説明

破砕機、材料の破砕方法、及び破砕機の制御方法

破砕機は、回転するように構成された第1の破砕ブレード(1)及び第2の破砕ブレード(2)を少なくとも含み、これらの破砕ブレードのうちの1つは、さらに直線経路に沿う調和運動に従って往復するように構成されており、第1の破砕ブレード(1)及び第2の破砕ブレード(2)の回転軸(X)は、第2の破砕ブレード(2)の直線運動の方向に対して平行である。第2の破砕ブレード(2)は、直線経路に沿う調和運動に従って往復するように調整される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、破砕機に関する。また、本発明は、材料の破砕方法及び破砕機の制御方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
破砕機は、固形物を元のサイズよりも小さいサイズに破砕するために使用される。通常、破砕される固形物は、2つの破砕ブレードの間に導入され、これら2つの破砕ブレードが互いに運動することによって破砕される。米国特許第3627214号に開示される破砕機では、破砕のために、油圧によって直線的に往復運動する下側破砕ブレードが使用され、さらに、この破砕機の上側破砕ブレード及び下側破砕ブレードは、水平面内で回転するように構成されている。この発明では、破砕される材料は、上方から破砕機に供給され、回転する破砕ブレードで発生する遠心力によって、2つの破砕ブレードの間に運ばれる。このように遠心力をかけることによって、破砕機の製造能力を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第3627214号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上述した先行技術における破砕機の特性を大幅に改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的を達成するため、本発明に係る破砕機は、独立請求項である請求項1に記載された事項を主要な特徴とする。また、本発明に係る破砕方法は、独立請求項である請求項9に記載された事項を主要な特徴とする。また、本発明に係る破砕機の制御方法は、独立請求項である請求項14に記載された事項を主要な特徴とする。従属請求項である他の請求項には、本発明の幾つかの好適な実施形態が記載されている。
【0006】
本発明の基本思想に係る破砕機は、回転軸回りに回転するために適した第1及び第2の破砕ブレードを含む。さらに、第2の破砕ブレードは、回転軸と平行な直線経路に沿って往復運動するために適している。そして、第2の破砕ブレードの直線運動は、調和運動である。ここで、調和運動とは、運動方向が変わるとき、まず、運動速度が最大速度になるまで加速されるように制御され、その後、運動方向が変わる前に、運動速度が減速されるように制御される運動をいう。
【0007】
調和運動によれば、運動方向が変わる前に減速されない往復運動と比べて、構造物にかかる負荷が著しく低減される。これによって、破砕機の耐久性及び寸法の一方または両方に対して有利な効果を奏する。
【0008】
有利な実施形態では、第2の破砕ブレードの直線に沿った調和運動は、偏心シャフトによって実現される。一実施形態では、偏心シャフトの運動は、スライド部を用いて第2の破砕ブレードに伝達される。別の実施形態では、偏心シャフトの運動は、連結ロッドを用いて第2の破砕ブレードに伝達される。
【0009】
一つの有利な実施形態において、各破砕ブレードは、第1の破砕ブレードが上側に、第2の破砕ブレードが下側に配置されている。したがって、破砕機における直線運動により、第1の破砕ブレードの下面と第2の破砕ブレードの上面との間の間隙が変動し、間隙の大きは、調和運動に従って変動する。
【0010】
上述した構成の様々な実施形態のそれぞれにより、または、それらの様々な組合せにより、多くの有利な効果が得られる。従来の破砕機に対する本発明の一実施形態の利点の1つは、破砕動作が4倍から5倍に高速化されることであり、これは、間隙内で破砕される材料の加速度が増大することによって達成される。
【0011】
従来の破砕機における破砕室の性能は、破砕室内の材料の運動を決定する主要な要因である重力によって限定されており、その破砕速度は、毎分250〜400回の破砕動作に限定されている。本発明に係る破砕機では、その応用例に応じて、毎分1000〜1500回の破砕動作を達成することが可能である。
