗の問題がなく、長期安定性・信頼性の確保が可能となる。
また、上記破片検出センサを自動車,航空機,ヘリコプタ等に組み込んだ場合、潤滑油中に混入した破片の状態をモニターすることができるため、故障の前兆あるいは故障の診断を行い、運転の停止や部品交換が必要なことを知らせることができ、安全性が向上する。また、機械部品の寿命や経年変化を予測できるため、部品の無駄な交換や遅れた交換がなくなり、経済性が向上する。
【0008】
この発明において、前記可動側平板が、前記平板移動機構が設置された固定側部材にバネによって固定されていても良い。この構成の場合、可動側平板は固定側平板に対して傾斜姿勢となる自由度を持つことになり、固定側平板とで破片を挟むとき、挟み込まれた破片の大きさや分布に応じて可動側平板の姿勢を自在に変えることができる。すなわち、挟み込まれる破片の大きさは様々であり、挟み込まれる個数も変化するが、可動側平板が柔軟性を持つバネで支持されていることにより、大きさの異なる破片の複数個が2つの平板間に挟まれた状態でも、最も安定な姿勢となるまで一定の圧力によって押さえ込むことができ、常に安定した測定データを得ることができる。
【0009】
この発明において、前記2つの平板が電極であり、前記測定・判定手段は、前記2つの平板間の静電容量を測定する静電容量測定手段と、この静電容量測定手段の測定値からギャップの大きさを推定する判定手段とでなるものであっても良い。
【0010】
この発明において、前記測定・判定手段が、前記2つの平板間のギャップを変位センサで測定するものであっても良い。
【0011】
この発明において、前記測定・判定手段が、前記2つの平板間の静電容量を測定する静電容量測定手段と、前記2つの平板間のギャップを測定する変位センサと、これら静電容量測定手段の測定値および前記変位センサの測定値から前記2つの平板間のギャップの大きさを推定する判定手段とを有し、この判定手段は、前記静電容量測定手段の測定値から換算される2つの平板間のギャップ値が、変位センサの出力から得られるギャップ値よりも設定割合または設定量小さい場合に、前記破片が導電性材料であると判定する導電性材料検出部とを有するものとしても良い。この構成の場合、検出した破片が金属材料等の導電性材料であるか、樹脂・セラミック材料のような非導電性材料であるかを識別することができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明の破片検出センサは、流体中に混入する破片を検出するセンサであって、2つの対面する平板と、これら2つの平板のうち少なくとも1つの平板を対面方向に動かして前記2つの平板間に前記破片を挟み込ませる平板移動機構と、前記2つの平板間のギャップを測定することで、前記破片の有無、大きさ、および蓄積量のいずれかを検出する測定・判定手段を有し、前記2つの平板のうちの可動の平板、またはこの可動の平板を保持する保持部材が磁性材料で構成され、前記平板移動機構は、前記流体が流れる流路に対する外部に設けた電磁石により前記平板を吸引して前記平板を動かすものとしたため、低コストでコンパクトに構成でき、長期安定性・信頼性の確保が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
この発明の第1の実施形態を図1ないし図3と共に説明する。図1は、この実施形態の破片検出センサの概略構成図を示す。この破片検出センサは、検査対象である流体中に混入する破片を検出するセンサであって、互いに対面する2つの平板5,7と、これら2つの平板5,7のうち少なくとも1つの平板を対面方向に動かして2つの平板5,7間に破片13(図3)を挟み込ませる平板移動機構9と、前記2つの平板5,7間のギャップを測定することで、前記破片13の有無、大きさ、または蓄積量のいずれかを検出する測定・判定手段17とを備える。この破片検出センサの場合、潤滑油が検査対象の流体とされる。
【0014】
前記2つの平板5,7と平板移動機構9はセンサユニット1に組み込まれる。このセンサユニット1はベース部材4を有し、そのベース部材4には検査対象である潤滑油を流す油路4aが貫通して設けられている。油路4aの一端には給油配管2が接続され、油路4aの他端には排油配管3が接続されている。この場合、潤滑油は、給油配管2の油路2aからベース部材4の油路4aを経由し、排油配管3の油路3aに流れる。例えば、給油配管2はエンジンやギアボックス、軸受等で使用された潤滑油が収集される配管に接続され、排油配管3はオイルタンクへの配管に接続される。