【0012】
本発明によれば、破砕機に対して、その重量に比べて高い性能を付与することができる。重量が5400kgの従来の円錐型破砕機よりも多少高性能の本発明に係る破砕機の重量は、約3100kgである。さらに、本発明に係る破砕機は、外形寸法が小さいことにより、可動破砕プラントに容易に配置することができる。本発明に係る破砕機は、その性能に比べて重量及び寸法が小さいことにより、コスト効率についても有利であることは明らかである。
【0013】
また、本発明に係る破砕機の調整機能は、破砕室の回転速度という新規の調整パラメータにより大幅に改善された。破砕室の回転速度を変えることは、ストローク、圧縮率、破砕室密度、破砕領域の数等の破砕機にとって重要な変数に影響を与えるための決定的かつ容易な方法であり、これによって、破砕機の動作を、必要な場合、様々な使用例に応じて、容易に最適化することができる。例えば、採鉱用破砕機において、破砕率を現状よりも大きくすることが目標であってもよい。
【0014】
さらに、本発明によれば、破砕機のフレーム構造体には、ほぼ直線運動の方向に力が加わるものである。したがって、旋回による破砕力を用いた従来の円錐型破砕機と比べて、破砕機の設定のための調整/安全装置を非常に容易に備えることができる。
【0015】
機械的な動力伝達装置を備えることによって、油圧装置を備えた場合よりも高い良好な効率を得ることができる。したがって、機械的な動力伝達装置を使用することで経済性が向上し、油圧装置の場合よりも破砕機に必要な電力が少なくなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明に係る破砕機の原理を簡略に示す断面図である。
【図2】図2は、図1のA−A線に沿う断面図である。
【図3】図3は、破砕機の一実施形態を示す図である。
【図4】図4は、偏心シャフト及びスライド部の一実施形態を示す図である。
【図5】図5は、図4に示すスライド部の断面図である。
【図6】図6は、偏心シャフト及び連結ロッドの一実施形態を示す図である。
【図7】図7は、図6に示す連結ロッドの断面図である。
【図8】図8は、破砕機の別の実施形態を示す図である。
【図9】図9は、破砕機の一実施形態を、制御シリンダーが見える状態で示す透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を、添付原理図を参照して詳細に説明する。明確さのため、各図面には、本発明の理解のために必要な細部のみが示されている。本発明の特徴を強調するため、本発明の理解のために不要であって当業者には自明な構造及び細部の図示は、省略されている。
【0018】
本発明に係る破砕機は、様々な形態で実現することができる。1つの有利な実施形態を一例として使用するが、その実施形態に対しても多くの変形例を構成することができる。この例における破砕機は鉛直姿勢型のものであり、破砕される材料は、じょうご状の構造物を介して上方から供給され、材料の流れは下方に進む。破砕機は、別の姿勢をとるものであってもよいが、この例における姿勢は、多くの場合、材料の流れの制御に関して有利である。
【0019】
図1は、本発明に係る破砕機の構造を簡略化して示す側面図である。この破砕機は、回転するように構成された第1の破砕ブレード1及び第2の破砕ブレード2を、少なくとも含んでおり、これらの破砕ブレードのうちの1つは、直線経路に沿う調和運動に従って往復するように構成されている。第1の破砕ブレード1及び第2の破砕ブレード2の回転軸Xは、第2の破砕ブレード2の直線運動の方向に対して平行である。図2には、第1及び第2の破砕ブレード1、2の回転を上方から(すなわち、材料を供給する方向から)見た図が示されている。
【0020】
図1に示す破砕機は、鉛直方向に延びるメインシャフト3を含んでいる。下側破砕ブレード2と呼ばれ、磨耗部として使用される要素は、メインシャフト3に結合されている。下側破砕ブレード2は、破砕機のフレームに囲まれている。フレームは、上側フレームと下側フレームの2つの部分からなり、これらの2つの部分は互いに移動可能なものである。下側破砕ブレード2は、下側フレームに結合される。上側破砕ブレード1と呼ばれ、磨耗部として使用される別の要素は、上側フレームに結合される。上側破砕ブレード(または、外側破砕ブレード)1は、この例において、第1の破砕ブレード1に相当する。下側破砕ブレード(または、内側破砕ブレード)2は、この例において、第2の破砕ブレード2に相当する。