【0015】
2つの平板5,7のうち一つの平板5は導電性材料からなる固定平板であって、ベース部材4の油路4aの途中において、絶縁材料からなる平板固定部材6を介してベース部材4の下側に電気的に絶縁された状態で固定されている。固定平板5は、その表面が油路4a内に臨む向きとなるように配置される。
【0016】
前記固定平板5と対面するもう一つの平板7は、ベース部材4の上側に支持固定されたバネ12により固定平板5に向けて進退自在に支持された可動平板である。この可動平板7には、例えば鉄などのように導電性でかつ磁性を有する材料が用いられる。このほか、可動平板7として導電性材料を用い、前記バネ12で支持される可動平板7の裏面側に磁性材料からなる保持部材を接合する構成としても良い。前記バネ12は、非磁性でかつ絶縁性を有する材料からなるバネ支持部材8を介してベース部材4の上側に支持固定される。バネ12には、例えば、コイルバネ、板バネ、線バネ等が用いられる。バネ12は、複数個で一つの可動平板7を支持するものとしても良く、また1個で支持するものとしても良い。
【0017】
平板移動機構9は、ベース部材4におけるバネ支持部材8の上側に設けられた電磁石からなる。この電磁石からなる平板移動機構9は、コイル9aと鉄心9bとでなり、コイル9aへの通電により可動平板7を吸引して図1のように固定平板5から離れるように後退させる。また、通電解除では、バネ12の復元力により、図2のように可動平板7が固定平板5に押し付けられる位置まで進出する。なお、ベース部材4において、少なくとも前記平板移動機構9となる電磁石とバネ支持部材8とで挟まれる隔壁部分は非磁性材料あるいは薄い磁性材料として、平板移動機構9の電磁石の吸引力が確実に可動平板7に及ぶようにされている。
【0018】
測定・判定手段17は、静電容量測定手段14と変位センサ16と判定手段15とでなる。静電容量測定手段14は、固定平板5と可動平板7の間の静電容量を測定する手段であり、静電容量測定手段14の入力端子14a,14bがそれぞれ可動平板7と固定平板5に接続される。すなわち、2つの平板5,7は、これら両平板間の静電容量を測定する電極板に兼用される。
変位センサ16は、固定平板5と可動平板7の間のギャップを測定するギャップセンサであり、固定平板5に埋め込んだ状態で設けられる。ここでは、変位センサ16として例えば渦電流式のものが用いられるが、磁気式,光学式等の他の方式のものを用いても良い。
判定手段15は、静電容量測定手段14の測定値と変位センサ16の測定値とから潤滑油中の破片13の有無、破片13の材質、大きさ、または蓄積量を推定する手段であり、例えば測定値と判定結果の関係を定めたテーブルまたは演算式の判定規則を有し、その判定規則と測定値とを比較して判定結果を出力する。判定手段15は、その機能の一部として検出された破片13が導電性材料であると判定する導電性材料検出部18を有する。
【0019】
次に、この破片検出センサを用いて、エンジン,ギアボックス,軸受等の装置の摩耗や破損によって生じた各種材料からなる破片が混入している潤滑油から、その破片を検出する動作を説明する。
上記したように、平板移動機構9のコイル9aを通電すると、平板移動機構9である電磁石の吸引力により可動平板7がバネ12の復元力に抗して図2のように固定平板5から離れた位置に後退する。
【0020】
次に、検査対象の流体として、エンジン,ギアボックス,軸受等に使用されている潤滑油を給油配管2の油路2aからベース部材4の油路4a内を経由して排油配管3の油路3aに流す。このとき、ベース部材4の油路4aを流れる潤滑油中に、エンジンやギアボックス、軸受等の摩耗や破損によって生じた破片13が混入していると、その破片13は固定平板5と可動平板7の間を流れる。
この状態のもとに、平板移動機構9のコイル9aへの通電を停止すると可動平板7への吸引力が解除され、可動平板7はバネ12の復元力により固定平板5に向けて進出し、図3のように固定平板5と可動平板7の間に破片13が挟み込まれる。これにより、固定平板5と可動平板7の間には、破片13の厚み分だけギャップdが生じる。このギャップdを変位センサ16が測定する。同時に、このギャップdにより、2つの電極5,7間には静電容量Cが形成される。
【0021】
ところで、一般的に、平行平板間の静電容量Cは
C=εoεrS/d ……(1)