【0021】
下側破砕ブレード2と上側破砕ブレード1は、これらの両方で破砕室を構成し、岩石または建設廃棄物等の供給材料は、破砕室内で破砕される。本発明に係る破砕機において、破砕室の、破砕ブレード1、2の互いに対向する面間の距離は、破砕される材料の流れが進む方向に関して、最初は大きく、次第に小さくなる。破砕ブレード1、2の間の角度は、好ましくは、約10〜30°である。さらに、破砕室をなす各面から中心)軸に垂直に下ろした距離は、材料の流れが進む方向に増大する。この距離が増大するにつれて、距離毎の破砕領域での各破砕ブレードの面積も増大する。したがって、異なる破砕領域の容積を同一に維持することも可能であり、あるいは、異なる破砕領域で容積が変わるように調節することも可能である。有利な実施形態では、異なる破砕領域の容積は、略同一である。すなわち、破砕領域の面積は、2つの破砕ブレード1、2の間の間隙が減少するにつれて、その減少と関連して増大する。この特徴により、破砕に関して有利な効果を奏する。
【0022】
一実施形態では、第1の破砕ブレード1の内向きの面と、第2の破砕ブレード2の外向きの面は、円錐または円錐台等の略円錐形状をなし、面上には、溝、歯、または他の凸部及び/または凹部のような、適切な破砕用エンボスが設けられている。図1に示す例では、第2の破砕ブレード2の幅は、材料の流れが進む方向に、次第に広がる。すなわち、この例では、第2の破砕ブレードの下側部分の直径は、上側部分の直径よりも大きい。破砕ブレード1、2は、他の形状を有するものであってもよく、さらに、例えば、凸曲線部分、凹曲線部分、及び直線部分のいずれかまたはこれらの組合せを含むものであってもよい。破砕ブレード1、2の形状は、運転速度、材料の流れ、破砕される材料の特性等の様々な因子を考慮して決められる。破砕ブレード1、2の形状により、破砕室の動作を調整することができる。
【0023】
メインシャフト3は、直線経路に沿って往復運動するように構成されている。この例では、この往復運動は上下運動である。第2の(または、下側)破砕ブレード2と第1の(または、上側)破砕ブレード1との間の間隙は、この往復運動のサイクル間に変動する。往復運動は連続的に発生し、一実施形態では、1秒間に数回の往復運動が発生する。例えば、一実施形態では、1秒間に15〜25回の往復運動が発生する。
【0024】
ここで、破砕ブレード2の調和運動とは、破砕ブレードが両端の位置の間で運動し、その運動が、時間の関数として略正弦波状のグラフによって表すことができることを意味する。破砕ブレード2の運動方向が変化するとき、まず、運動速度が最大速度まで加速されるように制御され、その後、運動方向が変化する前に、減速されるように制御される。調和運動によれば、運動方向の変化と関連させて制御されるような形で速度が変化しない往復運動と比較して、破砕機にかかる負荷を相当に小さくすることができる。
【0025】
破砕ブレードの直線運動は、様々な態様で実現することができる。この例に示す有利な実施形態では、破砕ブレードの直線状の(または鉛直方向の)運動は、水平方向の偏心シャフト4によって実現される。運動のための動力は、例えば、電動機、油圧式原動機のような適切なアクチュエータ5により発生する。偏心シャフト4は、必要な場合、動力伝達構造を用いて、適切なアクチュエータ5により回転する。例えば、偏心シャフト4は、ベルト伝動装置を用いて、原動機5により駆動することができる。また、動力伝達構造として、例えば、シャフト、油圧ライン、及びギヤのいずれかまたはこれらの組合せを用いることもできる。図3及び図8に示す例では、偏心シャフト4は、軸受に組付けられたスライド部6aを用いて、鉛直方向の調和運動を行うピストン状のメインシャフト3に結合されている。偏心シャフト4が回転すると、メインシャフト3、したがって第2の破砕ブレード2が、回転に同調して鉛直方向に直線状の調和運動を行い、その運動のサイクルの間に、第1の破砕ブレード1と第2の破砕ブレード2との間の間隙が変動する。この直線運動の経路長は、通常、約10〜30mmである。但し、この経路長は、応用例に応じて異なるものであってもよい。
【0026】
図4及び図5に、偏心シャフト4及びスライド部6aがさらに詳細に示されている。スライド部6aはメインシャフト3に結合されており、その際、スライド部は、メインシャフトに対してその軸線方向に動くことができないように結合されている。これによって、スライド部6aが、メインシャフト3の軸線と平行な成分を含む運動をすると、メインシャフト3もその軸方向に運動する。有利な態様において、スライド部6aは、メインシャフトの軸線に対して直交する方向には、メインシャフトに対して動くことができるように構成されていてもよい。