となることが知られている。すなわち、静電容量C[F]は、真空中の誘電率εo(8.854 ×10-12 [F/m])と潤滑油の誘電率εr と平行平板の面積S[m2 ]とを掛け合わせたものを、平行平板間のギャップd[m]で割った値となる。潤滑油の誘電率εr は一定であり、平行平板の面積Sが一定であると、静電容量Cの値は平行平板間のギャップdに依存する。
そこで、2つの平板5,7間の静電容量Cを前記静電容量測定手段14で測定することにより、変位センサ16による測定とは別の方法で平板5,7間のギャップdの値を検出でき、その値によっても破片13の大きさや蓄積量を推定することができる。
【0022】
ここで、挟み込まれた破片13が導電性材料であると2つの平板5,7間は短絡状態となるので、静電容量Cの測定から求められるギャップd2は、ゼロもしくは非常に小さな値となる。これに対して、変位センサ16によって得られるギャップd1は、静電容量測定手段14の測定値から推定されるギャップd2とは異なった値となる。このように、2 つの測定結果の違いを検出して、検出された破片13が導電性であるか非導電性であるかを判別することが可能となる。すなわち、判定手段15の導電性材料検出部18は検出された破片13が導電性材料か非導電性材料かを判断する機能を有し、
d1≫d2 ……(2)
となる場合には、検出された破片13が導電性のものであると判断する。また、2 つの値d1,d2が互いに近い値であって、かつゼロギャップでない場合、つまり
d1≒d2(≠0) ……(3)
となる場合には、検出された破片13が非導電性のものであると判断する。また、判定手段15は、破片13の大きさを、変位センサ16の検出値d1で代表して出力する。
【0023】
一方、2つの平板5,7間に破片13がない場合にも、2つの平板5,7間は短絡状態となるので、静電容量Cの測定から求められるギャップd2は、ゼロもしくは非常に小さな値となる。この場合、変位センサ16によって得られるギャップd1もゼロギャップとなるので、これらの結果から判定手段15は破片13が無いと判断する。
【0024】
図4は、図1の破片検出センサにおける測定・判定手段17の構成要素である静電容量測定手段14の一構成例を示す。この静電容量測定手段14は、直列接続した発振器20と電流測定手段21とでなり、発振器20から固定平板5と可動平板7に交流電流を流し、平板5,7間の静電容量Cをインピーダンスに換算して電流測定手段21で測定する。この場合、測定したインピーダンスから静電容量Cを求めることもできる。その他の構成は図1の場合と同様である。
【0025】
図5は、図1の破片検出センサにおける測定・判定手段17の構成要素である静電容量測定手段14の他の構成例を示す。この静電容量測定手段14は、OPアンプ32で構成した発振器30と、この発振器30の発振周波数から静電容量を推定する周波数対応容量推定手段31とでなり、測定した発振器30の周波数から平板5,7間の静電容量Cを推定する。この場合の発振器30はリラクセーションオシレータ(relaxation oscillator )と呼ばれ、OPアンプ32に抵抗33Ra ,33Rb ,33Rt 、およびコンデンサ33Ct を接続して構成される。抵抗33Ra ,33Rb ,33Rt の抵抗値をRa ,Rb ,Rt 、コンデンサ33Ct の静電容量をCt とすると、発振周波数fは、およそ、
f=1/(2Rt Ct ) ……(4)
となることが知られている。ここでは、前記発振器30のコンデンサ33Ct が前記平板5,7間の静電容量Cに置き換えられることで、その静電容量Cが推定される。
【0026】
図6は、図1の破片検出センサにおける測定・判定手段17の構成要素である静電容量測定手段14のさらに他の構成例を示す。この静電容量測定手段14は、充放電手段40と、その充電および放電の繰り返しにおける過度現象によって生じる充放電時間より静電容量を推定する充放電時間対応静電容量推定手段41とでなる。充放電手段40は、充電抵抗42と充電スイッチ43の直列回路部を被測定静電容量Ct に直列接続すると共に、放電スイッチ44と放電抵抗45の直列回路部を被測定静電容量Ct に並列接続した回路である。充放電時間対応静電容量推定手段41は、充放電手段40での充放電電圧を監視する電圧測定手段46と、この電圧測定手段46が監視する電圧が規定電圧になるまでの時間を測定することにより、被測定静電容量Ct を推定する判断手段47とでなる。
【0027】
この場合、例えば、充電スイッチ43をオンにして充電を開始し、被測定静電容量Ct の充電電圧を電圧測定手段46で監視して、その充電電圧が規定電圧になるまでの充電時間を判断手段47で測定することにより、被測定静電容量Ct を推定できる。または、予め所定電圧まで充電させた被測定静電容量Ct に対して、放電スイッチ44をオンにして放電を開始し、被測定静電容量Ct の放電電圧を電圧測定手段46で監視して、その放電電圧が規定電圧になるまでの放電時間を判断手段47で測定することにより、被測定静電容量Ct を推定できる。ここでは、前記被測定静電容量Ct が平板5の静電容量Cに置き換えられることで、その静電容量Cが推定される。
【0028】
このように、この実施形態の破片検出センサでは、2つの対面する平板5,7のうち少なくとも1つの平板(可動電極)7を、平板移動機構9となる電磁石で対面方向に動かすことによって、2つの平板5,7間に破片13を挟み込み、挟み込んだ2つの平板5,7間のギャップを測定・判定手段17で測定することで、破片13の有無、大きさ、および蓄積量のいずれかを検出するものとし、かつ前記可動平板7、またはこの可動平板7を保持する保持部材を磁性材料で構成し、前記平板移動機構9として、検査対象の流体(潤滑油)が流れる流路(油路)4aに対する外部に電磁石を設け、この電磁石により前記可動平板7を吸引して動かすようにしているので、平板移動機構9となる電磁石の構成部品が流体(潤滑油)の流路(油路)4aに直接晒されることがなく、構成部品として可動部材も不要となる。その結果、低コストでコンパクトに破片検出センサを構成でき、流体(潤滑油)漏れの心配がない上に、部品の耐薬品性や可動部材の摩耗の問題がなく、長期安定性・信頼性の確保が可能となる。
また、上記破片検出センサを自動車,航空機,ヘリコプタ等に組み込んだ場合、潤滑油中に混入した破片の状態をモニターすることができるため、故障の前兆あるいは故障の診断を行い、運転の停止や部品交換が必要なことを知らせることができ、安全性が向上する。また、機械部品の寿命や経年変化を予測できるため、部品の無駄な交換や遅れた交換がなくなり、経済性が向上する。
【0029】
また、この実施形態では、平板移動機構9である電磁石が設置された固定側部材(ベース部材)4に、バネ12を介して可動平板7が支持されているので、可動平板7は固定平板5に対して傾斜姿勢となる自由度を持つことになり、固定平板5とで破片13を挟むとき、挟み込まれた破片13の大きさや分布に応じて可動平板7の姿勢を自在に変えることができる。すなわち、挟み込まれる破片13の大きさは様々であり、挟み込まれる個数も変化するが、可動平板7が柔軟性を持つバネ12で支持されていることにより、大きさの異なる破片13の複数個が2つの平板5,7間に挟まれた状態でも、最も安定な姿勢となるまで一定の圧力によって押さえ込むことができ、常に安定した測定データを得ることができる。
この場合、静電容量測定手段14で測定される2つの平板5,7間の静電容量値は、完全な平行平板間の容量値とは異なるため、静電容量から推定されるギャップの値は実際のギャップ13の大きさと一致しないことになる。しかし、大きな破片13が挟み込まれた場合には2つの平板5,7間のギャップは大きくなり、このときの静電容量測定値は小さくなり、変位センサ16によるギャップの測定値も大きくなるという全体の傾向は確実に把握されることになるので、破片13の状態を検出するという目的からは大きな影響はない。
【0030】
さらに、この実施形態では、固定電極5と可動電極7の間の静電容量を静電容量測定手段14で測定すると共に、これら2つの平板5,7間のギャップを変位センサ16で測定し、これら二種類のセンサ14,16の出力から判定手段15で2つの平板5,7間のギャップの大きさを推定し、さらに判定手段15は、静電容量測定手段14の測定値から換算される2つの平板5,7間のギャップ値が、変位センサ16の出力から得られるギャップ値よも設定割合または設定量が小さい場合に、挟まれる破片13が導電性材料であると判定する導電性材料検出部18を有するものとしているので、検出した破片13が金属材料等の導電性材料であるか、樹脂・セラミック材料のような非導電性材料であるかを識別することができる。
【0031】