【0027】
この例の構造では、スライド部6aは、メインシャフト3に対して上方と下方の両方向の運動を伝達する。また、この例では、スライド部6aは、水平方向にはメインシャフト3に対して動くことができる。また、スライド部6aは、メインシャフト3に対してその軸線方向には動くことができない。したがって、偏心シャフト4がスライド部6aを上方に動かすと、メインシャフト3も上方に動く。同様に、偏心シャフト4がスライド部6aを下方に動かすと、メインシャフト3も下方に動く。スライド部6aは、メインシャフト3に対して、その軸線に平行な方向の運動(例えば、水平運動)は、生じさせない。
【0028】
図6に示す実施形態では、偏心シャフト4は、連結ロッド6bを用いて、第2の破砕ブレード2に伝達される。この例の構造では、連結ロッド6aは、メインシャフト3に対して上方と下方の両方向の運動を伝達する。連結ロッド6aは、メインシャフト3に対して、その軸線に直交する方向の運動(例えば、水平運動)は、生じさせない。図7には、連結ロッド6bの一実施形態が、偏心シャフト4の軸線方向から見た状態で示されている。
【0029】
偏心シャフト4及びスライド部6aまたは連結ロッド6bを上述したように使用することによって、スライド部6aまたは連結ロッド6bに結合された破砕ブレード2は、偏心シャフトの運動に従って、一端の位置から他端の位置へ直線運動する。偏心シャフト4は、その運動のサイクルの間に、破砕ブレード2の拘束された直線状の往復運動を発生させる。このような構造によれば、破砕ブレード2を他端の位置から復帰させるための別の引き戻し構造を要しない。引き戻し構造は、例えば、破砕ブレード2を下方に復帰させるバネである。このようなバネに張力をかけるためには、余分な仕事が必要となり、効率が低下する。したがって、高い効率を達成することが目的の場合、別の引き戻し構造を使用しない方が有利である。
【0030】
破砕機の第1の破砕ブレード1及び第2の破砕ブレード2は回転式のものであり、それらの回転軸Xは、第2の破砕ブレード2の直線運動の方向に対して平行である。この例では、第1の破砕ブレード1は、鉛直方向の回転軸X回りに、水平方向に回転する。図3に示す例では、破砕機の第1の(または上側)破砕ブレード1は、グリース潤滑ころ軸受及び玉軸受を用いて、破砕機の、鉛直方向に移動可能な上側フレームの軸受に組付けられる。回転運動は、アクチュエータ7(例えば、油圧式原動機)から、動力伝達装置8(例えば、歯車またはベルト伝動装置)を使用して、第1の破砕ブレード1に伝達される。アクチュエータ7は、例えば電動機のような別の装置であってもよい。破砕機の動作の観点から、有利な実施形態では、破砕ブレード1の回転速度は容易に調整可能であり、一実施形態では、破砕ブレードの回転速度は、毎分約100〜200回転である。
【0031】
第2の破砕ブレード2を回転させる動力は、専用のアクチュエータ及び/または動力伝達装置によって発生させるものであってもよく、または、別のアクチュエータによって発生させるものであってもよい。例えば、両方の破砕ブレード1、2を回転させる動力を単一のアクチュエータ7を使用して発生させ、このアクチュエータから、適切な動力伝達構造を使用して、両方の破砕ブレードに伝達するものであってもよい。有利な実施形態では、第1の破砕ブレード1を回転させるために必要な動力は、アクチュエータ7により発生し、第2の破砕ブレード2を回転させるために必要な動力は、破砕のための圧縮動作の間に、第1の破砕ブレード1から第2の破砕ブレード2に伝達されるものである。圧縮動作の間、第1の破砕ブレード1と第2の破砕ブレード2は、それらの間の破砕される材料によって互いに結合されている。これによって、破砕される材料及び第2の破砕ブレード2に、第1の破砕ブレード1の回転運動の速度及び加速度がほぼ伝達される。
【0032】