なお、前記2つの平板5,7の間のギャップを測定する手段としては、前記実施形態のように、静電容量測定手段14と変位センサ16を併用する場合に限らず、静電容量測定手段14だけを用いても良いし、変位センサ16だけを用いても良い。また、静電容量測定手段14だけを用いる場合、各2つの平板における少なくともいずれか一方の平板対向面に絶縁材料のコーティング層を設けるものとすれば、2つの平板間に挟み込まれる破片13が導電性材料からなる場合であっても2つの平板間が短絡しないので、破片13が導電性材料であるか非導電性材料であるかを問わず2つの平板間の静電容量を正しく測定でき、破片13の有無、大きさ、蓄積量を正確に検出できる。
【0032】
図7は、この発明の破片検出センサの他の実施形態を示す。この実施形態では、図1に示す実施形態において、判定手段15の次段に記録手段50を追加して、潤滑油中に混入した破片13の状態をリアルタイムでモニターできるようにしたものである。記録された数値の変化履歴により潤滑油の状態を推測し、ゴミや破片の増加傾向などの情報を出力することができる。静電容量測定手段14は、図4〜図6に示したいずれの構成のものを使用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】この発明の第1の実施形態に係る破片検出センサの通電時の状態を示す概略構成図である。
【図2】同破片検出センサの通電停止時の状態を示す概略構成図である。
【図3】同破片検出センサの検出動作の説明図である。
【図4】同破片検出センサにおける静電容量測定手段として一構成例を用いた場合の検出動作の説明図である。
【図5】同破片検出センサにおける静電容量測定手段の他の構成例を示す回路図である。
【図6】同破片検出センサにおける静電容量測定手段のさらに他の構成例を示す回路図である。
【図7】この発明の他の実施形態に係る破片検出センサの検出動作の説明図である。
【符号の説明】
【0034】
4a…油路
5…固定平板
7…可動平板
9…平板移動機構
12…バネ
13…破片
14…静電容量測定手段
15…判定手段
16…変位センサ
17…測定・判定手段
18…導電性材料検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体中に混入する破片を検出する破片検出センサであって、2つの対面する平板と、これら2つの平板のうち少なくとも1つの平板を対面方向に動かして前記2つの平板間に前記破片を挟み込ませる平板移動機構と、前記2つの平板間のギャップを測定することで、前記破片の有無、大きさ、および蓄積量のいずれかを検出する測定・判定手段を有し、
前記2つの平板のうちの可動の平板、またはこの可動の平板を保持する保持部材が磁性材料で構成され、前記平板移動機構は、前記流体が流れる流路に対する外部に設けた電磁石により前記平板を吸引して前記平板を動かすものであることを特徴とする破片検出センサ。
【請求項2】
請求項1において、前記可動側平板が、前記平板移動機構が設置された固定側部材にバネによって固定されている破片検出センサ。
【請求項3】
請求項1において、前記2つの平板が電極であり、前記測定・判定手段は、前記2つの平板間の静電容量を測定する静電容量測定手段と、この静電容量測定手段の測定値からギャップの大きさを推定する判定手段とでなる破片検出センサ。
【請求項4】
請求項1において、前記測定・判定手段が、前記2つの平板間のギャップを変位センサで測定するものである破片検出センサ。
【請求項5】
請求項1において、前記測定・判定手段が、前記2つの平板間の静電容量を測定する静電容量測定手段と、前記2つの平板間のギャップを測定する変位センサと、これら静電容量測定手段の測定値および前記変位センサの測定値から前記2つの平板間のギャップの大きさを推定する判定手段とを有し、この判定手段は、前記静電容量測定手段の測定値から換算される2つの平板間のギャップ値が、変位センサの出力から得られるギャップ値よりも設定割合または設定量小さい場合に、前記破片が導電性材料であると判定する導電性材料検出部とを有する破片検出センサ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−107152(P2008−107152A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−288758(P2006−288758)
【出願日】平成18年10月24日(2006.10.24)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】