一例として使用される応用例では、第2の破砕ブレード2は、スライド部6a(または連結ロッド6b)及びメインシャフト3に対して自由回転するように、滑り軸受に組付けられており、第2の破砕ブレード2は、第1の破砕ブレード1とともに回転することができる。この例では、第2の破砕ブレード2の軸受には、偏心シャフト4を通じて延びる潤滑通路を介して潤滑油が差される。潤滑油は、重力によって、偏心シャフトの下側の潤滑油ダクトを通って潤滑油タンクに排出される。好ましくは、第2の破砕ブレード2は、その回転軸Xが直線運動の方向に対して平行となるように回転するために適している。この例では、図2に示すように、第2の破砕ブレード2は、鉛直方向の中心軸X回りに水平面内で回転する。好ましくは、第1の破砕ブレード1と第2の破砕ブレード2は、同じ回転軸を有し、これらの破砕ブレードは同軸で回転する。好ましくは、回転軸は、破砕ブレード1、2の中心軸にあり、第1の破砕ブレード1は、第1の破砕ブレード1の中心軸X回りに回転し、第2の破砕ブレード2は、第2の破砕ブレード2の中心軸X回りに回転する。
【0033】
破砕ブレード1、2の回転運動によって、破砕される材料上に遠心力が発生する。したがって、材料には、重力に加えて、遠心力が作用する。遠心力によって、材料の回転軸/中心軸Xから離れる方向の進行が加速されるため、遠心力は、破砕効率に対して有利な効果を奏する。材料の流れは、破砕機の2つの破砕ブレード1、2の間を、中心軸Xから外方に進行する。破砕室内の破砕される材料には、従来の破砕機と比較して、5〜13倍の加速度がかかる。
【0034】
破砕される材料の、2つの破砕ブレード1、2の間の流れは、破砕ブレードの角度にも影響される。有利には、第1の破砕ブレード1の面は、回転軸X及び破砕のための直線運動の方向に対して直角である。第1破砕ブレード1の面の、回転軸X及び破砕のための直線運動の方向に対する角度は、別の角度であってもよい。例えば、材料を供給する方向から見て、この面から回転軸に垂直に下ろした距離が増大するように、約75〜90°の角度であってもよい。
【0035】
第2破砕ブレード2の面は、回転軸X及び破砕のための直線運動の方向に対して直角であってもよく、回転軸X及び破砕のための直線運動の方向に対して異なる角度であってもよい。第2の破砕ブレード2の面の適切な角度は、破砕される材料の望ましい経路及び伝播速度とともに、とりわけ、第1の破砕ブレード1の面の角度と、第1の破砕ブレード1の回転速度に依存する。破砕される材料及び破砕速度に応じて、破砕ブレード1、2の角度を選択することが望ましい。好ましくは、第1の破砕ブレード1と第2の破砕ブレード2の互いに対向する面の間の角度は、約10〜30°である。
【0036】
図8の例では、各破砕ブレード1、2の円錐面は、回転軸Xに対して異なる方向の斜めの角度を有している。第1の破砕ブレード1の面は、回転軸X及び破砕のための直線運動の方向に対して約75°の角度をなす。第2の破砕ブレード2の面は、回転軸X及び破砕のための直線運動の方向に対して約75°の角度をなす。この例では、破砕室の中心線は、回転軸に対して略直交し、第1の破砕ブレード1と第2の破砕ブレード2との間の角度は、約30°である。図8に示す各破砕ブレード1、2の傾斜は、例えば、破砕ブレードの回転速度が大きい(例えば、毎分100〜200回転)場合の岩石の破砕に対して適切なものである。
【0037】
図3の例では、各破砕ブレード1、2の円錐面は、回転軸Xに対して同じ方向の斜めの角度を有している。第1の破砕ブレード1の面は、回転軸X及び破砕のための直線運動の方向に対して約45°の角度をなす。第2の破砕ブレード2の面は、回転軸X及び破砕のための直線運動の方向に対して約70°の角度をなす。この例では、破砕室の中心線は、回転軸に対して約50°の角度をなし、第1の破砕ブレード1と第2の破砕ブレード2との間の角度は、約20°である。有利には、第1の破砕ブレード1は、回転軸Xに対して約45〜70°の角度をなし、第2の破砕ブレード2は、回転軸に対して約55〜80°の角度をなす。これらの角度を小さくし、また、回転速度を小さくすれば、材料の流れの進行に対する重力の作用を大きくすることができ、これらの角度を大きくし、また、回転速度を大きくすれば、材料の流れの進行に対する遠心力の作用を大きくすることができる。図3に示す各破砕ブレード1、2の傾斜は、例えば、破砕ブレードの回転速度が小さい(例えば、毎分60〜100回転)場合の岩石の破砕に対して適切なものである。
【0038】
一実施形態では、第1の破砕ブレード1の面は、回転軸に対して直交し、第2の破砕ブレード2の面は、回転軸Xに対して斜めの角度をなす。第2の破砕ブレード2の面は、回転軸X及び破砕のための直線運動の方向に対して、約70°の角度をなす。第2の破砕ブレード2の面から第1の破砕ブレード1への回転軸X方向の距離は、材料の入口近傍において、材料の入口から離れた位置における距離よりも大きい。言い換えれば、第2の破砕ブレード2の面から第1の破砕ブレード1への回転軸X方向の距離は、破砕される材料の供給方向から見て、減少する。第1の破砕ブレード1と第2の破砕ブレード2との間の角度は、約20°である。
【0039】
破砕機の上側フレームは、有利には、下側フレームに対して移動可能なものである。図3及び図8に示す例では、上側フレームは、破砕力を受ける4つの油圧シリンダー9(図示は省略する)によって、下側フレームに取り付けられている。図9は、破砕機における制御シリンダー9の配置を示す透視図である。この例では、破砕機の上側フレームと下側フレームは、4つの制御シリンダー9によって結合されている。制御シリンダー9の数は、この例より多くても、少なくてもよい。制御シリンダーの数は、とりわけ、適用例の規模と使用される制御シリンダー9の特性にも依存する。制御シリンダー9によって、破砕時の破砕機の設定を無段階で調整することが可能になる。また、制御シリンダー9は、過負荷保護装置、及び、例えば鉄片等の破砕できない固形物を除去するための装置を備えることもできる。この例における破砕機では、破砕力は、鉛直成分と水平成分を有する。フレーム構造体に作用する破砕力の水平成分は、互いにほぼ相殺し合う。したがって、フレーム構造体には、本質的に、直線運動の方向、すなわち、この例では鉛直方向に作用する力が加わる。この力は、制御シリンダーの動作方向と略平行であるため、通常の制御シリンダー9はこの力に耐え、別のロック構造を要しない。これによって、回転による破砕力を備える従来の破砕機と比べて、破砕機の設定を調整するための装置及び破砕機の安全装置のいずれか一方または両方を、非常に容易に備えることができる。さらに、動作時に別のロック構造によって破砕機の設定をロックする必要がないため、動作の間に、制御シリンダー9によって破砕機を調整することができる。制御シリンダー9は、安全保護の特徴を備えるものであってもよい。2つの破砕ブレードの間に、破砕ブレードによって破砕できない材料がある場合、制御シリンダーによって、2つの破砕ブレード1、2を引き離すことができる。
【0040】
上述した構成により、新規の方法で破砕機を制御することも可能となる。破砕室の回転速度という新規の制御パラメータにより、破砕機の調整機能が大幅に改善される。ここで、動作サイクルの間に生じる最小の間隙を、破砕機の設定といい、間隙の最大値と最小値との差を破砕機のストロークという。通常、破砕機は、その設定とストロークとを変えることにより調整される。破砕室の回転速度を変えることにより、破砕のために重要な因子に対して容易に影響を与えることができる。例えば、回転速度によって影響を受ける変数は、ストローク、圧縮率、破砕室密度、及び、破砕領域の数のいずれか1つまたはこれらの任意の組合せである。これらの変数が調整されることにより、必要な場合、様々な使用例に応じて、破砕機の動作を最適化することができる。破砕機の設定及び破砕機のストローク、破砕機の動作速度及び破砕室の回転速度により、とりわけ、破砕された材料の粒径分布及び破砕機の製造能力に対して影響を及ぼすことができる。破砕機の調整は、破砕室の回転速度の調整にのみ基づいて実施することも、または、他の調整方法と組み合わせて実施することもできる。
【0041】
上述した実施形態では、直線に沿う調和運動に従って往復するのに適した破砕ブレードは、材料の流れに関して下側に配置されたものであるが、第1の、材料の流れに関して上側に配置された破砕ブレードが直線運動を実行するように、破砕機を構成することもできる。
【0042】
上述した本発明の様々な実施形態と関連させて開示された態様及び構造を、様々な方法で組み合わせることにより、本発明の精神に従う本発明の様々な実施形態を構成することが可能である。したがって、上述した例を、本発明を限定するものとして解釈してはならず、本発明の実施形態は、添付請求項に記載された本発明の特徴の範囲内で、自由に変更可能なものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転するように構成された第1の破砕ブレード(1)及び第2の破砕ブレード(2)を少なくとも含み、前記破砕ブレードのうちの1つは、さらに直線経路に沿って往復運動するように構成され、前記第1の破砕ブレード(1)及び前記第2の破砕ブレード(2)の回転軸(X)が、前記第2の破砕ブレード(2)の直線運動の方向に対して平行である破砕機であって、前記第2の破砕ブレード(2)は、直線経路に沿う調和運動に従って往復するために適していることを特徴とする破砕機。
【請求項2】
前記第2の破砕ブレード(2)の直線運動を発生させるための偏心シャフト(4)をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の破砕機。
【請求項3】
前記偏心シャフト(4)の運動を前記第2の破砕ブレード(2)に伝達するために適したスライド部(6a)をさらに含むことを特徴とする請求項1または2に記載の破砕機。
【請求項4】
前記スライド部(6a)は、前記直線運動の方向に関して、前記偏心シャフト(4)に対して固定されるために適していることを特徴とする請求項3に記載の破砕機。
【請求項5】
前記スライド部(6a)は、前記偏心シャフト(4)の、前記直線運動の方向に直交する方向への運動を可能とするために適していることを特徴とする請求項3または4に記載の破砕機。
【請求項6】
前記第2の破砕ブレード(2)の下側部分の直径は、上側部分の直径よりも大きいことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の破砕機。
【請求項7】
前記第2の破砕ブレード(2)の下側部分の直径は、上側部分の直径よりも小さいことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の破砕機。
【請求項8】
破砕機の動作の間に破砕機を調整するための、制御シリンダー(9)も含むことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の破砕機。
【請求項9】
回転式の第1の破砕ブレード(1)と回転式の第2の破砕ブレード(2)との間に材料が導入され、前記第2の破砕ブレード(2)は、前記第1の破砕ブレード(1)に対して直線に沿って往復運動し、前記第1及び第2の破砕ブレードの回転軸(X)が、前記第2の破砕ブレード(2)の直線運動の方向に対して平行である、材料の破砕方法であって、前記往復運動は、調和運動であることを特徴とする破砕方法。
【請求項10】
直線に沿う前記調和運動は、偏心シャフト(4)によって発生することを特徴とする請求項9に記載の破砕方法。
【請求項11】
前記偏心シャフト(4)の運動は、スライド部(6a)によって前記第2の破砕ブレード(2)に伝達され、前記スライド部(6a)は、前記直線運動の方向に関して、前記偏心シャフト(4)に対して固定され、前記直線運動の方向と直交する方向に関して、前記偏心シャフト(4)の前記スライド部(6a)に対する運動を可能にすることを特徴とする請求項10に記載の破砕方法。
【請求項12】
前記第1の破砕ブレード(1)と前記第2の破砕ブレード(2)との間の相互の設定は、制御シリンダー(9)による動作の間に調整されることを特徴とする請求項9から11のいずれか1項に記載の破砕方法。
【請求項13】
少なくとも前記第1の破砕ブレード(1)の回転速度が調整されることを特徴とする請求項9から11のいずれか1項に記載の破砕方法。
【請求項14】
回転するように構成された第1の破砕ブレード(1)及び第2の破砕ブレード(2)を少なくとも含み、前記破砕ブレードのうちの1つは、さらに直線経路に沿って往復運動するように構成され、前記第1の破砕ブレード(1)及び前記第2の破砕ブレード(2)の回転軸(X)が、前記第2の破砕ブレード(2)の直線運動の方向に対して平行である破砕機の制御方法であって、少なくとも前記第1の破砕ブレード(1)の回転速度が調整されることを特徴とする制御方法。
【請求項15】
制御シリンダー(9)により、前記破砕機の設定も調整されることを特徴とする請求項14に記載の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2010−528841(P2010−528841A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−510836(P2010−510836)
【出願日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際出願番号】PCT/FI2007/050335
【国際公開番号】WO2008/148928
【国際公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(508172395)メッツオ ミネラルズ インク. (6)
【Fターム(参考)】